(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。全図を通じて同一の要素には同一の符号を付す。以下の説明及び図面で用いる上、下、左、右、前、後などの方向を表す用語は、説明のために用いるものであって、本発明を限定する趣旨ではない。
【0018】
本発明の一実施の形態に係る鉄道車両用制御装置は、鉄道車両に供給する電力を制御するための箱状の装置であって、鉄道車両の床下などに固定される。鉄道車両用制御装置100は、正面図である
図1、I−I線における側方断面図である
図2、平面図である
図3などに示すように、鉄道車両に取り付けられる中空の箱体101と、箱体101内に固定される制御ユニット102と、制御ユニット102を箱体101に固定する固定ボルト103及び固定ナット104と、座金105,106とを備える。鉄道車両用制御装置100は、さらに、固定ボルト103及び固定ナット104の結合の緩みを防ぐ緩み止め具107と、緩み止め具107を箱体101に固定する第1ロックボルト108、第1ロックナット109、第2ロックボルト110及び第2ロックナット111とを備える。
【0019】
詳細には、箱体101は、
図1〜3に示すように、内部空間を囲む上部112、底部113、左側部114、右側部115、前部116及び後部117と、鉄道車両に固定される4つの取付部118とを有する。なお、
図1では、内部の構造を分かり易くするため、前部116を取り外して前方を開放させた箱体101を示す。
【0020】
上部112、底部113、左側部114、右側部115、前部116及び後部117の各々は、例えば平板状の部材である。各部112〜117は、内部に収容された制御ユニット102などの内部に収容されるものを外部からの飛来物などから保護するように内部空間を囲んで互いに固定されている。
【0021】
各部112〜117の固定には、ボルト・ナットの結合、溶接などが適宜採用されてよい。ただし、左側部114、右側部115、前部116及び後部117の少なくとも1つは、ボルト・ナットの結合のように溶接よりも箱体101に容易に着脱できる方法で固定されることが望ましい。これにより、箱体101の内部に収容される制御ユニット102のメンテナンスなどを容易にすることができる。
【0022】
上部112は、制御ユニット102を固定するための4つの箱体側固定孔部119と、緩み止め具107を固定するための4組の箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121とを有する(
図5参照)。箱体側固定孔部119、箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121の各々は、上下方向に貫通する孔である。
【0023】
箱体側固定孔部119の各々の位置は、制御ユニット102に応じて定められる。箱体側固定孔部119の1つの中心と、1組の箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121の中心とは、上方から見て一直線上に並ぶように対応付けられている。1組の箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121の各々の中心と、それらに対応する箱体側固定孔部119の中心との距離は、緩み止め具107に応じて定められる。
【0024】
本実施の形態では、上方から見て、箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121の各組の中心は、対応する箱体側固定孔部119の中心の前方へ順に並んで設けられている。上方から見て、箱体側固定孔部119の各々とそれに対応する箱体側第1ロック孔部120の各々との中心間の距離は第1の距離であり、箱体側固定孔部119の各々とそれに対応する箱体側第2ロック孔部121の各々との中心間の距離は第2の距離である。
【0025】
取付部118は、例えば
図1及び3に示すように、平板状の部材であって、上部112の上面の四隅近傍に溶接などで固定されている。上部112の左側に固定される取付部118は左側部114よりも左方へ、上部112の右側に固定される取付部118は右側部115よりも右方へ延びる部分を含み、その部分の各々に上下方向に貫通する、鉄道車両取付用孔部122が設けられている。
【0026】
鉄道車両取付用孔部122は、鉄道車両用制御装置100を鉄道車両に固定する際、鉄道車両の予め定められた箇所に設けられた孔と連通するように配置される。鉄道車両取付用孔部122とそれに連通した鉄道車両の孔にはボルトが挿設され、そのボルトとナットとが螺合することで結合する。これによって、鉄道車両用制御装置100は鉄道車両の床下に固定される。
【0027】
なお、取付部118は、補強のため左側部114又は右側部115に固定されるリブなどを含んでもよい。また、鉄道車両取付用孔部122は、例えば上部112に設けられてもよく、この場合取付部118は設けられなくてよい。
【0028】
制御ユニット102は、例えば
図1に示すように、電車に供給される電力を制御する部品を含んで構成される部品部123と、箱体101に固定するための固定部124とを有する。ここでの部品の例として、例えば電力変換装置、遮断器、変圧器、リアクトルなどを挙げることができる。制御ユニットは、重量が100〜500kg程度、大きいものでは長さ、幅、高さがそれぞれ2m、1m、1m程度である。
【0029】
本実施の形態の部品部123は、
図1〜3に示すように、概ね直方体状に構成される。固定部124は、部品部123の左右それぞれの側面の上部から左方又は右方へ延びる平板状の部材であり、例えばボルトとナットの結合、溶接などで部品部123に固定される。固定部124の各々には、前後それぞれの端部近傍に、上下方向に貫通する制御ユニット側固定孔部125が設けられている(
図5参照)。
【0030】
固定ボルト103及び固定ナット104は、設計上定められた締め付け力で結合することによって、制御ユニット102を箱体101に固定する。
【0031】
より詳細には、固定ボルト103は、一般的に用いられる六角ボルトであって、例えば
図1〜3に示すように、正六角柱状の頭部126と、頭部126に基端が同軸で固定され外周面にネジ溝が設けられた円柱状の雄ネジ部127とを有する。
【0032】
固定ボルト103は、例えば
図2に示すように、頭部126を上にして、その軸を上下方向に向けて設けられる。雄ネジ部127は、上から下へ順に連通する2枚の座金105,106の孔、箱体側固定孔部119及び制御ユニット側固定孔部125に挿設される。雄ネジ部127に雌ネジ部としての固定ナット104が螺合することで、固定ボルト103及び固定ナット104は結合する。これにより、頭部126と固定ナット104とが、座金105,106、箱体101の上部112及び制御ユニット102の固定部124を挟持することになる。そして、固定ボルト103を締め付け力で締め付けることによって、制御ユニット102は箱体101に固定される。
【0033】
緩み止め具107は、
図4に拡大した平面図を示すように、固定ボルト103の頭部126に嵌る係止部128と、箱体101に固定するためのロック部129とを有する。本実施の形態に係る緩み止め具107は、1つの平板状の部材を
図2に示すように屈曲して形成される。
【0034】
緩み止め具107の材料は、例えば金属であって、固定ボルト103と同じ材料であることが望ましい。また、緩み止め具107の板厚は、固定ボルト103の頭部の高さ(上下方向の長さ)の1/3程度が望ましい。これにより、鉄道車両の走行に伴う振動などのために、固定ボルト103の頭部126と係止部128とが擦れ合ったとしても、頭部126及び係止部128のいずれかが摩耗又は破損することを抑制することができる。なお、緩み止め具107は、本実施の形態のように1つの部材から形成されるだけでなく、固着する複数の部材から形成されてもよい。
【0035】
係止部128は、
図4に示すように、上方から見て固定ボルト103の頭部126に嵌る形状の切り欠き部130を有する矩形平板状の部分である。
【0036】
切り欠き部130は、上方から見て、凹凸のある環状をなしており、60/n(n:自然数)度の回転角で回転させたn個の正六角形の輪郭の全体と同じ形状を有する。本実施の形態の切り欠き部130は、n=2、すなわち、30度の回転角で回転させた2個の正六角形の全体の輪郭と同じ形状を有する。
【0037】
ここで回転させる正六角形は、上方から見た固定ボルト103の頭部126の外形がなす正六角形よりも大きい。すなわち、切り欠き部130と固定ボルト103の頭部126とは緩み嵌め(すきま嵌め)の関係にあり、切り欠き部130は、上方から見て、固定ボルト103の頭部126が20/n度回転することを許容する大きさのすき間を有する。
【0038】
本実施の形態では、切り欠き部130は、上方から見て、固定ボルト103の頭部126が10度(±5度)回転することを許容する大きさのすき間を有する。なお、説明のため、上方から見て左回りを正方向の回転、右回りを負方向の回転とする。
【0039】
このような切り欠き部130の凸部(上方から見て切り欠きの中心へ向かって突き出す部分)131は12個形成される。各凸部131は、形状及び大きさが同じであり、上方から見て、なす角120度で頂点132から延びる等しい長さの線分133の対で形成される。
【0040】
ロック部129は、係止部128の端部に接続する部分であり、箱体101に固定される平板部134と、平板部134と係止部128とを接続する段差部135とを有する。
【0041】
平板部134は、箱体101の上面に沿って配置される平板状の部分であって、3組の第1ロック孔部136a〜cと第2ロック孔部137a〜cとを有する。
【0042】
上方から見て、第1ロック孔部136a〜c及び第2ロック孔部137a〜cの各組の中心は、切り欠きの中心(切り欠き中心)138から延びる直線139a〜c上に配置される。上方から見て、直線139aと直線139b,cそれぞれとのなす角の大きさは20/n度である。すなわち、本実施の形態では、上方から見て、直線139cは直線139aと+10度の角度をなし、直線139bは直線139aと−10度の角度をなす。
【0043】
また、上方から見て、第1ロック孔部136a〜cの各々の中心は、切り欠き中心138を中心とする円上に位置し、その円の半径は第1距離である。上方から見て、第2ロック孔部137a〜cの各々の中心は、切り欠き中心138を中心とする円上に位置し、その円の半径は、第1距離より長い第2距離である。
【0044】
段差部135は、上下方向の位置が異なる係止部128と平板部134とを接続する部分であって、上端部が係止部128に接続し、下端部が平板部134に接続する。本実施の形態の段差部135は、上下方向に延びる平板状の部分である。
【0045】
なお、段差部135は、座金105の上面に当接する固定ボルト103の頭部126に係止部128が嵌り、かつ、平板部134が箱体101の上面に当接するように、高さ(上下方向の長さ)が変化すればよい。従って、段差部135は、例えば斜めに傾斜していてもよく、湾曲していてもよい。段差部135の高さは、固定ボルト103の頭部126の高さと座金105,106の厚さとに応じて決定されればよい。
【0046】
第1ロックボルト108及び第1ロックナット109と、第2ロックボルト110及び第2ロックナット111とは、設計上定められた締め付け力で結合することによって、緩み止め具107を箱体101に固定する。
【0047】
より詳細には、第1ロックボルト108と第2ロックボルト110は、いずれも一般的に用いられるボルトであって、例えば六角ボルトである。
【0048】
第1ロックボルト108と第2ロックボルト110は、それぞれ、頭部を上にして、その軸を上下方向に向けて設けられる。第1ロックボルト108の雄ネジ部は、上から下へ連通する第1ロック孔部136a〜cのいずれかと箱体側第1ロック孔部120とに挿設され、第2ロックボルト110の雄ネジ部は、上から下へ連通する第2ロック孔部137a〜cのいずれかと箱体側第2ロック孔部121とに挿設される。
【0049】
第1ロックボルト108の雄ネジ部、第2ロックボルト110の雄ネジ部のそれぞれに、雌ネジ部としての第1ロックナット109、第2ロックナット111が螺合する。これにより、第1ロックボルト108と第1ロックナット109が結合し、第2ロックボルト110と第2ロックナット111が結合する。その結果、緩み止め具107は、2箇所で箱体101に固定される。
【0050】
これまで、本発明の一実施の形態に係る鉄道車両用制御装置100の構成を説明した。ここから、鉄道車両用制御装置100の組み立て方法を説明する。
【0051】
図5は、
図2の楕円140で囲った部分(制御ユニット102が箱体101に固定される部分)の分解図である。
【0052】
同図に示すように、固定部124に設けられた4つの制御ユニット側固定孔部125の各々が、設計上対応付けられた箱体側固定孔部119の下方にて連通するように、制御ユニット102が箱体101の下方に配置される。4つの固定ボルト103の各々が、制御ユニット側固定孔部125及び箱体側固定孔部119に挿入され、固定ナット104に結合する。これによって、制御ユニット102が4箇所で箱体101に固定される。
【0053】
より詳細には、雄ネジ部127の各々は、例えば上方から、座金105,106孔に挿入された後、制御ユニット側固定孔部125及び箱体側固定孔部119に挿入される。固定部124から下方へ突き出した雄ネジ部127の各々に固定ナット104を螺合させた後、固定ナット104を工具などで固定した状態で固定ボルト103の頭部126が所定の締め付け力で締め付けられる。
【0054】
緩み止め具107の切り欠き部130が固定ボルト103の頭部126に嵌められる。このとき、第1ロック孔部136a〜cと第2ロック孔部137a〜cのいずれか1組が箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121に連通するように緩み止め具107は、固定ボルト103の頭部126に嵌められる。
【0055】
ここで、固定ボルト103の頭部126に嵌める際の緩み止め具107の方向の決め方について、
図6〜17を参照して説明する。
【0056】
本実施の形態では、
図6に示すように、上方から見て、固定ボルト103の頭部126の向きは、箱体側固定孔部119(固定ボルト103の頭部126)の中心から基準線141aに最も近い、固定ボルト103の頭部126の角へ向かう直線と基準線141aとのなす角によって規定されることとする。基準線141aは、上方から見て、箱体側固定孔部119の中心から前方へ向かう方向に延びる直線である。また、緩み止め具107の向きは、切り欠き部130の中心から第1ロック孔部136a及び第2ロック孔部137aへ延びる直線(139a)と基準線141aとのなす角によって規定されることとする。
【0057】
頭部126の向きが0〜+5度である場合、緩み止め具107は0度で頭部126に嵌められる。これにより、箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121のそれぞれには、第1ロック孔部136a及び第2ロック孔部137aが連通する。頭部126の向きが0度である場合の例を
図6に、頭部126の向きが5度である場合の例を
図7に示す。
【0058】
頭部126の向きが+5〜+15度である場合、緩み止め具107は+10度で頭部126に嵌められる。これにより、箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121のそれぞれには、第1ロック孔部136b及び第2ロック孔部137bが連通する。頭部126の向きが+10度である場合の例を
図8に、頭部126の向きが+15度である場合の例を
図9に示す。
【0059】
頭部126の向きが+15〜+25度である場合、緩み止め具107は−10度で頭部126に嵌められとよい。これにより、箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121のそれぞれには、第1ロック孔部136c及び第2ロック孔部137cが連通する。頭部126の向きが+20度である場合の例を
図10に、頭部126の向きが+25度である場合の例を
図11に示す。
【0060】
頭部126の向きが0〜−5度である場合、緩み止め具107は0度で頭部126に嵌められる。これにより、箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121のそれぞれには、第1ロック孔部136a及び第2ロック孔部137aが連通する。頭部126の向きが−5度である場合の例を
図12に示す。
【0061】
頭部126の向きが−5〜−15度である場合、緩み止め具107は−10度で頭部126に嵌められる。これにより、箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121のそれぞれには、第1ロック孔部136c及び第2ロック孔部137cが連通する。頭部126の向きが−10度である場合の例を
図13に、頭部126の向きが−15度である場合の例を
図14に示す。
【0062】
頭部126の向きが−15〜−25度である場合、緩み止め具107は+10度で頭部126に嵌められる。これにより、箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121のそれぞれには、第1ロック孔部136b及び第2ロック孔部137bが連通する。頭部126の向きが−20度である場合の例を
図15に、頭部126の向きが−25度である場合の例を
図16に示す。
【0063】
頭部126の向きが−25〜−30度、又は+25〜+30度である場合、緩み止め具107は0度で頭部126に嵌められる。これにより、箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121のそれぞれには、第1ロック孔部136a及び第2ロック孔部137aが連通する。頭部126の向きが−30度である場合の例を
図17に示す。
【0064】
本実施の形態に係る緩み止め具107は、上述のように、切り欠き部130が上方から見て、30度の回転角で回転させた2つの正六角形の全体の輪郭と同じ形状をなし、かつ、切り欠き中心138から10度(20/n度)ずつ異なる3方向に位置する第1ロック孔部136及び第2ロック孔部137を有し、かつ、切り欠き部130は、上方から見て、固定ボルト103の頭部126が10度(20/n度)回転することを許容する大きさのすき間を有する。そのため、固定ボルト103の頭部126が上方から見ていずれの方向を向いていても、第1ロック孔部136及び第2ロック孔部137のそれぞれが箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121と連通するように、緩み止め具107を固定ボルト103の頭部126に嵌めることができる。
【0065】
緩み止め具107が固定ボルト103の頭部126に嵌められると、第1ロックボルト108が、
図5に示すように、第1ロック孔部136a〜cのいずれかとそれに連通する箱体側第1ロック孔部120に例えば上方から挿入される。
【0066】
箱体101の上部112から下方へ突き出した第1ロックボルト108の雄ネジ部に第1ロックナット109を螺合させた後、第1ロックナット109を工具などで固定した状態で第1ロックボルト108の頭部が所定の締め付け力で締め付けられる。
【0067】
第2ロック孔部137a〜cのいずれかとそれに連通する箱体側第2ロック孔部121とについても、同様に、第2ロックボルト110が挿入され、第2ロックナット111を螺合させた後に所定の締め付け力で締め付けられる。
【0068】
これによって、緩み止め具107は、2箇所で箱体101に固定される。
【0069】
このように、緩み止め具107を固定ボルト103の頭部126にはめ込み箱体101に固定することによって、固定ボルト103の緩みが防止される。これを4つの固定ボルト103の各々について同様に行なわれる。
【0070】
本実施の形態によれば、切り欠き部130は、30度(60/n)の回転角で回転させた2(n)個の正六角形の輪郭の全体と同じ形状を有する。そのため、切り欠き部130の凸部131を、頭部126の周辺であって、固定ボルト103を緩める方向へ回転する場合に頭部126の側面が通過する領域に配置することができる。ロック部129が箱体101に固定されると、固定ボルト103の頭部126の回転は凸部131によって係止される。従って、緩み止め具107によって、固定ボルト103の締め付けの緩みを防止することができる。
【0071】
本実施の形態によれば、緩み止め具107と固定ボルト103の頭部126とは、その頭部126が切り欠き部130に嵌ることで関連付けられている。そのため、上述の鉄道車両用制御装置100の組み立て方法と逆の手順で、第1ロックボルト108と第2ロックボルト110を緩めて第1ロック孔部136と第2ロック孔部137から抜き去れば、緩み止め具を変形させなくても、緩み止め具107を鉄道車両用制御装置100から取り外すことができる。
【0072】
しかも、それまで使用していた緩み止め具は着脱の前後で塑性変形など変形をしていない。そのため、制御ユニット102を箱体101に再び固定する場合、上述の鉄道車両用制御装置100の組み立て方法と同じ手順で固定ボルト103を締め付けた後、緩み止め具107を再利用して固定ボルト103の頭部126に嵌めることができる。そして、第1ロックボルト108と第2ロックボルト110を締め付けることで、緩み止め具107を再び箱体101に固定することができる。すなわち、緩み止め具107を再利用できる。
【0073】
従って、再利用可能な緩み止め具107を備えた鉄道車両用制御装置の提供が可能になる。
【0074】
実施の形態に係る緩み止め具107は、段差部135を備える。これにより、固定ボルト103と箱体101との間に座金105,106が設けられる場合であっても、固定ボルト103と固定ナット104との結合の緩みを防止することが可能になる。
【0075】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこの実施の形態に限られず、種々の変更が加えられてよい。
【0076】
例えば、実施の形態では、固定ナット104が固定ボルト103と螺合する雌ネジ部として備えられる例により説明したが、この雌ネジ部は、制御ユニット102の一部(部分)である制御ユニット側固定孔部125であってもよい。すなわち、この場合、制御ユニット側固定孔部125の壁面に螺旋状の溝が設けられる。
【0077】
例えば、実施の形態では、第1ロックナット109(第2ロックナット111)が第1ロックボルト108(第2ロックボルト110)と螺合する雌ネジ部として備えられる例により説明したが、この雌ネジ部は、箱体101の一部(部分)である箱体側第1ロック孔部120(箱体側第2ロック孔部121)であってもよい。すなわち、この場合、箱体側第1ロック孔部120(箱体側第2ロック孔部121)の壁面に螺旋状の溝が設けられる。
【0078】
例えば、実施の形態では、制御ユニット102が上部112に固定される例により説明したが、箱体101は、制御ユニット102を固定するための部材(ユニット固定用部材)を備えてもよい。この場合、制御ユニット102がユニット固定用部材に固定されるとよい。ユニット固定用部材は、例えば箱体101の内部で位置を固定して設けられる水平な平板である。ユニット固定用部材には、制御ユニット102の固定部124が下方に固定されてもよく、制御ユニット102の固定部124が載置されて上方に固定されてもよい。固定部124が上方に固定される場合には、固定ナット104に代わる雌ネジ部が箱体101の一部(部分)であるユニット固定用部材に設けられてもよく、第1ロックナット109、第2ロックナット111に代わる雌ネジ部が制御ユニット102の一部(部分)である固定部124に設けられてもよい。
【0079】
雌ネジ部が、固定ナット104、第1ロックナット109、第2ロックナット111に代えて箱体101の部分、又は、制御ユニット102の部分に設けられることで、鉄道車両用制御装置100の部品点数を減らすことが可能になる。
【0080】
例えば、実施の形態では、固定部124は、部品部123に固定される別部材により構成される例により説明したが、制御ユニット側固定孔部125は、部品部123(部品部123の例えば上部)に設けられてもよい。
【0081】
例えば、本実施の形態では、緩み止め具107は、第1ロックボルト108及び第1ロックナット109と、第2ロックボルト110及び第2ロックナット111とによって2箇所で箱体101に固定される例により説明した。しかし、緩み止め具107は、第1ロックボルト108及び第1ロックナット109のみによって、1箇所で箱体101に固定されてもよい。或いは、さらに、第3ロックボルト及び第3ロックナットが設けられて、緩み止め具107は、3箇所以上で箱体101に固定されてもよい。
【0082】
しかし、緩み止め具107を箱体101に1箇所で固定した場合、例えば第1ロックボルト108を締め付ける際に、緩み止め具107がその頭部126とともに回転(とも回り)し、その結果、切り欠き部130と固定ボルト103の頭部126が押し合って損傷するおそれがある。また、緩み止め具107を箱体101に3箇所で固定した場合、箱体101にそれに応じた孔を設ける必要があり、加工の手間が増える。
【0083】
実施の形態のように緩み止め具107を箱体101に2箇所で固定すると、少ない加工であっても、とも回りを防ぐことができ、とも回りによる切り欠き部130と固定ボルト103の頭部126の損傷を防ぐことが可能になる。
【0084】
例えば、実施の形態では、分かり易くするため、1つの制御ユニット102が箱体101に収容される例により説明した。しかし、箱体101には複数の制御ユニット102が収容されてもよい。この場合、各制御ユニット102を固定する固定ボルト103の一部又は全部に実施の形態で説明した緩み止め機構が採用されてもよい。緩み止め機構は、固定ボルト103と固定ナット104の結合の緩みを防止する機構であって、緩み止め具107、第1ロック孔部136、第2ロック孔部137、第1ロックボルト108、第1ロックナット109、第2ロックボルト110、第2ロックナット111などから構成される。
【0085】
例えば、実施の形態では、座金105,106が設けられる例により説明したが、座金105,106が設けられなくてもよい。この場合、ロック部129が段差部135を備えず、緩み止め具107は、係止部128とロック部129とで平板状に構成されるとよい。
【0086】
(変形例1)
実施の形態では、緩み止め具107の切り欠き部130が、30度の回転角で回転させた2つの正六角形の全体の輪郭と同じ形状をなす例により説明した。しかし、切り欠き部の形状は、これに限られず、固定ボルト103の頭部126の側面が有する角の少なくとも1つに嵌る形状であればよい。これにより、切り欠き部を頭部126の周辺であって、固定ボルト103を緩める方向へ回転する場合に頭部126の側面が通過する領域に配置することができる。その結果、固定ボルト103と固定ナット104の結合の緩みを防ぐことが可能になる。
【0087】
変形例1,2では、上方から見て、固定ボルト103の頭部126の側面が有する角の少なくとも1つに嵌る形状を有する切り欠き部の他の例を、図を参照して説明する。
【0088】
変形例1に係る緩み止め具207の係止部228は、
図18に示すように、20度の回転角で回転させた3個の正六角形の輪郭の全体と同じ形状を有する。切り欠き部230は、上方から見て、固定ボルト103の頭部126が(20/3)度(±(10/3)度)回転することを許容する大きさのすき間を有する。
【0089】
また、ロック部229は、3組の第1ロック孔部236a〜cと第2ロック孔部237a〜cを有する。上方から見て、第1ロック孔部236a〜c及び第2ロック孔部237a〜cの各組の中心は、切り欠き中心238から延びる直線239a〜c上に配置される。
【0090】
直線239a〜cは、直線139a〜cと異なり、なす角の大きさが(20/3)度である。すなわち、上方から見て、直線239cは直線239aと+(20/3)度の角度をなし、直線239bは直線239aと−(20/3)度の角度をなす。
【0091】
本変形例によっても、実施の形態の切り欠き部130と同様に、切り欠き部230の凸部231を、頭部126の周辺であって、固定ボルト103を緩める方向へ回転する場合に頭部126の側面が通過する領域に配置することができる。ロック部229が箱体101に固定されると、固定ボルト103の頭部126の回転は凸部231によって係止される。従って、緩み止め具207によって、固定ボルト103の締め付けの緩みを防止することができる。
【0092】
直線239a〜cは、なす角の大きさが(20/3)度であり、かつ、切り欠き部230は、上方から見て、固定ボルト103の頭部126が(20/3)度回転することを許容するすき間を有する。すなわち、直線239a〜cのなす角の大きさが(20/n)度であり、かつ、切り欠き部は、上方から見て、固定ボルト103の頭部126が(20/n)度回転することを許容する大きさのすき間を有する。
【0093】
これにより、実施の形態と同様に、固定ボルト103の頭部126が上方から見ていずれの方向を向いていても、第1ロック孔部236a〜c及び第2ロック孔部237a〜cのいずれかが箱体側第1ロック孔部120及び箱体側第2ロック孔部121と連通するように、緩み止め具207を固定ボルト103の頭部126に嵌めることが可能になる。
【0094】
これらの効果以外にも、変形例1に係る緩み止め具207を採用することによって、実施の形態に係る鉄道車両用制御装置100と同様の効果を奏する。
【0095】
(変形例2)
変形例2に係る緩み止め具307が有する係止部328の切り欠き部330は、
図19に示すように、30度の回転角で回転させた2個の正六角形の輪郭のうち、各正六角形の少なくとも1つの角を含む部分と同じ形状である。
【0096】
本変形例に係る緩み止め具307を採用することによって、実施の形態に係る緩み止め具107より小さい緩み止め具307で、実施の形態に係る鉄道車両用制御装置100と同様の効果を奏する。