【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者 特定非営利活動法人 日本オゾン協会 刊行物 第22回日本オゾン協会年次研究講演会講演集,第107〜110頁 発行日 平成25年8月8日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
冷却塔水槽からの水と、オゾナイザで発生したオゾンとを混合してオゾン溶解槽に導入し、前記オゾン溶解槽において気相オゾンを液相に溶解させてオゾン溶解水を生成すると共に、前記オゾン溶解水を前記冷却塔水槽に送り、前記冷却塔水槽の上部から冷却フィンを有する熱交換器に散布した後、前記冷却塔水槽に戻し循環させるように構成された冷却塔のオゾン殺菌装置において、
前記冷却塔水槽を循環する前記オゾン溶解水中の溶存オゾン濃度を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、予めパラメータを入力した前記オゾナイザの制御ユニットに、水質、細菌数、気相オゾン濃度のいずれかの指標を測定値として入力し、オゾン殺菌が出来かつ余剰オゾンを最小にするように前記オゾナイザのオゾン発生量を制御すると共に、
前記冷却塔水槽を循環する前記オゾン溶解水中の水質としてpH、温度、電気伝導率、溶存オゾン濃度、硝酸イオン、酸素消費量の少なくとも一つを検出して前記オゾン溶解水へのオゾン注入量またはオゾン注入間隔を決め、
前記オゾン溶解水中の溶存オゾン濃度が0.1 ppmから1 ppmの間になるように制御する
ことを特徴とする冷却塔のオゾン殺菌装置。
前記制御手段は、前記冷却塔水槽を循環する前記オゾン溶解水中の細菌密度の指標として、一般細菌、大腸菌群、レジオネラ菌の少なくとも一種の単位体積当りのコロニー数を検出して前記オゾン溶解水へのオゾン注入量またはオゾン注入間隔を決めることを特徴とする請求項1に記載の冷却塔のオゾン殺菌装置。
前記制御手段は、前記冷却塔水槽を循環する前記オゾン溶解水中の水質の指標と細菌数密度の指標と気相オゾン濃度の少なくとも一つを連続的に検出し、その検出情報に基づき前記オゾン溶解水へのオゾン注入量及びまたはオゾン注入間隔を定めることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の冷却塔のオゾン殺菌装置。
冷却塔水槽からの水と、オゾナイザで発生したオゾンとを混合したオゾン溶解水を前記冷却塔水槽の上部から熱交換器に散布した後、前記冷却塔水槽に戻し循環させるようにした冷却塔のオゾン殺菌方法において、
予めパラメータを入力した前記オゾナイザの制御ユニットに、水質、細菌数、気相オゾン濃度のいずれかの指標を測定値として入力し、オゾン殺菌が出来かつ余剰オゾンを最小にするように前記オゾナイザのオゾン発生量を制御すると共に、
前記冷却塔水槽を循環する前記オゾン溶解水中の水質としてpH、温度、電気伝導率、溶存オゾン濃度、硝酸イオン、酸素消費量の少なくとも一つを検出して前記オゾン溶解水へのオゾン注入量またはオゾン注入間隔を決め、
前記オゾン溶解水中の溶存オゾン濃度が0.1 ppmから1 ppmの間になるように制御する
ことを特徴とする冷却塔のオゾン殺菌方法。
【背景技術】
【0002】
ビルの冷却システムにおいては、ビル内の各種の被冷却体を冷却することにより温度上昇した冷却水は、ビルの屋上などに設置された冷却塔に送られ、冷却塔内で冷却され、再び被冷却体に送られてそれを冷却する。
しかしながら、冷却塔内の熱交換器に設けられた冷却フィン表面に細菌が増殖するとバイオフィルムが形成され、スケール付着の結合剤として作用しフィルムの厚さが増し冷却能力の低下を引き起こす。
さらに、レジオネラ菌族を含む水滴の飛散でレジオネラ症に感染する場合がある。
レジオネラ症は患者報告数が増加傾向にあり、このため塩素消毒が義務付けるなどの種々の対策が講じられている。
塩素消毒を行っているにもかかわらずレジオネラ菌に対して十分な抑制効果が得られていない場合がある(非特許文献1)。
【0003】
非特許文献2は、開放式冷却塔における循環水および散布水においてレジオネラ属菌が100CFU/100ミリリットル以上検出された場合、その循環系の清掃、消毒を推奨し、また、清掃、消毒等の対策実施後において、循環水及び散布水におけるレジオネラ属菌の検出数を10CFU/100ミリリットル未満に維持するように推奨している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらを予防するためにオゾンによる殺菌が有効と考えられる。
しかしながら、冷却塔内の熱交換器の冷却フィンに金属(例えば銅)が使われている場合、オゾンによる金属(銅)冷却フィンの腐食が問題となり、実用上30年間の使用に耐える金属(銅)冷却フィンの設計が求められる(非特許文献3)。
【0007】
オゾンは酸化力が強く、殺菌効果も顕著であるが、過剰のオゾンの使用は初期費用、維持費用が高くなり経済性の面で問題になるばかりでなく、大気中に放散されるとオゾン臭気の存在や、オゾンを吸入する人体に有害であり、安全面、健康面で問題となる。
【0008】
特許文献1では冷却塔のオゾン殺菌装置において、用水の高温時にはレジオネラ菌を含む微生物が繁殖しやすくなるのでオゾン発生量を最大にし、低温時には微生物の繁殖が少なくなるのでオゾン発生量を減らし殺菌効果を維持しつつ運転及び保守費用を減少させることが記載されている。
温度を目安にしたオゾン注入量の調整は、温度変化と微生物増殖速度、繁殖状況の関係が穏やかであるので微生物の増殖・減少に応じて過不足の無いオゾン注入をすることが困難であり、殺菌効果、経済性、安全性が十分ではないという問題があった。
【0009】
本発明は、効果的なレジオネラ菌の繁殖抑制と冷却フィン金属の腐食抑制を両立させ、かつ、経済性、安全性を確保した冷却塔のオゾン殺菌装置及びオゾン殺菌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の冷却塔のオゾン殺菌装置は、冷却塔水槽からの水と、オゾナイザで発生したオゾンとを混合してオゾン溶解槽に導入し、前記オゾン溶解槽において気相オゾンを液相に溶解させてオゾン溶解水を生成すると共に、前記オゾン溶解水を前記冷却塔水槽に送り、前記冷却塔水槽の上部から冷却フィンを有する熱交換器に散布した後、前記冷却塔水槽に戻し循環させるように構成された冷却塔のオゾン殺菌装置において、
前記冷却塔水槽を循環する前記オゾン溶解水中の溶存オゾン濃度
を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、予めパラメータを入力した前記オゾナイザの制御ユニットに、水質、細菌数、気相オゾン濃度のいずれかの指標を測定値として入力し、オゾン殺菌が出来かつ余剰オゾンを最小にするように前記オゾナイザのオゾン発生量を制御すると共に、
前記冷却塔水槽を循環する前記オゾン溶解水中の水質としてpH、温度、電気伝導率、溶存オゾン濃度、硝酸イオン、酸素消費量の少なくとも一つを検出して前記オゾン溶解水へのオゾン注入量またはオゾン注入間隔を決め、
前記オゾン溶解水中の溶存オゾン濃度が0.1 ppmから1 ppmの間になるように制御するものである。
【0011】
また、本発明の冷却塔のオゾン殺菌方法は、 冷却塔水槽からの水と、オゾナイザで発生したオゾンとを混合したオゾン溶解水を前記冷却塔水槽の上部から熱交換器に散布した後、前記冷却塔水槽に戻し循環させるようにした冷却塔のオゾン殺菌方法において、
予めパラメータを入力した前記オゾナイザの制御ユニットに、水質、細菌数、気相オゾン濃度のいずれかの指標を測定値として入力し、オゾン殺菌が出来かつ余剰オゾンを最小にするように前記オゾナイザのオゾン発生量を制御すると共に、
前記冷却塔水槽を循環する前記オゾン溶解水中の水質としてpH、温度、電気伝導率、溶存オゾン濃度、硝酸イオン、酸素消費量の少なくとも一つを検出して前記オゾン溶解水へのオゾン注入量またはオゾン注入間隔を決め、
前記オゾン溶解水中の溶存オゾン濃度が0.1 ppmから1 ppmの間になるように制御するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の冷却塔のオゾン殺菌装置及びオゾン殺菌方法によれば、溶存オゾン濃度を0.1 ppmから1ppmの間の値に保つことで一般細菌を検出下限以下に抑制でき、かつ、熱交換器の銅冷却フィンの腐食を0.18mm/30年以下(冷却フィンの厚み0.6mm)に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態1を示す冷却塔のオゾン殺菌装置の概略構成を示した図である。
【
図2】細菌(大腸菌)の生菌数と水中オゾン濃度の関係を示した図である。
【
図3】細菌(大腸菌)を90%以上殺菌するに必要な溶存オゾン濃度を細菌とオゾンの接触時間の関係を表した図である。
【
図4】オゾン殺菌条件と銅腐食の関係を調べたバッチ試験用の試験装置を説明した図である。
【
図5】バッチ試験における水質の変化を示した図である。
【
図6】バッチ試験における溶存オゾン濃度の変化を示した図である。
【
図7】バッチ試験における気温と水温の関係を示した図である。
【
図8】バッチ試験における銅冷却フィンの重量の変化と30年間腐食量を示した図である。
【
図9】バッチ試験における銅冷却フィンの重量の変化と30年間腐食量を示した図である。
【
図10】腐食速度の文献値(非特許文献3)と実験値を比較した図である。
【
図11】バッチ試験におけるpHの変化を示した図である。
【
図12】バッチ試験における電気伝導度の変化を示した図である。
【
図13】バッチ試験における硝酸イオン濃度の変化を示した図である。
【
図14】バッチ試験における酸消費量の変化を示した図である。
【
図15】バッチ試験における一般細菌数の変化を示した図である。
【
図16】冷却塔オゾン殺菌試験におけるオゾン溶解特性を示した図である。
【
図17】オゾナイザの電流とオゾン発生量の関係を示した図である。
【
図18】オゾナイザの電流と生成オゾン濃度の関係を示した図である。
【
図19】オゾナイザのオゾン発生量を制御するブロック図である。
【
図20】冷却塔オゾン殺菌試験におけるオゾン殺菌効果を示した図である。
【
図21】冷却塔オゾン殺菌試験におけるオゾン殺菌効果を示した図である。
【
図22】オゾン殺菌装置近傍の気相オゾン濃度の変化を示した図である。
【
図23】オゾン殺菌装置近傍の気相オゾン濃度の変化を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1を示す冷却塔のオゾン殺菌装置の概略構成を示した図である。
図1において、1はオゾナイザ、2はオゾン溶解槽、3はエゼクタ、4はポンプ、5はオゾン分解塔、6は冷却塔、7は冷却塔水槽、8は冷却塔の気相部、9は冷却塔の熱交換器、10は冷却塔のポンプ、11は送風機、12はノズルである。
冷却塔水槽7からポンプ4で水を吸引し、エゼクタ3でオゾナイザ1で発生したオゾンを吸引混合しオゾン溶解槽2に導入する。
ここで気相オゾンを液相に溶解させ、未溶解の気相オゾンはオゾン分解塔5でオゾンを酸素に分解し無害化して大気へ放出する。
【0015】
オゾン溶解水は冷却塔水槽7に送られ、ポンプ10により冷却塔上部のノズル12から熱交換器9に散布され、そこで気化熱を奪われた後、冷却塔水槽7に戻され、冷却塔内を循環する。
この過程で循環水中のレジオネラ菌を含む微生物は殺菌され、バイオフィルムの形成は抑制される。
ここで、熱交換器9は水の接触する部分の表面積を拡大するように多数の銅冷却フィンを有しており、導入管9aを介して外部から導入された被冷却水を冷却した後、導出管9bを介して再び外部に導出する。
【0016】
図2は細菌(大腸菌)の生菌数と水中オゾン濃度の関係を示した図である。
細菌の殺菌に必要な溶存オゾンは単位体積当りの細菌数に依存している。
細菌の致死効果は溶存オゾンの濃度Cとオゾン接触時間tの積Ctに依存する。
【0017】
図3は
図2の結果から細菌(大腸菌)の殺菌に必要とされる溶存オゾン濃度と反応時間を単位体積当りの細菌数の関数として表したものである。
この図から単位体積当りの細菌数が分かれば溶存オゾン濃度とオゾンとの接触時間を調整すれば殺菌できることが分かる。
この図では細菌として大腸菌を例にとって殺菌条件を明らかにしたが、単位体積当りの細菌数を既知とした一般細菌に対しても予め上述の殺菌に必要なCt特性を調べておけば溶存オゾン濃度とオゾンとの接触時間を調整すれば殺菌できる。
【0018】
オゾン殺菌条件と熱交換器の銅冷却フィン腐食の関係を調べるため
図4に示した試験装置を用いてバッジ試験を行った。
内容積100Lの三つのポリ容器にそれぞれオゾン溶解水の濃度を0ppm、0.1ppm、1ppmの3条件下に調整しモデル銅冷却フィンをセットし銅冷却フィンの腐食量の変化を3ケ月間にわたって調べ、30年間の使用に耐えるかを確認した。
1ケ月毎に水を入れ替え、試験開始前、並びに試験開始後1ケ月毎に水質並びに一般細菌数の分析を実施した。
【0019】
モデル冷却フィンは材質C1220R、板厚0.6mmの銅板にステンレス管(304A)を貫通させ一体化したものを用いた。
多田電機製TNF-10型オゾナイザでオゾンを発生させた。
水中に溶解したオゾン濃度はエムケーサイエンティフィック社製ポータブル型溶存オゾン濃度計C105型を用いて測定した。
上記条件下で鉄フランジ(SS400,JIS10K15A)に保持したネオプレンゴムパッキンの劣化の度合いも評価した。
【0020】
図5に試験開始後約1ヶ月経過時点の供試ポリ容器中の水質の変化を示す。
図6に試験期間中の供試ポリ容器中の溶存オゾン濃度の変化を示す。
図7に試験期間中の供試ポリ容器中の水温とポリ容器近傍の大気の温度を示す。
【0021】
オゾンを含まない原水噴霧に比較し0.1ppmオゾン水噴霧と1ppmオゾン水噴霧の場合は外観上は腐食が進行している。
銅冷却フィンの腐食減量の経時変化を基に30年間の腐食減量に換算した(
図8、
図9)。
噴霧時間の経過とともに腐食速度は減少し、原水、0.1ppm、1ppm噴霧の各ケースの腐食速度は一定値に収束する傾向を示した。
【0022】
図10に腐食速度の文献値(非特許文献3)との比較を示す。
試験開始から経時的に腐食速度は減少する傾向は本実験の場合と同様であり、本実験結果と文献値は概ね等価であった。
この結果、銅冷却フィンの30年間の腐食量は0.18mm以下であることが推察され厚さ0.6mmの銅冷却フィンは30年間の使用に耐えることが推察された。
【0023】
図11から
図14までは試験期間中の各種水質の指標(pH、電気伝導度、硝酸イオン、酸素消費量)の経時変化を示す。
pHはオゾン注入量が増大とともに低下する(
図11)、電気伝導度と硝酸イオン濃度はオゾン注入量が増大とともに増加する(
図12、
図13)。
【0024】
図15は試験期間中の一般細菌数の変化、即ち、オゾン殺菌の効果を示した図である。原水中の一般細菌数は10
4から10
5個/mLのレベルであった。
0.1ppmオゾン水噴霧の場合は原水中の菌数に比較し1/10以下であり不検出の場合もあった。
1ppmオゾン水噴霧の場合は全期間にわたって一般細菌は検出されず試験期間中の完全な殺菌効果が認められた。
【0025】
上記条件下で鉄フランジ(SS400,JIS10K15A)に保持したネオプレンゴムパッキンの劣化の度合いも評価した結果、供試ネオプレンゴムパッキンはオゾン未処理品、オゾン処理品のいずれも圧縮試験による変形、亀裂、割れ等は生じず0.6MPaの耐圧試験をクリアし劣化は認められなかった。
【0026】
以上の検討結果から、オゾン溶解濃度を0.1 ppmから1ppmの間に制御することにより、効果的な細菌の繁殖抑制と冷却フィン金属の腐食抑制を両立させることが明らかになった。
また、単位体積当りの細菌数を既知とした一般細菌に対しても予め上述の殺菌に必要なCt特性を調べておけば溶存オゾン濃度とオゾンとの接触時間を調整することができる。
オゾン注入の量、注入期間の長さに対応して水質(pH、電気伝導度、等)が変化することが明らかになり、水質の指標を適宜、検出、または連続検出し最適なオゾン注入量を決めることができることが明らかになった。
【0027】
次に、実施の形態1における他の特性等について説明する。
(オゾン溶解特性)
図16に
図1のオゾナイザ1で生成されるオゾンガスの濃度(オゾナイザ出口)とオゾン溶解槽2の出口のオゾン溶解水の溶存オゾン濃度(戻り水A)冷却塔水槽7からポンプ4を経てエゼクタ3へ供給される冷却水槽出口の溶存オゾン濃度(バルク水B)の各濃度変化を記す。
【0028】
(オゾン発生特性)
図17と
図18に供試オゾナイザのオゾン発生特性を示す。
原料ガスの流量と電流を調整することによりオゾン発生量とオゾン濃度を制御することができる。
【0029】
図19はオゾナイザのオゾン発生量を制御するブロック図を示したものであり、タッチパネル21からとして予めパラメータと目標値SVを入力したオゾナイザのPID制御ユニット22に、水質、細菌数、気相オゾン濃度のいずれかを指標モニタ23から測定値PVとして入力し、オゾナイザ電源24にオゾン殺菌が出来かつ余剰オゾンを最小にする制御値MVに対応する制御信号を送りオゾン発生量を制御する。
【0030】
図20は連続試験に先立ち、細菌数の濃度とオゾン溶解濃度を大腸菌を指標とする細菌として選び、最低致死オゾン溶解濃度を調べた結果である。
10
4/mL程度の大腸菌に対して0.013mg/Lの溶存オゾン濃度で殺菌できることを示した。
【0031】
水道水を用いた模擬冷却水系で有効塩素とオゾンの合計濃度が0.5ppm以下に制御された系での大腸菌の殺菌効果を
図21に示す。
オゾン処理前310個/mLがオゾン処理後に0個/mLに殺菌された。
実際の冷却塔循環水系の有効塩素とオゾンの合計濃度が0.5ppm以下に制御された系での一般細菌およびレジオネラ菌の殺菌効果を同じく
図21に示す。
オゾン処理前の一般細菌3.8×10
3個/mL、レジオネラ菌8.0×10 CFU/100mLがオゾン処理後にそれぞれ0個/mL、10未満CFU/100mLと検出下限以下に殺菌された。
【0032】
(水中オゾン濃度と気相オゾン濃度の関係)
図22にオゾン注入後の冷却塔の気相部の気相オゾン濃度の変化を示す。
水中オゾン濃度が一定に保たれれば気相オゾン濃度はやがて一定値になる。
水中オゾン濃度が0.5 ppmの場合、平衡状態になったときの気相オゾン濃度は0.017ppm程度でオキシダントの環境基準0.06ppm以下であった。
図23に冷却水の水槽出口(バルク)のオゾン濃度と冷却塔に供給するオゾン溶解水(戻り水)の濃度と冷却水の水槽出口(バルク)のオゾン濃度の関係を示す。
図22と
図23の関係から冷却塔の所定の位置の気相オゾン濃度をモニタすることで水中(バルクの)オゾン濃度を推定でき、オゾン殺菌に必要とされる溶存オゾン濃度を推定できる。
【0033】
(オゾン臭気)
オゾン処理期間中の冷却塔近傍のオゾン臭気は6段階臭気強度法の臭気強度1(やっと感知できる臭い(検知閾値濃度)程度であり臭気指数規則による問題のないレベル(臭気強度2.5以下)であった。
供試ポリタンクの水面から垂直に50cmの高さでのオゾン濃度はオゾン濃度計で0.01〜0.06ppmの範囲で環境基準以下の濃度であった。
【0034】
図24に冷却塔循環水におけるオゾン殺菌効果の持続についての結果を示す。
溶存オゾン濃度を0.5ppm、接触時間60分でオゾン殺菌を一度施すと一般細菌数は2ケ月程度で生菌数は回復するが、一方、レジオネラ菌は4ケ月経過後も検出限界以下(10CFU/100mL)未満)であった。
【0035】
オゾン殺菌は常時オゾン注入する必要はなく、指標となる水質、細菌数、気相オゾン濃度のいずれかを検出しその指標の値に応じてオゾン注入濃度、オゾン注入時間、オゾン注入とオゾン注入しない時期の間隔を定めればよいことが明らかになった。
【0036】
本実施の形態では水質の指標として溶存オゾン濃度、細菌の指標として一般細菌とレジオネラ菌を例にとりオゾン濃度を制御し金属の腐食を所定内に抑制しつつオゾン注入量を制限し余分のオゾンを使用しない経済的な冷却塔のオゾン殺菌装置および方法を示した。
【0037】
循環水中の水質の指標としてpH、温度、電気伝導率、硝酸イオン、酸素消費量の少なくともいずれかの一つを検出し参考にしてオゾン注入量または及びオゾン注入間隔を決めても同様な効果が得られる。
【0038】
また、本実施の形態では、冷却フィンを有する熱交換器を用いた密閉式冷却塔について説明したが、充填材を用いた開放式冷却塔に適用しても少なくとも殺菌効果については同様の効果が得られる。
【0039】
なお,本発明は,その発明の範囲内において,各実施の形態を自由に組み合わせたり,各実施の形態を適宜,変形,省略することが可能である。