特許第6045480号(P6045480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045480
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】養液栽培における灌水方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20060101AFI20161206BHJP
   A01G 27/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   A01G31/00 601B
   A01G27/00 504B
   A01G27/00 504C
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-243438(P2013-243438)
(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公開番号】特開2015-100313(P2015-100313A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】513251751
【氏名又は名称】株式会社にいみ農園
(74)【代理人】
【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文
(72)【発明者】
【氏名】新美 康弘
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−269439(JP,A)
【文献】 特開平01−262737(JP,A)
【文献】 特開昭62−262925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
A01G 27/00
A01G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前日以前の一定期間の一日当たりの平均値である、日射を受けている状態での栽培作物の平均昼間吸水量Vd(L)と、日射を受けていない状態での栽培作物の基礎代謝に伴う平均夜間吸水量Vn(L)と、平均積算日射量SEa(MJ/m2)とから、次式にて基礎代謝値Eb(W/m2)を算出し、
Eb=[SEa×Vn/(Vd−Vn)]×[106/(60×60×12)]
この基礎代謝値Eb(W/m2)を当日の日射値Ec(W/m2)に加算した修正日射値Ed(W/m2)を積算した修正積算日射量SEd(MJ/m2)に応じて、養液供給量を制御することを特徴とする養液栽培の灌水制御方法。
【請求項2】
予め定められた一定時間の間欠運転を行う灌水ポンプを用い、修正積算日射量SEdが予め定められた一定値に達したときにポンプの運転を開始し、一定時間運転させて養液供給を行うことを特徴とする請求項1に記載の灌水制御方法。
【請求項3】
前日以前の一定期間における、水源から養液槽への給水流量センサーから入力される給水量データと栽培装置系外への排水流量センサーから入力される排水量データとから、日射を受けている状態での栽培作物の一日当たりの平均値である平均昼間吸水量Vd(L)と、日射を受けていない状態での栽培作物の基礎代謝に伴う一日当たりの平均値である平均夜間吸水量Vn(L)とを算出し、前日以前の一定期間における日射量センサーから入力される日射データから、一日当たりの平均値である平均積算日射量SEa(MJ/m2)を算出し、次いで次式にて基礎代謝値Eb(W/m2)を算出し、
Eb=[SEa×Vn/(Vd−Vn)]×[106/(60×60×12)]
日射量センサーから入力される当日の日射データである日射値Ec(W/m2)に基礎代謝値Eb(W/m2)を加算した修正日射値Ed(W/m2)から修正積算日射量SEd(MJ/m2)を算出し、この修正積算日射量が予め定められた一定値に達したときに、信号を出力し、予め定められた一定時間の間欠運転を行う灌水ポンプの運転を開始させ、一定時間運転させて養液供給を行い、養液供給量を制御することを特徴とする養液栽培用灌水制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は養液栽培おいて、栽培作物の灌水方法に関し、特に栽培作物に対する日射量に応じて養液供給量を制御する灌水方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
養液栽培は固形培地を使用しない水耕栽培と培地を使用する固形培地耕とがあるが、何れの栽培においても、栽培作物へ養液を供給する灌水の制御が重要である。そして、作物の必要とする養液の供給量は、作物の生育状況や温度、湿度、日射条件などの気象環境の影響を受ける。特に、日射条件は作物の生育や代謝に大きく影響するため、作物が必要とする養液量に大きな影響を与える。
【0003】
そのため養液栽培においては、日射量に応じて、作物への養液供給量を制御して灌水を行い、栽培作物に適正な養液の吸水を行わせることが知られている。例えば、特許文献1には環境条件を検知するセンサーとして、温度センサーや湿度センサーに加えて日射量センサーを用いて養液の供給量を増減する方法が示されている。さらに、特許文献2にも積算日射量により給液量を補正して適正化する装置が示されている。
【0004】
また、特許文献3には日射量に対する必要な養液量が一次関数で表されることが示されている(特許文献3の第2図等参照)。この数式(図)から、日射量がなくとも養液が必要なことは示唆されてはいるが、直線の傾きや切片の具体的な意味やその数値の求め方については記載されていない。
【0005】
植物である栽培作物は、光と水と二酸化炭素とで光合成を行っており、日射量が多ければより多くの水を必要とするため、上記のように、作物への養液の供給量を制御する灌水方法には、日射量を考慮することが知られている。しかし、日射のない夜間でも作物は吸水することは明らかであり、夜間の養液供給量が不足すると、気象環境によっては作物が萎れることがある。このように、作物は光合成時だけでなく、日射を受けなくとも代謝を行っており、この代謝(以下、基礎代謝と称する)には一定量の養液が必要である。そのため、単純に測定された日射量から養液供給量を決定するような灌水方法では、作物の品質、収量等をコントロールするには不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61−67421号公報
【特許文献2】特許第3601098号公報
【特許文献3】特開昭62−262925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、測定された日射量に応じて養液の供給量の増減を行う養液栽培の灌水制御方法において、栽培作物により適正な吸水を行わせ、品質、収量等を十分にコントロールするために、日射を受けない時の作物の代謝である基礎代謝を取り入れた灌水制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の灌水制御方法は、前日以前の一定期間の一日当たりの平均値である、日射を受けている栽培作物の平均昼間吸水量Vd(L)と、日射を受けていない栽培作物の基礎代謝に伴う平均夜間吸水量Vn(L)と、平均積算日射量SEa(MJ/m2)とから、次式にて基礎代謝値Eb(W/m2)を算出し、
Eb=[SEa×Vn/(Vd−Vn)]×[106/(60×60×12)]
この基礎代謝値Eb(W/m2)を当日の日射値Ec(W/m2)に加算した修正日射値Ed(W/m2)を積算した修正積算日射量SEd(MJ/m2)に応じて、養液供給量を制御することを特徴とするものである。
【0009】
尚、上記の昼間とは6時から18時までの12時間であり、夜間とは18時から翌朝6時まである。この場合、夏期と冬季とでは日の出、日の入り時刻に差があるが、早朝や夕刻では日射強度が低く、昼間と夜間を上記時刻で12時間ずつに分けても誤差は無視できる。また、上記平均積算日射量SEaは昼間における一日当たり(12時間)の日射エネルギー(エネルギー単位はMJ/m2)として、日射センサーにて検知した日射値Ec(照度単位はW/m2)を12時間積算し、前日以前の一定期間の毎日の値を平均したものである。従って、前記の基礎代謝値Ebの算出式の係数106/(60×60×12)は12時間(60×60×12秒)当たりの積算値のエネルギー単位のMJから、毎秒当たりのエネルギー効率の単位であるWに換算するための係数で、1W=1J/秒と1MJ=106Jとから導かれるものである。ここで、一定期間としては5日から15日程度の期間が好ましい。また、養液供給量、吸水量は栽培作物の圃場(栽培ベッド)単位毎の数値である。このように、基礎代謝値Ebとは、栽培作物が日射のない夜間において行う基礎代謝のエネルギーを、栽培作物の昼間における吸水量と夜間における吸水量とを用いて、昼間において栽培作物の受ける日射エネルギーである積算日射量から算出した概念であり、前記の算出式においては、日射のない夜間における平均夜間吸水量Vnと、日射を受ける昼間における平均昼間吸水量Vdから平均夜間吸水量Vnを減算した値である(Vd−Vn)との比Vn/(Vd−Vn)を、平均積算日射量SEaに乗じ、夜間吸水量の基となる基礎代謝値Ebを算出し、さらに算出式の係数にて単位を同一にして、日射値Ecの照度単位(W/m2)と同一の単位で表したものである。本発明の灌水制御方法では、日射値Ecに基礎代謝値Ebを加算した修正日射値Edを積算した修正積算日射量SEdによる養液供給量の制御を行うものであり、日射を受けない時の作物の代謝である基礎代謝を取り入れた灌水制御方法となるものである。
【0010】
上記のように、養液供給量の制御は修正積算日射量SEdに応じて行われるが、この養液供給量の制御は、予め定められた一定時間の間欠運転を行う灌水ポンプを用い、修正積算日射量SEdが予め定められた一定値に達したときにポンプの運転を開始し、一定時間運転させて養液供給を行い制御することが好ましい。
【0011】
そして、前日以前の一定期間における、水源から養液槽への給水流量センサーから入力される給水量データと栽培装置系外への排水流量センサーから入力される排水量データとから、日射を受けている状態での栽培作物の一日当たりの平均値である平均昼間吸水量Vd(L)と、日射を受けていない状態での栽培作物の基礎代謝に伴う一日当たりの平均値である平均夜間吸水量Vn(L)とを算出し、前日以前の一定期間における日射量センサーから入力される日射値データから、一日当たりの平均値である平均積算日射量SEa(MJ/m2)を算出し、次いで次式にて基礎代謝値Eb(W/m2)を算出し、
Eb=[SEa×Vn/(Vd−Vn)]×[106/(60×60×12)]
日射量センサーから入力される当日の日射データである日射値Ec(W/m2)に基礎代謝値Eb(W/m2)を加算した修正日射値Ed(W/m2)から修正積算日射量SEd(MJ/m2)を算出し、この修正積算日射量が予め定められた一定値に達したときに、信号を出力し、予め定められた一定時間の間欠運転を行う灌水ポンプの運転を開始させ、一定時間運転させて養液供給を行い、養液供給量を制御する養液栽培用灌水制御装置も提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、日射を受けない夜間における作物の代謝である基礎代謝値の概念を取り入れ、作物の受ける単純な日射量の積算値でなく、修正積算日射量SEdにより養液供給量を制御するため、より適切な養液の供給ができるようになった。この修正積算日射量SEdによれば、昼間夜間を問わず養液供給量を制御することができる。すなわち、日射量のない夜間でも、修正積算日射量SEdが一定値に達したときに養液供給を行うことで養液制御が可能となる。
【0013】
さらに、夜間における作物の代謝活動は温度、湿度や作物の生育段階により異なり、必要とする養液量はそれらに従い変動する。そのため前夜の吸水量の値に基づく基礎代謝量では、日々の変動が大きく値がばらついてしまう。しかし、本発明においては前日以前のある一定期間の平均値をとることで、ばらつきなく、季節による温度等の栽培環境の変化も順次取り入れることができ、さらに作物の生育段階に応じて、順次変化させて行くこともできる。したがって、このような基礎代謝値により修正された修正積算日射量SEdにより、昼間、夜間を問わず養液供給量を制御することで、作物に適正な量の養液を供給でき、作物にストレスも与えないため、その品質、収量の向上が図られると共に安定させることができる。
【0014】
また、本発明の灌水制御装置では、初期条件を設定し入力すれば、センサーにより給水量データと排水量データ及び日射量データを測定し、それらのデータに基づき演算を行い、灌水ポンプの運転制御を行い、養液供給量を制御することができ、環境条件が変動しても適正な養液供給を行う灌水の自動化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例であるNFT方式栽培装置の灌水制御のフロー図である。
図2】同上における灌水制御装置の構成図である。
図3】間欠運転を行う灌水ポンプの作動説明図である。
図4】実施例である固形培地耕かけ流し方式の灌水制御のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を示し詳細に説明を行う。
【0017】
図1は本発明をNFT方式の養液栽培に適用した実施例の灌水制御のフロー図であり、栽培作物10を支持固定する栽培ベッド1に、養液槽2から灌水ポンプ4により養液供給を行い、灌水口7より栽培ベッド1に供給された養液は、回収管11を経由して養液槽2に回収される。栽培ベッド1は灌水口7より回収管入口に向けて緩い勾配(1/100程度)で傾斜しており養液の流れがスムーズに行われるようになっている。回収配管11より分岐した排水管8も設置されているが、本実施例では通常はバルブ9を閉鎖して運転を行い、養液に異常が発生した時や栽培ベッド内の清掃に際して、バルブ9を開いて栽培ベッド1の内部の養液を排水するものである。
【0018】
養液槽2には、水位検知バルブ6が設けられ、栽培作物10による吸水により減少した養液を、水源3より給水補給し、養液槽2に貯留される養液量は常に一定に保たれるようになっている。ここで、水源3よりの給水量は流量センサー21にて検知され、灌水制御装置100に給水量データ信号31が入力される。また、流量センサー21から出力される給水量データ信号34は施肥制御装置200に入力され、流量センサー21にて検出された給水量に見合う施肥量が算出され、運転制御信号36として出力される。この運転制御信号36により、液肥槽12、13にそれぞれ接続した施肥ポンプ14、15の運転制御が行われ、それぞれ施肥口16、17から養液槽2に必要な施肥量の液肥が注入される。この実施例では二つの液肥槽12、13を示したが、栽培作物や栽培条件により必要とされる液肥の数に応じて、液肥槽、施肥ポンプの数は適宜設定することができ、施肥制御装置200により施肥量は制御される。
【0019】
灌水制御装置100には、前記した給水量データ信号31に加え、排水流量センサー22にて検知される排水量データ信号32及び日射量センサー23にて検知される日射値データ信号33が入力される。灌水制御装置100では、日々の給水量データから排水量データを減算し、昼間及び夜間における栽培作物の一日当たりの昼間吸水量及び夜間吸水量を算出し、これらの日々におけるデータから、前日以前の予め定められた一定期間における一日当たりの平均値を算出し、平均昼間吸水量Vd(L)及び平均夜間吸水量Vn(L)を算出する。この場合、一定期間としては、5〜15日位の間で適宜設定することができる。この期間が5日未満では変動が大きくなることがあり、16日以上では気候の変化の取入れが十分でなくなる。また、図1に示す実施例では前記したように、通常時では排水流量は0であり、異常時に排水を行った場合に、排水量データが算入され、吸水量が算出される。
【0020】
尚、栽培作物の吸水するのは、水源3からの給水される水だけでなく、液肥も含めた養液であるが、施肥量はこの給水量に応じて、制御されており、基礎代謝値の算出に当たっては、給水量データと排水量データから算出される吸水量で算出することができる。
【0021】
また灌水制御装置100では、日射量センサー23から入力される日射値データ33から、前日以前の予め定められた一定期間における一日当たりの平均値である平均積算日射量SEa(MJ/m2)を算出し、次いで次式にて基礎代謝値Eb(W/m2)を算出する。
Eb=[SEa×Vn/(Vd−Vn)]×[106/(60×60×12)]
以上のように、この基礎代謝値は前日以前の予め定められた一定期間における平均値でもある。次いで、この基礎代謝値Eb(W/m2)を日射量センサー23から入力される当日の日射データである日射値Ec(W/m2)に加算した修正日射値Ed(W/m2)から修正積算日射量SEd(MJ/m2)を算出し、この修正積算日射量が予め定められた一定値に達したときに、運転制御信号35を出力し、予め定められた一定時間の間欠運転を行う灌水ポンプ4の運転を開始させる。
【0022】
灌水ポンプ4の運転により、栽培作物10を支持固定する栽培ベッド1に、養液槽2から灌水ポンプ4により養液供給が行われ、灌水口7より栽培ベッド1に供給された養液は、回収管11を経由して養液槽2に回収される。運転制御信号35により運転を開始する灌水ポンプ4は、予め定められた一定時間のみ運転を行うため、養液は修正積算日射量に応じた供給量が供給されることになる。
【0023】
図2は灌水制御装置100の構成図であり、中央演算部(CPU)101、設定値入力部105、表示部107及び出力ドライバー102とから構成されている。中央演算部101は、給水流量センサー21、排水流量センサー22及び日射量センサー23から、それぞれ入力される給水流量値データ31、排水流量値データ32及び日射値データ33から、前記したように平均昼間吸水量Vd及び平均夜間吸水量Vnを算出し、さらに基礎代謝値Eb(W/m2)を算出し、ついで修正積算日射量SEd(MJ/m2)を算出する。そして、設定値入力部105から予め入力されたポンプ運転設定日射量SEs(MJ/m2)と照合し、修正積算日射量SEd(MJ/m2)が設定日射量SEs(MJ/m2)に達すると、運転制御信号35の開始信号を出力ドライバー102からマグネットスイッチ103に入力し、灌水ポンプ4の運転を開始させる。この灌水ポンプ4の運転は、予め設定値入力部105より入力されたポンプ運転設定時間t0を経過すると、運転制御信号35の停止信号がマグネットスイッチ103に入力され停止する。
【0024】
この灌水ポンプ4の運転動作を示したのが図3である。(A)は横軸の時刻に対し縦軸を延べ修正積算日射量としたグラフであり、時刻の経過に伴い順次増加する。(B)は間欠運転する灌水ポンプ4の運転ピッチごとの修正積算日射量のグラフであり、修正積算日射量がポンプ運転設定日射量SEsに達すると、(C)に示すように灌水ポンプ4の運転が開始される。そして、予め入力設定されたポンプ運転設定時間t0を経過すると灌水ポンプ4の運転が停止される。以下同様に修正積算日射量が設定日射量SEsに達するごとに運転を開始する間欠運転が行われる。日射のない夜間でも、修正積算日射量は基礎代謝相当分が積算されるため、設定日射量SEsに達するとポンプの運転を開始し養液が栽培ベッドに供給される。(D)はポンプ運転の延べ時間を示したものである。
【0025】
図2に示すように灌水制御装置100においては、設定値入力部105から入力されるのは設定内容104に示すような設定値であり、前記したポンプ運転設定日射量SEs、ポンプ運転設定時間t0を入力し、灌水を制御する。一方、基礎代謝値は中央演算部101にて、入力される各データから算出されるものではあるが、基礎代謝値を算出するためのデータは、前日以前の予め定められた一定期間におけるデータである。そのため、本発明の灌水制御方法に基づく栽培を開始する際には、前日以前のデータに相当する仮の数値として初期基礎代謝値を入力して、その値を基に仮の修正積算日射量を算出させ、灌水ポンプの運転制御を行うことができる。この初期基礎代謝値としては、これまでの栽培経験から把握している昼間と夜間の吸水量と日射値データとから前記した式に基づき計算し求めることができる。また、この初期基礎代謝値に替えて、この把握している平均の吸水量と平均の日射値データを仮入力して、中央演算部101にて仮の修正積算日射量を算出することでもよい。
【0026】
本発明の方法や装置では、前日以前の一定期間のデータを処理して、平均値を算出し、修正積算日射量を算出している。そのため、仮の修正積算日射量を算出するための初期基礎代謝値が、前日以前の予め定められた一定期間の平均値をベースにした基礎代謝値と多少ずれていても、数日のうちに修正される。このことは、栽培経験に基づく吸水量を用いても同様に修正される。
【0027】
本発明の方法、装置の実施としては、以上説明を行った図1に示したNFT方式において、トマトを栽培作物10とした場合、特に限定されるものではないが、栽培ベッドでは一カ所の灌水口7に対して、約100株程度を植え付け、毎分5〜10Lの養液吐出量とし、ポンプ運転設定時間は5〜10分で、日射がある晴天の昼間において、ポンプ運転回数が10〜20回となるように、ポンプ運転設定日射量SEsやポンプ運転設定時間t0を設定し運転することが好ましい。
【0028】
図4には、本発明の灌水制御方法、装置を固形培地耕かけ流し方式に適用した実施例を示した。本実施例においては、栽培作物10をロックウールなど固形培地5に植え付け、灌水口7を一株毎に取り付けて、栽培作物10に養液を供給し、余剰の養液は排水管8にてすべて系外に排出する灌水方法である。したがって、栽培作物の吸水量は、給水流量センサー21にて検知される給水流量から、排水流量センサー22にて検知される排水流量を減算して算出される。その他の各構成の作用等は図1での説明と同様である。
【0029】
以上詳細に説明したように、本発明の灌水制御方法、装置は養液栽培において灌水の自動化を実現すると共に、栽培作物の品質、収量の向上にも寄与するものである。
【符号の説明】
【0030】
1 栽培ベッド
2 養液槽
3 水源
4 灌水ポンプ
5 固形培地
6 水位検知バルブ
7 灌水口
8 排水管
9 排水バルブ
10 栽培作物
11 回収管
12、13 液肥槽
14、15 施肥ポンプ
16、17 施肥口
21 給水流量センサー
22 排水流量センサー
23 日射量センサー
31、34 給水量データ信号
32 排水量データ信号
33 日射値データ信号
35、36 運転制御信号
100 灌水制御装置
101 中央演算部
102 出力ドライバー
103 マグネットスイッチ
104 設定内容
105 設定値入力部
106 表示内容
107 表示部
200 施肥制御装置
図1
図2
図3
図4