特許第6045501号(P6045501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045501
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】多数の摩擦特性を有する作動ケーブル
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20161206BHJP
【FI】
   A61B34/35
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-538773(P2013-538773)
(86)(22)【出願日】2011年10月28日
(65)【公表番号】特表2014-505495(P2014-505495A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】US2011058386
(87)【国際公開番号】WO2012074646
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2014年10月9日
(31)【優先権主張番号】12/946,040
(32)【優先日】2010年11月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510253996
【氏名又は名称】インテュイティブ サージカル オペレーションズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ,セオドアー ダブリュ
【審査官】 毛利 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0168721(US,A1)
【文献】 特表2008−519665(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/096950(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のケーブル部分と第1の構成部品との間に第1の摩擦が存在するように前記第1の構成部品と係合する、前記第1のケーブル部分と、
結合素子によって前記第1のケーブル部分の第1の端部に動作的に結合される第1の端部を有する第2のケーブル部分とを含み、
前記結合素子は、前記第1のケーブル部分内の潤滑剤を前記第2のケーブル部分から隔離し、前記第2のケーブル部分は、前記第2のケーブル部分と第2の構成部品との間に第2の摩擦が存在するように前記第2の構成部品と係合し、前記第2の摩擦は、前記第1の摩擦よりも大きい、
外科装置。
【請求項2】
前記第1のケーブル部分は、シースを通じて延びる腱を含む、請求項1に記載の外科装置。
【請求項3】
前記腱は、高密度ポリエチレンを含む、請求項2に記載の外科装置。
【請求項4】
前記シースは、ステンレス鋼を含む、請求項2に記載の外科装置。
【請求項5】
前記第2のケーブル部分は、アラミドポリマを含む、請求項1に記載の外科装置。
【請求項6】
前記第2のケーブル部分は、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビソキサゾール)を含む、請求項1に記載の外科装置。
【請求項7】
前記第2のケーブル部分は、解放可能な結合素子を使用して、前記第1のケーブル部分に動作的に結合される、請求項1に記載の外科装置。
【請求項8】
前記第1のケーブル部分は、端部作動体に接続されるよう構成される、請求項1に記載の外科装置。
【請求項9】
前記第2の構成部品は、動力キャプスタンである、請求項1に記載の外科装置。
【請求項10】
前記第1の摩擦は、0.10未満の関連する摩擦係数を有する、請求項1に記載の外科装置。
【請求項11】
前記第2の摩擦は、0.3より大きい関連する摩擦係数を有する、請求項1に記載の外科装置。
【請求項12】
シースと、
該シースを通じて延びる第1の腱とを含み、第1の摩擦が前記シースと前記第1の腱との間に存在し、
第2の摩擦が第2の腱と駆動機構の表面との間に存在するように、前記駆動機構と係合される前記第2の腱を含み、前記第2の摩擦は、前記第1の摩擦よりも大きく、前記第2の腱は、前記シースと前記第1の腱との間の潤滑剤を隔離する結合素子によって前記第1の腱に動作的に結合される、
外科装置。
【請求項13】
前記シースは、ステンレス鋼を含み、前記第1の腱は、合成ポリマを含む、請求項12に記載の外科装置。
【請求項14】
前記シースと前記第1の腱との間に潤滑剤を更に含む、請求項12に記載の外科装置。
【請求項15】
前記第1の腱は、高密度ポリエチレンを含む、請求項12に記載の外科装置。
【請求項16】
前記第2の腱は、アラミドポリマを含む、請求項12に記載の外科装置。
【請求項17】
前記第2の腱は、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビソキサゾール)を含む、請求項12に記載の外科装置。
【請求項18】
前記駆動機構は、動力キャプスタンである、請求項12に記載の外科装置。
【請求項19】
前記結合機構は、前記第2の腱に関連付けられる移動を前記第1の腱に適用するよう構成される、請求項12に記載の外科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルと、端部作動体と、ケーブルを介して端部作動体を作動させる後端機構とを有する外科器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット制御される器具が非侵襲的な外科手術中に使用されることが多い。外科システムにおける器具のための既存の構造は、器具の遠位端に取り付けられるピンセット、メス、ハサミ、ワイヤループ、又は焼灼器具のような、端部作動体又は工具を含む。ここでは、器具の遠位端を器具の主管とも呼ぶ。外科手術中、端部作動体を作業現場で患者の体内に位置付けるために、小さな切開又は患者の自然の開口部を通じて端部作動体及び主管の遠位端を挿入し得る。ケーブル又は類似の構成であり得る腱(tendon)は、器具の主管を通じて延び、端部作動体を伝達及び作動機構に接続する。ここでは、伝達及び作動機構を後端機構と呼び得る。外科器具のロボット操作のために、器具の近位端にある後端機構は、腱を引き寄せるためにモータ駆動され、それによって、端部作動体を移動させ或いはその他の方法で作動させる。器具を制御するために、外科医又は他の使用者のためのユーザインターフェースをもたらすよう、演算システムを使用し得る。
【0003】
特定のロボット制御される外科器具は、患者の消化管の一部のような自然の内腔に追従するよう、或いは、直線アプローチと比べられるときに手術部位へのアプローチ方向の改良をもたらす湾曲ガイド管を通じた挿入のために、必要に応じて屈曲し得る可撓な主管を有する。直接的に挿入されようが或いはガイドを通じて挿入されようが、可撓な外科器具の主管は、外科手術中に異なり得る並びに手術毎に異なり得る場所に多数の屈曲部を有するのが一般的である。これらの屈曲部で、器具を通じて走る腱は、器具の主管の内壁を擦り、互いに擦れ合う。これらの屈曲部の故に生成される摩擦は、主管の遠位端にある端部作動体を作動させるよう腱を移動させるのに必要とされる力を増大させ得る。加えて、これらの摩擦力は、低い(即ち、非ゼロ)速度よりも、ゼロ速度でより高い傾向があり、腱荷重の変化に応答して「スティックスリップ運動」(“stick-slip motion”)と一般的に呼ばれるものをもたらす。このスティックスリップ運動は、端部作動体の小さな移動の滑らかなロボット制御を達成するのを困難にする。大きな摩擦は、小さな直径の可撓外科器具を構成するのをより困難にもする。何故ならば、機械的構成は、適用される大きな力に十分に耐え得るよう頑強に設計されなければならないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの用途において、端部作動体の制御に対する摩擦の否定的な影響を低減させるよう最小の摩擦を有する端部作動体を制御するために作動ケーブルを提供するのが望ましい。しかしながら、被駆動ケーブルを保持するために摩擦を使用するキャプスタン駆動装置では、キャプスタン表面と、ケーブルとキャプスタン表面との間の結合を維持するよう比較的高い摩擦をもたらすケーブルとの間に、界面を設けるのが望ましい。既存のシステムは、以下の2つの要件の1つに取り組むのが典型的である。低摩擦ケーブルを使用することは、端部作動体の制御に対する摩擦の否定的な影響を低減させるが、低摩擦ケーブルの滑りの故に、キャプスタンが適用し得る力を減少させる。代替的に、高摩擦ケーブルを使用することは、端部作動体の制御を妨げるが、高摩擦ケーブルの滑りの減少の故に、キャプスタンが適用し得る力を増大させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、端部作動体の制御を可能にする十分な低摩擦並びにケーブルを適切に駆動させるケーブルとキャプスタン表面との間の有意な摩擦をもたらすケーブルを提供する器具が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】2つの異なる摩擦特性を有するケーブルを含む本発明の実施態様に従った外科器具を示す概略図である。
図2】低摩擦材料によって部分的に覆われた本発明の実施態様に従ったケーブルを示す概略図である。
図3】2つの異なる材料によって覆われた本発明の実施態様に従ったケーブルを示す概略図である。
図4】互いに結合し合う2つの部分を有するケーブルを含む本発明の実施態様に従った外科器具を示す概略図である。
図5】2つのケーブル部分を解放可能に結合する本発明の実施態様に従った結合機構を示す概略図である。
図6】可撓な装置内の多数の腱を解放可能に結合する本発明の他の実施態様に従った結合機構を示す概略図である。
図7A】器具内の腱に対する緊張を維持するためにバネ及びキャプスタン摩擦を使用する本発明の実施態様に従った外科器具の一部を示す概略図である。
図7B】器具内の腱に対する緊張を維持するためにバネ及びキャプスタン摩擦を使用する本発明の実施態様に従った外科器具の一部を示す概略図である。
図8】多数の腱を有する2つの器具部分を解放可能に結合する結合機構を使用する本発明の実施態様に従った可撓な外科器具の一部を示す概略図である。
図9】シースとシースを通じる腱を使用する可撓なケーブルの一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
記述を通じて、類似の素子を特定するために、類似の参照番号を使用し得る。
【0008】
ここに記載するシステム及び方法は、ケーブルと、端部作動体と、ケーブルを介して端部作動体を作動させる後端機構とを有する、外科器具に関する。記載の実施態様において、ケーブルは、異なる摩擦特性を有する2つの異なる材料を使用して形成される。第1のケーブル部分は、端部作動体に接続され、端部作動体の所望の制御をもたらす低摩擦特性を有する。第2のケーブル部分は、後端機構に接続され、後端機構によるケーブルに対する有意な力の適用を許容する高摩擦特性を有する。具体的には、第2のケーブルは、キャプスタンのような駆動機構の表面と係合されるときに高摩擦特性をもたらす。「ケーブル」又は「ケーブル部分」に関して多くの特徴及び実施態様を記載する。しかしながら、ケーブルは、引張力を伝達し得る「張力素子」又は「腱」の代表であり、そのような構成部品は、様々なケーブル、ワイヤ、ロッド、ファイバ、スレッド等であり得ることが理解されるべきである。当業者は、そのような張力素子/腱が、一部の場合には押込み力も伝達し得ることを理解するであろう。
【0009】
図1は、2つの異なる摩擦特性を有するケーブルを含む本発明の実施態様に従った外科器具100を描写している。外科器具100は、低摩擦特性を有する第1の長さ方向のケーブル部分102と、駆動機構の表面と係合するときに高摩擦特性を有する長さ方向の第2の長さ方向のケーブル部分104とを含む。具体的な実施態様において、ケーブル部分102は、高密度ポリエチレン(HDPE)のような合成ポリマを使用して製造される。具体的な実施において、ケーブル部分102は、Dyneema(登録商標)を使用して製造される。記載する実施態様において、ケーブル部分104は、ケーブル部分102のために使用される材料よりも高い摩擦係数を有する異なる合成材料を使用して製造される。ケーブル部分104のための例示的な材料は、(Kelvar(登録商標)のような)アラミドポリマ又はPBO(ポリ(p−フェニレン−2、6−ベンゾビソキサゾール))((poly(p-phenylene-2,6-benzobisoxazole))を含む。
【0010】
結合素子106が、ケーブル部分102とケーブル部分104とを動作的に結合する。結合素子106は、2つの長さ方向のケーブル部分102及び104の端と端をしっかりと接合するあらゆる種類の結合機構である。結合素子106の実施例は、シンブル(thimble)、アイ(eye)、クリンプ素子等を含む。代替的な実施態様において、ケーブル部分102は、2つのケーブル部分を一体に組継ぎすることによって或いは2つのケーブル部分を互いに編組む/編込むことによって、ケーブル部分104に動作的に結合される。他の実施態様において、ケーブル部分102は、ノット又は2つのケーブル部分を互いに固定する類似の方法を使用して、ケーブル部分104に動作的に結合される。
【0011】
1つの特徴において、ケーブル部分102の遠位端部は、遠位リンク又は外科的端部作動体108のような、器具の遠位構成部品に接続され、遠位構成部品は、組織の切断、除去、又は破壊、医療装置の挿入、焼灼、血管封止、縫合等のような、様々な処置を遂行し得る。端部作動体に関して多くの特徴及び実施態様を記載するが、そのような端部作動体は、連鎖内のリンク、手関節機構、端部作動体等のような、様々な外科器具の遠位構成部品の代表であることが理解されるべきである。図1の実施態様において、ケーブル部分102の低摩擦特性は、スティックスリップ運動(stick-slip motion)を概ね回避することによって、端部作動体の所望の制御をもたらす。ある具体的な実施において、ケーブル部分102は、図9を参照して以下に記載するように、シースを通じる潤滑された腱(張力素子)を含む。
【0012】
高度に関節式の可撓器具において、典型的にはキャプスタン摩擦と呼ばれる屈曲の全ての総合的な集合摩擦も器具の性能を大いに低下させ、摩擦係数と全巻き角との積の指数関数として近似されるのが典型的である。そのようなキャプスタン摩擦は、ケーブルがその終端地点までの蛇行経路に追従するよう、ケーブルが接合遠位リンク内のフェアリードのような1つ又はそれよりも多くの通路を通じて或いは1つ又はそれよりも多くのプーリを越えて経路指定されることに由来し得る。ある具体的な実施態様において、遠位ケーブル部分102は、効果的な力伝達を可能にするよう、その動摩擦係数未満の静摩擦係数及び十分に低い動摩擦係数の両方を有する。図1に示すように、2つの構成部品116及び118がケーブル部分102と相互作用し、その相互作用の結果として摩擦を生成する。様々な実施態様において、構成部品116及び118は、駆動機構、キャプスタン、プーリ、案内通路、又はケーブル部分102と動作的に相互作用する他の機構である。
【0013】
ケーブル部分104の近位端部は、後端機構110に接続され、後端機構110は、キャプスタン112と、張力バネ114とを含む。ケーブル部分104は、キャプスタン112の周りを包み、ケーブル部分104の表面とキャプスタン112の表面との間の摩擦によって所定の場所に保持される。張力バネ114は、ケーブル部分104に対する張力を維持する。記載の実施態様において、キャプスタン112は、図7A及び7Bに関して以下に記載するような、動力キャプスタンである。代替的な実施態様において、キャプスタン112は、任意の種類の駆動機構、摩擦駆動装置、又は摩擦を使用する他の駆動機構と交換される。
【0014】
外科器具100の具体的な実施は、多数のケーブル部分104に接続される多数のキャプスタン112を有する単一の後端機構110を含み、多数のケーブル部分104は、多数のケーブル部分102と、対応する多数の端部作動体とに接続される。この実施において、多数のケーブル部分102は、個別に外装され、次に、束にされ、単一の主管を通じて経路指定される。このキャプスタン及びケーブルの組み合わせの特徴は、(2008年9月30日に出願され、米国特許出願公開第2010/0082041A1号として公開された、”Passive Preload and Capstan Drive for Surgical Instruments”という名称の)米国特許出願第12/286,644号に開示されており、それを参照としてここに援用する。
【0015】
以下に議論するように、ケーブル部分102の特定の実施態様は、潤滑剤が腱とシースとの間に配置されるように、シースを通じて経路指定される腱を使用する。潤滑剤は、ケーブル部分102内で端部作動体の制御のために望ましい低摩擦を維持する。しかしながら、ケーブル部分104のそのような潤滑は、ケーブルとキャプスタン112の表面との間の摩擦の減少の潜在性の故に望ましくない。特定の実施態様において、ケーブル部分102及び104の間の結合素子106は、外科器具100の動作が望ましい場所でケーブル部分102内の潤滑剤を隔離することによって、外科器具100の適切な動作を維持するのを助ける。
【0016】
図2は、本発明のある実施態様に従ったより低い摩擦材料204(「被覆材料」とも呼ぶ)によって部分的に覆われたケーブル202を描写している。この実施態様において、ケーブル202は(キャプスタンと相互作用するときに望ましいような)高い摩擦特性を有し、材料204は(外科器具を作動させるときに望ましいような)より低い摩擦特性を有する。ある具体的な実施態様において、材料204は、キャプスタン表面と接触しない領域においてケーブル202を覆う編組み材料である。その代わりに、より高摩擦のケーブル202がキャプスタン表面と接触する。この実施態様において、ケーブル202は、Kelvar(登録商標)又はPBOを使用して製造され、材料204は、Dyneema(登録商標)のような、HDPEを使用して製造される。代替的な実施態様において、ケーブル202は、Dyneema(登録商標)を使用して製造され、材料204は、Kelvar(登録商標)又はPBOを使用して製造される。この代替的な実施態様において、ケーブル204の一部は、キャプスタン表面と接触する。ある具体的な実施において、材料204は張力の下にあり、それは材料204にケーブル202に対して圧力を適用させる。この圧力は材料204とケーブル202との間の滑りの可能性を低減させる。
【0017】
図3は、本発明の実施態様に従った第1の材料304と第2の材料306とによって覆われたケーブル302を描写しており、そこでは、材料304は高い摩擦特性を有し、材料306は低い摩擦特性を有する。材料304及び306を「被覆材料」とも呼ぶ。この実施態様において、材料304はキャプスタン表面と接触し、材料306は端部作動体又は他の遠位器具構成部品を作動させる。材料304及び材料306は、界面地点308で接し、界面地点308は、2つの材料を動作的に結合する。2つの材料を編組む/編込むことによって、2つの材料を組継ぎすることによって、及び、材料を動作的に結合する結合素子を使用すること等によって、材料304及び材料306を結合し得る。具体的な実施態様において、材料304は、Kevlar(登録商標)又はPBOであり、材料306は、Dyneema(登録商標)のような、HDPEであり、ケーブル302は、PBOのような、高強度及び高弾性率を有する材料で製造される。
【0018】
図4は、本発明のある実施態様に従った外科器具400を描写しており、外科器具400は、互いに解放可能に接続される2つの部分を有するケーブルを含む。図4に示す外科器具400は、図1の実施態様と類似しているが、それは解放可能な結合素子を含む。外科器具400は、低摩擦特性を有する第1のケーブル部分402(第1の腱とも呼ぶ)と、キャプスタン表面と係合するときに高摩擦特性を有する第2のケーブル部分404(第2の腱とも呼ぶ)とを含む。ある具体的な実施態様において、ケーブル部分402は、Dyneema(登録商標)のような、合成ポリマを使用して製造される。その実施態様において、ケーブル部分402は、より高い摩擦係数を有する異なる合成材料を使用して製造される。ケーブル部分404のための例示的な材料は、(Kevlar(登録商標)のような)アラミドポリマ又はPBOを含む。
【0019】
ケーブル部分402は、その近位端部に接続される結合素子408を有する。ケーブル部分404は、その遠位端部に接続される結合素子406を有する。結合素子406及び408は、ケーブル部分402及び404を動作的に結合し、それらは互いに解放可能に係合し合うように構成される。ここで議論するように、結合素子406及び408は、ケーブル部分402に対する動作及び力をケーブル部分402に加え、或いは、その逆を行う。結合素子406及び408は、それぞれ、ケーブル部分404及び402にしっかりと取り付けられ或いはその他の方法で接続される。
【0020】
ケーブル部分402の遠位端部は、端部作動体410に接続され、端部作動体410は、組織の切断、除去、又は破壊、医療装置の挿入、焼灼、血管封止、縫合等のような、様々な外科処置を遂行し得る。図4の実施態様において、ケーブル部分402の低摩擦特性は、ケーブル部分402が器具を通じて延びるときの他の器具構成部品に関するスティックスリップ運動を概ね回避することによって、端部作動体の所望の制御をもたらす。ある具体的な実施態様において、ケーブル部分402は、図9に関して以下に議論するように、シースを通じる潤滑された腱を含む。
【0021】
ケーブル部分404の遠位端部は、後端機構412に接続され、後端機構412は、キャプスタン414と、張力バネ416とを含む。代替的な実施態様は、張力バネ416の代わりに、ケーブル部分404の端部が終端させられる第2の巻取りキャプスタンを駆動する捩りバネのような、如何なる種類の張力機構をも使用し得る。この代替的な実施態様では、捩りバネを線形にするように巻取りキャプスタンを成形し得る。ケーブル部分404は、キャプスタン414の周りを包み、ケーブル部分404とキャプスタン414の表面との間の摩擦によって所定の場所に保持される。張力バネ416は、ケーブル部分404に対する張力を維持する。記載の実施態様において、キャプスタン414は、図7A及び7Bに関して以下に議論するような、動力キャプスタンである。外科器具400の具体的な実施は、多数のケーブル部分404に接続される多数のキャプスタン414を有する単一の後端機構412を含み、次に、多数のケーブル部分404は、(多数の結合素子406及び408を介して)多数のケーブル部分402と、対応する多数の端部作動体410とに結合される。この実施において、多数のケーブル部分402は束にされ、単一の主管を通じて経路指定される。
【0022】
ケーブル部分402とケーブル部分404との間の解放可能な結合は、ケーブル部分402の単純で容易な交換を許容する。具体的な実施において、ケーブル部分402は、特定の回数の外科処置又は特定の時間期間の後に交換される。この交換は(ケーブル部分402よりも比較的高い摩耗に晒され得る)ケーブル部分402が交換されるのを可能にし、それによって、器具の実効寿命に亘る器具総費用を低減させる。ケーブル部分402とケーブル部分404との間にクイックリリース(迅速解放)結合をもたらすことは、この交換を容易化する。加えて、ケーブル部分402とケーブル部分404との間の解放可能な結合は、ケーブル部分402内で使用される如何なる潤滑剤をもケーブル部分404から隔離し、それはケーブル部分404とキャプスタン414との間の所望のより高い摩擦を維持する。以下に議論するように、ケーブル部分402の特定の実施態様は、潤滑剤が腱とシースとの間に配置されるように、シースを通じて経路指定される腱を使用する。潤滑剤は、ケーブル部分402における低摩擦を維持し、それは端部作動体の制御のために望ましい。しかしながら、ケーブル部分404のそのような潤滑は、ケーブルとキャプスタン表面との間の摩擦の減少の潜在性の故に望ましくない。よって、ケーブル部分402とケーブル部分404との間の結合は、外科器具の作動のために望ましい場所でケーブル部分402内の潤滑剤を隔離することによって、外科器具400の適切な動作を維持するのを助ける。
【0023】
図5は、本発明のある実施態様に従った結合機構500を描写しており、結合機構500は、2つのケーブル部分を解放可能に結合する。結合機構500は、図4に関して上記で議論した解放可能な結合素子406及び408の代替である。第1のケーブル部分502は、その近位端部に取り付けられるボール506を有する。第2のケーブル部分504は、その近位端部に取り付けられるアーム508を有する。アーム508は、ボール506の外表面の形状に対応する凹部510を含む。アーム508は、カム512と滑動可能に係合し、カム512は、ボール506と係合するときに、アーム508がカム512について回転するのを可能にする。例えば、ボール506がアーム508と表面514との間を滑動すると、アーム508はカム512について回転し、ボール506が凹部510に向かって滑動し続けるのを可能にする。ボール506は凹部510と整列し、アーム508は表面514と実質的に平行な位置に向かって回転して戻り、それによって、ボール506を凹部510内に係入させる。ボール506及びアーム508が係合されるや否や、第2のケーブル部分504の移動は、アーム508及びボール506を介して、第1のケーブル部分502の対応する移動を引き起こす。アーム508を回転させてボール506を外すことによって、第1のケーブル部分502を第2のケーブル部分504から解放し、それによって、ボール506がアーム508から滑動可能に解放されるのを可能にし得る。
【0024】
図6は、本発明の他の実施態様に従った結合機構600を描写しており、結合機構600は、可撓装置内の多数の腱と解放可能に結合する。結合機構600は、第1のケーブル部分602を第2のケーブル部分604に結合させるために利用される。ここに記載するように、ケーブル部分604は、ケーブル部分604を移動させるキャプスタン又は他の作動機構に結合される。多数の腱は、ケーブル部分602及び604を通じて延びる。結合機構600は、ケーブル部分602に接続される第1の結合素子606と、ケーブル部分604に接続される第2の結合素子608とを含む。図6の実施例において、結合機構600は、単一の管又は類似の構成内で1つに束ねられた6個の腱を支持する。多数の腱は、ケーブル部分602によって示される単一の主管内に束ねられる。多数の腱の遠位端部は、それぞれ、端部作動体に接続される。
【0025】
図6は、特定の結合機構を例示している。代替的な実施態様は、可撓装置内で多数の腱を結合する如何なる種類の結合機構をも利用し得る。
【0026】
図4、5、及び6に示す結合機構は、第1のケーブル部分を第2のケーブル部分に解放可能に結合する機構の3つの実施例を示している。代替的な実施態様は、ここで議論するような第1のケーブル部分と第2のケーブル部分との間の相互作用を可能にする如何なる種類の結合機構をも含み得る。更に、代替的な実施態様は、如何なる材料及び構成部品の如何なる構造又は組み合わせをも含み得る。ケーブル結合機構の追加的な特徴は、(2009年4月16日に出願され、米国特許出願公開第2010/0094088A1号として公開された、”Tendon-Driven Endoscope and Method of Use”という名称の)米国特許出願第12/425,272号及び(2004年11月12日に出願され、米国特許出願公開第2006/0052664A1号として公開された、”Connector Device for a Controllable Instrument”という名称の)米国特許出願第10/988,212号に開示されており、それらの両方を参照としてここに援用する。
【0027】
図7A及び7Bは、本発明のある実施態様に従った外科器具700の一部を描写しており、外科器具700は、器具内の腱に対する張力を維持するために、バネ及びキャプスタン摩擦を使用する。図7Aは、4つのケーブル部分702,704,706,708(「腱」とも呼ぶ)に接続された後端機構710の頂面図を例示している。後端機構710は、4つのキャプスタン712,714,716,718を含み、それらのキャプスタンの各々は、4つのケーブル部分702〜708の1つと係合される。ケーブル部分702〜708は、上述したように、端部作動体(図示せず)を操作するために、結合及び他のケーブル部分を通じて力を適用する。ケーブル部分702〜708は、ケーブル部分の各々を特定のキャプスタンの周りに包むことによって、キャプスタン712〜718と係合される。ケーブル部分とキャプスタン表面との間の結果として得られる摩擦が係合を維持して、関連する遠位端部構成部品を作動させるのに十分な有効作動引張力をケーブルにもたらす。
【0028】
後端機構710は、張力バネ720,722,726も含み、これらの張力バネは、ケーブル部分702〜708に対する張力を維持するよう、ケーブル部分702〜708の端部にそれぞれ取り付けられる。バネ720〜726は付勢されて(例えば、伸張させられて)、非ゼロの力をケーブル部分702〜708に適用する。代替的な実施態様において、後端機構710において使用されるバネは、回転式巻きバネ、板バネ、又は、曲げビーム、片持ちビーム、若しくは弾性バンドのような、コンプライアント部材である。他の実施態様は、第2の巻取りキャプスタンを駆動する捩りバネを利用する。これらの実施態様では、捩りバネを線形にするよう巻取りキャプスタンを成形し得る。
【0029】
図7Bは、後端機構710と、後端機構内でキャプスタンと係合する2つの駆動モータ730及び732との側面図を例示している。駆動モータ730及び732は、人間入力の能動制御及び伸縮式の外科システムにおいて実行されるソフトウェアの下にある。図7Bは、キャプスタン716及び718にそれぞれ結合される駆動モータ730及び732を例示している。活性化されると、駆動モータ730及び732は、回転力をキャプスタン716及び718に適用し、次に、それはその力をケーブル部分708及び706に適用し、回転の方向に依存して、ケーブルを引っ込め或いはケーブルを弛緩させる。
【0030】
図8は、本発明のある実施態様に従った可撓な外科器具800の一部を描写しており、外科器具800は、2つの器具部分を解放可能に結合する結合機構を使用し、2つの器具部分は、それらを通じる多数の腱を有する。代替的な実施態様において、外科器具800は、図1に示す結合素子106のような、解放不能な結合素子を含む。外科器具800は、外科器具が外科手術(又は他の医療処置又は診断処置)を遂行し得る部位に至る患者内側の湾曲経路に追従するときに、医療処置中に生じ得るような様々な形状に屈曲可能である。その部位に至る経路は、切開を通じて或いは患者の自然な開口を通じて並びに患者の消化管の一部のような自然の内腔に沿って延び得る。手術部位又は外科器具の遠位端部が追従しなければならない経路の更なる部分にアクセスするために、外科器具800の一部は、自然の内腔の壁の切開を更に通じ得る。外科器具800は、異なる処置の間に異なる形状を概ね有し、1つ又はそれよりも多くのの屈曲を含む回旋経路に従う必要があり得る。
【0031】
外科器具800は、第1の器具部分802と、結合素子806及び808を介して互いに結合される第2の器具部分804とを含む。結合素子806は、第1の器具部分802の近位端部に接続される。1つ又はそれよりも多くの端部作動体(図示せず)が、第1の器具部分802の遠位端部に接続される。結合素子808は、第2の器具部分804の近位端部に接続される。後端機構810は、第2の器具部分804の遠位端部に接続される。結合素子806及び808は、図6において上述した種類又は任意の他の適切な結合機構であり得る。
【0032】
第1の器具部分802は、その中に位置付けられる3つの腱812,814,816を含む。腱812,814,816は、様々な操作及び処置の結果として第1の器具部分802が移動され且つ撓まされるときに撓み且つ屈曲し得る可撓な腱である。腱812,814,816は、比較的より近位の第2の器具部分804内に位置付けられる対応する3つの腱818,820,822と相互作用する。図8の実施態様において、腱812,814,816は、第1の種類の材料を使用して製造され、腱818,820,822は、第2の種類の材料を使用して製造される。例えば、上記で議論したように、腱812,814,816は、Dyneema(登録商標)を使用して製造され、腱818,820,822は、Kevlar(登録商標)又はPBOを使用して製造される。この実施例において、腱812,814,816は、それぞれ、図9に関連して以下に議論する種類のステンレス鋼シースによって取り囲まれる。
【0033】
特定の実施態様において、Dyneema(登録商標)ケーブルは、約0.5ミリメートルの直径を有し、ケーブルとシースとの間に0.10未満の所望の摩擦係数を有する。具体的な実施態様は、ケーブルとシースとの間に0.03〜0.05の範囲内の所望の摩擦係数を有する。Kevlar(登録商標)又はPBO材料は、約0.5ミリメートルの直径を有し、ケーブルとキャプスタンの表面との間に0.30〜0.50の範囲内の所望の摩擦係数を有する。
【0034】
図8は、第1の器具部分802及び第2の器具部分804内に位置付けられる3つの腱を例示するが、代替的な実施態様は、第1及び第2の器具部分内に位置付けられる任意の数の腱を含み得る。特定の実施では、外科器具の中間区画を関節接続するために、1つ又はそれよりも多くの腱が使用される。特定の可撓な外科器具内に含められる腱の数は、部分的には、可撓な外科器具に接続される端部作動体の制御及び/又は運動条件に依存する。具体的な実施態様において、端部作動体は、様々な機能を遂行可能であり、手関節機構及び/又は把持機構を含む。理解されるべきことは、描写される第1及び第2の器具部分が例示的であり、第1及び第2の器具部分の組み合わせが必ずしも器具全長を取り囲む必要がないことである。1つ又はそれよりも多くの追加的な長さ方向の器具構成部品を、描写し且つ記載した第1及び第2の器具部分の端部の間に並びに/或いはそれらを越えて配置し得る。
【0035】
図9は、可撓ケーブル900の一部を描写しており、可撓ケーブル900は、シース902と、シースを通じる腱904とを有する。図9に示す部分は、ここで議論する、第1の、より遠位の、器具部分の一部、即ち、遠位端部に端部作動体を備え且つ近位端部に結合素子を備える器具部分である。ケーブル900は、ケーブル900を通じる腱902の動作と関連付けられる摩擦を低減させるよう空気又は潤滑剤を含み得る。ここで議論するように、ケーブル900の具体的な実施態様は、Dyneema(登録商標)のようなHDPEを使用して製造される腱904と、ステンレス鋼を使用して製造されるシース902とを含む。特定の実施態様は、水と、脂肪酸又は精製鉱油と、ケーブル900内の摩擦を低減させる適切な界面活性剤との混合物である潤滑剤を使用する。シース902は、シースの内部と外部との間の活性剤の移動を許容するよう多孔性であり得る。特定の実施態様において、Oリング又はベローズ型シールのような封止(シール)が、シース902の封止部分内の潤滑剤を維持し得る。追加的な腱潤滑情報は、(2008年12月30日に出願され、米国特許出願公開第2010/0168510A1号として公開された、”Surgical Instrument with Sheathed Tendons”という名称の)米国特許出願第12/346,402号及び(2008年12月30日に出願され、米国特許出願公開第2010/0168721A1号として公開された、”Lubricating Tendons in a Tendon-Actuated Surgical Instrument”という名称の)米国特許出願第12/346,461号に開示されており、それらの両方を参照としてここに援用する。
【0036】
シース902の材料と腱904の材料の記述の組み合わせ並びに任意の潤滑剤は、低摩擦をもたらし、スティックスリップ運動を概ね回避する。他の実施態様では、シース902におけるステンレス鋼を異なる金属又は高強度ポリマと置換し得る。同様に、他の実施態様では、腱904におけるDyneema(登録商標)を異なる材料と置換し得る。
【0037】
ここに記載するシステム及び方法の実施態様は、ケーブルと、端部作動体と、ケーブルを介して端部作動体を作動させる後端機構とを有する、外科器具に関する。特定の実施態様は、1つ又はそれよりも多くの従来的な外科システム及び方法と共に使用される。例えば、既存の外科システムの改良として1つの実施態様が使用される。
【0038】
ここに例示する構成部品及びモジュールは特定の構成において示され且つ記載されているが、外科器具を異なる方法において実施するために或いは外科システムを異なる方法において操作するために、構成部品及びモジュールのその構成を変更し得る。他の実施態様では、1つ又はそれよりも多くの追加的な構成部品又はモジュールを既述のシステムに追加してもよく、1つ又はそれよりも多くの構成部品又はモジュールを既述のシステムから除去してもよい。代替的な実施態様は、既述の構成部品又はモジュールの2つ又はそれよりも多くを単一の構成部品又はモジュールに組み合わせ得る。
【0039】
本発明の特定の実施態様を記載し且つ例示したが、本発明はそのように記載し且つ例示した部品のその特定の形態又は構成に限定されるべきではない。本発明の範囲は、ここに付属する請求項及びそれらの均等物によって定められなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9