特許第6045502号(P6045502)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045502
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】垂直階段
(51)【国際特許分類】
   B66B 9/02 20060101AFI20161206BHJP
   B66B 9/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B66B9/02 Z
   B66B9/00 F
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-539356(P2013-539356)
(86)(22)【出願日】2011年11月18日
(65)【公表番号】特表2014-503439(P2014-503439A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】IB2011002731
(87)【国際公開番号】WO2012066411
(87)【国際公開日】20120524
【審査請求日】2014年11月10日
(31)【優先権主張番号】PG2010U000030
(32)【優先日】2010年11月19日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513123827
【氏名又は名称】エスペリレ ソシエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】ESPERIRE S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】ボネッティ,ウンベルト
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−073656(JP,A)
【文献】 特開2005−132574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 9/00− 9/193
B66B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のステーション(A)と少なくとも一つの第2のステーション(B)との間に配置された、少なくとも1人の利用者を囲むようにされる空間(23)を形成する外側本体を備えるベアリング構造と、二つのボードと、該少なくとも一つのボードを移動せしめるための機械的システムとを備えた垂直階段であって、
前記機械的システムは、コラム形状を有する少なくとも一つのガイド(41)と、一つのボード(3)に接続された少なくとも一つの牽引手段(42)と、前記牽引手段(42)を動かすことを可能にする少なくとも一つの自由車輪(43)と、前記牽引手段に接続され、一つのボードを持ち上げるようにされる少なくとも一つのカウンターウエイト(44)(釣合い重り)と、異なる操作形態の際に、電気エネルギーを回収するか、前記ボードの動きをアシストする、少なくとも一つの制御車輪(45)、前記階段に備えられたデバイス類を制御する少なくとも一つの制御装置(5)を備え、
ここで、前記少なくとも一つの牽引手段(42)は、制御車輪(45)配置され、前記少なくとも一つの牽引手段(42)は、制御車輪(45)と前記自由車輪(43)間クローズド・パス(閉路)を形成し、前記自由車輪は(43)は少なくとも一つの回転ベアリングによって第1シャフト“S’”にスプライン結合され、前記制御車輪(45)は、第2シャフト“S”にスプライン結合されており、回転ベアリングを備えてなる支持体(461)によって支持され、前記制御車輪(45)は、前記制御装置(5)によってコントロールされ、操作配列機能において、前記車輪(45)が所定の方向に回転し得るようにされ、前記機械的システム(4)は、二つのミラー状構造体を実現するようにされ、各々のミラー状構造体は、一つのボード(3)の垂直方向の動きを可能にするようにされ、前記ボードは、2つのミラー状構造体間に配置され、 二つのボード(3)は、前記機械的システム(4)に組み込まれた少なくとも一つのガイド(41)に沿って少なくとも一つのスライド(31)によってスライド可能に構成され、前記機械的システム(4)は、前記ボード上の少なくとも一部に少なくとも一人の利用者の重量を分配し、かつ、前記利用者が前記2つのステーション間を垂直軸に沿って移動したい方向に、前記少なくとも一つのボードを該垂直軸(Z)に沿って移動せしめる、
ことを特徴とする垂直階段。
【請求項2】
前記機械的システム(4)が、さらに、
前記制御車輪(45)に接続された少なくとも一つのジェネレータ(46)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の垂直階段。
【請求項3】
前記垂直階段が、上昇操作形態、下降操作形態及びリコール操作形態とからなり、
上昇操作形態において、前記機械的システム(4)は、前記ボード(3)をより下方のステーションからより上方のステーションへ移動せしめ、
下降操作形態において、前記機械的システム(4)は、前記ボード(3)をより上方のステーションからより下方のステーションへ移動せしめ、
リコール操作形態において、前記機械的システムは、前記ボード(3)を所望のステーションに向かって移動せしめる、
ことを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載の垂直階段。
【請求項4】
前記少なくとも一つのジェネレータが、トランスミッション手段によって前記少なくとも一つの制御車輪に接続され、下降操作形態において該制御車輪の回転から生まれる電気的エネルギーを回収し、その結果、当該電気的エネルギーを少なくとも一つのバッテリーパックに蓄えることを特徴とする請求項3に記載の垂直階段。
【請求項5】
前記少なくとも一つのジェネレータが、トランスミッション手段によって前記少なくとも一つの制御車輪に接続され、リコール操作形態において、スタート地点のステーションから目的とするステーションへの前記ボードの移動をサポートすることを特徴とする請求項3に記載の垂直階段。
【請求項6】
前記リコール操作形態が、接続されたクランクによって利用者によりマニュアル操作されることを特徴とする請求項3に記載の垂直階段。
【請求項7】
前記機械的システムが、存在がなければ前記ボードがより上方のステーションへ再度移動してしまうことになる、当該ボードの当該再移動を阻止するためのブロック装置(40)備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の垂直階段で、前記ブロック装置(40)は、前記制御車輪(45)の回転を妨げることを可能にする電子機械的システムか、または前記ガイド(41)に沿ってスライド(31)のスライドの動きを封じてボード(3)の偶発的な動きを干渉するようにされた機構である前記垂直階段。
【請求項8】
前記ベアリング構造が、あるステーションから他のステーションに移動する間、利用者を収容するスペースにアクセスできるように、各ステーションに対応して配置された少なくとも一つの、インターロックされ且つスライド可能なドアを備えていることを特徴とする請求項1に記載の垂直階段。
【請求項9】
前記ドアが、該ドアが正しく閉まっていることを検知するための制御装置に接続された、少なくとも一つの安全マイクロスイッチ及び少なくとも一つの可聴式警告装置を備えていることを特徴とする請求項8に記載の垂直階段。
【請求項10】
前記垂直階段に異なる電子的装置と電子機械的装置が組み込まれ、それぞれが直接配電設備主要部に接続されていることを特徴とする請求項9に記載の垂直階段。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、ユーザーを垂直軸(Z)に沿って移動できるようにした動的垂直階段に関し、その移動に消費されたエネルギーの少なくとも一部を回収し再利用するタイプの動的垂直階段(以下、単に「垂直階段」という)に関する。
【0002】
例えば、はしごのような実質的に垂直軸(Z)方向にユーザーの移動を可能にする階段は知られている。
【0003】
建造物の技術分野では、あるフロアから別のフロアへ移動するには、いわゆる“ステップ”(階段)と呼ばれている複数の水平構造物からなる階段が利用されており、当該ステップは、隣接するステップによって妨げられることなく複数のステップの一つにユーザーが足を置くことができるように、異なる高さで配置されている。
【0004】
階段の傾斜やピッチは、階段の寸法の一つの機能として定められるもので、その高さや距離を異なるように工夫されている。通常、75〜90゜の範囲のピッチをもつ階段は、ユーザーが階段に沿って移動している間の偶発的な事故を避け身の安全を保証するために、足の使用に加えさらに手の使用をも必要としているので、手製あるいは手動階段といわれている。
【0005】
一方、家屋においては、隣接するフロアを結合する階段の傾斜は、24〜45゜の範囲が一般的である。それ故、フロア間の高さの違いをカバーするため、階段は、少なくとも高さ方向の垂直差に等しくなるようにその長手方向に延長する構造が必要となる。
【0006】
さらに、長手方向の占有スペースを低減するため、例えば、ビルのロビーに見られるような実質的にらせん状の通路を有するタイプの階段も知られており、その一方では、階段を横方向に延長して、その結果、当該階段を支持するのに適するように非常に複雑な構造をとるタイプのものも知られている。
【0007】
さらに、長手方向と横方向の両方の寸法を低減したらせん状階段も知られているが、当該目的のために湾曲角度が低減された構造になっている。このような階段は非常に実用的ではないばかりか、ユーザーにとっても安全なものとはいえない。実際、このタイプの階段は、移動に利用できるスペースが非常に低減されているため、大きな物のフロア間の移動には適していない。
【0008】
垂直軸方向への移動に適した装置として、例えば、エレベータが知られている。エレベータの設置にはコストがかかりスペースも必要となるので、寸法上の制約を受ける一般の家屋への導入は難しいのが現実である。実際、いろんなユーザーや、あるいは異なるフロア間で利用できるようにするため、エレベータには非常に強力なアクチュエータが不可欠である。
【0009】
さらに、エレベータの使用には、個々の家屋においては一般のユーザーにはほぼ不可能な非常に厳しいルールに基づいた監視が不可欠である。
【0010】
本発明の目的は、ユーザーを垂直軸方向に移動できるように機械的なシステムを備えた動的垂直階段を提供することにより上記従来の種々の問題を解決することにある。当該機械的なシステムは、垂直軸方向への移動中に消費したエネルギーの少なくとも一部を回収できるものである。回収したエネルギーは垂直階段に組み込まれた種々の装置の操作を保証するために用いられる。
【0011】
[発明の詳細な説明]
本発明の一つの観点は、別途添付の書面に記載された独立請求項1に記載した特徴を有した垂直階段である。
【0012】
付随する特徴は従属請求項に記載されている。
当該垂直階段のさらなる特徴と利点は、添付の図面に記載された少なくとも一つの態様についての詳細な記載によって最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】2つのステーションの中に位置する本発明に従う垂直階段を示し、下方ステーションに位置する階段を示す。
図1B】2つのステーションの中に位置する本発明に従う垂直階段を示し、情報ステーションに位置する階段を示す。
図2A図1Aとは異なる図であり、当該垂直階段に組み込まれた機械的システムの一態様を示し、前方から見た当該機械的システムを示す。
図2B図1Bとは異なる図であり、当該垂直階段に組み込まれた機械的システムの一態様を示し、当該機械的システムの正面断面図である。
図3図2Aに示したボードを備えた機械的システムの結合部分を示す。
図4】前記図面に示した機械的システムに組み込まれたボードを示す。
図5】本発明に従う垂直階段に組み込まれた制御装置のフローチャートを示す。
【0014】
上記の各図面によれば、本発明の垂直階段は、第1のステーション“A”と少なくとも一つの第2のステーション“B”との間に配置されたベアリング構造2と、機械的システム4に組み込まれた少なくとも一つのガイド41に沿って、少なくとも一つのスライド31によってスライドできる少なくとも一つのボード3とを備えており、前記機械的システムは前記少なくとも一つのボード3を前記ガイド41に沿って移動させるためのものである。
【0015】
前記機械的システム4は、前記少なくとも一つのボード3を、当該ボード3の少なくとも一部分上で、少なくとも一人のユーザー“U”の重量の分布の作用として、垂直軸“Z”に沿って移動できるように作動し、また、前記2つのステーション間、例えば、第1のステーション“A”と少なくとも一つの第2のステーション“B”(あるいはその逆も同様)の間で、前記ユーザー“U”が前記垂直軸に沿って移動しようとする方向の作用として、垂直軸“Z”に沿って移動できるように作動する。
【0016】
前記ベアリング構造2は、階段の全体構造を支持するためのものであり、購入者のニーズの機能として好ましくは円形若しくはその他の形状をした外側本体を備えている。さらに、ベアリング構造2の該外側本体は、少なくとも一人のユーザー“U”が利用できるようなスペース23を形成している。
【0017】
前記機械的システム4は、好ましくは、ユーザーに少なくとも部分的に見えないようにベアリング構造2の内側に配置される。
【0018】
前記機械的システムは、好ましくは、少なくともその一部が前記第1のステーションA、好ましくは地面に対応して配置される。
【0019】
本発明によれば、第1のステーションAは、少なくとも一つの第2のステーションBに関して、垂直軸Zのより低部の位置に配置される。本明細書では具体的に例示はしていないが、前記垂直階段の一つの態様では、複数のステーションBを備えている。
【0020】
前記ベアリング構造2は、好ましくは、例えば手でスライドすることにより開閉できる少なくとも一つのドア22を備えており、該ドアは前記ステーション(A、B)のそれぞれに対応するように、かつユーザーUが前記スペース23にアクセスできるように配置されている。
【0021】
前記各ドア22は、内側から施錠できるタイプのものが好ましく、さらに、本明細書では具体的に例示はしていないが、制御装置5に接続される少なくとも一つの安全マイクロスイッチと少なくとも一つの可聴式警告装置を備えている。かかるマイクロスイッチはドア22が正しく閉まっていることを検知するために用いられる。また、かかる可聴式警告装置は、マイクロスイッチがドア22の閉まりに異常を検知したとき、前記制御装置5によって作動し、ユーザーにドア22が正しく閉まっていないことを警告する。その結果、当該制御装置5は、また、ドア22が正しく閉まっていることを検知するために用いられる。
【0022】
図1A図1Bに例示した態様では、2つのドア22が各ステーション(A、B)に対応して配置され、異なる操作形態の間、ユーザーUがスペース23にアクセスし、事故が起きないようにユーザーUを内側スペース23に確実に収容される。
【0023】
前記少なくとも一つのボード3は、さらに、例えばエンボス加工されたシートのようなスリップ防止シート30、例えばフランジによって該ボード3に接続された前記少なくとも一つのスライド31、該ボード3を例えばベルト又はチェーンのような牽引手段42に固定するための固定手段32、及び該ボード3を水平に保持し、ユーザーUの重量を支持するための少なくとも一つの補強部材33から構成されている。
【0024】
機械的システム4は、好ましくは円形状パイプのような少なくとも一つのカラム(柱)を備えた少なくとも一つのガイド41、前記少なくとも一つの牽引手段42、該牽引手段42を可動するための少なくとも一つのカウンターシャフト43、該牽引手段42に接続され、前記ボード3の少なくとも一部で休息するユーザーUの重量との重量バランスをとるための少なくとも一つのカウンターウエイト44、異なる操作形態の間、電気的エネルギーを回収するため、あるいは、前記少なくとも一つのボード3の動きをサポートするための少なくとも一つの制御された車輪45、及び、本発明に従う階段に組み込まれた種々の装置を制御するための少なくとも一つの制御装置5から構成されている。少なくとも一つの発電機46としては、独立して励起された直流(DC)モータが好ましい。
【0025】
図2A及び図2Bには、2つのミラー状構造からなる機械的システム4の態様が示されており、それぞれの各ミラー状構造は、ユーザーの足が置かれ、かつ可動し得るボード3に結合されている。さらに、例えばピニオン(小歯車)のような各制御車輪45は、前記制御装置5によってコントロールされる。該制御装置は、予め所定の操作形態において、前記車輪45が一方向に回転し得るように作動し、その結果、該制御車輪45自身が当該方向とは反対方向に回転しないように作動する。前記制御装置5は、適切なコマンド(指令)が与えられた後、制御車輪45が両方向に回転し得るように作動する。
【0026】
機械的システム4の各構造において、少なくとも一つの牽引手段42は、前記車輪45に配置される。該牽引手段42は、固定車輪45と前記カウンターシャフト43間にクローズド・パス(closed path,閉路)、好ましくは、少なくとも一つの回転ベアリングによって第1シャフト“S’”にスプライン結合される自由車輪を生み出す。前記制御車輪45とカウンターシャフト43は、好ましくは最上部に位置するステーションに対応するように、それぞれ第1ステーションAと第2ステーションBに密接に配置されている。
【0027】
各制御車輪45は、第2シャフト“S”にスプライン結合されており、回転ベアリングソ備えてなる支持体461によって支持されている。ジェネレータ46はトランスミッション手段によって該第2シャフトに結合している。
【0028】
かかる少なくとも一つのジェネレータ46は、予め所定の操作形態において、前記制御車輪45の回転によって電流を発生せしめ、一方、他の予め所定の操作形態においては、当該それぞれのジェネレータは、アクチュエータとして作動し、ユーザが本発明の垂直階段を利用するとき、少なくとも一つのボード3が2つのステーション間を動き得るようにアクチュエータとして作動する。
【0029】
機械的システム4のミラー状構造の一つに組み込まれた各制御車輪45は、好ましくは、前記トランスミッション手段によって単一のジェネレータ46に結合されている。特に、当該トランスミッション手段は、例えば、図2A及び図3に示すように、制御車輪45とジェネレータ46とが結合しうるように“T”形状のトランスミッションを形成しうるためのトランスミッション・シャフト460とトランスミッション・エレメント462からなっている。
【0030】
本発明に従う垂直階段は、下記の操作形態からなる。
(1)上昇形態: 機械的システム4は少なくとも一つのボード3を“より下方の”ステーションから“より上方の”ステーションへ移動させるように配置されている。
(2)下降形態: 機械的システム4は少なくとも一つのボード3を“より上方の”ステーションから“より下方の”ステーションへ移動させるように配置されている。
(3)リコール(取り消し)形態: 機械的システム4は少なくとも一つのボード3を望むステーションへ移動させるように配置されている。
本発明においては、「より下方のステーション」及び「より上方のステーション」という用語は、軸(Z)に関して、一方が他方の下に(その逆も同様に)位置するようにそれぞれが配置される2つのステーションを意味している。
【0031】
上昇形態において、制御装置5は、制御車輪45が一方向へ回転するように作動し、その結果、ボード3がより下方のステーションからより上方のステーションへ移動する。例えばステーションAのようなより下方のステーションから、例えばステーションBのようなより上方のステーションBへのボード3の移動は、該ボード3を上昇させるために用いられたカウンターウエイト(「釣合い重り」とも言う)44によって起こる。該ボード3の偶発的な上昇移動は、利用者自身の重量によって起こらないようになっている。
【0032】
2つのボード3は、例えば好ましくはゴム製又は布製のベルト、あるいは、例えば好ましくは金属製又はプラスチック製の少なくとも一つのブラケットによって、利用者の安全を保証するため、当該2つのボードの高さの相違が最大値を超えないように、お互いに拘束するように配置されていることが好ましい。利用者は自身が利用する全てのステップと共に当該2つのボード3の高さの相違を自由に選択することができる。下降操作形態においては、制御車輪45は上昇形態で起こる回転とは反対方向に回転し、当該制御車輪45は、もはや制御装置5によってはコントロールされないことが好ましく、さらには、ジェネレータ46は電気的エネルギーを生み出すダイナモ(発電機)として機能する。このような操作形態においては、各ボード3は利用者の重量のおかげでより情報のステーションからより下方のステーションへ移動することになる。
【0033】
本発明の操作形態では、前記ジェネレータ46は、トランスミッション手段によって前記制御車輪45に接続され、該制御車輪45の回転から電気的エネルギーを回収するために用いられるもので、回収された電気的エネルギーは少なくとも一つのバッテリーパック“E”に蓄えられる。
【0034】
さらに、前記ジェネレータ46は、同様に制御装置5によってコントロールされ、例えば、毎分回転数を維持することによりボード3の下降移動をコントロールし、その結果、制御車輪45の回転速度は一定になる。このようなコントロールは、例えば位置センサ、ロードセル、タコメータなどの複数のセンサ51によってなされるが、当該センサは垂直階段に組み込まれた種々の装置をコントロールするのに役立つ種々のパラメータを検知するために用いられる。当該センサ51の利用については本明細書では詳細には述べないが、当業者によればその作動原理はよく知られているところである。
【0035】
前記少なくとも一つのバッテリーパック“E”は、ジェネレータ46によって生み出された電気的エネルギーを直流電流として蓄えるもので、好ましくはリチャージ可能な少なくとも一つのバッテリーからなる。
【0036】
機械的システム4は、前記牽引手段42によって接続されているカウンターウエイト44によって、存在がなければ前記ボード3がより上方のステーションへ再度移動してしまうことになる、当該ボードの当該再移動を阻止するためのブロックシステム40(以下、「ブロック装置ともいう」)を備えている。本発明の範囲を限定するわけではないが、本発明の別の態様では、当該ブロック装置40は電気機械的システムであり、制御装置5に接続されたブロック・プッシュボタン“F”が押された後、次のコマンドを受け取るまで制御車輪45の回転をブロックする。これもまた本発明の範囲を限定するわけではないが、本発明のさらに別の態様では、当該ブロック装置40は、ボード3が偶発的に移動しないようするためのメカニズム(機構)であり、例えば、スライド31がガイド41に沿ってスライドしないように、軸Zに沿って該ボード3の動きを干渉する。
【0037】
2つのステーション、即ち、より下方のステーションAとより上方のステーションBの場合、より上方のステーションBのブロック装置40は、前記ボード3を停止するために前記ガイド41上に配置された機械的停止装置であり、当該ボード3がより上方のステーションBに到達したとき、より下方のステーションAにおいては、当該ブロック装置40は、ベアリング構造2に適合し、ボード3がより上方のステーションBの方向へ移動しないように阻止するためのストライカー要素(ドアを閉鎖状態に保持するための部材)として機能する。
【0038】
リコール操作形態では、ボード3は、コントロールされた方法で、初期のステーションから本発明の垂直階段を利用するために利用者が待つ目的のステーションへ移動する。
【0039】
本発明の範囲を制限しない第1の態様においては、あるステーションから目的のステーションへのボード3のリコールは、両制御車輪45に接続された、例えばクランクのようなリコール機構によってマニュアル操作によって行うことができる。このような実施態様におけるリコール操作形態では、制御装置5は、ボード3が詳細には例示しない前記リコール機構によって移動できるように、制御車輪45を自由に回転させる。
【0040】
利用者が立つステーションの機能として、及び前記ボード3が以前位置していたステーションの機能として、制御装置5は、制御車輪45を適切な方向へ回転させ、該ボード3を目的とされたステーションに到達させる。さらに、制御装置5は、ジェネレータ46がアクチュエータとして機能するように該ジェネレータ46をコントロールし、スタート地点のステーションから目的のステーションへのボードの移動を助け、制御車輪45を回転させ、ボード3を目的のステーションへリコールさせる。
【0041】
前記ボード3を移動させるためにジェネレータ46が必要とするエネルギーは、下降操作形態において生み出されるエネルギーが蓄えられるバッテリーパック“E”から得られる。
【0042】
上昇操作形態においては、利用者は下記の連続工程を演ずることが好ましい。
(1)より下方のステーションに対応するドアを開ける。
(2)スペース23に進入しドア22を閉める。
(3)各ボード3の上に片足を置く。
(4)ブロック装置40を無効にする。
(5)第1の足を持ち上げ、その間利用者自身手すり24につかまりバランスを保ち、持ち上げられた足に対応する第1のボード3が垂直方向上方へ移動する。
(6)軸Zに沿った目的の高さに到達したとき、第1の足を持ち上げることを止め、利用者の体重を第2のボード3へ移動する。
(7)第2の足を持ち上げ、第2のボード3が垂直方向上方へ移動するようにする。
(8)軸Zに沿った目的の高さに到達したとき、第2の足を持ち上げることを止め、利用者の体重を第1のボード3へ移動する。
(9)目的とするより上方のステーションに到達するまで、上記(5)〜(8)の工程を繰り返す。
(10)ブロック装置40を有効にする。
(11)ドア22を開け、自身の背中を後ろにして再度ドアを閉める。
【0043】
足の持ち上げを止め利用者の体重を一つのボード3から他のボード3へ移動させる工程により、ボード自身が現在位置でブロックされることになり、前記制御車輪45に接続され、電気的にブロックされている牽引手段42により、当該ボード3が選択されたレベルよりも下方に移動しないようになっており、また、当該制御車輪は、本発明の操作形態において、制御装置5によって強いられた方向にだけ回転することになる。
【0044】
かかるシステムを利用する人は、ボード3が上方に移動し得るようにそれぞれの足を着実に持ち上げなければならない。実際のところ、上昇操作形態では、前記ボードは、該ボードが固定された前記牽引手段42に接続されたカウンターウエイト44により、ステーションBの方向に移動し続ける傾向がある。
【0045】
すでに述べたように、前記制御車輪45により牽引手段42がより下方のスタート位置のステーションの方向へ移動しないようになっているので、それぞれの足を使ってボード3を停止することにより、当該ボード自身を選択された位置に留めることができる。
【0046】
利用者はこれら各それぞれの工程を演ずることにより格別身体的な努力をすることなしに上方に移動することができ、さらに、利用者は、自身の手を使うことによりスペース23内に設置された少なくとも一つの手すり24をつかむことができる。利用者は、異なる操作形態の間、当該手すり24により自身のバランスを保持することができる。
【0047】
下降操作形態においては、利用者は下記の連続工程を演ずることが好ましい。
(1)より上方のステーション、例えばステーションBに対応するドア22を開く。
(2)スペース23に進入し、ドア22を閉める。
(3)下降ボタン“D”を押す。
(4)ボード3が目的とするより下方のステーションに下降到達するまで待つ。
(5)ブロック装置40を有効にする。
(6)目的のステーションに到達したらドア22を開け、自身の背中を後ろにして再度ドアを閉める。
【0048】
下降操作形態において、ジェネレータ46は電流発生器として機能し、制御車輪45の回転によって生み出された機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換してバッテリーパックEに蓄える。前記制御装置5によってコントロールされる当該ジェネレータ46は、所定の毎分回転数による一定の速度で回転し、すでに述べたように、ボード3の下降速度をコントロールする。
【0049】
マイクロスイッチを備えたドア22が閉められたとき、信号が制御装置5に送られ、該制御装置5により制御車輪45は電気的にコントロールされ、例えば、両方向に自由に開放されたり、あるいは回転されたりする。
【0050】
リコール操作形態においては、利用者は下記の連続工程を演ずることが好ましい。
(1)コールボタン“C”を押す。
(2)ボード3がボタンCが押されたステーションに到達するまで待つ。
(3)ドア22を開け、スペース23に進入する。
(4)前述の上昇操作形態又は下降操作形態の各工程を行う。
【0051】
かかるリコール操作形態において、工程(2)でのボード3の移動は、アクチュエータとして機能するジェネレータ46によって起こり、その結果ボード3を移動させる。当該ジェネレータはバッテリーパックEに蓄えられた電気的エネルギーを利用することができ、当該電気的エネルギーは下降操作形態において回収されたものである。
【0052】
制御装置5は、ボタンCが押された瞬間にボードの位置を決め、ジェネレータ46を正しくコントロールすることができ、さらに、機械的システム4をコントロールし、特に、ボード3がボタンCが押されたステーションに移動できるよう制御車輪45をコントロールする。
【0053】
前記コールボタンCは、すべてのステーション(A、B)のドア22に近接して配置するのが好ましい。
【0054】
全てのボタン(C、D、F)はコントロールパネル26に配置される。かかるコントロールパネル26は各ステーション(A、B)に対応して、かつ階段のスペース23の内側に配置される。
【0055】
前記コントロールパネル26は、さらに、本発明の垂直階段を利用する上で有用なボタン又は電気的デバイスを備えているのが好ましい。安全上、制御装置5は、全てのドア22が正しく閉じられているときのみ、既述のリコール操作形態を作動する。
【0056】
同様に、制御装置5は、利用者がスペース23に進入後、全てのドア22が正しく閉じられているときのみ、既述の上昇及び下降操作形態を作動する。
【0057】
さらに、本発明に従う垂直階段の別の実施態様においては、異なる電子的デバイス電子機械的デバイスが、直接配電設備主要部に結合されている。いずれにしても、本発明の垂直階段は、少なくとも一つの安全なバッテリーパックEを備えている。かかる態様においては、電力は、当該配電設備主要部により、全ての電子的デバイスと電子機械的デバイスに直接供給される。当該バッテリーパックEは、配電設備主要部の一時的故障の場合、操作条件を適切に作動させることを保証ためには必要なものである。かかる態様において、機械的システム4は、ボード3の下降移動をコントロールするための電気機械的ブレーキクラッチと共に備えられることが好ましく、そのことにより、ジェネレータ46はエネルギー回収のためのダイナモとしてはもはや用いられる必要はない。
【0058】
制御装置5は、本明細書では具体的に例示はしないが、例えば電気的キャビネットのようなコントロールユニットに配置されるのが好ましい。本発明に従う垂直階段の正しい操作に必要なバッテリーパックEと電気及び電子回路は、電気的キャビネットの内部に配置しても良い。
【0059】
本発明に従う垂直階段は、個人の家屋の内部、又はビルのあるフロアから他のフロアへ人々を移動させるビルの内部に設置することができる。
【0060】
本発明の垂直階段は、部屋が狭いため平坦あるいは長い階段を設置できないときに利用される伝統的ならせん状階段に取って代わりうる理想的な解決策である。装置は独立しており、エネルギー消費を低減し、さらに、容易に応用及び導入され得、便利さ及び家屋の層床面積を増大させ得るというより大きな利点を有する観点から、伝統的ならせん状階段に取って代わり得る。事実として、より上方のフロアへの垂直上昇移動は、移動するボードに依存して物理的なアンバランスを引き起こすことによって起こる。さらに、上昇操作形態の間にボード3の高さの相違を選択することにより、どの年代の人々にも快適に垂直階段を利用することができる。本発明に従う垂直階段は、存在する高さの相違という問題を克服するために、上昇高さと(踏み込み)奥行きとの比に関する事前の予備的研究は一切必要なく、高さがどんなに相違していても採用することができるのであり、高さの相違が仮に著しくても、床を占有する同じ平面スペースを同時に保証し得るのである。
【0061】
ダイナモとして機能するジェネレータ46と共に供給される本発明に従う垂直階段に組み込まれた機械的システム4は、下降操作形態の間に回収された電気的エネルギーを蓄えることができ、さらに、当該操作形態の安全性を保証する。バッテリーパックEに蓄えられる当該エネルギーは、各ボードをリコールすると共に、垂直階段の操作のための警告灯やプッシュボタンを備えたコントロールパネルをコントロールする制御装置5を供給するために用いられる。
【0062】
本発明に従う垂直階段は、好ましくは、以下の3つの態様で市場に提供される。
(1)基本バージョン: ベアリング構造の外部本体はなく、全ての操作形態が完全にマニュアルであり、例えば、ボード3の機械的リコールはチェーンやベルトのような牽引手段によって行い、電力供給もない。
(2)標準バージョン: 円形または四角状本体からなり、ボード3のリコールは電気機械的に行い、電力供給は回収エネルギーを蓄えたバッテリーパックEによって行う。
(3)高級バージョン: 本体はデザイン化され、ボード3のリコールは電気的に行い、さらに、オプションとして、機械的システム4と電子/電子機械的デバイスの電力供給は、エネルギー分配主要装置によって行う。
【符号の説明】
【0063】
2:ベアリング構造
22:ドア
23:スペース
24:手すり
3:ボード
30:スリップ防止シート
31:スライド
32:固定手段
33:補強部材
4:機械的システム
40:ブロック装置
41:ガイド
42:牽引手段
43:カウンターシャフト
44:カウンターウエイト
45:制御車輪
46:ジェネレータ
460:トランスミッション・シャフト
462:トランスミッション・エレメント
5:制御装置
51:センサ
A:第1ステーション
B:第2ステーション
C:コールボタン
D:下降ボタン
E:バッテリーパック
F:ブロック・プッシュボタン
S’:第1シャフト
S:第2シャフト
U:利用者
Z:(垂直)軸
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5