特許第6045503号(P6045503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィの特許一覧

特許6045503無線メッシュネットワークのノードへのデータ伝送を最適化するためのシステム及び方法
<>
  • 特許6045503-無線メッシュネットワークのノードへのデータ伝送を最適化するためのシステム及び方法 図000002
  • 特許6045503-無線メッシュネットワークのノードへのデータ伝送を最適化するためのシステム及び方法 図000003
  • 特許6045503-無線メッシュネットワークのノードへのデータ伝送を最適化するためのシステム及び方法 図000004
  • 特許6045503-無線メッシュネットワークのノードへのデータ伝送を最適化するためのシステム及び方法 図000005
  • 特許6045503-無線メッシュネットワークのノードへのデータ伝送を最適化するためのシステム及び方法 図000006
  • 特許6045503-無線メッシュネットワークのノードへのデータ伝送を最適化するためのシステム及び方法 図000007
  • 特許6045503-無線メッシュネットワークのノードへのデータ伝送を最適化するためのシステム及び方法 図000008
  • 特許6045503-無線メッシュネットワークのノードへのデータ伝送を最適化するためのシステム及び方法 図000009
  • 特許6045503-無線メッシュネットワークのノードへのデータ伝送を最適化するためのシステム及び方法 図000010
  • 特許6045503-無線メッシュネットワークのノードへのデータ伝送を最適化するためのシステム及び方法 図000011
  • 特許6045503-無線メッシュネットワークのノードへのデータ伝送を最適化するためのシステム及び方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045503
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】無線メッシュネットワークのノードへのデータ伝送を最適化するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/02 20090101AFI20161206BHJP
   H04W 84/22 20090101ALI20161206BHJP
   H05B 37/02 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H04W40/02
   H04W84/22
   H05B37/02 H
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-540459(P2013-540459)
(86)(22)【出願日】2011年11月10日
(65)【公表番号】特表2014-504470(P2014-504470A)
(43)【公表日】2014年2月20日
(86)【国際出願番号】IB2011055026
(87)【国際公開番号】WO2012069950
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年11月5日
(31)【優先権主張番号】10192560.0
(32)【優先日】2010年11月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516043960
【氏名又は名称】フィリップス ライティング ホールディング ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルゲン ダニエル マーティン
(72)【発明者】
【氏名】エスピナ ペレス ジャヴィエル
(72)【発明者】
【氏名】シェンク ティム コーニール ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア モルション オスカー
【審査官】 倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−502069(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0102443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線メッシュネットワーク内のデータパケット伝送を制御するためのシステムであって、
少なくとも1つのコレクタノードと、
複数のノードと、
を含み、
前記コレクタノードにアドレス指定されたアップリンクデータパケットを受け取るノード及び/又は前記コレクタノードが、少なくとも送信元ノード情報及び伝送ノード情報を逆ルート情報として所定の時間にわたって記憶し、
前記逆ルート情報がノードに記憶される前記所定の時間は、前記ノードの前記コレクタノードまでの距離に依存し、
ダウンリンクデータパケットが、前記逆ルート情報を用いて前記アップリンクデータパケットのルートの逆により、前記コレクタノードから送信元ノードに伝送される、システム。
【請求項2】
送信元ノードからのアップリンクデータパケットを予期する場合、前記アップリンクデータパケットが受け取られるまで、前記コレクタノードは、前記送信元ノードへのダウンリンクデータパケットの伝送を遅らせる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
ダウンリンクデータパケットを受け取るノードが、前記逆ルート情報の可用性に基づいて前記ダウンリンクデータパケットを転送するための伝送モードを選択する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記アップリンクデータパケットが、前記逆ルート情報が記憶されるべきかどうかを示し、及び/又は前記逆ルート情報が記憶されるべき前記所定の時間を示すデータフィールドを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
送信元ノードに転送され、消去情報を含むダウンリンクデータパケットを受け取るまで、ノードが、前記逆ルート情報を記憶する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
ダウンリンクデータパケットと前記アップリンクデータパケットの肯定応答とが1つのデータパケットとして送信元ノードに伝送されるか、又はダウンリンクデータパケットが、前記アップリンクデータパケットの肯定応答を伝送する前に又はその後に所定の期間内に分けて伝送される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記コレクタノードが、1つ又は複数のノードにトリガメッセージをブロードキャストし、及び/又はマルチキャストする、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記トリガメッセージを受け取ったノードが、前記コレクタノードにデータ要求を送るために、前記トリガメッセージ内で指定された期間内のタイムスロットをランダムに選択する、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記トリガメッセージは、それぞれが異なるノードアドレスを含むいくつかのサブバッチに分けられ、前記サブバッチが逐次的に処理される、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記ノード及び/又はコレクタノードの少なくとも一部が照明システムの照明に関連する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムが、照明ノードをオン/オフにするために、照明ノードの調光パターンを制御するために、並びに/又はセンサデータ及び/若しくは照明状態データを報告するために、照明システムのテレマネージメントで使用される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
無線メッシュネットワークのノードのための装置であって、前記無線メッシュネットワークは複数のノード及び少なくとも1つのコレクタノードを含み、前記コレクタノードに宛てられたアップリンクデータパケットが受け取られた後、前記装置が少なくとも送信元ノード情報及び伝送ノード情報を逆ルート情報として所定の時間にわたって記憶し、
前記逆ルート情報がノードのための前記装置に記憶される前記所定の時間は、前記ノードの前記コレクタノードまでの距離に依存し、
ダウンリンクデータパケットが、前記逆ルート情報を用いて前記アップリンクデータパケットのルートの逆により、前記コレクタノードから送信元ノードに伝送される、
装置。
【請求項13】
少なくとも1つのコレクタノード及び複数のノードを含む無線メッシュネットワーク内のデータパケット伝送を制御するための方法であって、
前記コレクタノードにアドレス指定されたアップリンクデータパケットをノード又は前記コレクタノードにおいて受け取るステップと、
少なくとも送信元ノード情報及び伝送ノード情報を逆ルート情報として所定の時間にわたって記憶するステップと、
ダウンリンクデータパケットが、前記逆ルート情報を用いて前記アップリンクデータパケットのルートの逆により、前記コレクタノードから送信元ノードに伝送されるステップと、
を含み、
前記逆ルート情報がノードに記憶される前記所定の時間は、前記ノードの前記コレクタノードまでの距離に依存する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線メッシュネットワーク内のデータパケット伝送を制御するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線メッシュネットワークは、例えば照明システム、ビルディングオートメーション、監視アプリケーション、センサシステム、及び医療アプリケーションの遠隔制御に関してより一層注目を集めている。とりわけ、屋外照明の遠隔管理、所謂テレマネージメント(telemanagement)がますます重要になっている。一方で、テレマネージメントシステムは、例えば時間、気象条件、季節に応じて異なる調光パターンを利用できるようにし、屋外照明システムのより優れたエネルギー効率での利用を可能にするので、この遠隔管理は環境への配慮から推進される。他方で、これは、エネルギー効率が高まると運用コストも下がるので、経済的な理由からも推進される。さらに、このシステムは電力使用を遠隔的に監視し、ランプの障害を検出することができ、これにより照明を修理し又はランプを交換するための一番良い時を決定することを可能にする。
【0003】
現在の無線周波(RF)ベースの無線による解決策は、星状ネットワークトポロジ又はメッシュネットワークトポロジのいずれかを使用する。星状ネットワークでは、制御センターは、ネットワーク内の全てのノードへの直接無線通信経路を有する。しかし、この形態は、高出力/高感度基地局のような制御センターを高所(例えばビルの屋上)に配置することを一般に必要とし、この解決策は導入がやっかいで高価となる。メッシュネットワークでは、複数のノードは一般に制御センターと直接は通信せず、所謂マルチホップ通信を介して通信する。マルチホップ通信では、データパケットは、送信元ノードから宛先ノードまで1つ又は複数の中間ノードを介して伝送される。ノードは、隣接ノードから単一ホップで達するには離れ過ぎているノードにデータパケットを伝送するためのルータとして働き、より長距離に及ぶことができるネットワークをもたらす。長い距離を一連の短いホップに分けることにより、信号強度が維持される。その結果、ルーティングは、データパケットがどの隣接ノードに送られるべきかを決定しながら、メッシュネットワークの全てのノードによって行われる。従って、メッシュネットワークは、高い接続性ひいては高い冗長性及び信頼性を有する、非常にロバストかつ安定したネットワークである。
【0004】
従来技術において、メッシュネットワーク伝送技術は、フラッディングベース(flooding-based)のメッシュネットワーク及びルーティングベースのメッシュネットワークという2つのグループに分けることができる。フラッディングベースのメッシュネットワークでは、全てのデータパケットはネットワーク内の全てのノードによって転送される。従って、ノードは複雑なルーティングの決定を下す必要がなく、単にデータパケットをブロードキャストする。これらの手法により、この技術はかなりロバストである。しかしながら、大規模なネットワークでは、転送に起因するデータオーバヘッドが全体的なデータ転送速度に影響を与える。さらに、データパケットの衝突が起こる可能性がより高く、全体的な性能をさらに下げている。故に、この解決策の主な問題は拡張性である。ルーティングベースのメッシュネットワークは、事前対応方式(proactive)及び事後対応方式(reactive)にさらに分けることができる。事前対応方式のルーティングベースのメッシュネットワークでは、必要な全てのネットワーク経路が各ノード内のルーティングテーブルに記憶される。効率的なルーティング経路を発見するために、ルーティングテーブルは、例えば規則的なビーコンメッセージを隣接ノードに送ることで最新の状態に保たれる。そのような種類のネットワークではデータ伝送が非常に効率的であるが、大規模なネットワークではルーティングテーブルの事前更新がネットワーク資源の大部分を消費するので、拡張性は依然として低い。さらに、ルーティングテーブルはネットワークの規模に比例して増大する。加えて、ルーティングテーブルを構築するために、ネットワークのセットアップに時間と資源が必要である。対照的に、事後対応方式は、要求に応じてルートを発見することにより、恒常的なオーバヘッド及び大規模なルーティングテーブルを回避する。これら方式は、ネットワーク経路を発見し、アクティブなルート又はノードをキャッシュするようにフラッディング技術を使用する。ルートが、単一データパケットのために極希にしか使用されない場合、ルート発見を行う代わりにデータパケットをフラッディングすることがより効率的であり得る。頻繁なルーティングを避けるためにルートが十分長く保たれている場合、事後対応方式は事前対応方式に退化する。事後対応方式のルーティングベースのメッシュネットワークプロトコルの一例がZigBeeの中で用いられている。しかしながら、このプロトコル方式の主な問題はやはりネットワークの拡張性である。
【0005】
ほとんどのセンサ/アクチュエータネットワークでは、ネットワークノードは、一般に、制御センターへのブリッジ又はゲートウェイとして振る舞うコレクタノードとのみ通信する一方、コレクタノード(又は制御センター)は、個々のノード又はノード群と通信する唯一のエンティティである。さらに、ノードから制御センターへの通信は、一般に、全データトラフィックに広がる。従って、これらのネットワークでは、ノードからそれぞれのコレクタノードへのデータパケット伝送がしばしば最適化され、即ち、基礎をなすプロトコルはデータコレクタ指向である。しかし、これらのプロトコルはコレクタノードに向かう経路しか改善しない。コレクタノード又は制御センターから個々のノードにデータを伝送するために、追加の広範なルーティングプロトコルが単一ノードに記憶される必要があり、又は厳密なルーティング情報がデータパケット内に含められる必要がある。しかしながら、追加のプロトコルを使用する場合、ルーティングテーブル用のさらなる記憶空間がノードにおいて必要とされ、ノード及びシステムをより複雑にする。ただし、正確なルーティング情報をデータパケットに含める場合、大量のデータオーバヘッドが引き起こされ、ネットワークの負荷をさらに高め、その結果ネットワークの拡張性を低下させる。代替策として、フラッディングがしばしば用いられる。それでも、これは個々のノードと通信する非常に非効率的な方法であり、ネットワークトラフィックの増加ひいては拡張性の低下も招く。
【0006】
さらに、大規模なマルチホップネットワークでは、小規模ネットワーク内のホップ距離に比べ、データパケットが移動しなければならないホップ数が多い。従って、数千ものノードを含む大規模な無線周波テレマネージメントシステムでは、20−40回のホップが生じる可能性がある。しかしながら、ホップごとにデータパケットが失われる可能性があるので、個々のデータパケットが届く可能性はそのホップ距離とともに低下する。故に、データパケットが成功裏に送られることを保証するために、データパケットを肯定応答モード(即ち、受信側ノードがデータパケットを受信した後に送信元ノードに肯定応答を伝送する。)で伝送することができる。受信側ノードは、大抵は、コレクタノードに対応するので、肯定応答はコレクタノードから送信元ノードに伝送されなければならない。しかしながら、データパケットの種類及びシーケンス番号しか通常含まない肯定応答の少ないペイロードを考慮した場合は特に、対応する通信経路は先に述べたように非常に非効率的である。
【0007】
故に、一般的な無線メッシュネットワークにおける大きな不利益は、一方では長たらしい構成からなり、他方では非常に限られたネットワークの拡張性からなる。特に、RFテレマネージメントネットワークは、ネットワーク拡張性を限定するそのトポロジ及び規模に起因する著しい過負荷に見舞われる。その結果、所要のスループット、応答時間、及びロバスト性を実現するために、データコレクタから大量の照明ノードを有する街頭照明システムのような大規模無線ネットワークにおける個々のネットワークノード又はネットワークノード群へデータを伝送するための効率的なルーティングプロトコルが必要とされる。
【0008】
米国特許出願公開第2009/0154395A1号は、階層構造を有する無線センサネットワーク内のルーティングについて記載しており、そのネットワークは、それぞれが複数のノード及びクラスタヘッドを有する複数のクラスタを含む。クラスタヘッドは、対応するクラスタのノードと他のクラスタのノードとの間のゲートウェイとして機能する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来技術における上記の不利益及び問題に照らし、本発明の目的は、無線ネットワークにおいてデータパケットを伝送するためのシステム及び方法を提供することであり、この方法では、追加のルーティングプロトコルなしに又は全体的なネットワーク負荷を増やすことなしに、コレクタノードから1つ又は複数のネットワークノードへのデータパケット伝送が改善される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、逆方向に伝送されるデータパケットについて、単一ノードからコレクタノードへの効率的なルーティングを活用する考えに基づく。このために、コレクタノードに向かうアップリンクデータパケットを受け取る全てのノードが、データパケットの最初の送信元ノードに関する情報及びデータパケットの受取元である先の伝送ノードに関する情報を一時的に記憶する。以下では、アップリンクデータパケットは、あるノードからコレクタノードに向けて送られるデータパケットを指すのに対し、ダウンリンクデータパケットは、コレクタノードから1つ又は複数の個々のノードに送られるデータパケットを指す。
【0011】
本発明の一態様によれば、複数のノードと、制御センターへのゲートウェイとして機能し得る少なくとも1つのコレクタノードとを含む、無線ネットワークにおけるデータパケット伝送を制御するためのシステムが提供される。あるノード又はコレクタノードが、コレクタノード宛の又はコレクタノードにアドレス指定されたデータパケットを受け取るとき(又はその後)、このノード又はコレクタノードは、少なくとも送信元ノードに関する情報及び伝送ノードに関する情報を逆ルート情報として所定の時間にわたって記憶する。無線メッシュネットワークにおけるデータパケット伝送は、好ましくはマルチホップモードで行われる。従って、受信ノードがコレクタノードでない場合、その受信ノードはマルチホップ伝送における中間ノード又は転送ノードであり得る。送信元ノード情報及び伝送ノード情報の少なくとも一方は、受信されるアップリンクデータパケットに含められてもよい。送信元ノード情報は、データパケットの伝送を開始したノードのアドレス又は他の識別情報と関係することができる。同様に、伝送ノード情報は、データパケットの受取元である先のノードのアドレス又は識別情報と関係することができる。好ましくは、受信ノードのルートキャッシュ内に、送信元ノード情報は宛先ノード情報として一時的に記憶され、伝送ノード情報は受信ノード情報として一時的に記憶される。アップリンクデータパケットの送信元ノードに宛てられたダウンリンクデータパケットを受け取る場合、逆ルート情報がキャッシュされている間は、ノードは、ダウンリンクデータパケットを転送するためにその逆ルート情報を用いることができる。これらの手段により、ダウンリンクデータパケットをアップリンクデータパケットと逆の方向に伝送することができる。一般に、アップリンク伝送は非常に効率的なルーティングプロトコルに準拠するので、追加のルーティングプロトコルを必要とすることなしに、又はダウンリンクデータパケット内に含めた完全なルーティング情報をなしに、この方法でダウンリンク伝送は改善され得る。従って、本発明の概念は逆ルートキャッシング(reverse-route caching)に関する。
【0012】
無線ネットワークはメッシュトポロジを有することができ、各ノードはルータとして振る舞うことができる。そのようなネットワークは冗長性及び信頼性を高めている。好ましくは、無線ネットワークのノードは、主に大規模な屋外照明システムの場合、固定される。或いは、又は加えて、少なくとも一部のノードの位置は、ネットワークの他のノードの少なくとも一部に知られていてもよい。例えば、ノードの少なくとも一部は、最も近いコレクタノードへのアップリンク伝送用のルーティングテーブルを記憶することができる。アップリンク伝送では、コレクタノード(「シンク(sink)」)へのデータパケット伝送のためのルーティングプロトコルは、多対一ルーティングとも呼ばれるシンク距離ベクタルーティングに基づくことができる。故に、データパケットは、コレクタノードのうちの1つにより近い隣接ノードに伝送される。これらの手段により、データパケット伝送はより高速かつより効率的になる。さらに、これは、例えば1000を超えるノード数を有する大規模な無線メッシュネットワークにおける多数のコレクタノードを不要にすることも可能にする。或いは、又は加えて、ルーティングテーブルは、最も近いコレクタノードにアップリンクデータパケットを転送するためのルーティング情報を備える各ノードに記憶されることができる。アップリンクデータパケットは、検出された事象、センサデータ、及び状態データの少なくとも1つに関係する報告データを含むことができる。例えば、照明システムでは、照明ノードは、電力状態、光センサによって検出される周囲の明るさ、動作状態等を定期的に報告することができる。
【0013】
好ましくは、キャッシング時間、即ち、受信ノードが逆ルート情報を記憶するための所定の時間は、受信ノードに依存する。例えば、送信元ノードに近いノードは、コレクタノードに近いノード又はコレクタノード自体よりも長い時間にわたり逆ルート情報を記憶することができる。従って、キャッシング時間は、コレクタノードまでのそれぞれのノードの距離、例えばホップ距離に依存することができる。一例では、ノードのキャッシング時間は、平均往復時間、即ち、受信したアップリンクデータパケットをノードからコレクタノードに転送するのにかかる時間に、コレクタノードからアップリンクデータパケットの肯定応答を同じ中間ノードを介して受け取るのにかかる時間を加えた時間を上回る。しかしながら、大きなルートキャッシュを保つことは多くの無線装置で不可能な場合があるので、大きなルートキャッシュが必要とされないように、キャッシング時間は十分短いものが選択されてもよい。従って、逆ルート情報の存続時間が短い場合もある。また、ルートキャッシュのサイズはノードによって異なってもよい。好ましくは、ルートキャッシュは、複数の送信元ノードに対応する逆ルート情報が同時にキャッシュされ得るほど十分に大きい。逆ルート情報がノードに保たれる所定の時間は、逆ルート情報を作成するとき開始することができる。或いは、所定の時間は、送信元ノードAに宛てられたダウンリンクデータパケットをノードが転送したときに開始する。これらの手段により、逆ルート情報を用いて第1のダウンリンクデータパケットが伝送された後、逆ルートは所定の時間にわたり依然として開放したままか利用可能である。これは、コレクタノードから同じ送信元ノードAにいくつかのデータパケットが逐次的に送られる場合に特に有用であり得る。
【0014】
場合により、データフィールドはアップリンクデータパケット内に含められ、逆ルート情報が記憶されるべきかどうかを示す。好ましくは、ノードは、データフィールドによって指示される場合、又はデータフィールドがアップリンクデータパケット内に含められる場合、逆ルート情報を単に記憶する。かように、データフィールドがアップリンクデータパケット内に含まれない場合、逆ルート情報は記憶される必要はない。逆ルート情報を記憶する要件は、逆ルート情報をどれ位の期間記憶すべきかを指定することによっても指示され得る。これは、キャッシング時間、即ち、所定の時間をアップリンクデータパケット内に、又は、例えば、所定の時間が逆ルート情報を用いてダウンリンクデータパケットを転送することで開始する場合には、ダウンリンクデータパケット内に含めることによって、実現されてもよい。或いは、アップリンクデータパケットを受け取るノードは、アップリンクデータパケット内で特定される所定の時間をコレクタノードまでのホップ距離と掛けることにより、逆ルート情報を記憶するための個々のキャッシング時間を決めるように適合させることができる。加えて、又はこれに代えて、ノードは、特定の送信元ノードAの送信元ノード情報を含む逆ルート情報を、この送信元ノードAに宛てられた消去情報又は消去コマンドを含むダウンリンクデータパケットを受け取るまで、記憶することができる。送信元ノードAに宛てられ、消去情報を含むダウンリンクデータパケットを受け取ると、ノードは、逆ルート情報を用いてダウンリンクデータパケットを転送した後、この送信元ノードAに対応する逆ルート情報を消去することができる。例えば、ダウンリンクデータパケットのバッチが送信元ノードAに伝送されなければならない場合、伝送ノードのルートキャッシュを解放するために、逆ルート上を進まなければならない最後のパケットが消去情報を含み得る。これらの手段により、最後のダウンリンクデータパケットが通過するまで逆ルートが開放したままであることが保証され得る一方で、逆ルート情報が不必要に長く保たれることはない。さらなる変形形態では、逆ルート上を進むダウンリンクデータパケットは、逆ルート情報がさらに保たれる必要があるかどうか、及び/又はさらにどれ位長く保つ必要があるかを伝送ノードに示すデータフィールドを含むことができる。これは、コレクタノードが複数のデータパケットを送信元ノードAに送る場合に特に有用である。
【0015】
さらなる実施形態では、送信元ノードAに転送されるべきダウンリンクデータパケットを受け取ったノードは、この送信元ノードAに対応する逆ルート情報の可用性に基づき伝送モードを選択することができる。例えば、逆ルート情報がこのノードにおいてもはや利用可能でないない場合、ノードはダウンリンクデータパケットを転送するためにフラッディング等を用いることができる。フラッディングは、ホップ回数制限を含むことができ、即ち、フラッディングはネットワークの特定のエリアに限定されてもよい。ホップ回数制限は、送信元ノードAまでのノードの距離に基づくことができる。従って、フラッディング等の他の伝送モードは、中間ノードにおいて逆ルート情報が利用可能でない場所、例えばコレクタノードから送信元ノードAまでのダウンリンク伝送の途中のどこかの場所から、使用されてもよい。
【0016】
好ましい実施形態では、コレクタノードは、ノードへのダウンリンクデータパケットの伝送を、アップリンクデータパケットの受信がこのノードから予期される場合に、延期するように適合される。アップリンクデータパケットを受け取った後にダウンリンクデータパケットを伝送する場合、コレクタノード及び中間ノードにキャッシュされた逆ルート情報が、ダウンリンクデータパケットを伝送するために使用され得る。従って、ダウンリンクデータパケットは、アップリンクデータパケットを転送した同一の中間ノードを介して、コレクタノードからアップリンクデータパケットの送信元ノードに伝送されてもよい。そのため、アップリンク伝送とその後に続くダウンリンク伝送とに同じ伝送経路が使用され得る。好ましくは、コレクタノードは、送信元ノード情報を宛先ノード情報としてダウンリンクデータパケット内に含め、コレクタノードがアップリンクデータパケットを受け取った中間ノードにそのダウンリンクデータパケットを伝送する。同様に、ダウンリンクデータパケットを受け取る各中間ノードは、ダウンリンクデータパケット内に含まれる宛先ノード情報を記憶済みの送信元ノード情報と比較することができる。記憶済みの送信元ノード情報がダウンリンクデータパケットの宛先ノード情報と同一である場合、ノードは、ダウンリンクデータパケットを、記憶済みの送信元ノード情報に関連付けられる記憶済みの伝送ノード情報に関係した次の中間ノードに転送することができる。
【0017】
好ましくは、コレクタノードは、時間に厳格でないデータパケット又は遅延を許容するデータパケットを遅らせるのみである。遅延時間、即ち、コレクタノードがダウンリンクデータパケットの伝送を遅らせる時間は、ダウンリンクデータパケットに依存し得る。例えば、ダウンリンクデータパケットに関する伝送の緊急度を判断し、それに応じて最大遅延時間を設定するようにコレクタノードを適合させることができる。
【0018】
ダウンリンクデータパケットは、例えば送信元ノードから受け取ったアップリンクデータパケットの肯定応答を含むことができる。加えて、又は或いは、ダウンリンクデータパケットは、要求されたデータ及び/又は他のデータ、例えばプロトコルのアップデート、スケジュール等を含むことができる。好ましい実施形態では、ダウンリンクデータパケット及び受け取ったアップリンクデータパケットの肯定応答は、1つのデータパケットとして伝送される。肯定応答は、その少ないペイロードを考慮した場合は特に大きなデータオーバヘッドを有するので、データオーバヘッドは、肯定応答を同じノードに送る必要がある他のデータと組み合わせることで、減らされ得る。これはピギーバッキング(piggybacking)とも呼ばれる。しかしながら、場合によっては、ダウンリンクデータパケットをアップリンクデータパケットの肯定応答とは別に伝送することが要求される場合がある。この場合、アップリンク伝送中に作成された逆ルートが依然として利用可能な限り、ダウンリンクデータパケットと肯定応答とは伝送されるべきである。かように、ダウンリンクデータパケットは、アップリンクデータパケットの肯定応答を伝送する直前に又はその直後に伝送されてもよい。
【0019】
別の実施形態では、コレクタノードは、それぞれの逆ルート情報を作成するために、1つ又は複数のノードにトリガメッセージを伝送するように適合されることができる。例えば、トリガメッセージは、コレクタノードにおいてデータが利用可能であるという通知メッセージに関係し得る。トリガメッセージは、全てのノードに対するブロードキャストとして、又はあるノード群に対するマルチキャストとして送られてもよい。トリガメッセージは、フラッディングモードで伝送されてもよく、フラッディングモードでは、全てのノードがメッセージの受取元である伝送ノードを除く全ての隣接ノードにメッセージを転送する。トリガメッセージを受け取った後、ノードは、トリガメッセージ内で指定された期間内にデータ要求をコレクタノードに送ることができる。好ましくは、データ要求のアップリンク伝送は、ルートされたユニキャスト伝送として行われる。ノードからのデータ要求に応答し、コレクタノードは、キャッシュされた逆ルート情報を用いてデータ要求の逆ルートを介し、要求されたデータを伝送することができる。これらの手段により、一つ一つのノードにデータを伝送するためのフラデッドユニキャスト伝送(flooded unicast transmissions)なしで済ますことができ、その結果、過度のネットワーク負荷が回避される。
【0020】
さらに、トリガメッセージを受け取ったノードがその範囲内で自らのデータ要求を伝送しなければならない期間をトリガメッセージ内に含めることにより、データトラフィックが時間に関して方向付けられ得る。好ましくは、ノードは、自らのデータ要求を伝送するための指定された期間内にタイムスロットをランダムに選択する。これらの手段により、複数のノードのデータ要求は、該期間の全体にわたって均等に管理され得る。従って、コレクタノードにおけるデータ要求の嵐、及びコレクタノードにおける又はその近傍におけるネットワークの結果的な過負荷が回避され得る。その結果、データパケットの衝突及びその後のデータパケットの損失が防止され得る。
【0021】
あるノード群がより頻繁に一緒にアドレス指定される場合、ブロードキャストメッセージを例えばフラデッドモードで伝送することにより、マルチキャストグループが作成され得る。例えば、同じファームウェアアップデートを必要とするノード又は同じトリガメッセージを受け取るノードは、マルチキャストグループとしてグループ化され得る。マルチキャストグループを作成するためのブロードキャストメッセージは、それぞれのノードのアドレス並びにマルチキャストグループアドレスを含むことができる。ノードアドレス又はグループアドレスの代わりに他の識別情報がノード又はグループをアドレス指定するために用いられ得る。従って、そのアドレス(又は識別情報)がブロードキャストメッセージ内に含まれるノードは、マルチキャストグループアドレス(又はマルチキャストグループの識別情報)を記憶することができ、それによりそれらのノードはマルチキャストグループのメンバーとしてアドレス指定され得る。
【0022】
代替的実施形態では、少なくとも1つのマルチキャストグループアドレス、及び/又は少なくとも1つのノードアドレスが、トリガメッセージ内に含められる。従って、トリガメッセージはフラッディングされ得るが、アドレス指定されたノードだけがデータ要求をコレクタノードに送ることができる。トリガメッセージが宛てられるノードがこの組合せで再度使用されない場合、又はごくまれにしか使用されない場合には、この手法は有利であり得る。場合により、例えばノードアドレスの数がトリガメッセージの利用可能なペイロードを上回る場合、トリガメッセージはいくつかのサブバッチ(sub-batches)に分割されなければならない。その場合、トリガメッセージの各サブバッチが異なるノードアドレスを含み得る。サブバッチは、逐次的に、即ち、次々に処理され得る。これは、トリガメッセージの先のサブバッチ内でアドレス指定された全てのノードからコレクタノードがデータ要求を受け取った後、トリガメッセージの後続のサブバッチが伝送されることを、意味する。或いは、コレクタノードは、要求されたデータをそれぞれのノードに伝送することにより先のサブバッチの全てのデータ要求が答えられるまで、次のサブバッチの伝送を遅らせることさえできる。
【0023】
本発明によるシステムは照明システムにとりわけ適しており、それはほとんどのデータトラフィックが照明ノードからコレクタノードに宛てられ(N:1−トラフィック)、コレクタノードから照明ノードへの伝送(1:N−トラフィック)が生じる頻度は低いからである。逆ルートキャッシングによって、ネットワークセットアップ及び保守の点でシステムを簡素に保ちながら、コレクタノードから他のノードへのデータパケット伝送は改善されることができる。従って、好ましい実施形態では、ノード及び/又はコレクタノードの少なくとも一部は、照明システムの照明ノードに関連付けられる。さらに、本発明によるシステムは、例えば照明ノードをオン/オフにするために、照明ノードの調光パターンを制御するために、及び/又は照明ノードからのデータを報告するために、照明システムのテレマネージメントにおいて使用され得る。照明システムのテレマネージメントのための本発明によるシステムを採用することは、高い拡張性を持つ高性能の照明システムをもたらす。
【0024】
本発明の別の態様では、無線メッシュネットワークのノードのための装置が提供され、ネットワークは複数のノード及び少なくとも1つのコレクタノードを含む。この装置は、対応するノードがコレクタノードに宛てられたアップリンクデータパケットを受け取るとき又は受け取った後、少なくとも送信元ノード情報及び伝送ノード情報を逆ルート情報として所定の時間にわたって記憶することを可能にする。この装置は、ノードに関連付けられても、又はノードに組み込むことができ得る。さらに、この装置は、本システムに関して上述した他の機能の少なくとも一部をノードが実行することを可能にし得る。
【0025】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも1つのコレクタノード及び複数のノードを有する無線メッシュネットワーク内のデータパケット伝送を制御するための方法が提供される。アップリンクデータパケットがコレクタノードに伝送されるとき、そのアップリンクデータパケットを受け取ったノード又はコレクタノードは、少なくとも送信元ノード情報及び伝送ノード情報を逆ルート情報として所定の時間にわたって記憶する。これらの手段により、コレクタノードからアップリンクデータパケットの送信元ノードへのダウンリンク伝送のための逆ルートがキャッシュされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】無線メッシュネットワークの一例を示す。
図2】無線メッシュネットワーク内のマルチホップ伝送を示す。
図3】フラデッドマルチキャスト伝送を概略的に示す。
図4A】逆ルートキャッシングを示す。
図4B】逆ルートキャッシングを示す。
図4C】逆ルートキャッシングを示す。
図5】ダウンリンクデータパケットの伝送を遅らせるプロセスを示す。
図6A】肯定応答データパケットの構造を例示的に示す。
図6B】さらなるデータを含む肯定応答データパケットを例示的に示す。
図7】トリガメッセージに応答してダウンリンクデータを要求するプロセスを示す。
図8】トリガメッセージに応答してダウンリンクデータを要求する別のプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の好ましい用途は、アクチュエータネットワーク、センサネットワーク、又は(例えば街頭、駐車場、及び公共エリア用の)屋外照明システムや、(例えばショッピングセンタ、競技場、駐車場、駅、トンネル等のための)一般エリア照明用の屋内照明システム等の照明システムである。以下では、本発明は、街頭照明用の屋外照明システムの例を用いてさらに説明されるが、この応用例に限定されることはない。照明制御の分野では、無線周波ネットワーク技術による屋外照明のテレマネージメント、とりわけ200個の照明を上回る区画を有する大規模な設備に適用可能な解決策への関心が高まっている。
【0028】
図1に、メッシュトポロジを有する典型的なネットワークが示される。複数のノード10(N)が、無線通信経路40によって互いに接続されている。ノード10の幾つかは、コレクタノード50(N/DC)として機能し、コレクタノード50はシングルホップ伝送又はマルチホップ伝送により周囲のノード10からデータパケットを受け取り、それらのデータパケットを制御センター60に伝送し、逆の場合も同様である。従って、コレクタノード50は、ノード10と制御センター60との間のゲートウェイのように動作することができる。任意選択的に、コレクタノードは、それ自体で、制御センターとして振る舞うことができる。ノード10とコレクタノード50との間の無線通信経路40は、RF伝送によって構成されてもよいのに対し、コレクタノード50と制御センター60との間の接続70はインターネット、移動通信ネットワーク、無線システム、又は他の有線もしくは無線データ伝送システムを利用することができる。従って、ノード10及びコレクタノード50は、無線通信経路40を介して、例えばRF伝送によって、データパケットを送受信するための送受信装置を含む。RF伝送は高い伝送電力を必要とせず、実装及び導入しやすいので、本装置を使用するネットワークをセットアップし運営するコストが削減され得る。このことは、大規模なRFネットワーク、例えば照明システム用のRFテレマネージメントネットワークにとって特に重要である。しかしながら、データパケット伝送は、赤外線通信、自由空間可視光通信、又は電力線通信を代わりに用いてもよい。以下では、ノード10からコレクタノード50に伝送されるデータパケットをアップリンクデータパケットと呼ぶのに対し、コレクタノード50から1つ又は複数のノード10に伝送されるデータパケットはダウンリンクデータパケットと記す。さらに、データパケットがネットワークの全てのノード10にアドレス指定される場合、これはブロードキャスティングと呼ばれ、それに対しノード10のグループに宛てられるデータパケットはマルチキャスト又はグループキャストデータパケットと呼ばれる。単一ノード10に宛てられるデータパケットは、ユニキャストデータパケットと記される。
【0029】
照明制御用のテレマネージメントシステムでは、照明ノード10の数が極めて多い。故に、ネットワークの規模は、とりわけ、概して200未満のノードを含む一般的な無線メッシュネットワークと比べた場合に、非常に大きい。さらに、コストを考慮して、ノード10は通常は限られた処理能力を有し、それにより照明ノード10内の処理資源及びメモリ資源は限られる。従って、単一ノード10の間でデータパケットを伝送するための通信プロトコルは、効率的かつ高速のデータパケット伝送を得るために、この限られた資源を考慮すべきである。さらに、他の所謂アドホックメッシュネットワークに比べ、屋外照明制御ネットワーク用のテレマネージメントシステムは固定されており、即ち、ノード10は移動しない。また、全てのノード10は主電源に接続され得る。その結果、ネットワークの変化は、主に変化する環境、例えばトラフィックに起因する。ノード10が固定されている場合、ノード10の物理的位置、例えばGPS座標がシステム内で知られている場合があり、地理又は位置に基づくルーティングを可能にする。さらに、屋外照明システムのテレマネージメントは高データスループットを必要としない。これは、データトラフィックの大部分は、時間が厳格でないデータパケット、例えば状態報告データ、統計データ、スケジュールアップデート等からなることを意味する。
【0030】
さらに、街頭照明システムなどの照明システムでは通信は、非常に非対称的である。トラフィックのほとんどは、例えば照明ノード10の状態、その調光プロファイル、センサ値、又は電力使用を制御センター60に報告する照明ノード10によって生成される。他のトラフィックは、例えば調光パターンを調節し、又はランプをオン/オフするための、制御センター60から異なるノード10への制御コマンドからなる。制御センター60又はデータコレクタ50からノード10へのトラフィックは、ユニキャスト、マルチキャスト、又はブロードキャストモードの1:Nトラフィックからなる。しかしながら、トラフィックのほとんどは、ノード10から制御センター60又はそれぞれのコレクタノード50へのアップリンク伝送では、N:1トラフィック(ユニキャスト)によって構成される。故に、アップリンク伝送を最適化することはそのようなシステムにとって有利である。
【0031】
図2に、複数のノード10に囲まれたコレクタノード50が示されており、送信元ノードAから複数の中間ノードN1...Niを介したコレクタノード50までのマルチホップユニキャストデータ伝送を示す。ノード10は、半径501、半径502、及び半径503によって示される、コレクタノード50までの異なるホップ距離を有する。例えば、半径501の内側であるが半径502の外側にあるノードAは、アップリンクデータパケットをコレクタノード50に伝送するために3回のホップh1、h2、及びh3を要し、即ち、アップリンクデータパケットは、このノードAから中間ノードN1及び中間ノードN2を介してコレクタノード50に伝送される必要がある。これに対して、半径502の内側であるが半径503の外側にあるノード10は、自身のアップリンクデータパケットを2回のホップでコレクタノード50に伝送することができる。かように、送信元ノードAとコレクタノード50との全ての対に関してホップ距離が定義され得る。照明ノード10からコレクタノード50へのデータパケット伝送(アップリンク)では、シンク距離ベクタルーティングが好ましくは使用され、全てのノード10は、コレクタノード50のうちの1つにより近い隣接ノード10を中間ノード10として選択する。コレクタノード50へのルートは定期的に使用されるので、ここでは、事前対応方式のルーティング構造が採用され得る。事前対応方式のルーティング構造では、どの隣接ノード10がコレクタノード50のうちの1つにより近いかを示すルーティングテーブルが全てのノード10内に記憶される。従って、データパケットは、最も近いコレクタノード50に非常に効率的かつ速い方法で送られる。有利には、信頼性を高めるために、各ノード10が複数のダウンリンク隣接ノード10に関する情報を代替ルートとして保持する。強い干渉又は完全な障害により1つの隣接ノード10に到達できない場合、ルーティングプロトコルはデータパケットをコレクタノード50にルートするためのさらなる代替策を有する。そのようなコレクタ指向のプロトコルは単純であり、大規模な無線メッシュネットワークにも適用できる。さらに、それらは低いプロトコルオーバヘッドを有し、そのためネットワーク負荷を減らす。
【0032】
アップリンク用に効率的なコレクタ指向のルーティングプロトコルを使用する価値はあるが、ダウンリンク経路は、使用される頻度がはるかに低いので、作成し又は維持するのにはるかに費用がかかる。かように、図3に示すように、ダウンリンクデータパケットは、フラッディングにより、コレクタノード50から1つ又は複数の宛先ノードBに伝送される。フラッディングプロセスでは、データパケットがネットワーク内の全ての照明ノード10に転送されるが(矢印)、フラデッドデータパケット内にそのノードアドレスが含まれる宛先ノードB(斜線を施した円)だけがデータパケットを復号する。このフラッディング手法は、ユニキャスト、マルチキャスト、又はブロードキャストのダウンリンクデータパケットに適用され得る。故に、上記に記載したこれらの特定の通信特性を有するシステムでは、ダウンリンク伝送用のフラッディングプロトコルがアップリンク伝送用のコレクタ指向のルーティングプロトコルと組み合わせられ得る。これらの手法により、システムは、効率的なデータ伝送手段を実現しながら、可能な限り単純に保たれ得る。
【0033】
しかし、フラッディングはネットワークの負荷を劇的に高め、それ故ユニキャスト又はマルチキャストデータパケットを伝送するための非常に非効率的な方法である。従って、本発明の好ましい実施形態によれば、ダウンリンク伝送の効率を改善するために、アップリンク伝送の効率的なルーティング経路がその後のダウンリンク伝送に使用される。このために、逆ルート情報、例えば送信元ノードAを識別する情報及びアップリンクデータパケットの受取元である先の伝送ノードを識別する情報がキャッシュされ又は一時的に記憶される。例えば、図4Aに示されるように、アップリンクデータパケットが、送信元ノードAから中間ノードN1及びN2を介してマルチホップモードでコレクタノード50に伝送される(実線矢印)。円弧502及び503は、ここでもそれぞれのノード10からコレクタノード50までのホップ距離を示すのに対し、破線の直線矢印は、アップリンクデータパケットを伝送するための代替ルートを示す。アップリンクデータパケットを受け取るとき、全ての中間ノードNi及びコレクタノード50は、それぞれの逆ルート情報を記憶する。一例では、図4Bに示すように、逆ルート情報がルーティングテーブル内に記憶される。従って、ノード10がコレクタノード50に宛てられたアップリンクデータパケットを受け取ると、ノード10は、送信元ノード情報及び伝送ノード情報をそれぞれ、宛先ノード情報及び次のノード情報として記憶する。ノード10内の限られたメモリ空間又はルートキャッシュのせいで、アップリンクデータパケットの即座の返答(immediate answering)又は肯定応答にしか使用できないように、逆ルート情報は短時間しか記憶されない。それゆえ、ノード10が転送されるべきダウンリンクデータパケットを受け取った場合、ノード10は、ダウンリンクデータパケット内に含まれる宛先ノード情報を、ノード10のルートキャッシュ内に逆ルート情報として記憶されている宛先ノード情報と比較する。ダウンリンクデータパケットの宛先ノードに対応する宛先ノード情報が利用可能であると判定される場合、次のノード情報に対応する次のノード10にダウンリンクデータパケットを転送するために、対応する次のノード情報が抽出される。
【0034】
図4Cに、図4Aの例に関してそれぞれのノードにおいて記憶される逆ルート情報が示される。従って、ノードN1が、送信元ノードAからコレクタノード50に宛てられたアップリンクデータパケットを受け取った後、ノードN1にとってノードAは最初の送信元ノード及び伝送ノードの両方に当たるので、ノードN1は、ノードAのアドレス又は他の識別情報を宛先ノード情報として、及び次のノード情報として記憶する。次いで、ノードN1は、シンク距離ベクタルーティングプロトコルに従って、アップリンクデータパケットを次のノードN2に転送する。アップリンクデータパケットをノードN1から受け取った後、ノードN2は、ノードAのアドレスを宛先ノード情報として、ノードN1のアドレスを次のノード情報として自身のルートキャッシュ内に記憶する。次に、ノードN2は、ノードAへのダウンリンク伝送のために、ノードAのアドレスを宛先ノード情報として、ノードN2のアドレスを次のノード情報としてキャッシュするコレクタノード50にアップリンクデータパケットを転送する。例えば、アップリンクデータパケットがコレクタノード50によって肯定応答されなければならない場合、肯定応答は、それぞれのノードにおいて記憶された逆ルート情報を使用することにより、アップリンクデータパケットとは逆向きに送られ得る(図4Aの曲線状の破線矢印)。従って、コレクタノード50は、ノードAに対応する宛先ノード情報を含む逆ルート情報について自身のルートキャッシュを確認する。肯定応答の宛先ノード、即ち、ノードAに対応する宛先ノード情報がある場合、対応する次のノード10に肯定応答を伝送するために、逆ルート情報の対応する次のノード情報が使用される。与えられた例では、コレクタノード50は、宛先ノードAに宛てられた肯定応答を中間ノードN2に転送する。同様に、中間ノードN2は、肯定応答の宛先ノードAに対応する逆ルート情報について自身のルートキャッシュを確認する。N2に記憶された、ノードAに対応する宛先ノード情報が依然としてある場合、中間ノードN2は、次のノード情報に従って、肯定応答が中間ノードN1に転送されなければならないことを判定する。ノードN1にとって、宛先ノード情報及び次のノード情報は同じであり、即ち、どちらもノードAに対応する。従って、中間ノードN1は、肯定応答を宛先ノードAに伝送する。言い換えれば、アップリンクデータパケットをコレクタノード50に向けて転送する全てのノード10は、パケット発信元ノードを宛先ノードとして、また、アップリンクデータパケットを受信ノード10に最後に伝送したノード10をその宛先ノードに向けた次の転送ノードとして持つエントリを自身のルートキャッシュ内に記憶する。当然ながら、同じ方法が他の種類のダウンリンクデータパケットに適用され得るし、肯定応答の伝送に限定されることはない。これらの手段により、ネットワークノード10に向かう逆ルートが所定の時間にわたってキャッシュされ得る。かように、コレクタノード50から個々のノード10への通信経路は、ノード10が通信を開始する場合にのみ最適化され得る。
【0035】
資源が限られた何千ものノード10を有する大規模なネットワークでは、ダウンリンク伝送用の逆ルートの一部しかキャッシュされ得ないので、逆ルートの限られた存続時間となる。逆ルートがノード10においてキャッシュされる期間は、それぞれのノード10に依存し得る。例えば、期間の長さは、コレクタノード50までのそれぞれのノード10の近接性に対応して設定され得る。従って、コレクタノード50に近いノード10は、コレクタノード50から離れているノード10よりも短い期間にわたり逆ルート情報をキャッシュすることができる。このことはとりわけ有利である。なぜなら、コレクタノード50に近いノード10は、アップリンクデータパケットをコレクタノード50に転送することにはるかに多く関与し、それ故にはるかに多くの逆ルートをキャッシュしなければならないからである。これに対して、コレクタノード50から離れているノード10は、アップリンク伝送において転送ノードとして機能する頻度がより低い。さらに、コレクタノード50に近いノード10では、データパケットをコレクタノード50に転送し、逆ルート情報を用いて転送すべき後続のデータパケットをコレクタノード50から受け取るのに平均的に要する時間ははるかに短い。それ故、コレクタノード50に近いノード10のキャッシュ期間は、コレクタノード50から離れているノード10のキャッシュ期間ほど長い必要はない。好ましくは、キャッシュ時間は、それぞれのノード10からコレクタノード50にアップリンクデータパケットを伝送し、データコレクタ50からすぐに返される肯定応答を受け取るのにかかる時間と少なくとも同程度の長さである。従って、キャッシュ時間は、少なくとも、それぞれのノード10からコレクタノード50及び反対方向の往復に平均して要する時間であり得る。この往復時間は、例えばカウンタを保つことにより、それぞれのノード10自体が肯定応答モードでコレクタノード50に送るユニキャストメッセージから獲得されてもよい。最初は、往復時間は高いデフォルト値に設定されてもよいが、ノード10において往復時間がより正確に求められると、往復時間は短くされ得る。
【0036】
逆ルートキャッシングをより効率的に活用するために、コレクタノード50は、例えば定期データ報告等の規則的なアップリンクデータパケットがすぐにノード10から予期される場合、そのノード10へのダウンリンクデータパケットをキャッシュすることができる。データパケットのキャッシュ時間又は遅延は、アップリンクデータパケットの時間感度(time sensitivity)に依存し得る。例えば、アップリンクデータパケットが時間に厳格でなく又は遅延に無反応である場合、そのアップリンクデータパケットは、時間に厳格なデータパケットよりも長い時間遅らされ得る。ダウンリンクデータパケットをキャッシュするこの手法は、照明システムの照明ノード10に新たなオン/オフスケジュールを伝送するのにとりわけ有益である。新たなスケジュールは日中作成され得るが、暗くなるときにのみ通常は実施されるので、直ちに伝送される必要はない。従って、それぞれの照明ノード10からアップリンクデータパケットが受け取られるまで、スケジュールはコレクタノード50に記憶され得る。その後、逆ルート情報を用いて新たなスケジュールがダウンリンクデータパケットとして照明ノード10に伝送され得る。これは、個々の照明ノード10に向けてフラッディングすることにより、コストのかかるユニキャスト通信を回避する。
【0037】
図5に、このプロセスの別の例が示される。ここでは、アップリンクデータ伝送は肯定応答モードで実行され、即ち、宛先ノードから送信元ノードに肯定応答が返される。従って、コレクタノード50がノード1からアップリンクデータパケットを受け取った後、コレクタノード50は、逆ルートが依然として利用可能である限り、肯定応答ACKをノード1に送り返す。コレクタノード50がノード1に送るべきダウンリンクデータを有する場合、コレクタノード50は、ダウンリンクデータパケットを所定の時間にわたってキャッシュすることができる。アップリンクデータパケットがその後ノード1から受け取られる場合、コレクタノード50は、アップリンクデータパケットの肯定応答及びキャッシュ済みのダウンリンクデータパケットをノード1に伝送する。ここでは、ネットワーク資源を節約するために、ダウンリンクデータパケット及び肯定応答は、アップリンクデータパケットの逆ルートを介して、1つの結合ダウンリンクデータパケットとして伝送され得る。或いは、例えば、パケットサイズが大きすぎる場合、ダウンリンクデータパケット及び肯定応答は分けられ、ノード1への逆ルートが利用可能な期間内に、次々に送られ得る。こうして、ダウンリンクデータパケットは、肯定応答を伝送する直前に又はその直後に伝送され得る。いかなる場合でも逆ルートは依然として利用可能であり、そのため、結合データパケット又は肯定応答とダウンリンクデータパケットとは、アップリンクデータパケットが通過した同一の中間ノードを介してノード1に送り返される。先に述べたように、この方法は非肯定応答式の伝送モードにも適用できる。
【0038】
図6Aに、肯定応答データパケットの構造が例示される。概して、肯定応答データパケットは完全なヘッダオーバヘッド、即ち、肯定応答が送られなければならない宛先ノードに関する情報を必要とする。しかしながら、肯定応答は、通常、肯定応答されるデータパケットの識別情報、例えばパケットの種類及びシーケンス番号しか含まないので、肯定応答は多くのペイロードを必要としない。故に、完全な物理層(PHY)、MAC層、及びネットワーク層のヘッダオーバヘッドが肯定応答には必要とされるが、肯定応答は多くのペイロードを含まず、データパケットの残りの伝送容量を空のままにする。よって、ヘッダオーバヘッドとペイロードとの比率は肯定応答では不利であり、これによりネットワーク効率が下がる。ヘッダオーバヘッドをより効率的に使用するために、肯定応答データパケットは、図6Bに示すように、その宛先ノードに同じく送信されなければならない他のデータで埋められ得る。例えば、上記のように、肯定応答はキャッシュ済みのダウンリンクデータパケットと組み合わせられ得る。ヘッダオーバヘッドが1度しか必要でないので、これらの手段によりネットワーク負荷が減少し得る。これはピギーバッキングとも呼ばれる。
【0039】
図7には、逆ルートキャッシングを活用するための別のプロセスが示される。ここでは、1つ又は複数の照明ノード10のための新たな照明スケジュール、ファームウェアアップデート、調光パターン、他の構成情報といったデータが、コレクタノード50において利用可能である。データを含むユニキャスト、マルチキャスト、又はブロードキャストデータパケットをフラッディングする代わりに、コレクタノード50は、コレクタノード50においてデータを利用可能であることを示すトリガメッセージをフラッディングする。フラッディングされるトリガメッセージは、ユニキャスト、マルチキャスト、又はブロードキャストデータパケットとすることができ、ネットワークの単一ノード10、ノード10のグループ、又は全てのノード10にデータが送られるべきかに依存して、対応するアドレス指定を含む。これらの手法により、一時的な逆ルートを作成するために、ノード10がコレクタノード50にデータを要求するようトリガされる。従って、コレクタノード50からn個のノード10へデータ及び続くn個の(効率的な)肯定応答を伝送するためにn個の非効率なフラデットユニキャスト(flooded unicasts)を用いる代わりに、たった1つのトリガメッセージが、n個のノード10からのn個の効率的なデータ要求をトリガするために、フラッディングされ、このことは、要求されたデータを含むダウンリンクデータパケットでそれぞれの効率的な返答を可能にする。故に、n個の単一ノード10にアップデートをロードするには、たった1個のフラデッドマルチキャスト(又はブロードキャスト)と、2n個のユニキャストしか必要とされない。
【0040】
図7では、マルチキャストトリガメッセージは、どの期間内にデータ要求がコレクタノード50に伝送されるべきか宛先ノード10に示す期間を含む。与えられた例では、トリガメッセージは、6つの要求スロットを有する期間を含む。マルチキャストトリガメッセージ内でアドレス指定された各ノード10は、タイムスロットをランダムに選択し、選択されたタイムスロット内でデータ要求をデータコレクタ50に伝送する。データ要求に応答し、コレクタノード50は、要求されたデータをそれぞれのノード10に届けるダウンリンクデータパケットを返す。トリガメッセージ内で指定された期間内のタイムスロットをランダムに選択することにより、輻輳及びパケット衝突が回避され得る。
【0041】
マルチキャストグループ内にまだないノード10にアップデートデータが伝送されるべき場合、マルチキャストグループが最初に作成されなければならない。マルチキャストグループの作成は、新たなマルチキャストグループ内に含めるべきそれぞれのノード10のネットワークアドレス又は他の識別情報を含む、ブロードキャストメッセージをフラッディングすることで行われ得る。しかしながら、これは大量のネットワークトラフィックを引き起こすので、このプロセスは、新たに生成されるマルチキャストグループが将来再び使用される場合にのみ有利である。1度しかアドレス指定される必要がないノード10のグループにとって、トリガメッセージ内にそれぞれのノード10のネットワークアドレス(又は識別情報)を含めることはより得策であり得る。データパケットの利用可能なペイロードは限られているので(図6参照)(例えばIEEE802.15.4のデータパケットでは20−25個の4バイトアドレス)、トリガメッセージは限られた数のノードアドレスしか含むことができない。ノード10の数が多すぎる場合、トリガメッセージは、アドレス指定されたノード10が自身のデータ要求を送らなければならない範囲内で複数のサブバッチに分けられることができ、各サブバッチは、異なるノードアドレス及び期間を含む。これを図8に示す。図示の例では、コレクタノード50は、第1のサブバッチの6つの要求スロットを有する期間を含む、第1のサブバッチトリガメッセージをフラデッドマルチキャスト(flooded multicast)としてノード1、2、及び3に送る。ノード1、2、及び3は、6つの要求スロットの1つをランダムに選択し、それに応じて自らのデータ要求を伝送する。ノード10からデータ要求を受け取った後、コレクタノード50は、先に説明したように、データ要求の逆ルートを用いて要求されたデータをそれぞれのノード10に伝送する。その後、他のサブバッチについても同じプロセスが繰り返される。好ましくは、コレクタノード50が先のサブバッチの最後のデータ要求に答えた後で、次のサブバッチトリガメッセージが伝送される。これらの方法により、コレクタノード50は先のサブバッチの総期間が経過するまで待つ必要がなく、先のサブバッチの最後のノードが自らのデータパケットを要求した直後に次のサブバッチトリガメッセージを伝送し始めることができる。1つのサブバッチのノード10は、トリガメッセージ内で指定された期間内に要求スロットをランダムに選択するので、又、異なるサブバッチのデータ要求は重複しないので、コレクタノード50及びその周囲におけるデータ衝突が回避され得、それによりデータ損失及び輻輳を防ぐ。
【0042】
従って、本発明によれば、基礎となるネットワーキングプロトコルを効率的に使用するために、例えばクロスレイヤ通信を用いてアプリケーション層又はトランスポート層プロトコルが適合される。2つの単純なプロトコル、即ち、フラッディングとシンク距離ベクタルーティングとを組み合わせることにより、無線ネットワーク内でデータを伝送するためのシステム及び方法が提供され、このシステム及び方法ではコレクタノードからのダウンリンクデータ伝送が最適化される。このシステム及び方法は、アップリンク伝送ルートに沿ったノード内に逆ルート情報を一時的に記憶することによって実現される。この原理は、アップリンクデータパケットが予期される場合にコレクタノードにおいてダウンリンクパケットの伝送を遅らせることにより、又はデータ要求を伝送するように個々のノードをトリガすることにより、さらに活用され得る。加えて、アップリンクデータパケットがコレクタノードによって肯定応答されなければならない場合、肯定応答データパケット内にさらなるデータが含まれ得る。これらの方法により、ネットワーク資源はより効率的に利用され得、その結果ネットワークの拡張性が高まる。
図2
図3
図1
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8