特許第6045513号(P6045513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045513
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】天井の防黴方法および防黴天井設備
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20161206BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20161206BHJP
   E04B 1/72 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   E04G23/02 H
   F24F7/007 101
   E04B1/72
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-9274(P2014-9274)
(22)【出願日】2014年1月22日
(65)【公開番号】特開2015-137479(P2015-137479A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】514019198
【氏名又は名称】株式会社クラタコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(72)【発明者】
【氏名】蔵田 泰明
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−082071(JP,A)
【文献】 特開平05−311956(JP,A)
【文献】 特開2001−029255(JP,A)
【文献】 特開2000−008505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04B 1/72
F24F 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一フロアー(31)で多種類商品を取扱うところのフロアーの一部分に高湿度発生品取扱場(32)を設けた建築構造物(30)において、
多数の天井材を張り詰めて構成した建築構造物の天井(10)に黴が再び発生するのを防止する方法であって、
黴が多く発生している第一黴天井材(12)を撤去する撤去工程(A)と、
前記第一黴天井材に代えて新たな張替天井材(11)を張り付ける張替工程(B)と、
少なくとも前記張替天井材の表面に水性の防黴塗料剤(P1)を塗布する第一塗布工程(C)と、
前記張替天井材またはその近傍に上向送風天井ファン(20)を取付ける取付工程(E)と、を含む工程から成る建築構造物天井の防黴方法。
【請求項2】
同一フロアー(31)で多種類商品を取扱うところのフロアーの一部分に高湿度発生品取扱場(32)を設けた建築構造物(30)において、
多数の天井材を張り詰めて構成した建築構造物の天井(10)に黴が再び発生するのを防止する方法であって、
黴が多く発生している第一黴天井材(12)を撤去する撤去工程(A)と、
前記第一黴天井材に代えて新たな張替天井材(11)を張り付ける張替工程(B)と、
少なくとも前記張替天井材の表面に水性の防黴塗料剤(P1)を塗布する第一塗布工程(C)と、
前記第一塗布工程に前後して,黴の発生が少ない第二黴天井材(13)の表面にアルコール除菌剤(P3)または黴除去剤(P2)あるいはその両方を塗布する第二塗布工程(D)と、
前記張替天井材またはその近傍に上向送風天井ファン(20)を取付ける取付工程(E)と、を含む工程から成る建築構造物天井の防黴方法。
【請求項3】
同一フロアー(31)で多種類商品を取扱うところのフロアーの一部分に高湿度発生品取扱場(32)を設けた建築構造物(30)において、
多数の天井材を張り詰めて構成した建築構造物の天井(10)に、黴が再び発生するのを防止した天井構造であって、
黴が多く発生している第一黴天井材(12)に代えて設けられ,表面に,水性の防黴塗料剤(P1)が積層された張替天井材11を有する天井(10)と、
前記張替天井材またはその近傍に取付けられた上向送風天井ファン(20)と、を備えることを特徴とする建築構造物天井の防黴天井設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの各種建築構造物における天井の防黴方法、および当該防黴方法が施工された防黴天井設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットなどの食品を取り扱う建築構造物の天井には黴が発生し易い。こうした黴は、温度や湿度が比較的高い場所に発生し易く、従って、例えば、スーパーマーケットの飲料売り場や野菜売り場などにおいて特に顕著である。
【0003】
通常、建築構造物の天井に発生した黴は黒黴などの黒ずんだ不快な色彩を持っているので、当該建築構造物の印象を著しく低下させてしまう。また、衛生的にも好ましくない。
【0004】
なお、これまでに黴の発生を防止するための手段は創案されているが(例えば、特許文献1参照)、すでに黴が発生した天井を対象としたものは創案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−333240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した建築構造物の天井に発生した黴は植物の一種であり、天井に根を張っているので容易に拭き取ることができず、従って、少なくとも黒ずんだ黴が発生している天井は部分的に張り替えることが好ましい。しかし、張り替えられた新たな天井にも、比較的短期間のうちに再び黴が発生してしまい、再度、天井を張り替える必要が生じてしまう。
【0007】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、主としてスーパーマーケットなどの建築構造物の天井に発生した黴を処理すると共に、その天井に再び黴が発生するのを防止する防黴方法を提供することを課題とする。同時に、黴が再び発生するのを防止した防黴天井設備を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図1乃至図3を参照して説明する。請求項1に記載の天井の防黴方法は、同一フロアー31で多種類商品を取扱うところのフロアーの一部分に高湿度発生品取扱場32を設けた建築構造物30において、多数の天井材を張り詰めて構成した建築構造物の天井10に、黴が再び発生するのを防止する方法であり、黴が多く発生している第一黴天井材12を撤去する撤去工程Aと、前記第一黴天井材12に代えて新たな張替天井材11を張り付ける張替工程Bと、少なくとも前記張替天井材11の表面に水性の防黴塗料剤P1を塗布する第一塗布工程Cと、前記張替天井材11またはその近傍に上向送風天井ファン20を取付ける取付工程Eとを備える。
【0009】
請求項2に記載の天井の防黴方法は、同一フロアー31で多種類商品を取扱うところのフロアーの一部分に高湿度発生品取扱場32を設けた建築構造物30において、多数の天井材を張り詰めて構成した建築構造物の天井10に、黴が再び発生するのを防止する方法であり、黴が多く発生している第一黴天井材12を撤去する撤去工程Aと、前記第一黴天井材12に代えて新たな張替天井材11を張り付ける張替工程Bと、少なくとも前記張替天井材11に水性の表面に防黴塗料剤P1を塗布する第一塗布工程Cと、前記第一塗布工程Cに前後して、黴の発生が少ない第二黴天井材13の表面にアルコール除菌剤P3または黴除去剤P2あるいはその両方を塗布する第二塗布工程Dと、前記張替天井材11またはその近傍に上向送風天井ファン20を取付ける取付工程Eとを備える。
【0010】
請求項3に記載の防黴天井設備1は、同一フロアー31で多種類商品を取扱うところのフロアーの一部分に高湿度発生品取扱場32を設けた建築構造物30において、多数の天井材を張り詰めて構成した建築構造物の天井10に、黴が再び発生するのを防止したものであり、黴が多く発生している第一黴天井材12に代えて設けられ、表面に、水性の防黴塗料剤P1が積層された張替天井材11を有する天井10と、前記張替天井材11またはその近傍に取付けられた上向送風天井ファン20とを備える。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の天井の防黴方法は、撤去工程A、張替工程B、第一塗布工程Cおよび取付工程Eによって行われるので、建築構造物の天井10に黴が再び発生するのを防止することができる。
【0012】
すなわち、撤去工程Aによって黴が多く発生している第一黴天井材12を撤去した後、張替工程Bによって新たな張替天井材11を貼り付けるので、第一黴天井材12に発生している黴を完全に取り去ることができる。
【0013】
また、第一塗布工程Cによって張替天井材11の表面に水性の防黴塗料剤P1を塗布するので、張替天井材11に新たな黴が発生するのを確実に防止することができる。
【0014】
さらに、取付工程Eによって張替天井材11またはその近傍に上向送風天井ファン20を取付けるので、当該上向送風天井ファン20から供給される送風によって張替天井材11を含む天井10に新たな黴が発生するのをさらに確実に防止することができる。
【0015】
請求項2に記載の天井の防黴方法は、請求項1に記載の発明と同様の効果を発揮する。また、請求項1に記載の発明に加えて、第一塗布工程Cに前後して、黴の発生が少ない第二黴天井材13の表面にアルコール除菌剤P3または黴除去材あるいはその両方を塗布する第二塗布工程Dを加えたので、当該第二黴天井材13に発生している黴を死滅させあるいは除去することができる。これにより、建築構造物の天井10に黴が再発生するのを、より確実に防止することができる。
【0016】
請求項3に記載の防黴天井設備1は、黴が多く発生している第一黴天井材12に代えて設けられ、表面に、水性の防黴塗料剤P1が積層された張替天井材11を有する天井10と、張替天井材11またはその近傍に取付けられた上向送風天井ファン20とを備えるので、建築構造物の天井10に黴が再び発生するのを確実に防止することができる。
【0017】
すなわち、張替天井材11には、その表面に防黴塗料剤P1が積層されているので、当該張替天井材11に黴が発生するのを確実に防止することができる。
【0018】
また、上向送風天井ファン20によって天井10の下面に沿って空気流を流すことができるので、張替天井を含む天井10に黴が発生するのをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は建築構造物の鉛直切断正面図、(b)は平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る防黴天井設備を示すもので、(a)は鉛直切断正面図、(b)は下面図である。
図3】本発明の実施形態に係る天井防黴方法の工程を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る天井防黴方法を示すもので、(a)は撤去工程、(b)は張替工程、(c)は第一塗布工程、(d)は第二塗布工程、(e)は取付工程を示すそれぞれの正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る天井の防黴方法の実施形態を、図1乃至図4に示す。この防黴方法は、同一フロアー31で多種類商品を取扱うところのフロアーの一部分に高湿度発生品取扱場32を設けた建築構造物30において、多数の天井材を張り詰めて構成した建築構造物の天井10に、黴が再び発生するのを防止する方法であり、撤去工程A、張替工程B、第一塗布工程C、第二塗布工程Dおよび取付工程Eを備える。
【0021】
なお、この建築構造物には、スーパーマーケットや、水分を含む食品類(飲料や野菜等)を取り扱うコンビニエンスストアあるいはホームセンターなどが含まれる。また、通常、天井材は化粧石膏ボード(通称、ジプトーン)で形成されており、その肉厚は9.5mmで、縦および横の長さが910mmである。
【0022】
撤去工程Aでは、黒黴などの不快な印象を与える黴が多く発生している天井材(第一黴天井材12)を撤去する(図4(a)参照)。なお、撤去した第一黴天井材12は廃棄処分とする。
【0023】
張替工程Bでは、撤去した第一黴天井材12に代えて、その部分に新たな天井材(張替天井材11)を張り付ける(図4(b))。この張替天井材11は、撤去した第一黴天井材12と同じジプトーンを使用するのが好ましい。
【0024】
第一塗布工程Cでは、張替天井材11の表面(下面)に水性の防黴塗料剤P1を塗布する(図4(c))。なお、この塗布はローラーRを使用して行うのが好ましいが、スプレー噴霧器などで行うこともできる。また、水性の防黴塗料剤P1としては、水性反応硬化型ツヤ消塗料(商品名・水性ケンエース(日本ペイント株式会社))に防黴効果や抗菌効果を加えたものが好ましい。当該防黴塗料剤P1は、水性であるため塗布工程が容易であると共に強力な防黴性能を備えているため、建築構造物の天井10に広い面積にわたって塗布するのに好適である。
【0025】
なお、本発明者らは、本発明で使用する防黴塗料剤P1の防黴性能を確認するための試験を行った。その結果を、以下の表1および表2に示す。なお、この試験において使用した試験片は、前処理として促進対候試験機(WOM)で500時間経過させたものである。また、試験方法および供試菌は、JIS Z 2911に準拠した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
この試験から明らかなように、本発明に係る防黴方法で使用した防黴塗料剤P1(No.1)は、培養3週間においても菌糸の発育がなく、他の二つの塗料剤と比較して防黴効果にきわめて優れることが理解できる。
【0029】
この第一塗布工程Cを行った後、当該防黴塗料剤P1が張替天井材11に浸透し、乾燥するまでの養生期間を設ける。
【0030】
第二塗布工程Dでは、黴の発生が少ない天井材(第二黴天井材13)の表面にアルコール除菌剤P3(例えば、ジョンションアルコール(商品名))を塗布する(図4(d))。また、こうした黴の発生が少ない部分は、黴除去剤P2(例えば、殺菌剤EX)を使用して、当該黴を除去することもできる。なお、この第二塗布工程Dは、第一塗布工程Cに先だってあるいは同時に行うこともできる。
【0031】
そして、取付工程Eでは、張替天井材11またはその近傍に上向送風天井ファン20を取付ける(図4(e))。この上向送風天井ファン20は天井10から近い距離に取り付けて、当該天井10に沿って風が連続的に送られるようにするために、1日に24時間運転して上向きに吸込んだ空気を天井下面に沿って放射方向に送り出す。なお、上向送風天井ファン20の風の向きや強さを容易に調節するために、リモートコントロール装置を取付けている。
【0032】
本実施形態に係る天井の防黴方法は、上記した工程を行うので、建築構造物の天井10に黴が再び発生するのを確実に防止することができる。すなわち、撤去工程Aによって黴が多く発生している第一黴天井材12を撤去した後、張替工程Bによって新たな張替天井を貼り付けるので、第一黴天井材12に発生している黴を取り去ることができる。
【0033】
また、第一塗布工程Cによって張替天井材11の表面に水性の防黴塗料剤P1を塗布するので、張替天井材11に新たな黴が発生するのを防止することができる。
【0034】
また、第二塗布工程Dにおいて、黴の発生が少ない天井材(第二黴天井材13)の表面にアルコール除菌剤P3や黴除去剤P2を塗布するので、天井10に黴が発生するのをさらに効果的に防止することができる。
【0035】
そして、取付工程Eによって張替天井材11またはその近傍に上向送風天井ファン20を取付けるので、当該上向送風天井ファン20から天井下面に供給される送風によって張替天井材11を含む天井10に新たな黴が発生するのを防止することができる。
【0036】
本発明の係る防黴天井設備1の実施形態を、図2に示す。これは、多数の天井材を張り詰めて構成した建築構造物の天井10に、黴が再び発生するのを防止したものであり、天井10および上向送風天井ファン20とで構成される。
【0037】
天井10は、ジプトーンで構成される多数の天井材を貼り付けて構成される。そして、その一部に、同じくジプトーンで構成される張替天井材11を供える。この張替天井材11は、黴が多く発生していたために除去された第一黴天井材12に代えて設けられたものである。この張替天井材11の表面(下面)には、水性の防黴塗料剤P1が積層されている。この防黴塗料剤P1は、前記防黴方法で使用したものと同一である。
【0038】
上向送風天井ファン20は天井10の下面に沿って風を供給して、当該天井10に黴が発生するのを抑制するものである。この上向送風天井ファン20は、張替天井材11に直接取付けることが好ましいが、その近傍に取付けることもできる。
【0039】
本実施形態に係る防黴天井設備1においては、張替天井材11の表面に防黴塗料剤P1を積層しているので、当該張替天井材11に黴が発生するのを確実に防止することができる。
【0040】
また、上向送風天井ファン20によって天井10の下面に沿って空気流を流すので、張替天井を含む天井10に黴が発生するのをより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 防黴天井設備
10 天井
11 張替天井材
12 第一黴天井材
13 第二黴天井材
20 上向送風天井ファン
30 建築構造物
31 フロアー
32 高湿度発生品取扱場
A 撤去工程
B 張替工程
C 第一塗布工程
D 第二塗布工程
E 取付工程
P1 防黴塗料剤
P2 黴除去剤
P3 アルコール除菌剤
R ローラー
図1
図2
図3
図4