(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
容器本体と手動バルブを有し、容器本体と手動バルブの間に、傾き検出自動閉塞機構を備え、正常時は、手動バルブを開くことによって容器本体から充填物を流出可能とする傾き検出自動閉塞機構付き容器であって、
手動バルブは、充填物を通過させ流出口から流出させる第1の流出路を備えており、
傾き検出自動閉塞機構は、
容器本体に固定され、第1の流出路に連通する第2の流出路を有する本体フレームと、
第2の流出路を開閉する開閉弁と、
一回動方向に第1のバネで常時付勢されており、開閉弁を開閉操作する回動可能なカム付きハンドルと、
一方向に移動するように第2のバネによって常時付勢されており、カム付きハンドルに係脱可能なスライドシャフトと、
スライドシャフト側に向けて第3のバネによって常時付勢され、スライドシャフトに係脱可能なロックピンと、
ロックピンに導線を介して結着され、正常時は容器本体に固定された台座上に載置され、第3のバネの付勢力より大きな重力を生じる重量を有する球状の重錘と、を備えており、
正常時は、カム付きハンドルは、第1のバネの付勢力に抗しスライドシャフトに係止され、開閉弁を開く状態に保持され、スライドシャフトは、第2のバネの付勢力に抗してロックピンに係止されて保持されており、
容器本体が、重錘が台座から落下する角度以上に傾斜すると、重錘の重力が第3のバネの付勢力より大きいために、ロックピンを引いてスライドシャフトの係止を解除し、スライドシャフトは、第2のバネの付勢力によって移動しカム付きハンドルの係止を解除し、カム付きハンドルが第1のバネの付勢力によって回動して、開閉弁が自動的に第2の流出路を閉塞するように構成されていることを特徴とする傾き検出自動閉塞機構を備えた傾き検出自動閉塞機構付き容器。
本体フレームにカムプレートを回動可能に設け、カムプレートの一端に形成したカム孔にスライドシャフトに固定したカムピンを遊動可能に挿通させ、カムプレートの他端をカム付きハンドルが当接可能な構成とし、
開閉弁が第2の流出路を閉塞した状態において、カム付きハンドルを第1のバネの付勢力に抗して回動することによって、開閉弁が第2の流出路を開いた状態にするとともに、カム付きハンドルでカムプレート及びカムピンを介してスライドシャフトを第2のバネの付勢力に抗して移動して、ロックピンでスライドシャフトを係止し、スライドシャフトでカム付きハンドルを係止し、正常時の状態に復帰可能とする構成であることを特徴とする請求項1に記載の傾き検出自動閉塞機構を備えた傾き検出自動閉塞機構付き容器。
【背景技術】
【0002】
現代社会では、各種のガスが業務用及び家庭用に用いられており、それらガスを充填して用いる容器も使用されている。例えば、LPガス容器は、昭和30年頃より全国の家庭に普及され、その使用し易さや取扱いが簡単なことから、急速に発展してきた。
【0003】
通常は、地震等でLPガス容器が転倒、又は、傾くことは少ない。まず転倒防止用チェーン等で固定して有り、高圧のホースで入口根元バルブに接続され、ガスが漏れることはない。このため現在、全国で2000万世帯以上の場所で安全に使用されている。
【0004】
しかしこれは、日常平穏な時だけであり十分なこととは考えられない。現に地震の発生場所の近くで、津波に遭っていない地域では、住宅の外に設置されたLPガス容器は転倒し、ガス配管は、引っ張られ曲がっているという事態が生じている。
【0005】
特に、近年、東日本大震災の発生後、津波が発生し東北地方の海岸沿いを襲い、多くの人命を奪い、地域の市や町を跡形も無く破壊した。この現実は、各報道、メディア等で承知され、記憶に新しい。又、最近の台風の暴風雨による洪水や、土石流の被害、竜巻の発生が、近年、激しさを増すばかりと思われる。
【0006】
このような大災害が発生した時、LPガス容器に対する安全対策は、まだ十分とは言えない。実際、東日本大震災に遭った現地において「津波に流されてきたLPガス容器が、シューシューと音を立て流れていき、火災になった。」、又洪水や土石流で流されたLPガス容器が氾濫した中に有る等、の報道がされている。
【0007】
このような大きな災害では、転倒防止用チェーンは、取付け部より壁からはぎ取られている。ゴムでできた高圧ホースは、辛うじて容器の引っ張り荷重に耐えている状態である。このようなことは、津波がこなくても地震で被災した地域全体で起きており、ガスが漏れていた箇所も見られた。これに着火源があればさらに被害が広がったと考えられる。内陸部では、土石流や、河川の河口付近では洪水が、平野部でも竜巻が発生し、今までに無い災害の頻度が高くなっている。
【0008】
どのガスでも性質上、有効に使用している上では有難い性質を持っているが、漏れが発生すると、大きな災害となってしまう。LPガスに例えれば、通常容器内には圧力を高くしたLPガスが充填されている。圧力を高くすると、気体の容積の250分の一になり液体になる。逆に容器からガスが漏れると、気体に変化して、250倍になる。このようにガスが抜けている間は、周りから気化熱を奪うので、止めようと素手で触った場合、凍傷になる危険性もある。
【0009】
ところで、家庭、又は、業務・工業用で使用するLPガス関連の安全対策は、室内で使用する機器に対しては多く見られるが、外部に設置されている機器に対しては、少ないのが現状である。
【0010】
従来、ガス容器が強い外部衝撃を受け、ガス容器バルブ本体の軸方向が鉛直方向に対して設定角度以上になると、ガス容器バルブ本体のガス流入口が弁体により閉塞されるガス放出防止機構付きガス容器バルブが知られている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のとおり、近年、各種の大災害に見舞われる可能性があり、LPガス等に使用する高圧ガス容器の安全対策は社会的要請が高まっているが、必ずしも十分な解決策は見いだされておらず、人間の手でバルブを閉める以外、確実な安全対策はなかった。
【0013】
特許文献1記載の発明では、ガス容器バルブ本体の軸方向が鉛直方向に対して設定角度以上になると、ガス容器バルブ本体のガス流入口が弁体により閉塞されるが、弁体と弁座部の回動に不具合(摩擦等が発生しなめらかに回動しない等)があった場合は、弁体による閉塞が阻害される可能性があり、必ずしもどの動作は確実とは言えないものと考えられる。
【0014】
本発明は、LPガスのようなガスや液体等の充填、取り出しに使用する容器について、地震、津波、風水害、洪水、土石流、竜巻、又は搬送中の事故やいたずらによる転倒等に対する安全対策を提供することを目的とし、災害等において、ガスや液体の流出路を閉塞して、内部に蓄積されたガスや液体等の流出を自動的に遮断して不測の漏れを防止することのできる、安価で、取扱いが簡単で、消費者等に負担が少ない傾き検出自動閉塞機構付き容器を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記課題を解決するために、容器本体と手動バルブを有し、容器本体と手動バルブの間に、傾き検出自動閉塞機構を備え、正常時は、手動バルブを開くことによって容器本体から充填物を流出可能とする傾き検出自動閉塞機構付き容器であって、手動バルブは、充填物を通過させ流出口から流出させる第1の流出路を備えており、傾き検出自動閉塞機構は、容器本体に固定され、第1の流出路に連通する第2の流出路を有する本体フレームと、第2の流出路を開閉する開閉弁と、一回動方向に第1のバネで常時付勢されており、開閉弁を開閉操作する回動可能なカム付きハンドルと、一方向に移動するように第2のバネによって常時付勢されており、カム付きハンドルに係脱可能なスライドシャフトと、スライドシャフト側に向けて第3のバネによって常時付勢され、スライドシャフトに係脱可能なロックピンと、ロックピンに導線を介して結着され、正常時は容器本体に固定された台座上に載置され、第3のバネの付勢力より大きな重力を生じる重量を有する球状の重錘と、を備えており、正常時は、カム付きハンドルは、第1のバネの付勢力に抗しスライドシャフトに係止され、開閉弁を開く状態に保持され、スライドシャフトは、第2のバネの付勢力に抗してロックピンに係止されて保持されており、容器本体が、重錘が台座から落下する角度以上に傾斜すると、重錘の重力が第3のバネの付勢力より大きいために、ロックピンを引いてスライドシャフトの係止を解除し、スライドシャフトは、第2のバネの付勢力によって移動しカム付きハンドルの係止を解除し、カム付きハンドルが第1のバネの付勢力によって回動して、開閉弁が自動的に第2の流出路を閉塞するように構成されていることを特徴とする傾き検出自動閉塞機構を備えた傾き検出自動閉塞機構付き容器を提供する。
【0016】
本体フレームにカムプレートを回動可能に設け、カムプレートの一端に形成したカム孔にスライドシャフトに固定したカムピンを遊動可能に挿通させ、カムプレートの他端をカム付きハンドルが当接可能な構成とし、開閉弁が第2の流出路を閉塞した状態において、カム付きハンドルを第1のバネの付勢力に抗して回動することによって、開閉弁が第2の流出路を開いた状態にするとともに、カム付きハンドルでカムプレート及びカムピンを介してスライドシャフトを第2のバネの付勢力に抗して移動して、ロックピンでスライドシャフトを係止し、スライドシャフトでカム付きハンドルを係止し、正常時の状態に復帰可能とする構成であることが好ましい。
【0017】
容器本体に対して上下動可能なセンターリングプレートが設けられており、センターリングプレートは、重錘を台座の上方に位置決めをする位置決め孔が形成されているとともに、カム付きハンドルのカムに従動するカムフォロアを有し、カム付きハンドルを回動すると、カム付きハンドルのカムに従動するカムフォロアの上下動に応じて、センターリングプレートは上下動する構成であることが好ましい。
【0018】
前記開閉弁は、ボール弁であることが好ましい。
【0019】
容器本体は、高圧ガスが充填されて使用されるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、地震、津波、風水害、洪水、土石流、竜巻、又は搬送中の事故やいたずらにより、LPガス等に使用する高圧ガス容器が転倒等しても、自動的にガス流出路を自動的に閉塞して、内部に蓄積された高圧のガスを遮断してガス漏れを防止することができる。
【0021】
又、本発明に係る傾き検出自動閉塞機構付き容器は、電子部品等を使用することなく、機械的(メカニカル)な構成であるので、電気接触による発火等の危険性もなく、電子部品の劣化による故障等も少なく、安価で、消費者等に取扱いが簡単であり、負担が少ない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る傾き検出自動閉塞機構付き容器を実施するための形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【0024】
(実施例)
本発明に係る傾き検出自動閉塞機構付き容器の実施例を
図1〜9を参照して説明する。本発明に係る傾き検出自動閉塞機構付き容器は、LPガス等の高圧ガス、各種の危険物液体等の充填及び取り出しに使用されるが、本実施例の傾き検出自動閉塞機構付き容器は、一例として、LPガスを充填して使用する高圧ガス容器を例として説明する。
【0025】
本発明に係る傾き検出自動閉塞機構付き容器を、従来のLPガス用の高圧ガス容器と比較して、その全体構成を明確にするために、まず、
図10において、従来の高圧ガス容器100を説明する。
【0026】
従来の高圧ガス容器100は、容器本体101と、その容器本体101の上端の首部102に装着された手動バルブ103を備えている。手動バルブ103には、ガス配管に接続して高圧ガスを取り出す流出口104を有するとともに、安全弁105が付設されている。
【0027】
本発明に係る傾き検出自動閉塞機構付き容器の実施例の全体構成を、
図1に示す。本実施例の傾き検出自動閉塞機構付き容器1は、従来の高圧ガス容器100(従来例)と同様に、容器本体2と手動バルブ3が設けられている。
【0028】
手動バルブ3は、従来の高圧ガス容器100に装着されているものと同じ周知の構成であるので、ここではその構造を図示はしないが、握りハンドル6を回動操作することで、手動バルブ3内の第1の流出路(図示せず)を開き、容器本体2からのLPガスを第1の流出路を通過させて流出口8から流出させる、又は第1の流出路を閉塞して流出を止めることができる構成となっている。
【0029】
傾き検出自動閉塞機構付き容器1は、容器本体2と手動バルブ3との間に、傾き検出自動閉塞機構11を備えている。
【0030】
容器本体2の上端に設けられた首部12の外周に、フランジ13が固定されており、このフランジ13には、ケース16が取り付けられている。傾き検出自動閉塞機構11は、ケース16内に配置されて設けられている。ケース16は、容器本体2の上部に被せられるカバー17が装着されて覆われるように構成されている。
【0031】
傾き検出自動閉塞機構11は、
図2(a)、(b)、
図3(a)、(b)、に示すように、円柱状の本体フレーム20を備えている。本体フレーム20の下端は、取付け部21を介して容器本体2の首部12に固定されており、本体フレーム20の上端には、手動バルブ3が装着されている。
【0032】
本体フレーム20の軸心には、
図3(b)に示すように、第2の流出路22が形成されている。この第2の流出路22は、その下端は容器本体2内に連通し、その上端は手動バルブ3内の第1の流出路に連通している。第2の流出路22には、第2の流出路22の開閉を行う開閉弁25が設けられている。
【0033】
この開閉弁25は、後記するが、正常時は開いており、地震、災害、事故等で容器本体2が大きく傾いた際に、自動的に第2の流出路22を閉塞する。開閉弁25は、いろいろな構造の弁が利用可能であるが、本実施例では、開閉弁25としてボール弁(以下、ボール弁25という)を用いた構成で説明する。
【0034】
ボール弁25自体は周知の構成であるが、本実施例では、ボール弁回動軸26の先端にボール弁25が設けられている。本体フレーム20には、
図3(b)に示すように、第2の流出路22に側方から貫通するように支持孔27が形成されている。この支持孔27に、ボール弁回動軸26が回動可能に嵌合している。
【0035】
ボール弁回動軸26の基端には、
図2(a)、(b)、
図3(a)、(b)に示すようなカム付きハンドル30が固定されている。カム付きハンドル30は、
図2(a)、
図7(a)等に示すように、略への字型をしており、中心部31と、中心部31の近くのカム部32と、中心部31から斜め上方に延びる取手装着部33と、中心部31から取手装着部33とは反対側の正常時には側方略水平に延びるラッチ部34とを備えている。
【0036】
中心部31は、ボール弁回動軸26の基端に固定されており、ボール弁回動軸26とともにカム付きハンドル30は回動可能である。
【0037】
取手装着部33には水平に延びる取手38が取り付けられている。取手38と首部12のフランジ13の間には、第1のバネ39が装着されている。本実施例では、第1のバネ39は引っ張りコイルバネであり、この第1のバネ39によって、カム付きハンドル30は、一回動方向(
図2(a)において時計方向)に常時付勢されている。
【0038】
カム部32は、湾曲部42と直線部43から成る。ラッチ部34は、上面に湾曲状の凹所44が形成されている(
図2(a)、
図4(a)〜(c)、
図5(a)、
図6(a)、(b)、
図7、
図8等参照)。この凹所44内に、スライドシャフト47の一端部が係脱自在に嵌合するように構成されている。スライドシャフト47は、本体フレーム20に固定された第1の支持部材48と第2の支持部材49のガイド孔50(
図4(a)参照)にスライド可能に嵌合されている。
【0039】
スライドシャフト47には、
図4(a)、(b)等に示すように、大径部52が形成されており、この大径部52と第1の支持部材48との間に第2のバネ53が装着されている。第2のバネ53は、本実施例では、圧縮コイルバネであり、これにより、スライドシャフト47は、カム付きハンドル30の凹所44から抜け出す一方向(
図4(a)、(b)では左方向)へ常時付勢されている。
【0040】
スライドシャフト47の他端部には、
図4(a)、(b)等に示すように、環状の係止溝54が形成されている。この係止溝54に対して係脱自在となるロックピン57が、第2の支持部材49に設けられたブッシュ孔58に移動可能に挿通されており、第3のバネ59によってスライドシャフト47に圧接する方向(
図4(b)では上方向)に向けて常時付勢されている。第3のバネ59は、本実施例では圧縮コイルバネである。
【0041】
ロックピン57には、
図2(a)、(b)等に示すように、導線62の上端が取り付けられている。導線62の下端には球状の重錘63が取り付けられている。重錘63は、本実施例では鋼球が用いられる。重錘63の重量による重力で導線62を下方への引っ張る力は、第3のバネ59の付勢力より大きく形成されており、このため、重錘63によってロックピン57は第3のバネ59の付勢力に抗して下方に引っ張られるように構成されている。
【0042】
しかし、重錘63は、正常時は、容器本体2にフランジ13を介して固定された台座64の湾曲上面65上に載置されているので、導線62には重錘63の重力による下方への引っ張り力が付与されず、第3のバネ59によって、ロックピン57が係止溝54内への係入状態が保持される。
【0043】
地震等で容器本体2が揺動し傾いた際に、台座64に載置された重錘63は、湾曲上面65の湾曲形状によって、台座64からの落下の度合いが異なる。即ち、湾曲上面65の湾曲面の曲がり具合が小さい(曲率1/rが小さい。r:湾曲面の曲率半径)ほど、重錘63は容器本体2が傾くと落下し易い。湾曲上面65の湾曲面の曲がり具合が大きい(曲率1/rが大きい)ほど、重錘63は容器本体2が傾いても落下しにくい。
【0044】
従って、台座64の湾曲上面65の曲がり具合(曲率)を適宜設計することで、重錘63が台座63から落下する傾斜角度を設定することが可能である。高圧ガス容器が傾いて充填物が噴出する等の危険となる角度を考慮して、上記湾曲上面65の曲がり具合(曲率)を適宜設計すればよい。
【0045】
ロックピン57が係止溝54内に係入し、スライドシャフト47を係止している場合(
図4(a)〜(c)、
図7(a)等参照)は、スライドシャフト47は凹所44内に係入しカム付きハンドル30の係止を維持する。
【0046】
そして、ロックピン57が係止溝54から抜け出て、スライドシャフト47の係止を解除すると、スライドシャフト47は第2のバネ53の付勢力によりスライドして、凹所44から抜け出て、カム付きハンドル30の係止を解除する(
図6(a)〜(c)、
図7(b)等参照)。
【0047】
第1の支持部材48には、
図4(a)〜(c)に示すように、枢軸68によって、ヘの字型をしたカムプレート69が回動可能に取り付けられている。カムプレート69の一端部は、カム付きハンドル30(詳細には、
図5(a)、
図7(b)、
図8(a)、(b)等に示すラッチ部34における凹所44と反対側の面70)に当接するように構成されている。
【0048】
カムプレート69の他端部には、
図4(a)、(b)、
図6(a)、(b)、
図9(a)等に示すように、略三角形のカム孔71が形成されており、このカム孔71内に、スライドシャフト47の大径部48に固設されたカムピン74が、遊合可能に挿通されている。
【0049】
カム付きハンドル30は、その凹所44にスライドシャフト47が係入して係止されている場合は、
図2(a)、(b)、
図7(a)等に示す位置にあるが、カム付きハンドル30の凹所44からスライドシャフト47が抜け出て係止が解除されると、第1のバネ39によって付勢され、カム付きハンドル30は、
図7(a)から
図7(b)に示すように、時計方向に回動するように構成されている。
【0050】
図2(a)、
図5(a)、
図7(a)、(b)等に示すように、容器本体2の上端のフランジ13の上に、ガイドボルト75が起立するように固定されており、このガイドボルト75に沿って上下動可能なセンターリングプレート76が設けられている。
【0051】
フランジ13とセンターリングプレート76の間には、第4のバネ79がガイドボルト75を囲むように設けられている。第4のバネ79は、本実施例では圧縮コイルバネである。
【0052】
センターリングプレート76には、カムフォロア80を上端に設けた支持棒81が起立固定されている。カムフォロア80は、カム付きハンドル30のカム部32に当接しており、カム付きハンドル30が回転すると、カム部32に沿って上下動し、これによりセンターリングプレート76が上下動する。
【0053】
図2(a)、
図3(a)に示すように、センターリングプレート76には円形の位置決め孔84が貫通するように形成されている。位置決め孔84は、重錘63より若干大きく形成されており、センターリングプレート76が上昇した際に、ロックピン57から導線62で吊持された重錘63を、ロックピン57の直下に寄せて、台座64上に載置するように機能する。
【0054】
要するに、センターリングプレート76は、台座64から落下し、導線62を介してロックピン57に吊持され揺動した状態の重錘63を、ロックピン57の直下に寄せる(センターリング)する機能を有する部材である。
【0055】
(作用)
以上の構成から成る本発明に係る傾き検出自動閉塞機構付き容器1の作用について、以下説明する。本明細書では、「正常時」と「作動時」という用語を記載しているが、それぞれの意味は次のとおりである。
【0056】
「正常時」とは、地震等の災害や事故等が生じていない平常時において、高圧ガス容器の不使用時には手動バルブ3を通常は閉塞しているが、傾き検出自動閉塞機構11により第2の流出路22は開いているので、高圧ガス容器の使用時には手動バルブ3を開くことによってLPガスを流出口8から流出させることができる状態を言う。
【0057】
「作動時」とは、地震等の災害や事故等が生じた異常時において、本発明における傾き検出自動閉塞機構11が動作し、第2の流出路22を閉塞する状態を言う。
【0058】
正常時の状態:
正常時は、傾き検出自動閉塞機構11は、
図2、
図3、
図4、
図7(a)等に示す状態にある。正常時は、
図3(b)に示すように、ボール弁25は第2の流出路22を開いており、LPガスは、第2の流出路22を通過して、手動バルブ3内の第1の流出路に入り、手動バルブ3が開かれていれば、流出口8を通過して外部に供給可能である。
【0059】
正常時は、ロックピン57が第3のバネ59で付勢され、スライドシャフト47の係止溝54内に係入しているので、スライドシャフト47は、第2のバネ53が蓄勢された状態で、
図2、
図3、
図4、
図7(a)等に示す状態に維持されている。
【0060】
この状態では、カム付きハンドル30の凹所44内に、スライドシャフト47の一端が係入し係止されているため、カム付きハンドル30は、第1のバネ39の付勢力が加えられていても回動することなく、第1のバネ39が蓄勢された状態で、
図2、
図3、
図4、
図7(a)等に示す状態で維持されている。カムピン74は、カムプレート69のカム孔71内において、
図4(a)、(b)に示すような位置にある。
【0061】
又、カムフォロア80は、
図2(a)、
図7(a)に示すように、カム付きハンドル30のカム部32の湾曲部42における直線部43との接続部の近傍に当接しており、センターリングプレート76はその最下位置にあり、第4のバネ79は蓄勢された状態にある。
【0062】
作動時の作用:
従来の高圧ガス容器100では、手動バルブ103を開いている場合において、地震等の災害、事故又は人為的な原因により、高圧ガス容器が不用意に転倒し、ガス配管が抜けたり破損したりすると、高圧ガス容器からガスが流出し、火災等の原因となる。
【0063】
本発明の傾き検出自動閉塞機構付き容器1によれば、このように地震等の災害、事故又は人為的な原因により、高圧ガス容器が不用意に転倒しても、傾き検出自動閉塞機構11が動作してボール弁25が機能して、第2の流出路22を自動的に閉塞することで、高圧ガスの流出を防ぎ、火災等の発生を防止することができる。その動作について、以下説明する。
【0064】
地震等の災害、事故又は人為的な原因により、高圧ガス容器が不用意に傾いたり転倒し、その傾き具合が重錘63が台座64から滑り落ちる程度であると、重錘63が台座64から滑り落ちる。重錘63の重量による重力は、第3のバネ59の付勢力より大きいので、導線62を介してロックピン57を下方に引いて係止溝54から抜き出し、スライドシャフト47の係止を解除する(
図6(b)、(c)、
図7(b)等参照)。
【0065】
そのために、スライドシャフト47は、第2のバネ53の付勢力によって、
図6(a)、(b)において、左方にスライドし、カム付きハンドル30の凹所44から抜け出て、カム付きハンドル30の係止を解除する。
【0066】
その結果、カム付きハンドル30は、
図7(a)に示す状態から、
図7(b)に示すように第1のバネ39の付勢力により時計方向に回動して、
図5(a)、
図8(a)に示す状態となる。カム付きハンドル30が回動すると、ボール弁回動軸26が回動して、ボール弁25は第2の流出路22を閉塞する(
図5(a)、(b)参照)。
【0067】
カム付きハンドル30が、
図7(a)から、
図7(b)、さらに
図5(a)、
図8(a)に示すように、時計方向に回動すると、カムフォロア80はカム部32の湾曲部42から直線部43に当接する。そのため、センターリングプレート76が第4のバネ79の付勢力によって上昇し、位置決め孔84内に重錘63を抱え込み、台座64の上方に位置決め(センターリング)する。
【0068】
なお、スライドシャフト47が、第2のバネ53の付勢力によって、
図6(a)、(b)において、左方にスライドすると、スライドシャフト47に固定されたカムピン74は、カムプレート69のカム孔71内を、
図6(a)、(b)において、左方に移動するが、この移動によっては、カムプレート69に特に動作を与えない。
【0069】
復帰時:
本発明の傾き検出自動閉塞機構付き容器1を、ボール弁25が第2の流出路22を閉塞した状態(
図5、
図6、
図8(a)等参照)から、正常状態に復帰させる復帰時は、人手によって次のようにリセットする。
【0070】
図5(a)、
図8(a)において、取手38を把持してカム付きハンドル30を、
図8(b)に示すように反時計方向に回動する。そして、カム付きハンドル30のラッチ部34における凹所44と反対側の面70が、
図9(a)に示すように、カムプレート69の一端部に当接し、下方に押圧する。
【0071】
すると、カムプレート69は、
図9(a)において、枢軸68を中心に時計方向に回動し、カムピン74がカム孔71に従動し、スライドシャフト47を右方向に移動させる。カム付きハンドル30のラッチ部34の凹所44内にスライドシャフト47の一端部が係入してカム付きハンドル30を係止するとともに、スライドシャフト47の下面には、第3のバネ59によってロックピン57が上方に付勢されて当接している(
図9(a)、(b)参照)ので、係止溝54がロックピン57の位置までスライドすると、第3のバネ59の付勢力によって、ロックピン57は係止溝54内に係入し、
図4に示すように、スライドシャフト47を係止する。
【0072】
又、取手38を把持してカム付きハンドル30を、
図8(b)に示すように反時計方向に回動すると、カム部32の直線部43から湾曲部42でカムフォロア80を押圧するのでセンターリングプレート76が、
図2(a)に示す下方の位置に移動する。
【0073】
以上の復帰時の動作によって、傾き検出自動閉塞機構付き容器1は、
図2、
図3、
図4、
図7(a)等に示すように、ボール弁25が第2の流出路22を開いた、元の正常状態に復帰する。
【0074】
以上、本発明に係る傾き検出自動閉塞機構付き容器を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。