(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045568
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ディスペンサー
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20161206BHJP
B65D 35/20 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
B65D83/00 M
B65D35/20
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-511769(P2014-511769)
(86)(22)【出願日】2012年5月23日
(65)【公表番号】特表2014-518818(P2014-518818A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2012002193
(87)【国際公開番号】WO2012159747
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2015年5月25日
(31)【優先権主張番号】102011102524.7
(32)【優先日】2011年5月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513279593
【氏名又は名称】クラルマン クンストシュトッフフェアアルバイトゥング ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】クラルマン、ライナー
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03268123(US,A)
【文献】
特開昭57−114465(JP,A)
【文献】
特表平01−503334(JP,A)
【文献】
実開昭63−194181(JP,U)
【文献】
特開昭61−178871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D83/00
B65D83/08−83/76
B65D35/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(11)の一端が前記容器(11)に対し相対的に第1の方向(R)に変位可能な閉鎖プランジャー(12)により閉鎖され、前記容器(11)の製品室(14)とは反対側の前記閉鎖プランジャー(12)に開きばね(13)が配置され、この開きばねは前記容器(11)の内壁(11a)と当接して前記閉鎖プランジャー(12)が前記第1の方向(R)とは反対の第2の方向(S)に動くのを阻止するようにしたディスペンサー(10)において、
前記開きばね(13)が合成樹脂からなり、その中央部(20)から、円周上に分布配置された複数のフィンガー(15)が半径方向に外側に向かって延び、
各フィンガー(15)が半径方向内側端で前記中央部(20)とヒンジ結合され、半径方向外側端で前記容器(11)の内壁(11a)と当接し、
前記中央部(20)および前記フィンガー(15)は互いに一体形成され、各フィンガー(15)はウェブ(17)を介して前記中央部(20)と結合され、
前記ウェブ(17)の範囲に切り欠き(16)が形成され、
前記切り欠き(16)内に、復帰ばねとして作用する充填材(19)が入れられることを特徴とするディスペンサー。
【請求項2】
前記充填材(19)がエラストマー樹脂であることを特徴とする請求項1記載のディスペンサー。
【請求項3】
隣接する前記フィンガー(15)が膜(22)を介して互いに結合されることを特徴とする請求項1または2記載のディスペンサー。
【請求項4】
前記膜(22)がエラストマー樹脂からなることを特徴とする請求項3記載のディスペンサー。
【請求項5】
前記フィンガー(15)の半径方向外側端が刃状に形成されることを特徴とする請求項1から4の1つに記載のディスペンサー。
【請求項6】
前記フィンガー(15)の半径方向外側端に保持爪(21)が設けられることを特徴とする請求項1から5の1つに記載のディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の一端が容器に対し相対的に第1の方向に変位可能な閉鎖プランジャーにより閉鎖され、容器の製品室とは反対側の閉鎖プランジャーに開きばねが配置され、この開きばねが容器の内壁と係合して閉鎖プランジャーが第1の方向とは反対の第2の方向に動くのを阻止するようにしたディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
これに対応するディスペンサーは練り歯磨きとの関連でチューブディスペンサーとしても知られているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ほかの粘性製品もしくはディスペンサーで配量される製品にも適用可能である。
【0003】
以下に練り歯磨き用のチューブディスペンサーの例を説明する。
【0004】
ディスペンサーは通常円筒状または楕円筒状の容器を有し、その上側端にポンプ状の取り出し装置が形成されている。製品室を形成する容器の内室に練り歯磨きが収容され、容器の下端ではこの容器に軸方向に変位可能な閉鎖プランジャーが装着される。製品室と反対側の閉鎖プランジャーには開きばねが取り付けられ、このばねは閉鎖プランジャーと結合され、容器の内壁に支持されるかもしくはこの内壁と係合する。
【0005】
練り歯磨きは押すことにより取り出され、取り出し装置の作動中止とともにまたはその後に製品室に負圧が生じ、これにより閉鎖プランジャーが若干容器内で軸方向に変位し、製品室の容積は圧力平衡が生じるまで減ぜられる。
【0006】
開きばねは、閉鎖プランジャーの逆方向、すなわち容器の下側方向への変位を阻止する役割を有する。閉鎖プランジャーが製品室に生じる負圧により変位すると、閉鎖プランジャーは開きばねを連行するので、開きばねは一時的に容器の内壁との係合を解くかまたは係合を弱める。プランジャーがその動きを変えると直ちに、開きばねはその固有弾性により容器の内壁に再び当接する。
【0007】
開きばねは、金属部材により予め作られ、その後に通常は合成樹脂(プラスチック)からなる閉鎖プランジャーに取り付けられなければならない。この方法は手間が掛かり費用も嵩む。
【0008】
さらに子供や不注意な使用者が下から容器に手を突っ込みそこに配置されている開きばねで負傷する恐れがある。この理由から一般に蓋が設けられ、これで容器の下側端を閉鎖している。このような蓋の製造および後からの取り付けはディスペンサーの価格をさらに高める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、簡単にして費用を掛けないで製造可能な上述の種類のディスペンサーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は本発明によれば請求項1の特徴を備えたディスペンサーで解決される。この場合開きばねは合成樹脂(プラスチック)からなり、その中央部から、円周上に分布配置された複数のフィンガーが半径方向に外側に向かって延びる。各フィンガーは半径方向内側端で中央部とヒンジ結合され、半径方向外側端で容器の内壁と係合し、中央部およびフィンガーは互いに一体形成され、各フィンガーはウェブを介して中央部と結合され、ウェブの範囲には切り欠きが形成される。
【0011】
開きばね全体を合成樹脂から形成する実施形態は、これを費用の良好な射出成形部材として製造し、後から閉鎖プランジャーに取り付け、特に係止させることも、または閉鎖プランジャーと開きばねとを一体に形成することすらも可能にする。開きばねの弾力はフィンガーの弾性によって得られ、フィンガーは据え付け状態で半径方向のバイアスにより容器の内壁に係合し、これにより閉鎖プランジャーは第1の方向には取り出し装置に向かって変位できるのに対し、容器の下側端への第2の方向への動きは開きばねにより阻止される。
【0012】
中央部は例えばスリーブ、ハブまたはリングとすることもでき,フィンガーはそれぞれその外側に接続される。本発明によれば、中央部およびフィンガーは互いに一体に形成され、特に一回の射出成形工程で製造される。
【0013】
この場合各フィンガーは、ヒンジ接合を形成するように一体に成形されたウェブを介して中央部に結合される。好適にはフィンガーの断面積より小さい断面積を有するウェブの幾何学的形状により中央部に対するフィンガーの変形力およびフィンガーを容器の内壁に当接させる弾力が規定される。
【0014】
ウェブの範囲には切り欠きが形成され、この切り欠きは好適には復帰ばねとして作用する充填材で充填され、この充填材はエラストマー樹脂とすることができる。フィンガーが中央部に対して相対的に変位すると、充填材が圧縮されフィンガーに反応力として復帰力を与えるので、容器中での開きばねの固定に利用することができる。
【0015】
本発明の別の実施形態においては、フィンガーは中央部からそれぞれ自由に突き出し、開きばねに星状の形を与えるようにされる。しかしその代りに、それぞれ隣接するフィンガーを皮または膜を介して互いに結合させることもできる。この皮または膜は同様にエラストマー樹脂から形成でき、完全なカバーとして役立てられる。
【0016】
フィンガーは半径方向外側端で容器の内壁に当接する。本発明の一実施形態では、フィンガーは摩擦力だけで保持または固定される。しかし力伝達の改良および弾力作用の改良は、フィンガーがその外側端を刃状に形成されるかまたは半径方向に突出する保持爪を備えるときに得られる。
【0017】
本発明の更なる詳細および特徴は図面を参照した以下の実施例の記述から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1はディスペンサーの下端の垂直断面図を示す。
【
図2】
図2は第1の実施例による開きばねの平面図を示す。
【
図4】
図4は第2の実施例による開きばねの平面図を示す。
【
図6】
図6は第3の実施例による開きばねの平面図を示す。
【
図9】
図9は第4の実施例による開きばねの平面図を示す。
【
図12】
図12は第5の実施例による開きばねの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は円筒状容器11を備えたディスペンサー10の断面図を示し、容器内には製品室14がたとえば練り歯磨きを収容するために形成されている。容器11には下側端から閉鎖プランジャー12が装着されており、このプランジャーは容器11の内壁11aに密に当接し、製品室14にある製品が容器11の下方から流出するのを防いでいる。
【0020】
製品室14と反対側にある閉鎖プランジャー12の
図1の下側にはハブ状の中央部20を有する開きばね13が配置され、この中央部には容器11の長手軸方向を示す突起23が形成され、この突起は閉鎖プランジャー12の受け口12aに導入され、そこで固定される。中央部23は円周上に分布配置された多数のフィンガー15を担持しており、これらのフィンガーは中央部から半径方向には外側に向かって、容器11の製品室14とは反対側の下側端に向かっては斜めに延びており、その半径方向外側の端部で容器11の内壁11aにバイアスのもとに当接してこれと係合している。
【0021】
図2、3は第1の実施形態による開きばね13をそれぞれ別の図で示す。中央部20、突起23およびフィンガー15は一体の合成樹脂製品として形成され、その際各フィンガー15はその中央部20側の半径方向内側端でヒンジを形成する直径の小さいウェブ17を介して中央部20にヒンジ結合されている。ウェブ17の範囲の断面が小さいためにウェブの上側にはフィンガー15と中央部20の間に切り欠き16が形成され、この切り欠きは
図2,3に示す実施例では開放されているので、フィンガー15の変形性もしくはばね作用は主としてウェブ17により規定される。
【0022】
特に
図3に示すように、フィンガー15はその半径方向の外側端18が刃状に形成されている。
【0023】
使用者が製品室14から所望の製品量を取り出すと、製品室14には負圧が生じ、これにより閉鎖プランジャー14は
図1の上側に第1の方向Rに向かって引っ張られる。閉鎖プランジャー14には開きばね13が結合されているので、開きばね13も第1の方向Rに引っ張られる。その際フィンガー15は変形しおよび/または中央部20に対して相対的に変位し、その半径方向外側端が容器11の内壁11a上を引っ張られる。閉鎖プランジャー12がその動きを終えるとフィンガー15はその固有弾性により容器11の内壁11aに当接しこれに固定される。このようにして開きばね13は、プランジャーが第1の方向Rとは反対側の第2の方向Sに退避するのを妨げる。
【0024】
図4、5は開きばね13の第2の実施例を示す。
図2、3に示した実施例に対して
図4、5による開きばね13は主として、ウェブ17の上側に形成された切り欠き16が弾性樹脂、好適にはエラストマー樹脂からなる充填材19で充填されているので、フィンガー15の変形時に復帰力が高まり、これにより高まるばね力がフィンガー15に加わる点で異なっている。
【0025】
さらに隣接するフィンガー15はそれぞれ膜22を介して互いに結合されているので、開きばね13は傘状に形成され、閉鎖プランジャー12の下側は完全に覆われる。充填材19および/または膜22は弾性樹脂、好適にはエラストマー樹脂から製造でき、開きばね13全体がニ成分射出成形法で製造され、すなわちまず中央部20および開きばね13が第1の工程で射出成形され、ついで充填材19および膜22が第2の工程で射出成形される。
【0026】
図6、7、8は
図4、5の実施例の発展形態を示す第3の実施例を示す。特に
図8に示すように、ここではフィンガー15の半径方向外側端がそれぞれ鋭角の保持爪21で形成され、この保持爪によって容器11の内壁11aとフィンガー15との間に良好な係合が生じる。
【0027】
これまで述べた実施例ではほぼ棒状の12本のフィンガー15が中央部20の円周上に分布されていたのに対し、
図9から11には円周上に分布された5本の板状のフィンガー15が設けられる第4の実施例が示されており、これらのフィンガーの半径方向外側端にはそれぞれ保持爪21が設けられ、保持爪21の半径方向の寸法はフィンガー15の円周の中央範囲の方がフィンガー15の縁部範囲よりも大きくされている。その結果フィンガー15はその中央範囲で容器11の内壁11aに対しより大きな力で係合している。
【0028】
図12、13は開きばね13の第5の実施例を示し、ここでは中央部20は楕円リングとして形成され、そこから多数のフィンガー15が半径方向に外側に向かって自由に突き出ている。ハブ状の突起の代わりに中央部20には収容開口24が形成され、これにより開きばね13は図示しない方法で閉鎖プランジャーに取り付けられる。
【0029】
図示の実施例では閉鎖プランジャーおよび開きばねはそれぞれ独立部材として形成され、互いに結合もしくはそれぞれに固定されている。しかしまた、閉鎖プランジャーおよび開きばねを一体部材として形成することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 ディスペンサー
11 容器
11a 容器の内壁
12 閉鎖プランジャー
13 開きばね
14 製品室
15 フィンガー
16 切り欠き
17 ウェブ
18 フィンガーの外側端
19 充填材
20 開きばねの中央部
21 保持爪
22 膜
23 突起
24 収容開口