(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045596
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】センサ信号の妥当性検査
(51)【国際特許分類】
G01D 3/00 20060101AFI20161206BHJP
G01P 21/00 20060101ALI20161206BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20161206BHJP
G01D 21/02 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
G01D3/00 B
G01P21/00
B60R21/00 610Z
G01D21/02
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-536168(P2014-536168)
(86)(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公表番号】特表2015-500980(P2015-500980A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】EP2012069046
(87)【国際公開番号】WO2013056966
(87)【国際公開日】20130425
【審査請求日】2014年4月21日
(31)【優先権主張番号】102011084784.7
(32)【優先日】2011年10月19日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ラウ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン コアン
(72)【発明者】
【氏名】ハンスイェアク マークス ヒルト
(72)【発明者】
【氏名】オーラフ ケアナー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン リットラー
【審査官】
榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2001/070545(WO,A1)
【文献】
特開平09−076872(JP,A)
【文献】
特開2002−178904(JP,A)
【文献】
特表2000−510416(JP,A)
【文献】
特表2002−503585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 3/00 − 036
B60R 21/00 − 038
G01D 21/02
G01P 15/00
G01P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨーレートセンサのセンサ信号(12.1)の妥当性を検査する方法であって、
前記ヨーレートセンサ(12)は、少なくとも1つのヨーレートを検出して前記センサ信号(12.1)として出力し、
第2センサ部材(22)は、前記ヨーレートに相関付けられる第2物理量を検出して第2センサ信号(22.1)として出力し、
前記ヨーレートセンサ(12)は欠陥がないセンサである、方法において、
少なくとも前記ヨーレートセンサ(12)は、上限および/または下限を備えた少なくとも1つの第1信頼性領域(ZB)を有しており、該第1信頼性領域(ZB)は、前記第2センサ部材(22)によって検出される第2物理量に関連付けられており、
前記第2センサ部材(22)によって検出される第2物理量の実際値が前記ヨーレートセンサ(12)の対応する前記第1信頼性領域(ZB)内にある場合、前記ヨーレートセンサ(12)によって検出される前記ヨーレートの実際値が妥当であると識別する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記ヨーレートセンサ(12)と前記第2センサ部材(22)とは、同じ測定個所および/または相異なる測定個所において同じ測定原理および/または相異なる測定原理で前記ヨーレートと前記第2物理量とを検出する、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記第2センサ部材(22)は、加速度および/または圧力および/または固体伝送音および/またはヨーレートを検出する、
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
ヨーレートセンサのトリガ信号(38.1)を形成する方法において、
前記ヨーレートセンサ(12)により、第1センサ信号(12.1)を形成し、
第2センサ部材(22)により、第2センサ信号(22.1)を形成し、
トリガ判定条件をチェックするため、実際の前記第1センサ信号(12.1)と第1閾値とを比較し、実際の前記第2センサ信号(22.1)と第2閾値とを比較し、
前記ヨーレートセンサ(12)は欠陥がないセンサ部材である、方法において、
前記ヨーレートセンサ(12)の実際の前記第1センサ信号(12.1)が、対応する前記第1閾値を上回る場合であって、かつ、請求項1から3までのいずれか1項に記載したセンサ信号(12.1)の妥当性検査方法により、少なくとも前記ヨーレートセンサ(12)の前記第1センサ信号(12.1)が妥当であると識別される場合に、前記トリガ判定条件が満たされて前記トリガ信号(38.1)が出力される、
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、
前記ヨーレートセンサ(12)と前記第2センサ部材(22)とは、クラッシュ関連の物理量を検出する、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の方法において、
前記トリガ信号(38.1)は、安全性関連のシステムを起動する、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
ヨーレートセンサのトリガ信号(38.1)を形成する装置であって、
前記ヨーレートセンサ(12)は、ヨーレートを検出して第1センサ信号(12.1)として出力し、
第2センサ部材(22)は、前記ヨーレートに相関付けられる第2物理量を検出して第2センサ信号(22.1)として出力し、
トリガ信号(38.1)に対するトリガ判定条件をチェックするため、評価および制御ユニット(30)により、実際の前記第1センサ信号(12.1)と、第1閾値とを比較し、
前記ヨーレートセンサ(12)は欠陥がないセンサ部材である、装置において、
少なくとも前記ヨーレートセンサ(12)は、上限および/または下限を備えた少なくとも1つの第1信頼性領域(ZB)を有しており、該第1信頼性領域(ZB)は、前記第2センサ部材(22)によって検出される第2物理量に関連付けられており、
前記第2センサ部材(22)によって実際に検出した前記第2物理量の値が、前記ヨーレートセンサ(12)の対応する第1信頼性領域(ZB)内にある場合、前記評価および制御ユニット(30)により、前記ヨーレートセンサ(12)によって検出した前記ヨーレートの実際値が妥当であると識別され、
前記ヨーレートセンサ(12)の実際の第1センサ信号(12.1)が、対応する第1閾値を上回っており、かつ、少なくとも前記ヨーレートセンサ(12)の前記第1センサ信号(12.1)を妥当であると識別する場合に前記トリガ判定条件が満たされ、
前記トリガ判定条件が満たされる場合、前記評価および制御ユニット(30)により、トリガ信号(38.1)を出力する、
ことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、
前記ヨーレートセンサ(12)と前記第2センサ部材(22)とは、同じ測定個所および/または相異なる測定個所において同じ測定原理および/または相異なる測定原理でクラッシュ関連の物理量を検出する、
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項7に記載の装置において、
前記第2センサ部材(22)は、加速度および/または圧力および/または固体伝送音および/またはヨーレートを検出する、
ことを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項7から9までのいずれか1項に記載の装置において、
前記閾値および/または前記少なくとも1つの信頼性領域(ZB)は、記憶ユニット(37)に記憶されている、
ことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来の技術
本発明は、請求項1の上位概念に記載したセンサ信号の妥当性を検査する方法ならびに請求項4の上位概念に記載したトリガ信号を出力方法および請求項7の上位概念に記載したトリガ信号を出力する装置を出発点とする。
【0002】
センサ信号の妥当性を検査する従来技術から公知の方法および装置によって保証されるのは、センサ部材が故障した場合に、例えばセーフティシステムのようなシステムの望ましくない挙動が発生しないようにすることである。測定原理および/またはセンサ部材および/またはセンサ信号のタイプに応じて、上記の方法および装置の種々異なる機能の仕方が公知である。一般的にはセンサ信号の妥当性検査を行う装置には2つのセンサ部材が含まれており、ここでは第1センサ部材の第1センサ信号の妥当性が検査され、第2センサ部材の第2センサ信号が、第1センサ信号の妥当性検査のために使用される。第1センサ部材の第1センサ信号が妥当であると識別される場合、この第1センサ部材は欠陥を有していないとするのである。
【0003】
刊行物DE 101 23 625 A1には、物理量の測定値検出をチェックする方法および装置が記載されており、ここには1つの物理量に対して冗長な2つの測定値が存在する。ここでは第1センサ部材は第1測定値を検出し、第2センサ部材は第2測定値を検出する。妥当性検査の際には、これらの2つの測定値の商を形成し、この商と許容範囲とが比較される。上記の商が許容範囲から許容できない程度まで偏差している場合、センサ部材がエラー状態にあるとする。
【0004】
DE 10 2004 042 467 A1には歩行者保護装置用のトリガ信号を形成する方法および装置が記載されており、この歩行者保護装置は、対象物との衝突が識別された後、トリガ検査および上記のセンサ信号の妥当性検査を実行する。ここでは、トリガ検査の際に歩行者との衝突が識別されかつセンサ信号の妥当性検査がokの場合、複数のセンサ信号によって歩行者を識別するために特徴抽出を行い、上記の特徴抽出によって対象物との衝突時点が求められて歩行者保護システム用のトリガ信号が形成される。上記のセンサ信号の妥当性検査を行うこの装置は、衝突関連の複数のセンサ信号と、中央の加速度センサユニットの複数のセンサ信号とを比較する。
【0005】
本発明の開示
これに対し、独立請求項1,4および7の特徴的構成をそれぞれ有するセンサ信号の妥当性を検査する本発明の方法、トリガ信号を形成する本発明の方法、およびトリガ信号を出力する本発明の装置は、少なくとも1つの第1センサ部材が、上限および/または下限を備えた少なくとも1つの第1信頼性領域を有するという利点を有する。ここでは、上記の少なくとも1つの第1信頼領域は、第2センサ部材によって検出される第2物理量に関連付けられる。第2センサ部材によって実際に検出した第2物理量の値が、対応する第1センサ部材の第1信頼性領域内にある場合に、第1センサ部材によって検出した第1物理量の実際値が妥当であると識別される。この少なくとも1つの信頼性領域は、例えば、上限だけによって定められるか、ないしは下限だけによって定められるか、ないしは上限によって定められると共に下限によっても定められ得る。
【0006】
本発明の複数の実施形態では、上記の少なくとも1つの第1の信頼性領域により、有利にも機能可能ないしは欠陥のない第1センサ部材においても妥当性検査が可能になり、この妥当性検査では、妥当でない第1センサ信号が識別される。第2物理量に関連する信頼性領域を有する第1センサ部材は、第2物理量の値が、対応する信頼性領域内にある場合に、信頼性がありかつ正確な測定値を測定する。第2物理量の値が、少なくとも1つの第1信頼性領域外にある場合、例えば、第1センサ部材の測定精度が失われている可能性がある。この場合、有利には、信頼性のないセンサ信号および/または不正確に求められたセンサ信号は、システム判定には使用されず、ひいてはこれに関連したトリガ信号の出力には使用されない。これにより、有利にも、例えばエアバッグなどの殊に非可逆式セーフティシステムのようなセーフティシステムのエラートリガの回数を低減することができる。
【0007】
殊に自動車における安全関連センサ信号のようなセンサ信号の妥当性を検査する本発明の方法に相応して、第1センサ部材の少なくとも1つの第1物理量を検出して第1センサ信号として出力し、第1物理量に相関付けられた第2物理量を第2センサ部材によって検出して第2センサ信号として出力する。本発明において少なくとも第1センサ部材は、上限および/下限を備えた少なくとも1つの第1信頼性領域を有しており、この信頼性領域は、第2センサ部材によって検出される第2物理量に関連付けられている。第2センサ部材によって実際に検出された第2物理量の値が、第1センサ部材の対応する第1信頼領域内にある場合に、第1センサ部材によって検出した第1物理量の実際値が妥当であると識別する。
【0008】
殊に自動車における安全関連システムをトリガするための、トリガ信号を出力する本発明の方法の複数の実施形態では、第1センサ部材によって形成される第1センサ信号と、第2センサ部材によって形成される第2信号とを評価する。トリガ判定条件をチェックするため、実際の第1センサ信号と、第1閾値とを比較する。本発明では、第1センサ部材の実際の第1センサ信号が、対応する第1閾値を上回る場合であって、かつ、センサ信号の妥当性検査方法により、少なくとも第1センサ信号が妥当であると識別される場合に上記のトリガ判定条件が満たされてトリガ信号が出力される。センサ信号の妥当性を検査するため、少なくとも第1センサ部材は、上限および/または下限を備えた第1信頼性領域を有しており、この第1信頼性領域は、第2センサ部材によって検出される第2物理量に関連付けられる。第2センサ部材によって実際に検出される第2物理量が、第1センサ部材の対応する第1信頼性領域内にある場合、第1センサ部材によって検出される第1物理量の実際値を妥当であると識別する。
【0009】
殊に自動車における安全関連システムをトリガするための、トリガ信号を出力する本発明の装置には、第1物理量を検出して第1センサ信号として出力する第1センサ部材と、第1物理量に相関付けられる第2物理量を検出して第2センサ信号として出力する第2センサ部材とが含まれている。トリガ信号に対するトリガ判定条件をチェックするため、評価および制御ユニットにより、実際の第1センサ信号と、第1閾値とを比較する。本発明において、少なくとも第1センサ部材は、上限および/または下限を備えた少なくとも1つの第1信頼性領域を有しており、この第1信頼性領域は、第2センサ部材によって検出される第2物理量に関連付けられている。第2センサ部材によって実際に検出される第2物量の実際値が、第1センサ部材の対応する第1信頼性領域内にある場合に、上記の評価および制御ユニットにより、第1センサ部材によって検出される第1物理量の実際値が妥当であると識別される。第1センサ部材の実際の第1センサ信号が、対応する第1閾値を上回り、かつ、少なくとも第1センサの第1センサ信号が妥当であると識別される場合に上記のトリガ判定条件が満たされる。上記の評価および制御装置は、トリガ判定条件が満たされる場合にトリガ信号を出力する。
【0010】
オプションでは上記のトリガ判定条件をチェックするため、実際の第1センサ信号に他に付加的に実際の第2センサ信号と、第2閾値とを比較することができる。このケースでは、第1センサ部材の実際の第1センサ信号が、対応する第1閾値を上回りかつ第2センサ部材の実際の第2センサ信号が、対応する第2閾値を上回る場合であって、かつ、センサ信号の妥当性検査方法により、少なくとも第1センサ部材の第1センサ信号が妥当であると識別される場合にのみ、上記のトリガ判定条件が満たされる。
【0011】
本発明においてセンサ部材とは、物理量ないしは物理量の変化を直接または間接的に検出し、有利には電気的なセンサ信号に変換する構成ユニットのことである。これは、例えば、音波および/または固体伝送音波の受信により、および/または、位置変更および/または変位変更および/または別の公知の検出方法によって行うことができる。センサ信号は静的および/または動的に求めることができる。さらにセンサ信号は、連続して求めるかまたは1回だけ求めることができる。
【0012】
求めたこれらのセンサ信号は、評価および制御ユニットによって評価することができ、この評価および制御ユニットは、上記のセンサ部材に組み込まれており、および/またはセンサ部材の外部に、例えば、センサユニット内および/または制御装置内に配置されている。ここでは、上記の求めたセンサ信号を処理ないし後処理するため、例えば、オフセットを減算して別の数学的な演算を行うことができる。これにより、例えば、検出した第1物理量から、この第1物理量に依存する別の量、例えば速度、回転数、力、エネルギ、所定のイベントに対する確率などを計算することができる。
【0013】
本発明において評価および制御ユニットとは、検出したセンサ信号を処理および/または評価する、例えば制御装置のような電気装置のことである。この評価および制御ユニットは、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで構成することの可能な少なくとも1つのインタフェースユニットを有することができる。ハードウェアによって構成する際には、このインタフェースユニットは、例えばいわゆるシステムASICの一部とすることができ、このシステムASICには評価および制御ユニットの極めて異なる複数の機能が含まれている。しかしながら上記のインタフェースユニットが固有の集積回路であるかまたはこれを少なくとも一部をディスクリート構成部材から構成することも可能である。ソフトウェアによって構成する際、上記のインタフェースユニットは、例えばマイクロコントローラ上に別のソフトウェアモジュールと共に設けられているソフトウェアモジュールとすることが可能である。プログラムコードを有するコンピュータプログラム製品も有利であり、このプログラムコードは、半導体記憶装置、固定ディスク記憶装置または光学式記憶装置など機械読み出し可能な担体に記憶されており、かつ、プログラムが上記の評価および制御ユニットによって実行される場合に上記の評価を実行するために使用される。
【0014】
妥当性検査ないしは妥当性チェックとは1つの手法のことであり、この手法の枠内では、求める物理量の値ないしはイベントが許容範囲にある、および/または、納得できる、および/または、了解可能である、および/または妥当であるか否かにという点についてこれらの求める物理量の値ないしはイベントが検査される。例えばクラッシュ状況の発生はイベントであり、この発生の妥当性が検査される。
【0015】
従属請求項に記載された手段および発展形態により、独立請求項1に示したセンサ信号の妥当性検査方法、独立請求項4に示したトリガ信号の出力方法、および独立請求項7に記載したトリガ信号を出力する装置を有利に改善することができる。
【0016】
殊に有利であるのは、上記のセンサ部材が、同じおよび/または相異なる測定個所において同じ測定原理および/または相異なる測定原理で上記の物理量を検出できることである。これにより、1つのイベントを多種多様に推定することができる。さらにセンサ部材の測定精度を制限し得る大きく異なる周囲条件を調査して上記の妥当性検査に使用することができる。これにより、外部要因による測定誤差および/または測定結果の不正確さを有利にもほぼ取り除くことができる。さらに確実さを高めるため付加的に公知の妥当性検査手法を使用することができ、この際にこの妥当性検査手法にマイナスの影響が及ぼされることはない。これによって有利にも、妥当性がありかつ信頼のできるセンサデータだけが、後続処理のため、および/または、対応するセーフティ機能をトリガするために出力されることが保証されるのである。
【0017】
本発明によるセンサ信号の妥当性検査方法の有利な実施形態において、上記の2つのセンサ素子により、例えば加速度および/または圧力および/または固体伝送音および/またはヨーレートを検出することができる。これにより、例えば、複数のヨーレートセンサは、実際に有効な加速度について1つの信頼性領域を有することができる。1つの加速度センサによって比較可能な測定個所においてこのような加速度を測定する場合、検出した実際の加速度値が上記のヨーレートセンサの信頼性領域内にあれば、有利には実験的におよび/または設定によって上記のヨーレートセンサの信頼性のある機能を保証することできる。これによって有利にも、クラッシュ識別のために複数のヨーレートセンサを使用することができ、ここでは不正確なおよび/または妥当でない上記のヨーレートセンサのセンサ信号値は、加速度値が大きすぎることによって識別することができる。また別の複数のセンサ部材によって検出される物理量が同様に第1センサ部材によって検出される物理量に相関付けられる場合、別の複数のセンサ部材の値を付加的に検査して、クラッシュ識別の際に第1センサ部材の第1センサ信号の妥当性検査に使用することができる。
【0018】
トリガ信号を出力するため、上記の複数のセンサ部材がクラッシュ関連の物理量を検出することは殊に有利である。これにより、有利にもこれらセンサユニットは、例えば1つのクラッシュイベントのような同一のイベントに応答することができる。クラッシュの際には衝突により、例えば、圧力および/またはヨーレートおよび/または音響および/または加速度のような検出した物理量が変化する。すなわち、求めたこれらの測定量は、共通のこのイベントによって相関付けされてこのイベントを示すのである。
【0019】
本発明による方法の有利な実施形態において、上記のトリガ信号は、安全性関連システムを起動する。有利には安全性関連のシステムは、信頼性のあるクラッシュ識別によって高い信頼性で起動されて、不正確なセンサ信号に起因する早すぎるトリガおよび/または誤トリガが防止される。
【0020】
本発明による装置の有利な実施形態において上記のセンサ部材は、同じ測定個所および/または相異なる測定個所において同じ測定原理および/または相異なる測定原理でクラッシュ関連の物理量を検出する。これにより、この装置によって多種多様な仕方で1つのイベントおよび殊にクラッシュを推定することができる。さらにセンサの測定精度を制限する極めて異なる複数の周囲条件を調査して、第1センサ部材の第1センサ信号の妥当性検査に使用することができる。これにより、外部状況による測定結果の不正確さおよび/または測定誤差を有利にもほぼ取り除くことができる。殊に、別の物理量によって発生し得る変化によって外因との関係が不明瞭になっている測定結果を取り除くことができる。さらに、有利にも確実さを高めるために付加的な公知の妥当性検査手法を使用することができる。これによって有利にも、妥当性がありかつ信頼できるセンサデータだけが後続処理および/またはトリガ信号の出力に使用されることが保証されるのである。
【0021】
上記の装置の別の有利な実施形態において、2つのセンサ部材は、例えば、加速度および/または圧力および/または固体伝送音および/またはヨーレートを検出する。有利には実験的および/または設計により、測定値の妥当性が検査されるセンサ部材の信頼できる機能を保証することができる。加速度および/または圧力および/または固定伝送音および/またはヨーレートは、クラッシュ状況において変化することがありまた物理量のうちの1つを検出するセンサ部材の測定結果に影響を与え得る物理量であるため、妥当性検査を行うべきセンサ部材においてこれらの物理量に対して対応する信頼性領域を導入することにより、有利にも別の複数のセンサ部材を応用することにより、クラッシュセンシングにおいて妥当性検査を行うべきセンサ部材の複数のセンサ信号についての一層正確な信頼性情報を得ることができ、正確でない測定値および/または妥当でない測定値を識別することができる。
【0022】
本発明による装置の別の有利な実施形態では、上記の閾値および/または少なくとも1つの信頼性領域を記憶ユニットに記憶する。この記憶した値には有利にも高速にアクセスすることができる。さらにこのような記憶ユニットは一般的に上記の評価および制御ユニットに設けられているため、付加的なコストは発生しない。
【0023】
本発明との関連においてクラッシュとは、障害物および/または別の交通関与者などの別の対象物との衝突だけではなく、車両の横転(ロールオーバ)のことでもある。
【0024】
本発明の複数の実施例を図面に示し、以下にて詳しく説明する。図面において同じ参照符号は、同じないしは類似の機能を実行するコンポーネントないしは部材を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】トリガ信号を出力する本発明の装置の実施例の概略ブロック図である。
【
図2】本発明によるセンサ信号の妥当性検査方法およびトリガ信号出力方法の実施例の概略ブロック図である。
【0026】
本発明の実施形態
第2センサ部材の第2センサ信号によって第1センサ部材の第1センサ信号の妥当性を検査するため、種々異なる方法が公知である。例えば、センサ部材の第1および第2センサ信号を、比較可能な測定原理および同じ測定個所によって形成することができる。ここで第1および第2センサ信号は、サイクリックに読み出されて、評価および制御ユニットによって互い比較される。この妥当性検査時には、これらのセンサ信号を直接、および/または商により、および/または、差分によって互いに比較することができる。例えば、第1および第2センサ信号の上記の差分および/または商が所定の境界を上回る場合、第1センサ信号は無効であると見なされ、および/または、第1センサ部材が故障していると見なされる。
【0027】
センサ部材の上記の第1および第2センサ信号は、比較可能な測定原理および相異なる測定個所で形成することも可能である。さらにセンサ部材の第1および第2センサ信号は、比較可能でない測定原理により、および、同じおよび/または相異なる測定個所で形成することができる。この妥当性検査時には、第1センサ部材の複数の第1センサ信号は、第2センサ部材の第2センサ信号と直接比較することはできない。直接の比較は、例えば制御装置内と、制御装置外とのように測定個所が異なることないしは組み込み個所が異なることにより、および/または、例えば走行方向と、走行方向に対して横方向とのように検出方向が異なることにより、および/または、例えば相異なる物理量が検出されるなどの測定原理が比較可能でないことにより、無意味である。このような妥当性検査方法では、例えば、第1センサ信号が、あらかじめ設定した第1閾値を上回り、また第2センサ信号があらかじめ設定した第2閾値を上回ったか否かを検査する。上記の双方のセンサ信号においてこれが発生した場合、妥当検査を行うべき第1センサは動作可能であり、第1センサ信号は有効であると見なされる。
【0028】
図1からわかるように、トリガ信号38.1を形成する本発明の装置1の図示した実施例には、第1物理量を検出して第1センサ信号12.1として出力する第1センサ部材12を備えた第1センサユニット10と、第1物理量に相関する第2物理量を検出して第2センサ信号22.1として出力する第2センサ部材を備えた第2センサユニット20とが含まれている。トリガ信号38.1に対するトリガ判定条件をチェックするため、評価および制御ユニット30は少なくとも実際の第1センサ信号12.1と第1閾値とを比較する。
【0029】
この実施例に示した評価および制御ユニット30は、3つのインタフェースユニット32および1つの計算ユニット34を有する。計算ユニット34は、記憶ユニット37と、妥当性検査ユニット36と、判定ロジック部38とを有する。評価および制御ユニット30は、少なくとも1つのインタフェースユニット32を介して第1センサ部材12の第1センサ信号12.1と、第2センサ部材22の第2センサ信号22.1を受信し、受信したセンサ信号12.1,22.1を計算ユニット34において評価する。この評価により、例えば、存在するオフセットを減算する、および/または、平均値を求める、および/または、係数との乗算によって信号強度を増大させることができる。択一的にはこの評価を第1センサユニット10において、および/または第2センサユニット20において行うことも可能である。このために対応する評価ユニットをセンサユニット10,20に配置することができる。
【0030】
本発明によれば少なくとも第1センサ部材12は、上限および/または下限を備えた少なくとも1つの第1信頼性領域ZBを有する。この少なくとも1つの第1信頼性領域ZBは、第2センサ部材22によって検出される第2物理量に関連付けられる。評価および制御ユニット30の妥当性検査ユニット36は、第2センサ部材22によって実際に検出した第2物理量が、第1センサ部材12の対応する第1信頼性領域ZB内にある場合、第1センサ部材12によって検出した第1物理量の実際値を妥当であると識別する。図示した実施例においてセンサ部材12,22は、同じおよび/または異なる測定個所において同じ測定原理および/または異なる測定原理でクラッシュ関連の物理量を検出する。殊にセンサ部材12,22は、同じ物理量を異なって検出する、および/または相異なる物理量を同じまたは異なる値域において検出することができる。例えばセンサ部材12,22は同じ物理量を検出し、ただしセンサ部材12,22のうちの一方のセンサ部材の分解能は他方のセンサ部材よりも高く、および/または、センサ部材12,22のうちの一方のセンサ部材は他方のセンサ部材よりも値域が広く、および/または、センサ部材12,22は、同じ物理量を相異なる測定個所において検出するのである。これらの2つのセンサ部材12,22は、例えば、加速度および/または圧力および/または固定伝送音および/またはヨーレートを検出することができる。
【0031】
図示した実施例において、ヨーレートセンサ12の測定値は、加速度センサ22によって妥当性があると識別することができる。なぜならば上記の実際の加速度は、ヨーレートセンサ12の測定結果の精度に影響を及ぼすからである。別の変形実施形態では、ヨーレートセンサ12の値を、択一的または付加的に固定伝送センサによって妥当性があると識別することが可能である。より高速に評価を行うため、上記の閾値および/または上記の少なくとも1つの信頼性領域ZBは記憶ユニット37に格納される。
【0032】
上記の評価および制御ユニット30の判定ロジック部38は、上記のトリガ判定条件が満たされたか否かを検査する。少なくとも第1センサ部材12の実際の第1センサ信号12.1が、対応する第1閾値を上回り、かつ、少なくとも第1センサ12の第1センサ信号12.1が妥当である識別される場合に上記のトリガ判定条件が満たされる。このトリガ判定条件が満たされる場合、評価および制御ユニット30は、インタフェースユニット32を介してトリガ信号38.1を出力する。上記のトリガ判定条件を検査するため、妥当性検査ユニット36は妥当性検査信号36.1を判定ロジック38に出力する。ここでこの妥当性検査信号36.1は、第1物理量の値が妥当であるか否かを表す。
【0033】
オプションでは評価および制御ユニット30はトリガ判定条件をチェックするため、実際の第1センサ信号12.1に他にさらに実際の第2センサ信号22.1と第2閾値とを比較する。このようなケースにおいて、第1センサ部材12のこの実際の第1センサ信号12.1が、対応する第1閾値を上回り、かつ、第2センサ部材22の実際の第2センサ信号22.1が対応する第2閾値を上回る場合であって、かつ、少なくとも第1センサ部材12の第1センサ信号12.1が妥当であると識別される場合にのみ上記のトリガ判定条件が満たされる。
【0034】
図2からわかるように、ステップS10.1において第1センサ部材12を介して少なくとも1つの第1物理量が検出され、第1センサ信号12.1として出力される。第2ステップS10.2では第2センサ部材22を介して、第1物理量に相関付けられた第2物理量が検出され、第2センサ信号22.1として出力される。この際にこれらの測定した物理量により、例えばクラッシュから得られる結果と同じ結果が得られる。このことが意味するのは、相関付けられたクラッシュ関連の物理量が検出されることである。これらの双方の物理量の検出は、並行してないしは同時にまたは時間的にずらして行うことできる。さらに同じおよび/または相異なる値域の、同じおよび/または相異なる測定個所における、同じ測定原理および/または相異なる測定原理による、同じ物理量および/または相異なる物理量を検出することができる。
【0035】
ステップS20.1では上記の検出した第1センサ信号12.1が、またステップS20.2では第2センサ信号22.1が、評価および制御ユニット30によって評価され、および/または適当な量に変換される。これには、例えばオフセットを減算する、および/または、相関する物理量を数学的に計算することが含まれ得る。
【0036】
本発明では少なくとも第1センサ部材12は、上限および/または下限を備えた少なくとも1つの信頼性領域ZBを有し、この信頼性領域は、第2センサ部材22によって検出される第2物理量に関連付けられる。第2物理量は、第1センサ部材12によって検出される物理領域の測定結果に影響を及ぼす。ステップS30では、第1センサ部材12によって出力されるセンサ信号12.1が妥当であるか否かが検査される。第2センサ部材22によって検出した第2物理量の値が第1センサ部材12の信頼性領域ZB内にある場合に第1センサ部材12の第1センサ信号12.1は正しい、および/または信頼性が高い、ないしは妥当である。したがってステップS30では、第2センサ部材22によって検出した第2物理量が第1センサ部材の第1信頼領域ZB内にある場合、第1センサ部材12によって検出した第1物理量の実際値が妥当であると識別される。これが満たされる場合、ステップS30において、対応するイエスの妥当性信号36.1が、評価および制御ユニット30の妥当性検査ユニット36から、評価および制御ユニット30の判定ロジック部38に出力されるため、この判定ロジック部38は、別の複数の条件が満たされる場合に、対応するトリガ信号38.1を形成して出力することができる。上記の条件が満たされない場合、ステップS30において、対応するノーの妥当性信号36.1が評価および制御ユニット30の妥当性検査ユニット36から、評価および制御ユニット30の判定ロジック部38に出力されるため、判定ロジック部38は、別の複数の条件とは無関係にトリガ信号38.1を形成せず、またこれを出力しない。
【0037】
図2からさらにわかるように、トリガ信号38.1を出力する本発明の方法には、上で説明したステップS10.1からS30と、別の妥当性検査とが含まれている。したがってステップS40では、評価および制御ユニット30の妥当性検査ユニット36が、評価および制御ユニット30の判定ロジック部38にイエスまたはノーのどちらの妥当性信号36.1を出力したか否かが検査される。ステップS40においてノーの妥当性検査信号36.1が識別される場合、トリガ信号38.1を出力するこの方法は終了する。ステップS40においてイエスの妥当性信号36.1が識別される場合、ステップS50において、検出した第1物理量ないしは第1センサ信号12.1の実際値と、あらかじめ設定した第1閾値とが比較される。つぎのステップS70では、検出した第1物理量ないしは第1センサ信号12.1の実際値が第1閾値を上回っているか否かが検査される。検出した物理量ないしは第1センサ信号12.1の実際値が、対応する閾値を上回っている場合、ステップS80においてトリガ信号38.1が形成されて出力される。トリガ信号38.1は、例えば、エアバッグおよび/またはロールオーババーおよび/またはシートベルトテンショナのような安全関連の人員保護システムを起動する。
【0038】
検出した物理量ないしは第1センサ信号12.1の実際値が、対応する閾値を上回っていない場合、上記の方法は終了し、トリガ信号38.1は出力されない。
【0039】
したがってトリガ信号38.1を出力する本発明の方法により、センサ部材12,22によってセンシングされた結果が妥当であるか否かが検査されるのである。この結果は、図示の実施例においてクラッシュないしは車両横転であり、このクラッシュないしは車両横転は、求めた上記の第1センサ信号12.1が、対応する第1閾値を上回っており、妥当であると識別された場合に妥当であると識別される。チェックされる上記のトリガ判定条件が満たされるのは、第1センサ信号12.1の実際値が、対応する閾値を上回っている場合であって、かつ、上で説明したステップS10.1からS30におけるセンサ信号の妥当性検査方法により、少なくとも第1センサ12の第1センサ信号12.1が妥当であると識別される場合である。
【0040】
オプションでは、破線で示したステップS60において付加的に、検出した第2物理量ないしは第2センサ信号22.1の実際値と、あらかじめ設定した第2閾値とを比較する。2つのステップS50およびS60は、並行してないしは同時にまたは時間的にずらして実行することができる。この場合にステップS70では、検出した第1物理量ないしは第1センサ信号12.1の実際値が、第1閾値を上回っているか否か、また検出した第2物理量ないしは第2センサ信号22.1の実際値が、第2閾値を上回っているか否かが検査される。検出した物理量ないしは2つのセンサ信号12.1,22.1の両方の実際値がそれぞれ対応する閾値を上回っている場合、ステップS80においてトリガ信号38.1が形成されて出力される。
【0041】
この実施例において上記の検出した物理量ないしはセンサ信号12.1,22.1の2つの実際値のうちの少なくとも1つの実際値が、対応する閾値を上回っていない場合、上記の方法は終了し、トリガ信号38.1は出力されない。
【0042】
したがってトリガ信号38.1を出力する本発明の方法により、この実施例において、センサ部材12,22によってセンシングした結果が妥当であるか否かが検査されるのである。上記のイベントは、図示の実施例においてクラッシュないしは車両横転であり、求めたセンサ信号12.1,22.1がそれぞれ、それに対応付けられた閾値を上回っており、かつ、少なくとも第1センサ信号12.1が妥当である場合に、このクラッシュないしは車両横転は妥当であると識別される。第1センサ信号12.1の実際値および第2センサ信号22.2の実際値がそれぞれ、これらに対応付けられた閾値を上回る場合であって、かつ、上で説明したステップS10.1ないしS30におけるセンサ信号の妥当性検査方法により、少なくとも第1センサ12の第1センサ信号12.1が妥当であると識別される場合に、上記のチェックされるトリガ判定条件が満たされる。
【0043】
ここで説明しない択一的な実施例においてまず、少なくとも第1センサ信号が妥当であるか否かを検査する前に、検出した第1物理量ないしは第1センサ信号の実際値が、第1閾値を上回り、かつ、検出した第2物理量ないしは第2センサ信号の実際値が第2閾値を上回るか否かを検査することができる。択一的にはこれらの複数の検査を並行してなしは同時に行うことができる。
【0044】
同様にここで説明しない第3のセンサ部材により、第1センサ部材12の第1センサ信号12.1および/または第2センサ部材22の第2センサ信号22.1の妥当性検査を行うことも可能である。この際には第1センサ部材12および第2センサ部材22は1つずつの信頼性領域ZBを有しており、この信頼性領域は、第3センサ部材によって検出されかつ第3センサ信号に変換される物理量に関連付けられる。