(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記増幅回路で増幅された後の上記温度検出回路の温度変化に伴う順方向電圧の変化の大きさを、上記ツェナーダイオードの降伏電圧の大きさによって補正し、上記電流調整回路はこの補正後の電圧に基づいて上記スイッチング素子のゲート電極に流すゲート電流の大きさを調整する請求項1に記載のゲート駆動回路。
上記温度検出回路に定電流を流すための定電流生成器を備え、上記定電流生成器は、抵抗と、電流調整用半導体素子と、演算増幅器とから構成され、上記抵抗における電圧降下が一定となるように、上記電流調整用半導体素子が上記演算増幅器により制御される構成である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のゲート駆動回路。
上記電流調整回路に対する入力電圧を外部から入力される調整電圧により調整するための入力端子を有し、この入力端子から入力された上記調整電圧に基づいて上記電流調整回路による上記スイッチング素子に対するゲート電流の大きさを調整するものである請求項1、請求項2、請求項4、または請求項5のいずれか1項に記載のゲート駆動回路。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1におけるゲート駆動回路を示す回路図である。
この実施の形態1のゲート駆動回路は、例えば、コンバータやインバータを構成するIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)からなる電力変換用のスイッチング素子1を備え、このスイッチング素子1に逆並列に還流用のダイオード2が接続されている。なお、スイッチング素子1としては、IGBTに限らず、バワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、バイポーラトランジスタ、GTO(Gate Turn Off thyristor)などの半導体素子を使用することができる。
【0012】
また、スイッチング素子1とダイオード2が形成された同一チップ上で温度差のほとんど生じない近接した位置に、複数のダイオード3を直列接続してなる温度検出回路4が設けられている。この温度検出回路4の一端側は電流制限用の抵抗R1を介して制御電源5に接続され、他端側は接地側端子13に接続されている。そして、上記の制御電源5が特許請求の範囲において温度検出回路4に順方向電流を流す電流源に相当する。
【0013】
ここで、上記の温度検出回路4を構成するダイオード3の出力特性は、周知のように、
図2に示すようになっている。したがって、予め、
図2のようなダイオード3の電圧−電流特性の温度依存性を取得しておくことで、温度検出回路4によってスイッチング素子1の温度を検出することができる。
【0014】
スイッチング素子1のゲート側には、制御電源5、電流制限用の抵抗R2、スイッチング素子1のゲート電極にゲート電流を流して充電するためのPチャンネル型のMOSFET7、電流制限用の抵抗R3、およびスイッチング素子1のゲート電極へのゲート電流の供給を停止して放電するためのNチャンネル型のMOSFET8が順次接続され、MOSFET8のソース側は接地側端子13に接続されている。なお、制御電源5の電圧Vccは、スイッチング素子1を駆動するために一定の電圧に調整されている。
【0015】
電流制限用の抵抗R1と温度検出回路4の電流入力側との接続点には、第1演算増幅器9の一方の入力端子が接続されている。第1演算増幅器9の他方の入力端子は抵抗R4を介して接地側端子13に接続されている。第1演算増幅器9の出力端子にはツェナーダイオード10が接続されている。なお、抵抗R5は第1演算増幅器9の帰還用の抵抗である。そして、第1演算増幅器9が、特許請求の範囲において温度検出回路4の順方向電圧を増幅する増幅回路に対応している。
【0016】
電流制限用の抵抗R2とMOSFET7のドレインとの接続点には第2演算増幅器12の一方の入力端子が接続されている。制御電源5には電圧調整用の抵抗R6が接続され、この抵抗R6とツェナーダイオード10との接続点に第2演算増幅器12の他方の入力端子が接続されている。第2演算増幅器12の出力端子はMOSFET7のゲートに接続されている。そして、第2演算増幅器12とMOSFET7とが、特許請求の範囲においてスイッチング素子1のゲート電極に流すゲート電流Iの大きさを調整する電流調整回路に対応している。
【0017】
14はスイッチング素子1をオン/オフ制御するために外部より入力される制御信号の入力端子である。この入力端子14は、抵抗R7を介してMOSFET8のゲートに接続されるとともに、抵抗R8やダイオード15を介して抵抗R6とツェナーダイオード10との接続点に接続されている。そして、上記の両MOSFET7、8が、特許請求の範囲において外部信号を受けてスイッチング素子1をオン/オフさせるドライブ回路に対応している。
【0018】
上記構成のゲート駆動回路において、先ず、外部から入力端子14に入力される制御信号によってスイッチング素子1がオン/オフ制御される場合の基本的な動作について説明する。
【0019】
まず、入力端子14にLレベル、すなわち接地側端子13と同じ電圧の制御信号が入力された場合について説明する。このとき、MOSFET8がオフするとともに、第2演算増幅器12は入力端子間の電圧差が同じになるように、すなわち一方の入力端子に入力される、制御電源5の電位Vccからゲート電流と抵抗R2による電圧降下を差し引いた電位が、もう一方の入力端子に入力される、Vbの電位と制御電源5の電位Vccとの間の電位差と同じになるように、MOSFET7のゲート電圧を制御し、MOSFET7のオン抵抗を調節することによりゲート電流の大きさを制御する。このように、制御電源5から抵抗R2およびMOSFET7を介してスイッチング素子1のゲート電極にゲート電流Iが供給されるため、スイッチング素子1がオンする。
【0020】
次に、入力端子14に制御電源5の電位Vccと同じ電位であるHレベルの制御信号が入力された場合について説明する。このとき、MOSFET8がオンするとともに、第2演算増幅器12の入力端子間の電圧差がなくなることにより、第2演算増幅器12は、抵抗R2に電流が流れないように、MOSFET7をオフする。これにより、制御電源5からスイッチング素子1のゲート電極にゲート電流Iが供給されなくなるため、スイッチング素子1がオフする。
【0021】
次に、温度検出回路4によるスイッチング素子1近傍の温度検出に基づくゲート電流Iの調整動作について説明する。
【0022】
温度検出回路4を構成するダイオード3の電圧−電流特性の温度依存性として、ダイオード3のカソード電流が一定の場合、
図2に示したように、アノード・カソード間電圧が温度によって変化する。
【0023】
そこで、温度検出回路4の順方向電圧Vaを第1演算増幅器9により増幅する。
図3に示すように、ツェナーダイオード10のスレッシュホールド電圧成分Vzは、第1演算増幅器9の増幅後の出力電圧のオフセット電圧となるので、このオフセット電圧Vzを差し引いた電圧分をゲート電流調整用の電流調整電圧Vbとして利用する。このオフセット電圧Vzを差し引いて得られる電流調整電圧Vbは、
図3の特性から分かるように、温度が小さくなると大きくなる特性となる。なお、オフセット電圧Vzを差し引くにあたり、上記の方法以外に、第1演算増幅器9にオフセットを設けて差し引いてもかまわない。
【0024】
いま、スイッチング素子1の温度が低い場合、温度検出回路4の順方向電圧Vaが大きくなるので、第1演算増幅器9の両入力端子間の電圧差が同じになるように、第1演算増幅器9は出力電圧を大きく調整する。これにより、電流調整電圧Vbは、制御電源5の電位Vccが抵抗R6と抵抗R8とによって分圧された電圧よりも大きく調整される。この結果、第2演算増幅器12の電流調整電圧Vbと制御電源5の電位Vcc間の電位差が小さくなるので、第2演算増幅器12はMOSFET7のゲート電圧を、オン抵抗値が大きくなるように調整するため、スイッチング素子1のゲート電流Iが減少するように制御される。このため、スイッチング素子1のスイッチング速度が遅くなるので、スイッチング損失は幾分増大するものの、その際の電流変化(di/dt)が小さくなるのでスイッチングノイズが抑制される。つまり、スイッチング素子1の温度が低くてスイッチング損失が許容できる場合、スイッチングノイズの発生が低減される。
【0025】
一方、スイッチング素子1の温度が高い場合、温度検出回路4の順方向電圧Vaが小さくなるので、第1演算増幅器9の出力電圧は、温度の低い場合と比べて、低い電圧に調整する。この結果、電流調整電圧Vbは、制御電源5の電位Vccが抵抗R6と抵抗R8とによって分圧された電圧よりも小さく調整される。よって、第2演算増幅器12の両入力端子間の電圧差が大きく調整されるので、第2演算増幅器12はMOSFET7のゲート電圧を、オン抵抗値が小さくなるように調整するため、スイッチング素子1のゲート電流Iが増大するように制御される。このため、スイッチング素子1のスイッチング速度が早くなるので、その際の電流変化(di/dt)が大きくなってスイッチングノイズが幾分増大するものの、スイッチング損失が抑制される。つまり、スイッチング素子1の温度が高くてスイッチング損失が許容できない場合、スイッチング損失の増加が低減される。
【0026】
なお、スイッチング素子1の温度変化によるゲート電流Iの調整は、第1演算増幅器9のゲインを調整したり、あるいはツェナーダイオード10と直列に図示しない抵抗を接続することで調整することも可能である。
【0027】
また、ツェナーダイオード10は、ここではスイッチング素子1と同じチップ上に配置した構成としているが、この構成に限らず、これとは別のチップとして配置してもよい。例えば、スイッチング素子1を冷却する放熱フィンの近傍に配置した構成としてもよい。この構成の場合、周辺温度が変化した際に、スイッチング素子1の許容できる温度差をツェナーダイオード10により検出することができる。この点について以下説明する。
【0028】
一般的に、定格5V以上のツェナーダイオード10を使用すれば、温度が上昇するとその降伏電圧が増加するという正特性を示す。
【0029】
したがって、周辺温度が低くて放熱フィンがスイッチング損失を許容できる場合には、同時にツェナーダイオード10の降伏電圧が小さくなるので、電流調整電圧Vbが大きくなるように調整される。その結果、電流調整電圧Vbと制御電源5の電位Vcc間の電位差が小さくなるので、電流調整回路12、7によってスイッチング素子1へのゲート電流Iが小さくなるように制御される。
【0030】
一方、周辺温度が高くて放熱フィンがスイッチング損失を許容できない場合には、同時にツェナーダイオード10の降伏電圧が大きくなるので、電流調整電圧Vbが小さくなるように調整される。その結果、電流調整電圧Vbと制御電源5の電位Vcc間の電位差が大きくなるので、電流調整回路12、7によってスイッチング素子1に対するゲート電流Iが大きくなるように制御される。
【0031】
このように、温度が上昇するとこれに伴って降伏電圧が増加する正特性を有するツェナーダイオード10を使用することにより、チップ温度だけではなく、周辺温度や放熱フィンなどの温度が変化した場合でもスイッチング損失とスイッチングノイズとのトレードオフを図ることができる。
【0032】
なお、上記の説明は、正特性のツェナーダイオード10を使用することで、周辺温度が上昇するとスイッチング素子1のゲート電流Iが大きくなるように制御するようにしているが、一方、定格5V以下のツェナーダイオード10は通常、負特性を示す。よって、このような負特性をもつツェナーダイオード10を使用すれば、温度上昇に伴って降伏電圧が小さくなるので、電流調整電圧Vbが大きくなり、その結果、電流調整回路12、7によってスイッチング素子1に対するゲート電流Iが小さくなるように制御される。このように、使用するツェナーダイオード10の特性によってゲート電流Iの補正傾向を調整することができる。
【0033】
次に、上述したスイッチング素子1のゲート電流あるいはゲート抵抗に対するスイッチング時間やスイッチング損失の関係について具体的に説明する。
【0034】
図4(a)はスイッチング素子1のゲート抵抗とスイッチング時間との関係を、
図4(b)はゲート抵抗とスイッチング損失との関係をそれぞれ示している。この場合、ゲート抵抗とゲート電流の大きさとの関係は反比例の関係にあり、ゲート抵抗が小さい場合にはゲート電流は大きくなる。なお、ここでのゲート抵抗は、MOSFET7のオン抵抗に相当する。
【0035】
スイッチング素子1の温度が低い場合、当該スイッチング素子1のスイッチング損失が幾分増大してもスイッチング素子1のジャンクション温度が破壊レベルに至らないため、スイッチング素子1のゲート抵抗を大きくして(つまり、ゲート電流Iを小さくして)スイッチング時間を遅くすることで、電流変化(di/dt)が小さくなり、その結果、スイッチングノイズの発生を低減することができる。
【0036】
また、スイッチング素子1のスイッチング時間とスイッチングノイズの大きさとの関係については、スイッチング素子1が接続される回路の形状などにより定まるインダクタンス値や電流の大きさなどにより決まるが、いずれの場合にせよ、スイッチング素子1のゲート抵抗を小さく(つまり、ゲート電流Iを大きく)すると、スイッチング時間が早くなるので、スイッチング損失が低減されるが、スイッチング素子1がオン/オフする際の電流変化(di/dt)が大きくなり、その結果、発生するスイッチングノイズが大きくなる。
【0037】
スイッチング素子1の温度に関しても、スイッチング素子1が設置されている条件や冷却など方法によりその程度は異なるが、ゲート抵抗が大きくなると(つまり、ゲート電流Iが小さくなると)スイッチング損失が大きくなるため、素子の温度も高くなる傾向にある。
【0038】
電流調整回路を構成するMOSFET7のゲート電圧に関しても、使用する素子によって特性が異なるが、MOSFET7のゲート電圧を制御することにより、MOSFET7のソース・ドレイン間のオン抵抗の値を制御することができる。
【0039】
以上の観点から、この実施の形態1では、スイッチング素子1が駆動される際の温度条件の変化に応じて、電流調整回路の出力インピーダンスに相当するMOSFET7のオン抵抗を第2演算増幅器12により調整してスイッチング素子1のゲート電流Iを制御することで、自動的にスイッチング損失の低減とスイッチングノイズの低減の両立を図る。
【0040】
すなわち、スイッチング素子1の温度が低い場合、
図4(a)に示すように、第2演算増幅器12からMOSFET7のゲートに加えるゲート電圧を下げてMOSFET7のオン抵抗(ゲート抵抗)を10Ωから40Ωに変えることにより、スイッチング素子1のオン時のスイッチング時間を25nsから43nsに、また、オフ時のスイッチング時間を280nsから770nsに変えることで、スイッチング時に発生するノイズを低減する。ただし、
図4(b)に示すように、スイッチング時の損失は1.2mJから1.8mJに増大する。逆に、スイッチング素子1の温度が高い場合、第2演算増幅器12からMOSFET7のゲートに加えるゲート電圧を高くしてMOSFET7のオン抵抗(ゲート抵抗)を小さくし、スイッチング素子1のスイッチング時間を短くすることで、スイッチング損失を小さくする。
【0041】
以上のように、この実施の形態1では、スイッチング素子1の温度が低くてスイッチング損失が許容できる場合には、スイッチング素子1のゲート電流Iが減少するように制御し、スイッチング素子1のスイッチング速度を遅くすることで、スイッチングノイズの発生を抑制する。また、スイッチング素子1の温度が高くてスイッチング損失が許容できない場合には、スイッチング素子1のゲート電流Iが増加するように制御し、スイッチング素子1のスイッチング速度を早くすることでスイッチング損失の増加を抑制する。
【0042】
これにより、自動的にスイッチング素子1のスイッチング損失の低減とスイッチングノイズの低減との両立を図ることができるので、従来のように、スイッチング素子1近傍の温度の変化によって、スイッチング損失が大きくなり過ぎて素子が破壊したり、スイッチングノイズの発生が過多になるなどの不具合発生を無くすことができる。
【0043】
実施の形態2.
図5はこの発明の実施の形態2におけるゲート駆動回路を示す回路図であり、
図1に示した実施の形態1と対応もしくは相当する構成部分には同一の符号を付す。
【0044】
温度変化や他の回路からのノイズなどに起因して制御電源5の電源電圧Vccが変動することがある。そして、電源電圧Vccが変動すると、これに伴って温度検出回路4の順方向電圧Vaが変動して、ダイオード3の順方向電流が変動し、その結果、正確な温度変化を検出できず、温度以外の条件によってスイッチング素子1の駆動状態が変化してしまうことになる。
【0045】
その不具合を回避するため、この実施の形態2では、温度検出回路4の順方向電流の大きさが常に一定になるような定電流を流すための定電流生成器17が設けられている。すなわち、この定電流生成器17は、既知の抵抗値をもつ抵抗R10〜R12と、第3演算増幅器18と、電流調整用の半導体素子であるPチャンネル型のMOSFET19とから構成されている。
【0046】
制御電源5と温度検出回路4との間に定電流生成器17を構成する抵抗R10とMOSFET19とが順次接続されている。また、抵抗R10とMOSFET19のドレインとの接続点に第3演算増幅器18の一方の入力端子が接続されている。さらに、制御電源5と接地側端子13との間に定電流生成器17を構成する2つの抵抗R11、R12が直列に接続され、両抵抗R11、R12の接続点に第3演算増幅器18の他方の入力端子が接続されている。
【0047】
そして、制御電源5の電圧Vccに対して、抵抗R10と抵抗R11における電圧降下がそれぞれ同じになるように、つまり、第3演算増幅器18の両入力端子に加わる電圧が同じになるように、電流調整用のMOSFET19のゲート電圧をフィードバック制御することで、温度検出回路4に流れる順方向電流の大きさが常に一定になるように調整される。
【0048】
また、この実施の形態2では、第1演算増幅器9の一方の入力端子の前段にフィルタ20を設け、外部からのノイズの影響を低減するようにしている。これにより安定した動作を実現することができる。
その他の構成、および作用効果は実施の形態1と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0049】
実施の形態3.
図6はこの発明の実施の形態3におけるゲート駆動回路を示す回路図であり、
図1に示した実施の形態1と対応もしくは相当する構成部分には同一の符号を付す。
【0050】
この実施の形態3において、実施の形態1と異なる点は、スイッチング素子1のゲート電流Iを外部からも制御できるようにするため、外部から調整電圧Vdを入力するための入力端子21を有する。そして、この入力端子21は、電圧調整用の抵抗R14を介して第2演算増幅器12の他方の入力端子に接続されている。また、第1演算増幅器9の出力端子には、前述のツェナーダイオード10に加えて電圧調整用の抵抗R13が接続されている。
【0051】
このような構成により、入力端子21から入力された調整電圧Vdによって、第1演算増幅器9の出力電圧に基づく電流調整電圧Vbに対して補正をかけることができる。そして、調整電圧Vdによって補正された後の電流調整電圧Vbを第2演算増幅器12の他方の入力端子に加えることで、第2演算増幅器12からMOSFET7に加わるゲート電圧を調整してスイッチング素子1のゲート電流Iを制御する。
【0052】
これにより、スイッチング素子1のゲート電流の大きさを、温度検出回路4の検出出力に基づいて調整するだけでなく、入力端子21から入力される調整電圧Vdによって、温度以外の条件によってスイッチング素子1のゲート電流の大きさを調整することが可能となる。
【0053】
なお、外部から入力される調整電圧Vdに基づくスイッチング素子1のゲート電流の変化の調整の割合と、温度検出回路4の検出出力に基づく第1演算増幅器9の出力電圧によるスイッチング素子1のゲート電流の変化の調整の割合とは、上記抵抗R13,R14や、第1演算増幅器9のゲインにより調整することが可能である。
【0054】
すなわち、スイッチング素子1のターンオン時のゲート抵抗の大きさは、抵抗R2の大きさとMOSFET7のオン抵抗により決まり、また、ターンオフ時のゲート抵抗の大きさは、抵抗R3の大きさとMOSFET8のオン抵抗により決まる。したがって、駆動されるスイッチング素子1の特性に合わせて上記の抵抗の値を調整するとともに、スイッチング素子1の温度状態、および外部から入力端子21に入力される調整電圧Vdの大きさによってスイッチング素子1のゲート電流Iを調整することができる。
その他の構成、および作用効果は実施の形態1と同様であるから、ここでは詳しい説明は省略する。
【0055】
実施の形態4.
図7はこの発明の実施の形態4におけるゲート駆動回路を示す回路図であり、
図1に示した実施の形態1と対応もしくは相当する構成部分には同一の符号を付す。
【0056】
この実施の形態4において、実施の形態1と異なる点は、温度検出回路4に流れる電流を調整するために、制御電源5と温度検出回路4のダイオード3との間に定電流ダイオード22が設けられている。また、スイッチング素子1をオン/オフ制御するために外部より入力される制御信号の入力端子14が、電流調整回路を構成するMOSFET7のソース側に電流制限用の抵抗R2を介して接続されている。
【0057】
さらに、この構成の場合、入力端子14に接地側端子13と同じ接地電圧のLレベルの制御信号が入力された際に、MOSFET7がオフしてスイッチング素子1に加わるゲート電流が放電されなくなるのを防止するため、MOSFET7と並列にオフ用ダイオード23が接続されている。これによって入力端子14に接地側端子13と同じLレベルの制御信号が入力された際に、スイッチング素子1が確実にオフされるようにしている。
【0058】
なお、MOSFET7と並列にオフ用ダイオード20を接続する代わりに、MOSFET7のボディダイオードを使用してもよい。また、電流制限用の抵抗R2の値が小さい場合には、これに直列にオフ用ダイオード23に直列に抵抗を接続してもよい。
【0059】
この実施の形態4の構成においては、入力端子14からスイッチング素子1がオンする電圧以上の電圧をもつHレベルの制御信号が入力されると、この制御信号の振幅と電流調整電圧Vbの差分の電圧が電流制限用の抵抗R2の両端に発生するように、第2演算増幅器12によってMOSFET7のゲート電圧が調整される。これによって、スイッチング素子1のゲート電流Iの大きさが調整されてスイッチング素子1がオンする。一方、入力端子14に接地側端子13と同じ接地電圧のLレベルの制御信号が入力されると、MOSFET7がオフし、これによってスイッチング素子1がオフする
【0060】
なお、ツェナーダイオード10に関しては、実施の形態1の場合に説明したように、使用するツェナーダイオード10の正負の特性によってゲート電流Iの補正傾向を調整することができる。この場合、ツェナーダイオード10は、スイッチング素子1と同じチップ上に配置した構成とするだけでなく、これとは別のチップとして配置してもよい。例えば、スイッチング素子1を冷却する放熱フィンの近傍に配置してもよい。
【0061】
これにより、スイッチング素子1のチップ温度と周辺温度によりスイッチング素子1のゲート電流Iの大きさを可変してスイッチング速度を自動的に調整することができる。その結果、外部から入力端子14に与えられる制御信号に基づいて、スイッチングノイズとスイッチング損失とのトレードオフを自動的に調整して、スイッチング素子1を駆動することができる。
【0062】
この発明は、上記の実施の形態1〜4の構成のみに限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記の実施の形態1〜4の構成について、各種の変形を加えたり、構成を省略することができ、また、それぞれ実施の形態1〜4の構成を適宜に組み合わることが可能である。
【0063】
また、上記の実施の形態1〜4では、スイッチング素子1などの半導体素子が珪素によって形成されたものを示したが、これに限らず、珪素に比べてバンドギャップが大きいワイドバンドギャップ半導体材料により形成してもよい。このようなワイドバンドギャップ半導体材料としては、例えば炭化珪素、窒化ガリウム系材料、またはダイヤモンドがある。
【0064】
このようなワイドバンドギャップ半導体材料によって形成されたスイッチング素子1などの半導体素子は、耐電圧性が高く、許容電流密度も高いために小型化が可能である。そして、これらの小型化されたスイッチング素子1などを用いることにより、これらの素子を組み込んだ半導体モジュールの小型化が可能となる。また、耐熱性も高いため、ヒートシンクの放熱フィンの小型化や、水冷部の小型化が可能である。さらに、電力損失が低いため、スイッチング素子やダイオードの高効率化が可能であり、ひいては半導体モジュールの高効率化が可能になる。
【0065】
一方、ワイドバンドギャップ半導体材料によって形成されたスイッチング素子1は、珪素で形成されたスイッチング素子に比べてスイッチングノイズの発生が多くなる傾向にあることから、本発明を適用することが特に有効となる。