【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明の主題は、反応混合物から均一系触媒系を分離する方法であって、前記反応混合物が、少なくとも1層の分離活性層を含む膜で、前記均一系触媒系が少なくとも部分的に該膜の保持液中で濃縮されるほどまで分離される分離方法において、前記反応混合物は、少なくとも1種の、部分的にエポキシ化された12個の炭素原子を有する環状の不飽和化合物を含有し、かつ前記膜の分離活性層は、架橋シリコーンアクリレートおよび/またはポリジメチルシロキサン(PDMS)および/またはポリイミドを含む分離方法である。
【0013】
前記反応混合物は、2つの不混和性の、または難混和性の液相を含む。前記相の一方は、本質的に水を含有する(水相)。その他に、この相は、過酸化水素、触媒、相転移試薬、そして微量の環状の不飽和C
12化合物、エポキシ化された環状の不飽和C
12化合物およびその二次産物、例えばジオール類などを含有しうる。もう一方の相(有機相)は、典型的には、エポキシ化の反応生成物としてのエポキシ化された環状の不飽和C
12化合物を主として含有する。その他に、この相は、反応混合物、出発材料として使用される未変性の環状の不飽和C
12化合物ならびに触媒および相転移試薬を含有しうる。
【0014】
反応混合物を膜に供給する前に、前記2つの液相の分離が行われる。この分離は、例えば相分離容器によって行うことができる。その点で、前記反応混合物は、2相混合物としてではなく、1相混合物として前記膜へと加えられる。好ましくは、前記非水性(有機)相は膜により分離される。前記触媒は、前記水相からも膜技術によって分離することができる。従って、水相と有機相から、互いに別々にその都度の膜によって触媒を取り除くことができる。水相のためには有機相とは別の膜を使用することができる。水相のためには、好ましくは、以下の膜材料、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、疎水化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、酢酸セルロース、ポリピペラジンおよびポリフッ化ビニリデンの1つが使用される。それに対して、有機相の分離のためには、シリコーンアクリレートおよび/またはポリジメチルシロキサン(PDMS)および/またはポリイミドをベースとする膜が使用されるべきであろう。
【0015】
万一、反応混合物の相分離が起こらない場合は、水相の極性の増大または一方の相の密度の変更などの相分離のための措置が当業者に知られている。
【0016】
環状の不飽和C
12化合物という用語のなかに、本発明の範囲においては、従って、出発材料として使用される環状の不飽和C
12化合物も、生成物として得られるエポキシ化された環状の不飽和C
12化合物もまとめられる。前記出発材料がちょうど1つの多重結合を有する場合には、生成物は、多重結合のエポキシ化に基づいて飽和化合物である。
【0017】
本発明により使用可能な膜は、必ずしも上述の分離活性材料のみからなるわけではなく、他の材料を有してもよい。特に、前記膜は、支持材料または担持材料を有して、その上に分離活性層が施されていてよい。こうした場合に、複合膜またはコンポジット膜と呼ばれる。そのような複合膜の場合に、固有の分離活性材料の他に従ってなおも支持材料が存在する。相当する支持材料は、例えばEP 0 781 116 A1に開示されている。
【0018】
本発明による方法のために使用できる市販の膜は、Koch Membrane Systems, Inc.社の型名MPFもしくはSELROとして入手できる製品、Solsep B.V.社の製品、Grace/UOPの型名STARMEMの製品、Evonik Industries AGの型名PURAMEMおよびDURAMEMの製品、AMS Technologies Ltd.の型名NANO-PROの製品、ならびにGMT Membrantechnik GmbHから入手できる型名oNF-1、oNF-2およびNC-1を有する膜である。
【0019】
本発明による方法により、環状の不飽和C
12化合物のエポキシ化のための均一系触媒を、効果的なエポキシ化の後に反応混合物から直接回収可能である。そのことは、特に経済的な反応操作を可能にする。それというのも、回収された触媒は更なるエポキシ化反応のために再び使用できるからである。
【0020】
12個の炭素原子を有する環状の不飽和化合物は、好ましくはシクロドデセン(CDEN)である。CDENは、例えばシクロドデカトリエンから選択的水素化によって得られ、それは更にブタジエンの三量体化から得られる。エポキシ化によってモノエポキシ−シクロドデカンが得られる。
【0021】
本発明による方法は、技術水準から公知のような均一系エポキシ化触媒系の分離を可能にする。通常は、前記触媒系は、遷移金属触媒、特にタングステン含有触媒、モリブデン含有触媒またはバナジウム含有触媒である。それらは、例えばWO 00/44704 (A1)またはDE 30 27 349 A1に記載されている。
【0022】
前記触媒系は、通常は、タングステン、モリブデンおよび/またはバナジウムの誘導体を含む。誘導体としては、とりわけ、酸化物、混合酸化物、酸素含有の酸、酸素含有の酸の塩、カルボニル誘導体、タングステン、モリブデンおよび/またはバナジウムの元素の硫化物、塩化物、オキシ塩化物またはステアリン酸塩が該当する。
【0023】
好適な誘導体は、例えば金属カルボニル、W(CO)
6もしくはMo(CO)
6、酸化物MoO
2、MoO
5、Mo
2O
3、MoO
3、WO
2、W
2O
5、WO
3、VO
2、V
2O
3もしくはV
2O
5、硫化物WS
2もしくはWS
3である。更なる例は、酸素酸H
2WO
4およびH
2MoO
4またはそれらのアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩である。例えば、公知のエポキシ化触媒は、タングステン酸塩またはモリブデン酸塩、特にタングステン酸ナトリウム、Na
2WO
4、またはモリブデン酸ナトリウム、Na
2MoO
4を含む。
【0024】
これらの化合物は、大抵は、インサイチューで触媒活性化合物へと変換される。それは、好ましくはリンおよび/またはヒ素の誘導体との反応によって行われる。そのためには、特に、リンおよび/またはヒ素の、酸化物、酸素酸、酸素酸の塩、硫化物、塩化物、オキシ塩化物またはフッ化物が適している。
【0025】
従って、好ましくは前記触媒は、タングステン、モリブデンまたはバナジウムの誘導体とリンまたはヒ素の誘導体との反応によって得られる触媒活性化合物を含む。特に好ましい一実施形態においては、前記触媒活性遷移金属化合物は、インサイチューでタングステン酸ナトリウムとリン酸との反応によって形成される。
【0026】
記載される触媒は、しばしば、それ自体としては水溶性の触媒を有機C
12相に移すことができる相転移試薬を含む。
【0027】
本発明の特に好ましい一実施形態においては、前記触媒は、それに従い、タングステン、モリブデンまたはバナジウムの誘導体を、相転移試薬と組み合わせて含む。
【0028】
この場合に、相転移試薬としては、特に第三級の、および第四級のアンモニウム化合物が適しており、それらは、例えばDE 30 27 349 A1に記載されている。
【0029】
第三級アンモニウム化合物とは、本発明の範囲においては、窒素原子の3つの原子価が有機結合されている有機アンモニウム化合物を指す。その化合物には、特に分子式NR
3で示されRが有機基の化合物も、式R=NRのイミン化合物も、またN−アルキル化された複素芳香族化合物も含まれている。
【0030】
好適な相転移試薬のための一例は、Alaminの名称で入手できるトリオクチルアミンである。それらのオクチル基は、少なくとも部分的にデシル基と置き換えられていてよい。該アミンは、本発明の好ましい一つの相転移試薬である。
【0031】
第四級アンモニウム化合物とは、本発明の範囲においては、窒素原子の全ての4つの原子価が有機結合されている有機アンモニウム化合物を指す。その化合物には、特に分子式NR
4+X
-で示され全ての4つのRが有機基の化合物も、式R=NR
2+X
-のイミン化合物も、またN−アルキル化された複素芳香族化合物も含まれており、前記X
-は、それぞれ付属するアニオンである。
【0032】
好適な相転移試薬のための一例は、Aliquat 336の名称で入手できるトリカプリリルメチルアンモニウムクロリドである。
【0033】
いわゆるエステルクォートが、エポキシ化反応の実施のために更に好適な相転移試薬と判明した。エステルクォートという用語は、本発明の範囲では、少なくとも1つのカルボン酸エステル基を有する第四級アンモニウム化合物を指す。
【0034】
特に好ましい一実施形態においては、前記触媒系は、第四級アンモニウム化合物として、従って、式(I)
【化1】
[式中、置換基Rは、互いに独立して、同一または異なって、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基またはアルコール基を表し、かつ前記置換基Rの少なくとも1つは、1〜4個の炭素原子を有するアルコール基であって、1〜30個の炭素原子を有する飽和または不飽和の脂肪酸とエステル化されている基を表し、かつX
-は、対アニオンを表す]のエステルクォートを含む。前記不飽和脂肪酸は、一不飽和または多不飽和であってよい。その場合に、8〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和の脂肪酸が特に好ましく、16〜18個の炭素原子を有する飽和または不飽和の脂肪酸が最も好ましい。
【0035】
好ましい対アニオンX
-は、例えば塩化物アニオンCl
-およびメチル硫酸アニオンCH
3SO
4-である。
【0036】
式(I)による置換基Rは、互いに独立して、同一または異なって、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基またはアルコール基を表し、その際、前記置換基Rの少なくとも1つは、エステル化されたアルコール基を表す。好ましくは、前記アルコール基は、一価アルコールである。好適なアルキル基は、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチルおよびt−ブチルである。好適なアルコールは、特に前記アルキル基の全てのモノヒドロキシル化された誘導体、特にヒドロキシメチル、1−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシエチル、1−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、3−ヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシ−1−メチル−エチル、2−ヒドロキシ−1−メチル−エチル、1−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、4−ヒドロキシブチル、1−ヒドロキシ−1−メチル−プロピル、2−ヒドロキシ−1−メチル−プロピル、3−ヒドロキシ−1−メチル−プロピル、1−ヒドロキシメチル−プロピルおよび1−ヒドロキシメチル−1−メチル−エチルである。
【0037】
その場合に、以下の式(II)または(III)
【化2】
[式中、Zは、1〜30個の炭素原子を有する1種以上の飽和または不飽和の脂肪酸であり、X
-は、対アニオンを表す]による第四級アンモニウム化合物のエステルが特に適していると判明した。その場合に、8〜20個の炭素原子を有する飽和または不飽和の脂肪酸が特に好ましく、16〜18個の炭素原子を有する飽和または不飽和の脂肪酸が最も好ましい。
【0038】
記載されたエステルクォートは、相応の第三級アルコールアミン、例えばN−メチルジイソプロパノールアミンまたはトリエタノールアミンを好適な脂肪酸でエステル化し、引き続き好適なアルキル化剤、例えば硫酸ジメチルもしくは硫酸ジエチルまたは塩化メチルと反応させて第四級アルカノールアミン化合物とすることによって製造できる。
【0039】
式(I)〜(III)のエステルクォートは、一般に、種々のエステルの混合物として存在し、その際、脂肪酸基が様々であっても、アルカノールアミン化合物1つ当たりのエステル化された脂肪酸基の数が様々であってもよい。エステルクォートは、従って、そのエステル化度をもとに特徴付けられる。これは、アルカノールアミン化合物1つ当たりのエステル化された脂肪酸の平均数である。好ましくは、エステル化度は、1〜2.0の範囲、特に好ましくは1.2〜2.0の範囲、最も好ましくは1.5〜1.95の範囲である。所望のエステル化度を有するエステルクォートの合成のためには、アルカノールアミン化合物と、そのエステル化度に相当する物質量の脂肪酸とを反応させる。前記エステル化の転化は、その合成後の酸価をもとに調べられる。溶液1g当たり5g未満のKOHの酸価の場合に、前記転化は十分に完全である。
【0040】
好ましくは、触媒の分離用のコンポジット膜が用いられる。コンポジット膜は、支持材料と、その上に施与された分離活性層としての膜材料とを含む。前記支持材料は、従って、分離活性材料の点で異なる。多孔質担持材料と、シリコーンアクリレートまたはポリジメチルシロキサンの架橋によって製造された層とを含むコンポジット膜は、記載された反応混合物に対して極めて安定であり、回収された触媒の高い収率をもたらすことも判明した。特に、記載されたコンポジット膜は、タングステン、モリブデンまたはバナジウムの誘導体を含むと同時に、記載されたエステルクォートを相転移試薬として含む触媒の回収のために適している。
【0041】
その場合には、前記コンポジット膜の作用は、おそらく、触媒の膜を通じた輸送が、反応混合物の残留成分よりも強く妨げられるということ、特に環状の不飽和C
12化合物が該触媒よりも迅速に膜を越えることに基づいている。この場合に、具体的な一つの役割は、架橋シリコーンアクリレートまたはポリジメチルシロキサンを基礎とする層の役割であり、前記層は、拡散挙動に決定的な影響を及ぼすと思われるため、分離活性層とも呼ばれる。前記支持材料は、分離作用においてあまり重要な役割を担わないが、その分離課題の解決への基本的な関与を排除できず、そのために、膜でのその経過は複雑すぎる。
【0042】
好適な複合膜とそれらの製造は、例えばDE19507584、EP1741481およびWO 2011/067054 A1に記載されている。
【0043】
特に好適な膜は、そのシリコーンアクリレートが、式IV
【化3】
[式中、
aは、1〜500であり、bは、1〜25であり、かつcは、0〜20であり、
置換基R
1は、互いに独立して、同一または異なって、1〜30個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表し、前記アルキル基またはアリール基は、場合により少なくとも1つのエーテル基、エステル基、エポキシ基および/またはヒドロキシ基を有してよく、
置換基R
2は、互いに独立して、同一または異なって、基R
1、R
3およびR
4からの置換基を表し、
置換基R
3は、互いに独立して、同一または異なって、式VまたはVI
【化4】
のアクリレート基を表し、
前記式VまたはVI中、dは、0〜12であり、eは、0〜1であり、fは、0〜12であり、gは、0〜2であり、hは、1〜3であり、かつg+hは、3であり、
置換基R
6は、互いに独立して、同一または異なって、1〜30個の炭素原子を有するアルキル基もしくはアリール基または水素を表し、
基R
7は、同一または異なって、二価の炭化水素基、好ましくは−CR
62−、特にCH
2を表し、
置換基R
4は、互いに独立して、同一または異なって、式(VII)
【化5】
のポリエーテル基を表し、
前記式VII中、iは、0〜12であり、jは、0〜50であり、kは、0〜50であり、かつlは、0〜50であり、
置換基R
8は、同一または異なって、2〜30個の炭素原子を有するアルキル基またはアリール基を表し、かつ
R
9は、2〜30個の炭素原子を有するアルキル基、アリール基もしくはアシル基または水素を表す]の化合物であることを特徴とするものである。
【0044】
前記式中に示される構成単位(シロキサン鎖またはポリオキシアルキレン鎖)の種々のモノマーは、互いにブロック状に任意のブロック数と任意の順序で合成されていても、またはランダム分布の状態であってもよい。前記式中に示される係数は、統計平均値と見なされるべきである。
【0045】
特に好ましくは、前記分離活性の膜材料は、式IVのシリコーンアクリレートの架橋により複数の層で構成されている。
【0046】
かかる膜は、WO 2011/067054A1から公知である。
【0047】
特に好ましい一群の膜は、種々のシリコーンアクリレートの混合物の硬化による製造を行うことで製造できる。混合物の選択によって、分画限界、架橋度および親水性といった特性は、ほぼ無段階に今までに知られていない範囲で調整できる。
【0048】
好ましくは、前記分離活性層自体は、種々のシリコーンアクリレートの混合物の硬化によって製造された1層以上の層を有する。少なくとも以下の成分:
a)29質量%より高いケイ素含有率を有する1種以上のシリコーンアクリレート、好ましくは29質量%より高いケイ素含有率を有する式IVの1種以上のシリコーンアクリレート、特に式IVで示され、bとcが0であり、かつ29質量%より高いケイ素含有率を有する1種以上のシリコーンアクリレートと、
b)27.5質量%より低いケイ素含有率を有する1種以上のシリコーンアクリレート、好ましくは27.5質量%より低いケイ素含有率を有する式IVの1種以上のシリコーンアクリレート、特に式IVで示され、cが3より大きく、かつ27.5質量%より低いケイ素含有率を有する1種以上のシリコーンアクリレートと、
からなる混合物であって、成分a)については、aが、25〜500、好ましくは25〜300、特に30〜200であり、bが、0〜15であり、好ましくは0〜8であり、特に0であり、かつcが、0〜20、好ましくは0〜10、特に0であるが、但し、bが0のときにR
2=R
3であることが当てはまり、かつ成分b)については、aが、1〜24、好ましくは5〜20、特に好ましくは10〜20、特に10、11、12、13、14、15、16または17であり、bが、0〜25、好ましくは3〜10、特に好ましくは3、4、5、6、7または8であり、かつcが、0〜20、好ましくは0〜10、特に好ましくは0、1、2、3または4であるが、但し、bが0のときにR
2=R
3であることが当てはまる混合物が特に好ましい。
【0049】
前記成分a)とb)は、好ましくは、10対1〜1対10の質量比で、特に2対8〜8対2の質量比で存在する。
【0050】
種々のシリコーンアクリレートは、そのケイ素割合によって特徴付けることができる。このケイ素割合が小さいほど、シロキサン骨格により多くの有機置換基が結合されており、かつこれらの置換基はより長くなる。コンポジット膜の被覆のために上記の成分a)とb)との混合物が使用される場合に、成分a)としては、好ましくは29質量%より高いケイ素含有率を有するシリコーンアクリレートが使用され、かつ成分b)としては、好ましくは27.5質量%より低いケイ素含有率を有するシリコーンアクリレートが使用される。
【0051】
式IVのシリコーンアクリレートは、光開始剤を用いた、800nm未満の波長を有する電磁放射線および/または電子線による硬化によって得ることができる。特に、前記硬化は、紫外線によって400nm未満の波長で行われる。
【0052】
担持膜としては、一般に、耐溶剤性の多孔質の三次元構造物が適しており、例えばフリース布(Gewebevlies)、精密濾過膜もしくは限外濾過膜などの構造物、またはセパレーター、例えばバッテリーセパレーター、例えばSeparion(登録商標)(Evonik Degussa GmbH社の商品)もしくはSolupor(登録商標)などのセパレーターが適している。
【0053】
特に好適な担持膜は、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレンまたは上述の材料の混合物からなる。
【0054】
ポリイミド担持膜とポリアクリロニトリル担持膜が特に適していると判明した。従って、好ましくは、その両者の材料の一方が膜内部の担持材料として使用される。
【0055】
本発明により使用されるべき膜は、分画曲線をもとに特徴付けることができる。分画曲線は、本発明の範囲においては、トルエン中に溶解された規定の分子量を有するポリスチレンオリゴマーのモデルシステムにおいて温度30℃および膜間差圧30バールでの濾過をもとに測定される。このモデルシステムを用いて作成された分画曲線は、膜選択のための手掛かりとして用いられる。膜を備えた実際のシステムの、前記モデルシステムに対する種々の相関関係に基づき、モデルシステムで測定された分画限界は、実際のシステムにおいて一般的にある程度しか逸脱せずに見出される。
【0056】
特に好ましくは、本発明により使用されるべき膜は、1000g/モルより大きい分子量については97%の阻止率を上回り、かつ300g/モルより小さい分子量については80%の阻止率を下回るという分画限界の推移を示す。
【0057】
特に好適な膜の分画限界は、
図1に図示されている。その場合に、前記分画限界は、確立した様式でトルエン中のポリスチレンを用いて分離温度30℃および膜間圧30バールで測定されたものである。
【0058】
本発明による反応混合物の濾過は、一般に圧力駆動のプロセスである。つまり、反応混合物の膜への導通を促すために、膜を通じて差圧(膜間差圧、「膜間圧」とも呼ばれる)が加えられる。好ましくは、前記膜間圧は、5〜80バール、特に好ましくは10〜60バール、特に30〜40バールである。
【0059】
濾過の間の温度は、膜および反応混合物の温度安定性に応じて適合させることができる。反応混合物の粘度を下げることで、濾過を加速させるために、できる限り高い温度を選択することが好ましい。好ましくは、濾過は、25〜160℃の温度で、特に好ましくは40〜110℃の温度で、特に60〜90℃の温度で行われる。
【0060】
本発明による方法によって、前記触媒系は、保持液中で濃縮される。「保持液」とは、膜技術者によれば、膜の手前で取り出される膜からの排出物と理解される。膜を乗り越えた物質は「透過液」と呼ばれ、それは膜の後方で取り出される。その場合に、保持された触媒の量は、保持された遷移金属の量をもとに検出できる。本発明による方法は、特に、濾過前の反応混合物中の遷移金属の全量に対して50%を上回る遷移金属が保持液中に保持されることを可能にする。好ましくは、70%を上回る遷移金属、特に好ましくは90%を上回る遷移金属が保持される。相転移試薬が使用される場合には、この相転移試薬は、一般に該遷移金属とは異なる阻止率を達成することとなる。それでもやはり、相転移試薬は保持液中で濃縮される。それゆえ、触媒系全体は、少なくとも部分的に保持液中で濃縮される。前記遷移金属は、ICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析法)またはXFA(蛍光X線分析法)によって検出できる。
【0061】
タングステンおよびリンの測定は、ICP−OESによってアジレント社の分光装置を用いて行われる。酸性の水溶液だけしか計測できないので、試料は、予めマイクロ波分解(MLS社のUltraClave)によって分解せねばならない。
【0062】
窒素測定は、酸化的燃焼分析(1050℃で石英管中で酸素流において)と、引き続いての、NOからオゾンの存在下で形成される励起NO
2の化学発光検出とによって行われる。
【0063】
本方法の一実施形態においては、前記濾過は、本発明によるコンポジット膜を含む特別な分離装置中で行われる。その場合に、前記分離装置は、エポキシ化反応が行われる反応器の部分ではない。分離されるべき反応混合物を、エポキシ化反応器から全体として取り出して、分離装置に供給するか、または反応混合物の一部を、エポキシ化反応器から連続的に取り出して、分離装置に供給するかのいずれかであってよい。後者の別形は、エポキシ化反応を連続的なプロセスで行う場合に特に好ましい。更に、濾過に際して得られる保持液を再びエポキシ化反応器に供給する場合に好ましい。
【0064】
また別の一実施形態においては、前記コンポジット膜は、エポキシ化反応器の一部である。例えば、エポキシ化反応器の壁部は、少なくとも部分的に、前記コンポジット膜から作製されていてよく、または前記膜は、別の様式では直接的に反応室中に収容されていてもよい。こうしてエポキシ化と濾過は同時に行うことができるので、反応生成物と出発材料からなる混合物を含む触媒が除去された反応混合物を連続的に排出することができる。反応の実施のための反応器を含み、その壁部が少なくとも部分的に、架橋シリコーンアクリレートおよび/またはポリジメチルシロキサン(PDMS)および/またはポリイミドからなる分離活性層を備えている、環状の不飽和C
12化合物の過酸化水素によるエポキシ化のための相応の装置は、従って同様に本発明の主題である。
【0065】
同様に、かかる装置を、環状の不飽和C
12化合物のエポキシ化とともに、壁中に一体化された膜での相応の触媒分離を同時に実施するために用いる使用も本発明の主題である。
【0066】
本発明の更なる主題は、上述の本発明による均一系触媒系の分離法から得られたエポキシ化された環状の不飽和C
12化合物が用いられる、ラクタムの合成法(本発明によるラクタム法)である。
【0067】
前記エポキシ化された環状の不飽和C
12化合物は、引き続き、水素ならびに貴金属および金属酸化物を含む触媒の存在下に水素化されうる。この場合に、相応のケトンと、場合によりアルコール誘導体が生成する。ケトンが相応のアルコール誘導体との混合物で存在する場合、アルコールのケトンへの脱水が起こりうる。引き続き前記ケトンはオキシム化することができる。後続工程において、ラクタムへのベックマン転位が行われてよく、その際、前記転位は、硫酸または塩化シアヌルによって行うことができる。前記のラクタムは、重縮合によりポリアミドへと更に加工することができる。
【0068】
前記の水素化、脱水素化、オキシム化、ベックマン転位および縮合反応は当業者に公知である。
【0069】
本発明によるラクタム法の好ましい一実施形態においては、モノエポキシ−シクロドデカンからラウリンラクタムが製造される。
【0070】
好ましいラクタム法の範囲においては、モノエポキシ−シクロドデカンは、以下の反応ステップによって得ることができる(1,3−ブタジエンは、三量体環化によってシクロドデカトリエンへと転化される)。引き続き、シクロドデセンへの水素化が行われる。後続のエポキシ化によって、シクロドデカンエポキシドが得られる。