特許第6045677号(P6045677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6045677計時器等の携帯用物体のための表示文字盤の作製方法、及びその方法によって得られる表示文字盤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045677
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】計時器等の携帯用物体のための表示文字盤の作製方法、及びその方法によって得られる表示文字盤
(51)【国際特許分類】
   G04B 19/06 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   G04B19/06 N
   G04B19/06 S
   G04B19/06 C
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-228599(P2015-228599)
(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公開番号】特開2016-118538(P2016-118538A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2015年11月24日
(31)【優先権主張番号】14200000.9
(32)【優先日】2014年12月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・サガルドワイビュリュ
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−075597(JP,A)
【文献】 特開2008−164402(JP,A)
【文献】 特開2005−265588(JP,A)
【文献】 特開2008−096288(JP,A)
【文献】 特開2002−205317(JP,A)
【文献】 特表平11−511258(JP,A)
【文献】 特開平02−075991(JP,A)
【文献】 特開昭60−242015(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0242273(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用物体のための透明表示文字盤(1)の作製方法であって、前記方法は、
−前記透明表示文字盤(1)の表面(4)の少なくとも1つの第1の部分上に装飾(6)をインプリントするための第1の浮彫り又は3Dパターン及び前記透明表示文字盤(1)の前記表面(4)の第2の部分上に反射防止フィルタ(14)をインプリントするための第2の浮彫り又は3Dパターンから形成した空洞又はフットプリント(22)を保有するモールド(20)を生成するステップ;
−前記文字盤上に紫外線感光性モノマー・架橋剤混合層(18)を成層するステップ;
−前記モノマー・架橋剤混合層(18)上に前記モールド(20)の前記空洞(22)を当てるステップ;
−前記モールド(20)を通した紫外線下、光重合によって前記モノマー・架橋剤混合層(18)を固化させるステップ、並びに
−日光にさらした後、前記モールド(20)を取り外すステップ
を含む方法。
【請求項2】
携帯用物体のための透明表示文字盤(1)の作製方法であって、前記方法は、
−前記透明表示文字盤(1)の表面(4)の少なくとも1つの第1の部分上に装飾(6)をインプリントするための第1の浮彫り又は3Dパターン及び前記透明表示文字盤(1)の前記表面(4)の第2の部分上に反射防止フィルタ(14)をインプリントするための第2の浮彫り又は3Dパターンから形成した空洞又はフットプリント(22)を保有するモールド(20)を作成するステップ;
−前記印刷モールド(20)を上下反対に設置し、次に前記印刷モールド(20)の前記空洞(22)上に紫外線感光性モノマー・架橋剤混合層(18)を成層するステップ;
−前記印刷モールド(20)上の前記空洞(22)の側に前記透明表示文字盤(1)を位置決めするステップ;
−前記透明表示文字盤(1)を通した紫外線下、光重合によって前記モノマー・架橋剤混合層(18)を固化させるステップ、並びに
−日光にさらした後、前記モールド(20)を取り外すステップ
を含む方法。
【請求項3】
携帯用物体のための透明表示文字盤であって、前記透明表示文字盤(1)は、前記透明表示文字盤(1)の表面(4)の少なくとも1つの第1の部分上に常温UV支援インプリントによって作成した装飾(6)を含み、前記透明表示文字盤(1)の前記表面(4)の第2の部分は、透明開口(10)の境界を画定するように、やはり常温UV支援インプリントによって作成した反射防止フィルタ(14)を含む、透明表示文字盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器等の携帯用物体のための表示文字盤に関する。より詳細には、本発明は、デジタル表示デバイスを文字盤の下に配置した腕時計のための表示文字盤に関する。本発明は、そのような表示文字盤の作製方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
つまり、計時器等の携帯用物体のための文字盤は、例えば透明プラスチック材料から作製される。半透明層は、例えば、文字盤の表面下に配置した太陽電池等の構成要素をユーザの視界から隠すように、ユーザ側を向く文字盤の上側表面上に印刷する。文字盤の上側面の一部は、透明開口を設けるために一切印刷せずにおかれる。液晶表示セル等のデジタル表示デバイスは、液晶表示デバイスが表示する情報をユーザが読み取れるように、文字盤の表面下にこの開口と垂直に接着剤で結合される。
【0003】
この種の文字盤の欠点は、従来の機械仕上げ手段を用いて特定の仕上げ加工を与えるのが可能ではないことである。実際に、例えば、文字盤内に文字盤の中心から放射状に外に広がる細い線を形成するために、金属ブラシを使用して文字盤にブラシがけすることが望ましいところを想像されたい。これらの細い線は、光の反射現象を通じて、文字盤を煌めかせ、外観を変化させる。残念ながら、透明を維持しなければならない一部分を有する文字盤の場合、そのような機械ブラシがけ処理の実施は可能ではないことは理解されよう。実際、ブラシが開口に擦り傷を付けないようにブラシが透明開口の近傍を通過する際にブラシがけを停止することは不可能であり、擦り傷が付くと、デジタル表示デバイスが表示する情報を読むのが困難になる。したがって、透明を維持しなければならない一部分を有する透明材料から作製した文字盤の場合、そのような文字盤に機械仕上げ操作を施すのは可能ではないことは明らかであり、このことは、文字盤に与え得る最終的な外観を著しく制限するものである。
【0004】
更に、デジタル表示デバイスは、文字盤の表面下で透明開口と垂直に直接結合されるので、デジタル表示デバイスが表示する情報の良好な可読性を保証するために、この開口に反射防止層を設ける必要もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
携帯用物体のための透明表示文字盤の作製方法を提供することによって、他の事項に加え、上述の欠点を克服することが本発明の目的であり、本方法では、特に、透明表示文字盤に所与の仕上げ加工を与えることが可能である一方で、透明表示文字盤の少なくとも1つの領域に対する透明性を保持する。
【0006】
この目的で、本発明は、携帯用物体のための透明表示文字盤の作製方法に関し、方法は、
−透明表示文字盤の表面の少なくとも1つの第1の部分上にインプリントすることを目的とする、第1の装飾に対応する第1の浮彫り又は3Dパターン及び透明表示文字盤の表面の第2の部分上にインプリントすることを目的とする、反射防止フィルタに対応する第2の浮彫り又は3Dパターンを有するモールドを作成するステップ;
−文字盤上に紫外線感光性モノマー・架橋剤混合層を成層するステップ;
−第1の浮彫りパターン及び第2の浮彫りパターンを層内にインプリントするために、モノマー・架橋剤混合層上にモールドを当てるステップ;
−モールドを通した紫外線下、光重合によってモノマー・架橋剤混合層を固化させるステップ、並びに
−日光にさらした後、モールドを取り外すステップ
を含む。
【0007】
これらの特徴により、本発明は、腕時計等の携帯用物体のための透明表示文字盤の作製方法を提供し、この方法は、単一作製ステップで、文字盤の表面の少なくとも一部分上に装飾の構成を可能にする一方で、文字盤の下に開口と垂直に設置したデジタル表示デバイスのための目視開口の形成を目的とする文字盤表面の別の部分は、反射防止フィルタを受ける。
【0008】
したがって、本発明により、文字盤の下に配置したデバイスのための目視開口の境界を画定するように透明を維持する少なくとも1つの領域を有する一方で、文字盤表面の少なくとも別の部分は浮彫り又は3D装飾で被覆される透明表示文字盤が、出願人の知る限りでは初めて市場で入手可能になる。
【0009】
更に、本発明の方法により、透明表示文字盤上に適用可能な装飾の種類に関して、完全な自由を享受できる。
【0010】
本発明の方法は、周囲温度で、速い複製速度及び正確な位置合わせで実施されることも留意されたい。
【0011】
最後に、浮彫り装飾及び反射防止フィルタの同時印刷が周囲温度で行われるため、本方法は、文字盤を加熱する必要がないために経済的で、且つ印刷後文字盤が冷却するのを待つ必要がないために迅速な方法であり、とりわけ、透明表示文字盤の作製に使用する材料選択に対する制約を一切課さない。
【0012】
本発明は、携帯用物体のための透明表示文字盤にも関し、この透明表示文字盤は、その表面の少なくとも1つの第1の部分上に、UV支援常温(即ち、周囲温度)インプリント(インプリントしたいパターンの大きさに従って、「UV支援インプリント」又は「UV支援ナノインプリント」という名でも公知の技法である)によって作成した装飾を含み、透明表示文字盤表面の第2の部分は、目視開口の境界を画定するように常温UV支援インプリントによって形成した反射防止フィルタを含む。
【0013】
最後に、反射防止フィルタに関して、透明表示文字盤は、このフィルタの基体を形成する。したがって、基体の上に反射防止フィルタを構成し、次に、それによって文字盤上に得た組立体を結合する必要はなく、これにより、得られた文字盤の厚さを低減することが可能である。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、方法の実施に関する以下の詳細な説明からよりはっきりと明らかになるであろう。本例は、添付の図面を参照した非限定的な例として示すにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による透明表示文字盤を備える腕時計の平面図である。
図2】正午−6時の軸に沿った図1の透明表示文字盤の断面図である。
図3図3A図3Dは、常温UV支援インプリントによる図1の透明表示文字盤の作製方法の図である。
図4図4A図4Dは、図1の透明表示文字盤の作製方法の変形形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、常温UV支援インプリントによって腕時計等の携帯用物体のための透明表示文字盤を同時に被覆することにある全体的な発明概念から進行するものであり、透明表示文字盤は、文字盤表面の少なくとも一部分上に装飾パターンを有し、文字盤表面の別の部分上に反射防止フィルタも有する。透明領域の下側に配置したデバイスのための目視開口の境界を画定するように浮彫り又は3D内を反射防止フィルタで被覆した透明領域を有する一方で、透明文字盤の残りの表面の少なくとも一部分は、エンジンターン又はコート・ド・ジュネーブ等、従来の金属文字盤を被覆できる浮彫り装飾を模した浮彫り装飾で被覆した、プラスチック、ガラス又はサファイア等の透明材料製の文字盤は、出願人の知る限りでは市場に存在しない。この顕著な成果は、常温UV支援インプリント方法の使用により達成される。そのような方法は、インプリントする装飾に対応する第1の浮彫りパターン及びインプリントする反射防止フィルタに対応する第2の浮彫りパターンを同時に含有するモールドに依拠する。ユーザの側に位置する透明表示文字盤の表面上に紫外線感光性モノマー・架橋剤混合層を成層した後、モールドを層に当てて、モールドが保有する第1の装飾パターン及び第2の装飾パターンを層内に転写するようにする。次に、モノマー・架橋剤混合層を、モールドを通した紫外線によって固化し、次に、モールドを取り外す。
【0017】
図1は、本発明による透明表示文字盤の平面図である。全体参照番号1によって全体が示される、この透明表示文字盤は、腕時計2等の携帯用物体に備えることを意図する。透明表示文字盤1は、その表面4の少なくとも1つの第1の部分上に、常温紫外線支援インプリントによって作成した浮彫り又は3D装飾6を含む。図示の例では、浮彫り装飾6は、透明表示文字盤1の中心から放射状に外に広がる細い線8から形成される。透明表示文字盤1は、透明目視開口10の下に設置した液晶表示セル12等のデバイスをユーザが見るのを可能にする透明開口10も含む(図2を参照)。液晶表示セル12が表示する情報をユーザが容易に読み取ることができるように、透明開口10は、反射防止フィルタ14で被覆する。図3Aから図3Dを参照して以下で詳細に説明するように、この反射防止フィルタ14は、常温UV支援インプリント方法によって浮彫り装飾6と同時に構成される。反射防止フィルタ14の反射防止効果は、典型的には、例えば、透明開口10に当たる光が屈折率の急激な変化を受けず、緩やかな変化を受ける「モスアイ」型のナノメートル構造によって保証される。実際、その寸法のために、ナノメートル構造は、光が平均的な屈折率を形成するように受けられる。というのは、入射光の波長は、ナノメートル構造の周期よりも大きいからである。最後に、例えば、時計ケース内部に収容した蓄電池を充電することを非限定的に目的とする太陽電池16を透明表示文字盤1の下に配置することが可能である。
【0018】
次に、本発明による透明表示文字盤の作製方法の様々なステップを図3Aから図3Dを参照して検討する。
【0019】
図3Aでは、紫外線感光性モノマー・架橋剤混合層18は、透明表示文字盤1上に成層する。更に、印刷モールド20は、透明表示文字盤1の上に位置決めする。この印刷モールド20は、ポリジメチルシロキサン、即ちPDMS等、紫外線に対し透過性であるエラストマ材料から作製する。この印刷モールド20は、透明表示文字盤1の表面上に印刷したい浮彫り装飾6の陰画及び反射防止フィルタ14の陰画に対応する空洞又はフットプリント22を保有する。この印刷モールド20は、原盤モールド、即ち原型モールドであってもよい。しかし、そのような原盤モールドは、作成に費用がかかる。原盤モールドは、壊れやすくもあり、繰り返し使用すると、急速に損耗する可能性がある。原盤モールドから複製した印刷モールド20で対処することが好ましいのは、このためである。原盤モールドの空洞が、印刷したい浮彫り装飾6の陽画及び反射防止フィルタ14の陽画に対応する場合、原盤モールドの複製により得た印刷モールド20の空洞は、入手したい陰画に対応することを理解されたい。
【0020】
図3Bでは、印刷モールド20の空洞22は、混合層18の上に軽く押圧し、混合層は、印刷モールド20を通じた紫外線下、光重合によって周囲温度で固化させる。
【0021】
図3Cでは、日光にさらした後、浮彫り装飾6及び反射防止フィルタ14は、混合層18内にインプリントされ、印刷モールド20は、固化した混合層18から容易に外される。
【0022】
混合層20上に押圧される印刷モールド20の空洞は、入手したい陰画に対応し、浮彫り装飾6及び反射防止フィルタ14の陽インプリントは、混合層18中に生成されることは理解されよう。
【0023】
最後に、図3Dでは、浮彫り装飾6を形成する線8は、薄い半透明の、例えば金属層24で被覆し、この金属層は、光を太陽電池に向かって通すことを可能にするが、ユーザの目からは太陽電池を隠す。
【0024】
当然ながら、本発明は、直前に説明した実施形態に限定するものではなく、添付の特許請求の範囲により定義した発明の範囲から逸脱することなく様々な単純な修正形態及び変更形態を当業者は想定できる。特に、本発明の意味の範囲内では、「装飾」は、記号、数字又は更には時圏の目盛り等の装飾パターン及び機能パターンの両方を意味することを理解されよう。
【0025】
本発明の意味の範囲内では、文字盤を透明にし、反射防止膜で被覆した透明開口を文字盤内に配置し、透明表示文字盤の残りの表面の少なくとも一部分を浮彫り装飾パターンで被覆すれば十分であることもまた理解されよう。文字盤の表面下に配置されるものは、本発明にとって重要ではない。これらは、太陽電池、情報表示デバイス、計時器ムーブメント又は他の要素とすることができる。
【0026】
本発明の別の変形形態によれば(図4Aから図4Dを参照)、原盤モールドの複製により得た印刷モールド20の空洞22は、入手したい陰画に対応する。次に、印刷モールド20は、上下反対に配置し、次に、印刷モールド20の空洞22上に、紫外線感光性モノマー・架橋剤混合層18を成層する。次に、表示文字盤1は、印刷モールド20上の空洞22の側に位置決めする。最後に、モノマー・架橋剤混合層18は、透明表示文字盤1を通した紫外線により、常温(換言すれば周囲温度)で太陽にさらす。混合層18が重合化した後、印刷モールド20を取り外す。
【符号の説明】
【0027】
1 透明表示文字盤
2 腕時計
4 表面
6 浮彫り又は3D装飾
8 細い線
10 透明開口
12 液晶表示セル
14 反射防止フィルタ
16 太陽電池
18 混合層
20 印刷モールド
22 空洞
24 半透明薄層
図1
図2
図3
図4