【課題を解決するための手段】
【0009】
それに応じて、複数のネットワーク装置を備えている通信ネットワークが提案される。通信ネットワークは、N個の複数の仮想ネットワークを有しており、それらの仮想ネットワークは、セーフティクリティカルな複数のネットワーク装置の各ネットワーク装置が少なくとも二つの仮想ネットワークを介して通信ネットワークに接続されているように、通信ネットワーク内に形成されている。更に、通信ネットワークは、複数のネットワークセグメントも有している。複数のネットワークセグメントの各ネットワークセグメントには、ネットワーク装置のサブセットが一つずつ対応付けられており、ネットワークセグメントの境界領域に配置されている各ネットワーク装置はN個の制限ユニットを有しており、それらのN個の制限ユニットはそれぞれ、N個の仮想ネットワークのうちの一つの仮想ネットワークに対応付けられており、且つ、各仮想ネットワークに属するデータのデータ受信を、各仮想ネットワークに対して予め定められている、データ伝送速度に関する閾値に制限するように構成されている。
【0010】
ここでは、各仮想ネットワークに対する閾値は予め定められている。つまり、特に仮想ネットワークに関して固有に調整されている。
【0011】
データ伝送速度を監視することによって、またデータ受信を制限できることによって、特に、いわゆる「バブリング・イディオット」、即ち、ネットワーク内に存在する、欠陥に由来する無意味なデータ又はネットワーク内の他の装置が翻訳できないデータを送信するネットワーク装置に対処することができる。欠陥がある装置から、高い頻度でそのような「無意味な」データが頻繁に送信されると、ネットワークインフラストラクチャ及び通信パスに負荷が生じると考えられる。それにもかかわらず、過度に高いビットレートに対して、該当する受信ポートを制限するか、又はデータ受信を遮断することによって、バブリング・イディオットが存在する場合であっても確実なデータ通信を実現することができる。
【0012】
例えば、パケットをある一つのネットワークセグメントを介してルーティングしなければ、そのネットワークセグメントに隣接する複数のネットワーク装置に到達できないか、又は離隔されたパスを介して到達できなくなることから、そのネットワークセグメントを介してパケットをルーティングする必要がある場合、適切なネットワークセグメントを介してルーティングされる閾値(帯域幅制限)を固有に、特にVLAN固有に制限することができる。これによって、あるネットワークセグメント外のバブリング・イディオットによって形成されたデータパケットに起因して、実際は欠陥のないそのネットワークセグメントが切り離されることを回避することができる。
【0013】
仮想ネットワークは離隔されている複数のパスを介して、特に物理的に離隔されている複数のパスを介して、通信ネットワーク内に形成されている。
【0014】
データ伝送速度とは、ある時間単位内に伝送チャネル又は通信パスを介して伝送されるディジタルデータの量であると解される。データ転送率、ビットレート、伝送速度、コネクション速度、帯域幅又は容量と称することもできる。データ伝送速度に関する一般的な表記は、ビット毎秒で表される。
【0015】
最大データ伝送速度は、有利には、通信ネットワークに対して設定されている帯域幅に依存して決定される。ネットワークのトポロジ及び実現すべき機能から、障害のない動作に対して予定されている、ネットワークノード間又はネットワーク装置間の全てのデータ伝送速度、若しくは、送信ポートと受信ポートとの間の全てのデータ伝送速度が既知である場合には、相応の感度を有するように制限ユニットを調整することができる。
【0016】
その他に、バブリング・イディオットの障害ケースは、データ伝送速度の検査によって、また必要に応じて、受信を制限することによって、妨害されていないデータ又は欠陥のある装置から送信されたものではないデータのための、障害なく伝送が行われる少なくとも一つの通信パスが存在するように処理される。
【0017】
通信ネットワークにおいて仮想ネットワークを使用することによって、個々の制限ユニットの閾値、特に個々のネットワークセグメントの境界領域にある個々の制限ユニットの閾値を最小にすることも可能である。これによって、通信ネットワークのシステム全体が故障する確率は最小になる。
【0018】
特に、制限ユニットのコンセプトを実現するために標準スイッチングコンポーネントのハードウェアを変更する必要はない。高品質のスイッチングハードウェアのフィーチャを利用するか、又は、スイッチングハードウェアを比較的簡単な接続ユニットによって補完しても良い。実施の形態に応じて、利用可能な帯域幅が影響を受けることはないか、又は、影響を受けても僅かな程度でしかない。
【0019】
例えば、ネットワークセグメントの中央領域又は内部におけるデータ伝送速度に関する閾値よりも低い閾値によって、各ネットワークセグメントを外部から隔絶させることができる。つまり、境界領域の制限ユニットはデータ伝送速度に関して、ネットワークセグメントの中央領域における制限ユニットの閾値よりも低い閾値を有している。ネットワークセグメントの中央領域に制限ユニットを設けないことも可能である。
【0020】
総じて、複数のネットワークノードに障害が発生した場合であっても確実に機能する、非常に信頼性の高いネットワークシステムが得られる。少なくとも二つの仮想ネットワークを使用することによって冗長的に構成されている通信ネットワークは、制御装置間の一貫性のある通信、コスト的に有利なエラー分析及び修正、並びに、バブリング・イディオットによる障害のコスト的に有利な処理を実現する。
【0021】
特に、制限ユニットをスイッチ装置の一部として実施することができる。更に、複数のスイッチ装置のうちの一つを動作させるためのプログラム又はプログラムコードとして実施することも可能である。
【0022】
一つの実施の形態においては、複数のネットワーク装置のうちの一つのネットワーク装置におけるN個の制限ユニットのN個の閾値それぞれが、通信ネットワークの最大データ伝送速度よりも低い。これによって、通信ネットワークの最大データ伝送速度が超過されることはないことを保証することができる。
【0023】
一つの別の実施の形態においては、各ネットワーク装置が、制御装置と、この制御装置に接続されているスイッチ装置と、を有しており、このスイッチ装置は、最大でも一つの最大データ伝送速度で、通信ネットワークを介してデータを送信及び受信するための受信ポート及び送信ポートを有しており、N個の制限ユニットは受信ポートに対応付けられており、またそのために、各制限ユニットは、各仮想ネットワークに属するデータのデータ受信を、対応する各受信ポートにおいて、各仮想ネットワークに対して固有である、データ伝送速度に関する閾値に制限するように構成されている。
【0024】
送信ポートと受信ポートの組み合わせを、各装置の通信ポートと解することもできる。仮想ネットワークは特に仮想ローカルエリアネットワーク(VLAN)として構成される。
【0025】
一つの別の実施の形態においては、ネットワークセグメントの境界領域に配置されているネットワーク装置にのみ、N個の制限ユニットが設けられている。これによって、制限ユニットの所要個数が最小になる。従って、この実施の形態は非常に経済的である。
【0026】
一つの別の実施の形態においては、ネットワーク装置が、その機能に関して冗長的な少なくとも二つのネットワーク装置を含んでおり、その場合、サブセット又はネットワークセグメントは、各サブセットの各々に、冗長的なネットワーク装置のうちの最大一つが対応付けられているように形成されている。その機能に関して冗長的に構成されている各ネットワーク装置は、異なるネットワークセグメントに配置されているので、一方のネットワークセグメントが故障した場合でも、少なくとも、別のネットワークセグメントにはもう一方の冗長的なネットワーク装置が存在しているので、従ってシステム全体の全機能が危険に曝されることはない。
【0027】
一つの別の実施の形態においては、各サブセットが離隔されているサブセットとして構成されている。
【0028】
一つの別の実施の形態においては、ある一つのネットワークセグメントの一つの制限ユニットにおいて、データ伝送速度に関する閾値が、他のネットワークセグメントに由来するデータの受信に基づき超過されることを回避するために、複数の仮想ネットワークが通信ネットワーク内に形成されている。
【0029】
その場合、異なる仮想ネットワーク、例えば異なるVLANを考慮することによって、あるセグメントが、そのセグメント外から供給されたパケットに起因して切り離されることがないようにすることができる。このことは、パケットが所定のセグメントを介して、特に外部リングを介してルーティングされないようにVLANが所期のように構成されることによって達成される。
【0030】
VLAN以外にも、他の適切な仮想化技術を使用することができる。
【0031】
一つの別の実施の形態においては、複数のネットワーク装置の各ネットワーク装置が少なくとも二つの仮想ネットワークを介して通信ネットワークに接続されており、且つ、それらの仮想ネットワークのいずれもリングトポロジを有していないように、複数の仮想ネットワークが通信ネットワーク内に形成されている。リングトポロジを回避することによって、ネットワーク内に循環パケットが発生しないことが保証されている。
【0032】
一つの別の実施の形態においては、送信ポートと受信ポートとの間の各通信パスに関して最大リンク伝送速度が調整されているように、複数の仮想ネットワークが通信ネットワーク内に形成されており、その場合、N個の制限ユニットのN個の閾値の和は、対応する受信ポートの最大リンク伝送速度以下となっている。例えば、通信ネットワークを構想する際に、どの程度のリンク伝送速度が存在しうるかを見積もることができる。それによって、制限ユニットを、相応の感度を有するようにすることができるので、その結果、最大リンク伝送速度の超過時にはデータ受信が制限される。
【0033】
一つの別の実施の形態においては、データが少なくとも二つの優先順位クラスに対応付けられており、その場合、N個の制限ユニットは常に、より高い優先順位クラスのデータ受信を制限するように構成されている。例えば、第1の優先順位クラスを安全性が非常に重要なデータに関連付け、また第2の優先順位クラスを余りクリティカルではないデータに関連付けることができる。通信ネットワークを構想する際に、最大データ転送率が規定され、また制限ユニットが相応に調整される。制限ユニットにおいて種々の優先順位クラスが検出され、それに応じてデータがフィルタリング又は制限される。
【0034】
通信ネットワークはイーサネットインフラストラクチャを含むことができる。スイッチ装置をブリッジ装置又はルータ装置と称することもできる。ネットワーク装置は、ネットワークノード、ノード、ネットワークコンポーネント又はネットワークエレメントとも称される。
【0035】
ネットワーク装置に設けられている制御装置には、例えばCPU、マイクロプロセッサ又は他のプログラミング可能な回路が該当する。更に、制御装置とはセンサ装置又はアクチュエータ装置であると解することができる。
【0036】
通信ネットワーク又はネットワークプロトコルは有利には、一方のノード又はネットワーク装置から、他方のノード又はネットワーク装置へのポイント・ツー・ポイントコネクションを予定している。この場合、双方向通信又は二重通信を実現することができる。
【0037】
一つの別の実施の形態においては、各ネットワーク装置が個別のFPGA,ASIC,ICチップ又はハードワイヤード型のマイクロ回路として実現されている。
【0038】
一つの別の実施の形態においては、通信ネットワークが複数のネットワーク装置及び複数の接続スイッチ装置を有しており、各接続スイッチ装置は常に、仮想ネットワークの一つだけを介して通信ネットワークに接続されている。
【0039】
有利には、異なるネットワーク装置の少なくとも二つの制限ユニットには、データ伝送速度に関する種々の閾値又は異なる閾値が対応付けられる。それらの閾値の和は、通信ネットワークにおける、予め定められている最大データ伝送速度以下である。データ伝送速度に関する閾値を、帯域幅制限と称することもできる。
【0040】
特に、種々の閾値の使用によって、通信ネットワーク内に種々のセグメント又はネットワークセグメントを形成することができる。その場合、例えば共通の給電部を有している複数のネットワークセグメントのような全体のシステムが危険な状態に陥ることなく、セグメント全体がダウンしても良いようにネットワークセグメントは構成される。いずれにせよ、複数の給電部から給電が行われる全体のシステムは、一つの給電部の故障にも対処できるように構成されていなければならない。
【0041】
特に、あるネットワーク装置が帯域幅限界を僅かに下回って「おしゃべり(babble)」するときに起こり得る遮断の遅延が、比較的低い帯域幅限界値を有している制限ユニットでもって画定されているセグメントによって、所期のように一つのセグメントに限定される。
【0042】
各閾値を、例えば、ネットワークシステムの物理的な最大データ伝送速度に関するパーセンテージ表記によって表すことができる。つまり、例えば、種々の閾値を物理的な最大データ伝送速度の20%、15%、10%及び0%に調整することができる。0%の閾値は遮断に対応する。閾値を例えば、各リンクを介して設定された、予定されているデータ伝送速度に基づき、場合によっては付加的に安全性を補って決定することができる。
【0043】
通信ネットワークをネットワークシステムと称することができ、また特に通信ネットワークは車両の一部である。
【0044】
ネットワーク装置としてセンサ装置又はアクチュエータ装置が考えられる。センサ装置として回転数センサ、制動装置又は切換制御装置が考えられる。例えばドライブ・バイ・ワイヤを実現する制御装置も使用することができる。その場合、例えばハンドル又は加速のインパルスが電子的にネットワークを介して相応のアクチュエータに伝送され、それにより車両の所望の応答が開始される。
【0045】
更に、複数のネットワーク装置を備えている通信ネットワークを動作させるための方法が提案される:
第1のステップにおいては、各ネットワーク装置が少なくとも二つの仮想ネットワークを介して通信ネットワークに接続されるように、N個の複数の仮想ネットワークが通信ネットワーク内に形成される。
第2のステップにおいては、各ネットワーク装置が複数あるネットワークセグメント内に配置され、各ネットワークセグメントには、ネットワーク装置のサブセットが一つずつ対応付けられ、ネットワークセグメントの境界領域に配置されている各ネットワーク装置にはN個の制限ユニットが設けられ、それらのN個の制限ユニットはそれぞれ、N個の仮想ネットワークのうちの一つの仮想ネットワークに対応付けられ、且つ、各仮想ネットワークに属するデータのデータ受信を、各仮想ネットワークに対して予め定められている、データ伝送速度に関する閾値に制限するように構成される。
【0046】
更に、プログラム制御される一つ又は複数の装置において、上述したネットワークシステムを動作させるための方法を実行させるコンピュータプログラム製品が提案される。
【0047】
コンピュータプログラム媒体のようなコンピュータプログラム製品を、例えば、メモリカード、USBスティック、CD−ROM、DVDのような記憶媒体として提供又は供給することができるか、若しくはサーバからダウンロード可能なファイルの形態でネットワークに提供又は供給することができる。このことは、例えば無線通信ネットワークにおいて、コンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラム媒体を含む相応のファイルの伝送によって行なうことができる。プログラム制御される装置として、特に上記のようなネットワーク装置が該当する。
【0048】
更に、プログラム制御される装置において上述の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムが記憶されているデータ担体が提案される。
【0049】
本発明の考えられる別の実施の形態は、種々の実施例に関して上記において説明した、又は下記において説明する、複数の方法ステップ、特徴、若しくは、方法、ネットワークシステム、ネットワーク装置又はネットワークノードの種々の実施の形態の、明示的には挙げていない組み合わせも含む。その場合、当業者は個々の態様も、本発明の各基本形態についての改善形態又は補完形態として追加又は変更することができる。
【0050】
本発明の上述の特性、特徴及び利点、並びにどのようにしてそれらが達成されるかは、複数の図面と関連させて詳細に説明する複数の実施例についての下記の説明との関係においてより明瞭且つ明確に理解される。