(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045771
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】エッジシールを有する電気光学表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/167 20060101AFI20161212BHJP
G02F 1/153 20060101ALI20161212BHJP
G02F 1/19 20060101ALI20161212BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20161212BHJP
G09F 9/37 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
G02F1/167
G02F1/153
G02F1/19
G09F9/30 309
G09F9/30 380
G09F9/37
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2008-558535(P2008-558535)
(86)(22)【出願日】2007年3月8日
(65)【公表番号】特表2009-529711(P2009-529711A)
(43)【公表日】2009年8月20日
(86)【国際出願番号】US2007063591
(87)【国際公開番号】WO2007104020
(87)【国際公開日】20070913
【審査請求日】2010年2月16日
【審判番号】不服2014-10256(P2014-10256/J1)
【審判請求日】2014年6月3日
(31)【優先権主張番号】60/767,186
(32)【優先日】2006年3月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】503430658
【氏名又は名称】フレックスエネーブル リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ゼーナー, ロバート ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ, シェイマス エワン
【合議体】
【審判長】
藤原 敬士
【審判官】
西村 仁志
【審判官】
鉄 豊郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平4−20936(JP,A)
【文献】
特開2005−114820(JP,A)
【文献】
特開2005−309075(JP,A)
【文献】
特表2002−511606(JP,A)
【文献】
特開2003−172953(JP,A)
【文献】
特表2004−534284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/167
G02F1/153
G02F1/19
G09F9/30
G09F9/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックプレーン(102)と、
該バックプレーン(102)に隣接して配置された電気光学材料層(112)であって、該電気光学材料層(112)は、該電気光学材料層(112)の縁を越えて延在する該バックプレーン(102)の外周部が存在するように、幅および長さが該バックプレーン(102)よりも小さく、該電気光学材料層(112)は、液体内に配置され、電場の影響下、該液体中を移動可能な複数の帯電した粒子を含む電気泳動材料を備える、電気光学材料層(112)と、
該バックプレーン(102)からは該電気光学材料層(112)の反対側に配置された保護層(118)と
を備え、該保護層(118)の外周部は、該電気光学材料層(112)の該縁を越えて延在し、該バックプレーン(102)の該外周部に接着固定され、該バックプレーン(102)は、該電気光学材料層(112)に隣接する第1のバリアコーティング(108)と、該第1のバリアコーティング(108)からは該バックプレーン(102)の反対側にある第2のバリアコーティング(106)とを備え、該第1のバリアコーティング(108)は、40℃で0.05g/m2/日を超えない水蒸気透過率を有し、該第1のバリアコーティング(108)は、該バックプレーン(102)の該電気光学材料層(112)に隣接する側の表面を覆い、該表面は、該保護層(118)が該バックプレーン(102)に接着固定されている該バックプレーン(102)の該外周部と、該バックプレーン(102)の該外周部内の部分とを含むことを特徴とする、電気光学表示素子(100)。
【請求項2】
前記バックプレーン(102)と前記保護層(118)の両方は、可撓性高分子膜から形成される、請求項1に記載の電気光学表示素子。
【請求項3】
前記バックプレーン(102)は、高分子膜上に印刷された有機トランジスタを備える、請求項2に記載の電気光学表示素子。
【請求項4】
前記保護層(118)を前記バックプレーン(102)に固定するために使用される接着剤は、40℃で50g/m2/日を超えない水蒸気透過率を有する、請求項1に記載の電気光学表示素子。
【請求項5】
前記保護層(118)を前記バックプレーン(102)に固定するために使用される接着剤は、25μm以下の厚さと、前記バックプレーン(102)の平面と平行な、少なくとも1mmの幅を有する、請求項1に記載の電気光学表示素子。
【請求項6】
前記バックプレーン(102)からは前記電気光学材料層(112)の反対側に配置された光透過性前面電極(114)と、該電気光学材料層(112)からは該前面電極(114)の反対側に配置された前面基板(116)とをさらに備え、該前面基板(116)は、該前面電極(114)を物理的に支持し、前記保護層(118)は、該前面基板(116)に接着固定される、請求項1に記載の電気光学表示素子。
【請求項7】
前記帯電した粒子および前記液体は、複数のカプセルまたはマイクロセル内に閉じ込められる、請求項1に記載の電気光学表示素子。
【請求項8】
前記帯電した粒子および前記液体は、高分子材料を含む連続相によって取り囲まれる複数の離散液滴として存在する、請求項1に記載の電気光学表示素子。
【請求項9】
請求項1に記載の表示素子を備える、電子ブックリーダ、ポータブル・コンピュータ、タブレット・コンピュータ、携帯電話、スマートカード、標示、時計、棚ラベル、またはフラッシュドライブ。
【請求項10】
電気光学表示素子(100)を封止するための方法であって、
電気光学材料層(112)を提供するステップと、
該電気光学材料層(112)に隣接するバックプレーン(102)を配置するステップであって、該バックプレーン(102)は、該電気光学材料層(112)の縁を越えて延在する該バックプレーン(102)の外周部が存在するように、該電気光学材料層(112)よりも大きく、該電気光学材料層(112)は、液体内に配置され、電場の影響下、該液体中を移動可能な複数の帯電した粒子を含む電気泳動材料を備える、ステップと、
該バックプレーン(102)からは該電気光学材料層(112)の反対側に、該電気光学材料層(112)に隣接する保護層(118)を配置するステップと
を包含し、該電気光学材料層(112)の該縁を越えて延在する該保護層(118)の外周部が存在するように、該保護層(118)は、該電気光学材料層(112)よりも大きく、該保護層(118)の該外周部は、該バックプレーン(102)の該外周部に接着固定され、それによって、該表示素子(100)を封止し、該バックプレーン(102)は、該電気光学材料層(112)に隣接する第1のバリアコーティング(108)と、該第1のバリアコーティング(108)からは該バックプレーン(102)の反対側にある第2のバリアコーティング(106)とを備え、該第1のバリアコーティング(108)は、40℃で0.05g/m2/日を超えない水蒸気透過率を有し、該第1のバリアコーティング(108)は、該バックプレーン(102)の該電気光学材料層(112)に隣接する側の表面を覆い、該表面は、該保護層(118)が該バックプレーン(102)に接着固定されている該バックプレーン(102)の該外周部と、該バックプレーン(102)の該外周部内の部分とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項11】
前記バックプレーン(102)と前記保護層(118)の両方は、可撓性高分子膜から形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記保護層(118)を前記バックプレーン(102)に固定するために使用される接着剤は、40℃で50g/m2/日を超えない水蒸気透過率を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記バックプレーン(102)からは前記電気光学材料層(112)の反対側に配置された光透過性前面電極(114)、および該電気光学材料層(112)からは該前面電極(114)の反対側に配置された前面基板(116)であって、該前面電極(114)を物理的に支持する前面基板(116)を提供するステップと、
前記保護層(118)を該前面基板(116)に接着固定させるステップと
をさらに備える、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジシールを有する電気光学表示素子に関する。本発明は、特に、カプセル型電気泳動媒体を備える表示素子との使用を対象とするが、排他的に対象とするものではない。しかしながら、本発明は、種々の他の種類の電気光学媒体も利用可能であり、媒体は、多くの場合、流体(液体または気体)を含有する内部空洞を有し得るが、固体外部表面を有するという点において、固体である。したがって、用語「固体電気光学表示素子」は、カプセル型電気泳動表示素子、カプセル型液晶表示素子、および後述される他の種類の表示素子を含む。
【背景技術】
【0002】
電気光学表示素子は、電気光学材料層を備え、少なくとも1つの光学特性において異なる第1および第2の表示状態を有し、材料に電場を印加することによって、第1から第2の表示状態に変化する材料を示す、画像化技術における従来の意味において本明細書で使用される用語である。光学特性は、典型的には、人間の目によって知覚可能な色であるが、光の透過率、反射率、ルミネセンス、または機械読取を対象とした表示素子の場合は、可視領域外の電磁波の反射率変化という意味における疑似色等の別の光学特性であってもよい。
【0003】
用語「双安定」および「双安定性」は、少なくとも1つの光学特性において異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備え、任意の所与の要素が駆動され、有限持続時間のアドレスパルスによって、第1または第2の表示状態のうちのいずれかを呈してから、アドレスパルスが終了後、少なくとも数倍、例えば、表示要素の状態を変更するのに必要とされるアドレスパルスの最小持続時間である少なくとも4倍、その状態が続くような表示素子を示す、当技術分野における従来の意味において、本明細書では使用される。グレースケールが可能ないくつかの粒子ベースの電気泳動表示素子は、極限のブラックおよびホワイト状態だけではなく、その中間のグレー状態においても安定し、同じことは、いくつかの他の種類の電気光学表示素子についても当てはまることが特許文献1に示されている。この種の表示素子は、厳密には、双安定よりも「多重安定」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定」は、双安定と多重安定表示素子の両方を網羅するために本明細書では使用され得る。
【0004】
数種類の電気光学表示素子は、周知である。ある種類の電気光学表示素子は、例えば、特許文献2〜特許文献10に記載のように、回転2色部材である(この種の表示素子は、多くの場合、「回転2色ボール」表示素子と称されるが、前述のいくつかの特許では、回転部材は球形ではないため、「回転2色部材」の方がより正確であり望ましい)。そのような表示素子は、異なる光学特性を備える2つ以上の断面と、内部双極子とを有する、多数の小型の物体(典型的には、球形または円筒形)を使用する。これらの物体は、マトリクス内の液体充填液胞内に懸濁し、液胞は、物体が自由に回転するように、液体で充填される。表示素子の外観は、そこに電場を印加することによって変化し、それによって、物体を種々の位置に回転させ、表示面を通して見える物体の断面を変化させる。この種の電気光学媒体は、典型的には、双安定である。
【0005】
他の種類の電気光学表示素子は、エレクトロクロミック媒体、例えば、少なくとも部分的に半導体金属酸化物から形成された電極と、電極に付着された可逆的な色の変化が可能な複数の染料分子とを備える、ナノクロミック膜の形態のエレクトロクロミック媒体を使用する。例えば、非特許文献1および非特許文献2を参照されたい。また、非特許文献3も参照されたい。また、この種のナノクロミック膜は、例えば、特許文献11〜特許文献13に記載されている。この種の媒体も、典型的には、双安定である。
【0006】
他の種類の電気光学表示素子は、Philipsによって開発されたエレクトロウエッティング表示素子であり、非特許文献4に記載されている。そのようなエレクトロウエッティング表示素子を双安定にすることが可能であることが、2004年10月6日に出願された同時係属出願第10/711,802号(公開第2005/0151709号)に示されている。
【0007】
長年にわたり、熱心な研究および開発の課題となっている他の種類の電気光学表示素子は、電場の影響下で複数の帯電粒子が流体中を移動する、粒子ベースの電気泳動表示素子である。電気泳動表示素子は、液晶表示素子と比較して、良好な明るさおよびコントラスト、広い視野角、状態双安定性、ならびに低電力消費を特徴とすることがある。それにもかかわらず、これらの表示素子の長期画質に関わる問題によって、その公汎な使用は妨げられてきた。例えば、電気泳動表示素子を構成する粒子は、沈降する傾向があり、これらの表示素子にとって不適切な有効寿命がもたらされる。
【特許文献1】米国特許第7,170,670号明細書
【特許文献2】米国特許第5,808,783号明細書
【特許文献3】米国特許第5,777,782号明細書
【特許文献4】米国特許第5,760,761号明細書
【特許文献5】米国特許第6,054,071号明細書
【特許文献6】米国特許第6,055,091号明細書
【特許文献7】米国特許第6,097,531号明細書
【特許文献8】米国特許第6,128,124号明細書
【特許文献9】米国特許第6,137,467号明細書
【特許文献10】米国特許第6,147,791号明細書
【特許文献11】米国特許第6,301,038号明細書
【特許文献12】米国特許第6,870,657号明細書
【特許文献13】米国特許第6,950,220号明細書
【非特許文献1】O’Regan,B.,et al,Nature 1991,353,737
【非特許文献2】Wood,D.,Information Display,18(3),24(March 2002)
【非特許文献3】Bach,U.,et al.,Adv.Mater.,2002,14(11),845
【非特許文献4】Hayes,R.A.,et al.,「Video−Speed Electronic Paper Based on Electrowetting」,Nature,425,383−385(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、電気泳動媒体は、流体の存在を必要とする。従来技術によるほとんどの電気泳動媒体では、この流体は液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生成可能である。例えば、Kitamura,T.,et al,「Electrical toner movement for electronic paper−like display」,IDW Japan,2001,Paper HCSl−I、およびYamaguchi,Y.,et al.,「Toner display using insulative particles charged triboelectrically」,IDW Japan,2001,Paper AMD4−4を参照されたい。また、米国特許公開第2005/0001810号、欧州特許出願第1,462,847号、第1,482,354号、第1,484,635号、第1,500,971号、第1,501,194号、第1,536,271号、第1,542,067号、第1,577,702号、第1,577,703号、および第1,598,694号、ならびに国際出願WO2004/090626号、WO2004/079442号、およびWO2004/001498も参照されたい。そのような沈降を可能にするような配向、例えば、媒体が垂直面に配置される標示において媒体が使用される場合、そのような気体ベースの電気泳動媒体は、液体ベースの電気泳動媒体と同様の粒子沈降による問題を受けやすい可能性がある。実際、液体状のものと比較して粘度が低いガス状の懸濁流体は、電気泳動粒子のより高速な沈降を可能にするため、粒子沈降は、液体ベースよりも気体ベースの電気泳動媒体においてより深刻な問題である可能性がある。
【0009】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡された、またはその名義による、カプセル型電気泳動媒体について記載された数多くの特許および出願が最近公開されている。そのようなカプセル型媒体は、数多くの小型カプセルを備え、各カプセル自体は、液体懸濁媒体中に懸濁された電気泳動的に移動可能な粒子を含有する分散相と、分散相を取り囲むカプセル壁とを備える。典型的には、カプセルは、高分子バインダ内に保持され、2つの電極間に位置付けられた封止層を形成する。この種のカプセル型媒体は、例えば、以下に記載されている。
【0010】
【表1】
前述の特許および出願の多くは、カプセル型電気泳動媒体内の離散マイクロカプセルを取り囲む壁が、連続相によって置換され得、それによって、電気泳動媒体が電気泳動流体の複数の離散液滴と高分子材料の連続相とを備える、いわゆる高分子分散電気泳動表示素子を生成すること、さらに、離散カプセル薄膜が個々の液滴と結びついていなくても、そのような高分子分散電気泳動表示素子内の電気泳動流体の離散液滴は、カプセルまたはマイクロカプセルとしてみなされ得ることを認めている。例えば、前述の米国特許第6,866,760号を参照されたい。したがって、本出願の目的のため、そのような高分子分散電気泳動媒体は、カプセル型電気泳動媒体の亜種とみなされる。
【0011】
関連種の電気泳動表示素子は、いわゆる「マイクロセル電気泳動表示素子」である。マイクロセル電気泳動表示素子では、帯電粒子および流体は、マイクロカプセル内に封入されず、代わりに、担体媒体、典型的には、高分子膜内に形成された複数の空洞内に保持される。例えば、米国特許第6,672,921号および第6,788,449号を参照されたい(両方とも、Sipix Imaging, Inc.に譲渡)。
【0012】
また、他の種類の電気光学材料も、本発明では使用されてもよい。特に関心があるものとして、双安定強誘電性液晶表示素子(Ferroelectric Liquid Crystal;FLC)は、当技術分野において周知である。
【0013】
電気泳動媒体は、多くの場合、不透明(例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子は、表示素子を通過する可視光の透過を実質的に阻止するため)であり、反射モードで動作するが、多くの電気泳動表示素子は、1つの表示状態が実質的に不透明であり、1つの表示状態が光透過性である、いわゆる「シャッターモード」で動作するようになされることが可能である。例えば、前述の米国特許第6,130,774号および第6,172,798号、ならびに米国特許第5,872,552号、第6,144,361号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。電気泳動表示素子と類似するが、電場強度の変動に依存する誘電泳動表示素子も、類似モードで動作可能である。米国特許第4,418,346号を参照されたい。また、他の種類の電気光学表示素子も、シャッターモードで動作可能であってもよい。
【0014】
カプセル型電気泳動表示素子は、典型的には、従来の電気泳動装置の集塊化および沈降による故障モードを被らず、さらに、様々な可撓性および剛性の基板上に表示素子を印刷またはコーティングする能力等の利点を提供する。(「印刷」という用語の使用は、あらゆる形態の印刷およびコーティングを含むことが意図され、プレメーターコーティング、例えばパッチダイコーティング、スロットまたは押し出しコーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティング等;ロールコーティング、例えばナイフオーバーロールコーティング、フォワード・リバースロールコーティング等;グラビアコーティング;浸漬コーティング;スプレーコーティング;メニスカスコーティング;スピンコーティング;ブラシコーティング;エアーナイフコーティング;シルクスクリーン印刷プロセス;静電印刷プロセス;感熱印刷プロセス;インクジェット印刷プロセス;電気泳動蒸着(米国特許公報第2004/0226820号参照);および他の同様な技術を含むが、これらに限定されない。)したがって、結果として得られる表示素子は、可撓性であり得る。さらに、表示素子媒体は、(種々の方法を使用して)印刷可能であるため、表示素子自体を安価に作製可能である。
【0015】
電気光学表示素子は、通常、電気光学材料層と、電気光学材料の両側に配置された少なくとも2つの他の層とを備え、これらの2つの層のうちの1つは、電極層である。そのような表示素子のほとんどにおいて、両層は、電極層であり、電極層の一方または両方は、表示素子の画素を画定するようにパターン化される。例えば、一方の電極層は、細長い行電極に、他方は、行電極に対して直交する細長い列電極にパターン化されてもよく、画素は、行および列電極の交差点によって画定される。代替として、かつより一般的として、一方の電極層は、単一連続式電極の形態を有し、他方の電極層は、画素電極のマトリクスにパターン化され、それぞれ、表示素子の1画素を画定する。表示素子から離間するスタイラス、印字ヘッド、または類似可動電極との使用を意図した別の種類の電気光学表示素子では、電気光学層に隣接する層のうちの1つのみ電極を備え、電気光学層の反対側の層は、典型的には、可動電極が電気光学層に損傷を及ぼすことを防止することを意図した保護層である。
【0016】
3層の電気光学表示素子の製造は、通常、少なくとも1つの積層操作を伴う。例えば、前述のMITおよびE Inkの特許および出願のいくつかでは、バインダ内にカプセルを含むカプセル型電気泳動媒体が、プラスチックフィルム上にインジウムスズ酸化物(ITO)または類似の導電性コーティング(最終の表示素子の一方の電極として作用)を含有する可撓性基板上にコーティングされ、カプセル/バインダコーティングは乾燥され、基板に固着された電気泳動媒体の固結した層を形成する、カプセル型電気泳動表示素子を製造するためのプロセスが記載されている。別個に、画素電極のアレイと、画素電極を駆動回路に接続するための伝導体の適切な配列と、を含むバックプレーンが調製される。最終の表示素子を形成するため、その上にカプセル/バインダ層を有する基板は、積層接着剤を使用して、バックプレーンに積層される。(酷似したプロセスを使用して、その上をスタイラスまたは他の可動電極が摺動可能なプラスチックフィルム等の簡易保護層とバックプレーンとを交換することによって、スタイラスまたは類似可動電極と使用可能な電気泳動表示素子を調製することが可能である。)そのようなプロセスの好適な形態の1つでは、バックプレーン自体が可撓性であり、プラスチックフィルムまたは他の可撓性基板上に画素電極および伝導体を印刷することによって調製される。このプロセスによる表示素子の大量生産のための明らかな積層技術は、積層接着剤を使用するロール積層である。類似の製造技術も、他の種類の電気光学表示素子と使用可能である。例えば、マイクロセル電気泳動媒体または回転2色部材媒体は、カプセル型電気泳動媒体と実質的に同一の方法でバックプレーンに積層されてもよい。
【0017】
前述の米国特許第6,982,178号で論じられたように(第3段落63行目から第5段落46行目参照)、電気泳動表示素子内で使用される構成要素、およびそのような表示素子を製造するために使用される方法の多くは、液晶表示素子(Liquid Crystal Display;LCD)内で使用される技術から派生する。例えば、電気泳動表示素子は、トランジスタまたはダイオードのアレイと、画素電極の対応するアレイとを備える能動マトリクスバックプレーン、および透過性基板上の「連続式」前面電極(複数の画素上、典型的には、表示素子全体に延在する電極という意味において)を利用してもよく、これらの構成要素は、本質的には、LCD内のものと同一である。しかしながら、LCDを組み立てるために使用される方法は、カプセル型電気泳動表示素子に使用することは不可能である。LCDは、通常、別個のガラス基板上でバックプレーンおよび前面電極を形成し、次いで、それらの間に小さな間隙を残して、これらの構成要素を共に接着固定し、結果として生じたアセンブリを減圧下に載置し、液晶がバックプレーンと前面電極との間の間隙を貫流するように、アセンブリを液晶浴中に浸漬することによって、組み立てられる。最後に、定位置の液晶と共に、間隙を密封して、最終の表示素子が提供される。
【0018】
このLCD組立プロセスは、固体電気光学表示素子に容易に移行することはできない。電気光学材料は固体であるため、これらの2つの完全体が互いに固定される前に、バックプレーンと前面電極との間に存在しなければならない。さらに、いずれかに付着させずに、前面電極とバックプレーンとの間に単純に載置される液晶材料とは対照的に、固体電気光学媒体は、通常、両方に固定される必要がある。ほとんどの場合、固体電気光学媒体は、回路を含むバックプレーン上に媒体を形成するよりも概して容易であるため、前面電極上に形成され、次いで、前面電極/電気光学媒体の組み合わせが、典型的には、電気光学媒体の表面全体を接着剤で覆い、熱、圧力、および恐らくは減圧下で積層することによって、バックプレーンに積層される。したがって、固体電気泳動表示素子の最終積層のためのほとんどの従来技術による方法は、本質的には、(典型的には)電気光学媒体、積層接着剤、およびバックプレーンが、最終組立直前に共に接合されるバッチ方式であり、大量生産により適した方法を提供することが望ましい。
【0019】
前述の米国特許第6,982,178号は、大量生産により適した固体電気光学表示素子(カプセル型電気泳動表示素子を含む)を組み立てる方法を記載している。本質的には、本特許は、順番に、光透過性導電層、導電層と電気接触する固体電気光学媒体の層、接着層、および離型シートを備える、いわゆる「フロントプレーンラミネート」(Front Plane Laminate;「FPL」)を記載している。典型的には、光透過性導電層は、基板が、恒久的な変形なく、ドラム(例えば、直径10インチ(254mm))周囲に手動で巻着可能であるという意味において、好ましくは可撓性である光透過性基板上に担持されるであろう。用語「光透過性」は、そのように指定された層が十分な光を透過し、該層を通して見ることによって、電気光学媒体(通常、導電層および隣接基板(存在する場合)を通して見える)の表示状態の変化を観察者に観察させることが可能であることを意味するために本特許および本明細書では使用される。電気光学媒体が、非可視波長における反射率の変化を表示する場合、用語「光透過性」は、当然ながら、関連非可視波長の透過率を示すと解釈されたい。基板は、典型的には、高分子膜であり、通常、約1乃至約25mil(25乃至634μm)、好ましくは約2乃至約10mil(51乃至254μm)の範囲の厚さを有するであろう。導電層は、都合上、例えば、アルミニウムまたはITOの薄い金属または金属酸化物層であり、あるいは導電性高分子であってもよい。アルミニウムまたはITOでコーティングされたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)フィルムは、例えば、「アルミ蒸着Mylar」(「Mylar」は、登録商標である)として、E.I.du Pont de Nemours&Company,Wilmington DEから市販されており、そのような市販材料は、フロントプレーンラミネートにおける良好な結果を伴って使用され得る。
【0020】
また、前述の米国特許第6,982,178号は、フロントプレーンラミネートを表示素子に組み込む前に、フロントプレーンラミネートにおける電気光学媒体を試験するための方法を記載している。この試験方法では、離型シートは、導電層を備え、電気光学媒体の光学的状態を変化させるために十分な電圧が、この導電層と電気光学媒体の反対側の導電層との間に印加される。次いで、電気光学媒体の観察によって、媒体内のいかなる欠陥も明らかにし、それによって、単に欠陥のあるフロントプレーンラミネートだけではなく、表示素子全体を廃棄することで結果として生じる費用を伴う、表示素子への欠陥のある電気光学媒体の積層を回避する。
【0021】
また、前述の米国特許第6,982,178号は、離型シートを帯電させ、それによって、電気光学媒体上に画像を形成することによって、フロントプレーンラミネート内の電気光学媒体を試験するための第2の方法を記載している。次いで、この画像は、前述の同じ方法で観察され、電気光学媒体内の欠陥を検出する。
【0022】
そのようなフロントプレーンラミネートを使用した電気光学表示素子の組立は、フロントプレーンラミネートから離型シートを除去し、接着層をバックプレーンに接着させるのに有効な条件下で、接着層をバックプレーンと接触させ、それによって、接着層、電気光学媒体の層、および導電層をバックプレーンに固定することによって達成されてもよい。フロントプレーンラミネートは、典型的には、ロールコーティング技術を使用して、大量生産され、特定のバックプレーンと使用するために必要な任意のサイズの断片に切断され得るため、このプロセスは、大量生産に非常に適している。
【0023】
前述の第2004/0155857号は、本質的には、前述の米国特許第6,982,178号におけるフロントプレーンラミネートの簡略版である、いわゆる「二重離型シート」を記載している。二重離型シートの一形態は、2つの接着層の間に挟着される固体電気光学媒体の層を備え、接着層の一方または両方は、離型シートによって覆われる。二重離型シートの別の形態は、2つの離型シートの間に挟着される固体電気光学媒体の層を備える。二重離型フィルムの両形態は、前述のフロントプレーンラミネートから電気光学表示素子を組み立てるためのプロセスに概して類似するプロセスにおける使用を意図するが、2つの別個の積層を伴う。典型的には、第1の積層では、二重離型シートが前面電極に積層され、前面サブアセンブリを形成し、次いで、第2の積層では、前面サブアセンブリがバックプレーンに積層され、最終の表示素子を形成するが、これらの2つの積層の順番は、所望に応じて、逆にすることが可能である。
【0024】
前述の同時係属出願第11/550,114号は、前述の米国特許第6,982,178号に記載のフロントプレーンラミネートの変形例である、いわゆる「反転フロントプレーンラミネート」を記載している。この反転フロントプレーンラミネートは、順番に、光透過性保護層および光透過性導電層のうちの少なくとも1つ、接着層、固体電気光学媒体の層、および離型シートを備える。この反転フロントプレーンラミネートを使用して、電気光学層と前面電極または前面基板との間の積層接着剤の層を有する電気光学表示素子を形成する。第2の、典型的には、接着剤の薄層は、電気光学層とバックプレーンとの間に存在しても、または存在しなくてもよい。そのような電気光学表示素子は、良好な分解能と良好な低温性能を組み合わせることが可能である。
【0025】
また、前述の米国特許第6,982,178号は、いくつかの電気光学媒体は、湿度および紫外線放射に対し敏感であり、ほとんどのそのような媒体は、物理的損傷を被りやすいため、環境汚染物から電気光学媒体を保護することの重要性を記載している。この特許は、
図10において、フロントプレーンラミネートがバックプレーンに付着される同一積層操作において、保護膜がフロントプレーンラミネート上に積層されるプロセスを記載する。そのような保護膜は、湿気、他の液体、およびいくつかの気体の侵入から電気光学媒体を保護することが可能である。しかしながら、そのような保護膜を備えていても、電気光学媒体の縁は、依然として環境に曝されており、本特許は、表示素子の外縁周囲の湿気および他の汚染物の侵入を防ぐ役割を果たす、表示素子にエッジシールを含めることが望ましいことを教示する。種々の種類のエッジシールは、この特許の
図11〜17に示される。このエッジシールは、FPLの縁上に付着された金属化薄片または他のバリア薄片、施された封止材(熱、化学、および/または放射硬化)、ポリイソブチレンまたはアクリレートベースの封止材等から成ることが可能である。ハイブリッド放射および熱硬化封止材(すなわち、UV硬化型熱ポストベーク)は、表示素子システム性能に対し特定の利点を提供することが見いだされている。Threebond30Y−491材料(Threebond Corporation,Cincinnati,OH)は、その好ましい水蒸気バリア性、高温時の低粘性、エッジシール材料の容易な分注、良好な湿潤特性、および管理可能な硬化特性のため、特に好適である。当業者および改良型封止材に精通した者であれば、匹敵する性能を提供する他の封止材を識別可能であるだろう。
【0026】
前述の米国特許第6,982,178号の
図20は、前面保護層とエッジシールとを有する電気光学表示素子の好適な形態を示す。この好適な表示素子は、液晶表示素子と使用されるバックプレーンに概して類似し、画素電極のマトリクスと画素電極に印加される電圧を個々に制御するための付随する薄膜トランジスタおよび伝導体とを有する、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)バックプレーンを備える。テープ接続パッケージが、バックプレーンの外周部に接続され、駆動集積回路(表示素子の動作を制御する)を備える。また、テープ接続パッケージは、表示素子の動作を制御するためのさらなる回路を含むプリント基板にも接続される。
【0027】
バックプレーンの上表面(前述の
図20に示されるように)上には、積層接着剤の層、電気光学媒体の層、前面電極、および前面基板が配置される。前面電極および前面基板は、両方とも、都合上、インジウムスズ酸化物コーティング高分子膜から形成され、そのようなコーティング膜は、市販のものから容易に利用可能である。積層接着層、電気光学層、前面電極、および前面基板は、バックプレーンに積層された前面積層からすべて派生する。前面電極および前面基板の一部は、電気光学層を越えて延在し、前面電極および前面基板の拡張部分において、銀インクから形成された導電性ビアが、前面電極をバックプレーン上に提供された回路に電気的に接続する一方、接着層が、前面電極の拡張部分をバックプレーンに固定する。
【0028】
前面基板上には、光学的に透明な接着剤の第1の層、バリア膜、光学的に透明な接着剤の第2の層、さらに、防幻コーティングを備えたその露出表面上に提供される比較的厚い保護膜が、連続して配置される。保護膜は、紫外線放射が電気光学層に達するのを阻止し、また、この層に達する大気中の湿気または他の汚染物も防ぐ作用をする。
【0029】
電気光学層の周囲の完全な封止を形成するために、バリア膜、光学的に透明な接着剤の第2の層、および保護膜はすべて、これらの層が、前面基板の外縁に延在または「張り出す」外周部を有するように、両寸法において前面基板よりも大きく作製される。電気光学層の封止を完成するために、硬化可能エッジシール材料が、典型的には、針型のディスペンサを介して、張り出し領域に注入され、硬化し、電気光学層を完全に取り囲むエッジシールを形成する。
【0030】
この種のエッジシールは、電気光学媒体への湿気および他の環境汚染物の侵入の防止に効果的である。しかしながら、カプセル型電気泳動および他の電気光学媒体、例えば、回転2色部材およびマイクロセル媒体の利点の1つは、可撓性表示素子内で使用されるために十分に可撓性があることである。前述の種類のエッジシールおよび類似エッジシールは、エッジシール自体が表示素子に硬さを付与するため、可撓性表示素子における使用に好適ではない。
【課題を解決するための手段】
【0031】
したがって、可撓性電気光学表示素子内で使用可能なエッジシールの必要性があり、本発明は、そのようなエッジシールを提供することを企図する。
【0032】
本発明は、
バックプレーンと、
バックプレーンに隣接して配置された電気光学材料層であって、電気光学材料層の縁を越えて延在するバックプレーンの外周部を残すように、両寸法においてバックプレーンよりも小さい、電気光学材料層と、
バックプレーンからは電気光学材料層の反対側に配列された保護層と
を備え、保護層の外周部は、電気光学材料層の縁を越えて延在し、バックプレーンの外周部に接着固定される、電気光学表示素子を提供する。
【0033】
本発明のこの表示素子では、バックプレーンおよび保護層の一方または両方は、可撓性高分子膜から形成されてもよい。バックプレーンは、例えば、高分子膜上に印刷される有機トランジスタを備えてもよい。バックプレーンは、電気光学材料層に隣接するバリアコーティングを備えてもよく、バリアコーティングは、40℃で約0.05g/m
2/日を超えない水蒸気透過率を有する。保護層をバックプレーンに固定するために使用される接着剤は、40℃で約50g/m
2/日を超えない水蒸気透過率を有してもよい。保護層をバックプレーンに固定するために使用される接着剤は、約25μm以下の厚さ、およびバックプレーンの平面と平行な、少なくとも約1mmの幅を有してもよい。
【0034】
本発明の電気光学表示素子は、バックプレーンから電気光学材料層の反対側に配置された光透過性前面電極と、電気光学材料層からは前面電極の反対側に配置された前面基板とをさらに備えてもよく、前面基板は、前面電極を物理的に支持し、保護層は、前面基板に接着固定される。
【0035】
本発明の電気光学表示素子は、前述の任意の種類の電気光学材料を利用してもよい。したがって、例えば、電気光学材料は、回転2色部材またはエレクトロクロミック材料を備えてもよい。代替として、電気光学材料は、流体内に配置され、電場の影響下、流体中を移動可能な複数の帯電した粒子を含む、電気泳動材料を備えてもよい。帯電した粒子および流体は、複数のカプセルまたはマイクロセル内に閉じ込められてもよい。代替として、電気泳動材料は、高分子材料を含む連続相によって取り囲まれる複数の離散液滴として存在する帯電した粒子と流体とを備える、高分子分散型であってもよい。電気泳動材料内で使用される流体は、液体またはガス状であってもよい。
【0036】
本発明の表示素子は、従来技術による電気光学表示素子が使用されている任意の用途において使用されてもよい。したがって、例えば、本表示素子は、電子ブックリーダ、ポータブル・コンピュータ、タブレット・コンピュータ、携帯電話、スマートカード、標示、時計、棚ラベル、およびフラッシュドライブ内で使用してもよい。
【0037】
また、本発明は、
電気光学材料層を提供するステップと、
電気光学材料層に隣接するバックプレーンを配置するステップであって、バックプレーンは、電気光学材料層の縁を越えて延在するバックプレーンの外周部を残すように、電気光学材料層よりも大きい、ステップと、
バックプレーンからは電気光学媒体材料の層の反対側に、電気光学媒体材料の層に隣接する保護層を配置するステップであって、保護層は、電気光学材料層の縁を越えて延在する保護層の外周部を残すように、電気光学材料層よりも大きい、ステップと、
保護層の外周部をバックプレーンの外周部に接着固定し、それによって、表示素子を封止するステップとを備える、電気光学表示素子を封止するための方法を提供する。
【0038】
添付の図面の唯一の図は、本発明の封止された電気光学表示素子の概略断面である。本図は、概略であって、正確な縮尺ではない。特に、図示の便宜上、図面内の種々の層の厚さは、その実際の厚さに対応していない。また、種々の層の厚さは、その幅寸法に対し大幅に誇張されている。
【0039】
前述のように、本発明は、封止された電気光学表示素子を提供する。表示素子は、バックプレーンと保護層との間に挟着された電気光学材料層を備える。バックプレーンと保護層の両方が、電気光学材料の縁(外周)を越えて延在する外周部を有するように、バックプレーンと保護層の両方とも、電気光学材料層よりも大きく作製される。バックプレーンおよび保護層の外周部は、互いに接着固定され、それによって、外環境から電気光学材料層を封止する。
【0040】
当然ながら、望ましくない汚染物を電気光学材料内に拡散させないように、バックプレーンを保護層に固定するために使用される接着材料を選択することが必要である。特に、いくつかの種類の電気光学材料は、水の存在に対し敏感であるため、使用される接着材料(およびバックプレーンおよび保護層を形成するために使用される材料)は、低水蒸気透過率を有するべきである。しかしながら、添付の図面に図示され、後述されるように、本発明は、本発明の表示素子における接着材料に対する要求が、他の表示素子構成において使用される封止材料に対する要求(封止材料は、かなり厚くおよび/または幅がかなり小さい必要があり得る)よりも厳密ではなくなるように、使用される接着材料を、厚さが薄く(電気光学材料層の平面に対し直角に測定)、かなりの幅(この平面で測定)を有する層の形態で使用されることを可能とする。
【0041】
図面を参照して以下に詳述されるように、本発明は、可撓性表示素子との使用に特に適しており、バックプレーンと保護層の両方は、例えば、高分子膜等の可撓性材料から形成される。そのような表示素子では、バックプレーンは、例えば、高分子膜上に形成される有機トランジスタを備え得る。本表示素子は、いくつかの従来技術による表示素子において見られる厚く、硬質の封止部材の種類を必要とせず、バックプレーンおよび保護層が十分な可撓性を有するならば、互いに接着されるバックプレーンおよび保護層の外周部は、可撓性を有したままであることが可能である。しかしながら、我々は、本発明が、硬質または半硬質の表示素子においても使用可能であるという可能性を排除しない。
【0042】
本発明の表示素子における電極配列は、前述のE InkおよびMITの特許および出願に記載されている任意の種類であることが可能である。したがって、例えば、表示素子は、直接駆動型であってもよく、バックプレーンは、複数の電極を備え、それぞれ、制御装置によって特定の電極に印加される電圧を制御可能な別個のコネクタを備える。そのような直接駆動表示素子では、単一連続式前面電極は、通常、表示素子全体を覆うように提供されるが、他の前面電極配列も可能である。使用される種類の電気光学材料の種類に応じて、(典型的には)バックプレーンには、複数の細長い並列電極(「列電極」)を担持し、電気光学材料の反対側には、列電極と直交する複数の細長い並列電極(「行電極」)が提供され、1つの特定の列電極と1つの特定の行電極との間の重複によって表示素子の1画素を画定する、受動マトリクス駆動配列を使用することが可能であってもよい。また、本表示素子は、能動マトリクス型であってもよく、典型的には、表示素子の全体を覆う単一連続式前面電極と、バックプレーン上の画素電極のマトリクスとを備え、各画素電極は、表示素子の1画素を画定し、付随するトランジスタまたは他の非線形要素を有し、能動マトリクス表示素子は、従来の方法で走査され、表示素子を行単位で書き込む。最後に、本表示素子は、(典型的には)バックプレーン上に単一電極を備え、恒久的前面電極はなく、表示素子の書き込みは、表示素子の前面表面上でスタイラスを移動させることによって達成される、スタイラス駆動型であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
次に、表示素子(概して、100として示される)の概略切断面を示す添付の図面の唯一の図を参照して、本発明の表示素子の好適な実施形態が説明されるが、単に例示を目的とするものである。
【0044】
表示素子100は、それ自体が、前面および背面のバリアコーティング、106および108のそれぞれを保持する高分子基板104を含む、バックプレーン(概して、102として示される)を備える。バリアコーティング106および108は、望ましくは、40℃で約0.05g/m
2/日を超えない水蒸気透過率をバックプレーンに提供する、有機または無機のバリア材料から形成されてもよい。使用される特定のバリア材料および電気光学材料に応じて、バリアコーティング106および108のうちの1つを排除することが可能であり得る。バリアコーティング106と108の両方が存在する場合、望ましくは、2つのバリア層の間の熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion;CTE)の不整合によるバックプレーン上の応力を最小限にするために、同一材料および同一厚から形成される。そのようなCTEの不整合は、可撓性バックプレーンの湾曲または他の歪曲を生じさせ得る。
【0045】
バックプレーン102は、概略的に110において示される電極層を担持し、この電極層は、1つ以上の電極を備える。前述のように、電極層110は、任意の公知の種類であってもよく、例えば、付随する伝導体をそれぞれ備える複数の離散電極を含む直接駆動電極層、複数の細長い並列電極を含む受動マトリクス電極層、あるいはそれぞれが付随する薄膜トランジスタまたは他の非線形素子を有する二次元マトリクスの画素電極を含む能動マトリクス電極層を備えてもよい。バックプレーン102は、バックプレーンの外周部が、電極層の外周全体において、電極層110の縁を越えて外側に延在するように、両寸法において電極層110よりも大きい。
【0046】
表示素子100は、バックプレーン102からは電極層110の反対側に配置される電気光学材料層112(カプセル型電気泳動材料として示されるが、当然ながら、他の種類の電気光学材料も使用可能)と、電極層110からは電気光学層112の反対側に配置される前面電極114と、前面電極114と隣接して存在し、それを物理的に支持する前面基板116とをさらに備える。前述のように、前面電極114および前面基板116は、都合上、高分子膜上にインジウムスズ酸化物(または、類似透明導電)層から形成され、そのようなコーティング膜は、市販されている。前面基板116は、望ましくは、バックプレーン102と実質的に同一材料および厚さであって、可撓性表示素子の歪曲を生じ得るCTEの不整合を回避するが、通常、前面基板116にバリア層を提供する必要はない。
【0047】
薄い共形の保護層またはバリア膜118が、前面基板116の露出表面を覆う。バリア膜118は、バリア膜118の外周部が、前面基板116および電気光学層112の外周全体において、この基板および層の縁を一定の距離だけ越えて延在するように、両寸法において、前面基板116および電気光学層112よりも大きい。120において示されるように、バリア膜118の外周部は、電気光学層112が、バックプレーン102とバリア膜118との間で完全に封止されるように、バックプレーン102の外周部に接着固定される。使用される接着剤は、望ましくは、可撓性であり、50g/m
2/日未満の水蒸気透過率を有する。バリア膜とバックプレーンとの間の接着層の厚さは、望ましくは、約25μm以下であり、接着層の幅(バックプレーンの平面に対し平行に測定)は、望ましくは、約1乃至約9mmであり、場合によっては、約1乃至約3mmの幅で十分であるだろう。
【0048】
表示素子の最適表示を確保するために(当然ながら、バリア膜118を通して見える、つまり、図面に示されるように、下方に)、バリア膜118は、前面基板116に接着されるべきであり、図面に示される好適な実施形態では、これは、光学的に透明な接着剤(図示せず)の薄い膜(50μm未満)によって達成される。
【0049】
いくつかの方法を使用して、表示素子100を生成し得る。電気光学材料は、都合上、第1の離型シートと、積層接着剤の第1の層と、前面基板116と、前面電極114と、電気光学層112と、積層接着剤の第2の層と、第2の離型シートとを備える、二重離型フィルムの形態で供給される。第2の離型シートが初めに除去され、二重離型フィルムの残りの層がバックプレーン102に積層される。(図面は、電極層110と電気光学層112との間の積層接着層を示していないが、そのような積層接着層は、通常、存在する。)第1の離型シートは、結果として生じたサブアセンブリから除去され、バリア膜118が、積層接着剤の第1の層を介して、前面基板116に積層される。最後に、バリア膜118およびバックプレーン102の外周部が、共に接着固定される。このステップを行うための方法は、後述する。
【0050】
代替方法では、電気光学層は、未処理フロントプレーンラミネートの一部、すなわち、第1の離型シートおよび第1の積層接着層を欠いたものとして供給される。フロントプレーンラミネートは、前述のようにバックプレーンに積層され、接着剤が、前面基板の露出表面に付与され、バリア膜は、この接着剤を介して、前面基板に積層される。さらなる変形例では、接着剤は、前面基板ではなくバリア膜に付与されてもよい。
【0051】
バリア膜とバックプレーンとの間の120における「エッジシール」は、バリア膜に付与する前に、適切な接着剤をバックプレーンに付与することによって形成されてもよい。代替として、当然ながら、接着剤は、バリア膜上に載置され得る。バックプレーンおよび前面基板へのバリア膜の積層は、同時または順に達成されてもよく、後者の場合、いずれの順番で達成されてもよい。エッジシールを形成するために使用される接着剤は、感圧接着剤、熱または放射硬化式接着剤、または二液型硬化式接着剤(例えば、エポキシ系接着剤)であってもよい。エッジシール形成後、接着剤の任意の必要な硬化が達成され得る。
【0052】
前面基板のシールとバックプレーンのエッジシールの両方のための接着剤がバリア膜上に提供される場合、バリア膜上に接着剤の単一層を提供し、接着剤のこの単一層を使用して、両シールを形成することが可能であり得る。
【0053】
多くの変更または修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、前述の本発明の好適な実施形態において成され得る。したがって、前述の記載は、説明目的であって、限定目的はないものと解釈される。