(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
集合住宅等の排水設備では、上階と下階とを仕切る各階の床スラブに排水立て管、あるいは排水管継手を上下に貫通させた状態で埋設することにより、前記排水立て管、あるいは排水管継手を介して上階の住宅で発生した排水を順次下階に導き、最終的に地下の排水横主管まで流せるように構成されている。このような排水設備の更新時に既存の排水立て管、あるいは排水管継手を撤去する場合には、一般的に、排水立て管や排水横枝管を各階の床スラブの上下で切断し、各階の排水立て管や排水横枝管を撤去した後、床スラブをハンマドリル等ではつり、前記床スラブ内に残された排水立て管、あるいは排水管継手を引き抜いて撤去することが行われている。
しかし、床スラブをハンマドリル等ではつる工法では、騒音が大きく、さらに粉塵対策が必要なことから工事が大掛かりになり、好ましくない。
【0003】
この点を改善するため、床スラブをはつらずに引き抜き治具を使用して埋設された排水立て管等を直接的に床スラブから引き抜く工法が特許文献1に記載されている。
特許文献1の引き抜き工法で使用される引き抜き治具は、
図7に示すように、ネジ作用を利用して既存の排水管継手100を床スラブSから引き抜くための治具である。引き抜き治具は、既存の排水管継手100に通される軸体で、雄ネジを備える軸部材101と、その軸部材101の下端部に連結されて、その既存の排水管継手100に対して下方から係合可能に構成された駒部材102と、床スラブS上に配置される架台で、中央に軸部材101が通される貫通穴104hを備える引き抜き架台104と、引き抜き架台104の貫通穴104hの上で軸部材101の雄ネジと螺合するナット部材107とを備えている。
上記構成により、ナット部材107をラチェットレンチ等で軸部材101の雄ネジに対して回転させることで、ネジ作用により軸部材101、及び駒部材102を軸方向に引き上げて既存の排水管継手100を床スラブSから引き抜くことが可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、集合住宅等では、排水管継手や排水立て管等は、水道管やガス管等と共に狭いパイプシャフト内に設置されている。このため、ガスメータ等や他の配管が邪魔になり、引き抜き架台104を既存の排水管継手100の真上位置に配置できない場合がある。即ち、既存の排水管継手100に駒部材102を介して連結された軸部材101を引き抜き架台104の貫通穴104hに通せなくなる場合がある。
また、仮に既存の排水管継手100に連結された軸部材101を引き抜き架台104の貫通穴104hに通せたとしても、ナット部材107を軸部材101の雄ネジに対して回転させる際に、ラチェットレンチ等が水道管等に当たって回転操作を行えない場合がある。さらに、狭いパイプシャフト内の作業となるため、作業効率も悪い。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明の技術的課題は、集合住宅の狭いパイプシャフト内に設置された既存の管材であっても効率的に引き抜けるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、建物の床スラブを上下に貫通した状態でその床スラブに埋設された既存の管材を前記床スラブから引き抜く管材引き抜き治具であって、前記既存の管材に通される軸部材と、前記軸部材の下端部に連結されて、前記既存の管材の外周面よりも半径方向外側に張り出さないように、その既存の管材に対して下方から係合可能に構成された駒部材と、前記床スラブ上に配置される部材で、所定高さ位置でほぼ水平に保持される梁部材と、その梁部材の両端部を支える一対の脚部材とからなり、前記梁部材に前記軸部材が通される軸穴が形成されている引き抜き架台と、前記引き抜き架台に支持されており、前記軸部材に対して軸方向の引き上げ力を付与可能な油圧シリンダとを有し、
前記引き抜き架台の脚部材は、現場の状況に合わせて規格配管を所定の長さ寸法に切断したものであり、前記引き抜き架台は、前記梁部材を既存の管材の上方に配置した後で、その梁部材に対して前記脚部材を組付けられるように構成されていることを特徴とする。
ここで、前記管材には、床スラブの上面側と下面側とで切断されてその床スラブ内に残された排水立て管のみならず排水管継手等も含むものとする。
【0008】
本発明によると、既存の管材に通される軸部材の下端部には、その既存の管材に対して下方から係合可能に構成された駒部材が連結されている。さらに、駒部材は既存の管材の外周面よりも半径方向外側に張り出さないように構成されている。このため、油圧シリンダが引き抜き架台に支持されて前記軸部材に対して軸方向の引き上げ力を付与することで、前記軸部材、駒部材を介して既存の管材を床スラブから上方に引き抜くことが可能になる。
ここで、引き抜き架台は、梁部材を既存の管材の上方に配置した後で、その梁部材に対して脚部材を組付けられるように構成されている。このため、例えば、集合住宅の狭いパイプシャフト内で既存の管材を跨ぐように引き抜き架台の組立体を設置できない場合でも、最初に、梁部材を既存の管材の上方に配置してからその梁部材に対して脚部材を組付けるようにすることで、既存の管材を跨くように引き抜き架台を設置することが可能になる。
また、油圧シリンダにより既存の管材に対する引き抜き力を付与する構成のため、前記パイプシャフトの外から油圧シリンダを操作可能であり、狭いパイプシャフト内における非効率な作業が不要になる。
即ち、集合住宅の狭いパイプシャフト内に設置された既存の管材であっても効率的に引き抜けるようになる。
【0009】
請求項2の発明によると、引き抜き架台の梁部材の軸穴は、前記梁部材の長さ方向に沿って長穴状に形成されており、その軸穴に挿通された前記軸部材が前記梁部材に対してその梁部材の長さ方向に位置調整が可能なように構成されていることを特徴とする。
このため、引き抜き架台の軸穴と、軸部材、及び既存の管材とを同軸に保持できない場合でも、軸部材を直立させた状態で引き抜き架台の軸穴に通すことが可能になる。
請求項3の発明によると、前記油圧シリンダのピストンロッドには中央軸方向に貫通孔が形成されており、そのピストンロッドの貫通孔に前記軸部材が同軸に挿通される構成であり、前記ピストンロッドから上方に突出した前記軸部材の上端部に、その軸部材と前記ピストンロッドとを軸方向において係合させる係合部材が取付けられていることを特徴とする。
このように、油圧シリンダと軸部材と既存の管材が同軸に保持されるため、既存の管材に対して効率的に引き抜き力を付与できるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、集合住宅の狭いパイプシャフト内に設置された既存の管材であっても効率的に引き抜けるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態1]
以下、
図1〜
図6に基づいて本発明の実施形態1に係る管材引き抜き治具10と、その管材引き抜き治具10を使用した集合住宅の排水立て管105の引き抜き方法とを説明する。
<管材引き抜き治具10の概要について>
本実施形態に係る管材引き抜き治具10は、
図1に示すように、集合住宅の上階と下階とを仕切る床スラブCSの貫通孔Hに通されて、埋め戻しモルタルMにより埋め戻された既存の排水立て管105を床スラブCSの埋め戻しモルタルMから引き抜くための治具である。管材引き抜き治具10は、既存の排水立て管105に通される軸部材12と、軸部材12と既存の排水立て管105とを連結する上下一対の駒部材20と、床スラブCSの上に設置される引き抜き架台30と、既存の排水立て管105に対して軸部材12、駒部材20を介して引き抜き力を付与する油圧シリンダ40とから構成されている。
【0013】
<軸部材12について>
軸部材12は、
図1に示すように、直線状の軸体であり、床スラブCSの上面側と下面側とで切断されてその床スラブCS内に残された排水立て管105(以下、排水立て管105という)に対して十分長く形成されている。そして、軸部材12の一端側(上端側)から他端側(下端側)にかけて雄ネジ12nが形成されている。さらに、軸部材12の長手方向における中央部分には、軸方向に長い平坦面12fがその軸部材12の中心を挟んで両側に形成されている。そして、軸部材12の平坦面12fを使用して、後記する上側の駒部材20の位置決めに使用されるシャフト係止具15が軸部材12に対して蝶ネジ15bにより軸方向所定位置に固定されるようになっている。
【0014】
<駒部材20について>
駒部材20は、
図1に示すように、軸部材12に連結された状態で排水立て管105の上端側と下端側とに嵌め込まれる部材であり、上下の駒部材20が同一形状、同一サイズで形成されている。駒部材20は、
図2に示すように、排水立て管105の端面を軸方向から支える円板状厚板であり、中心位置に軸部材12が挿通される貫通孔23が形成されている。また、駒部材20の外周部分には、大径部25と小径部27とが同軸に形成されており、その大径部25と小径部27との境界位置にリング状の段差25dが形成されている。駒部材20の小径部27は、
図1に示すように、排水立て管105の内側に軸方向から嵌め込まれる部分であり、外径寸法が排水立て管105の内径寸法にほぼ等しく設定されている。さらに、駒部材20の小径部27の外周面は、先端側が若干細くなるようなテーパ面27tとなっている(
図2参照)。このため、駒部材20の小径部27を排水立て管105の内側に嵌め込み易くなる。
駒部材20のリング状の段差25dは、排水立て管105の軸方向における端面を支える部分であり、前記小径部27が排水立て管105の内側に全て挿入された状態で、排水立て管105の端面に当接するようになる。さらに、駒部材20の大径部25の外径寸法は、排水立て管105の外径寸法よりも若干小径となるように設定されている。このため、駒部材20が排水立て管105の端部にセットされた状態で、その駒部材20が排水立て管105の半径方向外側に突出するようなことがなく、駒部材20が排水立て管105の引き抜きを妨げることがない。
上側の駒部材20は、
図1に示すように、排水立て管105の上側にセットされ、その駒部材20の貫通孔23に軸部材12が挿通された状態で、その軸部材12に固定されたシャフト係止具15によって上から押えられるようになる。
また、下側の駒部材20は、排水立て管105の下側にセットされて、その駒部材20の貫通孔23に軸部材12が挿通された状態で、
図1に示すように、前記軸部材12の下端部に螺合された止めナット17によって下から支えられるようになる。
【0015】
<引き抜き架台30について>
引き抜き架台30は、床スラブCSの上方で油圧シリンダ40の油圧シリンダ本体43を軸部材12、駒部材20、及び排水立て管105に対して同軸となるように支持する架台である。引き抜き架台30は、ほぼ水平に配置される梁部材32と、その梁部材32の両端部を支える一対の脚部材37とから構成されている。
梁部材32は、
図3の平面図に示すように、軸部材12が通される長穴状の軸穴33hを備える梁本体部33と、梁本体部33の長手方向両側に設けられて脚部材37が連結される脚連結部34とから構成されている。梁本体部33は、前側板部33fと、後側板部33bと、両板部33f,33bを左右両側でそれぞれつなぐ半円部33eとから扁平筒状に形成されている。そして、梁本体部33の前側板部33fと後側板部33b間の隙間が軸穴33hとなっており、その軸穴33hの幅寸法が軸部材12の直径寸法とほぼ等しく設定されている。
このため、梁部材32の軸穴33hに通された軸部材12は、その軸穴33hの長さ寸法にほぼ等しい寸法だけ、前記梁部材32に対して水平方向に相対移動が可能になる。
【0016】
梁部材32の脚連結部34は、円筒形の脚部材37の端部が嵌合される有底円筒状のキャップ部34cと、キャップ部34cと梁本体部33の半円部33eとの接続を補強するリブ部34rとから構成されている。そして、脚連結部34のキャップ部34cの軸心が梁本体部33(軸穴33h)の軸心と平行となるように設定されている。このため、梁部材32の左右の脚連結部34に対して後記する脚部材37が嵌合した状態で、それらの脚部材37と梁本体部33の軸穴33hに通された軸部材12とは、
図1に示すように、平行になるとともに、
図3に示すように、平面的に一直線上に配置されるようになる。
脚連結部34のキャップ部34cの下端側面には蝶ボルト34bが装着されており、その蝶ボルト34bをねじ込むことで、ボルト先端がキャップ部34cの内周面から突出して脚部材37の外周面を押圧し、キャップ部34cからの脚部材37の抜け止めが図られる。
脚部材37は、例えば、ガス管や水道管等に使用される配管用炭素鋼鋼管(SGP)であり、現場の状況に合わせて所定の長さ寸法に切断して使用される。例えば、
図1に示すように、床スラブCSの上面に左側が高くなるような段差が設けられている場合には、右側の脚部材37を左側の脚部材37よりも段差分だけ長くなるように切断して使用する。
なお、脚部材37による床スラブCSの上面の損傷(例えば、応力の集中に伴うクラックの発生等)を防止するため、脚部材37の先端と床スラブCSの上面との間にはフランジ38が挟まれるようになる。
【0017】
<油圧シリンダ40について>
油圧シリンダ40は、管材引き抜き治具10の駆動源であり、
図1に示すように、油圧シリンダ本体43と、手動式の油圧ポンプ45と、前記油圧シリンダ本体43と油圧ポンプ45とをつなぐ油圧ホース46とから構成されている。
油圧シリンダ本体43は、中央に貫通孔43hを備える円筒状の筒型シリンダ部43sと、同じく中央に貫通孔43hを備える円筒状の筒型ピストンロッド部43pとから構成されており、筒型ピストンロッド部43pが筒型シリンダ部43sに対して軸方向に突出可能に構成されている。油圧シリンダ本体43は、筒型ピストンロッド部43pを上向きにした状態で、引き抜き架台30の梁部材32の梁本体部33上に立てられた状態でセットされる。そして、油圧シリンダ本体43の筒型シリンダ部43sと筒型ピストンロッド部43pとの貫通孔43hに軸部材12が通されて、その軸部材12の上端部の雄ネジ12nにワッシャ19wがセットされ、止めナット19が螺合される。
また、油圧シリンダ本体43の筒型シリンダ部43sには、下端側位置に断面門形の摺動部44が設けられており、その摺動部44が、
図3に示すように、引き抜き架台30の梁部材32の梁本体部33を幅方向から跨いだ状態で、その梁本体部33に外側から嵌め込まれている。これにより、油圧シリンダ本体43は、引き抜き架台30の梁部材32の梁本体部33上にセットされた状態で、摺動部44の働きにより引き抜き架台30の梁本体部33に沿って水平方向の移動が可能になる。
また、筒型シリンダ部43sの下部側面には、
図1に示すように、油圧ホース46か接続されるホース接続部43xが設けられている。
【0018】
油圧ポンプ45は、手動ハンドル45hを上下に往復回動操作することで油を圧送可能なポンプであり、
図1に示すように、油圧ポンプ45の吐出位置に方向切り替え可能な逆止弁45zが設けられている。そして、逆止弁45zの出口ポートと筒型シリンダ部43sのホース接続部43xとが油圧ホース46により接続されている。
これにより、逆止弁45zを圧送方向に切替えて、油圧ポンプ45の手動ハンドル45hを往復回動操作することで、油圧シリンダ本体43の筒型シリンダ部43sに対して油が圧送されてその筒型シリンダ部43sから筒型ピストンロッド部43pが軸方向(上方)に突出するようになる。また、逆止弁45zを戻り方向に切替えることで、油圧シリンダ本体43の筒型シリンダ部43sから油が油圧ポンプ45に戻されて、筒型ピストンロッド部43pが下降して筒型シリンダ部43sに収納されるようになる。
【0019】
<管材引き抜き治具10の組立手順と排水立て管105の引き抜き方法について>
次に、
図4〜
図6に基づいて管材引き抜き治具10の組立手順と排水立て管105の引き抜き手順について説明する。
ここで、例えば、
図4〜
図6に示すように、床スラブCSの上面に段差が設けられている場合には、施工準備として前記段差の高さ分を考慮して、引き抜き架台30の梁部材32を水平にできるように左右の脚部材37の長さ寸法を調整する。
次に、各階の床スラブCの上側と下側とで既存の排水立て管105を切断し、切断した各階の排水立て管105と既存の排水管継手(図示省略)とを撤去する。これにより、床スラブCSの貫通孔H(埋め戻しモルタルM)の位置には、
図4等に示すように、既存の排水立て管105の直管切断残部(以下、排水立て管105という)のみが残されるようになる。
次に、
図4(A)に示すように、排水立て管105の上端部に駒部材20を上方から同軸に嵌め込み、その駒部材20の貫通孔23に対して軸部材12を上方から挿入する。このとき、軸部材12には、前記駒部材20を上から押えるシャフト係止具15が予め位置調整された状態で取付けられている。したがって、軸部材12はシャフト係止具15が駒部材20の上面に当接するまでその駒部材20の貫通孔23に挿通されるようになる。この状態で、軸部材12の下端部は排水立て管105の下端から一定寸法だけ下方に突出する。
【0020】
次に、
図4(B)に示すように、排水立て管105から下方に突出した軸部材12の下端部を下側の駒部材20の貫通孔23に挿通し、その駒部材20を排水立て管105の下端部に嵌め込むようにする。この状態で、軸部材12の雄ネジ12nの下端に対して止めナット17を螺合させ、その止めナット17を締め付けることで、駒部材20を排水立て管105の下端部に嵌合した状態に保持する。これにより、排水立て管105と軸部材12とは、上下の駒部材20の働きで同軸に保持される。
次に、
図4(B)等に示すように、集合住宅のパイプシャフト内に設置されているガス管5やメータ6等を避けながら引き抜き架台30の梁部材32の梁本体部33に設けられた軸穴33hに軸部材12の上部を通し、梁部材32を排水立て管105の上方に配置する。そして、この状態で、前記梁部材32の左右の脚連結部34におけるキャップ部34cに対してそれぞれ左右の脚部材37を嵌合させて、
図5(A)に示すように、引き抜き架台30を組み立てる。
ここで、左右の脚部材37と床スラブCの上面との間には、それぞれフランジ38をセットするようにする。
上記したように、引き抜き架台30の梁本体部33には、軸穴33hが長穴状に形成されているため、排水立て管105と軸部材12との軸心を引き抜き架台30の軸穴33hの軸心と同軸に保持できない場合でも、軸部材12を直立させた状態で引き抜き架台30の軸穴33hに通すことができる。
【0021】
次に、
図5(A)に示すように、直立状態で引き抜き架台30の軸穴33hに通された軸部材12に対して油圧シリンダ本体43をセットする。即ち、軸部材12の上部を油圧シリンダ本体43の筒型シリンダ部43sと筒型ピストンロッド部43pとの貫通孔43hに通し、その油圧シリンダ本体43の筒型シリンダ部43sの摺動部44を引き抜き架台30の梁本体部33の上部に嵌め込むようにする。そして、油圧シリンダ本体43の筒型ピストンロッド部43pから上方に突出した軸部材12の先端部にワッシャ19wをセットし、止めナット19を螺合させて締め付ける。
次に、
図5(B)に示すように、油圧シリング本体43と手動式の油圧ポンプ45とを油圧ホース46で接続することにより、管材引き抜き治具10の組立が完了する。
即ち、軸部材12の先端部に装着されるワッシャ19wと止めナット19とが本発明において軸部材とピストンロッドとを軸方向において係合させる係合部材に相当する。
【0022】
次に、手動式の油圧ポンプ45の逆止弁45zを圧送方向に切替えて、油圧ポンプ45の手動ハンドル45hを上下に往復回動操作することで、油圧シリンダ本体43の筒型シリンダ部43sに油が圧送されて、
図5(B)に示すように、筒型シリンダ部43sから筒型ピストンロッド部43pが上方に突出するようになる。筒型ピストンロッド部43pの上昇動作は、ワッシャ19w、止めナット19を介して軸部材12に伝わり、その軸部材12を軸心に沿って上方に引き上げる。そして、軸部材12の上昇動作が上下の駒部材20を介して排水立て管105に加わり、その排水立て管105に対して床スラブCS(埋め戻しモルタルM)からの引き抜き力が加わるようになる。
次に、筒型ピストンロッド部43pが上端位置まで突出した状態で、油圧ポンプ45の逆止弁45zを戻り方向に切替える。これにより、油圧シリンダ本体43の筒型シリンダ部43sから油圧ポンプ45側に油が戻され、
図6(A)に示すように、軸部材12に対して筒型ピストンロッド部43pが下降して筒型シリンダ部43sに収納されるようになる。
次に、筒型ピストンロッド部43pの下降に合わせて、ワッシャ19wを下降させるとともに、止めナット19を螺合させて下降させ、その止めナット19を筒型ピストンロッド部43pの位置で締め付ける。そして、油圧ポンプ45の逆止弁45zを圧送方向に切替えて、再び、手動ハンドル45hを操作して筒型シリンダ部43sから筒型ピストンロッド部43pを上方に突出させ、
図6(B)に示すように、排水立て管105を床スラブCSの埋め戻しモルタルMから引き抜くようにする。
このようにして、排水立て管105が床スラブCSの埋め戻しモルタルMから引き抜かれた状態で作業が完了する。
【0023】
<本実施形態に係る管体引き抜き治具10の長所について>
本実施形態に係る管体引き抜き治具10によると、既存の排水立て管105に通される軸部材12の下端部には、その既存の排水立て管105に対して下方から係合可能に構成された駒部材20が連結されている。このため、油圧シリンダ40が引き抜き架台30に支持されて軸部材12に対して軸方向の引き上げ力を付与することで、軸部材12、駒部材20を介して既存の排水立て管105を床スラブCS(埋め戻しモルタルM)から上方に引き抜くことができる。
ここで、引き抜き架台30は、梁部材32を既存の排水立て管105の上方に配置した後で、その梁部材32に対して脚部材37を組付けられるように構成されている。このため、例えば、集合住宅の狭いパイプシャフト内で既存の排水立て管105を跨ぐように引き抜き架台30の組立体を設置できない場合でも、最初に、梁部材32を既存の排水立て管105の上方に配置してからその梁部材32に対して脚部材37を組付けるようにすることで、既存の排水立て管105を跨くように引き抜き架台30を設置することが可能になる。
また、油圧シリンダ40により既存の排水立て管105に対する引き抜き力を付与する構成のため、前記パイプシャフトの外から油圧シリンダ40を操作可能であり、狭いパイプシャフト内における非効率な作業が不要になる。
即ち、集合住宅の狭いパイプシャフト内に設置された既存の排水立て管105であっても効率的に引き抜けるようになる。
【0024】
また、引き抜き架台30の梁部材32の軸穴33hは、梁部材32の長さ方向に沿って長穴状に形成されており、その軸穴33hに挿通された軸部材12が梁部材32に対してその梁部材32の長さ方向に位置調整が可能なように構成されている。
このため、引き抜き架台30の軸穴33hと、軸部材12、及び既存の排水立て管105とを同軸に保持できない場合でも、軸部材12を直立させた状態で引き抜き架台30の軸穴33hに通すことが可能になる。
また、油圧シリンダ40のピストンロッド43pは円筒状に形成されて、そのピストンロッド43pに対して軸部材12が同軸に挿通される構成であり、ピストンロッド43pから突出した軸部材12の上端部に、その軸部材12とピストンロッド43pとを軸方向において係合させる係合部材(止めナット19)が取付けられている。
このため、油圧シリンダ40と軸部材12と既存の排水立て管105が同軸に保持されるようになり、既存の排水立て管105に対して効率的に引き抜き力を付与できる。
【0025】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、引き抜き架台30の脚部材37として配管炭素鋼鋼管(SGP)を使用し、現場の状況に合わせて所定長さ寸法に適宜切断して使用する例を示した。しかし、脚部材37の先端にネジ式の簡易昇降機構を設け、脚部材37の長さを調整できるようにすることも可能である。
また、本実施形態では、筒型シリンダ部43sと筒型ピストンロッド部43pとからなる油圧シリンダ40を使用し、軸部材12をその油圧シリンダ40の貫通孔43hに通す例を示した。しかし、通常の軸型シリンダと軸型ピストンロッドとからなる油圧シリンダを使用し、その油圧シリンダを軸部材12と平行に設置する構成でも可能である。
また、本実施形態では、既存の管材の一例として排水立て管105を例示したが、本実施形態に係る管材引き抜き治具10により排水管継手を引き抜くことも可能である。
また、本実施形態では、上下の駒部材20の形状、及びサイズを等しくする例を示したが、引き抜く管材の形状に合わせて、上下の駒部材20の形状、及びサイズを変えることも可能である。
また、本実施形態では、駒部材20を上下に設ける例を示したが、引き抜く管材の埋設状態に合わせて上側の駒部材20を省略することも可能である。