特許第6045830号(P6045830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045830
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】扁平形電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/08 20060101AFI20161206BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20161206BHJP
   H01M 2/04 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   H01M2/08 W
   H01M2/02 G
   H01M2/04 G
   H01M2/08 G
   H01M2/02 J
   H01M2/04 J
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-158012(P2012-158012)
(22)【出願日】2012年7月13日
(65)【公開番号】特開2014-22120(P2014-22120A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】日立マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100112715
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】小松 慎也
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩司
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/111255(WO,A1)
【文献】 特開平11−003689(JP,A)
【文献】 特開2006−024446(JP,A)
【文献】 特表2001−523885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/00−2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒軸方向に延びる筒状側壁部を有する有底筒状の外装缶と、
前記筒軸方向に延びる周壁部を有し、該周壁部が前記外装缶の内方に位置付けられるように前記外装缶の開口を覆う有底筒状の封口缶と、
前記封口缶の周壁部上に射出成形によって形成され、前記外装缶と前記封口缶とによって挟み込まれるガスケットとを備え、
前記ガスケットは、
前記封口缶の周壁部の少なくとも一部を覆うように該周壁部上に成形される被覆部と、
前記被覆部と一体に形成され、前記周壁部に対して前記筒軸方向の外方に位置する突出部とを有し、
前記被覆部及び前記突出部は、前記外装缶側に位置する部分が、前記外装缶の筒状側壁部と前記封口缶の周壁部との間に挟み込まれており、
前記突出部は、前記ガスケットの射出成形に用いる成形型の注入口に対応して形成される注入部を有
前記注入部は、前記突出部のうち前記外装缶の筒状側壁部と面する部分に位置しており、
前記注入部は、前記突出部の表面に形成された凹部を有する、
扁平形電池。
【請求項2】
請求項1に記載の扁平形電池において、
前記突出部は、前記筒軸方向の長さが、該突出部の厚み方向の寸法よりも大きい、扁平形電池。
【請求項3】
有底筒状の封口缶を形成する封口缶形成工程と、
前記封口缶の周壁部上に、成形型を用いて、前記封口缶の周壁部を覆う被覆部と該被覆部から突出する突出部とを有するガスケットを射出成形するガスケット成形工程とを備え、
前記ガスケット成形工程では、射出成形時に、前記成形型のうち前記突出部を形成する部分に対して樹脂を射出することにより前記ガスケットを成形する、扁平形電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイン形電池等の扁平形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有底筒状の外装缶と該外装缶の開口を覆うように配置される封口缶とを備えた扁平形電池は知られている。このような扁平形電池では、例えば特許文献1、2に開示されるように、電池内部の気密性を保ち且つ外装缶と封口缶との電気的な絶縁を確保するために、外装缶と封口缶との接続部分に樹脂製のガスケットを配置している。すなわち、封口缶の周壁部上には、外装缶との間に挟み込まれるガスケットが配置されている。
【0003】
また、前記特許文献1、2には、前記ガスケットを封口缶の周壁部上にモールド成形する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−34837号公報
【特許文献2】特開昭61−233965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の各構成のように、封口缶の周壁部にガスケットを成形する場合、溶融した樹脂材料を成形型内に射出する射出成形が用いられる。すなわち、成形型内に封口缶の周壁部の開口端側を配置した状態で、該成形型内に溶融した樹脂材料を注入する。このとき、成形型内に溶融した樹脂材料が行き渡るように、溶融した樹脂材料は所定の圧力で成形型内に射出される。
【0006】
一般的に扁平形電池の封口缶の周壁部の厚みは薄いため、上述の射出成形の際に所定の圧力で射出された樹脂材料が封口缶の周壁部に当たると、該周壁部が変形する可能性がある。
【0007】
また、射出成形の際に溶融した樹脂材料が封口缶の周壁部に当たると、封口缶の周壁部によって、成形型内への樹脂材料の進入が阻害されるため、成形型の隅々まで樹脂材料を行き渡らせるのが難しくなる。
【0008】
本発明の目的は、ガスケットが封口缶の周壁部上に成形された扁平形電池において、ガスケットの射出成形時に、封口缶の周壁部が変形するのを防止しつつ、成形型内に樹脂材料を効率良く注入可能な構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態にかかる扁平形電池は、筒軸方向に延びる筒状側壁部を有する有底筒状の外装缶と、前記筒軸方向に延びる周壁部を有し、該周壁部が前記外装缶の内方に位置付けられるように前記外装缶の開口を覆う有底筒状の封口缶と、前記封口缶の周壁部上に射出成形によって形成され、前記外装缶と前記封口缶とによって挟み込まれるガスケットとを備え、前記ガスケットは、前記封口缶の周壁部の少なくとも一部を覆うように該周壁部上に成形される被覆部と、該被覆部と一体に形成され、前記周壁部に対して前記筒軸方向の外方に位置する突出部とを有し、前記突出部は、前記ガスケットの射出成形に用いる成形型の注入口に対応して形成される注入部を有する(第1の構成)。
【0010】
これにより、封口缶の周壁部上にガスケットを成形する際に、成形型内に射出される樹脂材料によって封口缶の周壁部が変形を生じるのを防止できる。すなわち、成形型の注入口に対応した注入部は、ガスケットのうち、封口缶の周壁部に対して筒軸方向外方に位置する突出部に設けられる。よって、射出成形の際には、封口缶の周壁部が存在しない部分に対して樹脂材料が射出される。そのため、成形型内に樹脂材料を射出した場合に、該樹脂材料が封口缶の周壁部に直接、当たるのを防止できる。これにより、射出成形時に成形型内に射出された樹脂材料によって封口缶の周壁部が変形を生じるのを防止できる。しかも、射出成形時に、成形型内に射出された樹脂材料は封口缶の周壁部に直接、当たらないため、該周壁部によって樹脂材料の流れが阻害されるのを防止できる。よって、成形型内に樹脂材料を効率良く注入することができる。
【0011】
前記第1の構成において、前記被覆部及び前記突出部は、前記外装缶側に位置する部分が、前記外装缶の筒状側壁部と前記封口缶の周壁部との間に挟み込まれ、前記注入部は、前記突出部のうち前記外装缶の筒状側壁部と面する部分に位置するのが好ましい(第2の構成)。
【0012】
これにより、成形型内に射出される樹脂材料が封口缶の周壁部に当たるのをより確実に防止できる。すなわち、ガスケットの突出部のうち外装缶側に位置する部分から、溶融した樹脂材料を成形型内に射出した場合、該成形型内で封口缶の周壁部が存在しない部分に樹脂材料が射出される。よって、射出成形時に、成形型内に射出された樹脂材料によって封口缶の周壁部が変形を生じるのをより確実に防止できるとともに、成形型内に樹脂材料をより効率良く注入することができる。
【0013】
前記第2の構成において、前記注入部は、前記突出部の表面に形成された凹部を有するのが好ましい(第3の構成)。こうすることで、ガスケットが封口缶と外装缶との間に挟まれた状態で、注入部に形成された凹部は、外装缶とガスケットとの間に隙間を形成する。これにより、ガスケットと外装缶との間に扁平形電池内の電解液等が進入した場合でも、凹部によって形成される前記隙間内に電解液等を貯めることができる。したがって、上述の構成により、扁平形電池の液漏れ等を防止することができる。
【0014】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記突出部は、前記筒軸方向の長さが、該突出部の厚み方向の寸法よりも大きいのが好ましい(第4の構成)。
【0015】
このように突出部の筒軸方向の寸法が大きい構成の場合には、突出部において外装缶の筒状側壁部に面する部分に樹脂材料の注入部を設けやすい。
【0016】
また、上述のような構成を有する突出部は、前記筒軸方向に変形を生じやすい。そのため、突出部の先端部分がガスケットの内方に変形し、突出部と外装缶との間に隙間を形成する。この隙間にもガスケットと外装缶との間に進入した電解液等を貯めることができる。よって、扁平形電池の液漏れをより確実に防止できる。
【0017】
本発明の一実施形態に係る扁平形電池の製造方法では、有底筒状の封口缶を形成する封口缶形成工程と、前記封口缶の周壁部上に、成形型を用いて、前記封口缶の周壁部を覆う被覆部と該被覆部から突出する突出部とを有するガスケットを射出成形するガスケット成形工程とを備え、前記ガスケット成形工程では、射出成形時に、前記成形型のうち前記突出部を形成する部分に対して樹脂を射出することにより前記ガスケットを成形する(第5の方法)。
【0018】
この方法により、射出成形の際に、射出された樹脂材料によって封口缶の周壁部が曲がったり、該周壁部によって成形型内での樹脂材料の流れが阻害されたりするのを防止できる。よって、射出成形時に、封口缶の周壁部が変形するのを防止しつつ、成形型内に樹脂材料を効率良く注入することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態に係る扁平形電池では、ガスケットを射出成形する際に、外装缶と封口缶との間に挟み込まれるガスケットのうち封口缶の周壁部を覆う被覆部から突出する突出部に、樹脂材料を射出する。これにより、射出成形する際に封口缶の周壁部が変形を生じるのを防止しつつ、樹脂材料を効率良く成形型内に注入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る扁平形電池の概略構成を示す断面図である。
図2図2は、扁平形電池内の電極体の構造を断面で拡大して示す部分拡大断面図である。
図3図3は、ガスケットの注入部を拡大して示す部分拡大断面図である。
図4図4は、負極缶にガスケットをモールド成形するときの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0022】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態である扁平形電池1の概略構成を示す断面図である。この扁平形電池1は、有底円筒状の外装缶としての正極缶10と、該正極缶10の開口を覆う封口缶としての負極缶20と、正極缶10と負極缶20との間に挟み込まれるガスケット30と、正極缶10及び負極缶20の間に形成される空間内に収納される電極体40とを備える。したがって、扁平形電池1は、正極缶10と負極缶20とを合わせることによって、全体が扁平なコイン状となる。扁平形電池1の正極缶10及び負極缶20の間に形成される空間内には、電極体40以外に、非水電解液(図示省略)も封入されている。なお、正極缶10と負極缶20とを組み合わせることにより、電池ケースが構成される。
【0023】
正極缶10は、ステンレスなどの金属材料からなり、プレス成形によって有底円筒状に形成されている。正極缶10は、円形状の底部11と、その外周に該底部11と連続して形成される円筒状の周壁部12(筒状側壁部)とを備える。この周壁部12は、縦断面視(図1に図示した状態)で、底部11の外周端からほぼ垂直に延びるように設けられている。正極缶10は、後述するように、負極缶20との間にガスケット30を挟んだ状態で、周壁部12の開口端側が正極缶10の内側に折り曲げられて、該負極缶20に対してかしめられている。なお、図1における符号Pは、正極缶10の筒軸である。周壁部12は、正極缶10の筒軸方向に延びている。
【0024】
負極缶20も、正極缶10と同様、ステンレスなどの金属材料からなり、プレス成形によって有底円筒状に形成されている。負極缶20は、正極缶10の周壁部12よりも外形が小さい概略円筒状の周壁部22と、その一方の開口を塞ぐ円形状の平面部21と、を有する。この周壁部22も、正極缶10と同様、縦断面視で、平面部21に対してほぼ垂直に延びるように設けられている。周壁部22には、平面部21側の基端部22aに比べて径が段状に大きくなる拡径部22bが形成されている。すなわち、周壁部22には、基端部22aと拡径部22bとの間に段部22cが形成されている。図1に示すように、この段部22cに対して、正極缶10の周壁部12の開口端側が折り曲げられてかしめられている。すなわち、正極缶10は、その周壁部12の開口端側が負極缶20の段部22cに嵌合されている。なお、負極缶20の周壁部22も、正極缶10の周壁部12と同様、筒軸方向に延びている。
【0025】
ガスケット30は、ポリプロピレン(PP)からなる。ガスケット30は、正極缶10の周壁部12と負極缶20の周壁部22との間に挟みこまれるように、該負極缶20の周壁部22上にモールド成形されている。ガスケット30の詳しい構成については後述する。なお、ガスケット30の材料としては、PPに限らず、ポリフェニレンサルファイド(PPS)にオレフィン系エラストマーを含有した樹脂組成物や、ポリテトラフルオロエチレン(PFA)、ポリアミド系樹脂などを用いてもよい。
【0026】
電極体40は、図2にも示すように、袋状のセパレータ44内に収容された略円板状の正極41と、略円板状の負極46と、を厚み方向に交互に複数、積層してなる。これにより、電極体40は、全体として略円柱状の形状を有している。また、電極体40は、両端面が負極になるように、複数の正極41及び負極46が積層されている。
【0027】
正極41は、コバルト酸リチウム等の正極活物質を含有する正極活物質層42を、アルミニウム等の金属箔製の正極集電体43の両面に配置したものである。
【0028】
負極46は、黒鉛等の負極活物質を含有する負極活物質層47を、銅等の金属箔製の負極集電体48の両面に配置したものである。略円柱状の電極体40の軸方向両端に位置する負極は、それぞれ、負極集電体48,48が電極体40の軸方向端部に位置するように、負極集電体48の一面側にのみ負極活物質層47を有している。すなわち、略円柱状の電極体40は、その両端に負極集電体48,48が露出している。この電極体40の一方の負極集電体48は、正極終電体43及び絶縁シート49を介して正極缶10の底部11上に位置づけられる(図1及び図2参照)。電極体40の他方の負極集電体48は、電極体40が正極缶10と負極缶20との間に配置された状態で、該負極缶20の平面部21に当接する(図1参照)。
【0029】
セパレータ44は、平面視で略円形状に形成された袋状の部材であり、略円板状の正極41を収納可能な大きさに形成されている。セパレータ44は、絶縁性に優れたポリエチレン製の微多孔性薄膜によって構成されている。このように、セパレータ44を微多孔性薄膜によって構成することで、リチウムイオンが該セパレータ44を透過することができる。セパレータ44は、一枚の長方形状の微多孔性薄膜のシート材によって正極41を包み込んで、該シート材の重なっている部分を熱溶着等によって接着することにより形成される。
【0030】
図1及び図2に示すように、正極41の正極集電体43には、平面視で該正極集電体43の外方に向かって延びる導電性の正極リード51が一体形成されている。この正極リード51の正極集電体43側も、セパレータ44によって覆われている。なお、絶縁シート49と正極缶10の底部11との間には、正極活物質層42が設けられていない正極集電体43が配置されている。すなわち、この正極集電体43は、正極缶10の底部11に電気的に接触している。
【0031】
負極46の負極集電体48には、平面視で該負極集電体48の外方に向かって延びる導電性の負極リード52が一体形成されている。
【0032】
図1及び図2に示すように、正極41及び負極46は、各正極41の正極リード51が一側に位置し、且つ、各負極46の負極リード52が該正極リード51とは反対側に位置するように、積層される。
【0033】
上述のように複数の正極41及び負極46を厚み方向に積層した状態で、複数の正極リード51は、先端側を厚み方向に重ね合わされて、超音波溶接等によって接続される。これにより、複数の正極リード51を介して、複数の正極41同士が電気的に接続されるとともに、各正極41と正極缶10とがそれぞれ電気的に接続される。一方、複数の負極リード52も、先端側を厚み方向に重ね合わされて超音波溶接等によって互いに接続される。これにより、複数の負極リード52を介して、複数の負極46同士が電気的に接続されるとともに、各負極46と負極缶20とがそれぞれ電気的に接続される。
【0034】
(ガスケットの構成)
次に、ガスケット30の構成を図1図3及び図4を用いて詳細に説明する。
【0035】
図1及び図4に示すように、ガスケット30は、負極缶20の周壁部22を包み込むように概略円筒状に形成されている。詳しくは、ガスケット30は、周壁部22の負極缶内方側、及び、該周壁部22における段部22c及び拡径部22bのそれぞれの負極缶外方側を覆うように、負極缶20にモールド成形されている。また、ガスケット30は、周壁部22の開口側から負極缶20の筒軸方向に突出するように設けられている。すなわち、ガスケット30は、負極缶20の周壁部22を覆う被覆部31と、負極缶20の周壁部22に対して該負極缶20の筒軸方向外方に位置する突出部32とを有する。
【0036】
図1に示すように、ガスケット30は、負極缶20の周壁部22の基端部22aの内面とほぼ面一になるような内径を有する。すなわち、ガスケット30の被覆部31及び突出部32は、同等の内径を有する。
【0037】
ガスケット30は、負極缶20の外周側に正極缶10の周壁部12をかしめた状態で、該正極缶10の底部11に接触するような長さを有する。これにより、負極缶20に対して正極缶10をかしめた場合に、ガスケット30の突出部32の先端部分は、正極缶10の底部11に押し付けられる。これにより、ガスケット30の突出部32の先端部分によって、正極缶10及び負極缶20によって形成される空間が密閉される。
【0038】
また、上述のように、正極缶10の周壁部12の開口端側を負極缶20の外周側にかしめることにより、該正極缶10の周壁部12の開口端側によって、ガスケット30が圧縮される。よって、ガスケット30によって、正極缶10の周壁部12と負極缶20の外周側との間がシールされる。
【0039】
なお、正極缶10の底部11に対するガスケット30の突出部32の先端部の押し付け力は、正極缶10の周壁部12の外周側を負極缶20の外周側にかしめた際にガスケット30が受ける力により得られる。
【0040】
ガスケット30の突出部32は、負極缶20の筒軸方向の長さが、負極缶20の周壁部22を覆う被覆部31の前記筒軸方向の長さと同等である。また、ガスケット30の突出部32は、前記筒軸方向の長さが、負極缶20の径方向に対応する厚み方向の寸法よりも大きい。
【0041】
このように、ガスケット30のうち負極缶20の周壁部22を覆っていない突出部32を、負極缶20の筒軸方向に長い形状とすることで、該突出部32を容易に変形させることができる。
【0042】
また、ガスケット30全体の前記筒軸方向の長さも従来に比べて大きくなるため、その分、ガスケット30によって正極缶10と負極缶20とを広い範囲でシールすることが可能になる。これにより、正極缶10と負極缶20との隙間から液漏れ等が生じるのをより確実に防止することができる。
【0043】
本実施形態のガスケット30は、後述するように、溶融した樹脂材料を成形型内に注入して成形する、いわゆる射出成形によって形成される。ガスケット30の突出部32には、成形型内に溶融した樹脂材料を注入する注入口に対応して注入部33が位置する。すなわち、注入部33は、ガスケット30を射出成形する際に、成形型内に樹脂材料を注入する注入口によって形成される。
【0044】
注入部33は、前記注入口によって形成された凸部30a(図4参照)を除去した際に形成される凹部33aを有する。すなわち、後述するように、成形型の注入口によって、ガスケット30の突出部32には、樹脂が突出した凸部30aが形成される。この凸部30aは、成形型からガスケット30を取り出す際に、成形型の一部によって除去される。そのため、凸部30aの根元部分がえぐられて、上述のような凹部33aが形成される。
【0045】
このように、ガスケット30の突出部32が形成される部分に対して樹脂材料を射出することにより、成形型内に射出された樹脂材料によって負極缶20の周壁部22が変形を生じるのを防止できる。また、上述の構成により、負極缶20の周壁部22によって、成形型内への樹脂材料の注入が阻害されるのを防止できる。
【0046】
さらに、注入部33は、突出部32の正極缶10側の表面に形成された凹部33aを有するため、図1及び図3に示すように、負極缶20に対して正極缶10をかしめた状態で、該正極缶10の周壁部12とガスケット30との間に隙間35を形成する。この隙間35内に、ガスケット30の突出部32と正極缶10の底部11との間に進入した電解液等がたまる。したがって、隙間35によって、扁平形電池1における電解液等の液漏れを防止することが可能になる。
【0047】
なお、既述のように、ガスケット30の突出部32は、負極缶20の筒軸方向に対応する長さが厚み方向の寸法よりも大きい。これにより、ガスケット30の成形型において、突出部32の周壁部12側を形成する部分に、樹脂材料を注入するための注入口を容易に設けることができる。
【0048】
(扁平形電池の製造方法)
次に、上述のような構成を有する扁平形電池1の製造方法について説明する。
【0049】
まず、プレス成形によって、有底円筒状の正極缶10及び負極缶20を、それぞれ形成する。
【0050】
一方、セパレータ44によって覆われた複数の板状の正極41と、複数の板状の負極46とを厚み方向に積層して、図1に示すような略円柱状の電極体40を構成する。電極体40は、従来の方法と同様の方法によって製造されるため、詳しい製造方法については説明を省略する。
【0051】
負極缶20にガスケット30をモールド成形する様子を、図4を用いて説明する。
【0052】
図4に示すように、固定成形型61と、可動成形型62と、リング状の断面を有するピストン可動成形型63とを負極缶20の外側に配置し、ピン64を該負極缶20の内側に配置する。これにより、これらの成形型61,62,63及びピン64によって、負極缶20の周壁部22の周りにガスケット30を形成するための空間60が形成される。したがって、固定成形型61,可動成形型62,ピストン可動成形型63及びピン64によって、ガスケット30を成形するための成形型が構成される。
【0053】
固定成形型61には、空間60内に外部から樹脂材料を注入するための注入口61aが設けられている。この注入口61aから空間60内に溶融した樹脂材料を注入することにより、空間60内を樹脂材料によって埋める。この際、固定成形型61の注入口61aは、負極缶20の周壁部22が存在しない位置に設けられているため、注入口61aから樹脂材料を射出する際に、周壁部22に当たって該周壁部22に変形を生じさせるのを防止できる。しかも、周壁部22によって、樹脂材料の流れが阻害されるのを防止できる。
【0054】
空間60内の樹脂材料が硬化してガスケット30が成形された後、まず、可動成形型62を取り外す。そして、ピストン可動成形型63をピン64の軸方向(図4中の白抜き矢印方向)に移動させることにより、ガスケット30がモールド成形された負極缶20を該ピン64及び固定成形型61から脱離させることができる。
【0055】
ガスケット30は、図4に示すように空間60内に樹脂材料によって成形された状態では、固定成形型61の注入口61a内に突出する凸部30aを有する。この凸部30aは、上述のようにガスケット30を固定成形型61に対して図4の白抜き矢印方向に移動させる際に、固定成形型61によって切断される。このとき、PPなどの樹脂材料によって構成されたガスケット30は、突出部30aだけがきれいに切除されるのではなく、えぐられるように取り除かれるため、ガスケット30の表面に図1及び図3に示すような凹部33aが形成される。
【0056】
ここで、固定成形型61は、円筒状のガスケット30の外側面を成形する部分が、負極缶20の周壁部22の段部22cに向かって徐々に内径が大きくなるようなテーパ状に形成されている。これにより、上述のようにピストン可動成形型63によってガスケット30を押した場合に、固定成形型61から負極缶20を容易に脱離させることができる。
【0057】
正極缶10内に、電極体40を絶縁シート47等とともに配置し、非水電解液を注入する。そして、上述のようにしてガスケット30がモールド成形された負極缶20を、正極缶10の開口を覆うように配置する。その状態で、正極缶10の周壁部12の開口端側を、負極缶20の周壁部22の段部22cに対して正極缶10の内方に折り曲げてかしめる。これにより、上述の構成の扁平形電池1が得られる。ここで、非水電解液は、例えば、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートとを混合した溶媒に、LiPFを溶解させることにより得られる。
【0058】
ここで、プレス成形によって負極缶20を形成する工程が封口缶形成工程に対応し、負極缶20の周壁部22上にガスケット30をモールド成形する工程がガスケット成形工程に対応する。
【0059】
(実施形態の効果)
この実施形態では、負極缶20の周壁部22上に形成されるガスケット30は、該周壁部22を覆う被覆部31と、該被覆部31から負極缶20の筒軸方向に突出する突出部32とを有する。この突出部32は、ガスケット30を射出成形によって形成する際に成形型内へ樹脂材料を注入する注入口に対応した注入部33を有する。
【0060】
これにより、ガスケット30を射出成形する際に、負極缶20の周壁部22が成形型内へ射出された樹脂材料によって変形を生じたり、該周壁部22によって成形型内での樹脂材料の流れが阻害されたりするのを防止できる。したがって、ガスケット30を射出成形する際の負極缶20の周壁部22の変形を防止しつつ、射出成形時に成形型内に効率良く樹脂材料を注入可能な構成が得られる。
【0061】
また、ガスケット30に形成される注入部33は、成形型の注入口内に形成された凸部30aを固定成形型61によって切断することにより得られる凹部33aを有する。これにより、ガスケット30の注入部33には、該ガスケット30と正極缶10の周壁部12との間に隙間35が形成される。この隙間35が形成されることにより、扁平形電池1内の電解液等がガスケット30と正極缶10の周壁部12との間に進入した場合でも、隙間35内で電解液等を保持することが可能になる。したがって、注入部33の凹部33aによって、扁平形電池1の液漏れを防止することができる。
【0062】
しかも、ガスケット30の突出部32は、厚み方向の寸法よりも負極缶20の筒軸方向の長さの方が大きい。そのため、負極缶20の周壁部22に対して正極缶10の周壁部12をかしめると、ガスケット30は前記筒軸方向に圧縮されて、突出部32の先端側がガスケット30の内方に倒れこむように変形する。これにより、ガスケット30と正極缶10との間に部分的に隙間が形成されることになる。この隙間によっても、扁平形電池1の液漏れを防止することが可能になる。
【0063】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0064】
前記実施形態では、ガスケット30の突出部32は、負極缶20の筒軸方向の長さが、ガスケット30の被覆部31の前記筒軸方向の長さと同等である。また、前記実施形態では、突出部32は、前記筒軸方向の長さが、厚み方向の寸法よりも大きい。しかしながら、突出部32は、射出成形の際に成形型内に樹脂を射出可能な大きさ、すなわち注入部33の凹部33aが形成可能な大きさであれば、どのような大きさであってもよい。
【0065】
前記実施形態では、電極体40を、複数の正極41及び負極46を交互に積層した構成としているが、電極体の構成はこれ以外の構成であってもよい。
【0066】
前記実施形態では、正極缶10を外装缶としていて、負極缶20を封口缶としているが、逆に正極缶が封口缶で、負極缶が外装缶であってもよい。
【0067】
前記実施形態では、正極缶10及び負極缶20を、それぞれ有底円筒状に形成して、扁平形電池1をコイン状に形成したが、この限りではなく、扁平形電池を、多角柱状など、円柱状以外の形状に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明による扁平形電池は、ガスケットが封口缶に成形された扁平形電池に利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1:扁平形電池、10:正極缶(外装缶)、12:周壁部(筒状側壁部)、20:負極缶(封口缶)、22:周壁部、30:ガスケット、31:被覆部、32:突出部、33:注入部、33a:凹部、61:固定成形型、61a:注入口、62:可動成形型、63:ピストン可動成形型、64:ピン
図1
図2
図3
図4