特許第6045835号(P6045835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045835
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20161206BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20161206BHJP
   H01M 2/30 20060101ALI20161206BHJP
   H01M 2/02 20060101ALI20161206BHJP
   H01M 2/14 20060101ALI20161206BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALN20161206BHJP
【FI】
   H01M10/04 Z
   H01M2/26 A
   H01M2/30 D
   H01M2/02 A
   H01M2/14
   !H01M10/0585
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2012-165244(P2012-165244)
(22)【出願日】2012年7月25日
(65)【公開番号】特開2014-26798(P2014-26798A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】西中 俊平
(72)【発明者】
【氏名】西村 直人
【審査官】 冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−227090(JP,A)
【文献】 特開平10−112332(JP,A)
【文献】 特開2012−009308(JP,A)
【文献】 特開2011−108644(JP,A)
【文献】 実開平05−023414(JP,U)
【文献】 特開2010−050111(JP,A)
【文献】 特開2008−192414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 2/02
H01M 2/14
H01M 2/26
H01M 2/30
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極の電極板がセパレータを挟んで積層されて成る素電池を、一軸に沿って移動可能に外装体に収容し、上記移動によって上記素電池が離接する上記外装体の内壁に設けられた電極端子と上記電極板とが電極タブによって電気的に接続されている電池であって、
上記移動によって上記素電池が上記外装体の内壁に最も接近した状態でも、上記素電池が上記外装体の内壁と接触しない位置に上記素電池を保持するとともに、上記移動によって上記素電池が上記外装体の内壁から最も離間した状態でも、上記電極タブによる電気的な接続を維持できる位置に上記素電池を保持する移動制御体を備え
上記移動制御体は、上記素電池に固定され、上記素電池と共に上記外装体内を移動し、正極の上記電極端子と正極の上記電極板を結ぶ方向と、負極の上記電極端子と負極の上記電極板とを結ぶ方向とについて、上記素電池よりも長く、上記外装体よりも短い
ことを特徴とする電池。
【請求項2】
正極および負極の電極板がセパレータを挟んで積層されて成る素電池を、一軸に沿って移動可能に外装体に収容し、上記移動によって上記素電池が離接する上記外装体の内壁に設けられた電極端子と上記電極板とが電極タブによって電気的に接続されている電池であって、
上記移動によって上記素電池が上記外装体の内壁に最も接近した状態でも、上記素電池が上記外装体の内壁と接触しない位置に上記素電池を保持するとともに、上記移動によって上記素電池が上記外装体の内壁から最も離間した状態でも、上記電極タブによる電気的な接続を維持できる位置に上記素電池を保持する移動制御体を備え
上記移動制御体は、上記外装体に固定されている
ことを特徴とする電池。
【請求項3】
上記電極端子は、正極および負極がそれぞれ、上記移動によって上記素電池が離接する、対向する上記外装体の内壁の一方ずつに配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
上記電極端子は、正極および負極の両方が、上記移動によって上記素電池が離接する、対向する上記外装体の内壁の一方に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電池。
【請求項5】
上記外装体は金属製であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非水電解液二次電池等の電池の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池の分野では、近年のエネルギーデバイスの大容量化、低コスト化に伴い、単電池の大型化がなされてきている。
【0003】
非水電解液二次電池でも大型の場合、信頼性を向上させるため、樹脂フィルム等を主体とするラミネートシートで構成された外装体に代えて、金属缶を外装体として用いることが一般的である。
【0004】
セパレータを挟んで対向する正極板と負極板とから成る積層構造の素電池を外装体内に収容した電池において、電池が強い衝撃や振動を受けると、素電池が外装体内を移動し、出入力端子と素電池の電極端子との接続部分が切断されることがある。
【0005】
すなわち、素電池の移動が原因となって、素電池の電極端子と出入力端子との接続部分に屈伸や折り曲げ応力が働き、当該接続部分が切断されるのである。
【0006】
出入力端子と素電池の電極端子との接続部分の切断を防ぐための技術として、例えば、下掲の特許文献1に開示されている技術がある。
【0007】
特許文献1の技術は、ラミネート型電池について、正極、セパレータおよび負極を積層一体化した素電池の正、負極端子部にそれぞれ一端が溶接されたリード端子に略S字状折り曲げ部を設け、この略S字状折り曲げ部の屈伸変形で衝撃、振動による素電池の移動に起因した応力を吸収解消し、リード端子の切断を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−215877号公報(2000年8月4日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の従来技術を大型電池にそのまま適用した場合、S字状に折り曲げられたリード端子の構造のみによって、出入力端子と素電池の電極端子との接続部分の切断を防止することは困難であるという問題がある。
【0010】
上記問題の原因は、下記の2つの理由による。
【0011】
第1に、単電池の大型化により素電池が大重量化し、従って、大型単電池の場合、小型電池の場合に比べ、外装体内での素電池の移動は激しいものとなりやすいという理由である。
【0012】
素電池の重量が大きくなった分、リード端子に設けた略S字状折り曲げ部の屈伸あるいは変形のみによって、素電池の移動による応力を吸収することは困難となり、つまり、素電池の移動に伴うリード端子の切断や溶接剥離を防止することは困難になった。
【0013】
また当然、素電池の外装体内での移動を制御していたリード端子が切断され、または、リード端子の溶接が剥離することによって、外装体内の素電池の移動を制御できなくなる結果、素電池と外装体とが接触し、内部短絡が発生する虞がある。
【0014】
第2に、大型電池においては、一般に、ラミネートシートで構成された外装体ではなく、金属缶を外装体として用いるため、外装体内での素電池の移動が激しいものとなりやすいという理由である。
【0015】
ラミネートシートは樹脂フィルム主体の柔らかな素材であるため、電池に加わる外力全体のうち、ラミネートシートによって吸収される外力の割合は大きかった。
【0016】
これに対して、ラミネートシートに比べて硬い金属缶を外装体として用いる場合、外装体内の素電池には、外装体がラミネートシートで構成されている場合に比べて、電池に加わる外力全体のうち、より多くの割合の外力が加わる。
【0017】
また、樹脂フィルムに比べ金属板は滑りやすいため、特に金属缶の内面を樹脂等によってコーティングしていない場合、金属缶の内面に接触するのがセパレータであったとしても、金属缶内での素電池の移動は激しいものとなりやすい。
【0018】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型電池であって、出入力端子と素電池との断線を防ぎ、併せて、素電池と外装体との接触による内部短絡を防止する電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明に係る電池は、
(A)正極および負極の電極板がセパレータを挟んで積層されて成る素電池を、一軸に沿って移動可能に外装体に収容し、上記移動によって上記素電池が離接する上記外装体の内壁に設けられた電極端子と上記電極板とが電極タブによって電気的に接続されている電池であって、
(B)上記移動によって上記素電池が上記外装体の内壁に最も接近した状態でも、上記素電池が上記外装体の内壁と接触しない位置に上記素電池を保持するとともに、上記移動によって上記素電池が上記外装体の内壁から最も離間した状態でも、上記電極タブによる電気的な接続を維持できる位置に上記素電池を保持する移動制御体を備える
ことを特徴としている。
【0020】
上記の構成によれば、素電池は外装体内を動くことができるので、素電池は、電池に加えられた衝撃を、外装体内を移動することによって、緩やかに吸収し、素電池自体が直接、電池に加えられた衝撃を全て受けてしまうことがない。これにより、素電池に大きな力が加わることによって、素電池内で積層ずれが発生し、正極板と負極板とが短絡を起こしてしまうという事態を回避することができる。
【0021】
また、上記の構成によれば、移動制御体によって、素電池が、外装体の内壁に最も接近した位置に移動した状態でも、外装体の内壁と接触しない位置に保持され、また、外装体の内壁から最も離間した位置に移動した状態でも、電極タブによる電気的な接続を維持できる位置に保持される。これにより、素電池と外装体との接触、つまり電池内部での短絡を防止することができる。
【0022】
さらに、上記の構成によれば、移動制御体が、外装体内の素電池の移動を制御するので、外装体内の素電池の移動を原因とする、正極タブおよび負極タブの切断を防ぐことができ、つまり、素電池と出入力端子との断線を防止することができる。
【0023】
また、外装体内には、素電池が移動することのできる空間が設けられているため、電池の電解液保液量が増加し、電池の長寿命化を期待することができる。
【0024】
さらに、本発明に係る電池は、上記移動制御体が、上記素電池に固定され、上記素電池と共に上記外装体内を移動することが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、さらに、素電池に固定された移動制御体が、電池内の断線および短絡を防止するとともに、外装体内を移動できることによって、素電池は、電池に加わる衝撃を穏やかに吸収することができる。
【0026】
さらに、上記の構成によれば、例えば薄板を移動制御体として素電池の表面に固定することによって、素電池が外装体の内面に接触して摩耗したり破損したりするのを防ぐことができるようになる。
【0027】
さらに、本発明に係る電池は、上記移動制御体が上記外装体に固定されていることが好ましい。
【0028】
上記の構成によれば、さらに、外装体に固定された移動制御体が、電池内の断線および短絡を防止するとともに、外装体内を移動できることによって、素電池は、電池に加わる衝撃を穏やかに吸収することができる。また、上記移動制御体を上記素電池に固定する場合に比べて、外装体内の容積を小さくできる。
【0029】
さらに、本発明に係る電池は、上記電極端子が、正極および負極がそれぞれ、上記移動によって上記素電池が離接する、対向する上記外装体の内壁の一方ずつに配設されていることが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、さらに、正極端子と負極端子とが、異なる2つの平面に配設されている電池において、電池に加えられた衝撃による素電池の破壊と、内部短絡および内部断線とを回避することができる。
【0031】
さらに、本発明に係る電池は、上記電極端子は、正極および負極の両方が、上記移動によって上記素電池が離接する、対向する上記外装体の内壁の一方に配設されていることが好ましい。
【0032】
上記の構成によれば、さらに、正極端子と負極端子とが1つの平面に配設されている電池において、電池に加えられた衝撃による素電池の破壊と、内部短絡および内部断線とを回避することができる。また、電極端子の正極および負極がそれぞれ対向する外装体の内壁の一方ずつに配設される場合に比べて、外装体内の容積を小さくできる。
【0033】
さらに、本発明に係る電池は上記外装体が金属製であることが好ましい。
【0034】
上記の構成によれば、さらに、電池に加えられた衝撃が素電池へと伝わりやすく、さらに、外装体内を素電池が激しく移動する傾向のある、金属缶を外装体として用いた電池においても、外装体内での素電池の移動を確保することによって、素電池が緩やかに衝撃を吸収し、素電池自体が破壊されてしまう可能性を軽減することができる。
【0035】
また、上記の構成によれば、移動制御体によって、電池内での切断および短絡を防止することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上のように、本発明に係る電池は、移動によって素電池が外装体の内壁に最も接近した状態でも、上記素電池が上記外装体の内壁と接触しない位置に上記素電池を保持するとともに、上記移動によって上記素電池が上記外装体の内壁から最も離間した状態でも、電極タブによる電気的な接続を維持できる位置に上記素電池を保持する移動制御体を備える構成である。
【0037】
それゆえ、素電池と外装体との接触、つまり電池内部での短絡を防止することができるという効果を奏する。また、外装体内の素電池の移動を原因とする、正極タブおよび負極タブの切断、つまり、素電池と出入力端子との断線を防止することができるという効果を奏する。また、外装体内には、素電池が移動することのできる空間が設けられているため、電池の電解液保液量が増加し、電池の長寿命化を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構造を示す、素電池の積層方向に沿って切断した断面図である。
図2図1に示した二次電池を、電極板と電極端子との接続が分かるように、素電池の積層方向から見下ろした時の概要図である。
図3】衝撃耐性実験を行った二次電池のサイズを整理した表である。
図4】衝撃耐性実験結果をまとめた表である。
図5】比較例1の実験結果を示す図である。
図6】比較例2の実験結果を示す図である。
図7】比較例3の実験結果を示す図である。
図8】比較例4の実験結果を示す図である。
図9】比較例5の実験結果を示す図である。
図10】比較例6の実験結果を示す図である。
図11】比較例7の実験結果を示す図である。
図12】比較例8の実験結果を示す図である。
図13】本発明の別の実施の形態に係る二次電池の構造を示す、素電池の積層方向に沿って切断した断面図である。
図14図13に示した二次電池を、電極板と電極端子との接続が分かるように、素電池の積層方向から見下ろした時の概要図である。
図15】本発明のさらに別の実施の形態に係る二次電池の構造を示す、素電池の積層方向に沿って切断した断面図である。
図16図15に示した二次電池を、電極板と電極端子との接続が分かるように、素電池の積層方向から見下ろした時の概要図である。
図17図15に示した二次電池の衝撃耐性を確認するための実験に用いた、二次電池のサイズを整理した表である。
図18図17に示した二次電池の衝撃耐性実験の結果をまとめた表である。
図19図15に示した二次電池の実験結果を示す図である。
図20図15に示した二次電池の比較例の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1図20に基づいて、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお説明の便宜のため、各図において、二次電池1の形状等を誇張して描くとともに、各辺の長さをa、b、c、d1、d2、e、f、g、hを用いて表し、単位はそれぞれ「ミリメートル」である。a、b、c、d1、d2、e、f、g、hがそれぞれ、どの辺の長さに該当するかについては後述する。
【0040】
(1)二次電池の概要
図1は、本発明の一実施の形態に係るリチウムイオン二次電池1の構造を示す、素電池の積層方向に沿って切断した断面図であり、図2は、二次電池1を素電池の積層方向から見下ろした時の概要図である。
【0041】
なお図2は、素電池1において、正極タブ(電極タブ)13および負極タブ(電極タブ)14が、それぞれ正極板(電極板)111と負極板(電極板)112とに接続していることを示している。なお、セパレータ110、正極板111および負極板112について、積層面の長辺および短辺の長さは同じである。
【0042】
図1に示すように、二次電池1は、正極板111と負極板112との間にセパレータ110を挟んだ積層構造の素電池11と、素電池11の積層方向に垂直な2つの面にカプトンテープ18によって固定された薄板17・17´と、外装体12とを含む。ここで、素電池11は、外装体12内に、一軸に沿って移動可能に収容されている。そして、図1において素電池11の下方に設けられた薄板17(移動制御体)は、上記移動によって素電池11が外装体12の内壁に最も接近した状態でも、素電池11が外装体12の内壁と接触しない位置に素電池11を保持するとともに、上記移動によって素電池11が外装体12の内壁から最も離間した状態でも、電極タブ13・14による電気的な接続を維持できる位置に素電池11を保持する。
【0043】
正極板111は、外装体12の一方の側壁に形成されている正極端子(電極端子)15に、正極タブ13を介して接続されており、負極板112は、外装体12の他方の側壁に形成されている負極端子(電極端子)16に、負極タブ14を介して接続されている。
【0044】
以下、素電池11の各部について、サイズの一例を挙げながら説明する。積層面の長辺の長さaは335mmであり、短辺の長さは154mm、積層方向の厚さは5mmである。
【0045】
薄板17について、素電池11の上記長辺に対応する薄板17の長辺の長さbは365mmであり、短辺の長さは154mm、厚さは1mmである。
【0046】
薄板17´の、素電池11の積層面と平行な面のサイズは、素電池11の積層面のサイズと同じであり、長辺の長さは335mmであり、短辺の長さは154mmである。また、薄板17´の厚さは1mmである。
【0047】
同様に外装体12について、素電池11の上記長辺に対応する外装体12の長辺の長さcは375mmであり、短辺の長さは155mm、素電池11の積層方向に該当する、外装体12の高さは8mmである。
【0048】
素電池11の、積層面の長辺が、薄板17および外装体12の長辺に対応し、素電池11の短辺は薄板17および外装体12の短辺に対応し、素電池11の積層方向の厚さは薄板17および外装体12の厚さに対応している。
【0049】
素電池11にはカプトンテープ18によって薄板17・17´が固定されており、薄板17は、正極端子15側には、素電池11より15mm長く、負極端子16側には、素電池11より15mm長い。なお、素電池11と比べた正極端子15側の薄板17長さの差をeとし、負極端子16側の差をfとする。なお、図1に示すように、薄板17´は、素電池1の積層面の上側に、素電池1の積層面からはみ出す部分が無いように固定され、薄板17は、素電池1の積層面の下側に固定されている。
【0050】
素電池11の下面にカプトンテープ18によって固定された薄板17によって、素電池11は、薄板17が外装体12内を動ける範囲で、外装体12内を動くことができる。
【0051】
具体的には、素電池11は、積層面の長手方向に、「外装体12の長辺の長さ−薄板17の長辺の長さ」の分、つまり10mmの範囲で、外装体12内を動くことができる。
【0052】
また、上記のように、薄板17は、素電池11に対し、正極端子15側と負極端子16側とに、それぞれ15mm長いため、薄板17は、素電池11が外装体12の内壁に接触するのを防いでいる。
【0053】
なお、上記サイズ設定から明らかなように、素電池11の、積層方向での外装体12内の移動可能距離は、1mmであり、実質的に、外装体12内の積層方向での素電池11の移動は無視することができる。
【0054】
正極タブ13の長辺の長さd1は60mm、短辺の長さは30mm、厚さは100μmであり、負極タブ14の長辺の長さd2は60mm、短辺の長さは30mm、厚さは100μmである。
【0055】
正極板111の長手方向の一端に、正極タブ13の長手方向の一端が溶接され、正極タブ13の他端は、正極端子15に溶接されている。
【0056】
同様に、負極板112の長手方向の一端に、負極タブ14の長手方向の一端が溶接され、負極タブ14の他端は、負極端子16に溶接されている。
【0057】
ここで、上記のように、素電池11の長辺の長さは335mmであり、外装体12の長辺の長さは375mmであり、また、薄板17は、正極端子15側には、素電池11より15mm長く、負極端子16側には、素電池11より15mm長い。
【0058】
素電池11が外装体12内を最も負極端子16側に移動した場合、正極板111と正極端子15との距離は、最も離れ、その長さは、「外装体12の長辺−薄板17の長辺+正極端子15側の薄板17と素電池11との距離の差」であり、25mmである。
【0059】
正極タブ13の、正極端子15と正極板111とを結ぶ方向の長さは60mmであるため、素電池11が最も負極端子16側に移動した場合であっても、正極タブ13がこの移動によって切断されることはない。
【0060】
同様に、負極タブ14は、素電池11が最も正極端子15側に移動した場合であっても、この移動によって切断されることはない。
【0061】
なお、素電池11が外装体12のほぼ中央に位置している時、図1に示すように、正極タブ13および負極タブ14は略N字型に歪んでいる。
【0062】
これまで述べてきた内容をまとめると、二次電池1は下記の構造を有している。
【0063】
すなわち、第1に、素電池11は、正極端子15と正極板111とを結ぶ方向と、負極端子16と負極板112とを結ぶ方向とについて、素電池11よりも長く、外装体12よりも短い薄板17と固定されている。従って、素電池11は、薄板17と共に、正極端子15と正極板111とを結ぶ方向、または負極端子16と負極板112とを結ぶ方向に、外装体12内を移動することができる。
【0064】
つまり、端子接続方向に素電池11が、外装ケース12内を移動することができ、素電池11は電池1に加えられた衝撃を緩やかに吸収し、素電池11自体が直接、電池1に加えられた衝撃を受けることがない。これにより、素電池11に大きな力が加わることで、素電池11内で、積層ずれが発生し、正極板111と負極板112とが短絡を起こしてしまうという事態を回避することができる。
【0065】
第2に、正極端子15と正極板111とを結ぶ方向と、負極端子16と負極板112とを結ぶ方向とに、薄板17は素電池11よりも長い。従って、正極端子15と正極板111とを結ぶ方向と、負極端子16と負極板112とを結ぶ方向とについて、素電池11が外装体12内を移動しても、素電池11と外装体12とは接触することがなく、短絡の可能性を抑制することができる。
【0066】
第3に、正極タブ13は、「正極端子15と正極板111とを結ぶ方向における、外装体12の長さ−薄板17の長さ−正極端子15側の薄板17と素電池11との距離の差」以上の長さを、正極端子15と正極板111とを結ぶ方向に、有している。また、負極タブ14は、「負極端子16と負極板112とを結ぶ方向における、外装体12の長さ−薄板17の長さ−負極端子16側の薄板17と素電池11との距離の差」以上の長さを、負極端子16と負極板112とを結ぶ方向に、有している。
【0067】
従って、正極端子15と正極板111とを結ぶ方向、または負極端子16と負極板112とを結ぶ方向に、素電池11が、外装体12内を移動しても、この移動によって、正極タブ13および負極タブ14が切断されることはない。つまり、電池1において、外装体12内での素電池11の移動を原因とする内部断線を防止することができる。
【0068】
第4に、外部からの衝撃や振動により素電池11が外装体12内を動く際にも、薄板17は、素電池11が外装体12の内面に接触して摩耗したり破損したりするのを防ぐことができる。
【0069】
第5に、素電池11と外装体12との間に空間が設けられているため、二次電池1の電解液保液量が増加し、二次電池1の長寿命化を期待することができる。
【0070】
なお、a,b,c,d1,d2,e,fのそれぞれについて、再度整理しておくと、aとは、素電池11の長辺の長さであり、bとは、薄板17の長辺の長さであり、cとは、外装体12の長辺の長さである。また、d1とは、正極タブ13の正極端子15と正極板111とを接続する方向の長さであり、d2とは、負極タブ14の負極端子16と負極板112とを接続する方向の長さである。さらに、eとは、正極端子15側の、素電池11と薄板17との長辺の長さの差の大きさであり、fとは、負極端子16側の、素電池11と薄板17との長辺の長さの差の大きさである。
【0071】
(2)二次電池の製造方法
二次電池1は、例えば、以下の手順で作製することができる。
【0072】
(正極)
まず、正極活物質粉末を導電材、バインダー、増粘材、イオン交換水と攪拌しペーストを得る。なお、正極活物質粉末としては、住友大阪セメント製の鉄リン酸リチウム(LiFePO4)を、導電材としては、電気化学工業製の商品名「デンカブラック」を用い、バインダーはJSR製、増粘材は第一工業製薬製のものを用いることができる。
【0073】
その後、上記ペーストを圧延アルミニウム箔(厚さ:20μm)上にダイコーターを用いて両面に塗布し(乾燥電極厚:290μm)、空気中100℃で30分間乾燥し、プレス加工して正極板111(塗工面サイズ:300mm(縦)×150mm(横)、未塗工部:9mm(縦)×150mm(横))を得る。
【0074】
(負極)
まず、日立化成製の負極活物質粉末を、日本ゼオン製のバインダーと、ダイセル製の増粘材と、イオン交換水と攪拌しペーストを得る。
【0075】
その後、上記ペーストを、圧延銅箔(厚さ:10μm)上にダイコーターを用いて両面に塗布し(乾燥電極厚:180μm)、空気中100℃で30分間乾燥し、プレス加工して負極板112(塗工面サイズ:304mm(縦)×154mm(横)、未塗工部:9mm(縦)×154mm(横))を得る。
【0076】
(セパレータ)
セパレータ110には、セルガード社製の商品名「セルガード2500」を用いることができる。
【0077】
(タブ部)
アルミニウム箔(厚さ:100μm 幅:30mm)を60mmの長さにカットし、正極タブ13とする。ニッケル箔(厚さ:100μm 幅:30mm)を60mmの長さにカットし、負極タブ14とする。それぞれについて、外装体12と素電池11との間に収まり、かつ伸縮できるよう、略N字型に加工する。
【0078】
(薄板)
素電池11に固定する薄板17・17´として、厚み1mmのポリプロピレン製の板(以下、PP板と略記する)を用いることができる。薄板17・17´は、それぞれ、素電池11の上面と下面とに設置し、カプトンテープを用いて素電池11に固定する。
【0079】
(二次電池)
上記正極板111および負極板112を130℃で24時間減圧乾燥し、アルゴン雰囲気下のグローブボックス中に入れる。以下の電池組み立ては全て、上記グローブボックス内で、室温下で行う。
【0080】
9枚の正極板111と、10枚の負極板112と、セパレータ110とを用い、図1のように、一番外側にセパレータ110が来るようにし、次に負極板112を、さらにセパレータ110を介して正極板111を、という順序で積層させ、素電池11を形成する。
【0081】
正極板111の短辺の未塗工部に、上記アルミニウム製正極タブ13を、負極板112の短辺の未塗工部に、上記ニッケル製負極タブ14を、超音波溶接する。
【0082】
薄板17・17´の中心と素電池11の中心とが揃うようにして、素電池11の上面と下面とを薄板17・17´で挟みこみ、カプトンテープ18によって固定する。
【0083】
薄板17の固定された素電池11を、外装体12内に挿入する。
【0084】
その後、予め外装体12と絶縁するように外装体12の側壁に取り付けた正極端子15および負極端子16に、それぞれ、正極タブ13および負極タブ14の端を溶接し、最後に別途準備したアルミニウム缶用の蓋を用いて、外装体12を封止する。
【0085】
さらにエチレンカーボネート(EC、Ethylene Carbonate)とジエチルカーボネート(DEC、Diethyl Carbonate)を、体積比1:2で混合した溶媒に、1モル濃度のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた電解液を外装体12内へ真空注液し、図1のような20アンペア時の容量を有する大型蓄電池1を作製する。
【0086】
(3)比較例を用いた検証
本実施の形態に係る二次電池1の衝撃耐性を確認するため、実施例1、および比較例1から8に対し、正極端子15と正極板111とを結ぶ方向、または負極端子16と負極板112とを結ぶ方向から衝撃を加える実験を行った。
【0087】
図3は、衝撃耐性実験を行った、実施例1、および比較例1から8までの二次電池のサイズを整理した図であり、図4は、衝撃耐性実験結果をまとめた図である。
【0088】
図5〜12は、それぞれ、比較例1〜8の実験結果を示す図である。
【0089】
なお、実施例1とは、二次電池11を指すものであり、上記までの説明、および図4に示す衝撃耐性実験の結果からも明らかなように、実施例1は、内部断線および内部短絡の発生がなかった。
【0090】
また、比較例1から8は、それぞれ、薄板17の長辺の長さb、正極タブ13の長辺の長さd1、負極タブ14の長辺の長さd2、正極端子15側の、素電池11と薄板17との長辺の長さの差の大きさe、負極端子16側の、素電池11と薄板17との長辺の長さの差の大きさf、の少なくとも1つが、二次電池1とは異なる二次電池である。
【0091】
(比較例の内容)
図3に示すように、比較例1〜3は、それぞれ、正極タブ13、負極タブ14の少なくとも一方が、二次電池1、つまり実施例1の場合と比べて短く、20mmであるが、その他のサイズについては、実施例1と同じである。
【0092】
従って、比較例1〜3の素電池11が外装体12内を最も負極端子16側に移動した場合、正極板111と正極端子15との距離は、最も離れ、その長さは、「外装体12の長辺−薄板17の長辺+正極端子15側の薄板17と素電池11との距離の差」であり、25mmである。
【0093】
同様に、比較例1〜3の素電池11が外装体12内を最も正極端子15側に移動した場合、負極板112と負極端子16との距離は、最も離れ、その長さは、「外装体12の長辺−薄板17の長辺+負極端子16側の薄板17と素電池11との距離の差」であり、25mmである。
【0094】
比較例1の二次電池は、正極板111と正極端子15とを接続する正極タブ13の長さと、負極板112と負極端子16とを接続する負極タブ14の長さとが、ともに20mmである。
【0095】
比較例2の二次電池は正極タブ13のみが短く、比較例3の二次電池は負極タブ14のみが短い。
【0096】
図5の(A)に示すように、比較例1の二次電池は、素電池11が外装体12内の中央に位置する時には、正極タブ13と負極タブ14とはともに切断されておらず、正極板111と正極端子15との接続、および負極板112と負極端子16との接続に問題はない。
【0097】
しかし、(B)に示すように、素電池11が、外装体12内を正極端子15側に、つまり図の左側にずれた場合、上記のように、負極板112と負極端子16との距離は25mmとなり、20mmの長さの負極タブ14は切断される。
【0098】
同様に、(C)に示すように、素電池11が、外装体12内を負極端子16側に、つまり図の右側にずれた場合、上記のように、正極板111と正極端子15との距離は25mmとなり、20mmの長さの正極タブ13は切断される。
【0099】
なお、図5〜12において、(A)、(B)、(C)は、それぞれ、比較例1〜7の素電池11が、外装体12の「中央に位置する場合」、「正極端子15側(図の左側)にずれた場合」、「負極端子16側(図の右側)にずれた場合」を示している。
【0100】
正極タブ13の長さが20mmであり、負極タブ14は60mmである比較例2の二次電池は、図6に示すように、素電池11が、外装体12内の「中央に位置する場合」、「正極端子15側(図の左側)にずれた場合」には問題ない。
【0101】
しかし、「負極端子16側(図の右側)にずれた場合」、正極板111と正極端子15との距離は25mmとなり、20mmの長さの正極タブ13は切断される。
【0102】
同様に、正極タブ13の長さが60mmであり、負極タブ14は20mmである比較例3の二次電池は、図7に示すように、素電池11が、外装体12内の「中央に位置する場合」、「負極端子16側(図の右側)にずれた場合」には問題ない。
【0103】
しかし、「正極端子15側(図の左側)にずれた場合」、負極板112と負極端子16との距離は25mmとなり、20mmの長さの負極タブ14は切断される。
【0104】
なお、衝撃耐性実験の結果をまとめた図4に示すように、比較例1〜3の二次電池は、素電池11の積層面の長手方向について、素電池11よりも長い薄板17が素電池11に固定されているため、素電池11と外装体12との接触に伴う短絡は防止することができている。
【0105】
比較例4〜7は、実施例1に比べ、薄板17が、素電池11の積層面の長手方向に、素電池11よりも短い点が共通している。
【0106】
実施例1との違いについて、比較例4は、薄板17が素電池11よりも短く、比較例5は、さらに正極タブ13と負極タブ14とがともに短く、比較例6は、正極タブ13のみが短く、比較例7は、負極タブ14のみが短い。
【0107】
比較例4の二次電池について、正極タブ13および負極タブ14は、二次電池1と同様に60mmであり、従って、図8に示すように、素電池11が、外装体12の「中央に位置する場合」、「正極端子15側(図の左側)にずれた場合」、「負極端子16側(図の右側)にずれた場合」のいずれにおいても、切断されることはない。
【0108】
しかし、比較例4の二次電池について、薄板17は、素電池11の積層面の長手方向について、素電池11よりも短い。
【0109】
従って、比較例4において、素電池11が、素電池11の積層面の長手方向に、外装体12内を移動する場合、素電池11は外装体12の内壁と接触してしまい、短絡が発生した。
【0110】
比較例5の二次電池について、正極タブ13および負極タブ14は、比較例1と同様に、20mmである。従って、比較例1の場合と同様に、比較例5の二次電池は、素電池11が、外装体12の「正極端子15側(図の左側)」、または「負極端子16側(図の右側)」にずれた場合、負極タブ14または正極タブ13が切断される。
【0111】
また、比較例5の二次電池は、比較例4の場合と同様に、薄板17が、素電池11の積層面の長手方向について、素電池11よりも短い。
【0112】
従って、比較例5においても、素電池11が、素電池11の積層面の長手方向に、外装体12内を移動する場合、素電池11は外装体12の内壁と接触してしまい、短絡が発生する。
【0113】
比較例6の二次電池は、比較例2の場合と同様に、正極タブ13の長さが20mmであり、負極タブ14は60mmであり、また、比較例4の場合と同様に、薄板17が、素電池11の積層面の長手方向について、素電池11よりも短い。
【0114】
従って、比較例6の二次電池は、「負極端子16側(図の右側)にずれた場合」、正極板111と正極端子15との距離は25mmとなり、20mmの長さの正極タブ13は切断される。
【0115】
また、比較例6においても、素電池11が、素電池11の積層面の長手方向に、外装体12内を移動する場合、素電池11は外装体12の内壁と接触してしまい、短絡が発生する。
【0116】
比較例7の二次電池は、比較例3の場合と同様に、正極タブ13の長さが60mmであり、負極タブ14は20mmであり、また、比較例4の場合と同様に、薄板17が、素電池11の積層面の長手方向について、素電池11よりも短い。
【0117】
従って、比較例7の二次電池は、「正極端子15側(図の左側)にずれた場合」、負極板112と負極端子16との距離は25mmとなり、20mmの長さの負極タブ14は切断される。
【0118】
また、比較例7においても、素電池11が、素電池11の積層面の長手方向に、外装体12内を移動する場合、素電池11は外装体12の内壁と接触してしまい、短絡が発生する。
【0119】
比較例8の電池は、二次電池1に比べ、薄板17が、素電池11の積層面の長手方向に長く、比較例8の薄板17と外装体12とは、素電池11の積層面の長手方向について、同じ長さである。
【0120】
従って、薄板17に固定されている素電池11は、外装体12内を、素電池11の積層面の長手方向に移動することはなく、正極タブ13と負極タブ14の少なくとも一方が切断されることも、素電池11が外装ケース12に接触することもなかった。
【0121】
しかし、比較例8の電池に衝撃を与えた場合、素電池11は、外装体12内を移動することによって衝撃を緩やかに受け止めることができないため、素電池11自体が破損してしまうケースが観測された。具体的には、素電池11内で積層ずれが発生し、正極板111と負極板112との短絡が発生するケースが観測された。
【0122】
〔変形例1〕
(4)変形例の概要
二次電池1は、正極端子15と負極端子16とが、外装体12の対向する2つの平行面のそれぞれに設けていたが、本発明に係る二次電池は、正極端子と負極端子とが、外装体の1つの面に設けられていてもよい。
【0123】
本発明の別の実施の形態に係るリチウムイオン二次電池2は、正極端子15と負極端子16とが、外装体12の同じ側壁に設けられている。
【0124】
図13は、二次電池2の構造を示す、素電池の積層方向に沿って切断した断面図であり、図14は、二次電池2の構造を示す、素電池の積層方向から見下ろした時の概要図である。
【0125】
なお、図13において、正極端子15と負極端子とは上下の位置関係に立っているかのように描かれているが、実際には、正極端子15と負極端子とは同じ高さにあってもよく、図示のために上下の差を設けているに過ぎない。
【0126】
また、図14において、正極板111と負極板112とは、同一平面上で並置しているかのように見えるが、実際には、正極板111と負極板112とは、セパレータを介した積層構造を成している。
【0127】
二次電池2は、図13および図14に示すように、正極端子15と負極端子16とが、外装体12の1つの側壁に設けられているが、この点を除けば、二次電池1とに違いはない。
【0128】
〔変形例2〕
(5)変形例の概要
図15は、本発明のさらに別の実施の形態に係るリチウムイオン二次電池3の構造を示す、素電池の積層方向に沿って切断した断面図であり、図16は、二次電池3の構造を示す、素電池の積層方向から見下ろした時の概要図である。
【0129】
二次電池3は、素電池11の外装体12内での移動を制御するために、薄板17の代わりに、樹脂製のストッパー(移動制御体)19を外装体12内に備えている。
【0130】
ストッパー19と正極端子15の配置されている外装体12の側壁と間の距離gは5mmであり、ストッパー19と負極端子16の配置されている外装体12の側壁と間の距離hは5mmである。
【0131】
素電池11および外装体12のサイズは、二次電池1と同じである。つまり、素電池11の積層面の長手方向について、外装体12の長さcは375mmであり、素電池11の長さbは335mmである。
【0132】
従って、素電池11の積層面の長手方向について、「外装体12の長さc−素電池11の長さb−正極端子15側のストッパー19と正極端子15の配置されている外装体12の側壁と間の距離g」は、35mmである。
【0133】
つまり、素電池11が外装体12内を最も負極端子16側に移動した場合、正極端子15と正極板111との距離は最大となり、35mmとなる。
【0134】
同様に、素電池11の積層面の長手方向について、「外装体12の長さc−素電池11の長さb−負極端子16側のストッパー19と負極端子16の配置されている外装体12の側壁と間の距離g」は、35mmである。
【0135】
つまり、素電池11が外装体12内を最も正極端子15側に移動した場合、負極端子16と負極板112との距離は最大となり、35mmとなる。
【0136】
正極タブ13および負極タブ14は、素電池11が外装体12内を、素電池11の積層面の長手方向に移動しても切断されないように、それぞれ、素電池11の積層面の長手方向に、60mmの長さを有する。
【0137】
(6)変形例の検証
二次電池3の衝撃耐性を確認するため、上記衝撃耐性実験と同様の、つまり、正極端子15と正極板111とを結ぶ方向、または負極端子16と負極板112とを結ぶ方向からの衝撃を、二次電池3および二次電3に類似する電池に加える実験を行った。
【0138】
図17は、実験に用いた二次電池のサイズを整理した図であり、実施例2とは二次電池3を指す。また、比較例9は、二次電池3の正極タブ13および負極タブ14のサイズのみを変更し、30mmとした二次電池である。
【0139】
図18は、上記衝撃耐性実験の結果をまとめた図である。
【0140】
図19は、実施例2の、つまり二次電池3の実験結果を示す図であり、図20は、比較例9の実験結果を示す図である。
【0141】
上記のように、正極タブ13は、素電池11の積層面の長手方向に、60mmの長さを有し、正極端子15と正極板111との距離は、最大でも35mmである。
【0142】
従って、図19に示すように、素電池11の外装体12内の移動によって、正極タブ13が切断されることはない。
【0143】
同様に、負極タブ14は、素電池11の積層面の長手方向に、60mmの長さを有し、負極端子16と負極板112との距離は、最大でも35mmであるため、素電池11の外装体12内の移動によって、負極タブ14が切断されることはない。
【0144】
また、素電池11の積層面の長手方向について、素電池11と外装体12との間に存在するストッパー19によって、素電池11と外装体12とが接触することはない。
【0145】
実施例9の電池について、正極タブ13は、素電池11の積層面の長手方向に、30mmの長さを有し、正極端子15と正極板111との距離は、最大で35mmである。
【0146】
同様に、負極タブ14は、素電池11の積層面の長手方向に、30mmの長さを有し、負極端子16と負極板112との距離は、最大で35mmである。
【0147】
従って、図20に示すように、素電池11が外装体12内を負極端子16側に移動するによって、正極タブ13は切断され、素電池11が外装体12内を正極端子15側に移動するによって、負極タブ14は切断される。
【0148】
ただし、素電池11の積層面の長手方向について、素電池11と外装体12との間に存在するストッパー19によって、素電池11と外装体12とが接触することはない。
【0149】
二次電池1および2について、薄板17・17´が、素電池11の上面と下面の両方に固定されているとしてきたが、薄板17によって、外装体12内での素電池11の移動を制御できればよく、素電池11の上面と下面のいずれかに一方にのみ、薄板17が固定され、薄板17´は固定されていないとしてもよい。
【0150】
同様に、素電池11の上面と下面とに固定されている薄板17・17´は、同じ大きさであってもよい。その場合、薄板17と17´とが、外装体12内の素電池の移動を制御する。
【0151】
薄板17についてはさらに、エネルギー効率の観点から、薄板17は硬くて軽い材質のものであればよく、PP板に限られない。また、セパレータ110によって、素電池11と外装ケース12との絶縁は既に確保されているため、薄板17について、絶縁性は必須の性質ではない。しかし、薄板17は絶縁性を有していてもよい。
【0152】
薄板17と同様に、ストッパー19もまた、外装体12の上面と下面の両方に固定されている必要はなく、どちらか1つの面にだけ固定されているのでもよい。また、上面に固定されているストッパー19と下面に固定されているストッパー19とが、正極端子15の設けられている側壁および負極端子16の設けられている側壁から同じ距離で離れていなければならない訳ではない。
【0153】
以上に述べた本発明に係る二次電池の具体例について、下記に整理する。
【0154】
本発明に係る電池は、セパレータを挟んで対向する正極板と負極板とから成る積層構造の素電池と、素電池の積層面に固定された移動制御体としての薄板と、素電池および薄板を収容する外装体と、外装体の2つの平行する壁面のそれぞれに設けられた正極端子および負極端子と、素電池の正極板および負極板を正極端子および負極端子へとそれぞれ電気的に接続する正極タブおよび負極タブとを含み、正極端子および負極端子が設けられた、外装体の2つの平行する壁面は、素電池の積層面に平行せず、壁面に直交する方向について、薄板は、素電池よりも、正極端子側と負極端子側の両側において長く、さらに、薄板は外装体よりも短く、壁面に直交する方向について、正極タブは、壁面に直交する方向の「外装体の長さ−薄板の長さ+正極端子側における薄板と素電池との間の距離」以上の長さを有し、壁面に直交する方向について、負極タブは、壁面に直交する方向の「外装体の長さ−薄板の長さ+負極端子側における薄板と素電池との間の距離」以上の長さを有するものであってもよい。
【0155】
本発明に係る電池は、セパレータを挟んで対向する正極板と負極板とから成る積層構造の素電池と、素電池の積層面に固定された移動制御体としての薄板と、素電池および薄板を収容する外装体と、正極端子および負極端子と、正極板および負極板を正極端子および負極端子へとそれぞれ電気的に接続する正極タブおよび負極タブとを含み、正極端子および負極端子は、素電池の積層面と平行ではない、外装体の1つに壁面の設けられており、壁面に直交する方向について、薄板は、素電池よりも、壁面側と壁面と平行な外装体の他方の壁面側の両側において長く、さらに、薄板は外装体よりも短く、壁面に直交する方向について、正極タブおよび負極タブは、壁面に直交する方向の「外装体の長さ−薄板の長さ+壁面側における薄板と素電池との間の距離」以上の長さを有するものであってもよい。
【0156】
本発明に係る電池は、セパレータを挟んで対向する正極板と負極板とから成る積層構造の素電池と、素電池を収容する外装体と、外装体の、素電池の積層面に平行な面の内側に移動制御体として固定されたストッパーと、外装体の2つの平行する壁面のそれぞれに設けられた正極端子および負極端子と、正極板および負極板を当該正極端子および負極端子へとそれぞれ電気的に接続する正極タブおよび負極タブとを含み、正極端子および負極端子が設けられた、外装体の2つの平行する壁面は素電池の積層面に平行せず、ストッパーは、正極端子が設けられている壁面の内側と素電池との間と、負極端子が設けられている壁面の内側と素電池との間とに固定されており、壁面に直交する方向について、正極タブは、壁面に直交する方向の「外装体の長さ−素電池の長さ−ストッパーの内、負極側にあるストッパーと負極端子が設けられている壁面との間の距離」以上の長さを有し、壁面に直交する方向について、負極タブは、壁面に直交する方向の「外装体の長さ−素電池の長さ−ストッパーの内、正極側にあるストッパーと負極端子が設けられている壁面との間の距離」以上の長さを有するものであってもよい。
【0157】
本発明に係る電池は、セパレータを挟んで対向する正極板と負極板とから成る積層構造の素電池と、素電池を収容する外装体と、外装体の当該素電池の積層面に平行な面の内側に移動制御体として固定されたストッパーと、正極端子および負極端子と、正極板および負極板を正極端子および負極端子へとそれぞれ電気的に接続する正極タブおよび負極タブとを含み、正極端子および負極端子は、素電池の積層面と平行ではない、外装体の1つに壁面の設けられており、ストッパーは、正極端子および負極端子が設けられている壁面の内側と素電池との間と、正極端子および負極端子が設けられている壁面と平行である、外装体の他方の壁面の内側と素電池の間とに固定されており、正極端子および負極端子が設けられている壁面に直交する方向について、正極タブおよび負極タブは、正極端子および負極端子が設けられている壁面に直交する方向の「外装体の長さ−素電池の長さ−ストッパーの内、正極端子および負極端子が設けられている壁面側にあるストッパーと壁面との間の距離」以上の長さを有するものであってもよい。
【0158】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明は、出入力端子と素電池との断線を防ぎ、併せて、素電池と外装体との接触による内部短絡を防止する電池を実現するものであるため、電池全般に広く利用できるものであり、特に、外装体として金属缶を用いた大型のリチウムイオン二次電池に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0160】
1 電池
11 素電池
12 外装体
13 正極タブ(電極タブ)
14 負極タブ(電極タブ)
15 正極端子(電極端子)
16 負極端子(電極端子)
17 薄板(移動制御体)
19 ストッパー(移動制御体)
110 セパレータ
111 正極板(電極板)
112 負極板(電極板)
図1
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