特許第6045878号(P6045878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045878
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/05 20140101AFI20161206BHJP
【FI】
   H01L31/04 570
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-233169(P2012-233169)
(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公開番号】特開2014-86510(P2014-86510A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中北 和徳
(72)【発明者】
【氏名】熱田 直行
【審査官】 金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−105876(JP,A)
【文献】 特開2009−010355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04 − 31/056
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の太陽電池セルと他の太陽電池セルとの縁部同士が上下に重なり合う重ね合わせ部を形成し、この重ね合わせ部が接合されることにより形成される太陽電池モジュールであって、
前記重ね合わせ部には、一の太陽電池セルの表面側の縁部と他の太陽電池セルの裏面側の縁部とを電気的に接続する接合材が設けられ、
前記接合材よりもさらに太陽電池セルの縁端側には、一定厚みの絶縁テープが重ね合わせ部の延びる方向に沿って設けられており、
前記絶縁テープの厚みは、重ね合わせ部を形成する一の太陽電池セルと他の太陽電池セルとのギャップ高さに設定され、
前記太陽電池セルは、導電性基板上に、下部電極層、半導体層、上部電極層がこの順で積層されて形成されており、前記絶縁テープは、太陽電池セルの表面を形成する上部電極層から太陽電池セルの側面を形成する上部電極層、半導体層、下部電極層、及び、導電性基板の一部を覆うように設けられていること
を特徴とする太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の太陽電池用のセルをそれぞれの縁部同士が上下に重なるようにして配列された太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールとして、細長い短冊状の太陽電池用のセルを複数枚並べて接続したスラット構造のものが知られており(例えば、特許文献1参照)、この太陽電池モジュールは、例えば、以下のようにして製造される。
【0003】
帯状の金属材料の基材上に光電変換層等の各種製膜層の形成を行った後、所定長さに切断し、細長い短冊状の太陽電池用のセル(太陽電池セル。単にセルともいう。)を得る。そして、この太陽電池セルを複数枚、隣り合う太陽電池セルの長辺側の縁部同士が重なるようにしてステージ上に並べ、重ね合わせた縁部同士を接合し、1枚の太陽電池モジュールとしている。このようにして製造された太陽電池モジュールは、複数枚の太陽電池セルが電気的に直列接続された状態になり、実用的な電圧を得ることができる。
【0004】
太陽電池モジュールMは、例えば図5に示すように、太陽電池セル100の縁部105同士が重なり合う重ね合わせ部101を有しており、この重ね合わせ部101は、太陽電池セル100の縁端部の短絡を防止する絶縁性樹脂102と、両セル同士を導通させる接合材103とが塗布されて形成される。接合材103は、例えば、クリーム半田、導電性接着剤等が用いられており、一の太陽電池セル100の製膜層に短絡防止用のスクライブ処理(スクライブ溝104の形成)を行った後、太陽電池セル100の製膜層上に長手方向に沿って一様に塗布される。そして、接合材103が塗布された一の太陽電池セル100の縁部105(表面側)と、他の太陽電池セル100の縁部105(裏面側)とが上下に重なり合う重ね合わせ部101を形成しつつ貼り合わされる。
【0005】
ここで、接合材103は、その材料特性により接着力が有効に作用する接合間距離α(有効接着距離α)がおおよそ決まっており、接合間距離αを太陽電池セル100の長手方向に一様に保つ必要がある。そのため、接合材103には、固形の微小粒体であるガラスビーズが混入されており、接合材103が塗布されることにより、このガラスビーズが両セル間に介在し、両セル間の接合間距離αが保たれるようになっている。そして、セルの縁端部の短絡を防止する絶縁性樹脂102が塗布された後、加熱処理されることにより太陽電池セル100同士の接合が行われ、太陽電池モジュールMが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−010355
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記太陽電池モジュールMでは、接合間距離αの維持を接合材103にガラスビーズを混入させて行っているため、その準備工程が煩雑になるという問題があった。すなわち、両セルの距離αを長手方向に亘って一様に保つ必要があるため、ガラスビーズを長手方向に亘って均一に分散させて塗布する必要がある。そのため、接合材103塗布器に接合材103を充填させる準備工程において、接合材103中のガラスビーズが接合材103中で均一に分散するように混入させる必要があり、このガラスビーズを接合材103に均一に混入させる作業が煩わしいという問題がある。
【0008】
また、接合材103中のガラスビーズにより接合材103塗布器のノズルが詰まりやすいという問題があり、このノズル詰まりにより、接合材103が均一に塗布されない問題や、接合材103が塗布器から吐出されないという問題が生じる場合がある。
【0009】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、隣り合う太陽電池セル同士の接合間距離を容易に制御、維持することができる太陽電池モジュールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明の太陽電池モジュールは、一の太陽電池セルと他の太陽電池セルとの縁部同士が上下に重なり合う重ね合わせ部を形成し、この重ね合わせ部が接合されることにより形成される太陽電池モジュールであって、前記重ね合わせ部には、一の太陽電池セルの表面側の縁部と他の太陽電池セルの裏面側の縁部とを電気的に接続する接合材が設けられ、前記接合材よりもさらに太陽電池セルの縁端側には、一定厚みの絶縁テープが重ね合わせ部の延びる方向に沿って設けられており、前記絶縁テープの厚みは、重ね合わせ部を形成する一の太陽電池セルと他の太陽電池セルとのギャップ高さに設定され、前記太陽電池セルは、導電性基板上に、下部電極層、半導体層、上部電極層がこの順で積層されて形成されており、前記絶縁テープは、太陽電池セルの表面を形成する上部電極層から太陽電池セルの側面を形成する上部電極層、半導体層、下部電極層、及び、導電性基板の一部を覆うように設けられていることを特徴としている。
【0011】
上記太陽電池モジュールによれば、重ね合わせ部に接合材と、この接合材よりもさらに縁端側に一定厚みの絶縁テープが重ね合わせ部の延びる方向に沿って設けられているため、太陽電池セルの縁端部の絶縁性が保たれると共に、重ね合わせ部における一の太陽電池セルと他の太陽電池セルとの接合間距離が重ね合わせ部の長手方向に亘って一様に保たれる。したがって、接合材に混入されたガラスビーズにより両セル同士の接合間距離を維持していた従来に比べて、塗布器に接合材を充填させる準備工程が不要になり、ノズル詰まりにより接合材が塗布されないという問題を回避することができ、隣り合う太陽電池セル同士の接合間距離を容易に制御、維持することができる。
【0013】
そして、絶縁テープの厚みがギャップ高さに設定されているため、絶縁テープの厚みを調節することにより、接合材に最適な接合間距離を調節することができる。
【0015】
また、絶縁テープにより太陽電池セルの側面を形成する上部電極層、半導体層、下部電極層、及び、導電性基板の一部が覆われるため、重ね合わせ部を構成する他の太陽電池セルが太陽電池セルの側面に接触して短絡することを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の太陽電池モジュールによれば、隣り合う太陽電池セル同士の接合間距離を容易に制御、維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態における太陽電池モジュールの構成を示す概略図である。
図2】上記太陽電池モジュールの要部拡大図である。
図3】重ね合わせ部を重ね合わせ方向から見た図である。
図4】他の実施形態における太陽電池モジュールの要部拡大図である。
図5】従来の太陽電池モジュールの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の太陽電池モジュールの実施の形態について図面を用いて説明する。
【0019】
ここで、図1は、本実施形態における太陽電池モジュールの構成を示す概略図であり、図2は、その要部拡大図、図3は、重ね合わせ部を重ね合わせ方向から見た図である。
【0020】
図1図3に示すように、太陽電池モジュール1は、受光した光から電流を発生させる太陽電池部10と、この太陽電池部10の両端に接続される外部電極3と、太陽電池部10と外部電極3の一部を覆うカバー部材4とを有しており、太陽電池部10及び外部電極3がこれらの配列方向と直交する方向の両面側からカバー部材4で挟まれることにより一体的に形成されている。具体的には、両カバー部材4の間には、太陽電池部10及び外部電極3を配置させた状態でEVA5(エチレン−酢酸ビニル共重合体)が充填されており、外部電極3の一部が突出した状態でシート状に一体的に形成されている。
【0021】
太陽電池部10は、複数の太陽電池セル2が配列されて形成されており、具体的には、一の太陽電池セル2と他の太陽電池セル2とが、お互いの縁部2a同士が上下に重なり合う重ね合わせ部6を形成し、図2に示す例では、この重ね合わせ部6で隣り合う太陽電池セル2が3つ連結されている。すなわち、この重ね合わせ部6で電気的に接続されることにより、全ての太陽電池セル2が電気的に直列接続された状態になっている。そして、両端部分に配置される太陽電池セル2と外部電極3とが電気的に接続されていることにより、太陽電池セル2で発生した電流を外部電極3から外部に取り出せるようになっている。なお、本実施形態では、太陽電池モジュール1として、太陽電池セル2が3つ連結されている例について説明するが、太陽電池セル2が3つ以上連結されたものであってもよい。
【0022】
太陽電池セル2は、太陽光等の光を受光することにより発電するものであり、太陽電池を構成する最小単位のユニットである。この太陽電池セル2は、短冊状に形成されており、その縁部2aが長尺寸法と短尺寸法を有する略長方形に形成されている。本実施形態では、単に縁部2aと記載した場合は、長尺寸法側の縁部2aを指すものとする。すなわち、重ね合わせ部6では、太陽電池セル2の長尺寸法側の縁部2a同士が重なり合って電気的に接続されている。
【0023】
太陽電池セル2は、導電性基板21上に、下部電極層22、光電変換層23、上部電極層24がこの順に積層されて構成される製膜部25が形成されている。すなわち、太陽光等の光を受光すると、上部電極層24を透過した光が光電変換層23で電気エネルギーに変換されることにより発電される。この光電変換層23で発生した電気エネルギーは、上部電極層24と導電性基板21に導体を連結することにより電流として取り出すことができる。そして、隣り合う太陽電池セル2同士において、一方の太陽電池セル2の表面側の縁部2a(上部電極層24の縁部2a)と、他方の太陽電池セル2の裏面側の縁部2a(導電性基板21の縁部2a)とが連結されることにより、隣り合う太陽電池セル2同士を直列に接続し、1枚の太陽電池セル2よりも大きな起電力(電圧)を得ることができる。また、太陽電池セル2の縁部2aには、スクライブ溝26が形成されており、このスクライブ溝26により製膜部25と導電性基板21との短絡が防止される。
【0024】
重ね合わせ部6は、隣り合う太陽電池セル2同士を電気的に接続する部分である。すなわち、一の太陽電池セル2と他の太陽電池セル2との縁部2a同士が上下に重なり合う状態を形成し、両セル同士の間に接合材7を介在させることにより両セル同士が電気的に接続される。具体的には、接合材7がスクライブ溝26よりも太陽電池セル2の中央側に塗布されており、この接合材7により一の太陽電池セル2の上部電極層24と他の太陽電池セル2の導電性基板21とが接続される。接合材7には、クリーム半田、導電性接着剤が使用される。この接合材7には、従来のように一の太陽電池セル2と他の太陽電池セル2との距離を調節するガラスビーズのような隙間調整部材は混入されておらず、あくまで通電性と接合性を有する材料で形成されている。このような接合材7が、スクライブ溝26よりも中央側に太陽電池セル2の縁部2aが延びる方向に沿って一様に塗布されることにより、隣り合う太陽電池セル2同士が接合され、電気的に接続される。
【0025】
また、太陽電池セル2の縁部2aには、絶縁テープ8が設けられている。この絶縁テープ8は、絶縁性を有しており、一定幅に形成されたテープである。この絶縁テープ8は、隣り合う太陽電池セル2同士の短絡を防止するためのものである。この絶縁テープ8は、接合材7が塗布される位置よりも縁端側に設けられており、太陽電池セル2の縁部2aが延びる方向に沿って一様に貼付けられている。本実施形態では、上部電極層24上にスクライブ溝26を跨ぐ状態で貼付けられており、さらにその位置から、太陽電池セル2の側面、すなわち、製膜部25全体と、導電性基板21の一部が覆われるように貼付けられている。このように絶縁テープ8が貼付けられていることにより、一方の太陽電池セル2の導電性基板21が変形して、他方の製膜部25又は導電性基板21に接触して短絡することが防止される。なお、図2に示す例では、導電性基板21の側面の一部を覆うことにより、方の太陽電池セル2の導電性基板21と他の導電性基板21との接触を防止しているが、導電性基板21の側面全てを絶縁テープ8で覆うことにより確実に短絡を防止してもよい。
【0026】
また、絶縁テープ8が設けられることにより、一方の太陽電池セル2と他方の太陽電池セル2とのギャップg(ギャップ高さg)を一定に保つことができる。この絶縁テープ8は、その厚みが長手方向にほぼ均一に形成されているため、上部電極層24上に貼付けらると、一方の太陽電池セル2と他方の太陽電池セル2との間に絶縁テープ8が介在することにより、ほぼ絶縁テープ8の厚みのギャップgを形成することができる。ここで、接合材7は、その材料特性により接着力が有効に作用する接合間距離(有効接着距離)がおおよそ決まっている。そこで、絶縁テープ8の厚みをこの接合材7の有効接着距離に合わせておくことにより、一方の太陽電池セル2と他方の太陽電池セル2との間に絶縁テープ8を介在させて重ね合わせることにより、形成される重ね合わせ部6の長手方向に亘って有効接着距離が保たれ、長手方向に亘って安定した接着力を得ることができる。すなわち、この絶縁テープ8の厚みを調節することにより、重ね合わせ部6における一方の太陽電池セル2と他方の太陽電池セル2との隙間(ギャップg)を調節し、使用する接合材7の有効接着距離を容易に設定することができる。
【0027】
上記実施形態における太陽電池モジュール1によれば、重ね合わせ部6に接合材7と、この接合材7よりもさらに縁端側に一定厚みの絶縁テープ8が重ね合わせ部6の延びる方向に沿って設けられているため、太陽電池セル2の縁部2aの絶縁性が保たれると共に、重ね合わせ部6における一の太陽電池セル2と他の太陽電池セル2との接合間距離が重ね合わせ部6の長手方向に亘って一様に保たれる。したがって、接合材7に混入されたガラスビーズにより両セル2同士の接合間距離を維持していた従来に比べて、塗布器に接合材7を充填させる準備工程が不要になり、塗布器のノズル詰まりにより接合材7が塗布されないという問題を回避することができ、隣り合う太陽電池セル2同士の接合間距離を容易に制御、維持することができる。
【0028】
また、上記実施形態では、絶縁テープ8が太陽電池セル2の上部電極層24上から側面を覆うように貼付けられているが、図4に示すように、一方の太陽電池セル2の裏面に延びるように貼付けられる構成であってもよい。この構成によれば、一の太陽電池セル2と他の太陽電池セル2の接合を接合材7だけでなく、絶縁テープ8の粘着力で補強できるため、隣り合う太陽電池セル2同士の接合力を強固にすることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 太陽電池モジュール
2 太陽電池セル
2a 縁部
6 重ね合わせ部
7 接合材
8 絶縁テープ
図1
図2
図3
図4
図5