(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される実施の形態について概要を説明する。実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面中の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0015】
〔1〕<駆動パルスの両エッジで取得した検出信号を絶対値的に積み上げる>
半導体装置(101,102)は、複数の駆動電極(Ym:Y1〜YM)と複数の検出電極(Xn:X1〜XN)との交差部に容量成分が形成されたタッチパネル(1)に接続されるタッチパネルコントローラ(3)を有する。前記タッチパネルコントローラは、前記複数の駆動電極に接続される複数の駆動端子(PY1〜PYM)と、前記駆動端子から駆動パルスを出力する駆動回路(300)と、前記複数の検出電極に接続される複数の検出端子(PX1〜PXN)と、前記駆動パルスの変化に同期して前記検出端子から複数回入力される信号を積み上げて検出データを生成する検出回路(310)と、前記駆動回路及び検出回路を用いてタッチ・非タッチの検出動作を制御する制御回路(308)と、を有する。前記検出回路は、前記駆動パルスの立ち上がり変化と立ち下がり変化の夫々に同期して前記検出端子から複数回入力される交互に変化の極性が異なる信号を絶対値的に積み上げて検出データを生成する両エッジ検出モードを有する。
【0016】
これによれば、両エッジ検出モードを用いることにより、駆動パルスの片エッジだけで検出動作を行う場合に比べて、同じ時間内では信号に積み上げ回数を増やすことができ、同じ積み上げ回数を得る場合には検出動作時間を短縮することができる。したがって、タッチパネルによるタッチ検出動作時間の短縮とタッチ検出精度の向上に寄与する。
【0017】
〔2〕<切り替えスイッチ>
項1において、前記検出回路は、前記検出端子から入力する信号を積分する積分回路(301)と、前記積分回路で積分されたアナログ信号をディジタル信号に変換して前記検出データとするアナログ・ディジタル変換回路(304)とを有する。前記積分回路は、オペアンプ(AMPit)と、積分容量(Cs)と、オペアンプの反転入力端子と出力端子との間で前記積分容量の接続を切り替えるスイッチ回路(CFA1,CFA2,CFB1,CFB2)とを有する。前記制御回路は、前記駆動パルスの変化の直前に前記スイッチ回路の接続を切り替える。
【0018】
これによれば、駆動パルスの立ち上がりと立ち下がりでは駆動電極に容量結合された検出電極に現れる信号は増加方向と減少方向に変化することになり、これを信号成分として絶対値的に積み上げる操作を、積分回路の入力と出力との間での積分容量の接続切り替えという簡単な構成により容易に実現することができる。
【0019】
〔3〕<積分出力電圧の初期値>
項2において、タッチ・非タッチの検出動作における前記積分回路の出力端子の初期電圧は前記アナログ・ディジタル変換回路の入力レンジの中央値寄りの電圧とされる。
【0020】
これによれば、検出電極に対する駆動電圧を片エッジ検出の場合に比べて大凡半分にすることができるから、表示パネルの表示セルが接続するコモン電極と検出電極との間で形成される電界が小さくなる。例えばIPS(登録商標)方式構成の液晶パネルの場合には当該パネルの厚み方向の電界が小さくなるので、その電界によって液晶のシャッタ機能を阻害する事態の防止に役立つ。
【0021】
〔4〕<駆動パルスの立ち下がりで駆動終了したときのタッチ時と非タッチ時の積分値>
項3において、タッチにより交差部の容量成分が小さくなったとき駆動パルスで駆動電極を複数パルス数駆動しその立ち下がりで駆動を終了することによって積分回路に得られる信号電圧は前記アナログ・ディジタル変換回路の入力レンジの上限値以下とされる。非タッチにより交差部の容量成分が小さくならなかったとき駆動パルスで駆動電極を複数パルス数駆動しその立ち下がりで駆動を終了することによって積分回路に得られる信号電圧は前記タッチ時の信号電圧よりも低い電圧とされる。
【0022】
これによれば、タッチと非タッチの積分電圧値の差を、片エッジ検出モードの場合と比べて、大凡その2倍とすることが可能になる。
【0023】
〔5〕<駆動パルスの立ち上がり駆動終了したときのタッチ時と非タッチ時の積分値>
項3において、タッチにより交差部の容量成分が小さくなったとき駆動パルスで駆動電極を複数パルス数駆動しその立ち上がりで駆動を終了することによって積分回路に得られる信号電圧は前記アナログ・ディジタル変換回路の入力レンジの下限値以上とされる。非タッチにより交差部の容量成分が小さくならなかったとき駆動パルスで駆動電極を複数パルス数駆動しその立ち上がりで駆動を終了することによって積分回路に得られる信号電圧は前記タッチ時の信号電圧よりも高い電圧とされる。
【0024】
これによれば、タッチと非タッチの積分電圧値の差を、片エッジ検出モードの場合と比べて、大凡その2倍とすることが可能になる。項4よりも大きな積分信号値を得ることができる。
【0025】
〔6〕<駆動パルスの立ち下がり駆動終了モードと駆動パルスの立ち上がり駆動終了モード>
項3において、前記駆動パルスの立ち上がりで駆動パルスによる駆動を終了する第1駆動終了モードと、前記駆動パルスの立ち下がりで駆動パルスによる駆動を終了する第2駆動終了モードとの何れを選択するかを指示する指示部を有する。
【0026】
これによれば、駆動動作選択の幅が広がる。
【0027】
〔7〕<モードレジスタ>
項6において、前記指示部は前記制御回路に設けられた書き換え可能なレジスタである。
【0028】
これによれば、第1駆動終了モード又は第2駆動終了モードの選択をソフトウェアを介して行うことができる。
【0029】
〔8〕<表示パネルコントローラ>
項3において、複数の走査電極(G1〜G640)と複数の信号電極(D1〜D1440)との交差部分に液晶表示セル(LCD)が配置された表示パネル(2)の前記走査電極に走査パルスを出力し前記信号電極に階調電圧信号を出力する表示パネルコントローラ(4)を更に有する。
【0030】
これによれば、表示パネルと一緒にタッチパネルを利用する利用形態に鑑みればタッチパネルコントローラを搭載した半導体装置の利便性が増す。
【0031】
〔9〕<タッチパネルと表示パネルの時分割駆動>
項8において、前記制御回路は、前記駆動パルスの立ち下がりから立ち上がりまでの期間に前記走査パルスと前記階調電圧信号の変化タイミングが含まれるように前記駆動パルスの変化タイミングを制御する。
【0032】
これによれば、タッチパネルの検出動作中は表示パネルを駆動する走査パルス及び階調電圧信号に変化を生ぜず、タッチ・非タッチの検出動作に対する耐ノイズ性を向上させることができる。時分割駆動によってタッチ・非タッチの検出時間が短くなっても両エッジ検出モードで検出を行うので、必要な信号量を確保することができる。片エッジ検出モードに対して2倍の検出回数を実現できる両エッジ検出モードにおいては、表示パネルの高解像度化によって時分割駆動によるタッチ・非タッチの検出時間が更に短くなっても対応可能な余力があり、高解像度表示パネルとの組み合わせに好適である。
【0033】
〔10〕<検出回路と検出電極の分離スイッチ>
項9において、前記走査パルスと前記信号電圧の変化タイミングを含む所定期間毎に前記検出回路を前記検出端子から分離する分離スイッチ(SW3)を有する。
【0034】
これによれば、駆動電極の非駆動期間、即ち、タッチパネルの非検出期間に検出電極が表示パネルからノイズを受けても、検出回路へのノイズの伝播が阻止されるので、積分途中の積分信号が当該ノイズで不所望に変化することを抑止することができる。
【0035】
〔11〕<両エッジ検出モードと片エッジ検出モード>
項1において、前記検出回路は、前記駆動パルスの立ち上がり変化または立ち下がり変化の何れか一方に同期して前記検出端子から複数回入力される信号を積み上げて検出データを生成する片エッジ検出モードを更に有し、前記両エッジ検出モードと片エッジ検出モードの何れを選択するかを指示する指示部(320)を有する。
【0036】
これによれば、タッチパネルと表示パネルを時分割駆動する場合に表示パネルの駆動負荷が大きいときにタッチパネルの検出期間が短くなって必要な積分信号量を確保できなくなる虞があるときに、片エッジ検出モードを選択すればスイッチ回路の切り替えに要する時間も積分動作に割り当てることができるので、積分信号量の増加を期待できる場合がある。
【0037】
〔12〕<モードレジスタ>
項11において、前記指示部は前記制御回路に設けられた書き換え可能なモードレジスタ(320)である。
【0038】
これによれば、両エッジ検出モードと片エッジ検出モードの選択をソフトウェアを介して行うことができる。
【0039】
〔13〕<タッチ・非タッチの検出動作>
項2において、前記制御回路が制御するタッチ・非タッチの検出動作は、(a)前記オペアンプの非反転入力端子に参照電圧として供給される第1電圧によって前記オペアンプの反転入力端子と出力端子を初期化する処理、(b)前記駆動電極に所定パルス数の駆動パルスを与える処理、(c)駆動パルスの夫々のエッジ変化の直前のタイミングで前記積分容量の接続を切り替える処理、及び(d)前記駆動パルスの夫々のエッジ変化に同期して前記積分容量に積分された信号を前記アナログ・ディジタル変換回路でディジタル信号に変換して検出データを生成する処理を含む。
【0040】
これによれば、タッチ・非タッチの検出動作を容易に実現することができる。
【0041】
〔14〕<駆動パルスの両エッジで取得した検出信号を絶対値的に積み上げる>
電子機器(100)は、複数の駆動電極(Ym:Y1〜YM)と複数の検出電極(Xn:X1〜XN)との交差部に容量成分が形成されたタッチパネル(1)と、前記タッチパネルに接続されるタッチパネルコントローラ(3)と、前記タッチパネルコントローラに接続されたプロセッサ(5)と、を有する。前記タッチパネルコントローラは、前記複数の駆動電極に接続される複数の駆動端子(PY1〜PYMと、前記駆動端子から駆動パルスを出力する駆動回路(300)と、前記複数の検出電極に接続される複数の検出端子(PX1〜PXN)と、前記駆動パルスの変化に同期して前記検出端子から複数回入力される信号を積み上げて検出データを生成する検出回路(310)と、前記駆動回路及び検出回路を用いてタッチ・非タッチの検出動作を制御する制御回路(308)と、を有する。前記検出回路は、前記駆動パルスの立ち上がり変化と立ち下がり変化の夫々に同期して前記検出端子から複数回入力される交互に変化の極性が異なる信号を絶対値的に積み上げて検出データを生成する両エッジ検出モードを有する。前記プロセッサは前記検出データに基づいてタッチパネル上でタッチされた位置の座標点を演算する。
【0042】
これによれば、項1と同様の作用効果を奏する。
【0043】
〔15〕<切り替えスイッチ>
項14において、前記検出回路は、前記検出端子から入力する信号を積分する積分回路(301)と、前記積分回路で積分されたアナログ信号をディジタル信号に変換して前記検出データとするアナログ・ディジタル変換回路(304)とを有する。前記積分回路は、オペアンプ(AMPit)と、積分容量(Cs)と、オペアンプの反転入力端子と出力端子との間で前記積分容量の接続を切り替えるスイッチ回路(CFA1,CFA2,CFB1,CFB2)とを有する。前記制御回路は、前記駆動パルスの変化の直前に前記スイッチ回路の接続を切り替える。
【0044】
これによれば、項2と同様の作用効果を奏する。
【0045】
〔16〕<積分出力電圧の初期値>
項15において、タッチ・非タッチの検出動作における前記積分回路の出力端子の初期電圧は前記アナログ・ディジタル変換回路の入力レンジの中央値寄りの電圧とされる。
【0046】
これによれば、項3と同様の作用効果を奏する。
【0047】
〔17〕<駆動パルスの立ち下がりで駆動終了したときのタッチ時と非タッチ時の積分値>
項16において、タッチにより交差部の容量成分が小さくなったとき駆動パルスで駆動電極を複数パルス数駆動しその立ち下がりで駆動を終了することによって積分回路に得られる信号電圧は前記アナログ・ディジタル変換回路の入力レンジの上限値以下とされる。非タッチにより交差部の容量成分が小さくならなかったとき駆動パルスで駆動電極を複数パルス数駆動しその立ち下がりで駆動を終了することによって積分回路に得られる信号電圧は前記タッチ時の信号電圧よりも低い電圧とされる。
【0048】
これによれば、項4と同様の作用効果を奏する。
【0049】
〔18〕<駆動パルスの立ち上がり駆動終了したときのタッチ時と非タッチ時の積分値>
項16において、タッチにより交差部の容量成分が小さくなったとき駆動パルスで駆動電極を複数パルス数駆動しその立ち上がりで駆動を終了することによって積分回路に得られる信号電圧は前記アナログ・ディジタル変換回路の入力レンジの下限値以上とされる。非タッチにより交差部の容量成分が小さくならなかったとき駆動パルスで駆動電極を複数パルス数駆動しその立ち上がりで駆動を終了することによって積分回路に得られる信号電圧は前記タッチ時の信号電圧よりも高い電圧とされる。
【0050】
これによれば、項5と同様の作用効果を得る。
【0051】
〔19〕<駆動パルスの立ち下がり駆動終了モードと駆動パルスの立ち上がり駆動終了モード>
項16において、前記駆動パルスの立ち上がりで駆動パルスによる駆動を終了する第1駆動終了モードと、前記駆動パルスの立ち下がりで駆動パルスによる駆動を終了する第2駆動終了モードとの何れを選択するかを指示する指示部を有する。
【0052】
これによれば、項6と同様の作用効果を得る。
【0053】
〔20〕<モードレジスタ>
項17において、前記指示部は前記制御回路に設けられた書き換え可能なレジスタである。
【0054】
これによれば、項7と同様の作用効果を得る。
【0055】
〔21〕<表示パネルコントローラ>
項16において、複数の走査電極(G1〜G640)と複数の信号電極(D1〜D1440)との交差部分に液晶表示セル(LCD)が配置された表示パネル(2)と、前記表示パネルの前記走査電極に走査パルスを出力し前記信号電極に信号電圧を出力する表示パネルコントローラ(4)とを更に有する。前記タッチパネルは前記表示パネルの中に作り込まれたインセル型のタッチパネルである。
【0056】
これによれば、項8と同様の作用効果を奏する。
【0057】
〔22〕<タッチパネルと表示パネルの時分割駆動>
項21において、前記制御回路は、前記駆動パルスの立ち下がりから立ち上がりまでの期間に前記走査パルスと前記信号電圧の変化タイミングが含まれるように前記駆動パルスの変化タイミングを制御する。
【0058】
これによれば、項9と同様の作用効果を奏する。
【0059】
〔23〕<検出回路と検出電極の分離スイッチ>
項22において、前記走査パルスと前記信号電圧の変化タイミングを含む所定期間毎に前記検出回路を前記検出端子から分離する分離スイッチ(SW3)を有する。
【0060】
これによれば、項10と同様の作用効果を奏する。
【0061】
〔24〕<両エッジ検出モードと片エッジ検出モード>
項14において、前記検出回路は、前記駆動パルスの立ち上がり変化または立ち下がり変化の何れか一方に同期して前記検出端子から複数回入力される信号を積み上げて検出データを生成する片エッジ検出モードを更に有する。前記両エッジ検出モードと片エッジ検出モードの何れを選択するかを指示する指示部(320)を有する。
【0062】
これによれば、項11と同様の作用効果を奏する。
【0063】
〔25〕<モードレジスタ>
項24において、前記指示部は前記制御回路に設けられ前記プロセッサによって書き換え可能なモードレジスタ(320)である。
【0064】
これによれば、項12と同様の作用効果を奏する。
【0065】
〔26〕<タッチ・非タッチの検出動作>
項15において、前記制御回路が制御するタッチ・非タッチの検出動作は、(a)前記オペアンプの非反転入力端子に参照電圧として供給される第1電圧によって前記オペアンプの反転入力端子と出力端子を初期化する処理、(b)前記駆動電極に所定パルス数の駆動パルスを与える処理、(c)駆動パルスの夫々のエッジ変化の直前のタイミングで前記積分容量の接続を切り替える処理、及び(d)前記駆動パルスの夫々のエッジ変化に同期して前記積分容量に積分された信号を前記アナログ・ディジタル変換回路でディジタル信号に変換して検出データを生成する処理を含む。
【0066】
これによれば、項13と同様の作用効果を奏する。
【0067】
2.実施の形態の詳細
実施の形態について更に詳述する。
【0068】
≪両エッジ検出モードを有する電子機器≫
図1には本発明が適用される表示及び入力装置100の全体的な構成が例示される。同図に示される表示及び入力装置100は本発明に係る電子機器の一例であり、例えばPDAや携帯電話機などの携帯端末の一部を構成し、タッチパネル(TP)1、表示パネルの一例である液晶パネル(DP)2、タッチパネルコントローラ(TPC)3、表示パネルコントローラの一例である液晶パネルコントローラ(DPC)4、サブプロセッサ(SMPU)5、及びホストプロセッサ(HMPU)6を備える。タッチパネルコントローラ3及び液晶パネルコントローラ4、更に必要に応じてサブプロセッサ5を含めて、1個の半導体チップに形成し、又は1個のパッケージに搭載して、単一の半導体装置101,102として実現することができる。
【0069】
タッチパネル1はマルチタッチ検出を可能にする相互容量方式のタッチパネルであって、複数の駆動電極(Y電極)と複数の検出電極(X電極)によって形成された複数の交差部を備える。交差部には容量成分が形成されている。タッチパネルコントローラ3は駆動電極に順次駆動パルスを供給し、これによって検出電極から順次得られる信号に基づいて各交差部における容量成分の変動に応ずる検出データを得る。サブシステム用のマイクロプロセッサであるサブプロセッサ(SMPU)5はタッチパネル1の駆動を制御する。また、サブプロセッサ5は、タッチパネルコントローラ3が取得した検出データに対してディジタルフィルタ演算を行い、これによってノイズが除去されたデータに基づいて容量変動が生じた交差部の位置座標を演算する。要するに、交差部のどの位置で浮遊容量が変化したか、即ち、交差部のどの位置で指が近接したか(タッチされたか、接触イベントが発生したか)を示すために、接触イベントが発生したときの位置座標を演算する。
【0070】
タッチパネル1は透過性(透光性)の電極や誘電体膜を用いて構成され、例えば液晶パネル2の表示面に重ねて配置される。タッチパネル1と液晶パネル2の組み合わせの形態は別部品としてのタッチパネルを液晶パネルに外付けする外着け形態、及び、液晶パネルにタッチパネルを作り込んだインセル形態に大別される。
【0071】
ホストプロセッサ(HMPU)6は表示データを生成し、液晶パネルコントローラ4はホストプロセッサ6から受け取った表示データを液晶パネル2に表示するための表示制御を行う。ホストプロセッサ6は、接触イベントが発生したときの位置座標のデータをサブプロセッサ5から取得し、液晶パネルコントローラにおける位置座標のデータと液晶パネルコントローラ4に与えて表示させた表示画面との関係から、タッチパネル1の操作による入力を解析する。
【0072】
特に制限されないが、ホストプロセッサ6には夫々図示を省略する、通信制御ユニット、画像処理ユニット、音声処理ユニット、及びその他アクセラレータなどが接続されることによって、例えば携帯端末が構成される。
【0073】
図2にはタッチパネル1の電極構成が例示される。タッチパネル1は横方向に形成された多数の駆動電極(Y電極)Y1〜YM(Y電極Ymとも記す)と、縦方向に形成された多数の検出電極(X電極)X1〜XN(X電極Xnとも記す)とが相互に電気的に絶縁されて構成される。各電極は、例えばその延在方向の途中が方形状に成形されて容量電極を構成する。X電極とY電極の交差部には各電極の容量電極を介して交点容量が形成される。交点容量に指などの物体が近接すると、当該物体を容量電極とする浮遊容量が前記交点容量に加わることになる。Y電極Y1〜YMは、例えばその配列順にタッチパネルコントローラ3から駆動パルスが印加されて駆動される。
【0074】
図3には液晶パネル2の電極構成が例示される。同図に示される液晶パネル2の表示サイズは例えば480RGB×640の規模とされる。液晶パネル2は横方向に形成された走査電極としてのゲート電極G1〜G640と縦方向に形成された信号電極としてのドレイン電極D1〜D1440とが配置され、その交点部分には選択端子が対応する走査電極に接続され、入力端子が対応する信号電極に接続された多数の液晶表示セルが配置される。ゲート電極G1〜G640は、例えばその配列順に液晶パネルコントローラ4から走査パルスが印加されて駆動(走査駆動)される。ドレイン電極D1〜D1440にはゲート電極の走査駆動に同期して走査駆動ラインの階調データが供給される。
【0075】
図4にはタッチパネルコントローラ3の全体的な構成が例示される。タッチパネルコントローラ
3は駆動回路(YDRV)300、検出回路(XDTC)310、アナログ・ディジタル変換回路(ADC)304、RAM305、バスインタフェース回路(BIF)306、及び制御回路としてのシーケンス制御回路(SQENC)308を有する。検出回路310は、例えば積分回路(INTGR)301、サンプルホールド回路(SH)302、及びセレクタ(SLCT)303などによって構成される。ここでは検出回路310に対する校正用の回路は図示を省略してある。アナログ・ディジタル変換回路を単にAD変換回路とも記す。
【0076】
駆動回路300はタッチ検出のためにY電極Y1〜YMに駆動パルスを順次出力する動作を所定タイミングで繰返す。Y電極毎に供給される駆動パルスは一定の複数パルス数に制御される。駆動パルスの立ち上がりエッジではY電極Ymに容量結合するX電極Xnに対して電荷が放出される。逆に、駆動パルスの立ち下がりエッジではY電極Ymに容量結合するX電極Xnに対して電荷が吸収される。
【0077】
積分回路301は駆動パルスに同期してX電極X1〜XNに生ずる電荷移動を駆動パルスの立ち上がり及び立下りの両エッジに同期して積分する。この両エッジ検出の詳細については後述する。積分された信号は検出電極毎にサンプルホールド回路302に保持され、保持された検出信号はセレクタ303で選択され、選択された検出信号はAD変換回路304で検出データに変換される。変換された検出データはRAM305に蓄積される。RAM305に蓄積された検出データはバスインタフェース回路306を介してサブプロセッサ5に供給され、ディジタルフィルタ演算及び座標演算に供される。
【0078】
シーケンス制御回路308は制御信号Csig1〜Csig6を用いて駆動回路300、積分回路301、サンプルホールド回路302、セレクタ303、AD変換回路304及びバスインタフェース回路306の動作を制御し、また、制御信号Csig7によってRAM305のアクセス制御を行う。特に制限されないが、駆動回路300がY電極に出力する駆動パルスのパルス電圧Vbst、積分回路301が入力するX電極の初期化電圧(プリチャージ電圧)VHSP、及びその他の電源電圧VCIはタッチパネルコントローラ3の外部から供給される。
【0079】
また、シーケンス制御回路308は、タッチパネル1と液晶パネル2を時分割で駆動するときのために液晶パネル2の垂直同期信号Vsyncとリファレンスタイミング信号Trefを入力する。リファレンスタイミング信号Trefは駆動電極Ymの駆動タイミングの生成に用いるタイミング信号であり、例えば液晶パネル2の水平同期信号Hsyncをリファレンスタイミング信号Trefとして用いる。本実施の形態ではリファレンスタイミング信号Trefを水平同期信号Hsyncとして説明する。
【0080】
図5にはタッチパネル1の等価回路と積分回路301の一例が示される。タッチパネル1には、Y電極Y1〜YMとX電極X1〜XN電極がマトリクス状に配置され、その交差部には、交点容量(相互容量)Cxyが形成される。
【0081】
積分回路301は、X電極X1〜XNをチャージするためのプリチャージ電圧VHSPをX電極X1〜XNへ供給するためのスイッチSW2、非反転入力端子(+)にプリチャージ電圧VHPSが供給され、反転入力端子(−)に対応するX電極Xnが接続されるオペアンプAMPit、積分容量Cs、積分容量CsをリセットするためのスイッチSW1、及びオペアンプAMPitの反転入力端子(−)と出力端子との間で前記積分容量Csの接続を切り替えるスイッチ回路によって構成される。
【0082】
スイッチ回路は、例えば、積分容量Csの一方の容量電極をオペアンプAMPitの反転入力端子(−)に接続するスイッチCFA1、他方の容量電極をオペアンプAMPitの出力端子に接続するスイッチCFA2、積分容量Csの前記他方の容量電極をオペアンプAMPitの反転入力端子(−)に接続するスイッチCFB1、及び前記一方の容量電極をオペアンプAMPitの出力端子に接続するスイッチCFB2から成る。スイッチCFA1,CFA2と、スイッチCFB1,CFB2とは相補的にスイッチ制御される。スイッチSW1は積分容量の双方の容量電極を短絡して蓄積電荷をリセットするスイッチである。駆動端子PY1〜PYMは駆動電極Y1〜YMに接続される駆動回路300の駆動端子である。検出端子PX1〜PXNは検出電極X1〜XNに接続される積分回路301の検出端子である。
【0083】
その詳細は後述するが、X電極Xn(n=1〜N、N:X電極の数)のプリチャージ電圧(初期化電圧)VHSPは、2.0V〜2.5V程度とされる。このプリチャージ電圧VHSPは、タッチ検出動作の基準電圧であるが、両エッジ検出モードを実現する場合には、電源電圧の大凡1/2程度の電圧2.0V〜2.5Vに設定すればよい。これは、オペアンプAMPitの出力電圧VOUTnの電圧遷移がプリチャージ電圧VHSPを挟んで双方向になるからである。ちなみに、従来の片エッジ検出モード、即ちY電極に対する駆動パルスの立ち上がりエッジのみで検出する方式では、プリチャージ電圧VHSPは、4V程度で電源電圧AVDD(=5V)に近い電圧に設定される。これは、検出回路のオペアンプの出力電圧の電圧遷移が一方向のみの動作になるからである。
【0084】
図6にはY電極Y1〜YMに供給される駆動パルス信号の信号波形の一例が示される。例えばY電極Y1〜YMには電極の配列順に所定パルス数の駆動パルスが供給される。ここでは、Y電極1本当たり9個のパルス数を持つ駆動パルスがY電極Y1〜YMの順番に重なりなく供給される例を便宜的に示している。
【0085】
図7にはY電極Ym (m=1〜M)を基準にして、両エッジ検出モードによる検出動作タイミングが例示される。同図では、液晶パネル2の垂直同期信号Vsyncに同期させて、Y電極Y1からのタッチ検出動作を開始させ、次の垂直同期信号Vsyncの立下りが到達するまでに最後のY電極YMのタッチ検出を終了させる場合を想定している。特にここでは、理解を容易化するために、液晶パネル2とタッチパネル1の時分割駆動の点については考慮していない。
【0086】
図7においてCFA1/2はスイッチCFA1,CFA2を意味し、CFB1/2はスイッチCFB1,CFB2を意味する。X電極Xnの電圧波形の電圧と、オペアンプAMPitの出力端子VOUTnの電圧波形における初期電圧はVHSPとされる。スイッチSW1,SW2,CFA1/2、CFB1/2は、動作基準クロックclkに同期して制御され、その制御信号はシーケンス制御回路308で生成される。Y電極Ymに供給する駆動パルスのハイレベル幅、ローレベル幅、周期はシーケンス制御回路308のコントロールレジスタ320の設定によって可変可能にされている。
【0087】
期間aは積分容量Csのリセット期間であり、且つ、X電極Xnに対するプリチャージ電圧VHSPによるプリジャージ期間である。期間baは、Y電極Ymに対する駆動パルスの立ち上がりエッジを使用した検出期間であり、期間bbはY電極Ymに対する駆動パルスの立下りエッジを使用した検出期間である。
【0088】
まず、期間aでスイッチSW2をオン状態にし、積分回路301の入力及びタッチセンサ2のX電極X1〜XNに所定の電圧レベルVHSPを印加し、リセット状態にする。その後、スイッチSW2をオフにして積分回路301をタッチ信号の待ち受け状態に設定し、スイッチCFA1,CFA2をオン状態、スイッチCFB1,CFB2をオフ状態に設定する。この検出待受状態では、X電極Xnは、プリチャージ電圧VHSPに接続されない状況になるが、仮想接地の構成である積分回路301の反転入力端子(−)の電圧レベルはそのまま保持される。
【0089】
検出待受状態に遷移した後、先ず、Y電極Y1に駆動パルスとして振幅Vyの立ち上がりパルスを入力する(他のY電極Y2〜YMはローレベルに固定)。その結果、Y電極Y1上の交点容量Cxyを介してX電極Xn(X1〜XN)に電荷(=Vy×Cxy)が移動し、これを反転入力端子(−)に受けるオペアンプAMPitの出力電圧VOUTnがその移動電荷に応ずる電圧分だけ低電圧側に遷移する。特定の交点容量Cxyの近傍に指があればそれによる浮遊容量によって当該交点容量Cxyの合成容量値が減少する。例えばX電極X2とY電極Y1との交差部で交点容量Cxyの容量値が容量値Cfだけ減少したとすれば、X電極X2のオペアンプAMPitに入力される電荷はVy×(Cxy−Cf)となり、オペアンプAMPitの出力VOUT2のレベル低下が、当該交差部に指がない場合に比べて小さくなる。
【0090】
ここで、スイッチCFA1,CFA2をオン状態、スイッチCFB1,CFB2をオフ状態に設定したまま、駆動電極Y1の駆動パルスを立ち下げると、駆動パルスの立ち上げに際して積分容量Csに蓄積された電荷がタッチセンサの検出電極Xm側に移動し、オペアンプAMPitの出力VOUTnが初期電圧VHSPに遷移して、期間aの状態に戻ってしまう。これでは、タッチ検出動作を行う事ができない。
【0091】
そこで、駆動パルスY1を立ち下げる前に、スイッチCFA1,CFA2をオフ状態、スイッチCFB1,CFB2をオン状態に反転する。これにより、オペアンプAMPitの出力VOUTnは、初期電圧VHSPを中心に線対称の電圧レベルに切り替わり、その後で駆動パルスY1を立ち下げることによって、積分容量Csから電荷が放出され、オペアンプAMPitの出力VOUTnは、高電圧側に遷移する。この結果、駆動電極Y1に印加される駆動パルスの立ち上がり時と立下り時で初期電圧VHSPを基準にした出力電圧VOUTnの電圧遷移方向が電位の積み上げ方向に揃う。換言すれば、駆動パルスの立ち上がり時と立下り時の何れにおいても初期電圧VHSPとの電位差が大きくなる方向に出力電圧VOUTnが遷移する。これにより、駆動パルスの複数
回のパルス変化に応じた検出結果を累積することができる。
【0092】
スイッチCFA1,CFA2及びスイッチCFB1,CFB2の相補スイッチ制御により、駆動パルスの1パルスで2回分の検出動作が可能になる。したがって、駆動パルスの片エッジで検出動作を行う片エッジ検出に比べて、同じ検出動作時間で2倍のタッチ信号を取得することが可能になり、また、同じタッチ信号量を得るのに検出動作時間を半減することができる。
【0093】
図7に例示されるように検出動作でオペアンプAMPitから得られる出力電圧VOUTnはプリチャージ電圧VHSPを中心に電圧レベルが上昇方向と下降方向にスイングされることになる。ここで、検出回路310の電源を、例えば正側の電源電圧AVDD(5.0V)、負側の電源電圧GND(0V)とすると、出力電圧VOUTnが検出期間中に電源電圧AVDD、GNDに到達しないようにプリチャージ電圧VHSPの電圧を設定する必要がある。すなわち、両エッジ検出方式ではプリチャージ電圧VHSPを電源電圧AVDDとGNDとの大凡中間の電圧2.0V〜2.5Vに設定することが必要である。
【0094】
また、サブプロセッサ5は、オペアンプAMPitの出力電圧VOUTnをAD変換回路304でディジタル値に変換して得られる検出データを用いて、タッチパネル1のタッチ領域の座標計算を行う。したがって、出力電圧VOUTnはAD変換回路304の入力レンジに収まることが望ましい。換言すれば、出力電圧VOUTitは、AD変換回路304の高電位側のリファレンス電圧VADCREFHよりも電圧レベルが小さく、低電位側のリファレンス電圧VADCREFLよりも電圧レベルが大きいことが望ましい。これを実現するために、例えばVADCREFH=5V、VADCREFL=0Vとすると、プリチャージ電圧VHSPは上記と同じく大凡2.0V〜2.5V程度であることが必要となる。
【0095】
さらに、インセルタイプのタッチセンサにおいて、タッチセンサ1のX電極、Y電極は液晶パネル2の構成物、例えば階調制御電極、共通電極(COM)、カラーフィルタと一緒に一つのパネルとして作り込まれる。タッチセンサ1と液晶パネル2の各電極との容量結合を考えた場合に、特にX電極に印加する電圧VHSPは低電圧であることが望ましい。具体的には、液晶パネルの各電極間の耐圧問題、或いは、検出対象であるX電極XnとY電極Ymの間の相互容量Cxyに、液晶パネル2の階調制御電圧依存性がある場合に、その影響を軽減するのに電圧VHSPの低電圧化が望ましい。
【0096】
図8には両エッジ検出モードによる検出動作を行った場合における積分回路301の出力電圧VOUTnの遷移波形が駆動パルスと共に例示される。
【0097】
上段に示される出力電圧VOUTnの遷移波形はタッチ信号が小さい場合である。下段に示される出力電圧VOUTnの遷移波形はタッチ信号が大きい場合である。出力電圧VOUTnの遷移波形において、太線は非タッチ時の出力電圧を示し、細線はタッチ時の出力電圧を示す。
【0098】
図8では、AD変換回路304で使用するリファレンス電圧VADCREFH,VADCREFLは、それぞれVADCREFH=4V、VADCREFL=GNDとしている。この場合だと、AD変換回路304の入力レンジの大凡1/2を目安として、VHSP=2.0Vに設定する。そして、駆動パルスに所定複数回数のパルス変化をさせたとき、積分回路301の出力電圧VOUTnが、非タッチ状態において、0.5V〜1.0V程度になるように補正すると、タッチの強度、タッチ部の接触面積に応じて、タッチ状態の出力電圧VOUTnを高電位側に遷移させることができる。
【0099】
なお、タッチの信号量が最大であっても、出力電圧VOUTnが高電位側のリファレンス電圧VADCREFHを超過しないように検出回路の感度を設定することが望ましい、例えば、
図8の下段の波形に示すようにタッチ時の信号が大きい場合でも出力電圧VOUTnは3.0〜3.5Vになることが望ましい。上記感度調整は、
図5においては、積分容量Csの容量値を調整すればよく、積分容量Csの容量値を前記コントロールレジスタCREGに書き込まれる選択データで切り替えられるようにしておけば、調整は容易である。
【0100】
図8では、説明を簡単にするために、1回の検出に使用する駆動パルスYmのパルス数を4個とし、立ち上がり4回、立下り3回で検出動作させた場合を示した。4個目の駆動パルスの立下りで検出動作を実施しないのは、非タッチ時の出力電圧VOUTnを低電圧側に設定し、タッチ時の出力電圧VOUTnを高電圧側に設定するためである。また、これにより、後述する片エッジ検出モード時における、非タッチ時の出力電圧とタッチ時の出力電圧の電圧関係と同一になる効果がある。尚、駆動パルスの4個目のパルスの立下りで検出動作を終了したとしても、非タッチ時の出力電圧VOUTnが高電圧側に設定され、タッチ時の出力電圧VOUTnが低電圧側に設定されるだけであり、タッチのフレームデータ(タッチパネル2の一面分の検出データ)を取得した後で実施する座標計算の前に簡単な演算を追加すれば対応可能である。具体的な演算内容は、例えば、AD変換後のタッチの検出データDOUTnが10ビットであれば、DOUTn=1023−DOUTnの演算になる。
【0101】
パルスの
立下りで検出動作を終了した場合は、パルスの
立上りで検出動作を終了した場合と比べて、積分回数が1回多く設定できる。これにより、タッチの信号成分を大きくできるが、片エッジ検出モード時とタッチ、非タッチの電位関係が異なる。以上を考慮して、検出動作の終了条件、具体的には、パルスの立下りで検出動作を終了するのか、パルスの立ち上がりで検出動作を終了するのかは選択すればよい。なお、この検出動作の終了条件は、シーケンス制御回路308が規定するサンプルホールド
回路に電圧を転送するタイミング調整で、変更は可能である。例えば、シーケンス制御回路の制御レジスタ320が保有するモードビットTPC_ENDEDGEを参照することで、Csig3を生成すればよい。モードビットTPC_ENDEDGEは例えばサブプロセッサ5によって書き換えられる。前記モードビットTPC_ENDEDGEにより駆動パルスの
立上りで検出動作を終了する設定を行った時のタッチと非タッチの電圧関係は、
a).非タッチの積分電圧<タッチの積分電圧≦ADC304の入力レンジの上限電圧、
になり、駆動パルスの
立下りで検出動作を終了する設定を行った時のタッチと非タッチの電圧関係は、
b).ADC304の入力レンジの下限電圧≦タッチの積分電圧<非タッチの積分電圧、
になる。
【0102】
図8では、駆動パルスYmのパルス数を4個としたが、実際には1回の検出動作に使用する駆動パルスYmのパルス数は、例えば32個である。この場合、前記駆動パルスYmの32回の立ち上がり変化と31回の立ち下がり変化の夫々に同期して前記検出端子から複数回入力される交互に変化の極性が異なる信号を絶対値的に積み上げて検出データを生成するのに、積分動作を合わせて63回行うことになる。ここで、タッチ信号が小さい場合であっても、出力電圧VOUTnのタッチ時と非タッチ時の電位差ΔV=1.0Vを確保しようとした場合、検出動作1回あたりに必要な電圧変化は、15.9mV(=1.0V/63回)となる。これに対し、従来の片エッジ検出で、検出動作が32回の場合だと、検出動作1回あたりに必要な電圧変化は、31.3mV(=1.0V/32回)が必要となる。要するに、駆動パルスのパルス数が同じであっても、両エッジ検出モードの方が片エッジ検出モードに比べて、微小なタッチ信号を取得できることが判る。これは同じタッチ検出時間内でタッチ検出精度が向上することを意味する。
【0103】
図9には液晶パネル2の等価回路が例示される。液晶パネル3は、ゲート電極G1〜G640とドレイン電極D1〜D1440がマトリクス状に配置され、その交差部分には、TFT(Thin Film Transistor)スイッチが形成される。TFTスイッチのソース側にはサブピクセルとなる液晶容量LCDの液晶画素電極Sが接続され、その液晶容量LCDの反対側の電極は共通電極(COM)になっている。ドレイン電極D1〜D1440には液晶パネルコントローラ4のオペアンプAMPvfで成るボルテージフォロアの出力が結合される。このボルテージフォロアは信号電圧を出力する。例えばドレイン電極D1のオペアンプAMPvfには赤色に対応する階調電圧VDR1、ドレイン電極D2のオペアンプAMPvfには緑色に対応する階調電圧VDG1が供給される。ゲート電極G1〜G640には例えば電極の配列順に走査パルスが供給される。
【0104】
図10には液晶パネル2とタッチパネル1の時分割駆動と両エッジ検出方式を両立する場合に必要な積分回路301Aとタッチパネル1の等価回路が例示される。
図5との相違点は、液晶パネル2を駆動する走査パルスと階調電圧信号の変化タイミングを含む所定期間毎にオペアンプAMPitの反転入力端子(−)を検出端子PXnから分離する分離スイッチSW3を追加した点である。その他は
図5と同様の回路要素には同じ参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0105】
図11には液晶パネル2とタッチパネル1の時分割駆動と両エッジ検出方式を両立する場合の動作タイミングが例示される。
図11では便宜上G1〜G640はゲート電極の他に当該ゲート電極に供給されるゲートパルスも意味するものとする。同様に、D1〜D1440はドレイン電極のほかに当該ドレイン電極に供給される階調電圧信号も意味するものとする。ここでは、垂直同期信号Vsyncに同期して表示フレーム単位でタッチ検出に検出データを取得し、特にタッチ検出動作を、水平同期信号Hsyncに同期して行うようにしたものである。タッチの検出の基本的動作自体は、
図7と同様である。
【0106】
期間aは検出回路の積分容量Csのリセット期間であり、検出電極Xnのプリチャージ電圧VHSPによるプリジャージ期間である。期間baは、検出電極Xnに対する駆動パルスの立ち上がりエッジを使用した際の検出期間であり、期間bbは、検出電極Xnに対する駆動パルスの立下りエッジを使用した際の検出期間である。期間baへの切り替えは駆動パルスYmの立ち上がり直前とされ、期間bbへの切り替えは駆動パルスYmの立ち下がり直前とされる。期間cは、検出電極Xnのプリチャージ電圧VHSPによるプリジャージ期間である。期間cでは、タッチ検出動作は行わず、ここで液晶パネル2の階調制御を実施する。具体的には、期間cで液晶パネル2のドレイン電極D1〜D1440にそれぞれ対応する階調電圧を印加すると共に、液晶パネル2のゲート電極G1〜G640に線順次でゲートパルスを印加する。
【0107】
タッチの検出期間はスイッチSW3がオン状態の期間baと期間bbの合計の期間であるが、液晶パネル2の階調制御を実施する期間cでは、スイッチSW3がオフ状態にされて、タッチパネル1と検出回路310の接続が遮断される。このため、検出回路310には液晶パネル2の階調制御時のノイズが伝達されない。これにより、特に液晶パネル2の表示駆動に起因するノイズに対する耐ノイズ性を高くすることができる。液晶パネル2の階調制御を実施する期間cにおいて、スイッチSW3で積分回路301から切り離された検出電極XnはスイッチSW2を介してプリチャージ電圧VHSPにプリチャージされる。仮にそのプリチャージを行わないとすると、スイッチSW3で積分回路301から切り離された検出電極Xnはフローティング状態になり、液晶パネル2の階調制御の影響で、検出電極Xnの電圧がプリチャージ電圧VHSPから変動してしまう。検出電極Xnに不所望な電圧変動が発生した状態で、スイッチSW3をオン状態に反転して検出期間baを開始すると、積分回路のオペアンプAMPitの反転入力端子(−)と非反転入力端子(+)が同電位ではないため、先ずは、(a)その電圧変動分の電荷が積分回路301に入力されて、その後に基準クロックclkの1クロック後に、(b)駆動電極Ymによる電荷が検出電極Xnに入力されることになる。上記(a)における電荷が積分回路301に入力されるため、出力電圧VOUTnが期待値から変動してしまう。階調制御を実施する期間cにスイッチSW3で積分回路301から切り離された検出電極XnをスイッチSW2を介してプリチャージ電圧VHSPにプリチャージしていれば、液晶パネル2の階調制御の影響による検出電極Xnの変動はスイッチSW2を介してプリチャージ電圧VHSPの供給側回路に吸収される。また、その期間cに検出電極Xnをプリチャージ電圧VHSPにしておけば、期間baの開始時に積分アンプAMPit
の反転入力端子(−)と非反転入力端子(+)が同電位(プリチャージ電圧VHSP)になり、(a)の電荷は入力されず、駆動電極Ymによる(b)の所望の電荷のみを検出することができるようになる。
【0108】
また、
図7でも説明したようにスイッチCFA1,CFA2とCFB1,CFB2との相補スイッチ動作による積分容量Csの接続切り替え制御によって、駆動パルスの1パルスで2回の検出動作が可能になるため、同じ検出動作時間では片エッジ検出に比べて2倍のタッチ信号を取得することができる。
【0109】
なお、タッチ検出期間(期間baと期間bbの合計期間)と液晶パネル2の階調制御期間である期間cとの時間比は、液晶パネル2の負荷条件と、タッチパネル1の負荷条件とに応じて最適化されるものであり、
図11の例は一例に過ぎない。
【0110】
図12には両エッジ検出方式による両エッジ検出モード(DualEdge)と片エッジ検出方式による片エッジ検出モード(SingleEdge)とをレジスタで切り替える場合の真理値表が例示される。TPC_EGMODE=1で両エッジ検出モード(DualEdge)が指定され、TPC_EGMODE=0で片エッジ検出モード(SingleEdge)が指定される。モードビットTPC_EGMODEはコントロールレジスタ320の所定ビットに含まれる。シーケンス制御回路308はモードビットTPC_EGMODEを参照することで、両エッジ検出モード又は片エッジ検出モードのそれぞれに対応した制御信号Csig2を生成する。
【0111】
検出モードを切り替え可能にする理由は以下のとおりである。
【0112】
片エッジ検出モードは、液晶パネル2のCR負荷が大きいときに有効になる場合がある。
図11のタイミングチャートを例に、より具体的に説明すると、液晶パネル2のCR負荷の増大により、階調制御期間cを大きく設定することが必要になり、検出期間baとbbに十分な時間を確保できない場合である。両エッジ検出の場合、検出期間ba≒bbに設定する必要があるため、それぞれの検出期間ba,bbが小さくなってしまうと、取得できるタッチ信号が小さくなる可能性がある。これに対し、片エッジ検出方式の場合は、検出期間ではないbb≒0に設定できるため、立ち上がり用の検出期間baを大きく設定できる。検出期間baが大きく設定できれば、1回あたりの検出時間が確保できるため、検出回数が減少するデメリットはあるが、結果として、両エッジ検出よりもタッチ信号が取得できる場合がある。
【0113】
両エッジ検出方式と片エッジ検出方式のいずれが、多くのタッチ信号が取得できるかは、液晶パネル2の階調制御期間cの設定、すなわち液晶パネル2のCR負荷に、依存するため、タッチパネルコントローラ1は検出モードを切り替え可能であることが望ましい。以上から、片エッジ検出モードと両エッジ検出モードは、
図12に示すようにレジスタ設定で容易に切り替えられるようになっている。
【0114】
図13には片エッジ検出モードを採用したときの動作タイミングが例示される。ここではスイッチCAF1,CAF2がオン状態、スイッチCFB1,CFB2がオフ状態に固定される。aは
図11と同様の非検出状態、bは検出待ち受け状態である。スイッチSW3については、液晶パネル2からのノイズの入力を回避する目的で、
図11と同様に液晶パネル2の階調制御期間cでオフ状態、タッチパネル1の制御期間でオン状態となるように制御される。尚、そのようなノイズ問題がないタッチパネル
1を用いる場合にはスイッチSW3を常時オン状態に制御することも可能である。
【0115】
片エッジ検出を実施した場合の積分回路301の出力電圧VOUTn波形については
図14に基づいて説明する。
図14における上段の出力電圧VOUTn波形は、タッチ信号が小さい場合、下段の出力電圧VOUTn波形はタッチ信号が大きい場合を示したものである。何れにおいても太線は非タッチ時の出力電圧VOUTn波形を示し、細線はタッチ時の出力電圧VOUTn波形を示している。
図14では、AD変換回路304で使用するリファレンス電圧VADCREFHとVADCREFLは、VADCREFH=4.0V、VADCREFL=GND(0V)としている。この場合には、AD変換回路304の入力レンジの上限4Vを目安として、プリチャージ電圧VHSP=4.0Vに設定する。そして、積分回路301の出力VOUTnは、非タッチ状態において、0.5〜1.0V程度になるように補正すると、タッチの強度、タッチ部の接触面積に応じて出力電圧VOUTnを高電位側に遷移させることができる。なお、出力電圧VOUTnは、タッチの信号量が最大であっても、高電位側のリファレンス電圧VADCREFHを超過しないように積分回路301の感度を設定することが望ましく、例えば、
図14の下段に示す出力電圧VOUTnの波形のようにタッチ信号が大きい場合でも出力電圧VOUTnは3.0V〜3.5Vになることが望ましい。
【0116】
図14では、説明を簡単にするために、1回の検出に使用する駆動パルスYmのパルス数を4個として、検出動作させた場合を示したが、実際に1回の検出に使用する駆動パルスYmのパルス数は、例えば32個である。この場合、駆動パルスYmの立ち上がりは32回になるため、片エッジ検出時の検出動作は32回行われることになる。
【0117】
上記実施の形態によれば以下の作用効果を有する。
【0118】
(1)駆動パルスYmの立ち上がり変化と立ち下がり変化の夫々に同期して検出端子PXnから複数回入力される交互に変化の極性が異なる信号を絶対値的に積み上げて検出データを生成する両エッジ検出モードを用いることにより、駆動パルスの片エッジだけで検出動作を行う場合に比べて、同じ時間内では信号に積み上げ回数を増やすことができ、同じ積み上げ回数を得る場合には検出動作時間を短縮することができる。したがって、タッチパネルによるタッチ検出動作時間の短縮とタッチ検出精度の向上に寄与する。
【0119】
(2)積分回路301を構成するオペアンプAMPitの反転入力端子(−)と出力端子(VOUTn)との間で前記積分容量Csの接続を切り替えるスイッチ回路CFA1,CFA2,CFB1,CFB2を採用して、駆動パルスの変化の直前に前記スイッチ回路の接続を切り替える。これによれば、駆動パルスの立ち上がりと立ち下がりでは駆動電極に容量結合された検出電極に現れる信号は増加方向と減少方向に変化することになり、これを信号成分として絶対値的に積み上げる操作を、積分回路の入力と出力との間での積分容量の接続切り替えという簡単な構成により容易に実現することができる。
【0120】
(3)タッチ・非タッチの検出動作における前記積分回路301の出力端子VOUTnの初期電圧を前記アナログ・ディジタル変換回路304の入力レンジの中央値寄りの電圧とすることにより、検出電極Xnに対する駆動電圧VHSPを片エッジ検出の場合に比べて大凡半分にすることができる。したがって、液晶パネル2の液晶表示セルが接続するコモン電極と検出電極との間で形成される電界が小さくなる。例えばIPS(登録商標)方式の構成の液晶パネル2の場合には当該パネルの厚み方向の電界が小さくなるので、その電界によって液晶のシャッタ機能を阻害する事態の防止に役立つ。
【0121】
(4)駆動電極を複数パルス数駆動しその立ち下がりで駆動を終了する場合、積分回路301に得られる非タッチの信号電圧は前記アナログ・ディジタル変換回路の入力レンジの下側寄りになり、積分回路301に得られるタッチ時の信号電圧は非タッチ時の信号電圧よりも高く且つ前記アナログ・ディジタル変換回路の入力レンジの上限値以下になる。駆動電極を複数パルス数駆動しその立ち上がりで駆動を終了する場合はその逆にすることができる。駆動電極の駆動を複数パルス数駆動の立ち下がりで終了するか、立ち上がりで終了するかをソフトウェアを介してモードレジスタ320で指定することができる。
【0122】
(5)1個の半導体装置101,102にタッチパネルコントローラ3と共に液晶パネルコントローラ4を搭載することにより、液晶パネル2と一緒にタッチパネル1を利用する利用形態に鑑みればタッチパネルコントローラ3を搭載した半導体装置の利便性を増すことができる。
【0123】
(6)タッチパネル1と液晶パネル2の時分割駆動により、タッチパネル1の検出動作中は液晶パネル2を駆動する走査パルス及び階調電圧信号に変化を生ぜず、タッチ・非タッチの検出動作に対する耐ノイズ性を向上させることができる。時分割駆動によってタッチ・非タッチの検出時間が短くなっても両エッジ検出モードで検出を行なえば、必要な信号量を確保することができる。片エッジ検出モードに対して2倍の検出回数を実現できる両エッジ検出モードにおいては、液晶パネルの高解像度化によって時分割駆動によるタッチ・非タッチの検出時間が更に短くなっても対応可能な余力があり、高解像度液晶パネルとの組み合わせに好適である。
【0124】
(7)積分回路301と検出電極PXnとの分離用のスイッチSW3を設けることにより、駆動電極の非駆動期間、即ち、タッチパネル1の非検出期間に検出電極Xnが液晶パネル2からノイズを受けても、検出回路310へのノイズの伝播が阻止されるので、積分途中の積分信号が当該ノイズで不所望に変化することを抑止することができる。
【0125】
(8)両エッジ検出モードと片エッジ検出モードを選択可能に有することにより、タッチパネル1と液晶パネル2を時分割駆動する場合に液晶パネル2の駆動負荷が大きいときにタッチパネル1の検出期間が短くなって必要な積分信号量を確保できなくなる虞があるときに、片エッジ検出モードを選択すればスイッチCFA1,CFA2,CFB1,CFB2の切り替えに要する時間も積分動作に割り当てることができるので、積分信号量の増加を期待できる場合がある。
【0126】
(9)両エッジ検出モードと片エッジ検出モードとの選択をサブプロセッサ5によって書き換え可能なモードレジスタ320を用いて指定することにより、両エッジ検出モードと片エッジ検出モードの選択をソフトウェアを介して行うことができる。
【0127】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0128】
例えば、前述のとおり、タッチパネルコントローラ3と液晶パネルコントローラ4を1チップ化し、さらにはタッチパネルコントローラ3、液晶パネルコントローラ4及びサブプロセッサ5を1チップ化することができる。両エッジ検出モードを採用する場合にはコントロールレジスタ320に対する設定項目が多くなることを考慮すれば、後者の1チップ構成が便宜である。タッチパネル1と液晶パネル2は、別構成になっていても、或いは双方が一体化されたインセル構成でも構わないし、タッチパネル1と上面に設置されるカバーガラスとが一体化されたカバーガラス一体化構成であっても構わない。
【0129】
タッチパネル2は電極形状が
図2に例示される菱型に限定されず、格子型でも構わない。
【0130】
図3では液晶パネル2の解像度をVGA (480RGB×640)でa−Si(amorphous silicon:アモルファスシリコン)タイプを前提に説明したが、液晶パネル2の解像度はVGA以外でも構わないし、a−Siタイプに限らず、LTPS(Low-temperature Poly Silicon:低温ポリシリコン)タイプであってもよい。さらに、表示パネルは液晶パネル2に限定されず、電圧レベルで階調制御を実施する表示パネル、例えば有機EL(OLED)であっても構わない。
【0131】
また、タッチパネルコントローラは両エッジ検出モードと片エッジ検出モードを選択可能に有するものに限定されず、検出モードとして両エッジ検出モードだけを有するものであってもよい。