特許第6045900号(P6045900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6045900タイヤ接地端形状の予測方法、タイヤ接地端形状の予測装置及びタイヤ接地端の予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045900
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】タイヤ接地端形状の予測方法、タイヤ接地端形状の予測装置及びタイヤ接地端の予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60C 19/00 20060101AFI20161206BHJP
   G01M 17/02 20060101ALI20161206BHJP
   G06F 17/50 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B60C19/00 Z
   G01M17/02 B
   G06F17/50 612G
   G06F17/50 680Z
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-273793(P2012-273793)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-118013(P2014-118013A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名塩 博史
(72)【発明者】
【氏名】辻 法行
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−225178(JP,A)
【文献】 特開2006−142991(JP,A)
【文献】 特開2006−111229(JP,A)
【文献】 特開2006−111223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
G01M 17/02
G06F 17/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ有限要素モデルを用いた或る回転速度での接地解析結果の接地端形状を補間法で表現するための基準点であり且つタイヤ幅方向の複数箇所に設定される基準位置毎に配置される複数の基準点を一組とし、回転速度を異ならせて所定数の組を設けたときの各基準点の座標値に基づく接地端データを取得するステップと、
前記接地端データを用い、所望の回転速度における接地端形状の算出の基点となる複数の基準点の座標値を、各々の基準位置における前記所望の回転速度以外の回転速度における基準点の座標値を近似することにより算出するステップと、
算出した複数の基準点を補間することにより、前記所望の回転速度における接地端形状を算出するステップと、を含むことを特徴とするタイヤ接地端形状の予測方法。
【請求項2】
与えられた上限回転速度及び下限回転速度並びにこれらの中間速度についてタイヤ有限要素モデルを用いて接地解析を実行し、各回転速度における接地端実形状を算出するステップと、
予め設定される基準位置毎に配置される基準点での実座標値を用いて当該基準点間を補間する補間式で表現される接地端予測形状の座標値と前記接地端実形状の座標値の誤差が第一閾値よりも小さくなるまで新たな基準位置を追加する処理を実施するステップと、
各々の基準位置について、接地解析を実施した回転速度における実座標値を近似することにより、接地解析を実施していない回転速度における予測座標値を近似式で算出し、当該回転速度における接地解析を実施して得た実座標値と前記予測座標値の誤差が第二閾値よりも小さくなるまで新たな回転速度における接地解析を実施するステップと、
を実行して前記接地端データを生成する請求項1に記載のタイヤ接地端形状の予測方法。
【請求項3】
前記接地端形状は、タイヤ前後方向に延びる溝でタイヤ幅方向に区画されるリブ又はブロック列毎に表現される請求項1又は2に記載のタイヤ接地端形状の予測方法。
【請求項4】
タイヤ有限要素モデルを用いた或る回転速度での接地解析結果の接地端形状を補間法で表現するための基準点であり且つタイヤ幅方向の複数箇所に設定される基準位置毎に配置される複数の基準点を一組とし、回転速度を異ならせて所定数の組を設けたときの各基準点の座標値に基づく接地端データを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部が取得した接地端データを用い、所望の回転速度における接地端形状の算出の基点となる複数の基準点の座標値を、各々の基準位置における前記所望の回転速度以外の回転速度における基準点の座標値を近似することにより算出する基準点算出部と、
算出した複数の基準点を補間することにより、前記所望の回転速度における接地端形状を算出する接地端形状算出部と、
を備えることを特徴とするタイヤ接地端形状の予測装置。
【請求項5】
前記データ取得部は、
与えられた上限回転速度及び下限回転速度並びにこれらの中間速度についてタイヤ有限要素モデルを用いて接地解析を実行し、各回転速度における接地端実形状を算出するステップと、
予め設定される基準位置毎に配置される基準点での実座標値を用いて当該基準点間を補間する補間式で表現される接地端予測形状の座標値と前記接地端実形状の座標値の誤差が第一閾値よりも小さくなるまで新たな基準位置を追加する処理を実施するステップと、
各々の基準位置について、接地解析を実施した回転速度における実座標値を近似することにより、接地解析を実施していない回転速度における予測座標値を近似式で算出し、当該回転速度における接地解析を実施して得た実座標値と前記予測座標値の誤差が第二閾値よりも小さくなるまで新たな回転速度における接地解析を実施するステップと、
を実行して前記接地端データを生成する請求項4に記載のタイヤ接地端形状の予測装置。
【請求項6】
前記接地端形状は、タイヤ前後方向に延びる溝でタイヤ幅方向に区画されるリブ又はブロック列毎に表現される請求項4又は5に記載のタイヤ接地端形状の予測装置。
【請求項7】
タイヤ有限要素モデルを用いた或る回転速度での接地解析結果の接地端形状を補間法で表現するための基準点であり且つタイヤ幅方向の複数箇所に設定される基準位置毎に配置される複数の基準点を一組とし、回転速度を異ならせて所定数の組を設けたときの各基準点の座標値に基づく接地端データを取得するステップと、
前記接地端データを用い、所望の回転速度における接地端形状の算出の基点となる複数の基準点の座標値を、各々の基準位置における前記所望の回転速度以外の回転速度における基準点の座標値を近似することにより算出するステップと、
算出した複数の基準点を補間することにより、前記所望の回転速度における接地端形状を算出するステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とするタイヤ接地端形状の予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ回転速度に応じた遠心力を加味した接地端形状の予測方法、接地端形状の予測装置及び接地端形状の予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
路面と接触するタイヤの接地面形状は、コンピュータシミュレーションにより予測されることが多い。タイヤ接地面形状を予測する主要な方法としては、タイヤを複数要素に分割して要素毎に運動方程式を解く有限要素法(FEM、Finite Element Method)等の数値解析手法を用い、所定荷重及び所定内圧等の解析条件の下で接地面解析を実施する。
【0003】
タイヤ接地面形状、すなわち接地面のタイヤ前後方向側の境界となる接地端形状は、速度により遠心力が異なることから、速度に応じて異なることが知られている。例えば、特許文献1には、予め設定されたタイヤ回転速度に応じた遠心力成分の荷重をタイヤ有限要素モデルに作用させてタイヤ接地端形状を算出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−75296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイヤの使用態様を可能な限り再現するためには、車両の加減速に伴いタイヤ回転速度が著しく変化することを考慮して、解析する回転速度毎に遠心力を考慮した接地端形状を予測することが要求される。
【0006】
しかしながら、上記従来の接地端形状の予測方法では、解析する回転速度毎に有限要素法による接地端形状を逐次算出しなければならないため、解析する回転速度が増えるほど、計算コストが増大してしまう。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、解析する全ての回転速度に対して接地解析を実施しなくとも、任意の回転速度の接地端形状を予測可能としたタイヤ接地端形状の予測方法、予測装置及び予測プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
【0009】
すなわち、本発明のタイヤ接地端形状の予測方法は、
タイヤ有限要素モデルを用いた或る回転速度での接地解析結果の接地端形状を補間法で表現するための基準点であり且つタイヤ幅方向の複数箇所に設定される基準位置毎に配置される複数の基準点を一組とし、回転速度を異ならせて所定数の組を設けたときの各基準点の座標値に基づく接地端データを取得するステップと、
前記接地端データを用い、所望の回転速度における接地端形状の算出の基点となる複数の基準点の座標値を、各々の基準位置における前記所望の回転速度以外の回転速度における基準点の座標値を近似することにより算出するステップと、
算出した複数の基準点を補間することにより、前記所望の回転速度における接地端形状を算出するステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本実施形態のタイヤ接地端形状の予測装置は、
タイヤ有限要素モデルを用いた或る回転速度での接地解析結果の接地端形状を補間法で表現するための基準点であり且つタイヤ幅方向の複数箇所に設定される基準位置毎に配置される複数の基準点を一組とし、回転速度を異ならせて所定数の組を設けたときの各基準点の座標値に基づく接地端データを取得するデータ取得部と、
前記接地端データが取得した接地端データを用い、所望の回転速度における接地端形状の算出の基点となる複数の基準点の座標値を、各々の基準位置における前記所望の回転速度以外の回転速度における基準点の座標値を近似することにより算出する基準点算出部と、
算出した複数の基準点を補間することにより、前記所望の回転速度における接地端形状を算出する接地端形状算出部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
接地端データは、回転速度を異ならせた複数の基準点の座標値に基づくデータであればよいという意味である。例えばこれら基準点の座標値を表すデータそのものでもよく、これら基準点の座標値から導出される近似式データ又は補間式データでもよい。近似式データは、例えば、所望の回転速度における複数の基準点の座標値を他の回転速度における基準点の座標値から算出するための近似式データが挙げられる。補間式データは、例えば、或る回転速度における複数の基準点から接地端形状を導出するための補間式データが挙げられる。
【0012】
接地端データの取得には、タイヤ有限要素モデルを用いた接地解析を実施することで接地端データを生成することや、既に生成された接地端データを記憶部から取得することが挙げられる。
【0013】
このような接地端データを用いれば、基準位置毎に配置した一組の基準点を用いた補間法で或る回転速度における接地端形状を表現可能であり、さらに或る回転速度における基準点の座標値は他の回転速度における基準点の座標値に基づき近似により算出できる。したがって、実際に接地解析を実施していない回転速度の接地端形状を、接地解析した他の回転速度における接地端形状を表す基準点の座標値に基づき算出でき、解析する所望の回転速度の接地解析を全て実施する場合に比べて、計算コストを著しく低減することが可能となる。
【0014】
上記方法において、接地解析の回数を最小限に留めるとともに精度が許容範囲に収まる接地端形状を効果的に算出可能にするためには、
与えられた上限回転速度及び下限回転速度並びにこれらの中間速度についてタイヤ有限要素モデルを用いて接地解析を実行し、各回転速度における接地端実形状を算出するステップと、
予め設定される基準位置毎に配置される基準点での実座標値を用いて当該基準点間を補間する補間式で表現される接地端予測形状の座標値と前記接地端実形状の座標値の誤差が第一閾値よりも小さくなるまで新たな基準位置を追加する処理を実施するステップと、
各々の基準位置について、接地解析を実施した回転速度における実座標値を近似することにより、接地解析を実施していない回転速度における予測座標値を近似式で算出し、当該回転速度における接地解析を実施して得た実座標値と前記予測座標値の誤差が第二閾値よりも小さくなるまで新たな回転速度における接地解析を実施するステップと、
を実行して前記接地端データを生成することが好ましい。
【0015】
上記装置において、接地解析の回数を最小限に留めるとともに精度が許容範囲に収まる接地端形状を効果的に算出可能にするためには、前記データ取得部が上記ステップを実行して前記接地端データを生成することが好ましい。
【0016】
補間による接地端形状の算出精度を向上させるためには、接地端形状は、タイヤ前後方向に延びる溝でタイヤ幅方向に区画されるリブ又はブロック列毎に表現されることが好ましい。
【0017】
本発明は、上記方法を構成するステップを、プログラムの観点から特定することも可能である。
【0018】
すなわち、本発明のタイヤ接地端形状の予測プログラムは、
タイヤ有限要素モデルを用いた或る回転速度での接地解析結果の接地端形状を補間法で表現するための基準点であり且つタイヤ幅方向の複数箇所に設定される基準位置毎に配置される複数の基準点を一組とし、回転速度を異ならせて所定数の組を設けたときの各基準点の座標値に基づく接地端データを取得するステップと、
前記接地端データを用い、所望の回転速度における接地端形状の算出の基点となる複数の基準点の座標値を、各々の基準位置における前記所望の回転速度以外の回転速度における基準点の座標値を近似することにより算出するステップと、
算出した複数の基準点を補間することにより、前記所望の回転速度における接地端形状を算出するステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。このプログラムを実行することによっても、上記方法が奏する作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るタイヤ接地端形状の予測装置を模式的に示すブロック図。
図2A】タイヤ有限要素モデルを用いた接地解析結果である接地面形状の一例を示す図。
図2B図2Aの接地端形状を線分で表現した図。
図3A】複数の基準点を補間することで得られる接地端形状を示す図。
図3B】基準点の補間で予測される接地端の予測形状と実形状の誤差を示す図。
図4】接地端データに関する説明図。
図5A】或る基準位置における基準点の座標値と回転速度との関係を示す図。
図5B】或る基準位置における基準点の実座標値と、近似により得られる予測座標値との誤差を示す図。
図6】所望の回転速度における接地端形状の算出に関する説明図。
図7】タイヤ接地端形状の予測方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0021】
[タイヤ接地端形状の予測装置]
図1に示す本発明のタイヤ接地端形状の予測装置2は、予め与えられた所定荷重、所定内圧及び回転速度の条件下においてタイヤの接地端形状をコンピュータシミュレーションを用いて予測する装置である。
【0022】
図2Aは、タイヤ有限要素モデルを用いて接地解析を実行した解析結果である接地面形状の一例を示す図である。接地面は、図2Aに示すように、タイヤ幅方向WD及びタイヤ前後方向CDに広がっている。この明細書では、タイヤの接地面のうちタイヤ前後方向CDの界面を接地端として取り扱う。接地端形状は、図2Bに示すように、線分で表現される。
【0023】
具体的に、タイヤ接地端形状の予測装置2は、図1に示すように、初期設定部20と、データ取得部21と、基準点算出部22と、接地端形状算出部23とを有する。データ取得部21は、接地解析部24と、形状予測部25と、形状予測評価部26と、基準点予測部27と、基準点予測評価部28とを有する。これら各部20〜28は、CPU、メモリ、各種インターフェイス等を備えたパソコン等の情報処理装置においてCPUが予め記憶されている図示しない処理ルーチンを実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現される。
【0024】
図1に示す初期設定部20は、キーボードやマウス等の既知の操作部を介してユーザからの操作を受け付け、解析対象となるタイヤ有限要素(Finite Element)モデルに関する設定、解析で利用する上限回転速度及び下限回転速度、解析する回転速度、タイヤモデルにかける荷重値などの有限要素法を用いたシミュレーションに必要な各種解析条件の設定を実行し、これら設定値をメモリ(図示せず)に記憶する。タイヤ有限要素(FE)モデルは、有限要素法に対応した要素分割(例えば、メッシュ分割)により分割された有限個の要素で構成される。
【0025】
図1に示すデータ取得部21は、パラメータとして予め与えられた上限回転速度Vmax及び下限回転速度Vminで規定される範囲内において所望の回転速度Vrefの接地端形状を予測するために必要な接地端データを生成又は取得する。
【0026】
以下、接地端データについて説明する。
接地端形状は図2Bに示すように線分で表現でき、線分は、図3Aに示すように、線分上に配置される複数の基準点(P、P、P)間をスプライン補間等の補間法を用いて補間することで表現可能である。また、接地端形状は、図4に示すように速度(V〜V:nは自然数)に応じてタイヤ前後方向CDに変化するので、例えば或る基準位置B上にある基準点Pは、速度変化してもタイヤ幅方向WDの座標値xは変化せず、タイヤ前後方向CDの座標値yのみが変化することになる。このことから、或る基準位置Bにおける速度とタイヤ前後方向CDの座標値yとの関係は、図5Aに示すように、基準点(PV1、PV2、PV4)の座標値yに対する近似式で表現可能である。
【0027】
接地端データは、上記特性を利用して生成されるもので、図4に示す各基準点PVjiの座標値に基づくデータである。PVjは回転速度Vにおける基準点を表す。Pは基準位置Bにおける基準点を表す。i=1〜mで、j=1〜nである。所定数nは、回転速度を異ならせて接地解析を実施した数であり、mは基準位置の数を表す。すなわち、タイヤ有限要素モデルを用いた或る回転速度Vでの接地解析結果の接地端形状を補間法で表現するための基準点PVjであり且つタイヤ幅方向WDの複数箇所に設定される基準位置毎(B〜B)に配置される複数の基準点(PVj〜PVj)を一組とし、回転速度Vを異ならせて所定数nの組を設けたときの各基準点PV1〜n1〜mの座標値に基づくデータである。
【0028】
座標値に基づくデータとは、回転速度を異ならせた複数の基準点PV1〜n1〜mの座標値に基づいて算出されるデータであればよいという意味である。例えばこれら複数の基準点PV1〜n1〜mの座標値を表すデータそのものでもよく、これら座標値から導出される近似式データ又は補間式データでもよい。近似式データは、例えば、所望の回転速度における複数の基準点の座標値を他の回転速度における基準点の座標値から算出するための近似式データが挙げられる。補間式データは、例えば、或る回転速度における複数の基準点から接地端形状を導出するための補間式データが挙げられる。また、補間式及び近似式を包括し、パラメータとして所望の回転速度を入力すれば、接地端形状を出力する多項式等の式データであってもよい。
【0029】
図1に示す基準点算出部22は、接地端データを用い、図6に例示するように、所望の回転速度Vrefにおける接地端形状の算出の基点となる複数の基準点PVref1〜5(図中にて三角で示す)の座標値を、各々の基準位置B1〜5における所望の回転速度Vref以外の回転速度における基準点PV1〜n1〜5(図中にて円で示す)の座標値を近似することにより算出する。
【0030】
図1に示す接地端形状算出部23は、図6に示すように、基準点算出部22が算出した複数の基準点(図中にて三角で示す)をスプライン補間等の補間法で補間することにより、所望の回転速度Vrefにおける接地端形状Srefを算出する。
【0031】
上記接地端データは、接地端形状を基準点間の補間及び近似に基づき表現するので、予測した接地端形状と接地解析による接地端実形状には誤差が多少ならずとも含まれる。そこで、誤差を許容範囲までに小さくするために、データ取得部21は、各部24〜28を有し、これらによって下記のように接地端データを生成する。
【0032】
接地解析部24は、予め設定されたタイヤ有限要素モデル、所定荷重、所定内圧及び回転速度を含む解析条件の下、タイヤ有限要素モデルを用いた接地解析を実施し、接地端形状を算出する。
【0033】
形状予測部25は、予め設定される基準位置B毎に配置される基準点での実座標値を用いて当該基準点間を補間する補間式で表現される接地端予測形状Sを算出する。実座標値は、接地解析部24が算出した接地端形状の値である。図3Aに例示するように、基準位置3つの場合には、基準点P1〜3の実座標値を用いて接地端形状Sを算出する。基準位置の初期値は、接地端形状の両端及び当該両端の中点となる。
【0034】
形状予測評価部26は、形状予測部25が補間式により算出した接地端予測形状Sの妥当性を評価する補間式評価部とも呼べる。そのために、形状予測評価部26は、形状予測部25が算出した接地端予測形状Sの座標値と、接地解析部24で求めた接地端実形状Rの座標値との誤差が第一閾値U1よりも小さいか否かを判定する。具体的には、図3Aに示す基準位置が3つの状態であれば、図3Bに示すように新たな基準位置Bを追加し、基準位置Bにおける基準点P’を補間法により算出する。新たな基準位置は既存の基準位置間の中間に設定する。次に、予測形状の基準点P’の座標値と実形状の基準点Pの座標値の誤差D1が第一閾値U1よりも小さいかを判断する。条件が成立しない場合は、予測形状Sが妥当でなく、条件が成立する場合には、予測形状Sが妥当となる。判別式は、(P’i+1−Pi+1<U1である。Pi+1は、有限要素解析結果の接地端座標値であり、P’i+1は、P1〜iまでの座標値から補間により予測した値となる。閾値U1は、接地長の2〜5%の値に設定されているが、解析要望に応じて種々変更可能である。なお、図3A及び図3Bは説明のための図面であるので、図4とは符合しない。
【0035】
形状予測評価部26の判定結果が成立するまで新たな基準位置を追加する処理が繰り返される。すなわち、誤差が許容範囲に収まるのに必要な基準位置の数が決定される。
【0036】
図1に示す基準点予測部27は、各々の基準位置において、接地解析を実施した回転速度における実座標値を近似することにより、接地解析を実施していない回転速度における予測座標値を近似式で算出する。例えば基準位置Bの例では、図5Bに示すように、接地解析を実施した回転速度(V、V、V)における実座標値(PV1、PV2、PV3)を近似することにより、接地解析を実施していない回転速度Vにおける予測座標値P’V3を算出する。
【0037】
図1に示す基準点予測評価部28は、基準点予測部27が算出した近似式の妥当性を評価する近似式評価部とも呼べる。そのために、接地解析部24が回転速度Vにおける接地解析を実施して得た基準位置Bの実座標値PV3と、予測座標値の誤差D2が第二閾値U2よりも小さいか否かを判定する。条件が成立しない場合は、近似式が妥当でなく、条件が成立する場合には、近似式が妥当となる。判別式は、1/m×Σ(P’V(j+1)−PV(j+1)<U2である。PV(j+1)は、回転速度V(j+1)の有限要素解析結果の接地端座標値であり、P’V(j+1)は、PV1〜PVjまでの座標値から近似式により予測した値となる。閾値U2は、接地長の2〜5%の値に設定されているが、解析要望に応じて種々変更可能である。
【0038】
基準点予測評価部28の判定結果が成立するまで新たな回転速度における接地解析が実施される。すなわち、誤差が許容範囲に収まるまでに必要な回数分の接地解析が実施される。
【0039】
なお、本実施形態では、図2A及び図2Bに示すように、接地端形状は、タイヤ前後方向CDに延びる溝10でタイヤ幅方向WDに区画されるリブ又はブロック列毎に表現される。例えば、本実施形態では、同図に示すように5つのリブを有するので、5つの補間式で各リブの接地端形状が表現される。
【0040】
[タイヤ接地端形状の予測方法]
上記予測装置2を用いて、タイヤ接地端形状を予測する方法を、図7のフローチャートを主に参照しつつ説明する。
【0041】
まず、ステップST1において、図1に示す初期設定部20は、操作部(図示せず)を介してユーザの操作を受け付け、タイヤモデル、上限回転速度Vmax、下限回転速度Vmin及び解析する所望の回転速度Vrefなどシミュレーションに必要となる各種設定を行う。
【0042】
次のステップST2において、図1に示す接地解析部24は、設定値に基づき3次元タイヤ有限要素モデルを生成する。次のステップST3において、接地解析部24は、与えられた上限回転速度Vmax及び下限回転速度Vmin並びにこれらの中間速度についてタイヤ有限要素モデルを用いて接地解析を実行し、各回転速度における接地端実形状を算出する。
【0043】
次のステップST4において、図1に示す形状予測部25は、各速度におけるリブ毎に、両端を含む3つの基準点の座標値を取得する。この場合、初期の基準位置は3つに設定されており、各々の基準位置における基準点の座標値を取得する。次のステップST5において、形状予測部25は、例えば図3Aに示すように、座標群P1〜3をスプライン補間し、接地端予測形状Sを算出する。次のステップST6において、形状予測部25は、図3Bに示すように、新たな基準位置を追加し、当該基準位置における基準点の座標値を予測する。次のステップST7において、形状予測評価部26は、補間により予測した座標値と解析結果の座標値の誤差が第一閾値よりも小さいかを判定する。ステップST7において条件が成立するまで(ST7:NO)、ステップST5〜7までを繰り返し、新たな基準位置を追加する。
【0044】
すなわち、上記ステップST5〜7を実行することにより、予め設定される基準位置毎に配置される基準点での実座標値を用いて当該基準点間を補間する補間式で表現される接地端予測形状の座標値と前記接地端実形状の座標値の誤差が第一閾値よりも小さくなるまで新たな基準位置を追加する処理が実行される。
【0045】
ステップST7において条件が成立すると判定した場合(ST7:YES)には、次のステップST8において、基準点予測部27は、各々の基準位置毎に、速度毎の接地端を表す補間式から接地端の速度依存の近似式(図5Aの曲線参照)を導出し、新たな回転速度における予測座標値を算出する。すなわち、基準点予測部27は、図5Bに例示するように、接地解析した回転速度(V、V、V)における実座標値を近似することにより、接地解析を実施していない回転速度V3における予測座標値P’V3を近似式で算出する。
【0046】
次のステップST9において、接地解析部24は、新たな回転速度Vにおいて接地解析を実施し、図5Bに示す実座標値PV3を取得する。次のステップST10において、基準点予測部27は、新たな回転速度Vにおける予測座標値P’V3と実座標値PV3の誤差が第二閾値U2よりも小さいかを判定する。ステップST10において条件が成立するまで(ST10:NO)、ステップST8〜10を繰り返し、新たな回転速度の接地解析を実施する。
【0047】
すなわち、上記ステップST8〜10を実行することにより、各々の基準位置について、接地解析を実施した回転速度における実座標値を近似することにより、接地解析を実施していない回転速度における予測座標値を近似式で算出し、当該回転速度における接地解析を実施して得た実座標値と前記予測座標値の誤差が第二閾値よりも小さくなるまで新たな回転速度における接地解析を実施する処理が実行される。
【0048】
上記で接地端データが生成される。次のステップST11において、図1に示す基準点算出部22は、接地端データ(各基準点の座標値、補間式データ及び近似データ)を用い、例えば図6に示すように、所望の回転速度Vrefにおける接地端形状の算出の基点となる複数の基準点PVref1〜5(図中にて三角で示す)の座標値を、各々の基準位置B1〜5における所望の回転速度Vref以外の回転速度における基準点PV1〜n1〜5(図中にて円で示す)の座標値を近似することにより算出する。
【0049】
次のステップST12において、図1に示す接地端形状算出部23は、図6に示すように、基準点算出部22が算出した基準点PVref1〜5間をスプライン補間することにより接地端形状Srefを算出する。
【0050】
上記の予測装置2及び予測方法を実施すれば、例えば17段階の回転速度の接地端形状を予測するために、5段階の回転速度の接地解析で足り、残り12段階の回転速度の接地形状は予測できた。従って、計算コストを3割程度まで削減することができた。
【0051】
以上のように、本実施形態のタイヤ接地端形状の予測方法は、タイヤ有限要素モデルを用いた或る回転速度Vでの接地解析結果の接地端形状を補間法で表現するための基準点Pであり且つタイヤ幅方向WDの複数箇所に設定される基準位置毎(B〜B)に配置される複数の基準点P1〜mを一組とし、回転速度を異ならせて所定数の組nを設けたときの各基準点の座標値PVjに基づく接地端データを取得するステップ(ST2〜10)と、
接地端データを用い、所望の回転速度Vrefにおける接地端形状の算出の基点となる複数の基準点の座標値を、各々の基準位置B1〜5における所望の回転速度Vref以外の回転速度における基準点の座標値を近似することにより算出するステップ(ST11)と、
算出した複数の基準点を補間することにより、前記所望の回転速度における接地端形状を算出するステップ(ST12)と、を含む。
【0052】
また、本実施形態のタイヤ接地端形状の予測装置2は、タイヤ有限要素モデルを用いた或る回転速度Vでの接地解析結果の接地端形状を補間法で表現するための基準点Pであり且つタイヤ幅方向WDの複数箇所に設定される基準位置毎(B〜B)に配置される複数の基準点P1〜mを一組とし、回転速度を異ならせて所定数nの組を設けたときの各基準点の座標値PVjに基づく接地端データを取得するデータ取得部21と、データ取得部21が取得した接地端データを用い、所望の回転速度Vrefにおける接地端形状の算出の基点となる複数の基準点の座標値を、各々の基準位置における前記所望の回転速度以外の回転速度における基準点の座標値を近似することにより算出する基準点算出部22と、算出した複数の基準点を補間することにより、所望の回転速度Vrefにおける接地端形状を算出する接地端形状算出部23と、を備える。
【0053】
接地端データは、回転速度を異ならせた複数の基準点の座標値に基づくデータであればよいという意味である。例えばこれら基準点の座標値を表すデータそのものでもよく、これら基準点の座標値から導出される近似式データ又は補間式データでもよい。近似式データは、例えば、所望の回転速度における複数の基準点の座標値を他の回転速度における基準点の座標値から算出するための近似式データが挙げられる。補間式データは、例えば、或る回転速度における複数の基準点から接地端形状を導出するための補間式データが挙げられる。
【0054】
接地端データの取得には、タイヤ有限要素モデルを用いた接地解析を実施して接地端データを生成することや、既に生成された接地端データを記憶部から取得することが挙げられる。本実施形態は、接地端解析を実施してデータを生成している。
【0055】
このような接地端データを用いれば、基準位置毎に配置した一組の基準点を用いた補間法で或る回転速度における接地端形状を表現可能であり、さらに或る回転速度における基準点の座標値は他の回転速度における基準点の座標値に基づき近似により算出できる。したがって、実際に接地解析を実施していない回転速度の接地端形状を、接地解析した他の回転速度における接地端形状を表す基準点の座標値に基づき算出でき、解析する所望の回転速度の接地解析を全て実施する場合に比べて、計算コストを著しく低減することが可能となる。
【0056】
さらに、本実施形態では、与えられた上限回転速度Vmax及び下限回転速度Vmin並びにこれらの中間速度についてタイヤ有限要素モデルを用いて接地解析を実行し、各回転速度における接地端実形状を算出するステップ(ST3)と、
予め設定される基準位置毎に配置される基準点での実座標値を用いて当該基準点間を補間する補間式で表現される接地端予測形状の座標値と前記接地端実形状の座標値の誤差が第一閾値よりも小さくなるまで新たな基準位置を追加する処理を実施するステップ(ST5〜7)と、
各々の基準位置について、接地解析を実施した回転速度における実座標値を近似することにより、接地解析を実施していない回転速度における予測座標値を近似式で算出し、当該回転速度における接地解析を実施して得た実座標値と前記予測座標値の誤差が第二閾値よりも小さくなるまで新たな回転速度における接地解析を実施するステップ(ST8〜10)と、を実行して接地端データを生成している。
【0057】
このように、基準点間の補間で表現される接地端形状の誤差が許容範囲に収まるまで基準位置を追加し、且つ、接地解析した回転速度の基準点データに基づき接地解析してない回転速度の基準点を近似で求めた場合の誤差が許容範囲に収まるまで接地解析データを増やすので、接地解析の回数を最小限に留めるとともに精度が許容範囲に収まる接地端形状を効果的に算出可能となる。
【0058】
さらに、本実施形態では、接地端形状は、タイヤ前後方向CDに延びる溝10でタイヤ幅方向WDに区画されるリブ又はブロック列毎に表現される。接地端形状は、リブ又はブロック列単位で速度変化に応じて変化するので、タイヤ全体を一つの接地端形状として取り扱うよりも、補間による接地端形状の算出精度を向上させることが可能となる。
【0059】
本実施形態に係るタイヤ接地端形状の予測プログラムは、上記タイヤ接地端形状の予測方法を構成する各ステップをコンピュータに実行させるプログラムである。
これらプログラムを実行することによっても、上記方法の奏する作用効果を得ることが可能となる。言い換えると、上記方法を使用しているとも言える。
【0060】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0061】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
P…基準点
1〜m…基準位置
21…データ取得部
22…基準点算出部
23…接地端形状算出部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7