(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、「イソシアネート基を末端に有する脂環式ウレタンプレポリマー」を含む。
本発明において、「脂環式ウレタンプレポリマー」は、脂環式化合物が含む「脂環構造に由来する化学構造」を有するウレタンプレポリマーをいう。
【0023】
脂環構造とは、炭素原子が環状に結合した構造であるが、芳香環構造に属さない、炭素環式構造をいい、例えば、シクロアルキル基等が該当する。
「脂環構造に由来する化学構造」とは、そのような芳香環構造に属さない炭素環式構造そのもの、及びそのような炭素環式構造が置換された構造(又は置換基を有する炭素環式構造)をいう。
【0024】
本明細書において、「脂環式化合物」とは、芳香環構造を有さない炭素環式化合物をいう。そのような脂環式化合物の具体例として、シクロアルカン及びシクロアルケンを例示できる。
単環のシクロアルカンとして、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロへプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、及びシクロドデカンが挙げられる。
【0025】
単環のシクロアルケンとして、シクロプロペン、シクロブテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、及びシクロオクテンが挙げられる。
二環式アルカンとして、ビシクロウンデカン及びデカヒドロナフタレンが挙げられる。
二環式アルケンとして、ノルボルネン及びノルボルネンジエンが挙げられる。
【0026】
本明細書において「イソシアネート基を末端に有する脂環式ウレタンプレポリマー」とは、通常「ウレタンプレポリマー」と理解されるものであって、イソシアネート基を両末端に有し、かつ、ポリカーボネートポリオールに由来する化学構造を有するウレタンプレポリマーをいう。本発明に関する「脂環式ウレタンプレポリマー」の末端に位置するイソシアネート基は、少なくとも1つが芳香環に由来する化学構造に結合していることが必要である。尚、本発明に係る脂環式ウレタンプレポリマーは、二つ以上の末端を有し、二つの末端を有することが好ましい。その少なくとも一つの末端に、好ましくは二つ以上の末端に、特に好ましくは二つの末端にイソシアネート基を有する。その末端に位置するイソシアネート基の少なくとも1つが、芳香環に由来する化学構造と結合している。
【0027】
ポリカーボネートポリオールに由来する化学構造は、目的とする湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる限り、ウレタンプレポリマー中に、いかなる形で組み込まれていても良い。すなわち、ポリカーボネートポリオールに由来する化学構造は、任意の位置が任意の置換基で置換されていても良いが、置換されていなくても良い。
【0028】
本発明では、「ポリカーボネートポリオール」とは、ウレタン結合を有さず、後述のポリカーボネーウレタンポリオールと区別され得る。
本発明が目的とする湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる限り、ポリカーボネートポリオールは特に限定されるものではない。
【0029】
ポリカーボネートポリオールとして、具体的に、炭素数2〜18のポリオールと炭素数3〜18のカーボネート化合物又はホスゲンを反応させて得られるもの;及び
炭素数3〜18の環状カーボネート化合物を、低分子ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール等のポリオールで開環重合させて得られるものを例示できる。
【0030】
炭素数2〜18のポリオールとして、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールが挙げられる。
【0031】
炭素数3〜18のカーボネート化合物として、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、及びジフェニルカーボネートが挙げられる。これらのポリカーボネートポリオールは単独で使用しても良いし、複数で使用しても良い。
本発明では、炭素数4〜12のポリオールをその構成成分とするポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0032】
ポリカーボネートポリオールは、脂肪族ポリカーボネートポリオールであることが好ましく、特に、脂肪族ポリカーボネートジオールであることが好ましい。ポリオールの数平均分子量(Mn)は400〜8000が好ましく、500〜4000が特に好ましい。
本明細書における数平均分子量(Mn)とは、ポリオールのMnであっても、他成分のMnであっても、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定され、換算(又は修正)された値をいう。より具体的には、Mnは、下記のGPC装置及び測定方法を用いて測定され、換算された値をいう。GPC装置は、ウォーターズ(Waters)社製の600Eを用い、検出器として、RI(Waters410)を用いた。GPCカラムとして、ショーデックス(Shodex)社製のLF−804 2本を用いた。試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を1.0ml/min、カラム温度を40℃にて流して測定された値を、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用して得られた検量線を用いて換算を行い、Mnを求めた。
【0033】
本発明では、「脂環式ウレタンプレポリマー」は、脂環式ポリカーボネートウレタンポリオールと芳香族イソシアネートを混合することで得ることができる。脂環式ポリカーボネートウレタンポリオールと芳香族イソシアネートとを混合する際、ポリカーボネートポリオールをさらに混合することが脂環式ウレタンプレポリマーにとっては好ましい。
脂環式ポリカーボネートウレタンポリオールと芳香族イソシアネートを混合することで、末端イソシアネート基の少なくとも1つが、芳香環に由来する化学構造と結合する脂環式ウレタンプレポリマーを得ることができる。
【0034】
本明細書において「芳香環に由来する化学構造」とは、「芳香環そのもの」、若しくは「芳香環が置換された化学構造」を意味する。従って、末端イソシアネート基の少なくとも1つは、「芳香環そのもの」と結合する(即ち、芳香環と直接結合する)、又は「芳香環が置換された化学構造」と結合する(即ち、芳香環が有する置換基、例えば、アルキレン基(炭素原子数は、1〜3であることが好ましい)を介して、芳香環と結合する)。これらの芳香環は、更に別の置換基を有してよい。また、芳香環は縮環していてよい。「芳香環」として、例えば、フェニレン(−C
6H
4−)及びナフチレン(−C
10H
8−)を例示できる。芳香環とイソシアネート基との間の置換基として、例えば、メチレン基(−CH
2−)、エチレン基(−CH
2−CH
2−)等のアルキレン基を例示できる。別の置換基として、例えば、メチル及びエチル等のアルキル基、フェニルメチル等のアラルキル基、フェニル等のアリール基を例示できる。「芳香環そのもの」として、例えば、フェニレン(−C
6H
4−)、メチルフェニレン(−C
6H
3(CH
3)−)及びメチレン−ビス(4,1)フェニレン(−C
6H
4−CH
2−C
6H
4−)等を例示できる。芳香環が置換された化学構造として、例えば、o−キシリレン、m−キシリレン及びp−キシリレン(−CH
2−C
6H
4−CH
2−)等を例示できる。
【0035】
本明細書において、脂環式ポリカーボネートウレタンポリオールは、ポリカーボネートポリオールと脂環式イソシアネートとを反応させて得ることができる。
脂環式ポリカーボネートウレタンポリオールは、ポリカーボネートジオールを脂環式ジイソシアネートで鎖延長して製造することができる。鎖延長されたポリマーは、数平均分子量800〜16000、末端水酸基でウレタン結合を有するポリオール、すなわち、脂環式ポリカーボネートウレタンポリオールとなる。
【0036】
本発明に関する脂環式ポリカーボネートウレタンポリオールは、末端水酸基を有しており、以下の式(I)で示される。
(I):HO−[R
1−OCO−NH−R
2−NH−COO]
n−R
1−OH
[ 式(I)において、R
1は以下の式(II)で示される。
(II):−[X
1−OCOO−X
2−OCOO]
m−X
1−
R
2は、6〜14の炭素原子を有する脂環構造に由来する化学構造を表し、具体的には、イソホリレン(1−メチレン−1,3,3−トリメチルシクロへキサン)、1,3−ジメチレンシクロへキサンおよび4,4’−ジシクロヘキシルメチレンであることが好ましい。
式(II)において、X
1およびX
2は、同一又は異なる2〜18の炭素原子を有するアルキレン、シクロアルキレンまたはオキサアルキレン基を表し、具体的には、1,3−プロピレン、1,4−ブチレン、1,5−ペンチレン、1,6−ヘキシレン、3−メチル−1,5−ペンチレン、1,7−ヘプチレン、1,8−オクチレン、1,9−ノニレン、1,10−デシレン、1,12−ドデシレン、3−オキサ−1,5−ペンチレン、3,6−ジオキサ−1,8−オクチレン、3,6,9−トリオキサ−1,11−ウンデシレンおよび7−オキサ−1,3−トリデシレンであることが好ましい。
式(I)および(II)において、mおよびnは、自然数であることが好ましい。
mは、1〜40であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、2〜10であることが特に好ましい。nは、1〜5であることが好ましく、1〜2であることが特に好ましい。]
【0037】
本発明において、イソシアネート化合物は、目的とするウレタンプレポリマーを得ることができれば特に制限されるものではなく、通常のポリウレタン製造に使用されるものであれば使用することができる。イソシアネート化合物として、一分子当たりに含まれるイソシアネート基の数が平均1〜3個のものが好ましく、特に、二官能性イソシアネート化合物、いわゆるジイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
本発明では、芳香族イソシアネート及び脂環式イソシアネートは、単独で又は組み合わせて使用することができ、脂肪族イソシアネートと組み合わせて使用することができる。
【0039】
本発明において「芳香族イソシアネート」とは、芳香環を有するイソシアネート化合物をいい、イソシアネート基がその芳香環と直接結合している必要はない。尚、芳香環は、二つ以上のベンゼン環が縮環していてもよい。
芳香族イソシアネートとして、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、及びキシリレンジイソシアネート(XDI:OCN−CH
2−C
6H
4−CH
2−NCO)等を例示できる。
これらの芳香族イソシアネート化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができるが、キシリレンジイソシアネート(XDI)を含むことが最も好ましい。キシリレンジイソシアネートは、芳香環を有するので、イソシアネート基が芳香環に直接結合していなくても、芳香族イソシアネートに該当する。
【0040】
脂肪族イソシアネートとは、鎖状の炭化水素鎖を有し、その炭化水素鎖にイソシアネート基が直接結合している化合物であって、環状の炭化水素鎖を有さず、かつ、芳香環を有さない化合物をいう。
脂肪族イソシアネートとして、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、及び2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)等を例示できる。
【0041】
脂環式イソシアネートとは、環状の炭化水素鎖を有し、鎖状の炭化水素鎖を有して良く、かつ、芳香環を有さない化合物をいう。イソシアネート基は、環状の炭化水素鎖と直接結合しても、有し得る鎖状の炭化水素鎖と直接結合してもよい。
脂環式イソシアネートとして、例えば、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、及び1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン等を例示できる。
これら脂環式イソシアネートは、単独で又は組み合わせて使用することができるが、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)を含むことが最も望ましい。
【0042】
本発明において「脂環式ウレタンプレポリマー」は、二官能性ポリオール及び二官能性イソシアネートを反応させて製造することが、得られる湿気硬化型ホットメルト接着剤の熱安定性及び製造方法(及びその製造工程)の制御の点から、より好ましい。尚、1モルの二官能性ポリオールに対して2モルの二官能性イソシアネートを用いると、比較的容易に目的とする脂環式ウレタンプレポリマーを製造できるので好ましい。
【0043】
従って、本発明の実施形態として、先ず、ポリカーボネートジオールとイソホロンジイソシアネートを反応させて脂環式ポリカーボネートウレタンポリオールを製造し、次に、上記脂環式ポリカーボネートウレタンポリオール、キシリレンジイソシアネートおよびポリカーボネートジオールを混合して脂環式ウレタンプレポリマーを製造することが最も好ましい。
【0044】
最終生成物である湿気硬化型ホットメルト接着剤は、上記最も好ましい実施形態の脂環式ウレタンプレポリマーを主成分として含む場合、両末端のイソシアネート基の少なくとも1つが後添加のキシリレンジイソシアネートの芳香環にメチレン基を介して結合するとともに、ポリカーボネートポリオールに由来する化学構造も有する。尚、上記最も好ましい実施形態では、芳香族イソシアネートとしてキシリレンジイソシアネートを添加するので、脂環式ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基は芳香環に直接結合せず、メチレン基を介して芳香環に結合する。
【0045】
芳香環に由来する化学構造と末端イソシアネート基との結合は、種々の装置(核磁気共鳴スペクトル(NMR)や赤外吸収スペクトル(IR))で解析可能である。
湿気硬化型ホットメルト接着剤は、両末端のイソシアネート基の少なくとも1つが芳香環に由来する化学構造に結合するので、接着性、耐光性および硬化性に優れる。
【0046】
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、120℃での溶融粘度が、3,000mPa・s〜10,000mPa・sであることが好ましく、4,000mPa・s〜8,0000mPa・sであることがより好ましく、5,000mPa・s〜8,000mPa・sであることが特に好ましい。
本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、120℃での溶融粘度が3,000mPa・s〜10,000mPa・sである場合、自動車内装材への塗工性が著しく向上する。
本明細書において120℃での溶融粘度は、湿気硬化型ホットメルト接着剤を120℃で溶融し、ブルックフィールド粘度計(ブルックフィールド社製)を用いて、120℃で粘度を測定した値をいう。粘度を測定する際、番号27のローターを使用した。
【0047】
本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、脂環式ウレタンプレポリマーを形成する脂環式ポリカーボネートウレタンポリオールとイソシアネート化合物との反応に悪影響を与えず、本発明が目的とする湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる限り、その他の添加剤を含むことができる。添加剤を、湿気硬化型ホットメルト接着剤に添加する時期は、本発明が目的とする湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。添加剤は、例えば、脂環式ウレタンプレポリマーを合成する際に、脂環式ポリカーボネートウレタンポリオール及び芳香族イソシアネート化合物と一緒に添加して良く、先に、ポリカーボネートウレタンポリオールとイソシアネート化合物を反応させて脂環式ウレタンプレポリマーを合成し、その後、添加しても良い。
【0048】
「添加剤」とは、湿気硬化型ホットメルト接着剤に通常使用されるものであって、本発明が目的とする湿気硬化型ホットメルト接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。そのような添加剤として、例えば、可塑剤、酸化防止剤、顔料、紫外線吸収剤、難燃剤、触媒、及びワックス等を例示することができる。
【0049】
「可塑剤」として、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、及びミネラルスピリット等を例示できる。
「酸化防止剤」として、例えば、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、及びアミン系酸化防止剤等を例示できる。
「顔料」として、例えば、酸化チタン及びカーボンブラック等を例示できる。
【0050】
「紫外線吸収剤」として、例えば、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン、ベンゾエート、及びヒドロキシフェニルトリアジン等を例示できる。
「難燃剤」として、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、及び金属水酸化物系難燃剤等を例示できる。
【0051】
「触媒」として、金属系触媒、例えば錫系触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジブチルチンジラウレート、及びジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、及びオクテン酸鉛等)、そのほかの金属系触媒(ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩等)、及びアミン系触媒、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルへキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類、及びジアルキルアミノアルキルアミン類等を例示できる。
「ワックス」として、例えば、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックス等のワックスを例示できる。
【0052】
本発明に係る自動車内装材は、一般的には、基材と被着体とが、上記湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して貼り付けられることで製造される。基材であるプラスチック材料に、被着体を貼り付ける際、湿気硬化型ホットメルト接着剤は、基材側に塗布しても、被着体側に塗布しても良い。
本発明において自動車内装材の「被着体」は、特に限定されないが、繊維質材料が好ましい。繊維質材料とは、合成繊維又は天然繊維を紡績機でシート状に編んだ材料をいう。
【0053】
本発明では、自動車内装材の「基材」は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂として、例えば、
スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、及びスチレン−イタコン酸共重合体等の耐熱性ポリスチレン系樹脂;
PPE系樹脂とPS系樹脂との樹脂混合物、及びPPEへのスチレングラフト重合体等のスチレン・フェニレンエーテル共重合体等の変性PPE系樹脂;、
ポリカーボネート樹脂;及び
ポリブチレンテレフタレート及びポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂は、単独で又は組み合わせて用いることができる。
基材となる熱可塑性樹脂はポリエチレンテレフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートは非発泡体でも、発泡体でも差し支えない。
【0054】
本発明の自動車内装材を製造するために、特別な装置を使う必要はない。搬送機、コーター、プレス機、ヒーター、及び裁断機等を含む一般的に既知の製造装置を用いて製造することができる。
例えば、基材及び被着体を搬送機で流しながら、本発明の湿気硬化型ホットメルト接着剤をコーターで基材若しくは被着体に塗布する。塗布する時の温度は、ヒーターで所定の温度に制御する。被着体をプレス機で基材に軽く押し付け、湿気硬化型ホットメルト接着剤を介して、被着体と基材とを貼り合わせる。その後、貼りあわされた被着体と基材を放冷し、そのまま搬送機で流して、湿気硬化型ホットメルト接着剤を固化させる。その後、被着体が貼られた基材を裁断機で適当な大きさに裁断加工する。
本発明の自動車内装材は、ガラスを透過した太陽光及び夏場の高温によって湿気硬化型ホットメルト接着剤が劣化しないので、夏場でも、基材と被着体が剥がれ難い。
【0055】
本発明の主な態様を以下に示す。
1.イソシアネート基を両末端に有する脂環式ウレタンプレポリマーを含む湿気硬化型ホットメルト接着剤であって、脂環式ウレタンプレポリマーは、ポリカーボネートポリオールに由来する化学構造を有し、両末端のイソシアネート基の少なくとも1つが芳香環に由来する化学構造に結合する湿気硬化型ホットメルト接着剤。
2.脂環式ウレタンプレポリマーは、脂環式ポリカーボネートウレタンポリオールと芳香族イソシアネートを混合して得られるプレポリマーを含み、脂環式ポリカーボネートウレタンポリオールは、ポリカーボネートポリオールと脂環式イソシアネートを混合して得られる脂環式ポリオールを含む、上記1に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
3.脂環式ウレタンプレポリマーは、脂環式ポリカーボネートウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオールおよび芳香族イソシアネートを混合して得られるプレポリマーを含む、上記2に記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
4.自動車内装材を製造するために使用される上記1〜3のいずれかに記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤。
5.上記1〜4のいずれかに記載の湿気硬化型ホットメルト接着剤を塗布して得られる自動車内装材。
6.下記工程(i)及び(ii)を含む、湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造方法:
(i)ポリカーボネートポリオールと脂環式イソシアネートを混合して脂環式ポリカーボネートウレタンポリオールを製造する工程;及び
(ii)上記脂環式ポリカーボネートウレタンポリオールと芳香族イソシアネートを混合して、脂環式ウレタンプレポリマーを製造する工程。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で使用する湿気硬化型ホットメルト接着剤の成分を以下に挙げる。
【0057】
<(A)ポリカーボネートポリオール>
(A1)ポリカーボネートジオール[旭化成ケミカルズ社製 デュラノールG3450J(製品名)、水酸基価140(mgKOH/g)、数平均分子量(Mn)約800、1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールから製造されるポリカーボネートポリオール]
(A2)ポリカーボネートジオール[旭化成ケミカルズ社製 デュラノールG3452(製品名)、水酸基価56(mgKOH/g)、数平均分子量(Mw)約2000、1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールから製造されるポリカーボネートポリオール]
(A3)ポリカーボネートジオール[旭化成ケミカルズ社製 デュラノールT5652(製品名)、水酸基価56(mgKOH/g)、数平均分子量(Mw)約2000、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから製造されるポリカーボネートポリオール]
(A4)ポリカーボネートジオール[旭化成ケミカルズ社製 デュラノールT5650E(製品名)、水酸基価225(mgKOH/g)、数平均分子量(Mw)約500、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールから製造されるポリカーボネートポリオール]
<(A’)ポリエステルポリオール>
(A’5)ポリエステルポリオール[豊国製油社製 HS2F−231AS(製品名)、水酸基価56(mgKOH/g)、数平均分子量(Mn)約2000、アジピン酸、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールから製造されるポリエステルポリオール]
【0058】
<(B)イソシアネート化合物>
(B1)脂環構造を有するイソシアネート化合物(脂環式イソシアネート化合物)
(B1−1)IPDI(5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)[住化バイエルウレタン社製 デスモジュールI(製品名)]
(B1−2)H
12MDI(ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)[住化バイエルウレタン社製 デスモジュールW(製品名)]
(B1−3)H
6XDI(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)[三井化学社製 タケネート600(製品名)]
【0059】
脂環構造を有さないイソシアネート化合物
(B2)脂肪族イソシアネート化合物
(B2−1)HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)[旭化成ケミカルズ社製 デュラネート50M-HDI(製品名)]
(B3)芳香族イソシアネート化合物
(B3−1)XDI(キシリレンジイソシアネート)[三井化学社製 タケネート500(製品名)]
【0060】
<添加剤>
(ca1)硬化触媒1ジモルフォリノジエチルエーテル[サンアプロ社製 U−Cat660M(製品名)、アミン系硬化触媒]
(UA1)紫外線吸収剤1[BASF社製 チヌビン479(製品名)、ヒドロキシトリアジン系紫外線吸収剤]
(AO1)酸化防止剤1[アデカ社製 アデカスタブAO−50(製品名)、フェノール系酸化防止剤]
(LS1)光安定剤1[永光化学社製 エバーソーブ93(製品名)、アミン系酸化防止剤]
【0061】
<ポリカーボネートウレタンポリオールの合成>
表1に示す重量部(組成)のポリカーボネートジオール(A1)〜(A4)、イソシアネート化合物(B1−1)〜(B3−1)を混合して、ポリカーボネートウレタンポリオール(PCUO1〜PCUO6)を製造した。具体的にはポリカーボネートジオールを100℃、減圧下で1時間攪拌した。水分を取り除いた後、同じ温度でイソシアネート化合物を添加し、更に減圧下で2時間攪拌し、ポリカーボネートウレタンポリオールを得た。得られたポリカーボネートウレタンポリオールはJIS K 7301に準ずる方法で残存するイソシアネート量が滴定され、残存するイソシアネートが無い事が確認された。尚、PCUO1〜PCUO4は、脂環構造を有するが、PCUO’5〜PCUO’6は、脂環構造を有さない。
【0062】
【表1】
【0063】
<湿気硬化型ホットメルト接着剤の製造>
実施例1〜7および比較例1〜8
PCUO1〜PCUO’6に対し、その他の原料を表2及び表3に示す割合で混合し、湿気硬化型ホットメルト接着剤を製造した。具体的には、イソシアネート化合物以外の全ての原料を反応容器に入れ、120℃に昇温し、減圧下で1時間撹拌した。水分を取り除いた後、同温度でイソシアネート化合物を添加し、減圧下で2時間撹拌し、湿気硬化型ホットメルト接着剤を得た。
湿気硬化型ホットメルト接着剤の溶融粘度、および末端イソシアネート基が芳香環に由来する化学構造と結合しているか否かを評価した。
【0064】
<塗工性(粘度測定)>
粘度計(ブルックフィールド社製)を用いて 溶融した湿気硬化型ホットメルト接着剤を規定量(10.5g)粘度管に流し、スピンドル(No.27)を粘度計へ差し込み、120℃で30分間放置した後、120℃溶融粘度を測定した。
【0065】
<NMR測定(末端イソシアネート基と結合する化学構造)>
NMR測定により、末端イソシアネート基に芳香環に由来する化学構造が結合しているか否かを確認した。
【0066】
実施例および比較例の湿気硬化型ホットメルト接着剤の接着性を評価するために、T型剥離試験を行なった。更に、耐光性(耐光接着力)及び耐光性(変色性及び退色性)を評価するためにT型剥離試験の前に紫外線照射を行なった。また、硬化性(耐熱性)を評価するために耐熱クリープ試験を行った。
以下に試験方法及び評価基準を記載する。
【0067】
<養生後接着性(養生後接着力)>
自動車内装材であるポリエチレンテレフタレート(PET)フォーム、及びPETクロスを被着体として使用した。実施例1〜7および比較例1〜8の湿気硬化型ホットメルト接着剤を、PETフォームに20g/m
2の塗布量で、スプレー塗工した。PETクロスを貼り合わせ、ドライヤーで表面を約60℃に加温しながら、ハンドロールプレスを行い、試験片を作製した。作製した試験片を23℃、相対湿度50%の環境下で1週間養生した後、25mm幅に切り出した。この切り出した試験片についてT型剥離試験を行い、剥離強度を測定した。T型剥離試験として引っ張り試験機(JTトーシ社製 SC−50NM−S0)を用いて、引っ張り速度100mm/分、T型剥離で、剥離強度を測定した。
養生後接着性は、測定された剥離強度の値に基づいて以下のように評価した(単位 N/25mm)。
◎: 15.0以上
○: 12.5以上 15.0未満
△: 10.0以上 12.5未満
×: 10.0未満
【0068】
<耐光性(耐光接着力)>
上記、1週間養生後の試験片に、フェードメーター(スガ試験機社製)を用いて、紫外線を83℃で200時間照射した。紫外線照射後、養生後接着性評価と同様の方法でT型剥離試験を実施し、剥離強度を測定した。紫外線照射前後の剥離強度から、強度維持率を算出した。強度維持率は以下の式で示される。
強度維持率(%)=紫外線照射後の剥離強度/紫外線照射前の剥離強度×100
○: 強度維持率80%以上
△: 強度維持率50%以上 80%未満
×: 強度維持率50%未満
【0069】
<耐光性(変色性及び退色性)>
上記、1週間養生後の試験片に、フェードメーター(スガ試験機社製)を用いて、紫外線を83℃で200時間照射した。紫外線照射後、JIS L 0842(紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅牢度試験方法)に準じて、変色及び退色の程度を以下の様に評価した。
○: 4級以上
×: 4級未満
【0070】
<硬化性(耐熱性)>
上記、1週間養生後の試験片に、90℃雰囲気下、125gの静荷重を負荷して、耐熱クリープ試験を実施した。硬化性は以下の様に評価した。
○: クリープ無し(2mm未満)
×: クリープ有り(2mm以上)
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
表2に示すように、実施例1〜7の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、ポリカーボネートポリオールに由来する化学構造を有する脂環式ウレタンプレポリマーを含み、更に、脂環式ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基は芳香環に由来する化学構造に結合しているので、接着性、耐光性(耐光接着性、黄変性及び退色性)及び硬化性(耐熱性)に優れる。更に、実施例の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、120℃粘度がさほど高くないので、塗工性にも優れる。
【0074】
比較例1〜8の湿気硬化型ホットメルト接着剤は、脂環式ウレタンプレポリマーを含まないか、又は脂環式ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基が芳香環に由来する化学構造に結合していないので、実施例の湿気硬化型ホットメルト接着剤と比較すると、接着性、耐光性(耐光接着性、黄変性及び退色性)及び硬化性(耐熱性)のいずれかに劣る。
【0075】
このように、本発明に係る湿気硬化型ホットメルト接着剤は、特定の脂環式ウレタンプレポリマーを含むので、接着性、耐光性及び硬化性に優れることが示された。