特許第6045910号(P6045910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045910
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】プラテンローラ及びラベルプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/057 20060101AFI20161206BHJP
   B65H 27/00 20060101ALI20161206BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B41J11/057
   B65H27/00 A
   B65H27/00 B
   G09F3/00 G
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-284319(P2012-284319)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2013-216081(P2013-216081A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年9月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-60491(P2012-60491)
(32)【優先日】2012年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新田 晴彦
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−013744(JP,A)
【文献】 特開2002−283630(JP,A)
【文献】 特開2000−296937(JP,A)
【文献】 特開2003−321141(JP,A)
【文献】 特開平07−172614(JP,A)
【文献】 特開2009−086658(JP,A)
【文献】 実開昭51−157583(JP,U)
【文献】 特開2002−120953(JP,A)
【文献】 特開2009−286627(JP,A)
【文献】 特開平07−157167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00 − 11/70
B41J 13/00 − 13/32
B65H 5/06、5/22
B65H 29/20 − 29/24
B65H 23/00 − 23/16
B65H 23/24 − 23/34、27/00
F16C 13/00 − 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の周面に弾性体を被覆してなり、ラベル連続体の裏面を支持して前記ラベル連続体を搬送するプラテンローラにおいて、
前記弾性体は、
横断面形状が先端部と根元部とで異なる多数の突起が層表面から突出した内側層と、
前記内側層の外側に設けられ、前記先端部が露出するように前記内側層全体を被覆する外側層と、で構成され、
前記突起の横断面形状が前記先端部における横断面形状から異なる横断面形状に変わる位置がラベル連続体に対する印字不良や搬送不良が発生し易くなる前記弾性体の磨耗量限界に一致するとともに、前記内側層と前記外側層の色が異なることを特徴とするプラテンローラ。
【請求項2】
前記横断面形状は先端部が円形状で根元部が角形状である請求項1に記載のプラテンローラ。
【請求項3】
前記内側層の材料は硬性材料であると共に、前記外側層の材料が軟性材料である請求項1又は2に記載のプラテンローラ。
【請求項4】
前記内側層の材料は、ハードセグメントとしてポリプロピレンを用い、ソフトセグメントとしてエチレン−プロピレン共重合体又はエチレン−プロピレン−ジエン共重合体を用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーと、ハードセグメントとしてポリスチレンを用い、ソフトセグメントとしてポリブタジエン、ポリイソプレン又はポリオレフィンを用いたスチレン系熱可塑性エラストマーと、からなる2種類の熱可塑性エラストマーの混合物を必須成分として含有するエラストマー基材であると共に、
前記外側層の材料は前記エラストマー基材にシリコーンオイルを含有させて成る請求項1〜の何れか1に記載のプラテンローラ。
【請求項5】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが20〜80重量部で、前記スチレン系熱可塑性エラストマーが80〜20重量部で、2種類の熱可塑性エラストマーの合計が100重量部である請求項記載のプラテンローラ。
【請求項6】
前記シリコーンオイルの含有量は、前記エラストマー基材に対して5〜30重量部の範囲である請求項4又は5に記載のプラテンローラ。
【請求項7】
前記内側層の内側に前記芯金と前記内側層との親和性を有するベース層を有する請求項1〜の何れか1に記載のプラテンローラ。
【請求項8】
ラベル連続体の裏面をプラテンローラで支持して前記ラベル連続体を搬送すると共に、
前記プラテンローラに支持されたラベル連続体の表面にサーマルヘッドを当接させること
により印字を行うラベルプリンタにおいて、
前記プラテンローラは、請求項1〜の何れか1に記載のプラテンローラであることを特徴とするラベルプリンタ。
【請求項9】
前記ラベル連続体は台紙無しラベルである請求項に記載のラベルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラテンローラ及びラベルプリンタに係り、特にサーマルタイプのラベルプリンタ及びそれに使用されるプラテンローラに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルヘッドを用いて印字を行うサーマルタイプのラベルプリンタとしては、インクリボンを用いた熱転写型のラベルプリンタと、感熱発色層を有するラベル連続体を用いた感熱型(ダイレクトサーマル型ともいう)のラベルプリンタとがある。
【0003】
熱転写型、感熱型の何れのラベルプリンタの場合も、ローラ部分がゴム等の弾性体で形成されたプラテンローラで帯状のラベル連続体の裏面を支持し、プラテンローラ表面の摩擦力によりラベル連続体を搬送すると共に、プラテンローラに支持されたラベル連続体の表面(印字面)にサーマルヘッドを当接させ、その発熱走査により印字を行う。
【0004】
かかる印字において、ラベル連続体に対してプラテンローラ表面のグリップ力が小さく滑り易いと、ラベル連続体が正しく搬送されず印字収縮等が生じて印字品質を損なうという問題がある(以下「搬送不良」という)。
【0005】
逆に、ラベル連続体に対してプラテンローラ表面のグリップ力が大きく剥離性が小さ過ぎると、ラベル連続体がプラテンローラ表面から剥離せずにプラテンローラに巻き込まれてしまうという問題がある(以下「剥離不良」という)。
【0006】
したがって、ラベル連続体に対して高品質の印字を行うためには、プラテンローラのローラ表面はラベル連続体に対して適度な搬送力(グリップ力)と剥離力とを兼ね備えていることが要求される。
一方、サーマルタイプのラベルプリンタに使用するラベル連続体としては、大別して、台紙有りラベルと台紙無しラベルとがある。
【0007】
従来から使用されている一般的な台紙有りラベルは、帯状台紙に単体ラベルが等間隔で仮着され、単体ラベルの裏面の粘着剤層を保護する目的で帯状台紙が設けられている。したがって、台紙有りラベルがラベルプリンタ内を搬送される際には、粘着剤層は台紙に覆われている。これにより、台紙有りラベルを使用する場合には、プラテンローラのローラ表面の剥離力はそれほど問題になりにくい。
【0008】
しかし、台紙有りラベルは、単体ラベルを被貼着物に貼着した後、帯状台紙は不要となりゴミとなる。また、台紙有りラベルや台紙無しラベルはロール状に巻回したロールとしてラベルプリンタにセットされるが、台紙有りラベルは台紙厚み分だけロール径が大きくなる。したがって、台紙有りラベルは同じロール径の台紙無しラベルに比べて単位ラベルの数が少なくなるので効率的でないという問題がある。このため、近年は台紙を有しない台紙無しラベルが、環境問題や効率性の観点から多用されるようになってきている。
しかし、台紙無しラベルは、粘着剤層が形成された裏面をプラテンローラで直接支持するので、剥離不良が生じ易い。
【0009】
ところで、プラテンローラは、ラベル連続体の搬送によりローラ部分である弾性体の表面が磨耗し、次第に弾性体の径が細くなりラベル連続体を正しく搬送できなくなるため、印字不良や搬送不良の原因になる。例えば、弾性体の規格外径がφ10.10mm±0.05mmの場合、磨耗量の限界はφ10.00mmとなる。即ち、弾性体の外径φが0.1mm小さくなったときがプラテンローラの磨耗量限界となり、この磨耗量限界を超えてプラテンローラを使用し続けると、ラベル連続体に対する印字不良や搬送不良が発生し易くなる。
【0010】
したがって、印字不良や搬送不良を発生させないためには、ラベルプリンタの使用者がプラテンローラの磨耗量限界を簡単な方法で分かるようにし、新しいプラテンローラと交換する必要がある。
【0011】
特許文献1及び2は、ローラ表面に磨耗量限界に相当する深さの溝を形成し、これにより磨耗量限界を目視で判断できるようにしている。また、特許文献3及び4では、ローラを内側層と磨耗量限界に相当する厚みの外側層との2層構造として、内側層と外側層との色を変えることによって磨耗量限界を目視で判断できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開平02−055632号公報
【特許文献2】特開平09−052638号公報
【特許文献3】特開昭63−165244号公報
【特許文献4】特開平09−314696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、ラベル連続体に対する搬送力や剥離力を向上させる機能と、磨耗量限界を目視で判断できる機能と、を同一の構成で達成できるようにしたプラテンローラは今だかってない。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ラベル連続体に対する搬送力や剥離力を向上させる機能と、磨耗量限界を目視で判断できる機能と、を同一の構成で達成できるようにしたプラテンローラ及び該プラテンローラを備えたラベルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、芯金の周面に弾性体を被覆してなるプラテンローラにおいて、前記弾性体は、横断面形状が先端部と根元部とで異なる多数の突起が層表面から突出した内側層と、前記内側層の外側に設けられ、前記先端部が露出するように前記内側層全体を被覆する外側層と、で構成され、前記先端部の高さが前記弾性体の磨耗量限界に一致することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項2は前記目的を達成するために、芯金の周面に弾性体を被覆してなるプラテンローラにおいて、前記弾性体は、横断面形状が先端部と根元部とで異なる多数の突起が層表面から突出した内側層と、前記内側層の外側に設けられ、前記先端部が露出するように前記内側層全体を被覆する外側層と、で構成され、前記突起の横断面形状が前記先端部における横断面形状から異なる横断面形状に変わる位置から前記先端部の先端までの高さが前記弾性体の磨耗量限界に一致することを特徴とする。
【0017】
本発明のプラテンローラによれば、弾性体表面から多数の突起が突出しているので、ラベル連続体を搬送する際に突起がラベル連続体をグリップし、搬送力を向上させる機能を発揮する。
【0018】
また、ラベル連続体を構成する単体ラベルに印字して発行した後、次の単体ラベルを印字して発行するまでに長い時間(例えば1時間以上)がある場合であっても、次の単体ラベルを印字して発行するためにプラテンローラを回転する際に突起が剥離性を向上させる機能を発揮する。これにより、剥離不良によってラベル連続体、特には台紙無しラベルがプラテンローラに巻き込まれる問題がなくなる。
【0019】
更には、プラテンローラを使用して弾性体が磨耗すると、それに伴って突起も磨耗する。磨耗が進んで弾性体の磨耗量限界と一致する高さの突起先端部が磨耗し終わると、先端部とは横断面形状が異なる根元部が現れる。これによって、プラテンローラのローラ部分である弾性体の磨耗量限界を目視で簡単に判断することができる。
【0020】
即ち、本願発明のプラテンローラは、ラベル連続体に対する搬送力や剥離力を向上させる機能と、磨耗量限界を目視で判断できる機能と、を同一の構成で達成することができる。
【0021】
本発明のプラテンローラにおいては、前記内側層と前記外側層の色が異なることが好ましい。このように、内側層と外側層との色を変えることで、先端部が磨耗して根元部が出現したときに根元部の横断面形状が明瞭になる。これにより、弾性体の磨耗量限界の目視判断精度が向上する。
本発明のプラテンローラにおいては、前記横断面形状は先端部が円形状で根元部が角形状であることが好ましい。
【0022】
このように先端部を円形状とし根元部を角形状とすることで、突起が磨耗したときの形状変化を明瞭に把握することができる。ここで、角形状としては、三角、四角、菱形、5角形以上の多角形を含む。
本発明のプラテンローラにおいては、前記内側層の材料は硬性材料であると共に、前記外側層の材料が軟性材料であることが好ましい。
【0023】
これにより、硬性材料で形成された突起の周囲を、軟性材料の外側層で保持するようになるので、突起に無理な外力がかかったときに軟性材料の外側層で吸収することができる。
【0024】
本発明のプラテンローラにおいては、前記内側層の材料は、ハードセグメントとしてポリプロピレンを用い、ソフトセグメントとしてエチレン−プロピレン共重合体又はエチレン−プロピレン−ジエン共重合体を用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーと、ハードセグメントとしてポリスチレンを用い、ソフトセグメントとしてポリブタジエン、ポリイソプレン又はポリオレフィンを用いたスチレン系熱可塑性エラストマーと、からなる2種類の熱可塑性エラストマーの混合物を必須成分として含有するエラストマー基材であると共に、前記外側層の材料は前記エラストマー基材にシリコーンオイルを含有させて成ることが好ましい。
【0025】
本発明のプラテンローラによれば、突起が形成される内側層の材料として、オレフィン系熱可塑性エラストマーとスチレン系熱可塑性エラストマーとの混合物を必須成分とするようにした。これにより、プラテンローラの搬送力向上に寄与するエラストマー基材を形成することができる。そして、外側層の材料として、前記エラストマー基材に、剥離性及び滑り性に寄与するシリコーンオイルを含有させた材料を使用したので、剥離力も向上すると共に、シリコーンオイルを含有させることで外側層を軟性化することができる。
【0026】
本発明のプラテンローラにおいては、前記オレフィン系熱可塑性エラストマーが20〜80重量部で、前記スチレン系熱可塑性エラストマーが80〜20重量部で、2種類の熱可塑性エラストマーの合計が100重量部であることが好ましい。
【0027】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとスチレン系熱可塑性エラストマーとを上記比率で用いることにより、高い搬送力、高い研磨加工性、高い耐磨耗性を得ることができるからである。
本発明のプラテンローラにおいては、前記シリコーンオイルの含有量は、前記エラストマー基材に対して5〜30重量部の範囲であることが好ましい。
【0028】
これにより、ラベル連続体に対するプラテンローラの搬送力を維持しながら剥離効果を改良できるからである。また、30重量部を超えてシリコーン含有量を高くしても剥離性はそれ以上向上しないと共に、弾性体を射出成形する際の射出成形性が悪くなる。
【0029】
シリコーンオイルの含有量を多くすれば剥離性が向上し、少なくすれば搬送力が向上するので、ラベル連続体、特に台紙無しラベルの粘着剤の粘性に応じてシリコーンオイルの含有量を変えることが好ましい。
本発明のプラテンローラにおいては、前記内側層の内側に前記芯金と前記内側層との親和性を有するベース層を有することが好ましい。
これにより、芯金に対してベース層を介して内側層を確実に被覆することができる。
【0030】
本発明のラベルプリンタは前記目的を達成するために、ラベル連続体の裏面をプラテンローラで支持して前記ラベル連続体を搬送すると共に、前記プラテンローラに支持されたラベル連続体の表面にサーマルヘッドを当接させることにより印字を行うラベルプリンタにおいて、前記プラテンローラは、請求項1〜8の何れか1に記載のプラテンローラであることを特徴とする。
【0031】
ラベルプリンタのプラテンローラとして、請求項1〜8の何れか1に記載のプラテンローラを使用するようにしたので、ラベル連続体に対する搬送力や剥離力を向上させる機能と、磨耗量限界を目視で判断できる機能と、を同一の構成で達成することができる。
また、ラベルプリンタに使用するラベル連続体が台紙無しラベルの場合、本発明が特に有効である。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係るプラテンローラ及びラベルプリンタによれば、ラベル連続体に対する搬送力や剥離力を向上させる機能と、磨耗量限界を目視で判断できる機能と、を同一の構成で達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】ラベルプリンタの一例を示す全体構成図
図2】台紙無しラベルの説明図
図3】台紙有りラベルの説明図
図4】プラテンローラの斜視図
図5】プラテンローラのローラ部分である弾性体の軸芯方向の断面図
図6】プラテンローラの外観図
図7】弾性体の突起が磨耗する前と磨耗量限界まで磨耗した後の模式図
図8】弾性体の突起が磨耗する前と磨耗量限界まで磨耗した後の弾性体の部分拡大図
図9】プラテンローラの弾性体の成型方法を説明する模式図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、添付図面にしたがって、本発明のプラテンローラ及びラベルプリンタの好ましい実施の形態について詳細を説明する。
[ラベルプリンタの全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係るラベルプリンタ10を全体構成を示す図である。
【0035】
図1に示すように、ラベルプリンタ10のラベルプリンタ本体12には、プラテンローラ14が配置され、プラテンローラ14に対向してサーマルヘッド16が設けられている。プラテンローラ14とサーマルヘッド16が印字部18を構成する。印字部18において、プラテンローラ14とサーマルヘッド16がラベル連続体20を挟み込むことにより、ラベル連続体20に印字を施すための一定の圧力を付与する。
【0036】
この印字を施す印字部18の上流側には、ラベル連続体20をロール状に巻回したロール22が給紙軸19に回転自在に支持される。そして、プラテンローラ14の回転軸28Aが矢印方向に回転することによって、ラベル連続体20はロール22から巻き出されて印字部18へと搬送される。符号Sは、印字タイミングを制御するために、ラベル連続体20に印刷されたタイミングマーク等を検出するセンサである。
印字部18で印字が行われたラベル連続体20は、印字部18下流側に搬送される。印字部18下流側には、剥離バー26が設けられている。これは、図1に示すラベルプリンタ10の一例では、後述する台紙無しラベル20A及び台紙有りラベルの両方に対応可能に作製されているためである。即ち、ラベルプリンタ本体12には、プラテンローラ14に隣接して、断面三角形状の剥離バー26が設けられており、この剥離バー26により、台紙とラベルとを剥離できるようにして、台紙無しラベルのみならず台紙有りラベルにも対応できるようにしている。
[ラベル連続体]
【0037】
図2(A)は、台紙無しラベル20Aを巻回したロール22Aを示す。この台紙無しラベル20Aには、例えば一定間隔でミシン目Lmが形成されており、ミシン目Lmで区切られた部分が単体ラベルLaとして構成される。
なお、台紙無しラベル20Aに設けられているタイミングマークTは、単体ラベルLaの間隔で設けられており、裏面側に印刷された矩形状の黒色マーク等が用いられる。
また、図2(B)は、図2(A)のA−Aで切断した台紙無しラベル20Aの拡大横断面図である。図2(B)に示すように、台紙無しラベル20Aは、上層より透明なシリコーン等からなる剥離剤層41と、サーマルヘッド16の加熱により発色する感熱発色層42と、ホットメルト糊やエマルジョン糊等からなる粘着剤層43とから構成されている。
【0038】
なお、図2(B)は感熱型のラベルプリンタに適用する台紙無しラベル20Aの例であり、インクリボンを備えた転写型のラベルプリンタに適用する台紙無しラベル20Aは、感熱発色層42が必要ない。
【0039】
図3(A)は台紙有りラベル20Bを巻回したロール22Bを示す。図3(B)は台紙有りラベル20Bを図3(A)のB−Bで切断した断面図である。図3(B)に示すように、台紙有りラベル20Bは、帯状台紙51に等間隔で単体ラベルLaが接着剤52により仮着されている。また、図3(A)に示すように、帯状台紙51の裏面53にセンサマーク54が形成されている。
[プラテンローラ]
【0040】
図4に示すように、プラテンローラ14は、芯金28の周面にローラ部分となる円柱状の弾性体23を被覆することによって形成され、弾性体23の両側に突出した芯金28の部分が回転軸28Aとなり、図示しない軸受に回転自在に支持される。
【0041】
そして、図5に示すように、ローラ部分となる弾性体23は、先端部30A(高さW1)と根元部30B(高さW2)とで横断面形状が異なる多数の突起30が層表面から突出した内側層23Aと、内側層23Aの外側に設けられ、先端部30Aのみが露出するように内側層23A全体を被覆する外側層23Bと、で構成され、先端部30Aの高さW1が弾性体23の磨耗量限界に一致するように構成される。ここで、突起30の横断面形状とは、突起30を横方向に切断したときの断面形状を言う。
【0042】
ここで、先端部30Aの高さW1とは、突起30の横断面形状が先端部30Aにおける略円形の横断面形状から異なる横断面形状の略三角形形状に変わる位置(即ち、先端部30Aと根元部30Bとの境界位置)から先端部30Aの先端までの高さを指している。なお、根元部30Bを覆う外側層23Bの厚さをごく僅かとし、この厚さが実質的に無視できる程度とする場合には、後述する図7に示すように外側層23Bから突出している先端部30Aの突出量が上述の先端部30Aの高さW1と等しいとみなせる。よって、本発明の実施形態の変形形態としては、外側層23Bの表面から突出している先端部30Aの突出量(高さ)が弾性体23の磨耗量限界に一致するように構成したものも含むものである。
【0043】
なお、図5は、芯金28と内側層23Aとの間に、芯金28と内側層23Aとの親和性を有するベース層32を設けた3層構造の場合であり、内側層23Aと外側層23Bの2層構造でもよい。
【0044】
突起30の横断面形状としては、先端部30Aが円形状で根元部30Bが角形状であることが好ましい。このように先端部30Aを円形状とし根元部30Bを角形状とすることで、突起30が磨耗したときの形状変化を明瞭に把握することができる。ここで、角形状としては、三角、四角、菱形、5角形以上の多角形を含む。
【0045】
また、プラテンローラ14によるラベル連続体20の搬送において、突起30の先端部30Aはラベル連続体20と接触するので、先端部30Aの頂部は湾曲した丸みがあることが好ましく、例えば先端部30Aを半球形状とすることが好ましい。また、先端部30Aの径は、500〜2000μmの範囲が好ましい。
【0046】
図6は上記構造の弾性体23を有するプラテンローラ14の外観図である。図6に示すように、弾性体23表面から突起30のうちの先端部30Aが突出しており、根元部30Bは見えない。
次に、上記の構成された本発明の実施の形態によるプラテンローラ14の作用について説明する。
【0047】
図1に示すように、ラベル連続体20をプラテンローラ14とサーマルヘッド16とで挟持した状態でプラテンローラ14が回転することによって、ラベル連続体20はロール22から巻き出されて印字部18へと搬送されて印字される。
【0048】
かかるプラテンローラ14によるラベル連続体20の搬送において、ローラ部分である弾性体23表面から突出した多数の突起30の先端部30Aがラベル連続体20をグリップする。即ち、突起30の先端部30Aが車のスパイクタイヤにおけるグリップ鋲の役目を行う。これにより、プラテンローラ14がラベル連続体20を搬送する搬送力を向上させることができる。
【0049】
また、ラベル連続体20を構成する単体ラベルLaに印字して発行した後、次の単体ラベルLaを印字して発行するまでに長い時間(例えば1時間以上)がある場合であっても、次の単体ラベルLaを印字して発行するためにプラテンローラ14を回転する際に、突起30の先端部30Aが剥離性を向上させる機能を発揮する。即ち、次の単体ラベルLaを印字して発行するまでの間、サーマルヘッド16とプラテンローラ14とに挟持された領域の弾性体23の突起30は、次の単体ラベルLaを印字して発行するまでの間、挟持圧力を受ける。これにより、突起30の先端部30Aは、押し潰されて縮んだ状態になる。そして、次の単体ラベルLaを印字して発行するためにプラテンローラ14が回転することにより、先端部30Aは押し潰された状態から開放されて伸長する。この伸長力によりラベル連続体20を弾性体23表面から剥離する力が生じる。特に、ラベル連続体20のうち粘着剤層43がプラテンローラ14のローラ部分である弾性体23に直接接触する台紙無しラベル20Aにおいて剥離性効果を発揮する。
これにより、剥離不良によってラベル連続体20、特には台紙無しラベル20Aがプラテンローラ14に巻き込まれる問題がなくなる。
【0050】
上記のプラテンローラ14によるラベル連続体20の搬送において、弾性体23の内側層23Aの材料は硬性材料であると共に、外側層23Bの材料が軟性材料であることが好ましい。これにより、硬性材料で形成された突起30の周囲を、軟性材料の外側層23Bで保持するようになる。この結果、ラベル連続体20の搬送において突起30に無理な外力がかかったときに軟性材料の外側層23Bで吸収することができる。したがって、突起30が硬性材料で形成されていても、突起30の磨耗や破損を軽減できるので、突起30による搬送力や剥離力を長期間維持することができる。
【0051】
更には、上記の如く構成されたプラテンローラ14は、上述したラベル連続体20の搬送力や剥離力を向上させる機能以外に、弾性体23の磨耗限度も簡単に目視する機能を有する。
【0052】
図7(A)及び図8(A)は、プラテンローラ14の磨耗前の弾性体23を示す。図(A)から分かるように、弾性体23の表面には突起30のうちの先端部30Aが多数突出している。
【0053】
そして、ラベル連続体20を搬送するプラテンローラ14の使用期間が長くなると、プラテンローラ14のローラ部分である弾性体23の表面が次第に磨耗する。弾性体23表面の磨耗に伴って弾性体23両面から突出した先端部30Aも次第に磨耗する。弾性体23表面の磨耗が進んで先端部30Aが磨耗し終わると、図7の(A)→(B)及び図8の(A)→(B)に示すように、先端部30Aとは横断面形状が異なる三角形の根元部30Bが現れる。そして、先端部30Aの高さW1(図5参照)は弾性体23の磨耗量限界に一致する。
【0054】
これによって、プラテンローラ14のローラ部分である弾性体23の磨耗量限界を目視で簡単に判断することができる。したがって、印字不良は搬送不良が生じる前に、新しいプラテンローラ14に交換することができる。
【0055】
この場合、弾性体23を構成する内側層23Aと外側層23Bの色が異なることが好ましい。先端部30Aが磨耗し終わると、外側層23Bの表面に内側層23Aの根元部30Bが外側層23Bと面一状態で露出するようになる。したがって、内側層23Aと外側層23Bとの色が異なれば、面一状態であっても根元部30Bの横断面形状が明瞭になる。これにより、弾性体23の磨耗量限界の目視判断精度が向上する。
【0056】
このように、本発明の実施の形態におけるプラテンローラ14は、ラベル連続体20に対する搬送力や剥離力を向上させる機能と、ローラ部分である弾性体23の磨耗量限界を目視で判断できる機能と、を同一の構成で達成することができる。
[弾性体の材料]
次に、プラテンローラ14のローラ部分である弾性体23を構成する材料の好ましい態様について説明する。
【0057】
弾性体23材料は、内側層23Aの材料が、ハードセグメントとしてポリプロピレンを用い、ソフトセグメントとしてエチレン−プロピレン共重合体又はエチレン−プロピレン−ジエン共重合体を用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーと、ハードセグメントとしてポリスチレンを用い、ソフトセグメントとしてポリブタジエン、ポリイソプレン又はポリオレフィンを用いたスチレン系熱可塑性エラストマーと、からなる2種類の熱可塑性エラストマーの混合物を必須成分として含有するエラストマー基材であることが好ましい。
また、外側層23Bの材料は、内側層23Aのエラストマー基材にシリコーンオイルを含有させて成ることが好ましい。
【0058】
突起30が形成される内側層23Aの材料として、オレフィン系熱可塑性エラストマーとスチレン系熱可塑性エラストマーとの混合物を必須成分とすれば、プラテンローラ14の搬送力向上に寄与するエラストマー基材で突起30を形成することができる。そして、外側層23Bの材料として、前記エラストマー基材に、剥離性及び滑り性に寄与するシリコーンオイルを含有させた材料を使用すれば、弾性体表面全体の剥離力も向上する。また、エラストマー基材にシリコーンオイルを含有させることで外側層23Bを軟性化することができるので、弾性体表面でのラベル連続体20を搬送する際のグリップも維持できる。
【0059】
また、外側層23Bの材料として、前記エラストマー基材にシリコーンオイルを含有させれば、ラベル連続体20の紙粉等が弾性体23表面に付着しにくくなるので、紙粉等が弾性体23表面に付着堆積することによるプラテンローラ14の剥離力低下を防止できる。
【0060】
この場合、オレフィン系熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメントとソフトセグメントの比率は、ハードセグメントが10〜50重量部でソフトセグメントが50〜90重量部で、その合計が100重量部であるのが好ましい。また、スチレン系熱可塑性エラストマーにおけるハードセグメントとソフトセグメントの比率はハードセグメントが10〜50重量部でソフトセグメントが50〜90重量部で、その合計が100重量部であるのが好ましい。
【0061】
エチレン−プロピレン−ジエン共重合体の第三成分のジエンとしては、重合反応性の点から、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンを用いるのが好ましい。
【0062】
また、プラテンローラ14として必要な、摩擦係数が高くて搬送力が大きいこと、耐磨耗性に優れていること、ローラ部分の外径精度を高めるために研磨加工が容易であることの特性を十分に具備するためには、オレフィン系熱可塑性エラストマーとスチレン系熱可塑性エラストマーの配合比は、オレフィン系熱可塑性エラストマーが20〜80重量部で、スチレン系熱可塑性エラストマーが80〜20重量部で、これら両熱可塑性エラストマーの合計が100重量部であるのが好ましい。
【0063】
オレフィン系熱可塑性エラストマーが20重量部未満(スチレン系熱可塑性エラストマーが80重量部超)の場合、低硬度のものでは研磨加工が不可で、高硬度のものでは、良好な研磨加工性を有する熱硬化性ゴムと同程度の研磨ができないという欠点があり、一方、オレフィン系熱可塑性エラストマーが80重量部超(スチレン系熱可塑性エラストマーが20重量部未満)では、摩擦係数が低下して高い搬送力を確保できず、耐磨耗性に劣るという欠点がある。
【0064】
また、外側層23Bに含有させるシリコーンオイルの含有量は、エラストマー基材に対して5〜30重量部の範囲であることが好ましい。これにより、ラベル連続体20に対するプラテンローラ14の搬送力を維持しながら剥離効果を改良できるからである。また、30重量部を超えてシリコーン含有量を高くしても剥離性はそれ以上向上しないと共に、弾性体23を射出成形する際の射出成形性が悪くなる。
【0065】
外側層23Bは、前記エラストマー基材に対するシリコーンオイルの含有量を多くすれば剥離性が向上し、少なくすれば搬送力が向上するので、ラベル連続体20、特に台紙無しラベル20Aの粘着剤の粘性に応じてシリコーンオイルの含有量を変えることが好ましい。
【0066】
このように、弾性体23の内側層23Aの材料として、オレフィン系熱可塑性エラストマーとスチレン系熱可塑性エラストマーと、からなる2種類の熱可塑性エラストマーの混合物を必須成分として含有するエラストマー基材を用いると共に、外側層23Bの材料は前記エラストマー基材にシリコーンオイルを含有させることによって、プラテンローラにとって要求される搬送力、剥離力、耐磨耗性、研磨加工性の全てを満足することができる。
【0067】
これに対して、プラテンローラ14の弾性体23の材料として、オレフィン系熱可塑性エラストマーを単独で用いた場合には摩擦力が弱くなり、上記した本発明の実施の形態におけるエラストマー基材に比べて搬送力が弱いという欠点がある。また、プラテンローラ14の弾性体23の材料として、スチレン系熱可塑性エラストマーを単独で用いた場合、上記した本発明の実施の形態におけるエラストマー基材に比べて耐磨耗性や研磨加工性が劣るという欠点がある。
【0068】
また、プラテンローラ14の弾性体23の材料として、エチレンープロピレンージエン共重合体(EPDM)も従来から使用されており、合成ゴムの中では比重が最小で、特に耐候に優れ、オゾンや熱や化学薬品に耐性に優れているという特長があるが、上記した本発明の実施の形態におけるエラストマー基材に比べて耐磨耗性が劣るという欠点がある。
【0069】
また、弾性体23を形成する材料としては、上記以外に各種配合剤の混入・分散を助け、成形作業を容易にするために、鉱物油系可塑剤、植物油系可塑剤、フタレート系又はアジペート系合成可塑剤等の可塑剤を適正量含有することが好ましい。
【0070】
また、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、天然ケイ酸、ケイ酸塩等の充填剤、補強剤を必要に応じて含有することができる。また、酸化劣化とオゾン劣化を防止するための劣化防止剤を必要に応じて含有することができる。また、酸化チタン等の白色顔料、カーボンブラック等の黒色顔料などの顔料を必要に応じて含有することができる。
【0071】
また、耐久性、耐熱性などの特性を改良するための有機改質剤を必要に応じて含有することができる。更に、外観を高めるために、仕上げ剤や塗料を必要に応じて含有することができる。
[弾性体の成型方法]
次に、上記の構造を有する弾性体23の成型方法について説明する。
【0072】
図9は、弾性体23の規格外径がφ10.10mm±0.05mmの場合であり、突起30における先端部30Aとして横断面が円形(例えば半球形状)で、根元部30Bの横断面形状が三角形(例えば三角柱)の場合で説明する。
(第1成型工程)
【0073】
芯金28(例えばφ5mm)の軸芯と、金型内面に突起30の反転型が形成された第1金型(図示せず)の軸芯とが一致するように、芯金28を第1金型内に装填する。そして、芯金28と第1金型内面との間の空間に上記したエラストマー基材からなる内側層材料を射出し、該溶融した内側層材料で芯金28を被覆して固化する。これにより、図9(A)に示すように、芯金28に内側層23Aが被覆された1次成型品60が成型される。この1次成型品60の表面には多数の突起30が突出する。
(第2成型工程)
【0074】
次に、1次成型品60の表面に突起した突起30のうち、先端部30Aのみが露出するように1次成型品60の表面全体(換言すると、先端部30Aの除く内側層23Aの外側全体)を、例えば上記したエラストマー基材にシリコーンオイルを含有させた外側層材料(図9(B)の斜線部分)で被覆成型する。この結果、図9(B)に示すように、突起30の先端部30Aのみを残して外側層材料によって被覆される。これにより、芯金28に内側層23Aと外側層23Bとが順番に被覆された弾性体23が成型されると共に、弾性体23表面からは弾性体23の磨耗量限界と一致する高さの先端部30Aが突出する。成型された弾性体23の突起30を含めた径φは10.15mmとなり、外側層表面までの径φは10.00mmとなる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のプラテンローラ及びラベルプリンタは、ラベル連続体に対する搬送力や剥離力を向上させる機能と、磨耗量限界を目視で判断できる機能と、を同一の構成で達成することができ、プラテンローラを構成する部品点数を減らす等できるので、産業上利用価値が高い。
【符号の説明】
【0076】
10…ラベルプリンタ、12…ラベルプリンタ本体、14…プラテンローラ、16…サーマルヘッド、18…印字部、20…ラベル連続体、20A…台紙無しラベル、20B…台紙有りラベル、23…弾性体、23A…内側層、23B…外側層、26…剥離バー、28…芯金、28A…回転軸、30…突起、30A…突起の先端部、30B…突起の根元部、32…ベース層、S…センサ、T…タイミングマーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9