(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045919
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】サービスホールカバー
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20161206BHJP
B32B 3/10 20060101ALI20161206BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
B60J5/00 501E
B32B3/10
B32B15/08 E
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-6180(P2013-6180)
(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公開番号】特開2014-136503(P2014-136503A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博英
【審査官】
高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−082064(JP,A)
【文献】
特開2012−180005(JP,A)
【文献】
実開昭56−071726(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/10
15/08
B60J 5/00
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアインナ−パネルに形成されたサービスホールの開口縁に接着されて、前記サービスホールを覆うサービスホールカバーにおいて、
金属蒸着層を有する積層シートと、空気を内包した凸部を一面に有するエアキャップシートとを2枚重ねにして、前記積層シートの外縁部のみを前記エアキャップシートに固着してなり、
前記エアキャップシートを透明又は半透明にすると共に、前記エアキャップシートの外形を前記積層シートの外形よりも大きくして、前記エアキャップシートの外縁部を前記積層シートの外側にはみ出させ、そのはみ出させた部分を前記サービスホールの開口縁に接着される接着部としたことを特徴とするサービスホールカバー。
【請求項2】
前記積層シートは、前記エアキャップシートの前記サービスホールと反対側を向く面に重ね合わされたことを特徴とする請求項1に記載のサービスホールカバー。
【請求項3】
前記エアキャップシートは、平坦なシートの片面に凹凸形状のシートが貼り合わされて、片側の面にのみ前記凸部を備えた構造をなし、前記凸部と反対側の面が前記サービスホールの開口縁に接着されることを特徴とする請求項1又は2に記載のサービスホールカバー。
【請求項4】
前記積層シートを前記エアキャップシートに熱溶着又はヒートシールしたことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1の請求項に記載のサービスホールカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアインナーパネルに形成されたサービスホールの開口縁に接着されて、サービスホールを覆うサービスホールカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のサービスホールカバーとして、発泡材で形成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−179797号公報(段落[0021])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のサービスホールカバーは、発泡材が不透明であるため、サービスホールの開口縁に接着するときに、接着状態を把握しにくく、作業性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、作業性の向上を図ることが可能なサービスホールカバーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係るサービスホールカバーは、ドアインナ−パネルに形成されたサービスホールの開口縁に接着されて、サービスホールを覆うサービスホールカバーにおいて、金属蒸着層を有する積層シートと、空気を内包した凸部を一面に有するエアキャップシートとを2枚重ねにして
、積層シートの外縁部のみをエアキャップシートに固着してなり、エアキャップシートを透明又は半透明にすると共に、エアキャップシートの外形を積層シートの外形よりも大きくして、エアキャップシートの外縁部を積層シートの外側にはみ出させ
、そのはみ出させた部分をサービスホールの開口縁に接着される接着部としたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のサービスホールカバーにおいて、積層シートは、エアキャップシートのサービスホールと反対側を向く面に重ね合わされたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のサービスホールカバーにおいて、エアキャップシートは、平坦なシートの片面に凹凸形状のシートが貼り合わされて、片側の面にのみ凸部を備えた構造をなし、凸部と反対側の面がサービスホールの開口縁に接着されるところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のうち何れか1の請求項に記載のサービスホールカバーにおいて、積層シートをエアキャップシートに熱溶着又はヒートシールしたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0010】
[請求項1,2,4の発明]
請求項1のサービスホールカバーは、金属蒸着層を有する積層シートの外側に、透明又は半透明なエアキャップシールの外縁部がはみ出しているので、サービスホールの開口縁にエアキャップシールの外縁部を接着させることで、接着剤を視認することができる。これにより、接着状態の把握が容易となり、作業性の向上が図られる。
【0011】
また、本発明のサービスホールカバーは、金属蒸着層を有する積層シートと、空気を内包する凸部を一面に有したエアキャップシートとを2枚重ねにしてなるので、積層シートの金属蒸着層による遮音性及び断熱性と、エアキャップシートによる吸音性及び保温性とを備えて、防音効果及び断熱効果の向上が図られる。
【0012】
しかも、エアキャップシートの凸部の大きさを、吸音したい音域(周波数)に合わせて適宜変更することができるので、吸音性能の異なるサービスホールカバーのラインナップを容易に増やすことができる。なお、凸部の大きさは、外径が5〜50mmであることが好ましい。また、凸部の高さは、2〜20mmの範囲であることが好ましい。
【0013】
ここで、積層シートは、請求項2の発明のように、エアキャップシートのサービスホールと反対側を向く面に重ね合わされた構成とすれば、エアキャップシートの平坦なシート部にてドア外側からの騒音を遮音し、次いで、遮音し切れなかった透過音をエアキャップシートの凹凸形状のシート部の膜振動により吸音し、さらに、エアキャップシートの凹凸形状のシート部を透過し、吸音し切れなかった騒音を積層シートにて遮音することができる。
【0014】
なお、積層シートは、エアキャップシートに、接着剤により貼り合わされてもよいし、請求項4の発明のように、熱溶着又はヒートシールされてもよい。請求項4の発明によれば、積層シートとエアキャップシートを位置決めしてから両者を貼り合わせることができるので、作業性に優れる。
【0015】
[請求項3の発明]
請求項3の発明によれば、サービスホールカバーにおけるサービスホールの開口縁との接着面が平坦になっているので、サービスホールの開口縁とのシール性が向上し、防水性、防音性及び保温性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るサービスホールカバーの斜視図
【
図3】ドアインナーパネルに接着されたサービスホールカバーの平面図
【
図4】ドアインナーパネルに接着されたサービスホールカバーの外縁部周辺の側断面図
【
図5】変形例に係るサービスホールカバーの側断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を
図1〜
図4に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るサービスホールカバー10は、車両用ドア60に備えられたドアインナーパネル11に取り付けられる。ドアインナーパネル11には、車両用ドア60の内部にパワーウィンドウの制御装置等(図示せず)を取り付けたり、それら装置等をメンテナンスする際に使用するサービスホール12が形成されている。
【0018】
図3に示すように、サービスホールカバー10は、サービスホール12の開口より、ひと回り大きな形状になっていて、ドアインナーパネル11におけるサービスホール12の開口縁に接着剤40にて接着されて、サービスホール12を覆うようになっている。接着剤40は、例えば、ブチルシール等のシール材で構成され、グルーガン等によってサービスホール12の開口縁に沿って線状に塗布されて、ドアインナーパネル11とサービスホールカバー10との間をシールする。
【0019】
図2に示すように、サービスホールカバー10は、積層シート20と、エアキャップシート30とを2枚重ねにしてなる。積層シート20は、金属蒸着層21が合成樹脂層22,22で挟まれたサンドイッチ構造になっている。
【0020】
具体的には、金属蒸着層21は、PET等の合成樹脂フィルムにアルミ、スズ、インジウム等の金属を蒸着してなる金属蒸着フィルムで構成されている。合成樹脂層22としては、ポリエチレンフィルム22Aやポリプロピレンフィルム22Bなどが例示でき、これらの単独層であっても、これらのフィルムを積層したものであってもよい。ポリエチレンフィルム22Aをエアキャップシート30側を向くように配置する場合には、エアキャップシート30との接着が容易となる。なお、
図2に示す例では、エアキャップシート30側の合成樹脂層22は、ポリエチレンフィルム22Aの単独層で構成され、エアキャップシート30と反対側の合成樹脂層22は、ポリエチレンフィルム22Aとポリプロピレンフィルム22Bをエアキャップシート30側から順に積層した構成になっている。
【0021】
なお、積層シート20における各層の厚さは、金属蒸着層21(金属蒸着フィルム層)が、5〜15μmであって、合成樹脂層22の厚さが25〜50μmになっている。また、合成樹脂層22における各フィルムの厚さは、ポリエチレンフィルム22Aが10〜20μmであって、ポリプロピレンフィルム22Bのそれぞれの厚さは、15〜30μmになっている。
【0022】
エアキャップシート30は、無色透明であって、空気を内包した円柱状の凸部32を一面に有した構造になっている。具体的には、エアキャップシート30は、平坦な薄膜シート31A(本発明の「平坦なシート」に相当する。)の片面に、凹凸形状をなす薄膜シート31B(本発明の「凹凸形状のシート」に相当する。)を貼り合わせてなり、それら薄膜シート31A,31Bの間に空気層33が形成されて、その空気層33を内部に有する凸部32が片側の面にのみ配置されている。
【0023】
そして、エアキャップシート30の凸部32側の面に、上述した積層シート20が、熱溶着又はヒートシールされている。詳細には、
図4に示すように、積層シート20の一部分である外縁部のみが、エアキャップシート30と熱溶融により点溶着又はシールされている。その結果、積層シート20の内側部分とエアキャップシート30との間に隙間が形成され、積層シート20は、膜振動することが可能になる。なお、
図4の例では、エアキャップシート30のうち積層シート20が溶着又はシールされた部分は、熱溶融により凸部32が潰れて平坦になっている。
【0024】
なお、本実施形態では、薄膜シート31A,31Bは、共に、ポリエチレン製であって、各薄膜シート31A,31Bの厚さは、10〜30μmになっている。また、凸部32は、直径が8〜12mm、高さが3〜5mmになっている。なお、
図2及び
図4では、積層シート20及びエアキャップシート30の厚さが誇張して示されている。
【0025】
図3に示すように、本実施形態のサービスホールカバー10では、エアキャップシート30の外形寸法が積層シート20の外形寸法よりも大きくなっていて、エアキャップシート30の外縁部が積層シート20の外側にはみ出している。そして、このエアキャップシート30の外縁部、即ち、エアキャップシート30のうち積層シート20の外側にはみ出した部分とドアインナーパネル11とが、接着剤40によって接着される(
図4参照)。
【0026】
なお、積層シート20の大きさは、サービスホール12の開口面積よりも大きくなっていて、サービスホールカバー10がドアインナーパネル11に接着されたときに、積層シート20とエアキャップシート30の両方がサービスホール12を覆うようになっている。
【0027】
図4に示すように、サービスホールカバー10は、エアキャップシート30がドアインナーパネル11側となるように配置され、エアキャップシート30の凸部32と反対側の平坦面30Fが、ドアインナーパネル11との接着面になっている。このように、本実施形態のサービスホールカバー10では、エアキャップシール30のうちドアインナーパネル11に接着される面が平坦になっているので、サービスホール12の開口縁とのシール性が向上し、防水性、防音性(遮音性)及び保温性を高めることができる。
【0028】
本実施形態に係るサービスホールカバー10の構成に関する説明は以上である。次にサービスホールカバー10の作用効果について説明する。
【0029】
本実施形態のサービスホールカバー10は、金属蒸着層21を有する積層シート20の外側に、透明なエアキャップシール30の外縁部がはみ出しているので、サービスホール12の開口縁にエアキャップシール30の外縁部を接着させることで、接着剤40を視認することができる。これにより、接着状態の把握が容易となり、作業性の向上が図られる。
【0030】
また、本実施形態のサービスホールカバー10では、金属蒸着層21を有する積層シート20と、空気を内包する凸部32を一面に有したエアキャップシート30とを2枚重ねにしてなるので、積層シート20の金属蒸着層21による遮音性と、エアキャップシート30による吸音性とを備えて、防音効果の向上を図ることができる。
【0031】
しかも、積層シート20は、エアキャップシート30のサービスホール12と反対側を向く面に貼り合わされているので、エアキャップシート30で吸音し切れなかった騒音を積層シート20にて遮音することができる。具体的には、まず、エアキャップシート30の平坦な薄膜シート31Aにて騒音を遮音し、次いで、その薄膜シート31Aで遮音し切れなかった透過音をエアキャップシート30の凹凸形状の薄膜シート31Bの膜振動により吸音する。さらに、その薄膜シート31Bで吸音し切れなかった騒音が積層シート20にて遮音される。ここで、本実施形態では、積層シート20の端部(外縁部)のみをエアキャップシート30に溶着したので、膜振動による吸音効果も生じて、防音効果を高めることができる。
【0032】
さらに、エアキャップシート30の凸部32の大きさを、吸音したい音域(周波数)に合わせて適宜変更することができるので、吸音性能の異なるサービスホールカバー10のラインナップを容易に増やすことができる。
【0033】
また、本実施形態のサービスホールカバー10では、金属蒸着層21を有する積層シート20によって、断熱効果も付与することができる。
【0034】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0035】
(1)上記実施形態では、エアキャップシート30は、透明であったが、サービスホールカバー10を接着する際に、サービスホール12の開口縁に塗布された接着剤40が視認可能であれば、半透明であってもよい。なお、透明、半透明の何れの場合であっても、有色と無色とを、問わない。
【0036】
(2)上記実施形態では、積層シート20とエアキャップシート30とを熱溶着で貼り合わせていたが、接着剤や両面テープで貼り合わせてもよい。
【0037】
(3)エアキャップシート30は、同じ大きさの凸部32を一種類のみを備えた構成であってもよいし、大きさが異なる複数種類の凸部32を備えた構成であってもよい。前者の構成によれば、特定の周波数における吸音効果を高めることができ、後者の構成によれば、吸音域を広くすることができる。
【0038】
(4)上記実施形態のサービスホールカバー10では、片側の面にのみ凸部32を有したエアキャップシート30を用いていたが、
図5に示すサービスホールカバー10Vのように、両面に凸部32を有したエアキャップシート30Vを用いた構成であってもよい。なお、上記実施形態の構成によれば、サービスホールカバー10におけるサービスホール12の開口縁との接着面が平坦になっているので、サービスホール12の開口縁とのシール性が向上し、防水性、遮音性及び保温性を高めることができる。
【0039】
なお、本発明の技術的範囲には属さないが、金属蒸着層21を有する積層シート20の代わりに、発泡シートを用いた構成としても、本発明と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0040】
10,10V サービスホールカバー
11 ドアインナーパネル
12 サービスホール
20 積層シート
21 金属蒸着層
30,30V エアキャップシート
32 凸部
33 空気層
40 接着剤