(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
判定対象の媒体が真正品の偽変造防止媒体であるか否かを判定するための判定支援を行う判定支援装置あるいは判定対象の媒体が真正品の偽変造防止媒体であるか否かを判定する判定装置において実行される偽変造防止媒体判定方法において、
前記媒体は、電磁波の当該媒体への照射時と当該媒体全体への加熱時とで、視認可能に現れるパターンが異なるように第1パターン層及び第2パターン層としてそれぞれ所定のパターンが形成されており、
前記判定対象の媒体に所定周波数の前記電磁波を照射する照射過程と、
前記判定対象の媒体の温度を所定温度以上に上昇させる加熱過程と、
を備え、
いずれか一方の過程を、いずれか他方の過程の前に行う、
偽変造防止媒体判定方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照して実施形態の偽変造防止媒体及び偽変造防止媒体の真偽判定方法を詳細に説明する。
【0008】
[1]第1実施形態
図1は、実施形態の偽変造防止媒体の断面図である。
偽変造防止媒体10は、基材11と、電磁波吸収体を含み、基材11に積層されるとともに、所定周波数の電磁波が照射されることで発熱する第1パターン層12と、示温材料を含み、平面視した場合に第1パターン層12の少なくとも一部を覆うように基材11に積層され、所定のしきい値温度を跨いで温度が変化した場合に発色状態と消色状態との間で可逆的に変化する第2パターン層13と、基材11及び第2パターン層13全体を覆う光学層14と、耐久性を向上させるために光学層14全体を覆う保護層(オーバーコート層)15と、を備えている。
【0009】
基材11に用いる材料としては、例えば、洋紙、和紙、クラフト紙等の植物性セルロース繊維からなる材料、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、ポリアリレート等のエンジニアリング樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン系樹脂、セロファンなどのセルロース系樹脂などが挙げられる。
【0010】
また、基材11は、上述した樹脂を主成分とする共重合樹脂又は混合体(アロイを含む)、複数層で構成された積層体としての薄膜、フィルム、カード、ブロック体等から任意に選択可能である。
【0011】
基材11としては、特に紙類、ポリエステル、ブチラール、ポリオレフィン、アクリルあるいはこれらの混合物、複合物、積層物が好ましい。
また、基材11を樹脂製フィルムとする場合には、延伸フィルムあるいは未延伸フィルムのいずれでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向あるいは二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。
【0012】
第1パターン層12を形成する電磁波吸収体としては、以下に示すコア−シェル型粒子を複数有する金属含有粒子及びその集合体、カーボニル鉄系磁性体、高誘電率材料、透明電磁波吸収体などが挙げられる。
【0013】
ここで、ア−シェル型粒子を複数有する金属含有粒子及びその集合体としては、Fe、Co、Niからなる第1の群より選ばれる少なくとも1種類の磁性金属元素と、Mg、Al、Si、Ca、Zr、Ti、Hf、Zn、Mn、希土類元素、Ba及びSrからなる第2の群より選ばれる少なくとも1種類の金属元素とを含むコア部と、このコア部の少なくとも一部を被覆し、コア部に含まれる少なくとも1種類の第2の群に属する金属元素を含む酸化物層と炭素含有材料層とを有するシェル層と、を備えたコア−シェル型粒子を複数有するものが挙げられる。
【0014】
また、カーボニル鉄系磁性体としては、金属含有粒子及びその集合体、フェライトを中心とした磁性金属類や金属酸化物、合金、磁性体で、特に透磁率(μ値)をキテイした特殊な磁性体、複合フェライト、パーマロイとしてNi−Fe系の代表的な磁性合金、カーボニル鉄粉末を非磁性体中に分散させたものが挙げられる。
【0015】
高誘電率材料としては、誘電率=5000のチタン酸バリウムやチタン酸鉛などが挙げられる。
透明電磁波吸収体としては、透明電磁波フィルムや、特開2012−99665号公報に開示されている複数の透明電磁波吸収フィルムを透明誘電体を介して積層したものが挙げられる。
【0016】
第2パターン層13に用いられる示温材料としては、以下の(1)〜(5)に示す反応等を利用して温度変化と共に色変化する材料が挙げられる。
(1)固相反応、
(2)熱分解、
(3)脱水、
(4)電子供与体受容体の電子授受、
(5)結晶構造の変化
【0017】
これらのうち、(1)固相反応、(4)電子供与体受容体の電子授受を利用したものが好ましい。
より好ましくは、(4)電子供与体受容体の電子授受を利用した材料の特徴としては電子供与性化合物と電子受容性化合物と組成系の一部または全部の可逆的な結晶質−非晶質転移、または2つの相分離状態もしくは相分離状態−非相分離状態の変化を発現させる可逆材と、室温で固体であり、電子受容性化合物または可逆材もしくは電子受容性化合物および可逆材と少なくともその一部が相溶する示温特性制御剤であって、示温特性制御剤の結晶質−非晶質転移または相分離状態−非相分離状態により組成系の結晶質−非晶質転移または相分離状態−非相分離状態速度を変化させる示温特性制御剤で、相分離後、電子供与性化合物と電子受容性化合物の相互作用を阻害しない示温特性制御剤を含有する材料が挙げられる。
【0018】
電子供与性化合物としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、クリスタルバイオレットカルビノール、マラカイトグリーンカルビノール、N−(2,3−ジクロロフェニル)ロイコオーラミン、N−ベンゾイルオーラミン、ローダミンBラクタム、N−アセチルオーラミン、N−フェニルオーラミン、2−(フェニルイミノエタンジリデン)−3,3−ジメチルインドリン、N−3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、8’−メトキシ−N−3,3−トリメチルインドリノベンゾスピロピラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−ベンジルオキシフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、3,6−ジ−p−トルイジノ−4,5−ジメチルフルオラン−フェニルヒドラジド−γ−ラクタム、3−アミノ−5−メチルフルオラン等が例示される。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
また、電子受容性化合物としては、フェノ−ル類、フェノ−ル金属塩類、カルボン酸金属塩類、スルホン酸、スルホン酸塩、リン酸類、リン酸金属塩類、酸性リン酸エステル、酸性リン酸エステル金属塩類、亜リン酸類、亜リン酸金属塩類等の酸性化合物があげられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0020】
可逆材は、ステロイド骨格等の化合物があげられ、具体的には、コレステロール、ステグマステロール、プレグネノロン、メチルアンドロステンジオール、エストラジオールベンゾエート、エピアンドロステン、ステノロン、β−シトステロール、プレグネノロンアセテート、β−コレスタロール等があげられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0021】
また、示温特性制御剤には、芳香族アルコ−ル類であって少なくとも1つのフェノール系水酸基を有する化合物、芳香族アルコール類、少なくとも1つのベンゾイル基を持つ化合物、芳香族エーテル化合物、また感熱紙で使用されている増感剤等が用いられる。
【0022】
具体的には、芳香族アルコール類であって少なくとも1つのフェノール系水酸基を有する化合物としては、p−ヒドロキシフェネチルアルコール、2−ヒドロキシベンジルアルコール、バニリルアルコールが挙げられる。
【0023】
また、芳香族アルコール類としては、ピペロニルアルコール、ベンゾイン、ベンズヒドロール、トリフェニルメタノール、ベンジン酸メチル、DL−マンデル酸ベンジルが挙げられる。
【0024】
また、少なくとも1つのベンゾイル基を持つ化合物としては、ベンジル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルフェニルケトン、2−ベンゾイル安息香酸メチルであり芳香族エーテル化合物はベンジル2−ナフチルエーテル、1−ベンジロキシ−2−メトキシ−4−(1−プロペニル)ベンゼンが挙げられる。
【0025】
また、増感剤としては、4−ベンジルビフェニル、m−ターフェニル、4−ベンゾインビフェニールが挙げられる。
【0026】
さらに、上述した示温材料は、単独で用いても良いし、マイクロカプセルにして用いても良い。
さらにまた、上述した示温材料は、樹脂バインダーに分散させて用いても良い。この場合に、分散させる樹脂バインダーの適用方法としては、示温材料をマイクロカプセル化する方法、樹脂バインダーへ示温材料を分散する方法等があげられる。
【0027】
ここで用いる樹脂バインダーとしては、ポリエチレン類、塩素化ポリエチレン類、エチレン・酢酸ビニル共重合物、エチレン・アクリル酸・無水マレイン酸共重合物等のエチレン共重合物、ポリブタジエン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリプロピレン類、ポリイソブチレン類、ポリ塩化ビニル類、ポリ塩化ビニリデン類、ポリ酢酸ビニル類、ポリビニルアルコール類、ポリビニルアセタール類、ポリビニルブチラール類、フッ素樹脂類、アクリル樹脂類、メタクリル樹脂類、アクリロニトリル共重合体類、ポリスチレン、ハロゲン化ポリスチレン、スチレンメタクリル酸共重合体類等のスチレン共重合体類、アセタール樹脂類、ナイロン66等のポリアミド類、ポリカーボネート類、セルロース系樹脂類、フェノール樹脂類、ユリア樹脂類、エポキシ樹脂類、ポリウレタン樹脂類、ジアリールフタレート樹脂類、シリコーン樹脂類、ポリイミドアミド類、ポリエーテルスルホン類、ポリメチルペンテン類、ポリエーテルイミド類、ポリビニルカルバゾール類、非晶質系ポリオレフィン等の樹脂が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
また、これら示温材料の変色閾値の温度は−30℃〜70℃が好ましく、より好ましくは−20℃〜5℃または40℃〜60℃である。
これは、閾値温度が−30℃よりも低い場合にはその環境を作るのに簡易な装置ではなく大がかりな装置が必要になってしまう、偽変造防止媒体を構成する他材料が劣化するなどの弊害を生じるからである。
【0029】
また、70℃以上でも同様に、偽変造防止媒体を構成する他材料が劣化、変形、変質を起こす可能性があるためである。
さらに、偽変造防止機能を隠蔽するためには、通常の生活温度領域に変色閾値温度がない方が好ましいため、5℃から40℃(=通常の生活温度領域)を除く温度領域でかつ、容易に実現し易い温度帯とするためである。
【0030】
また、示温材料として、複数の変色閾値温度を持ち、温度によって3色以上の色に変色する材料を用いることも可能である。
【0031】
次に、検査対象の媒体が真正品あるいは偽造品のいずれであるかを判定するための支援を行う真偽判定支援装置の装置構成について説明する。
図2は、真偽判定支援装置の概要構成ブロック図である。
真偽判定支援装置20は、
図2に示すように、真偽判定対象の媒体10Xに偽変造防止媒体10の第1パターン層12に含まれる電磁波吸収体を発熱させるのに必要な所定の周波数の電磁波を放射する電磁波放射部21と、真偽判定対象の媒体10X全体を加熱し、第2パターン層13に用いられている示温材料のしきい値温度を跨いで温度を上昇させる媒体加熱部22と、真偽判定支援装置20全体の制御を行うMPU23と、制御プログラムを含む各種データを不揮発的に記憶するROM24と、ワーキングエリアとして機能し、各種データを一時的に記憶するRAM25と、オペレータが各種操作を行う操作部26と、各種表示を行う表示部27と、電磁波放射部21、媒体加熱部22、操作部26及び表示部27における入出力インタフェース動作を行う入出力インタフェース部28と、真偽判定対象の媒体をオペレータが内部を視認可能な窓29が設けられ、電磁波放射部21及び媒体加熱部22を収納し、電磁波放射部21により放射された電磁波が外部に漏れないようにするとともに、媒体加熱部22が供給した熱を効率よく真偽判定対象の媒体10Xに伝達することができるように構成された媒体収納ケース30と、ハードディスクドライブ等として構成され、大容量データを記憶可能な外部記憶装置31と、を備えている。
【0032】
ここで、電磁波放射部21としては、マグネトロンを用いたマイクロ波発生装置を用いている。
また媒体加熱部22としては、ハロゲンランプ、ハロゲンヒータ等の熱源を用いているが、第2パターン層13に含まれる示温材料が変色可能な程度の熱を与えることができるものであれば、どのようなものであってもかまわない。
【0033】
図3は、第1実施形態の真偽判定支援装置の処理フローチャートである。
まず、オペレータは、媒体収納ケース30内の所定の媒体収納位置に真偽判定対象の媒体10Xをセットする(ステップS11)。
この状態でオペレータは、媒体収納ケース30内にセットされた真偽判定対象の媒体10Xを窓29から視認可能な状態となっている。
【0034】
ここで、真偽判定対象の媒体が上述した偽変造防止媒体10である場合について具体的に説明する。
図4は、実施形態の偽変造防止媒体10の具体例の説明図である。
ここで、実施形態の偽変造防止媒体10に用いられている示温材料は、所定のしきい値温度TH(例えば、50℃)を超えると、消色状態から発色状態に移行するタイプのものを用いている。
【0035】
したがって、初期状態においては、
図4(a)に示すように、第2パターン層13は肉眼では視認できない状態となっている。
そして、オペレータが操作部26を操作して、電磁波照射を指示すると、MPU23は、入出力インタフェース部28を介して電磁波放射部21を制御して所定周波数の電磁波を放射させ、偽変造防止媒体10に照射させる(ステップS12)。これにより、電磁波を照射された第1パターン層12の電磁波吸収体は、電磁波を吸収し、発熱する。
【0036】
この結果、第1パターン層12により形成された第1パターン(
図4(a)では、星形の領域)に対応する第2パターン層13の領域の温度が所定のしきい値(たとえば、50℃)を超えることとなり、
図4(b)に示すように星形のパターン(第1パターン)が肉眼で視認可能な状態となる。このとき、オペレータは、第1パターンが視認できたか、すなわち、電磁波吸収体に対応するパターンが発色して視認できたか否かを判別する(ステップS13)。
【0037】
ステップS13の判別において、視認できたパターンが星形以外であったり、あるいは、全くパターンが表示されなかったりした場合、すなわち、電磁波吸収体に対応するパターンが発色して視認できなかった場合には(ステップS13;No)、オペレータは、当該媒体は、偽造品であると判定することとなる(ステップS17)。
【0038】
一方、ステップS13の判別において、第1パターンを視認した場合、すなわち、電磁波吸収体に対応するパターンが発色して視認できた場合には(ステップS13;Yes)、オペレータは、当該媒体が真正品である可能性があるので、再び操作部26を操作して媒体の加熱を指示することとなる。
これにより、MPU23は、媒体加熱部22を制御して、偽変造防止媒体全体が所定のしきい値(たとえば、50℃)以上の温度となるように加熱を行う(ステップS14)。
【0039】
この結果、第2パターン層13(
図4(a)では、中央の円パターンと、円パターン周囲の8個の三角パターン)の温度が所定のしきい値(たとえば、50℃)を超えることとなり、
図4(c)に示すように中央の円パターン及び円パターン周囲の8個の三角パターン(第2パターン)が肉眼で視認可能な状態となるので、オペレータは、視認できたパターンが中央の円パターン及び円パターン周囲の8個の三角パターン(第2パターン)であるか否か、すなわち、示温材料(示温インク)によるパターンの発色が確認できたか否かを判別する(ステップS15)。
【0040】
ステップS15の判別において、視認できたパターンが中央の円パターン及び円パターン周囲の8個の三角パターン(第2パターン)以外であった場合(星形の第1パターンのままである場合も含む)、すなわち、示温材料(示温インク)によるパターンの発色が確認できなかった場合には(ステップS15;No)、オペレータは、当該媒体は、偽造品であると判定することとなる(ステップS17)。
一方、第2パターンを視認した場合、すなわち、示温材料(示温インク)によるパターンの発色が確認できた場合には(ステップS15;Yes)、オペレータは、当該媒体が真正品であると判定することとなる(ステップS16)。
【0041】
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、所定のしきい値温度を跨いで温度が高くなった場合に発色状態となる示温材料を用い、電磁波照射時と媒体全体の加熱時とで、現れるパターンを異ならせているので、オペレータが電磁波照射時と媒体全体の加熱時とでそれぞれに対応するパターンを目視により確認することで判定対象の媒体の真偽判定を容易、かつ、確実に行える。
したがって、複雑な判定装置を設けることなく、二重のセキュリティアイテムを媒体に埋め込むことができ、媒体の信頼性を向上することができる。
【0042】
[1.1]第1実施形態の第1変形例
上記第1実施形態においては、示温材料として所定のしきい値温度(たとえば、50℃)を超えると発色するタイプのものを用いていたが、本第1実施形態の第1変形例においては、示温材料として所定のしきい値温度(たとえば、50℃)を超えると、消色するタイプのものを用いている点で異なっている。
【0043】
図5は、第1実施形態の第1変形例の偽変造防止媒体10の具体例の説明図である。
ここで、実施形態の第1変形例の偽変造防止媒体10に用いられている示温材料は、所定のしきい値温度(例えば、50℃)を超えると、発色状態から消色状態に移行するタイプのものを用いている。
【0044】
図6は、第1実施形態の変形例の真偽判定支援装置の処理フローチャートである。
まず、オペレータは、媒体収納ケース30内の所定の媒体収納位置に真偽判定対象の媒体10Xをセットする(ステップS21)。
初期状態においては、
図5(a)に示すように、第2パターン層13の中央の円パターン及び円パターン周囲の8個の三角パターン(第2パターン)が肉眼で視認可能な状態となっている。
【0045】
そして、オペレータが操作部26を操作して、電磁波照射を指示すると、MPU23は、入出力インタフェース部28を介して電磁波放射部21を制御して所定周波数の電磁波を放射させ、偽変造防止媒体10に照射される(ステップS22)。これにより、電磁波を照射された第1パターン層12の電磁波吸収体は、電磁波を吸収し、発熱する。
このとき、オペレータは、第1パターンが視認できたか、すなわち、電磁波吸収体に対応するパターンが消色したことが確認できたか否かを判別する(ステップS23)。
ステップS23の判別において、視認できたパターンが星形以外であったり、あるいは、全くパターンが表示されなかったりした場合、すなわち、電磁波吸収体に対応するパターンが発色して視認できなかった場合には(ステップS23;No)、オペレータは、当該媒体は、偽造品であると判定することとなる(ステップS27)。
【0046】
一方、ステップS23の判別において、第1パターンを視認した場合、すなわち、電磁波吸収体に対応するパターンが消色して視認できた場合には(ステップS23;Yes)、オペレータは、当該媒体が真正品である可能性があるので、再び操作部26を操作して媒体の加熱を指示することとなる。
【0047】
これにより、MPU23は、媒体加熱部22を制御して、偽変造防止媒体全体が所定のしきい値温度TH(たとえば、50℃)以上の温度となるように加熱を行う(ステップS24)。
【0048】
この結果、第2パターン層13(
図5(a)では、中央の円パターンと、円パターン周囲の8個の三角パターン)の温度が所定のしきい値(たとえば、50℃)を超えることとなり、
図5(c)に示すように、いずれのパターンも肉眼では視認できない状態となるので、オペレータは、全てのパターンが視認できなくなったか否か、すなわち、示温材料(示温インク)によるパターンの消色が確認できたか否かを判別する(ステップS25)。
【0049】
ステップS25の判別において、全てのパターンが肉眼では視認できなくなる状態以外であった場合(
図5(a)の状態のままである場合も含む)には、すなわち、示温材料(示温インク)によるパターンの消色が確認できなかった場合には(ステップS25;No)、オペレータは、当該媒体は、偽造品であると判定することとなる(ステップS27)。
【0050】
一方、全てのパターンが肉眼では視認できなくない状態の場合、すなわち、示温材料(示温インク)によるパターンの消色が確認できた場合には(ステップS25;Yes)、オペレータは、当該媒体が真正品であると判定することとなる(ステップS26)。
【0051】
以上の説明のように、本第1実施形態の変形例によっても、所定のしきい値温度THを跨いで温度が高くなった場合に消色状態となる示温材料を用い、電磁波照射時と媒体全体の加熱時とで、消色されるパターンを異ならせているので、オペレータが電磁波照射時と媒体全体の加熱時とでそれぞれに対応するパターンを目視により確認することで判定対象の媒体の真偽判定を容易、かつ、確実に行える。
したがって、複雑な判定装置を設けることなく、二重のセキュリティアイテムを媒体に埋め込むことができ、媒体の信頼性を向上することができる。
【0052】
[2]第2実施形態
以上の第1実施形態においては、示温材料として一つのしきい値温度を有する材料を用いていたが、本第2実施形態は複数のしきい値温度を有する示温材料を用いた場合の実施形態である。
以下の説明においては、説明の簡略化のため、二つのしきい値温度を有する示温材料を用いた場合を例とする。
【0053】
第2実施形態の偽変造防止媒体10Aの構造は、第1実施形態と同様であるので、再び
図1を参照して説明する。
第2実施形態の偽変造防止媒体10Aに用いられている第2パターン層13Bに含まれる示温材料は、所定の第1しきい値温度TH1(例えば、50℃)を超えると、消色状態(透明状態)から第1の色(例えば、ピンク)となる発色状態(第1発色状態)に移行するとともに、所定の第2しきい値温度TH2(>TH1、例えば、60℃)を超えると第1の色から第2の色(例えば、ブルー)に発色状態(第2発色状態)が変化するタイプのものを用いている。この場合においても、消色状態、第1発色状態及び第2発色状態は、可逆的に移行するようになっている。
【0054】
図7は、第2実施形態の偽変造防止媒体10Aの具体例の説明図である。
したがって、初期状態においては、
図7(a)に示すように、第2パターン層13Bは肉眼では視認できない状態となっている。
図8は、第2実施形態の真偽判定支援装置の処理フローチャートである。
まず、オペレータは、媒体収納ケース30内の所定の媒体収納位置に真偽判定対象の媒体10Xをセットする(ステップS31)。
そして、オペレータが操作部26を操作して、媒体の加熱を指示することとなる。
【0055】
これにより、MPU23は、媒体加熱部22を制御して、偽変造防止媒体全体の温度Tが所定の第1しきい値温度TH1(たとえば、50℃)を越え、かつ、所定の第2しきい値温度TH2(たとえば、60℃)未満の温度となるように加熱を行う(ステップS32)。
この結果、第2パターン層13B(
図6(a)では、中央の円パターンと、円パターン周囲の8個の三角パターン)の温度が所定の第1しきい値温度TH1(たとえば、50℃)を超えることとなり、
図6(b)に示すように中央の円パターン及び円パターン周囲の8個の三角パターン(第1のパターン)が肉眼で視認可能な状態(第1発色状態)となる。
このとき、オペレータは、第1発色状態が視認できたか、すなわち、示温材料(示温インク)による第1の色のパターンの発色が確認できたか否かを判別する(ステップS33)。
ステップS33の判別において、視認できたパターンが第1の色の中央の円パターン及び円パターン周囲の8個の三角パターン(第2パターン)以外であった場合(星形の第1パターンのままである場合も含む)、すなわち、示温材料(示温インク)による第1発色状態が確認できなかった場合には(ステップS33;No)、オペレータは、当該媒体は、偽造品であると判定することとなる(ステップS37)。
【0056】
一方、第1発色状態を視認したオペレータは、当該媒体が真正品である可能性があるので、再び操作部26を操作して電磁波照射を指示すると、MPU23は、入出力インタフェース部28を介して電磁波放射部21を制御して所定周波数の電磁波を放射させ、偽変造防止媒体10に照射される(ステップS34)。
これにより、電磁波を照射された第1パターン層12の電磁波吸収体は、電磁波を吸収し、発熱する。
【0057】
この結果、第1パターン層12により形成された第2のパターン(
図6(a)では、星形の領域)に対応する第2パターン層13Bの領域の中央部の温度が所定の第2しきい値温度TH2(>TH1、たとえば、60℃)を超えることとなり、
図6(c)に示すように星形のパターン(第2のパターン)に対応する領域の色が変化した状態(第2発色状態)となる。
このとき、オペレータは、第2発色状態が視認できたか、すなわち、電磁波吸収体に対応するパターンが発色して第2発色状態を視認できたか否かを判別する(ステップS35)。
【0058】
ステップS35の判別において、視認できたパターンが星形以外であったり、あるいは、視認できた色が異なっていたり、全くパターンが表示されなかったりした場合、すなわち、電磁波吸収体に対応する第2発色状態が確認できなかった場合には(ステップS35;No)、オペレータは、当該媒体は、偽造品であると判定することとなる(ステップS37)。
【0059】
一方、ステップS35の判別において、第2発色状態を確信した場合には(ステップS35;Yes)視認したオペレータは、当該媒体が真正品であると判定することとなる(ステップS36)。
【0060】
以上の説明のように、本第2実施形態によれば、所定の第1しきい値温度TH1を跨いで温度が高くなった場合に第1の色を有する発色状態(第1発色状態)となるとともに、さらに所定の第2しきい値温度TH2を跨いで温度が高くなった場合には、第2の色を有する発色状態(第2発色状態)となる示温材料を用い、電磁波照射時と媒体全体の加熱時とで、現れるパターンを異ならせているので、オペレータが電磁波照射時と媒体全体の加熱時とでそれぞれに対応するパターンを目視により確認することで判定対象の媒体の真偽判定を容易、かつ、確実に行える。
したがって、複雑な判定装置を設けることなく、二重のセキュリティアイテムを媒体に埋め込むことができ、媒体の信頼性を向上することができる。
【0061】
[3]第3実施形態
以上の第1実施形態及び第2実施形態においては、1種類の示温材料を用いていたが、本第3実施形態は複数種類の示温材料を用いた場合の実施形態である。
以下の説明においては、説明の簡略化のため、2種類の示温材料を用いた場合を例とする。
図9は、第3実施形態の偽変造防止媒体の断面図である。
図9において、
図1の第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
第3実施形態の偽変造防止媒体10Bは、基材11と、電磁波吸収体を含み、基材11に積層されるとともに、所定周波数の電磁波が照射されることで発熱する第1パターン層12と、示温材料を含み、平面視した場合に第1パターン層12の少なくとも一部を覆うように基材11に積層され、所定のしきい値温度を跨いで温度が変化した場合に発色状態と消色状態との間で可逆的に変化する第2パターン層13Bと、基材11及び第2パターン層13全体を覆う光学層14と、耐久性を向上させるために光学層14全体を覆う保護層(オーバーコート層)15と、を備えている。
【0062】
上記構成において、第2パターン層13Bは、第1パターン層12の少なくとも一部を覆うように積層される下部第2パターン層13B1と、下部第2パターン層13B1に積層される上部第2パターン層13B2と、を備えている。
ここで、下部第2パターン層13B1は、所定の第1しきい値温度TH1(例えば、50℃を跨いで温度が変化した場合に発色状態(高温下)と消色状態(低温下)との間で可逆的に変化する。
同様に、上部第2パターン層13B2は、所定の第2しきい値温度TH2(>TH1、例えば、60℃)を跨いで温度が変化した場合に発色状態(高温下)と消色状態(低温下)との間で可逆的に変化する。ここで、上部第2パターン層13B2は、第2しきい値温度TH2未満の温度では透明であることが望ましい。
【0063】
図10は、第3実施形態の偽変造防止媒体10Bの具体例の説明図である。
初期状態においては、
図10(a)に示すように、第2パターン層13Bは肉眼では視認できない状態となっている。
図11は、第3実施形態の真偽判定支援装置の処理フローチャートである。
まず、オペレータは、媒体収納ケース30内の所定の媒体収納位置に真偽判定対象の媒体をセットする(ステップS41)。
そして、オペレータが操作部26を操作して、媒体の加熱を指示することとなる。
【0064】
これにより、MPU23は、媒体加熱部22を制御して、偽変造防止媒体全体の温度Tが所定の第1しきい値温度TH1(例えば、50℃)を越え、かつ、所定の第2しきい値温度TH2(例えば、60℃)未満の温度となるように加熱を行う(ステップS42)。
【0065】
この結果、下部第2パターン層13B1(
図10(a)では、中央の円パターンと、円パターン周囲の8個の三角パターン)の温度が所定の第1しきい値温度TH1(たとえば、50℃)を超えることとなり、
図10(b)に示すように中央の円パターン及び円パターン周囲の8個の三角パターン(第1のパターン)が第1の色に発色し、肉眼で視認可能な状態(第1発色状態)となる。
【0066】
このとき、オペレータは、下部第2パターン層13B1における第1発色状態が視認できたか、すなわち、示温材料(示温インク)による第1の色のパターンの発色が確認できたか否かを判別する(ステップS43)。
【0067】
ステップS43の判別において、視認できたパターンが第1の色の中央の円パターン及び円パターン周囲の8個の三角パターン(第2パターン)以外であった場合(星形の第1パターンのままである場合も含む)、すなわち、示温材料(示温インク)による第1発色状態が確認できなかった場合には(ステップS43;No)、オペレータは、当該媒体は、偽造品であると判定することとなる(ステップS49)。
【0068】
一方、第1発色状態を視認したオペレータは、当該媒体が真正品である可能性があるので、再び操作部26を操作して電磁波照射を指示すると、MPU23は、入出力インタフェース部28を介して電磁波放射部21を制御して所定周波数の電磁波を放射させ、偽変造防止媒体10に照射される(ステップS44)。
これにより、電磁波を照射された第1パターン層12の電磁波吸収体は、電磁波を吸収し、発熱する。
【0069】
この結果、第1パターン層12により形成された第2のパターン(
図10(a)では、星形の領域)に対応する第2パターン層13Bの領域の中央部の温度が所定の第2しきい値温度TH2(>TH1、たとえば、60℃)を超えることとなり、
図10(c)に示すように星形のパターン(第2のパターン)に対応する領域の色が変化した状態(第2発色状態)となる。
このとき、オペレータは、星形のパターン(第2のパターン)に対応する領域の第2発色状態が視認できたか、すなわち、電磁波吸収体に対応するパターンが発色して第2発色状態を視認できたか否かを判別する(ステップS45)。
【0070】
ステップS45の判別において、色が変わったパターンが星形以外であったり、全くパターンが表示されなかったり、異なる位置に現れた場合には(ステップS45;No)、オペレータは、当該媒体は、偽造品であると判定することとなる(ステップS49)。
【0071】
一方、ステップS45の判別において、星形のパターン(第2のパターン)に対応する領域の第2発色状態が視認できた、すなわち、電磁波吸収体に対応するパターンが発色して第2発色状態を視認できた場合には(ステップS45;Yes)、オペレータは、当該媒体が真正品である可能性があるので、再び操作部26を操作して媒体の加熱を指示することとなる。
【0072】
これにより、MPU23は、媒体加熱部22を制御して、偽変造防止媒体全体の温度Tが所定の第2しきい値温度TH2を越える温度となるように加熱を行う(ステップS46)。
この結果、下部第2パターン層13B1(
図10(a)では、中央の円パターンと、円パターン周囲の8個の三角パターン)の温度も所定の第2しきい値温度TH1(たとえば、50℃)を超えることとなり、
図10(d)に示すように、中央の円パターン及び円パターン周囲の8個の三角パターン(第1のパターン)が第2の色に発色した状態(第2発色状態)となる。
【0073】
このとき、オペレータは、上部第2パターン層13B2における第2発色状態が視認できたか、すなわち、示温材料(示温インク)による第1の色のパターンの発色が確認できたか否かを判別する(ステップS47)。
【0074】
ステップS47の判別において、第2の色に変わったパターンが中央の円パターン及び円パターン周囲の8個の三角パターン(第1のパターン)以外であったり、色が異なったり、全くパターンが表示されなかったり、異なる位置に現れた場合には(ステップS47;No)、オペレータは、当該媒体は、偽造品であると判定することとなる(ステップS49)。
【0075】
一方、オペレータは、上部第2パターン層13B2における第2発色状態が視認できた、すなわち、示温材料(示温インク)による第2の色のパターンの発色が確認できた場合には(ステップS47;Yes)、当該媒体が真正品であると判定することとなる(ステップS48)。
【0076】
以上の説明のように、本第3実施形態によれば、所定の第1しきい値温度TH1を跨いで温度が高くなった場合に第1の色を有する発色状態(第1発色状態)となる第1の示温材料を用いるとともに、所定の第2しきい値温度TH2を跨いで温度が高くなった場合には、第2の色を有する発色状態(第2発色状態)となる第2の示温材料を用い、電磁波照射時と媒体全体の2段階の加熱時とで、現れるパターンをそれぞれ異ならせているので、オペレータが電磁波照射時と媒体全体の加熱時とでそれぞれに対応するパターンを目視により確認することで判定対象の媒体の真偽判定を容易、かつ、確実に行える。
したがって、複雑な判定装置を設けることなく、三重のセキュリティアイテムを媒体に埋め込むことができ、媒体の信頼性をよりいっそう向上することができる。
【0077】
[4]第4実施形態
図12は、第4実施形態の偽変造防止媒体の断面図である。
図12において、
図1の第1実施形態と同様の部分には、同一の符号を付すものとする。
【0078】
第4実施形態の偽変造防止媒体10Cは、基材11と、電磁波吸収体を含み、基材11に積層されるとともに、所定周波数の電磁波が照射されることで発熱する第1パターン層12と、第1パターン層12全体を覆い、第1パターン層を視覚的に隠蔽する隠蔽層16と、示温材料を含み、平面視した場合に第1パターン層12の少なくとも一部を覆うように隠蔽層16に積層され、所定のしきい値温度を跨いで温度が変化した場合に発色状態と消色状態との間で可逆的に変化する第2パターン層13と、基材11及び第2パターン層13全体を覆う光学層14と、耐久性を向上させるために光学層14全体を覆う保護層(オーバーコート層)15と、を備えている。
【0079】
上記構成によれば、第1パターン層12が低温時及び高温時の双方で視認可能な材料であっても、隠蔽層16によりその存在を容易には把握できないので、電磁波吸収体として様々な材料を用いることが可能となり、より低価格で高性能な媒体を得ることが可能となる。
【0080】
[5]第5実施形態
以上の各実施形態は、偽変造防止媒体の真偽判定を支援する真偽判定支援装置に関するものであったが、本第5実施形態は、偽変造防止媒体の真偽判定を自動的に行う真偽判定装置についての実施形態である。
【0081】
図13は、真偽判定装置の概要構成ブロック図である。
真偽判定装置50は、
図13に示すように、真偽判定対象の媒体10Xに偽変造防止媒体10の第1パターン層12に含まれる電磁波吸収体を発熱させるのに必要な所定の周波数の電磁波を放射する電磁波放射部21と、真偽判定対象の媒体10X全体を加熱し、第2パターン層13に用いられている示温材料のしきい値温度を跨いで温度を上昇させる媒体加熱部22と、真偽判定支援装置20全体の制御を行うMPU23と、制御プログラムを含む各種データを不揮発的に記憶するROM24と、ワーキングエリアとして機能し、各種データを一時的に記憶するRAM25と、オペレータが各種操作を行う操作部26と、各種表示を行う表示部27と、電磁波放射部21、媒体加熱部22、操作部26及び表示部27における入出力インタフェース動作を行う入出力インタフェース部28と、真偽判定対象の媒体をオペレータが視認可能な窓29が設けられ、電磁波放射部21及び媒体加熱部22を収納し、電磁波放射部21により放射された電磁波が外部に漏れないようにするとともに、媒体加熱部22が供給した熱を効率よく真偽判定対象の媒体10Xに伝達することができるように構成された媒体収納ケース30と、ハードディスクドライブ等として構成され、大容量データを記憶可能な外部記憶装置31と、媒体10Xの上面の画像を撮像する撮像部32と、を備えている。
【0082】
上記構成において、外部記憶装置31には、媒体10Xの種類及び判定処理段階に応じて撮像部32により撮像されるであろう媒体10Xの基準撮像画像もしくは基準撮像画像に対応する基準判定データが記憶されている。
【0083】
図14は、第5実施形態の真偽判定支援装置の処理フローチャートである。
以下の説明においては、第1実施形態の偽変造防止媒体を対象として処理を行うものとする。
まず、オペレータは、媒体収納ケース30内の所定の媒体収納位置に真偽判定対象の媒体10Xをセットし、判定開始を指示する(ステップS51)。
【0084】
ここで、真偽判定対象の媒体が第1実施形態の偽変造防止媒体10である場合について具体的に説明する。
初期状態においては、
図4(a)に示したように、第2パターン層13は肉眼では視認できない状態となっている。
この状態で、MPU23は、入出力インタフェース部28を介して電磁波放射部21を制御して所定周波数の電磁波を放射させ、媒体10Xに照射させる(ステップS52)。これにより、電磁波を照射された第1パターン層12の電磁波吸収体は、電磁波を吸収し、発熱する。
【0085】
この結果、第1パターン層12により形成された第1パターン(
図4(a)では、星形の領域)に対応する第2パターン層13の領域の温度が所定のしきい値(たとえば、50℃)を超えることとなり、
図4(b)に示したように星形のパターン(第1パターン)が肉眼で視認可能な状態となる。
これにより、MPU23は、入出力インタフェース部28を介して撮像部32を制御し、媒体10Xの表面を撮像し、撮像画像データをRAM25に取り込む(ステップS53)。
そしてMPU23は、外部記憶装置31に記憶されている偽変造防止媒体10に対応する基準判定データを読み出し、撮像画像データに対応する画像中の所定位置に第1パターンが確認できたか、すなわち、電磁波吸収体に対応するパターンが発色しているか否かを判別する(ステップS54)。
【0086】
ステップS54の判別において、確認できたパターンが星形以外であったり、あるいは、全くパターンが表示されなかったり、位置が異なったりした場合、すなわち、電磁波吸収体に対応するパターンの発色を確認できなかった場合には(ステップS54;No)、MPU23は、当該媒体は、偽造品であると判定し、その旨を表示部27に表示することとなる(ステップS59)。
【0087】
一方、ステップS54の判別において、第1パターンを確認した場合、すなわち、電磁波吸収体に対応するパターンが発色したことを確認できた場合には(ステップS54;Yes)、MPU23は、媒体加熱部22を制御して、偽変造防止媒体全体が所定のしきい値(たとえば、50℃)以上の温度となるように加熱を行う(ステップS55)。
【0088】
この結果、第2パターン層13(
図4(a)では、中央の円パターンと、円パターン周囲の8個の三角パターン)の温度が所定のしきい値(たとえば、50℃)を超えることとなり、
図4(c)に示したように中央の円パターン及び円パターン周囲の8個の三角パターン(第2パターン)が肉眼で視認可能な状態となるので、MPU23は、再び入出力インタフェース部28を介して撮像部32を制御し、媒体10Xの表面を撮像し、撮像画像データをRAM25に取り込む(ステップS56)。
そしてMPU23は、外部記憶装置31に記憶されている偽変造防止媒体10に対応する基準判定データを読み出し、撮像画像データに対応する画像中の所定位置に中央の円パターン及び円パターン周囲の8個の三角パターン(第2パターン)が存在するか否か、すなわち、示温材料(示温インク)によるパターンの発色が確認できたか否かを判別する(ステップS57)。
【0089】
ステップS57の判別において、確認できたパターンが中央の円パターン及び円パターン周囲の8個の三角パターン(第2パターン)以外であったり、位置が異なっていたりした場合(星形の第1パターンのままである場合も含む)、すなわち、示温材料(示温インク)によるパターンの発色を確認できなかった場合には(ステップS57;No)、MPU23は、当該媒体は、偽造品であると判定し、その旨を表示部27に表示することとなる(ステップS59)。
【0090】
一方、MPU23は、第2パターンを確認できた場合、すなわち、示温材料(示温インク)によるパターンの発色を確認できた場合には(ステップS57;Yes)、当該媒体が真正品であると判定し(ステップS58)、その旨を表示部27に表示して、判定処理を終了することとなる。
【0091】
以上の説明のように、本第5実施形態によれば、判定対象の媒体の真偽判定を自動的に、容易、かつ、確実に行える。
したがって、熟練したオペレータを用いなくても、誰でも容易に媒体の真偽判定を行え、媒体の信頼性を向上することができる。
以上の第5実施形態の説明は、
図3に示した処理を自動的に行う場合のものであったが、
図6、
図8あるいは
図11の処理を自動的に行うように構成することも可能である。
【0092】
[6]実施形態の変形例
本実施形態の偽変造防止媒体の判定支援を行う真偽判定支援装置あるいは偽変造防止媒体の判定を行う真偽判定装置で実行される制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0093】
また、本実施形態の真偽判定支援装置あるいは真偽判定装置で実行される制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の真偽判定支援装置あるいは真偽判定装置で実行される制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
また、本実施形態の真偽判定支援装置あるいは真偽判定装置の制御プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0094】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。