特許第6045954号(P6045954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045954
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】定着器部材
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20161206BHJP
   C08L 79/08 20060101ALI20161206BHJP
   C08K 5/095 20060101ALI20161206BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G03G15/20 515
   C08L79/08 Z
   C08K5/095
   C08L83/04
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-68526(P2013-68526)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-218322(P2013-218322A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2016年3月28日
(31)【優先権主張番号】13/442,240
(32)【優先日】2012年4月9日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ランホイ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】リン・マー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・エイチ・ヘルコ
【審査官】 杉山 輝和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−065091(JP,A)
【文献】 特開2012−048232(JP,A)
【文献】 特開2009−025585(JP,A)
【文献】 特開2003−176475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着器部材であって、
ポリイミドポリマーおよびフルオロ酸を含む基材層を含み、前記フルオロ酸が、HOOC(CF2nCOOHおよびCn2n+1COOHからなる群から選択され、nが2〜18であり、オクタフルオロスベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、ヘプタデカフルオロ−n−ノナン酸、ノナデカフルオロデカン酸、ノナフルオロ吉草酸、及びウンデカフルオロヘキサン酸から選択される少なくとも1種を含む、定着器部材。
【請求項2】
前記基材層が、さらに、ポリシロキサンポリマーを含む、請求項1に記載の定着器部材。
【請求項3】
前記ポリシロキサンポリマーが、ポリエステルで修飾されたポリジメチルシロキサン、ポリエーテルで修飾されたポリジメチルシロキサン、ポリアクリレートで修飾されたポリジメチルシロキサン、およびポリエステルポリエーテルで修飾されたポリジメチルシロキサンからなる群から選択される、請求項2に記載の定着器部材。
【請求項4】
前記ポリイミドポリマーおよび前記フルオロ酸が、約99.9/0.1〜約95/5の重量比で存在する、請求項1に記載の定着器部材。
【請求項5】
前記基材層は、弾性率が約4,000MPa〜約10,000MPaである、請求項1に記載の定着器部材。
【請求項6】
前記基材層が、さらに、フィラーを含む、請求項1に記載の定着器部材。
【請求項7】
前記フィラーが、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、グラファイト、グラフェン、銅フレーク、ナノダイアモンド、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、金属フレークおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の定着器部材。
【請求項8】
前記基材層の上に配置された中間層と、
前記中間層の上に配置された剥離層と、
をさらに含む、請求項1に記載の定着器部材。
【請求項9】
前記中間層がシリコーンを含む、請求項8に記載の定着器部材。
【請求項10】
前記剥離層がフルオロポリマーを含む、請求項8に記載の定着器部材。
【請求項11】
定着器部材であって、
ポリイミドポリマー、およびHOOC(CF2nCOOHおよびCn2n+1COOHからなる群から選択され、nが2〜18であるフルオロ酸を含む基材層と、
基材層の上に配置された、シリコーンおよびフルオロエラストマーからなる群から選択される材料を含む中間層と、
中間層の上に配置された、フルオロポリマーを含む剥離層とを含み、基材層は、弾性率が約4,000MPa〜約10,000MPaであり、
前記フルオロ酸は、オクタフルオロスベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、ヘプタデカフルオロ−n−ノナン酸、ノナデカフルオロデカン酸、ノナフルオロ吉草酸、及びウンデカフルオロヘキサン酸から選択される少なくとも1種を含む、定着器部材。
【請求項12】
前記剥離層が、さらに、フィラーを含む、請求項11に記載の定着器部材。
【請求項13】
前記フィラーが、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、グラファイト、グラフェン、銅フレーク、ナノダイアモンド、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、金属フレークおよびこれらの混合物からなる群から選択され、
前記フルオロポリマーがフルオロエラストマーまたはフルオロプラスチックを含む、請求項12に記載の定着器部材。
【請求項14】
前記中間層または前記基材層の上に配置された接着層をさらに含む、請求項11に記載の定着器部材。
【請求項15】
定着器部材であって、
ポリイミドポリマー、およびHOOC(CF2nCOOHおよびCn2n+1COOHからなる群から選択され、nが2〜18であるフルオロ酸を含む基材層を含み、
前記基材層は、弾性率が約4,000MPa〜約10,000Mpaであり、分解開始温度が約590℃であり、
前記フルオロ酸は、前記フルオロ酸は、オクタフルオロスベリン酸、ドデカフルオロスベリン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、ヘプタデカフルオロ−n−ノナン酸、ノナデカフルオロデカン酸、ノナフルオロ吉草酸、及びウンデカフルオロヘキサン酸から選択される少なくとも1種を含む、定着器部材。
【請求項16】
前記基材層の上に配置された中間層と、
前記中間層の上に配置された剥離層と、
をさらに含む、請求項15に記載の定着器部材。
【請求項17】
前記中間層がシリコーンを含む、請求項16に記載の定着器部材。
【請求項18】
前記剥離層がフルオロポリマーを含む、請求項16に記載の定着器部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、一般的に、デジタル、多重画像型などを含む電子写真用画像形成装置で有用な定着器部材に関する。それに加え、本明細書に記載の定着器部材を、固体インクジェット印刷機の転写固定装置で用いることもできる。
【背景技術】
【0002】
定着器部材に有用なつなぎ目のないポリイミドベルトを得るために、遠心鋳造を使用する。典型的には、剛性の円筒形マンドレルの内側表面に、薄いフッ素またはシリコーンの剥離層を塗布する。この剥離層を含むマンドレルの内側表面に、ポリイミドコーティングを塗布する。ポリイミドを硬化させ、次いで、マンドレルから外す。
【0003】
このプロセスには欠点がある。ポリイミドベルトの長さは、マンドレルの大きさによって決定される。マンドレルの内側表面に剥離層が必要であり、これは追加の処理工程である。この様式で製造された定着器ベルトは、費用が高い。製造コストを下げることが必要である。
【0004】
それに加え、ポリイミド定着器ベルトは、弾性率が4,000MPaより大きいことが必要である。このことは、分解開始温度が400℃より大きいことに特徴的である。このような要求事項は、製造コストを下げることとともに望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によれば、定着器部材が提供される。定着器部材は、ポリイミドポリマーおよびフルオロ酸を含む基材層を含む。
【0006】
別の実施形態によれば、ポリイミドポリマー、およびHOOC(CFCOOHおよびC2n+1COOHからなる群から選択される構造を有し、nが2〜18であるフルオロ酸を含む基材層を含む定着器部材が記載される。定着器部材は、基材層の上に配置された、シリコーンおよびフルオロエラストマーからなる群から選択される材料を含む中間層を含む。定着器部材は、中間層の上に配置された、フルオロポリマーを含む剥離層を含む。
【0007】
別の実施形態によれば、ポリイミドポリマー、およびHOOC(CFCOOHおよびC2n+1COOHからなる群から選択され、nが2〜18であるフルオロ酸を含む基材層を含む定着器部材が記載される。基材層は、弾性率が約4,000MPa〜約10,000Mpaであり、分解開始温度が約590℃である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本教示によるベルト基材を備える例示的な定着部材を示す図である。
図2A図2Aは、本発明の教示による、図1に示した定着器部材を用いた例示的な定着構造を示す図である。
図2B図2Bは、本発明の教示による、図1に示した定着器部材を用いた例示的な定着構造を示す図である。
図3図3は、転写固定装置を用いる定着器構造を示す図である。
図4図4は、最終的な硬化のための定着部材の張力の調整を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
固定部材または定着器部材は、1つ以上の機能性層が形成された基材を備えていてもよい。本明細書に記載の基材は、ベルトを含む。1つ以上の中間層は、緩衝層および剥離層を含む。画像支持材料(例えば、紙シート)の上にある融合したトナー画像からのトナー剥離性が良好であり、この性質を維持し、さらに、紙をはがしやすくするために、このような定着器部材を、高速高品質の電子写真印刷のための油を用いない定着部材として用いてもよい。
【0010】
種々の実施形態では、定着器部材は、例えば、1つ以上の機能性中間層が形成された基材を備えていてもよい。基材は、例えば、図1に示されるように、非導電性または導電性の適切な材料を用い、特定の構造に依存して、例えば、ベルトまたは膜のような種々の形状で作成されてもよい。
【0011】
図1において、定着部材または転写固定部材200の例示的な実施形態は、1つ以上の機能性中間層(例えば、220)と外側表面230とが形成されたベルト基材210を備えていてもよい。外側表面層230は、剥離層とも呼ばれる。ベルト基材210をさらに記載し、ポリイミドポリマーおよびフルオロ酸から作られる。
【0012】
(機能性中間層)
機能性中間層220(緩衝層中間層とも呼ばれる)として用いられる材料の例としては、フルオロシリコーン、シリコーンゴム、例えば、室温加硫(RTV)シリコーンゴム、高温加硫(HTV)シリコーンゴム、低温加硫(LTV)シリコーンゴムが挙げられる。これらのゴムは既知であり、商業的に簡単に入手可能であり、例えば、SILASTIC(登録商標)735ブラックRTVおよびSILASTIC(登録商標)732 RTV(いずれもDow Corning製)、106 RTV Silicone Rubberおよび90 RTV Silicone Rubber(いずれもGeneral Electric製)、JCR6115CLEAR HTVおよびSE4705U HTVシリコーンゴム(Dow Corning Toray Silicones製)である。他の適切なシリコーン材料としては、シロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)、フルオロシリコーン(例えば、Silicone Rubber 552(Sampson Coatings(Richmond、Virginia)から入手可能))、液体シリコーンゴム、例えば、ビニル架橋した熱硬化性ゴム、またはシラノールを室温で架橋した材料などが挙げられる。別の特定の例は、Dow Corning Sylgard 182である。市販のLSRゴムとしては、Dow Corning製のDow Corning Q3−6395、Q3−6396、SILASTIC(登録商標)590 LSR、SILASTIC(登録商標)591 LSR、SILASTIC(登録商標)595 LSR、SILASTIC(登録商標)596 LSR、SILASTIC(登録商標)598 LSRが挙げられる。機能性層は、弾力性を付与し、必要な場合には、例えば、SiCまたはAlのような無機粒子と混合してもよい。
【0013】
機能性中間層220として用いるのに適した材料の他の例としては、フルオロエラストマーも挙げられる。フルオロエラストマーは、(1)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのうち、2つのコポリマー、(2)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのターポリマー、(3)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマーといった種類に由来する。これらのフルオロエラストマーは、VITON A(登録商標)、VITON B(登録商標)、VITON E(登録商標)、VITON E 60C(登録商標)、VITON E430(登録商標)、VITON 910(登録商標)、VITON GH(登録商標)、VITON GF(登録商標)、VITON ETP(登録商標)のような種々の名称で商業的に知られている。VITON(登録商標)という名称は、E.I. DuPont de Nemours,Incの商標である。キュアサイトモノマーは、4−ブロモペルフルオロブテン−1、1,1−ジヒドロ−4−ブロモペルフルオロブテン−1、3−ブロモペルフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロ−3−ブロモペルフルオロプロペン−1、または任意の他の適切な既知のキュアサイトモノマー(例えば、DuPontから市販されているもの)であってもよい。他の市販されているフルオロポリマーとしては、FLUOREL 2170(登録商標)、FLUOREL 2174(登録商標)、FLUOREL 2176(登録商標)、FLUOREL 2177(登録商標)、FLUOREL LVS 76(登録商標)が挙げられ、FLUOREL(登録商標)は、3M Companyの登録商標である。さらなる市販材料としては、AFLASTMというポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレン)、FLUOREL II(登録商標)(LII900)というポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレンビニリデンフルオリド)(これらも、3M Companyから入手可能)、FOR−60KIR(登録商標)、FOR−LHF(登録商標)、NM(登録商標)FOR−THF(登録商標)、FOR−TFS(登録商標)、TH(登録商標)、NH(登録商標)、P757(登録商標)TNS(登録商標)T439(登録商標)、PL958(登録商標)、BR9151(登録商標)、TN505(登録商標)として特定されるTecnoflon(Ausimontから入手可能)が挙げられる。
【0014】
3種類の既知のフルオロエラストマーの例は、(1)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのうち、2つのコポリマー類、VITON A(登録商標)として商業的に知られているもの、(2)VITON B(登録商標)として商業的に知られているフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンのターポリマー類、(3)VITON GH(登録商標)またはVITON GF(登録商標)として商業的に知られているフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、キュアサイトモノマーのテトラポリマー類である。
【0015】
フルオロエラストマーであるVITON GH(登録商標)およびVITON GF(登録商標)は、フッ化ビニリデンの量が比較的少ない。VITON GF(登録商標)およびVITON GH(登録商標)は、約35重量%のフッ化ビニリデンと、約34重量%のヘキサフルオロプロピレンと、約29重量%のテトラフルオロエチレンと、約2重量%のキュアサイトモノマーとを有している。
【0016】
機能性中間層220の厚みは、約30ミクロン〜約1,000ミクロン、約100ミクロン〜約800ミクロン、または約150ミクロン〜約500ミクロンである。
【0017】
(剥離層)
剥離層230の例示的な実施形態としては、フルオロポリマー粒子が挙げられる。本明細書に記載の配合物で使用するのに適したフルオロポリマー粒子としては、フッ素含有ポリマーが挙げられる。これらのポリマーとしては、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択されるモノマー繰り返し単位を含むフルオロポリマーが挙げられる。フルオロポリマーは、直鎖または分枝鎖のポリマー、架橋したフルオロエラストマーであってもよい。フルオロポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VF2)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)のテトラポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。フルオロポリマー粒子は、化学物質および熱に対する安定性を与え、表面エネルギーが低い。フルオロポリマー粒子は、溶融温度が約255℃〜約360℃、または約280℃〜約330℃である。これらの粒子が溶融して剥離層を生成する。
【0018】
定着器部材200の場合、外側表面層または剥離層230の厚みは、約10ミクロン〜約100ミクロン、または約20ミクロン〜約80ミクロン、または約40ミクロン〜約60ミクロンであってもよい。
【0019】
(接着層)
場合により、任意の既知の接着層および入手可能な適切な接着層(プライマー層と呼ばれることもある)が、剥離層230、機能性中間層220、基材210の間に配置されていてもよい。適切な接着剤の例としては、アミノシランのようなシラン類(例えば、Dow Corning製のHV Primer 10)、チタネート、ジルコネート、アルミネートなど、およびこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、接着剤は、約0.001%溶液〜約10%溶液の形態で基材にワイピングによってのせられてもよい。接着層は、約2nm〜約2,000nm、または約2nm〜約5000nmの厚みで基材または剥離層にコーティングされてもよい。接着剤を、スプレーコーティングまたはワイピングを含む既知の任意の適切な技術によってコーティングしてもよい。
【0020】
図2A〜2Bは、本発明の教示による定着プロセスのための例示的な定着構造を示す。図2A〜2Bに示されている定着構造300A〜Bが、それぞれ一般化された模式的な図を示しており、他の部材/層/基材/構造を追加してもよく、または、すでに存在している部材/層/基材/構造を取り除くか、または変えてもよいことが当業者には容易に明らかになるはずである。本明細書では電子写真式プリンターを記載しているが、開示されている装置および方法を他の印刷技術に応用してもよい。例としては、オフセット印刷およびインクジェット機および固体転写固定機が挙げられる。
【0021】
図2Aは、本教示による、図1に示される定着器ベルトを用いた定着構造300Bを示す。構造300Bは、図1の定着器ベルトを備えていてもよく、このベルトは、加圧機構335(例えば、加圧ベルト)とともに、媒体基材315のための定着器用爪を形成する。種々の実施形態では、加圧機構335を、加熱ランプ(図示せず)と組み合わせて用い、トナー粒子を媒体基材315の上で融合させるプロセスのために圧力と熱を両方加えてもよい。それに加え、構造300Bは、例えば、図2Aに示されているように、1つ以上の外部熱ロール350を、例えば、クリーニングロール紙360とともに備えていてもよい。
【0022】
図2Bは、本教示による、図1に示される定着器ベルトを用いた定着構造400Bを示す。構造400Bは、定着器ベルト(例えば、図1の200)を備えていてもよく、このベルトは、加圧機構435(例えば、図2Bの加圧ベルト)とともに、媒体基材415のための定着器用爪を形成する。種々の実施形態では、加圧機構435を、加熱ランプと組み合わせて用い、トナー粒子を媒体基材415の上で融合させるプロセスのために圧力と熱を両方加えてもよい。それに加え、構造400Bは、定着器ベルト200を動かし、媒体基材415の上でトナー粒子を融合させ、画像を作成するような機械システム445を備えていてもよい。機械システム445は、1つ以上のローラー445a〜cを備えていてもよく、必要な場合には、これらを加熱ローラーとして用いてもよい。
【0023】
図3は、ベルト、シート、膜などの形態であってもよい、転写固定部材7の一実施形態の図を示す。転写固定部材7は、上述の定着器ベルトと似た構成である。現像した画像12が中間転写体1の上にあり、ローラー4および8を介して転写固定部材7と接触し、転写固定部材7に転写される。ローラー4および/またはローラー8は、これらに関連して熱を帯びていてもよいし、帯びていなくてもよい。転写固定部材7は、矢印13の方向に進む。複写基材9がローラー10と11との間を進むにつれて、現像した画像が複写基材9に転写され、融合する。ローラー10および/または11は、これらに関連して熱を帯びていてもよいし、帯びていなくてもよい。
【0024】
本明細書には、図1の基材層210として使用するのに適したポリイミド組成物が記載されている。ポリイミド組成物は、金属基材(例えば、ステンレス鋼)から自己剥離する中間剥離剤を含む。ほとんどの参考文献は、ポリイミド層をコーティングする前に金属基材に外部剥離層を塗布し、その後これを剥離することを報告している。開示されている組成物は、必要なのはたった1つのコーティング層であるため、費用対効果が高い。
【0025】
(基材層)
本明細書に開示されている基材層210は、フルオロ酸の内部剥離剤を含むポリイミド組成物であり、金属基材(例えば、ステンレス鋼)から自己剥離する。従来技術は、ほとんどの参考文献は、ポリイミド層をコーティングする前に金属基材に外部剥離層を塗布し、その後これを剥離することを報告している。開示されている組成物は、必要なのはたった1つのコーティング層であるため、費用対効果が高い。
【0026】
一実施形態では、開示されている組成物は、ポリアミド酸(例えば、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/4,4−オキシジアニリンのポリアミド酸)および内部剥離剤(例えば、ドデカフルオロスベリン酸)を含み、ドデカフルオロスベリン酸をポリアミド酸と化学的に接触させ、物理的な混合ではなく、ポリイミド網目構造に組み込むことができる。剥離剤の量は、基材の約0.1重量%〜約5.0重量%である。
【0027】
特定の液体フルオロ剤、例えば、ペルフルオロポリエーテルを剥離剤として使用する。しかし、ポリアミド酸と混合すると、フルオロ剤は、ポリアミド酸コーティング溶液と相溶性ではなく(相分離)、得られるポリイミドは、明らかな相分離を示す。コーティング基材からのポリイミドの剥離は、さまざまであり、このような液体フルオロ剤を用いて制御するのは非常に難しい。
【0028】
開示されているポリアミド酸は、ピロメリット酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、ピロメリット酸二無水物/フェニレンジアミンのポリアミド酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/フェニレンジアミンのポリアミド酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリン/フェニレンジアミンのポリアミド酸など、およびこれらの混合物のいずれかを含む。
【0029】
ピロメリット酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸の市販例としては、PYRE−ML RC5019(N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中、約15〜16重量%)、RC5057(NMP/芳香族炭化水素=80/20中、約14.5〜15.5重量%)、RC5083(NMP/DMAc=15/85中、約18〜19重量%)(すべてIndustrial Summit technology Corp.(Parlin,NJ)から入手可能)、FUJIFILM Electronic Materials U.S.A.,Inc.から入手可能なDURIMIDE(登録商標)100が挙げられる。
【0030】
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸の市販例としては、U−VARNISH AおよびS(NMP中、約20重量)(両方ともUBE America Inc.(New York、NY))が挙げられる。
【0031】
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/フェニレンジアミンのポリアミド酸の市販例としては、PI−2610(NMP中、約10.5重量)、PI−2611(NMP中、約13.5重量)(両方ともHD MicroSystem(Parlin,NJ)から入手可能)が挙げられる。
【0032】
ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸の市販例としては、RP46およびRP50(NMP中、約18重量%)(両方ともUnitech Corp.(Hampton、VA)製)が挙げられる。
【0033】
ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリン/フェニレンジアミンのポリアミド酸の市販例としては、PI−2525(NMP中、約25重量%)、PI−2574(NMP中、約25重量%)、PI−2555(NMP/芳香族炭化水素=80/20中、約19重量%)、PI−2556(NMP/芳香族炭化水素/プロピレングリコールメチルエーテル=70/15/15中、約15重量%)(すべてHD MicroSystems(Parlin,NJ)製)が挙げられる。
【0034】
基材のためにさまざまな量のポリアミド酸を選択することができ、例えば、約95〜約99.9重量%、約96〜約99.8重量%、または約97〜約99.5重量%であってもよい。
【0035】
中間転写体に含まれていてもよい他のポリアミド酸またはポリアミド酸エステルの例は、酸二無水物とジアミンの反応から得られる。適切な二無水物としては、芳香族二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物、例えば、9,9−ビス(トリフルオロメチル)キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス((3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシ−2,5,6−トリフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル二無水物、3,3’,4,4’−テトラカルボキシビフェニル二無水物、3,3’,4,4’−テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物、ジ−(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)エーテル二無水物、ジ−(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)スルフィド二無水物、ジ−(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ジ−(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,4,5−テトラカルボキシベンゼン二無水物、1,2,4−トリカルボキシベンゼン二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4−4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−ジフェニルスルフィドジオキシビス(4−フタル酸)二無水物、4,4’−ジフェニルスルホンジオキシビス(4−フタル酸)二無水物、メチレンビス(4−フェニレンオキシ−4−フタル酸)二無水物、エチリデンビス(4−フェニレンオキシ−4−フタル酸)二無水物、イソプロピリデンビス−(4−フェニレンオキシ−4−フタル酸)二無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェニレンオキシ−4−フタル酸)二無水物などが挙げられる。ポリアミド酸を調製するときに使用するのに適した例示的なジアミンとしては、4,4’−ビス−(m−アミノフェノキシ)−ビフェニル、4,4’−ビス−(m−アミノフェノキシ)−ジフェニルスルフィド、4,4’−ビス−(m−アミノフェノキシ)−ジフェニルスルホン、4,4’−ビス−(p−アミノフェノキシ)−ベンゾフェノン、4,4’−ビス−(p−アミノフェノキシ)−ジフェニルスルフィド、4,4’−ビス−(p−アミノフェノキシ)−ジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−アゾベンゼン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノ−p−terフェニル、1,3−ビス−(ガンマ−アミノプロピル)−テトラメチル−ジシロキサン、1,6−ジアミノヘキサン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、1,3−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ジアミノベンゼン、4,4’−ジアミノ−2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロ−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,3,3’,5,5’,6,6’−オクタフルオロジフェニルエーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)−フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,1−ジ(p−アミノフェニル)エタン、2,2−ジ(p−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ(p−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
二無水物およびジアミンは、例えば、約20:80〜約80:20、さらに具体的には、約50:50の重量比になるように選択される。上の芳香族テトラカルボン酸二無水物のような芳香族二無水物と、芳香族ジアミンのようなジアミンを、それぞれ単独または混合物として用いる。
【0037】
内部剥離剤としての剥離剤としては、式HOOC(CFCOOHまたはC2n+1COOHのフルオロ酸が挙げられ、式中、nは、2〜18、または2〜12、または2〜10である。フルオロ酸の実施形態としては、オクタフルオロスベリン酸HOOC(CFCOOH、ドデカフルオロスベリン酸HOOC(CFCOOH、ヘキサデカフルオロセバシン酸HOOC(CFCOOH、ヘプタデカフルオロ−n−ノナン酸CF(CFCOOH、ノナデカフルオロデカン酸CF(CFCOOH、ノナフルオロ吉草酸CF(CFCOOH、ペンタデカフルオロオクタン酸CF(CFCOOH、ウンデカフルオロヘキサン酸CF(CFCOOHなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
本明細書に開示される剥離剤は、コーティング溶液と相溶性であり(混合すると透明)、得られたポリイミドも、見かけ上相分離がなく透明である。それに加え、フルオロ酸は、ポリアミド酸と化学的に相互作用し、物理的な混合ではなく、ポリイミド網目構造に組み込むことができる。得られるポリイミドは、金属コーティング基材から自己剥離する。
【0039】
基材のためにさまざまな量のフルオロ酸を選択することができ、例えば、基材の約0.1〜約5重量%、約0.2〜約4重量%、または約0.5〜約3重量%であってもよい。
【0040】
ポリイミド基材組成物は、場合により、コーティングの質を向上させ、または平滑にするためにポリシロキサンコポリマーを含んでいてもよい。ポリシロキサンコポリマーの濃度は、約1重量%未満、または約0.2重量%未満である。任意要素のポリシロキサンコポリマーとしては、BYK Chemicalから商品名BYK(登録商標)310(キシレン中、約25重量%)および370で市販される、ポリエステルで修飾されたポリジメチルシロキサン(キシレン/アルキルベンゼン/シクロヘキサノン/モノフェニルグリコール=75/11/7/7中、約25重量%)、BYK Chemicalから商品名BYK(登録商標)330(メトキシプロピルアセテート中、約51重量%)および344(キシレン/イソブタノール=80/20中、約52.3重量%)、BYK(登録商標)−SILCLEAN 3710および3720(メトキシプロパノール中、約25重量%)で市販される、ポリエーテルで修飾されたポリジメチルシロキサン、BYK Chemicalから商品名BYK(登録商標)−SILCLEAN 3700(メトキシプロピルアセテート中、約25重量%)で市販される、ポリアクリレートで修飾されたポリジメチルシロキサン、またはBYK Chemicalから商品名BYK(登録商標)375(ジ−プロピレングリコールモノメチルエーテル中、約25重量%)で市販される、ポリエステルポリエーテルで修飾されたポリジメチルシロキサンが挙げられる。基材のポリイミド、フルオロ酸およびポリシロキサンポリマーは、約99.9/0.09/0.01〜約95/4/1の重量比で存在する。
【0041】
開示されているポリイミド基材層210は、ヤング弾性率が約4,000MPa〜約10,000MPa、または約5,000MPa〜約10,000MPa、または約6,000MPa〜約10,000MPaであり、分解開始温度は約400℃〜約600℃、または約425℃〜約575℃、または約450℃〜約550℃である。
【0042】
本明細書には、フローコーティングによって定着器ベルト基材のためのつなぎ目のないポリイミドベルトを調製するプロセスで使用される組成物も記載される。遠心鋳造プロセスでは、剛性の円筒形マンドレルの内側表面に、薄いフッ素またはシリコーンの剥離層を塗布し、次いで、ポリイミド層を塗布し、その後に硬化させ、マンドレルから外す。フローコーティングプロセスおよび開示されている組成物を用いると、それ以外の剥離層を必要としないため、製造費用が安くなる。
【0043】
基材層の組成物は、ポリアミド酸(例えば、ピロメリット酸二無水物/4,4−オキシジアニリンのポリアミド酸)およびフルオロ酸の内部剥離剤を含む。内部剥離剤は、基材の約0.05重量%〜約0.5重量%、または約0.1重量%〜約0.4重量%、または約0.15重量%〜約0.3重量%の量で存在する。ステンレス鋼基材からポリイミド層を完全に剥離するために、フルオロ酸剥離剤が必要である。
【0044】
望ましい生成物の周囲に、溶接したステンレス製ベルトまたは電気鋳造したニッケルベルトの上にポリイミド−フルオロ酸組成物をフローコーティングする。ポリイミド−フルオロ酸ベルトを約150℃〜約250℃、または約180℃〜約220℃で約30分〜約90分、または約45分〜約75分かけて部分的に硬化させるか、または前硬化させ、ステンレス鋼ベルトまたは電気鋳造したつなぎ目のないニッケルベルトから自己剥離させ、次いで、図4に示す形状で引っ張りつつ、約250℃〜約370℃、または約300℃〜約340℃で約30分〜約150分、または約60分〜約120分かけてさらに完全に硬化させる。この最終的な硬化は、約1キログラム〜約10キログラムの張力である。図4に示されるように、矢印20の方向に回転させつつ、前硬化したベルト210を2個のローラー250の間で引っ張る。最終的な硬化によって、定着器部材として使用するのに適した弾性率を示すベルトが得られる。
【0045】
つなぎ目のあるステンレス鋼ベルトのつなぎ目の厚みおよびプロフィールをできるだけ小さくすることができ、基材ベルトの表面仕上げおよび粗さを規定することができる。例えば、ポリイミド層の剥離のためには、粗く切削されたベルトまたは研磨したベルトが良好である。このような構造によって、さまざまな長さおよび幅を有するベルトを簡単に製造することができる。回転するマンドレルを用いると、それぞれのベルトが別個のマンドレルを必要とするため、製造可能なベルトの幅および長さに制限がある。
【0046】
一実施形態では、コーティングベルト基材は、粗く切削されたベルトであり、R(平均粗さ)は約0.01ミクロン〜約0.5ミクロン、または約0.05ミクロン〜約0.3ミクロン、または約0.1ミクロン〜約0.2ミクロンであり、Rmaxは約0.05ミクロン〜約2ミクロン、または約0.1ミクロン〜約1ミクロン、または約0.2ミクロン〜約0.7ミクロンである。この基材からフローコーティングされたポリイミド定着器基材の裏側は、同じように粗く旋盤加工されているため、識別可能である。
【0047】
別の実施形態では、コーティングベルト基材は、研磨したベルト基材であり、Rは、約0.15ミクロン〜約1ミクロン、または約0.2ミクロン〜約0.8ミクロン、または約0.3ミクロン〜約0.7ミクロンであり、Rmaxは、約0.5ミクロン〜約10ミクロン、または約1ミクロン〜約7ミクロン、または約2ミクロン〜約4ミクロンである。この基材からフローコーティングされたポリイミド定着器基材の裏側は、同じように研磨されているため、識別可能である。
【0048】
ポリイミド−フルオロ酸の層の厚みは、1回または複数回通過させるコーティングによって達成することができる。1回の通過の場合、ポリイミド層をコーティングし、約125℃〜約250℃の温度で約30分〜約90分かけて前硬化させ、次いで、約250℃〜約370℃の温度で約30分〜約90分かけて完全に硬化させる。複数の通過(例えば、二回の通過)の場合、下側のポリイミド層を基材にコーティングし、約125℃〜約190℃の温度で約30分〜約90分かけて前硬化させ、次いで、上側のポリイミド層をその後にコーティングし、約125℃〜約190℃の温度で約30分〜約90分かけて前硬化させ、次いで、二層のポリイミド層を、約190℃〜約370℃で約30分〜約90分かけて完全に硬化させる。一実施形態では、ステンレス鋼ベルトをコーティング基材として使用する。コーティングを熱硬化させている間、基材を約20rpm〜約100rpm、または約40rpm〜約60rpmの速度で回転する。
【0049】
ポリイミド基材組成物は、溶媒を含む。組成物を作成するために選択される溶媒の例としては、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(NMP)、塩化メチレンなど、およびこれらの混合物が挙げられ、溶媒は、コーティング混合物の約70重量%〜約95重量%、80重量%〜約90重量%の量で選択される。
【0050】
添加剤およびさらなる導電性フィラーまたは非導電性フィラーが、上述の組成物中に存在していてもよい。種々の実施形態では、他のフィラー材料または添加剤(例えば、無機粒子を含む)を、コーティング組成物に用いてもよく、その後に形成される表面層に用いてもよい。本明細書で用いられるフィラーとしては、カーボンブラック、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、グラファイト、グラフェン、銅フレーク、ナノダイアモンド、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属酸化物、ドープされた金属酸化物、金属フレークおよびこれらの混合物が挙げられる。種々の実施形態では、当業者に知られている他の添加剤を入れ、開示されているコンポジット材料を作成することもできる。
【0051】
組成物を任意の適切な既知の様式で基材にコーティングする。このような材料を基材層にコーティングする典型的な技術としては、フローコーティング、液体噴霧コーティング、浸漬コーティング、ワイヤ巻き付けロッドによるコーティング、流動床コーティング、粉末コーティング、静電噴霧、音波噴霧、ブレードコーティング、成形、積層などが挙げられる。
【実施例】
【0052】
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/4,4’−オキシジアニリンのポリアミド酸と、ドデカフルオロスベリン酸とを約99.5〜0.5の重量比で含む組成物をN−メチルピロリドン(NMP)中で固形物が約16重量%になるように調製した。ポリアミド酸は、Kaneka Corp.製であり、ドデカフルオロスベリン酸は、TCI America製である。この組成物の液体をステンレス鋼基材にコーティングした後、75℃で30分間、190℃で30分間、320℃で60分間硬化させた。得られたポリイミド定着器ベルトは、ステンレス鋼基材から自己剥離し、80μmの平滑なポリイミド基材が得られた。
【0053】
このポリイミド/ドデカフルオロスベリン酸基材について、さらに、弾性率および熱膨張係数(CTE)を調べた。ヤング弾性率は、約7,100MPaであり、CTEは、17ppm/°Kであった。比較として、市販のポリイミドベルト(Nitto Denko KUCポリイミド)の弾性率は、約6,000MPaであり、CTEは、15ppm/°Kであった。
【0054】
開示されているポリイミド/ドデカフルオロスベリン酸基材の分解開始温度は、約590℃であった。比較として、Nitto Denko KUCポリイミド基材の分解開始温度は、約510℃であった。
【0055】
したがって、開示されているポリイミド/ドデカフルオロスベリン酸定着器ベルト基材の主要な特性は、市販のポリイミド基材の特性に匹敵しているが、それ以外の剥離層コーティングが不要なため、製造コストが安くなった。
図1
図2A
図2B
図3
図4