特許第6045955号(P6045955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6045955
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】カードリーダ
(51)【国際特許分類】
   G06K 13/06 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   G06K13/06
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-68849(P2013-68849)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-191747(P2014-191747A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】栗林 郁郎
【審査官】 福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−132174(JP,A)
【文献】 特開平6−309510(JP,A)
【文献】 特開2010−049401(JP,A)
【文献】 特開2005−309857(JP,A)
【文献】 実開昭56−001261(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気データが記録されたカードが挿入されるカード挿入口と、前記カード挿入口から挿入された前記カードを搬送するカード搬送機構とを備え、
前記カード搬送機構は、前記カードの厚さ方向で前記カードを挟んで搬送する複数のローラ対を備え、
複数の前記ローラ対のうちの、前記カード挿入口から挿入された前記カードが最初に接触する前記ローラ対である第1ローラ対は、前記カードの厚さ方向における前記カードの一方の面に接触する第1ローラと、前記カードの厚さ方向における前記カードの他方の面に接触する第2ローラとを備え、
前記第1ローラには、その径方向の外側へ突出する複数の突出部が形成され、
前記第2ローラの、前記カードに接触する部分であるカード接触部と、前記突出部とは、前記カードの搬送方向と前記カードの厚さ方向とに直交する前記カードの幅方向において互いにずれた位置に配置されていることを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
前記第1ローラ対は、2個の前記第2ローラを備え、
前記第2ローラは、その外周面の径が一定になっている平ローラであり、
前記カードの幅方向において、前記第1ローラの両側に前記第2ローラが配置されていることを特徴とする請求項1記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記第2ローラには、その径方向の内側に窪む円環状の凹部が形成されるとともに、前記凹部の両側に2個の前記カード接触部が形成され、
前記カードの幅方向において、前記第1ローラと略一致するように前記凹部が配置され、前記第1ローラの両側に前記カード接触部が配置されていることを特徴とする請求項1記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記カードの磁気ストライプに記録された磁気データの読取りと前記磁気ストライプへの磁気データの書込みとの少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッドを備え、
前記カードの搬送方向における前記第1ローラ対と前記磁気ヘッドとの距離は、前記カード挿入口から挿入される前記カードの挿入方向における前記磁気ストライプの前端と前記カードの挿入方向における前記カードの後端との距離よりも長くなっていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項5】
前記第1ローラに前記突出部が形成されていることを検出するための検出機構を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項6】
前記検出機構は、前記カードの幅方向で前記突出部を挟むように配置される発光素子と受光素子とを有する光学式のセンサであることを特徴とする請求項5記載のカードリーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードに記録された磁気データの読取りやカードへの磁気データの書込みを行うためのカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードに記録された磁気データの読取りやカードへの磁気データの書込みを行うカードリーダが広く利用されている。カードリーダが利用される金融機関等の業界では、従来、犯罪者がカードリーダのカード挿入部に磁気ヘッドを取り付けて、この磁気ヘッドでカードの磁気データを不正に取得するいわゆるスキミングが大きな問題となっている。そこで、スキミング用の磁気ヘッド(以下、「スキミング用磁気ヘッド」とする。)による磁気データの有意な読取りを阻止するための構成を備えるカードリーダが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のカードリーダは、カードを搬送するための第1ローラユニット、第2ローラユニットおよび第3ローラユニットを備えている。第1ローラユニット、第2ローラユニットおよび第3ローラユニットは、カード挿入口からカードリーダの奥側に向かってこの順番に配置されている。第2ローラユニットと第3ローラユニットとの間には、磁気ヘッドが配置されている。第1〜第3ローラユニットは、駆動ローラと従動ローラとを備えている。第1ローラユニットの駆動ローラと第2ローラユニットの駆動ローラとはベルトおよびプーリを介して連結され、第2ローラユニットの駆動ローラと第3ローラユニットの駆動ローラとはベルトおよびプーリを介して連結されている。第1ローラユニットの駆動ローラには、ベルトおよびプーリを介して駆動用のモータが連結されている。
【0004】
特許文献1に記載のカードリーダでは、カード挿入口から挿入されたカードは、第1ローラユニットに最初に接触する。第1ローラユニットは、駆動ローラとして、外周面に凹凸が形成される突出ローラを備えるとともに、従動ローラとして、突出ローラに対向配置される平ローラとを備えている。突出ローラは、カード搬送路で搬送されるカードの上面に接触し、平ローラは、カードの下面に接触する。このカードリーダでは、第1ローラユニットによって搬送されるカードの搬送速度が、突出ローラの外周面の凹凸に応じて変動するため、スキミング用磁気ヘッドによる磁気データの有意な読取りを阻止することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−49401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のカードリーダでは、突出ローラと平ローラとが対向配置されており、突出ローラと平ローラとの間にカードが挟まれていない状態でも、突出ローラと平ローラとが接触している。そのため、このカードリーダでは、駆動用のモータが回転している間は常時、突出ローラで振動が発生する。また、このカードリーダでは、第1ローラユニットの駆動ローラである突出ローラと第2ローラユニットの駆動ローラとがベルトおよびプーリを介して連結され、第2ローラユニットの駆動ローラと第3ローラユニットの駆動ローラとがベルトおよびプーリを介して連結されているため、突出ローラで発生した振動は、ベルトおよびプーリを介して、第2ローラユニットの駆動ローラおよび第3ローラユニットの駆動ローラに伝達される。したがって、このカードリーダでは、第2ローラユニットによってカードを搬送しながら、あるいは、第2ローラユニットと第3ローラユニットとによってカードを搬送しながら磁気ヘッドで磁気データを読み取る際に、ベルトおよびプーリを介して第2ローラユニットの駆動ローラおよび第3ローラユニットの駆動ローラに伝達される振動の影響で磁気データの読取り精度が低下するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明の課題は、スキミング用磁気ヘッドによる磁気データの有意な読取りを阻止することが可能で、かつ、カードを挟んで搬送する複数のローラ対がベルトおよびプーリ等の動力伝達機構を介して連結されていても、ローラ対の振動に起因する磁気データの読取り精度や書込み精度の低下を防止することが可能なカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダは、磁気データが記録されたカードが挿入されるカード挿入口と、カード挿入口から挿入されたカードを搬送するカード搬送機構とを備え、カード搬送機構は、カードの厚さ方向でカードを挟んで搬送する複数のローラ対を備え、複数のローラ対のうちの、カード挿入口から挿入されたカードが最初に接触するローラ対である第1ローラ対は、カードの厚さ方向におけるカードの一方の面に接触する第1ローラと、カードの厚さ方向におけるカードの他方の面に接触する第2ローラとを備え、第1ローラには、その径方向の外側へ突出する複数の突出部が形成され、第2ローラの、カードに接触する部分であるカード接触部と、突出部とは、カードの搬送方向とカードの厚さ方向とに直交するカードの幅方向において互いにずれた位置に配置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のカードリーダでは、カード挿入口から挿入されたカードが最初に接触する第1ローラ対は、複数の突出部が形成されカードの厚さ方向におけるカードの一方の面に接触する第1ローラを備えている。そのため、本発明では、カード挿入口から挿入され第1ローラ対によって搬送されるカードの搬送速度が第1ローラの突出部の影響で変動する。また、カード挿入口から挿入され第1ローラ対によって搬送されるカードは、第1ローラの突出部の影響で振動する。したがって、本発明では、カード挿入口の前方等に設置されるスキミング用磁気ヘッドによる磁気データの有意な読取りを阻止することが可能になる。
【0010】
また、本発明では、第2ローラの、カードに接触する部分であるカード接触部と、突出部とが、カードの幅方向において互いにずれた位置に配置されているため、第1ローラと第2ローラとの間にカードが挟まれていないときには、第2ローラのカード接触部と第1ローラの突出部とが接触せず、第1ローラおよび第2ローラに振動が生じない。したがって、本発明では、複数のローラ対がベルトおよびプーリ等の動力伝達機構を介して連結されていても、第1ローラ対よりも奥側に配置される磁気ヘッドによって磁気データを読み取る際や書き込む際に、第1ローラと第2ローラとの間からカードが外れていれば、磁気ヘッドによって磁気データを読み取る際や書き込む際のローラ対の振動を防止することが可能になる。その結果、本発明では、複数のローラ対がベルトおよびプーリ等の動力伝達機構を介して連結されていても、ローラ対の振動に起因する磁気データの読取り精度や書込み精度の低下を防止することが可能になる。
【0011】
本発明において、たとえば、第1ローラ対は、2個の第2ローラを備え、第2ローラは、その外周面の径が一定になっている平ローラであり、カードの幅方向において、第1ローラの両側に第2ローラが配置されている。この場合には、第2ローラの構成を簡素化することが可能になる。また、本発明において、第2ローラには、その径方向の内側に窪む円環状の凹部が形成されるとともに、凹部の両側に2個のカード接触部が形成され、カードの幅方向において、第1ローラと略一致するように凹部が配置され、第1ローラの両側にカード接触部が配置されていても良い。
【0012】
本発明において、カードリーダは、カードの磁気ストライプに記録された磁気データの読取りと磁気ストライプへの磁気データの書込みとの少なくともいずれか一方を行う磁気ヘッドを備え、カードの搬送方向における第1ローラ対と磁気ヘッドとの距離は、カード挿入口から挿入されるカードの挿入方向における磁気ストライプの前端とカードの挿入方向におけるカードの後端との距離よりも長くなっていることが好ましい。このように構成すると、磁気ヘッドによって磁気データを読み取る際や書き込む際に、第1ローラと第2ローラとの間からカードが確実に外れる。したがって、磁気ヘッドによって磁気データを読み取る際や書き込む際のローラ対の振動を確実に防止して、ローラ対の振動に起因する磁気データの読取り精度や書込み精度の低下を確実に防止することが可能になる。
【0013】
本発明において、カードリーダは、第1ローラに突出部が形成されていることを検出するための検出機構を備えることが好ましい。このように構成すると、突出部を削る等、第1ローラに対して犯罪者が不正行為を行ったことを検出機構によって検出することが可能になる。あるいは、摩耗によって突出部がすり減って第1ローラ対で搬送されるカードの速度変動が起きにくくなっていることを検出機構によって検出することが可能になる。したがって、検出機構によって不正行為が検出された場合や突出部がすり減ってしまったことが検出された場合にカードリーダの取引を停止する等の所定の処置を行うことで、スキミング用磁気ヘッドによる磁気データの有意な読取りを効果的に阻止することが可能になる。
【0014】
本発明において、検出機構は、たとえば、カードの幅方向で突出部を挟むように配置される発光素子と受光素子とを有する光学式のセンサである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のカードリーダでは、スキミング用磁気ヘッドによる磁気データの有意な読取りを阻止することが可能になり、また、複数のローラ対がベルトおよびプーリ等の動力伝達機構を介して連結されていても、ローラ対の振動に起因する磁気データの読取り精度や書込み精度の低下を防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態にかかるカードリーダの概略構成を説明するための側面図である。
図2図1に示すカードリーダの概略構成を説明するための正面図である。
図3図1に示すカードリーダで処理されるカードの平面図である。
図4】本発明の他の実施の形態にかかるカードリーダの概略構成を説明するための側面図である。
図5】本発明の他の実施の形態にかかる第2ローラの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(カードリーダの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の概略構成を説明するための側面図である。図2は、図1に示すカードリーダ1の概略構成を説明するための正面図である。図3は、図1に示すカードリーダ1で処理されるカード2の平面図である。
【0019】
本形態のカードリーダ1は、カード2に記録された磁気データの読取りおよびカード2への磁気データの書込みの少なくともいずれか一方を行うための装置であり、たとえば、ATM等の所定の上位装置に搭載されて使用される。このカードリーダ1は、カード2が挿入されるカード挿入口3が形成されるカード挿入部4と、カード2が搬送されるカード搬送路5が形成される本体部6とを備えている。カード挿入部4は、本体部6の前端面に取り付けられている。本体部6は、磁気データの読取りおよび磁気データの書込みの少なくともいずれか一方を行う2個の磁気ヘッド7、8と、カード挿入口3から挿入されたカード2を搬送するカード搬送機構9とを備えている。
【0020】
本形態では、図1等に示すX方向でカード2が搬送される。具体的には、X1方向にカード2が挿入され、X2方向にカード2が排出される。すなわち、X方向は、カード2の搬送方向であり、X1方向は、カード2の挿入方向であり、X2方向は、カード2の排出方向である。また、X方向に略直交する図1等のZ方向は、カード2の厚さ方向であり、X方向とZ方向とに略直交する図1等のY方向は、カード2の幅方向(短手幅方向)である。なお、以下の説明では、X1方向側を「奥(後ろ)」側、X2方向側を「前」側、Y1方向側を「右」側、Y2方向側を「左」側、Z1方向側を「上」側、Z2方向側を「下」側とする。
【0021】
カード2は、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。このカード2は、国際規格やJIS規格(JISX6302−2)に準拠するカードである。このカード2のおもて面(上面)には、磁気データが記録される磁気ストライプ2a(図3参照)が形成されている。また、カード2の裏面(下面)にも、磁気データが記録される磁気ストライプ(図示省略)が形成されている。なお、カード2には、ICチップが内蔵されても良いし、通信用のアンテナが内蔵されても良い。また、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0022】
磁気ヘッド7は、そのギャップ部がカード搬送路5に下側から臨むように配置されている。磁気ヘッド8は、そのギャップ部がカード搬送路5に上側から臨むように配置されている。磁気ヘッド7と磁気ヘッド8とは、そのギャップ部同士が上下方向で対向するように配置されている。また、磁気ヘッド7、8は、前後方向における本体部6の略中心に配置されている。
【0023】
(カード搬送機構の構成)
カード搬送機構9は、カード2の厚さ方向でカード2を挟んで搬送する複数のローラ対11〜13と、複数のローラ対11〜13を駆動する駆動用モータ14とを備えている。本形態のカード搬送機構9は、3組のローラ対11〜13を備えている。ローラ対11〜13は、本体部6の前端側から奥端側に向かってこの順番に配置されている。また、ローラ対11〜13は、互いに所定の距離をあけた状態で配置されている。具体的には、ローラ対11は、本体部6の前端側に配置され、ローラ対12は、前後方向における本体部6の略中心に配置され、ローラ対13は、本体部6の後端側に配置されている。本形態では、カード挿入口3から挿入されたカード2は、最初にローラ対11に接触する。本形態のローラ対11は、第1ローラ対である。
【0024】
ローラ対12、13は、駆動用モータ14に連結される駆動ローラ16と、駆動ローラ16に対向配置されるパッドローラ17とを備えている。駆動ローラ16は、カード搬送路5に上側から臨むように配置されており、カード2の上面に接触する。パッドローラ17は、駆動ローラ16の下側で駆動ローラ16に対向しており、カード2の下面に接触する。また、パッドローラ17は、図示を省略する付勢部材によって駆動ローラ16に向かって付勢されている。駆動ローラ16およびパッドローラ17は、その外周面の径が一定になっている平ローラである。駆動ローラ16およびパッドローラ17は、左右方向におけるカード搬送路5の略中心に配置されている。すなわち、ローラ対12、13は、左右方向におけるカード搬送路5の略中心に配置されている。
【0025】
ローラ対11は、駆動用モータ14に連結される第1ローラとしての駆動ローラ21と、第2ローラとしての2個の従動ローラ22とを備えている。駆動ローラ21は、カード搬送路5に上側から臨むように配置されており、カード2の上面に接触する。従動ローラ22は、カード搬送路5に下側から臨むように配置されており、カード2の下面に接触する。駆動ローラ21と2個の従動ローラ22とは、前後方向において同じ位置に配置されている。
【0026】
駆動ローラ21には、その径方向の外側へ突出する複数の突出部21aが形成されている。本形態では、4個の突出部21aが駆動ローラ21に形成されている。具体的には、駆動ローラ21の回転中心を中心にして略90°ピッチで4個の突出部21aが駆動ローラ21に形成されている。突出部21aは、たとえば、四角錐台状に形成されている。また、突出部21aは、たとえば、左右方向における駆動ローラ21の全域に形成されている。駆動ローラ21は、本体部6のフレームに回転可能に支持される回転軸23に固定されている。この駆動ローラ21は、左右方向におけるカード搬送路5の略中心に配置されている。
【0027】
従動ローラ22は、駆動ローラ16およびパッドローラ17と同様に、その外周面の径が一定になっている平ローラである。この従動ローラ22は、本体部6のフレームに固定される固定軸24に回転可能に支持されている。また、2個の従動ローラ22は、左右方向において、駆動ローラ21の両側に配置されている。すなわち、一方の従動ローラ22は、駆動ローラ21よりも右側に配置され、他方の従動ローラ22は、駆動ローラ21よりも左側に配置されている。上述のように、従動ローラ22は平ローラであり、従動ローラ22の外周面は、カード2に接触するカード接触部22aとなっている。このように、本形態では、左右方向において、従動ローラ22のカード接触部22aと、駆動ローラ21の突出部21aとが左右方向において互いにずれた位置に配置されている。
【0028】
図1図2に示すように、従動ローラ22は、その上端位置がカード搬送路5の上端側となるように配置されている。また、突出部21aを除く駆動ローラ21の外周面が従動ローラ22の上端よりも上側に配置され、かつ、突出部21aが2個の従動ローラ22の間を通過する際に突出部21aの先端(駆動ローラ21の径方向における外側端)が従動ローラ22の上端よりも下側を通過するように、駆動ローラ21が配置されている。すなわち、左右方向から見たときに、突出部21aを除く駆動ローラ21の外周面が従動ローラ22と重ならず、かつ、突出部21aが2個の従動ローラ22の間を通過する際に突出部21aの先端側が従動ローラ22と重なるように、駆動ローラ21が配置されている。
【0029】
ローラ対13の駆動ローラ16が固定される回転軸(図示省略)には、1個のプーリ25が固定されている。ローラ対12の駆動ローラ16が固定される回転軸(図示省略)には、3個のプーリ26が回転軸の軸方向で並ぶように固定されている。駆動ローラ21の回転軸23には、1個のプーリ27が固定されている。駆動用モータ14の出力軸には、プーリ28が固定されている。3個のプーリ26のうちの1個のプーリ26とプーリ28とには、ベルト29が架け渡されている。残りの2個のプーリ26のうちの1個のプーリ26とプーリ25とには、ベルト30が架け渡されている。残りの1個のプーリ26とプーリ27との間には、ベルト31が架け渡されている。駆動用モータ14が回転すると、駆動ローラ16、21が回転する。
【0030】
図1に示すように、磁気ヘッド7、8は、ローラ対12の奥側に配置されている。左右方向におけるローラ対11と磁気ヘッド7、8との距離L1は、カード搬送路5で搬送されるカード2の磁気ストライプ2aの奥端(すなわち、カード2の挿入方向(X1方向)における磁気ストライプ2aの前端)2bとカード搬送路5で搬送されるカード2の前端(すなわち、カード2の挿入方向(X1方向)におけるカード2の後端)2cとの距離L2(図3参照)よりも長くなっている。具体的には、距離L1は、カード搬送路5で搬送されるカード2の長さ(すなわち、カード2の長手方向の長さ)L3と同程度となっている。なお、左右方向におけるローラ対11とカードリーダ1の前端との距離L4は、たとえば、カード2の長さの1/3〜1/4程度となっている。
【0031】
以上のように構成されたカード搬送機構9では、カード挿入口3の近傍に配置されるセンサ(図示省略)によって、カード挿入口3にカード2が挿入されたことが検知されると、駆動用モータ14が起動する。駆動用モータ14が起動すると、駆動ローラ16、21が回転して、カード2が本体部6の中へ取り込まれる。
【0032】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、カード挿入口3から挿入されたカード2が最初に接触するローラ対11の駆動ローラ21に径方向の外側へ突出する複数の突出部21aが形成されている。そのため、本形態では、カード挿入口3から挿入されローラ対11によって搬送されるカード2の搬送速度が駆動ローラ21の突出部21aの影響で変動する。また、カード挿入口3から挿入されローラ対11によって搬送されるカード2は、駆動ローラ21の突出部21aの影響で振動する。したがって、本形態では、カード挿入口3の前方に設置されるスキミング用磁気ヘッドによる磁気データの有意な読取りを阻止することが可能になる。
【0033】
本形態では、従動ローラ22は、左右方向における駆動ローラ21の両側のそれぞれに配置されており、従動ローラ22のカード接触部22aと駆動ローラ21の突出部21aとが左右方向において互いにずれた位置に配置されている。そのため、本形態では、駆動ローラ21と従動ローラ22との間からカード2が抜けているときには、突出部21aと従動ローラ22とが接触せず、駆動ローラ21に振動が生じない。また、本形態では、左右方向におけるローラ対11と磁気ヘッド7、8との距離L1は、磁気ストライプ2aの奥端2bとカード2の前端2cとの距離L2よりも長くなっており、磁気ヘッド7、8による磁気データの読取り時や書込み時に、カード2は、駆動ローラ21と従動ローラ22との間から抜けている。したがって、本形態では、ローラ対11〜13がベルト29〜31およびプーリ25〜28を介して連結されていても、磁気ヘッド7、8によって磁気データを読み取る際や書き込む際のローラ対11〜13の振動を防止することができ、その結果、ローラ対11〜13の振動に起因する磁気データの読取り精度や書込み精度の低下を防止することが可能になる。
【0034】
(第1ローラ対の配置位置の変形例)
図4は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の概略構成を説明するための側面図である。
【0035】
上述した形態では、カード挿入口3から挿入されたカード2が最初に接触する第1ローラ対としてのローラ対11が、本体部6の前端側に配置されている。この他にもたとえば、図4に示すように、カード挿入口3から挿入されたカード2が最初に接触する第1ローラ対としてのローラ対11が、カード挿入部4に配置されても良い。この場合には、上述の駆動ローラ16とパッドローラ17とから構成されるローラ対41が本体部6の前端側に配置される。また、ローラ対41を構成する駆動ローラ16の回転軸(図示省略)には、2個のプーリ42が固定されるとともに、一方のプーリ42とプーリ26とにはベルト31が架け渡され、他方のプーリ42とプーリ27とには、ベルト43が架け渡される。
【0036】
この場合には、カード挿入口3のより近い位置に駆動ローラ21が配置されるため、カード挿入口3の前方に設置されるスキミング用磁気ヘッドによってカード2の磁気データの読取りが開始された直後からカード2の搬送速度を変動させることが可能になる。また、スキミング用磁気ヘッドによってカード2の磁気データの読取りが開始された直後からカード2を振動させることが可能になる。したがって、カード挿入口3の前方に設置されるスキミング用磁気ヘッドによる磁気データの有意な読取りを効果的に阻止することが可能になる。
【0037】
一方で、この場合には、カード挿入口3のより近い位置に駆動ローラ21が配置されるため、突出部21aを削る等の駆動ローラ21に対する犯罪者の不正行為が行われやすくなる。したがって、この場合には、駆動ローラ21に突出部21aが形成されていることを検出するための検出機構50がカード挿入部4に設置されていることが好ましい。検出機構50は、たとえば、左右方向で突出部21aを挟むように配置される発光素子と受光素子とを有する透過型の光学式センサ(図2の二点鎖線参照)や、突出部21aに向かって光を照射する発光素子と突出部21aで反射された光を受光する受光素子とを有する反射型の光学式センサである。
【0038】
このように、検出機構50がカード挿入部4に設置されていると、突出部21aを削る等の不正行為が行われたことを検出機構50で検出することが可能になる。また、検出機構50が設置されていると、摩耗によって突出部21aがすり減ってローラ対11で搬送されるカード2の速度変動が起きにくくなっていることを検出機構50で検出することが可能になる。したがって、検出機構50によって不正行為が検出された場合や突出部21aがすり減ってしまったことが検出された場合にカードリーダ1の取引を停止する等の所定の処置を行うことで、スキミング用磁気ヘッドによる磁気データの有意な読取りを効果的に阻止することが可能になる。
【0039】
なお、この場合には、磁気ヘッド7、8は、前後方向において、ローラ対12と同じ位置に配置される。そのため、磁気ヘッド7、8によって磁気データを読み取っている最中や磁気データを書き込んでいる最中にローラ対12からカード2が外れることがない。したがって、ローラ対12からのカード2の外れに起因して磁気データの読取り精度や書込み精度が低下することはない。また、この場合には、前後方向におけるローラ対11と磁気ヘッド7、8との距離L1は、上述した形態と同様に、磁気ストライプ2aの奥端2bとカード2の前端2cとの距離L2よりも長くなっている。また、検出機構50は、機械式のセンサ等の光学式センサ以外のセンサであっても良い。また、上述した形態において、本体部6の前端側に検出機構50が設置されても良い。ただし、本体部6の前端側に駆動ローラ21が配置される場合には、カード挿入口3から駆動ローラ21までの距離が遠くなり、突出部21aを削る等の不正行為が行われにくくなるため、上述した形態のように、検出機構50が設置されていなくても良い。また、図4では、上述した形態と同一の構成については同一の符号を付している。
【0040】
(他の実施の形態)
上述した形態および変形例は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0041】
上述した形態では、ローラ対11は、左右方向において駆動ローラ21の両側に配置される2個の従動ローラ22を備えている。この他にもたとえば、ローラ対11は、駆動ローラ21の右側または左側に配置される1個の従動ローラ22のみを備えていても良い。また、ローラ対11は、2個の従動ローラ22に代えて、第2ローラとしての1個の従動ローラ52を備えていても良い。この場合には、従動ローラ52の軸方向における中心位置に、従動ローラ52の径方向の内側へ窪む円環状の凹部52aが形成される。また、凹部52aの両側に外周面の径が一定となっている部分があり、この部分がカード2の下面に接触するカード接触部52bとなっている。すなわち、凹部52aの両側のそれぞれに合計2個のカード接触部52bが形成される。また、この場合には、左右方向において、駆動ローラ21と略一致するように凹部52aが配置され、駆動ローラ21の両側にカード接触部52bが配置される。
【0042】
上述した形態では、駆動ローラ21が、カード搬送路5に上側から臨むように配置され、従動ローラ22が、カード搬送路5に下側から臨むように配置されている。この他にもたとえば、駆動ローラ21が、カード搬送路5に下側から臨むように配置され、従動ローラ22が、カード搬送路5に上側から臨むように配置されても良い。また、上述した形態では、ローラ対11は、1個の駆動ローラ21と、左右方向において駆動ローラ21の両側に配置される2個の従動ローラ22とを備えているが、ローラ対11は、1個の従動ローラ22と、左右方向において従動ローラ22の両側に配置される2個の駆動ローラ21とを備えていても良い。
【0043】
上述した形態では、駆動ローラ21に突出部21aが形成され、従動ローラ22は平ローラとなっているが、従動ローラ22に突出部21aに相当する突出部が形成され、駆動ローラ21が平ローラとなっていても良い。この場合には、従動ローラ22が第1ローラとなり、駆動ローラ21が第2ローラとなる。また、駆動ローラ21に突出部21aが形成されるとともに、従動ローラ22に突出部21aに相当する突出部が形成されても良い。また、上述した形態において、パッドローラ17および従動ローラ22がモータに連結されても良い。
【0044】
上述した形態では、左右方向におけるローラ対11と磁気ヘッド7、8との距離L1は、磁気ストライプ2aの奥端2bとカード2の前端2cとの距離L2よりも長くなっている。この他にもたとえば、磁気データの読取り精度の低下や磁気データの書込み精度の低下が生じないのであれば、距離L1が長さL2と同じであっても良いし、距離L1が長さL2よりも若干、短くなっていても良い。また、上述した形態では、ローラ対11〜13は、ベルト29〜31およびプーリ25〜28を介して連結されているが、ローラ対11〜13は、歯車列を介して連結されても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 カードリーダ
2 カード
2a 磁気ストライプ
2b 奥端(カードの挿入方向における磁気ストライプの前端)
2c 前端(カードの挿入方向におけるカードの後端)
3 カード挿入口
7、8 磁気ヘッド
9 カード搬送機構
11 ローラ対(第1ローラ対)
12、13、41 ローラ対
21 駆動ローラ(第1ローラ)
21a 突出部
22、52 従動ローラ(第2ローラ)
22a、52b カード接触部
50 検出機構
52a 凹部
X カードの搬送方向
X1 カードの挿入方向
Y カードの幅方向
Z カードの厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5