(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電気接続線の挿入部を有するケーシングと、夫々前記ケーシング内に設けられた、端子板と、板バネとを備え、前記挿入部から電気接続線の先端部を前記ケーシング内へ挿入し、前記端子板と前記板バネとにて電気接続線の前記先端部を挟むことにより、前記端子板へ前記電気接続線を接続するトランスの端子台において、
前記端子板の接続面は、電気接続線の前記挿入方向へ略沿って配置され、
前記板バネは、第1押圧肢と、第2押圧肢と、前記両押圧肢の基端同士を連結する連結部とにて構成され、
第1及び第2の前記両押圧肢は、夫々基端側を端子板の前記接続面から離れた位置に配置されると共に先端を前記端子台の接続面へ向けるものであり、前記第1押圧肢は、前記第2押圧肢に対し前記挿入部側へ間隔を開けて配置され、
第1押圧肢の前記先端を当接部とし第2押圧肢の前記先端を副当接部として、前記当接部と副当接部の夫々は、端子板の前記接続面と当接するか若しくは電気接続線の前記先端部の厚みよりも小さな間隔を前記接続面との間に開け、
前記連結部は、当り部と、前記当り部よりも前記第2押圧肢側に設けられた退避部とにて構成され、
前記ケーシング内には、前記連結部と当接することにより前記板バネが端子板の前記接続面から離反する方向へ移動するのを規制する規制面が設けられ、
前記当り部が前記規制面と当接することにより前記規制面は前記第1押圧肢が端子板の接続面から離反する方向へ移動するのを規制し、
前記当り部は前記退避部よりも前記規制面側へ突出し、当り部の当該突出により、前記退避部と前記規制面との間には、前記当り部と前記規制面との間よりも大きな間隔が開けられ、
前記電気接続線の先端部の上記挿入により、電気接続線の前記先端部にて前記接続面へ沿って前記第1押圧肢を押圧することができ、前記押圧により、前記第1押圧肢を撓ませて前記当接部を第1押圧肢の前記基端側に対し前記挿入方向へ移動させることにて端子板の前記接続面との間の隙間を拡大させ、前記接続面と前記当接部との間から前記電気接続線先端部の前記当接部よりも前記挿入方向の先への侵入を可能とし、
前記連結部は、力を受けることにより変形して前記退避部の前記規制面との間の前記間隔を縮小することができ、連結部の当該変形により、前記第2押圧肢は、前記第1押圧肢に比べ前記規制面に規制されずに端子板の前記接続面から離反する方向へ変位することができ、前記侵入後前記電気接続線の先端部を挿入方向へ更に移動させることにより、前記接続面と前記副当接部との間へ前記電気接続線先端部を円滑に侵入させることができることを特徴とするトランスの端子台。
前記連結部は、一端が前記第1押圧肢の後端に接続され当該後端から第2押圧肢の後端側へ前記規制面に対し凸状に湾曲して伸びる第1突部と、一端が前記第1突部の他の一端と接続され当該他の一端から第2押圧肢の後端側へ前記規制面に対し凸状に湾曲して伸びる第2突部とを備え、
前記第2突部の他の一端は前記第2押圧肢の前記後端に接続され、前記第1突部は、前記第2突部よりも前記規制部側へ突出するものであり、凸状の前記第1突部の頂部が、前記当り部を構成し、前記第1突部と第2突部との間の谷部及び第2突部が前記退避部を構成し、
少なくとも、操作部材の押圧による前記第1押圧肢の前記撓みによって、前記第1突部が第1押圧肢の後端側へ引かれ、前記第1突部と第2突部の間の前記谷部と前記第2突部の起伏が伸ばされるものであり、
当該起伏の伸びにて、前記退避部は前記規制面との間の前記間隔を縮小するものであることを特徴とする請求項2記載のトランスの端子台。
【背景技術】
【0002】
電気接続線の端子を固定するトランスの端子台において、端子台が備える端子板(電気導通板)に、電気接続線を着脱自在に接続する方法として、例えば特許文献1や特許文献2へ示す、ネジを用いて電気接続線を端子板へ接続するものが提案されている。
特許文献1及び2の何れにおいても、端子板(電気導通板)への接続に際して、ネジを回す作業が必要であり、電気接続線の端子板への接続をワンタッチで行うことはできない。
このため、特許文献1及び2に見られるねじ付端子台と異なるタイプの、例えば、特許文献3や特許文献4へ示す、ねじなし端子台が提案されている。
【0003】
図6(A)へ示す通り、特許文献3(公報第11図)には、絶縁被膜が剥離されて露出した撚線即ち電気接続線(図示せず。)先端をケーシングaの挿入部a0からケーシングa内へ挿入し、前記電気接続線先端を板バネc(押圧部)と端子板b(被押圧部)とで挟んでその接続を行う電線接続用鎖錠端子において、端子板bの接続面b1(撚線受面)に向かって傾斜し電気接続線先端を端子内部に案内する燃線案内面を板バネcの押圧肢c1に設け、この押圧肢c1における前記撚線案内面の両側に前記被押圧部の側面に接触する突出部を設けた電線接続用鎖錠端子が示されている。
また
図6(B)へ示す通り、特許文献4(公報第1図)にも、
図6(A)と同様、電気接続線d(電線)先端をケーシングa(筺体)の挿入部a0(端子挿入口)からケーシングa内へ挿入し、電気接続線d先端を板バネc(板ばね)と端子板b(被押圧部)とで挟んでその接続を行うものが示されている。
【0004】
図6(A)(B)へ示す端子台は何れも、電気接続線dの先端部の上記挿入により、電気接続線dの先端部にて接続面b1へ沿って押圧肢c1を押圧することができ、この押圧により、押圧肢c1を撓ませて押圧肢c1の接続面b1との間の隙間を拡大させ、押圧肢c1の先端を電気接続線dの先端部に食いつかせて、電気接続線dを後退不能とするものである。
図6(A)(B)へ示す端子台において、接続を解除するときはドライバーなどの工具kにて解除鋲eを押すことにより、押圧肢c1を押圧して、押圧肢c1の接続面b1との間の隙間を更に拡大させて、電気接続線dの引き抜きを可能とする。
【0005】
図6(A)(B)へ示す端子台では、電気接続線dの挿入方向xについて、端子板bの接続面b1と板バネcとによる電気接続線d先端の挟持は、上記押圧肢c1一本で担っている。
この
図6(A)(B)へ示す端子台と異なるタイプの端子台として、
図6(C)へ示す通り、特許文献4の公報第2図へ描かれた、板バネcが第1押圧肢c1と第2押圧肢c2の2本の押圧肢を備えたものが提案されている。このタイプのものは、板バネcが略コの字を呈するものであり、コの字の両肢が、上記の第1押圧肢c1と第2押圧肢c2とを構成する。
第2押圧肢c2は、電気接続線dの挿入方向xについて第1押圧肢c1よりも先、即ち挿入方向xについて第1押圧肢c1よりもケーシングaの奥に位置する。
この
図6(C)へ示すタイプの端子台は、挿入方向xに沿って、第1押圧肢c1から奥に侵入した電気接続線dの先端部が、第1押圧肢と共に第2押圧肢に挟まれてより確実に電気接続線dの端子板bへの接続を期するものである。
この
図6(C)へ示すタイプの端子台では、第1押圧肢c1の後端と第2押圧肢c2の後端とを連結する連結部c3は、ケーシングaの板バネcが端子板bから遠ざかるのを規制する規制面a1に沿って、第1押圧肢c1の後端と第2押圧肢c2の後端との間を真っ直ぐ伸びる。即ち、連結部c3の端子板bの接続面b1と反対側を臨む面は、ほぼ全体がケーシングaの上記規制面a1と当接している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6(C)へ示す2つの押圧肢c1,c2を備えた端子台では、確実な固定が行える分、電気接続線dの円滑な挿入が行い難いものとなりがちである。このため、
図6(C)へ示すように、第2押圧肢c2をS字状に曲げ加工して圧縮変形可能とし、第2押圧肢c2を第1押圧肢c1に比べて接続面b1から離反しやすい腰の柔らかいものにするなどの工夫がなされている。
図6(C)へ示す端子台の板バネcの上記連結部は、第1押圧肢c1から力を受けて、規制面a1に沿って挿入方向xについて変位することはあっても、第1押圧部c1から受けた力を第2押圧肢c2を接続面b1から離反する方向へ作用させるものではない。
このため、第2押圧肢c2先端と上記接続面b1との間への電気接続線d先端の挿入のし易さは、第2押圧肢c2自身の上記圧縮変形にのみ依存する。
【0008】
この点については、接続時のみならず、解除時の円滑な電気接続線dの引き抜きを行う面においても同様である。
即ち、工具kにて解除鋲eを押した場合、第1押圧肢c1は、ケーシングaの内部の傾斜面に押されて、接続面b1から離反する方向に撓むことができる。しかし、この撓みに伴う連結部c3の変位は、規制面a1に沿って第2押圧肢c2が移動するのを許容するものであっても、第2押圧肢c2を接続面b1から離反させる方向に作用するものではない。寧ろ、解除鋲eを押すことによって、接続面b1へ近接する方向へ変位するものとなり、決して第2押圧肢c2を接続解除し易いものとするものではないのである。
本願発明では、電気接続線の端子板への確実な接続をワンタッチで行うことを可能な端子台であって、電気接続線の先端部を端子板へ押圧する板バネがケーシング内にて電気接続線の挿入方向の手前と奥に2つの押圧肢を備えたタイプのものについて、奥に配置された押圧肢の端子板接続面からの離反を円滑に行うことを可能として、上記課題の解決を図る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、電気接続線の挿入部を有するケーシングと、夫々前記ケーシング内に設けられた、端子板と、板バネとを備え、前記挿入部から電気接続線の先端部を前記ケーシング内へ挿入し、前記端子板と前記板バネとにて電気接続線の前記先端部を挟むことにより、前記端子板へ前記電気接続線を接続するトランスの端子台において、次の構成を採るものを提供する。
即ち、前記端子板の接続面は、電気接続線の前記挿入方向へ略沿って配置され、
前記板バネは、第1押圧肢と、第2押圧肢と、前記両押圧肢の基端同士を連結する連結部とにて構成され、第1及び第2の前記両押圧肢は、夫々基端側を端子板の前記接続面から離れた位置に配置されると共に先端を前記端子台の接続面へ向けるものであり、前記第1押圧肢は、前記第2押圧肢に対し前記挿入部側へ間隔を開けて配置され、第1押圧肢の前記先端を当接部とし第2押圧肢の前記先端を副当接部として、前記当接部と副当接部の夫々は、端子板の前記接続面と当接するか若しくは電気接続線の前記先端部の厚みよりも小さな間隔を前記接続面との間に開け、前記連結部は、当り部と、前記当り部よりも前記第2押圧肢側に設けられた退避部とにて構成され、前記ケーシング内には、前記連結部と当接することにより前記板バネが端子板の前記接続面から離反する方向へ移動するのを規制する規制面が設けられ、前記当り部が前記規制面と当接することにより前記規制面は前記第1押圧肢が端子板の前記接続面から離反する方向へ移動するのを規制し、前記当り部は前記退避部よりも前記規制面側へ突出し、当り部の当該突出により、前記退避部と前記規制面との間には、前記当り部と前記規制面との間よりも大きな間隔が開けられ、前記電気接続線の先端部の上記挿入により、電気接続線の前記先端部にて前記接続面へ沿って前記第1押圧肢を押圧することができ、前記押圧により、前記第1押圧肢を撓ませて前記当接部を第1押圧肢の前記基端側に対し前記挿入方向へ移動させることにて端子板の前記接続面との間の隙間を拡大させ、前記接続面と前記当接部との間から前記電気接続線先端部の前記当接部よりも前記挿入方向の先への侵入を可能とし、前記連結部は、力を受けることにより変形して前記退避部の前記規制面との間の前記間隔を縮小することができ、連結部の当該変形により、前記第2押圧肢は、前記第1押圧肢に比べ前記規制面に規制されずに端子板の前記接続面から離反する方向へ変位することができ、前記侵入後前記電気接続線の先端部を挿入方向へ更に移動させることにより、前記接続面と前記副当接部との間へ前記電気接続線先端部を円滑に侵入させることができる。
尚、ここでいうトランスには、鉄心を備えた通常の変圧器の他、鉄心を備えないものも含む。
また、本願発明は、前記ケーシング内へ工具等の操作部材を差込むことができる操作部を備え、前記操作部へ前記操作部材を差し込み前記第1押圧肢を押圧して前記第1押圧肢を撓ませることにて、前記当接部を第1押圧肢の前記基端側に対し挿入方向へ移動させて前記当接部と端子板の前記接続面との間の隙間を拡大させ、第1押圧肢の当該撓みに伴い前記当り部が第1押圧肢の前記基端側へ引き寄せられ、前記退避部は前記当り部に引かれ変形して前記規制面との間の前記間隔を縮小し、前記侵入した電気接続線先端部について前記接続面と前記板バネとの間からの円滑な引抜きを可能とするトランスの端子台を提供する。
更に、本願発明では、前記連結部は、一端が前記第1押圧肢の後端に接続され当該後端から第2押圧肢の後端側へ前記規制面に対し凸状に湾曲して伸びる第1突部と、一端が前記第1突部の他の一端と接続され当該他の一端から第2押圧肢の後端側へ前記規制面に対し凸状に湾曲して伸びる第2突部とを備え、前記第2突部の他の一端は前記第2押圧肢の後端に接続され、前記第1突部は、前記第2突部よりも前記規制部側へ突出するものであり、凸状の前記第1突部の頂部が、前記当り部を構成し、前記第1突部と第2突部との間の谷部及び第2突部が前記退避部を構成し、少なくとも、操作部材の押圧による前記第1押圧肢の前記撓みによって、前記第1突部が第1押圧肢の後端側へ引かれ、前記第1突部と第2突部の間の前記谷部と前記第2突部の起伏が伸ばされるものであり、当該起伏の伸びにて、前記退避部は前記規制面との間の前記間隔を縮小するものであるトランスの端子台を提供する。
また更に、本願発明では、前記板バネは燐青銅にて形成され、導電性を有する、規制部と前記規制部を支持する支持部とが、前記端子板と一体に設けられ、前記規制部が前記規制面を備え、前記支持部は、前記規制面が端子板の前記接続面と間隔を開けて前記接続面と対向するように、前記規制部を支持し、前記電気接続線の挿入部への前記挿入により、前記電気接続線が端子板と直接電気的に接続されると共に、前記板バネから前記規制部及び前記支持部を経由して、端子板に電気的に接続されるものであるトランスの端子台を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本願の発明では、端子台の端子板への電気接続線の接続をワンタッチで行うことができるものであって、接続を担う板バネが第1及び第2の2つ押圧肢を備えたタイプの端子台について、電気接続線の円滑な接続を可能とする。
即ち、板バネの連結部が退避部を備えることにより、第1押圧肢の先端と端子板の接続面との間への電気接続線先端部の挿入時の第1押圧肢への押圧が、ケーシング内において板バネの前記接続面から離反する方向への移動を規制する規制面の規制に拘わらず、第2押圧肢を前記接続面から離反し易いものとする板バネ連結部の変形を可能とする。
また、本願発明は、工具等の操作部材を差し込むことにて、簡単に電気接続線の上記接続の解除を行うことができる。特に、上記連結部の変形により、当該接続の解除も円滑に行うことができる。
特に本願発明は、第1押圧肢に掛る力を第2押圧肢の端子板からの離反に利用することで、電気接続線の接続及び接続解除を円滑に行うことを可能とする全く新しいタイプの端子台を提供し得た。
また、本願発明は、板バネを導電性と各部の上記変形に適した素材にて形成すると共に、導電性を有し上記規制面を提供する規制部を端子板に設けることにより、より確実な電気接続線の電気的・物理的な接続を可能とした。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。
尚、説明の便宜上、各図において、Uは上方を、Sは下方を、Fは前方を、Bは後方を、Lは左方を、Rは右方を示す。
図1へ示す通り、本願発明に係る端子台100は、トランスtに設けられる。この例では、トランスに設けられたレールt1へ複数の端子台100が一体に取り付けられる。また、
図1及び
図2(A)へ示す例では、3個の端子台100が一体にされて端子ユニットを形成している。また、
図2(B)へ示す例では、4個の端子台100を一体にしている。
【0013】
図3(A)へ示す通り、個々の端子台100は、ケーシング1と、電気接続線d(
図4(A))との接続面21を備えた端子板2と、板バネ3とを備えるものであり、電気接続線dを、ケーシング1内へ挿入し端子板2の接続面21と板バネ3とに挟ませることにて、電気接続線dを端子板2へ接続することができる。
以下端子台100の各部の構成について順に説明する。
【0014】
(ケーシング1)
ケーシング1は、絶縁材にて形成されたケースである。この例では、ケーシング1はプラスチックにて形成されている。
図3(A)へ示す通り、ケーシング1は、内部に、電気接続線dの先端部を収容する接続線収容部11と、板バネ3を収容する板バネ収容部12と、通し穴13と、レール通し孔14とを備える。
ケーシング1の前面には、ケーシング1内部の上記接続線収容部11に通じる開口部が、電気接続線dの先端部を接続線収容部11に挿入する挿入部11aとして設けられている。この例では、
図2(B)へ示す通り、挿入部11aは、ケーシング1の前面へ左右2個設けられており、並行する2本の電気接続線dの先端を接続線収容部11へ差し込むことができる。但し挿入部11aは、1個としても3個以上設けるものとしても実施できる。また、挿入部11aを1つだけ設ける場合であっても、当該挿入部11aに差し込む電気接続線dは複数とすることができる。また、
図2(B)へ示す通り、ケーシング1が挿入部11aを2個備える場合も、1本の電気接続線dを何れか一方の挿入部11aにのみ差し込むものとして実施することができる。
ケーシング1の前面において、挿入部11aの下方には、前蓋15が取り付けられている(
図3)。
【0015】
図3へ示す通り、接続線収容部11は、ケーシング1内において、電気接続線dの挿入方向xに伸びる空間である。この例では、電気接続線dは、ケーシング1の前面に設けられた挿入部11aからケーシング1の内部へ挿入されるものであり、前記挿入方向xは前方Fから後方Bへ向く。
接続線収容部11には、端子板2の接続面21が、電気接続線dの挿入方向xに沿って配置されている。具体的には、ケーシング1は、上記接続面21を略水平にして、端子板2を支持する棚部16を備える。
【0016】
板バネ収容部12は、ケーシング1内において、前記接続面21と対向する位置にて接続線収容部11へ連絡する部屋である。板バネ収容部12は、当該接続面から離反する方向を奥行き方向とする。即ち、板バネ収容部12は、この例では
図3へ示す通り、接続線収容部11との上記連絡位置を下方として当該連絡位置から上方に向かう方向を奥行き方向とする。板バネ収容部12は、奥行きを規定する奥規定面12aと、上記挿入方向xを前後方向として前方を規定する前方規定面12bと、後方を規定する後方規定面12cとを備える。
この例では、奥規定面12aは、接続線収容部11の天面である。
ケーシング1の前面において前記挿入部11aの上方に開口し且つケーシング1内にて前方規定面12bに開口する開口部が、操作部17としてケーシング1に設けられている。
【0017】
通し穴13は、
図2(A)(B)及び
図3へ示す通りケーシング1を左右に貫通する穴である。通し穴13にネジ或いはボルト・ナットといった座面を備えた締結具を通して、複数の端子台100同士を一体に結合することができる。
レール通し孔14は、前記レールt1に対応する断面形状を備えると共にケーシング1を左右に貫通する孔である。
図1、
図2(A)及び
図3へ示す通り、レール通し孔14へトランスtの前記レールt1を通すことにより、レール端子台100をトランスtへ取り付けることができる。
前蓋15は、ケーシング1前面において挿入部11a下方を開閉するものであり、前蓋15を開くことによって、端子板2の下端部22を露出させることができる(
図4(A))。
【0018】
(端子板2)
端子板2の主要部は、
図3及び
図5(B)へ示す通り、側面視において略逆L字型を呈する。この例では、端子板2は、電気の良導体である金属板であり、特に真鍮にて形成するのが好ましい。但し真鍮以外の素材にて、端子板2を形成するのを制限するものではない。端子板2において上記逆L字の水平部分の上面が上記接続面21である。この例では、接続面21には、2本の電気接続線dを接続する際の位置決めを行うことができる、2本の凹み部25が、前方から後方へ伸びる(
図5(A)(C))。
また、逆L字である端子板2の下端部22を、上記の通り前蓋15を開くことによって、ケーシング1外部へ露出させることができる(
図4(A))。露出した当該下端部22に対し
図4(A)の白抜き矢印で示す方向から、他の接続線(図示しない。)を半田付け或いはネジによって接続する。
【0019】
この例では、
図3及び
図5(A)〜(C)へ示す通り、上記接続面21の右側又は左側から、板バネ収容部12の奥行き方向即ち上方へ伸びる支持部23と、当該支持部23によって支持され且つ板バネ収容部12の奥規定面12aを提供する規制部24とが、端子板2と一体に端子板2に設けられている。規制部24と支持部23とは電気の良導体である。規制部24と支持部23とは端子板2と同じ材料で端子板2と一体に形成すればよい。但し、規制部24と支持部23は、端子板2と別体に形成して、ネジやボルトなどの固定具にて端子板2へ固定するものとしても実施できる。
規制部24の上記奥規定面12aは、上記接続面22に対向する面であり、板バネ収容部12に収容された板バネ3が接続面22から離反するのを規制する規制面である(以下必要に応じて規制面12aと呼ぶ)。
但し、規制部24や支持部23を設けずに実施することも可能である。規制部24を設けない場合、ケーシング1が規制面12aを備えるものとすればよい。
但し、端子板2へ端子板2と同様導電部材でできた支持部23と規制部24を設けて、規制部24の規制面12aと端子板2の接続面21との間に導電部材でできた板バネ3を挟むのが、電気接続線dと端子板2とを電気的・物理的により確実に接続することができる点で好ましい。
【0020】
(板バネ3)
板バネ3は、力を加えられることによって撓み、当該力を排除することによって元の形状に戻る弾力性を備える。更に、板バネ3は、電気の良導体にて形成するのが好ましい。板バネ3は、導電性を有する金属で形成するのが好ましく、特に燐青銅にて形成するのが好ましい。
図3及び
図5(D)〜(F)へ示す通り、板バネ3は、第1押圧肢31と、第2押圧肢32と、前記両押圧肢31,32の基端31b,32b同士を連結する連結部33とにて構成されている。
第1及び第2の前記両押圧肢31,32は、夫々基端31b,32b側を端子板2の前記接続面から離れた位置即ちバネ収容部12の上記規制面12a寄りに配置されて先端31a,32aを前記端子台の接続面21へ向ける。
第1及び第2の前記両押圧肢31,32の先端部は、板バネ収容部12から接続線収容部11内へ突出する。当該突出により、接続線収容部11内に上記先端31a,32aが配置される。
第1押圧肢31は、第2押圧肢32に対し挿入部11a側へ第2押圧肢32と間隔を開けて配置される。言い換えると、第2押圧部32は、電気接続線dの挿入方向xについて、第1押圧部31よりもケーシング1の奥に第1押圧部31と間隔を開けて配置される。
第1押圧肢31の前記先端31aを当接部31aとし第2押圧肢の前記先端32aを副当接部32aとして、当接部31aと副当接部32aの夫々は、端子板2の接続面21と当接するか若しくは電気接続線の前記先端部の厚みよりも小さな間隔を接続面21との間に開ける。この例では、2本の電気接続線dに対応すべく、第1押圧肢31の先端部と第2押圧肢22の先端部は、夫々スリット34,35にて分岐している(
図5(D)(F))。即ち、第1押圧肢31は、スリット34を挟んで左右2つの当接部31aを備える。また、第2押圧肢32は、スリット35を挟んで左右2つの副当接部32aを備える。
図5(D)の破線部は、第1押圧肢31の補強部を示している。当該補強部は第1押圧肢31をエンボス加工することによって形成することができる。
【0021】
連結部33は、当り部と、当該当り部よりも第2押圧肢32の後端32b側に設けられた退避部とにて構成されている。当り部が前記規制面12aと当接することにより規制面12aは第1押圧肢31が端子板2の接続面21から離反する方向へ移動するのを規制する。当り部は退避部よりも規制面12a側へ突出し、当り部の当該突出により、退避部と規制面12aとの間には、当り部と規制面12aとの間よりも大きな間隔が開けられている。
【0022】
図4(A)へ示す通り、電気接続線dの先端部の挿入部11aへの挿入により、電気接続線dの先端部にて接続面21へ沿って第1押圧肢31を押圧することができる。当該押圧により、第1押圧肢31を撓ませて当接部31aを第1押圧肢31の基端31b側に対し挿入方向xへ移動させることができる。そして当該移動にて端子板2の接続面21との間の隙間を拡大させ、接続面21と当接部31aとの間から電気接続線d先端部の当接部31aよりも挿入方向xの先への侵入を可能とする。連結部33は、力を受けることにより変形して退避部の規制面12aとの間の前記間隔を縮小することができる。連結部33の当該変形により、第2押圧肢32が第1押圧肢31に比べ規制面12aに規制されずに端子板2の接続面21から離反する方向へ変位することができるため、前記侵入後電気接続線dの先端部を挿入方向xへ更に移動させることにより、接続面21と副当接部32aとの間へ電気接続線d先端部を円滑に侵入させることが可能である。
侵入した電気接続線dが後退しようとすると、第1押圧肢31基端31b側に対する前記挿入方向xと逆方向への移動に追従し当接部31aが端子板2の接続面21と当接部31aの間の隙間を狭める。即ち、侵入した電気接続線dが後退しようとすると、電気接続線dの先端部に当接部31aが食いつき、一旦侵入した前記電気接続線d先端部について接続面21と当接部31aとの間からの引抜きを不能とする。
【0023】
板バネ2について更に詳しく述べると、板バネ収容部12内に収容された状態において、第1押圧肢31は、上記前方規定面12bに沿って上下に伸びる。前方規定面12aは、第1押圧肢31の先端側が、前方へ移動するのを規制する。また、第2押圧肢32は、後方規定面12cに沿って上下に伸びる。後方規定面12cは、第2押圧肢32の先端側が、後方に移動するのを規制する。
第1押圧肢31には、当接部31aよりも第1押圧肢31の基部側から当接部31aに至る案内面が形成されている。案内面は前方から前記挿入方向xに向かうに従って漸次下方―向け傾斜する傾斜面であり、電気接続線d先端を前記挿入方向xへ案内する。また、第2押圧肢32には、副当接部32aよりも第2押圧肢32の基部側から副当接部32aに至る福案内面が形成されている。副案内面は前方から前記挿入方向xに向かうに従って漸次下方―向け傾斜する傾斜面であり、上記案内面と同様、電気接続線d先端を前記挿入方向xへ案内する。
板バネ収容部12の上記後方規定面12cには当該後方規定面12cから前方へ突出する突出部12dが設けられている。
第2押圧肢32には、前方へ後退する凹状湾曲部32cが設けられている。当該凹状湾曲部32cにて第2押圧肢32は前記突出部12dを迂回し、第2押圧肢32の接続面21への近接・離反は、前記突出部12dに邪魔されない。第2押圧肢32の前記副案内部が、上記凹状湾曲部32cの一部を構成する。
【0024】
連結部33は、この例では、一端が前記第1押圧肢31の後端31bに接続され当該後端31bから第2押圧肢32の後端32b側へ規制面12aに対し凸状に湾曲して伸びる第1突部33aと、一端が第1突部33aの他の一端と接続され当該他の一端から第2押圧肢32の後端32b側へ規制面に対し凸状に湾曲して伸びる第2突部33bとを備える。第2突部33bの他の一端が第2押圧肢32の後端に接続されている。板バネ収容部12の奥行き方向について、第1突部33aは、第2突部33bよりも規制部12a側へ突出する。この例では、凸状の第1突部33aの頂部が、前記当り部を構成し、第1突部33aと第2突部33bとの間の谷部33c及び第2突部33bが前記退避部を構成する。
【0025】
(電気接続線dの接続)
図4(A)へ示す通り、当接部31aを挿入方向xへ移動させる第1押圧肢31の撓みによって、第1突部33aが第1押圧肢31の後端31b側へ引かれ、第1突部33aと第2突部33bの間の谷部33cと第2突部33bの起伏が伸ばされる。当該起伏の伸びにて、前記退避部は規制面12aとの間の間隔を縮小することができる。退避部の上記変形によって、第2押圧肢32は、第1押圧肢2の撓みを利用して、副当接部32aと上記接続面21との間へ電気接続線dの先端部を円滑に受け入れることができる。また、上記凹状湾曲部32cが圧縮されることによって、副当接部32aと上記接続面21との間へより円滑に電気接続線dの先端部を導入することができる。
図3へ示すように、この例では、電気接続部d先端部の押圧を受けて第2押圧肢32の副当接部32aも上記挿入方向xへ移動することができるように、接続線収容部11は、板バネ収容部12よりも後方即ち挿入方向xの先へ延設された延設部11bを備える。
【0026】
(電気接続線dの接続解除)
電気接続線dの接続を解除し、電気接続線dを挿入部11aから引き抜く際は、
図4(B)前記操作部17から、ドライバーなどの工具k或いはその他の棒状体を操作部材として挿入し、第1押圧肢31を押圧する。当該操作部材の押圧にて、第1押圧肢31の当接部31aを挿入方向xへ移動させて、当接部31aと上記接続面21との間を大きく開く。この第1押圧肢31の撓みによっても、
図4(B)へ示す通り、第1突部33aが第1押圧肢31の後端31b側へ引かれ、第1突部33aと第2突部33bの間の谷部33cと第2突部33bの起伏が伸ばされるものであり、当該起伏の伸びにて、退避部は前記規制面12aとの間の間隔を縮小する。退避部と前記規制面12aとの間の間隔が許容する限り、当該縮小が可能であり、当該縮小によって、第2押圧肢32の副当接部32aを接続面21から上方へ離反させることができる。
操作部材を押し込みすぎた場合、凹状湾曲部32cが突出部12dへ引っ掛かって、板バネ3が回るのを阻止する。
上記の操作部材は、解除鋲としてケーシング1に取り付けられるものとしてもよい。例えば、操作部17内にて摺動可能に収容された解除鋲として操作部材を形成してもよい。この場合、指先や別途ドライバー等の工具にて操作部材を操作するものとすればよい。
【0027】
(変更例)
板バネ3の連結部33の形状、即ち当り部と退避部の構成は、上記のものに限定するものではない。例えば、退避部は、第2突部33b以外に第1突部33aよりも突出幅の小さい別途突部を備えるものとしてもよい。
また、規制面12aと退避部との間の間隔を確保するのに、規制部12aにおいて、当り部と当接する部位よりも上方に後退する部位を退避部と対応する部位として備えるものとしても実施できる。
また、板バネ3が回る危惧がなければ、前記凹状湾曲部32cと突出部12dとは設けずに実施することもできる。
図1及び
図2(A)へ示すように3個の端子台100を一体に設け、
図2(B)へ示すように4個の端子台100を一体に設ける他、端子台100は、トランスtの前面と後面の各レールt1へ1個設けられるものとしても、2個を一体にして1本のレールt1に設けられるものとしても実施できる。また、5個以上の端子台100を一体にして使用することもできる。
また、当初より複数の端子台100を分離不能に一体成型するものとしても実施できる。