【実施例】
【0383】
以下の非制限的な実施例で、本発明をさらに説明する。
実施例1 Treg細胞でのPI16の同定
1.1 材料および方法
1.1.1 臍帯血T細胞集団の単離およびインビトロ増殖および特性解析
【0384】
臍帯血を、Children’s,Youth and Women’s Health Service Research Ethics Committeeが定める母体インフォームド・コンセント(informed maternal consent)により得た。単核細胞(MNC)を、抗凝血剤を含有する採血バッグ(Fenwell)中の分娩後の臍帯血から単離した。臍帯血CD4
+CD25
+(Treg)およびCD4
+CD25
−(ヘルパーT)細胞を、Dynabeads Regulatory CD4
+CD25
+T細胞キット(Invitrogen)を用いてMNCから単離した。各細胞型の純度をCD4およびCD25の発現のために2色フローサイトメトリにより常に90%超にした。T細胞集団(24穴プレートにて1x10
6細胞/穴)の生体外での増殖を、20mM HEPES(pH7.4)、5%熱不活性化ヒトプール血清(Lonza)、2mM l−グルタミン、および500U/ml組み換えヒトインターロイキン−2(rhIL2;R&Dresearch)を補充したX−Vivo15培地(BioWhitticker)にて、細胞比が3:1のビーズであるDynabead(登録商標)CD3/CD28T細胞増殖刺激ビーズ(Invitrogen;Cat#111−41D)の存在下で行った。細胞を8日間Dynabeadsの存在下で増殖し、その後ビーズの磁気除去を行い、100U/mlのrhIL2を除く上記成分を補充したX−Vivo15培地で培養した。使用当日、増殖した細胞の表現型について、Beckman CoulterのEpics Elite ESPフローサイトメータでの3色フローサイトメトリによるFoxP3(FoxP3−Alexa 488、BDクローン259D/C7;ヒトFoxP3緩衝液セット、BD カタログ番号560098)の細胞内検出と組み合わせた、CD4(PEcy5、ebioscience クローンRPA−T4)、CD25(PE、BD クローンM−A251)、およびCD127(PE、ebioscience クローンebioRDR73)の表面発現の特性解析を行った。
1.1.2 RNAの調製および発現アレイ
【0385】
差次的発現解析をAffymetrixヒトExon1.0ST試験を用いて実施した。総RNAを、およそ60時間静止させ次いで8日間の増殖手順の後に、賦形剤(DMSO)またはイオノマイシン処理(2時間)のいずれかを行った増殖CD4
+25
−(ヘルパーT)およびCD4
+25
+(Treg)細胞より単離した。低分子量RNAを含む総RNAを、QIAshredderおよびmiRNeasy mini キット(QIAGEN)を用いて単離した。AffymetrixヒトExon1.0STアレイへの標識化とハイブリダイゼーションを、Biomolecular Resource Facility(John Curtin School of Medical Research、Australian National University)にて基本的に製造業者のプロトコルに従って行い、Agilent Systems Bioanalyzerを用いてRNA品質の試験を行った。
【0386】
1.1.3 RNA発現アレイデータ正規化
プローブ標識データを、RMAモデル(Irizarryら,2003年)を用いて、プローブレベルモデル化(probe-level modelling)(Bolstadら,2003年)を用いたEntrezGene centric cdf(Daiら,2004年)のv11.0に基づき得られた最終転写レベル予想で、処理した。全処理を、統計ソフトウェアR(R Development Core Team)を用いて、aroma.affymetrixフレームワーク(Bengtssonら,2006年、ならびに、BengtssonおよびHossjer, 2006年)のもとで行った。各試験に関するハイブリダイゼーション品質を、偽像(pseudo-image)プロット、NUSE、RLE(Bolstadら,2001年)およびプローブレベルデータのヒストグラムを用いて評価した。Loess正規化後、個体ドナー中のCD4
+CD25
+Treg細胞対CD4
+CD25
−ヘルパーT細胞のfour way comparisonの静止処理と刺激処理とのログ比(Log fold-change)を推定した。最終の発現解析をアレイレベル重量(array level weight)およびR package limma(Smythら,2005年、ならびに、WettenhallおよびSmyth, 2004年)を用いて行った。各項の生P値を全体的に調整し、FDRの推定値(HochbergおよびBenjamini, 1990年)を得た。
【0387】
1.1.4 半定量的リアルタイムPCR
発現アレイ解析により同定された別々に制御される標的遺伝子の検証を、5つの別個のドナーからの増殖したCD4
+CD25
+およびCD4
+CD25
−細胞より単離したRNAで行った。増殖、刺激、およびRNA単離条件は、発現アレイ実験で使用されるものと同じであった。無作為にプライミングされたcDNAを、QuantiTect reverse transcriptaseキット(QIAGEN)を用いて総RNAから調製した。cDNAを、1.25Units FastTaq DNAポリメラーゼ(Roche)、2.5mM MgCl
2、200μMの各プライマー、200μM dNTP mix、1.1x SYBR green(Molecular Probes、Invitrogen)1x FastTaq PCR緩衝液からなる25μlのqPCR反応物中にて使用した。qPCRに関する遺伝子特異的プライマー対をプライマーバンク(WangおよびSeed Nucleic Acids Res 31: e154, 2003年)から選択した。RPL13aに特異的なプライマーセットを内部対照として用いた。サイクル条件は94℃で50秒、60℃で25秒、および72℃で50秒を40サイクルであり、その後Rotorgene6000PCRmachine(Corbet Research)を用いた融解曲線を作製した。結果を、Rotor−Gene6000、Q−geneソフトウェア(Mullerら,2002年)およびRを用いて解析した。
【0388】
1.1.5 細胞表面分子発現の検証
表面分子解析について、成人末梢血CD4
+CD25
+TregまたはCD4
+CD25
−ヘルパーT細胞を、CD3/CD28ビーズ(ビーズ細胞比、1:1)および100U/mlのIL2の存在下で新たに単離または単離および一晩刺激し、その後、CD4、CD25、FoxP3およびPI16に対する抗体を用いた4色フローサイトメトリを行った。
【0389】
1.2 結果
1.2.1 ヒト臍帯血Tregの単離および検証
発現プロファイリング検査のための十分なヒトTregを産生するため、ヒト臍帯血から単離したおよそ1x10
6のCD4
+CD25
hi細胞を抗CD3/CD28ビーズを用いてインビトロで増殖させた。生体外での1ラウンドの増殖後、臍帯血Tregの100倍から200倍の増殖が常に得られた。これらの細胞は増殖においてTreg表現型を維持し、増殖した細胞の90%超がCD4
+、CD25
hi、およびFoxP3陽性に染色した。これらの細胞はまたCD127
dimであった。増殖後、細胞が不適合ドナーの混合白血球抑制試験でCD4
+CD25
−細胞の増殖をインビトロで確実に抑制することができたことから、細胞は制御機能を保持していた。増殖した機能的なTreg細胞を発現プロファイリング実験に用いた。
【0390】
1.2.2 静止および活性化Treg細胞での差次的遺伝子発現
発現プロファイリングを、単離およびインビトロで増殖した臍帯血Tregで実施した。4ウェイTreg遺伝子発現アレイ実験を考案してTregおよび適合ヘルパーT細胞の刺激または静止状態での発現プロファイルを明らかにした。この4ウェイ比較はTregの内因性発現パターンを有する遺伝子、Treg特異的活性サインの一因となる遺伝子、およびT細胞活性化に通常応答することが示される遺伝子を同定した。全体で、1851遺伝子がTregのヘルパーTと比較した作用に有意差を示すとみなされ、さらに746遺伝子が細胞型両方での活性化に同様の応答を示した。同定された遺伝子の1つであるPI16は静止および活性化ヒトTreg細胞の両方においてかなりの割合で発現した。
【0391】
Tregアレイでの遺伝子発現プロファイルを確実にするため、遺伝子特異的な半定量的リアルタイムPCR(qPCR)を実施した。PI16を含む差次的に発現した候補遺伝子のグループを選択し、Treg対ヘルパーT細胞の5つの生物学的複製でのその発現を検査した。定量的RT−PCRおよび低密度アレイによりPI16の差次的発現が確実なものとなり、またその結果はアレイ解析で同定した遺伝子の作用と比較的に一致していた。
【0392】
1.2.3 Treg上のPI16細胞表面分子解析
上記説明したアレイデータを解析して、Treg細胞を同定するためのFoxP3発現の代わりとなるものとして使用され得るバイオマーカーを同定した。これらのデータより、PI16をそのようなバイオマーカーの1つとして同定した。CD25陽性成人CD4
+細胞をPI16とFoxP3の共発現について抗PI16ポリクローナル抗体を用いてスクリーニングし、PI16がFoxP3と正の相関を有することが見いだされた(
図2)。
【0393】
PI16の発現をまたTGFb誘導性Tregにて試験を行った(iTreg;
図3)。TGFbは実質的にCD25およびFoxP3発現を上方制御したが、PI16は一過的に誘発したこれらの細胞では実質的に発現されず、PI16発現が内在性Tregと誘導性Tregとを区別し得ることを示唆している。
【0394】
実施例2 PI16に対する抗体の作製および特性解析
2.1 材料および方法
2.1.1 末梢血単核細胞単離
末梢血単核球(PBMC)を全血(Children’s、Youth and Women’s Health Service、South Australiaの研究所倫理審査委員会からの倫理的許可に準拠してインフォームド・コンセントにより健常者から得られた)からLymphoprep(Nycomed,オスロ)上での密度遠心法により単離し、PBS−アジ化物で2回洗浄した。血液を、ヘパリンリチウム抗凝血剤を用いて収集した。
【0395】
2.1.2 PI16発現細胞の産生
pCMV−SPORT6の完全長PI16コード配列を含む構築物を、Open Biosystems(Thermo,MHS1010−708293)より購入した。Gateway vector system(Invitrogen)に適合する挿入物を産生するため、PI16コード配列を本ベクターから次のプライマーを用いて増幅した:PI16−F:5’−
ggggacaagtttgtacaaaaaagcaggctgccaccATGCACGGCTCCTGCAGTT−3’(配列番号5)(NCBI RefSeq NM_153370のヌクレオチド329〜347に対応する)およびPI16−R:5’−
ggggaccactttgtacaagaaagctgggtcGAAGATTCCAGCCAACACCA−3’(配列番号6)(参照配列のヌクレオチド1698〜1717の逆方向配列および相補配列)。プライマーの大文字部はPI16コード配列に特異的であるが、プライマーの下線部はGateway vectorのためのアダプターである。PCR産物を精製し、およびGateway vector pDONR201(Invitrogen)中にクローン化して「エントリークローン」pDONR201/PI16を作製した。クローン挿入物の同一性を、pDONR201/PI16をGateway Technology Instruction Manualに記載の順方向および逆方向配列プライマーを用いて配列決定することにより、確かめた。PI16挿入物をpDONR201ベクターからpDEST40ベクターまで、Gateway Technology Instruction Manualに記載の手順を用いて転写した。複数の単一コロニーを単離し、PCRによりスクリーニングして、挿入物が存在することを確認した。pDEST40/PI16構築物のプラスミドDNAをQiagen Midi−Prepキット(Qiagen)を用いて調製した。
【0396】
免疫化のため、pDEST40/PI16ベクターを用いて一過的な形質移入L929マウス線維芽細胞(ATCC)および安定的な形質移入NIH3T3細胞(ATCC)を産生した。細胞を2mM L−グルタミン(Glutamax、Gibco)、0.5U/mlのペニシリン(Sigma)、0.5μg/mlのストレプトマイシン(Sigma)、および10%のFCS(SAFC Bioscience)を補充したDMEM培地中に維持した。20μgのプラスミドDNA、20μlのLipofectamine LTX(Invitrogen)、20ulのPLUS試薬の混合物を、Opti−MEMを用いて4000μlにした。この混合物を用いて半集密性(60〜80%の集密性)L929およびNIH3T3細胞をT75フラスコ(75cm
2)中で形質移入した。6時間後、形質移入混合物を取り除き、DMEMと置き換えた。pDEST40/PI16プラスミドを含有する形質移入細胞を、G418(Invitrogen)を500μg/mlの濃度で培養培地に添加することにより選択した。安定的な形質移入細胞を産生するため、PI16発現NIH3T3細胞を3回選別した(FACSAriaII;BD Biosciences)。
【0397】
2.1.3 免疫化およびハイブリドーマ産生
PI16タンパク質に対するモノクローナル抗体を産生するため、6〜8週齢の雌性Balb/cマウスを、PI16タンパク質を発現するL929細胞により免疫化した。非免疫性血清試料を全マウスから取り出し第1回目の免疫化を行った。マウス2匹でのグループのいくつかを、500ulのPBS中の5000万細胞を皮下注射することにより最初に免疫化した。4週間後、マウスを500ulのPBS中の5000万細胞を皮下注射することにより追加免疫した。2回目の注射後6日間検査出血を行い、以下に記載の反応性についてスクリーニングを行った。14日後、マウスを500ulのPBS中の5000万細胞により最終の追加免疫に処し、および4日後に殺して脾臓をハイブリドーマの調製のために回収した。
【0398】
融合のため、SP2/0骨髄腫細胞をATCCから得た。ハイブリドーマ細胞をMacardleおよびBailey(2006年)の指示に従って、10
8マウス脾臓細胞および10
7SP2/0骨髄腫細胞(比率10:1)を用いて産生した。
【0399】
選択したウェルからのハイブリドーマ細胞を、PBMCおよびPI16−形質移入NIH3T3細胞上にてスクリーニングし、ACDUを備えたFACSAria IIセルソータ(BD Biosciences)を用いて単一細胞ソーティングにより増殖およびクローン化した。選別した細胞から生じるコロニーを再びフローサイトメトリによりスクリーニングした。
【0400】
市販のPI16ポリクローナル抗体が末梢血の区別可能な染色パターンを示したので、フローサイトメトリを用いて、末梢血リンパ球の同じ画分と反応する抗体のためのハイブリドーマコロニーをスクリーニングした。染色は以下に記載のように行った。選択したウェルからのハイブリドーマ細胞を単一細胞ソーティングにより増殖および再クローン化した。選別した細胞から生じるコロニーを、親ハイブリドーマと同様のPBMCとの反応性を持つ抗体の発現に関し、フローサイトメトリによりスクリーニングした。CRCBT−02−001ハイブリドーマがポリクローナルPI16抗体と同様の反応性を持つモノクローナル抗体を発現するとみなされた。
【0401】
2.1.4 フローサイトメトリ
CRCBT−02−001の反応性解析を、three−step「高感度」染色プロトコル(Mavrangelosら,2004年)を用いて末梢血の単核細胞(PBMC)およびPI16−形質移入NIH3T3細胞に対して実施した。末梢血単核球を全血(健常者より採取)からLymphoprep(Nycomed、オスロ)上での密度遠心法により単離し、PBS−アジ化物(Sigma)で2回洗浄した。血液を、ヘパリンリチウム抗凝血剤を用いて収集した。
【0402】
PI16完全長組み換えタンパク質に対して産生したマウスのポリクローナル抗体をAbnova社(台北、台湾)より購入した。CD3、CD4、CD8、CD19、CD25、CD27、CD127、FoxP3、CD154、CD45RA、CD45RO、CD73、CD95、CD69、CD44、HLA−DR、CLA、CCR4、CCR5、CCR6、CXCR3、CXCR4に対するモノクローナル抗体の染色用緩衝液、Tregカクテル(CD4−APC、CD127−FITCおよびCD25−PE/Cy7の最適化した混合物)および蛍光体−ストレプトアビジン複合体をBD Biosciences(San Jose、カリフォルニア州)より得た。CD39に対するモノクローナル抗体をeBioscience(San Diego、カリフォルニア州)により、ビオチン化ウマ抗マウスIgをVECTOR Laboratories(Burlingame、カリフォルニア州)により、および正常マウス血清をDako(Glostrup、デンマーク)により購入した。
【0403】
PI16発現をPBMCにより特性解析する多重パラメータフローサイトメトリ実験を、FACSAria IIセルソータを用いて行った。複合体化していない抗体を用いた実験を、three−step「高感度」染色プロトコルを用いて、基本的にはZolaら,(1990年)に記載のように実施した。簡単には、PBMCを複合体化していない一次抗体と30分間氷上でインキュベートし、洗浄した。ビオチン化ウマ抗マウスIg試薬を添加して、30分間氷上でインキュベートした。洗浄後、正常マウス血清を添加し(抗マウスIg試薬での遊離型Ig−結合部位を阻害するため)、10分間インキュベートし、その後、蛍光体−ストレプトアビジン複合体検出試薬と直接複合体化する任意の抗体を添加した。マウスIgのインキュベーションと最終試薬の添加の間に洗浄は行わなかった。細胞を上記のようにインキュベートし、2回洗浄した。細胞内抗原に対する抗体を用いる実験では、上記のような表面染色をまず行い、次いで細胞を製造者の指示に従って透過処理および染色を行った。
【0404】
2.1.5 免疫蛍光検査によるCRCBT−02−001の表面染色の検証
細胞を8−ウェルのチャンバースライド(Lab−Tek、Naperville、イリノイ州)上で培養し、PBSで洗浄し、2%パラホルムアルデヒド溶液(pH7.4)で15分間固定し、その後洗浄し、0.2%TritonX−100を含有するPBS中で透過処理を行った。PBS中で1%ウシ血清により30分間ブロッキングした後、細胞を一次抗体、いずれのマウス対照IgG(1μg/ml)(BD Biosciences、San Jose、カリフォルニア州)、IgG1対照X−63(ニート、100μl/ウェル)(in−house)、PI16マウスポリクローナル抗体(1μg/ml)(Abnova、Taipei、Taiwan)、マウス抗V5抗体(1:300)(Invitrogen、Carsbad、カリフォルニア州)およびCRCBT−02−001培養上清(neat、100μl/ウェル)(in−house)を用いて1時間、室温で免疫染色を行った。次いで、細胞を洗浄して、ビオチン化ウマ抗マウスIgG(1:50)(VECTOR、Burlingame、カリフォルニア州)によりインキュベートし、その後ストレプトアビジンAlexa Flour488複合体(1:500)(Molecular Probes、Eugene、オレゴン州)により1時間、室温で標識化した。最後に、細胞を核染色のためDAPI 溶液と共にインキュベートし、封入剤(Dako Cytomation、Carpinteria、カリフォルニア州)により封入して顕微鏡検査のために調製した。画像を、蛍光顕微鏡(Leica、ドイツ)により、ライフサイエンス用顕微鏡のためのOlympus細胞
FImagingソフトウェアを搭載するOlympus DP−72カメラを用いて取得した。
【0405】
2.1.6 PBMCの刺激
PBMCを、2mM L−グルタミン(Glutamax、Gibco)、0.5U/mlペニシリン(Sigma)、0.5μg/mlストレプトマイシン(Sigma)、および10%FCS(SAFC Bioscience)を補充したRPMI1640中で培養した。細胞を96U−ウェル培養皿(0.5−1x10
6/ウェル)中でブドウ状球菌(Staphylococcus)エンテロトキシンB(Sigma;1μg/ml)により18時間、または製造者(Dynabeads(登録商標)CD3/CD28T細胞増殖刺激ビーズ、Dynal/Invitrogen)の指示に従って固定された抗CD3抗体および抗CD28抗体により3日間刺激した。刺激後、細胞を採取し、PBSで洗浄し、およびフローサイトメトリにより分析した。
【0406】
2.1.7 抗体サブクラスの決定
マウスモノクローナル抗体アイソタイピングキット(Roche)を用いて、CRCBT−02−001のサブクラスを製造業者の指示に基本的に従って決定した。
【0407】
2.1.8 CRCBT−02−001により分泌される抗体の精製
CRCBT−02−001を、10%FCS、0.5Uペニシリン/ml、0.5μgストレプトマイシン/ml、および200mM Glutamax(Gibco)を含むRPMI−1640中で成長させた。上清を500xgで遠心分離し、0.45μm、次いで0.22μmのシリンジフィルタ(Millex;Millipore)でろ過する前に細胞残屑およびサイズの大きい物質を除去した。
【0408】
精製を、BioLogicLPクロマトグラフィ装置(Biorad)を用いて行い、カラム(5mlProtein Gカラム;Invitrogen rProtein Gアガロースを用いたBioRad)を10カラム体積超のPBS(pH7.4)で1mL/分で洗浄した。CRCBT−02−001上清をカラム上に2回1mL/分で適用した。通過画分をその後の解析のために回収した。カラムをPBS(pH7.4)により基準UV吸光度まで洗浄した。結合IgGを溶出するため、0.1MグリシンHCl(pH2.8)(Amresco)をカラム上に、1ml/分にて20〜40カラム体積に0%〜100%の勾配で適用した。溶出した抗体を、回収した画分の体積の20%に等しくなるように1M Tris HCl(pH7.4)でチューブに回収した。回収する画分を、読み出し部分からUVピーク内に認めた。次いで、選択した画分をプールし、体積を測定し、少量の試料をさらに分析した。残余試料をGEスピンカラム100kDa MWCO(GE Healthcare)を用いて、脱塩/PBS(pH7.4)中への緩衝液交換を行った。次いで抗体を定量し、最終PBS体積で1〜2mg/mlまで1%BSAおよび0.05%アジ化ナトリウム(Sigma)を用いて希釈した。
【0409】
2.1.9 CRCBT−02−001の増殖および細胞生存効果
PBMCを、上記のように18時間および3日間刺激した。CRCBT−02−001から分泌された精製(アジド遊離)抗体を2μg/ml、5μg/mlおよび10ug/ml、ならびに未精製CRCBT−02−001−含有上清(無血清および血清含有)を培地に培養物に添加した。さらに精製IgG(BD Biosciences)、CD28 mAbおよびCD49d mAb(BD Biosciences)および培地を陰性対照として添加した。SEBおよびCD3/CD28ビーズを陽性対照として添加した。刺激された細胞を、活性化マーカー、CD25およびCD69のために(上記のように)染色した。細胞死を決定するため、細胞を取得する前に7−アミノアクチノマイシンD(7AAD;Sigma Aldrich)にて15分間インキュベートしておき、その後フローサイトメトリにより解析した。
【0410】
CRCBT−02−001から分泌される固定された抗体が増殖および細胞生存に対するいかなる効果を持つかどうかを検査するため、2μg/ml、5μ/mlおよび10μ/mlの精製抗体(無アジ化物)を一晩培地中でインキュベートし、培地を廃棄して、PBMCを添加した。1日後および3日後に細胞を採取して、アポトーシスおよび活性化マーカーのために染色した。
【0411】
2.1.10 スロットブロット
100μlの試料(表示のように)を、真空下で各スロットのニトロセルロース膜(Protran;Schleicher&Schuell)上に負荷した。負荷後、ブロットを、3%スキムミルク粉末(Diploma)のPBS Tween 0.05%(ブロッキングバッファー)により、1時間、室温にてブロッキングした。一次Ab(CRCBT−02−001から分泌された、または、Abnova社のポリクローナルPI16抗体)をブロッキングバッファー中にて2倍に希釈し、プラットホーム型振とう器で1時間、室温でインキュベートした。ブロットを3x5分間、PBS tweenで洗浄した。ブロッキングバッファー中の1/1000希釈ビオチン化ウマ抗マウス(VECTOR)を添加して、rocking platform上で1時間、室温でインキュベートした。ブロットを3x5分間PBS tweenで洗浄した。1/1000希釈SA:HRP(GE Healthcare)のブロッキングバッファーを添加して、rocking platform上で1時間、室温でインキュベートした。ブロットを3x5分間、PBS tweenで洗浄した。ECL溶液AおよびBの適当量(膜表面を覆うほどの量;ECL Advanceウエスタンブロットキット、GE Healthcare)を添加し、一定で振とうしながら1分間インキュベートした。ブロットを15秒のUV曝露後すぐにG:Box(Syngene)にて読み取った。
【0412】
2.1.11 サイトカイン分泌の特性解析
PI16およびCD25を用いて特定したCD4陽性細胞から分泌されたサイトカインのプロファイルを同定するため、T
H1/T
H2/T
H17Cytometric Bead Array(CBA;BD Biosciences)を用いて細胞上清中のサイトカインIL2、IL4、IL6、IL10、IL17A、TNFalpha、IFNgammaのレベルを測定し、続いてインビトロで刺激した。CD4陽性リンパ球を、RosetteSep CD4
+T細胞濃縮キットを用いて軟膜から単離し、CD25およびPI16に対する抗体により染色した。CD25およびPI16により特定した4つのCD4陽性サブセットを、FACSAria IIセルソータを用いて無菌条件下で選別した。
【0413】
細胞を刺激するため、5.0x10
5の選別細胞集団を、CD3/CD28ビーズ(Dynal T cell expander kit;Invitrogen)により3日間インキュベートした。非刺激対照細胞をビーズなしでインキュベートした。インキュベーション後、上清を回収して、T
H1/T
H2/T
H17CBAキットを用いて製造者の指示に従ってサイトカインについて試験を行った。各サブセットについて、サイトカイン濃度を、非刺激細胞の濃度値を刺激細胞の濃度値から減算することにより算出した。
【0414】
2.1.12 CRCBT−02−001の配列決定
メッセンジャーRNA(mRNA)を、RNeasy midi kit(Qiagen、ドイツ)を用いてCRCBT−02−001ハイブリドーマ細胞から単離した。RT−PCRをone−step RT PCR kit(Qiagen)を用いて製造者の指示に従い実施した。簡潔に述べると、1μgのmRNAをcDNA合成のテンプレートとして使用し、Zang et al、2005に記載のように縮重プライマーによりマウス可変軽鎖および重鎖を増幅した。
【0415】
軽鎖を、10pMの5’−GG
GAGCTCGAYATTGTGMTSACMCARWCTMCA−3’(配列番号11)および5’−GGT
GCATGCGGATACAGTTGGTGCAGCATC−3’(配列番号12)、それぞれ順方向および逆方向プライマーを用いて増幅した。重鎖を、等モル濃度(10pM最終濃度)の以下の順方向プライマー:
【表2】
【0416】
2.2 結果
ヒト PI16(Abnova)に対するマウスポリクローナル抗体を、多色フローサイトメトリに用いた(
図2)。この抗体は、およそ18%のリンパ球を染色し、その大部分がCD4陽性でもあった。PI16がTreg細胞により発現されることを確実にするため、細胞を、PI16抗体に加えてCD4、CD25およびFoxP3に対する抗体により染色した。
図2に示すように、CD25
brightPI16
+細胞の50%超がまた、FoxP3を発現した。
【0417】
ポリクローナル抗体の使用による特異的事象を避けるため、ヒトPI16タンパク質に対するマウスモノクローナル抗体を産生した。ヒトおよびマウスアミノ酸配列の比較(
図1)により、免疫応答を誘発する十分な分化が存在する可能性があることが示された。
【0418】
マウスを、PI16を発現するL929細胞により免疫化し、フローサイトメトリを用いて抗体産生のためのスクリーニングを行った(
図4)。PI16発現L929細胞に反応性の抗体を産生するマウスを、ハイブリドーマ産生のために選択した。
【0419】
融合後、ハイブリドーマ培養上清を、フローサイトメトリを用いてスクリーニングしてPI16発現L929細胞への結合を検出した。
図5に示すように、ハイブリドーマウェルP1G5(P1 5G)での細胞が、以前検査したポリクローナル抗体と同じ様式でC3
+細胞を染色する抗体を分泌した。
【0420】
次いで、P1G5を単一細胞ソーティングにより再クローン化し、フローサイトメトリによりCD4
+T細胞への結合を検査した。
図6に示すように、クローンP1G5−P2B3は、以前検査したポリクローナル抗体と同じ様式を示したが、一方でクローンP1G5−P1B7およびP1G5−P1G8は同じ様式でなかった。P1G5−P2B3を増殖のため選択し、CRCBT−02−001と称した。CRCBT−02−001はマウスIgG1κであると判断される。
【0421】
PI16発現NIH3T3細胞を用いてCRCBT−02−001により産生されたハイブリドーマ培養上清の反応性を確証し、以前検査した市販のポリクローナル抗体の反応性ちと比較した。
図7に示すように、ポリクローナル抗体およびハイブリドーマ上清は、同じ染色様式であることが立証された。
【0422】
CRCBT−02−001上清により検出されたPI16の細胞内局在性を確認にするため、非形質移入または安定的形質移入NIH3T3細胞をチャンバースライドにて成長させた。
図8に示すようにCRCBT−02−001の上清が細胞膜に貯留し、細胞の表面染色を立証した。
図8はまた、CRCBT−02−001上清(
図8A’)の形質移入細胞表面への染色が市販の抗PI16ポリクローナル抗体(
図8C’)より強い事を示す。
【0423】
モノクローナル抗体が結合するタンパク質を決定するため、スロットブロットを実施した。
図9は、CRCBT−02−001上清およびPI16ポリクローナル抗体(Abnova)の両方がPI16安定トランスフェクタントNIH3T3細胞(PI16形質移入細胞溶解物)と結合するが非トランスフェクタントNIH3T3細胞(非形質移入細胞溶解物)には結合しないことを実証するスロットブロットを示す。両抗体がまた、PI16安定トランスフェクタントNIH3T3細胞(PI16形質移入細胞上清)の上清に結合し、これは、形質移入細胞がその表面からPI16を分泌および放出することを示唆する。CRCBT−02−001はAbnova社の組み換えタンパク質(Abnova社由来組換えタンパク質)に結合しない。これらの結果は、CRCBT−02−001およびPI16ポリクローナル抗体(Abnova)の両方がPI16と結合することを示唆する。CRCBT−02−001モノクローナル抗体がAbnova社の(小麦胚芽無細胞系を用いて発現させた)組み換えPI16タンパク質に結合しないことは、モノクローナル抗体が、ポリクローナル抗体よりも例えば真核細胞などの細胞で産生されたPI16に対してより選択的であることを示唆する。これらのデータは、モノクローナル抗体が天然哺乳類PI16と反応性があり、モノクローナル抗体が天然哺乳類タンパク質、例えば天然ヒトタンパク質と同様のタンパク質を取得する方法で処理および/または組み合わせていないPI16との交差反応を制限していることを示す。
【0424】
CRCBT−02−001上清がTreg細胞と結合することができることを確認するため、上清を用いてCD4
+細胞をCD25とCD127の共発現に関して解析した。
図10に示すように、CRCBT−02−001は、市販のポリクローナル抗体より多くのCD4
+CD25
hiCD127
−(Treg)細胞を検出した。
【0425】
新鮮PBMC由来の様々なリンパ球サブセットをまた、CRCBT−02−001上清の免疫反応性のために染色した。この染色は、PI16発現細胞の大部分がCD4陽性リンパ球(CD4陽性サブセットのおよそ20%;
図11B)であり、残余細胞はCD8陽性T細胞(CD8−brightサブセットのおよそ10%;
図11C)であることを示した。ごくわずかなCD19陽性リンパ球B細胞)がCRCBT−02−001上清(
図11D)と反応する。
【0426】
CRCBT−02−001上清免疫反応性CD4
+T細胞の大部分がメモリー表現型(CD45RA
−)(
図11E)をもち、大部分がまたCD27を発現する(
図11F)。さらにまた、CRCBT−02−001−免疫反応性細胞のごく一部がエフェクタメモリー細胞サブセットに属している(CD45RA
−/CD27
−;
図11G)。
【0427】
CRCBT−02−001上清免疫反応性CD4
+T細胞の大部分はCD25を発現し(
図11H)、CD4
+/CRCBT−002−001上清陽性細胞の約4分の3がCD127を発現する(
図11I)。なかでもCD4
+/CRCBT−002−001上清陽性細胞のおよそ20%がTreg表現型CD25
+/CD127
−を発現する(
図11J)。
【0428】
PI16の発現をTreg細胞および他のT
H細胞によりさらに特性解析するために、末梢血単核細胞をCRCBT−002−01モノクローナル抗体ならびにCD4、CD25およびCD127に対する抗体で染色し、Seddikiら(2006年)のゲーティング戦略を用いてCD25−bright/CD127−dim TregおよびCD127陽性Th細胞サブセットを同定した(
図12)。染色により、PI16がCD4陽性リンパ球のTregとThサブセットの両方のうちごくわずかにより発現され、Tregのより高い比率がPI16を発現することが示される。
【0429】
さらなるPI16陽性Treg細胞の特性解析を、CD4、CD25、PI16(CRCBT−02−001)、CD45RAおよびCD45ROに対するモノクローナル抗体によりリンパ球を染色することにより実施した。PI16およびCD25の両方を発現したCD4陽性リンパ球の大部分がCD45RO陽性/CD45RA陰性「メモリー」表現型をもっていた(
図13)。
【0430】
Tregを転写因子FoxP3の発現により特定する。CD4、CD25、PI16(CRCBT−02−001)およびFoxP3に対する抗体はまた、PI16の有無により特定したTregサブセットによるFoxP3の発現を試験するものであった(
図14)。FoxP3発現の高いレベルが、PI16陰性/CD25陽性画分(MFIが1062)と比較してPI16陽性/CD25陽性画分(個体群は1457の蛍光強度(MFI)を意味する)で検出された。PI16陽性/CD25陰性画分(MFIが613)でのFoxP3レベルは、PI16陰性/CD25陰性エフェクタ細胞画分(480のMFI)のバックグラウンドレベルと同様であった。
【0431】
ゲーティング戦略を基本的にはMiyaraら(2009年)に記載のように使用し、PI16陽性メモリーTregがまたFoxP3転写因子を発現することを示した(
図15)。
【0432】
CD4
+CD25
+細胞をさらに、CRCBT−02−001上清とTregサブセットマーカーとの共染色に関しフローサイトメトリにより解析した。この解析の結果を表2に示す。
【表3】
【0433】
CD45RO、CD45RA、CD39およびCCR6を用いた分別染色から、PI16陽性Treg個体群が、両PI16陰性Treg個体群からおよび他のPI16陽性T
H細胞から表現型上で区別可能なメモリーTregのサブセットであることが示される。
【0434】
図16はさらに、メモリーTreg細胞に結合するCRCBT−02−001分泌抗体の機能を裏付ける。簡単には、CD4
+細胞をCRCBT−02−001上清およびCD45RAかCD45ROのいずれかに対する抗体で標識化した。CD45RAの染色は、メモリー細胞サブセット(CD45RO
+)に属するCD45RA
−細胞によりメモリー細胞を天然細胞から識別するために広く使用されている。したがって、CRCBT−02−001は、CD4
+CD25
+CD45RA
−CD45RO
+メモリーTreg細胞集団を同定するようだ。
【0435】
Cytometric Bead Array(CBA)を用いて、どのサイトカインがT細胞レセプターを介した刺激の後にPI16発現Tregにより発現されかを決定した(
図17)。これらの実験により、PI16陽性Treg細胞のサイトカイン発現プロファイルがPI16陰性Treg細胞と同じであり、PI16陽性T
H細胞がそのPI16陰性T
H細胞と同じサイトカインを発現することが示される。
【0436】
PI16陽性メモリーTregをさらに特性解析するため、PI16陽性メモリーTregによる数種類のケモカインレセプターの発現を、PI16陰性メモリーTregと他のPI16陽性メモリーT
H細胞と比較した(表3参照)。CCR4およびCCR6ケモカインレセプターは、PI16陰性TregまたはT
H画分のメモリー要素と比較してメモリーPI16陽性TregとメモリーPI16陽性T
H細胞のより高い比率により発現される(
図18)。ケモカインレセプターの差次的発現は、T
H細胞サブセットの遊走を予測する、またTh細胞の機能的サブセットを同定するために使用され得る。本明細書に提供されるデータにより、PI16陽性メモリーTregにより発現されたケモカインレセプターのプロファイルが、PI16陰性メモリーTregおよび他のPI16陽性T
H細胞の両方と異なることが示される。CCR4およびCCR6などのケモカインレセプターの発現から、PI16陽性メモリーTregが、T
H17細胞が遊走し得る炎症部位と同じ部位に遊走し得ることが示される。
【表4】
【0437】
図19に示すようにCD25の上方制御にもかかわらず、PI16に相当する上方制御は存在しない。
【0438】
PBMCを一晩および3日間刺激した。CRCBT−02−001から分泌された精製抗体(無アジ化物)を培地に2μg/ml、5μg/mlおよび10μg/ml添加するか、または細胞を固定した抗体と接触させて活性化マーカーCD25およびCD69のために染色した。細胞死を決定するために、細胞を7AADと共に15分間インキュベートし、その後回収してフローサイトメトリにより解析した。結果を表4および5に示す。
【表5】
【表6】
【0439】
表3および4に提示される結果は、CRCBT−02−001はTreg表現型をもつ細胞を、エフェクタ細胞非存在下で殺さないまた分化を起こさないことを示す。これは、この抗体または同抗体のエピトープに結合するタンパク質を使用して細胞に多大な悪影響をもたらすことなくTreg細胞を単離するのに有用である。
【0440】
図20に示すように、CRCBT−02−001により分泌される抗体は、刺激したPBMCを含む上清でPI16を検出し、これはPI16が刺激後すぐに放出または分泌され得ることを示唆する。CD4細胞溶解物で検出された信号は存在しなかった。しかしながら、PI16はCD4細胞の5%しかないので、この抽出物はPI16の抽出のために最も希釈しやすかった(1:100)。CRCBT−02−001は、CD4
+CD25
+刺激および静止細胞溶解物にのみ結合し、CD4
+CD25
−細胞溶解物とは結合しない抗体を分泌した。CRCBT−02−001分泌抗体は、刺激したTreg(CD4
+CD25
+PI16
+)の上清でPI16を検出し、これはPI16がTreg細胞刺激後すぐに発散または分泌され得ることを示唆する。
【0441】
CRCBT−02−001により分泌される抗体はまた、ヒトPI16に結合することが見出されているが、マウスPI16に検出可能に結合していなかった。
【0442】
CRCBT−02−001の可変領域をコードする核酸配列およびそのコードアミノ酸が推測された。重鎖可変領域をコードする配列を配列番号配列番号7に記載し、またコードアミノ酸を配列番号8に記載する。軽鎖可変領域をコードする配列を配列番号配列番号9に記載し、またコードアミノ酸を配列番号10に記載する。
図21では、CDRの配列を強調して示している。V
HのCDRは、Komatsuら,(2003年)により公表されたAB089648.1との比較により見いだされた。
【0443】
実施例3:CRCBT−02−001を用いて単離されたTregによる免疫応答の抑制
3.1.抑制試験のための新鮮な成人型TregおよびエフェクタTサブセットの単離
RosetteSep CD4
+T細胞濃縮キット(Stem Cell Technologies、Vancouver、カナダ)を用いてCD4
+T細胞をまず濃縮した後、軟膜からTreg細胞を単離した。CD4
+CD25
brightPI16
+およびCD4
+CD25
brightPI16
−を、無菌条件下でFACSAria IIセルソータを用いて基本的には実施例2に記載のように選別した。CD4
+CD25
−エフェクタ細胞を第2ドナー軟膜から単離し、magnetic−activated cell−sorting(MACS)ビーズ(Miltenyi Biotech)を用いて精製した。
【0444】
3.1.2.ヒト臍帯nTreg細胞およびiTreg細胞の増殖
CD4
+CD25
+およびCD4
+CD25
−T細胞を新鮮臍帯血から抽出しInvitrogen Dynal Bead Regulatory T細胞キット(cat#113.63D)を用いて精製した。単離CD4
+CD25
+Treg細胞をDynal Bead Human T Expander CD3/CD28ビーズ(比率3:1)(cat#111.41D)および500U/mlのIL−2のX−Vivo15完全培地(Lonza cat#04−418Q)で7日間インキュベートした。CD4
+CD25
−T細胞を、Treg対照群を示す同じ条件下で増殖した。iTreg細胞を、CD4
+CD25
−T細胞をCD3/CD28ビーズ(3:1ビーズ細胞比)、10μM全トランスレチノイン酸(ATRA)(Sigma)を含有する500U/mlのIL−2および5ng/mlのTGF−βによりインキュベートすることにより産生した。全Treg細胞サブセットを7日間増殖させた。7日目に、CD3/CD28ビーズを取り除き、細胞をさらに7日間、100U/mlのIL−2を含むX−Vivo15完全培地中で静止させた。
【0445】
3.2 チミジン取り込み試験
増殖した臍帯血からのPI16
+nTreg(CRCBT−02−001
+)およびPI16
−nTreg(CRCBT−02−001
−)を、混合リンパ球反応(MLR)に対する抑制活性について試験した。CD4
+CD25
−エフェクタT細胞(およそ2x10
4)を96ウェルプレートで培養し、1x10
5照射された(30Gy)PBMC存在下で成長させた。CD4
+CD25
+PI16
+細胞を、基本的に実施例2に記載のような方法で単離した。細胞を1:1、2:1、4:1、8:1、16:1、32:1、64:1の比率で添加した。細胞を100ng/mlの抗CD3(OKT3)モノクローナル抗体(eBioscience)により活性化した。ウェルを4日目に
3H−チミジンを用いて培養の最後の16時間パルス処理した。全時点を3連にて測定した。結果を1分あたりのシンチレーション計数で表した。
図22Aは、増加した臍帯血からのチミジン試験がそれぞれエフェクタ細胞のPI−16
+およびPI−16
−nTregによる抑制を実証していることを示す。
【0446】
図22Bに示すように、CRCBT−02−001により単離したPI16
+Treg細胞は、PI−16
−nTreg(n=6)と同じ有効性を伴い1:1から16:1の比率においてエフェクタ細胞の増殖を抑制する。
【0447】
3.3 5、6−カルボキシフルオセイン二酢酸サクシニミジルエステル(CFSE)サプレッサー試験
混合リンパ球反応でのエフェクタ細胞の細胞分裂をまた、CFSE希釈(Venkenら,2009年)により解析した。エフェクタCD4
+CD25
−細胞を3.1に記載のように単離し、PBS中で1mM CFSE(Invitrogen、Carlsbad、カリフォルニア州)により10分間、37℃で標識化した。2x10
4CFSE標識エフェクタ細胞を、1:1、2:1、4:1、8:1、16:1、32:1のTeffector/Treg比率でTreg細胞によりインキュベートした。エフェクタおよびTreg細胞を、96ウェルU−ボトムプレートにおいて、1x10
5の照射された(30Gy)PBMCおよび100ng/mlの抗CD3(OKT3)モノクローナル抗体(eBioscience)により200μlのcRPMI中でインキュベートした。共培養物をインキュベーションの5日後に採取し、レスポンダー個体群の増殖を、フローサイトメトリにより、細胞分裂に伴うCFSE蛍光を希釈することにより可視化した。
図23Aは増殖臍帯血Tregを用いた典型的なCFSEサプレッサー試験を提供する(PI−16
+およびPI−16
−)。6つの増殖臍帯血Treg(PI−16
+/−)に関する累積結果を
図23Bに示す。PI−16
+およびPI−16
−Tregは、正常培養条件下で、同等の効力で抑制する。
【0448】
末梢血から新鮮単離PI16発現Treg細胞は、刺激CD25
−Tエフェクタ細胞の増殖を抑制することができた(
図23C)。これらのデータは、CRCBT−02−001により単離したPI16
+/CD25
+細胞がPI−16
−Tregと同様な抑制能をもつ機能的Treg細胞であることを確証する。累積CFSEサプレッサー試験の新鮮な成人型nTreg(PI−16
+およびPI−16
−)における結果は、末梢血から単離したPI−16
+Tregの抑制能力を確証する(n=4)(
図23D)。正常細胞培養条件下での、成人血液からのPI−16
+およびPI−16
−Treg間の抑制能の違いはない。
【0449】
3.4 CD154抑制試験
増殖臍帯血由来のPI16
+nTreg(CRCBT−02−001
+)およびPI16
−nTreg(CRCBT−02−001
−)サブセットを、基本的に実施例2に記載のように単離し、完全X−Vivo15培地(Lonza)にて一晩、37℃で静止し、その後試験に添加した。新たに回収もしくは以前凍結乾燥したMACSまたはFACS単離CD4
+CD25
−細胞をこの試験でエフェクタ細胞として使用した。新たに回収したCD4
+CD25
−エフェクタ細胞は回収の12時間以内に使用され、凍結乾燥したCD4
+CD25
−エフェクタ細胞は、試験に使用する前に完全RPMI培地にて12〜20時間、37℃で静止させる。
【0450】
Treg細胞サブセットを、96ウェルプレートに1:1、2:1、4:1、8:1、16:1および32:1のEffector/Treg細胞比率でプレーティングした。CD4
+CD25
−エフェクタ細胞を5x10
4細胞/50μl/ウェルでプレーティングし、Tregを5x10
4細胞/50μl/ウェル(1:1)でプレーティングして、1.56x10
3細胞/50ul/ウェルまで連続的に希釈した。およそ5x10
4のTreg単独およびCD4
+CD25
−エフェクタ単独(刺激と非刺激の両方)の対照ウェルが含まれた。非刺激ウェルはCD154−APC(BDBiosciences(BD);1ウェルあたり5μl)を含有するカクテルを受け;刺激ウェルはCD154
−APC(1ウェルあたり5ul)とCD3/CD28T細胞増殖刺激ビーズ(0.25:1ビーズ/細胞の比率)を含有するカクテルを受けた。培養物を暗所で7〜8時間、37℃にてインキュベートした。インキュベーション後、96ウェルプレートを最大15時間冷蔵した後、染色した。
【0451】
細胞をCD4(FITC、BD)およびCD25(PECy7、BD)の表面発現のために、96ウェルプレート中室温で30分間染色し、次いで洗浄した。細胞を、BD FACS Cantoフローサイトメータでの3色フローサイトメトリにより、CD154発現について解析した。解析の際、Treg(CD4
+CD25
bright)細胞応答はCD4
+CD25
−細胞上にgatingすることにより除外される。T細胞活性の抑制を、刺激CD4
+CD25
−エフェクタ単独でのCD154発現とTregで共培養した刺激CD4
+CD25
−エフェクタでのCD154発現とを比較することにより評価した(
図24A)。
【0452】
図24Bに示すように、4つの増殖臍帯血試料からのCRCBT−02−001を用いて単離したTreg細胞はCD154発現を抑制することができ、このことはこれらの細胞がT細胞活性化を抑制することを示す。正常細胞培養条件下での、PI−16+およびPI−16−Treg間の抑制能の違いはない。
【0453】
実施例4:nTreg細胞およびiTreg細胞サブセットの特性解析
4.1 増殖nTregおよびiTregのフローサイトメトリ
nTregおよびiTreg細胞サブセット(基本的に3.1.2に記載)を、7日間の増殖と7日間の低レベルのIL−2での静止後に、多色フローサイトメトリおよびリアルタイムRT−PCRにより解析した。インビトロで産生したnTreg細胞およびiTreg細胞を基本的に実施例2に記載のようにFACS解析によりプロファイル化し、CD4、CD25、PI16およびFoxP3の発現を比較した。
【0454】
図25Aにより、nTreg細胞およびiTreg細胞の両方が高いレベルのCD4、CD25およびFoxP3を発現したが増殖nTregは増殖臍帯血iTregより著しくPI16を発現したことが示される。これは、7つの増殖臍帯血試料および7つの増殖成人血液試料において確証された(
図25B、n=7、p<0.05)。
【0455】
4.2 増殖したnTregおよびiTreg定量的リアルタイムPCR
RNAをまた、セクション4.1に記載のTregサブセットより抽出し、リアルタイムRT−PCRを実施して、PI16およびFoxP3の相対的発現を調査した。総RNAをRNeasyキット(Qiagen、Hilden ドイツ)を用いて抽出し、その後Quantitect Reverse Transcriptionキット(Qiagen)を用いてcDNAに変換した。半定量的RT−PCRをKAPA SYBR Fast Universal qPCRキット(KAPA Biosystems、Cambridge、マサチューセッツ州、米国)を用いて3連にて実施した。PCR反応をCorbettリアルタイムPCR装置(Rotorgene 6000)にて実施した。6つの個々の実験結果をRotor−Gene 6000ソフトウェアを用いて解析し、基準転写物、リボソームタンパク質L13a(RPL13a)の発現へ正規化した。
【0456】
RT PCRプライマー配列は次のとおりであった;FoxP3順方向−5’−ATGGCCCAGCGGATGAG−3’(配列番号19)および逆方向5’−GAAACAGCACATTCCCAGAGT TC−3’(配列番号20);PI16順方向5’−GAGAATCTGT TCGCCATCACA−3’(配列番号21)および逆方向5’−GAAACAGCACATTCCCAGAGTTC−3’(配列番号22);およびRPL13a順方向5’−CGAGGTTGG CTGGAAGTACC−3’(配列番号23)および逆方向5’−CTTCTCGGCCTGTTTCCGTAG−3’(配列番号24)。
【0457】
図26Aは、PI16がnTreg細胞個体群にてメッセージレベルで発現することを確証する。nTregは、CD25
−細胞と比較した場合に、Foxp3の2.2 log2 foldの増加(p<0.01)およびPI−16の4.48 log2 foldの増加(P<0.01)を表す(表6)。FOXP3およびPI16はnTregおよびiTregの両方に存在するが、FOXP3(p<0.001)およびPI16(p<0.05)は統計的にnTregよりiTregにおいてのほうが少ない(表7)。
図26BはCRCBT−02−001を用いて単離した3つの新鮮単離成人末梢血PI16
+およびPI16
−Tregから抽出したRNAのRT−PCRデータを表す。このデータは、細胞表面PI16陰性である細胞中に成人血液Treg PI16が存在しないことを実証する。このことは、区別可能なTregのPI16
+サブセットとCRCBT−02−001を用いて単離し得るPI16
−サブセットが存在することを示唆し重要である。
【表7】
【表8】
【0458】
4.3 RNA調製およびCustom TaqMan(登録商標)低密度配列による発現解析
総RNAを、増殖した臍帯血CD25
−ヘルパーT、nTreg、およびiTreg細胞(7日間の増殖プロトコル後に7日間静止させた)から単離した。総RNAをQIAshredderおよびRNeasy mini キット(QIAGEN)を用いて単離した。総RNA(2μg)をHigh Capacity cDNA Transcriptionキット(Applied Biosysytems)を用いてcDNAに変換した。各cDNA合成反応をTaqMan(登録商標)Universal PCR master mixと組み合わせて、Custom TaqMan(登録商標)低密度配列(Format 96b)の4つの試料液体リザーバに均等にロードした。増幅およびデータ収集を900HT Real−Time PCR System(Applied Biosystems).で行った。ドナー適合対照ヘルパーT、nTreg、およびiTreg試料を同じアレイ上にロードした。CustomTaqMan(登録商標)低密度配列を有効なTaqMan(登録商標)遺伝子発現試験を用いて構築した。データをRPL13aへの正規化を伴うΔΔCT法を用いて解析した。比(比)を細胞型間で算出し、T検定を各遺伝子について実施した。
【0459】
nTregとiTreg(
図27A)、およびnTregとCD25(
図27B)との比較により、iTregはFOXP3を発現するが、PI16またはnTregでPI16と共発現する遺伝子のいくつかを発現しないが実証される。このことから、PI16がnTregには強力な代理マーカーであるがiTregでは代理マーカーではないことが示唆される。
【0460】
4.4 メチル化
ゲノムDNAをCRCBT−02−001で標識化された新鮮な成人型Tregから単離し、また基本的に実施例2に記載のようにCD4
+CD25
brightPI16
+およびCD4+CD25
brightPI16
−個体群に選別した。両個体群からのDNAをQIAamp DNA血液Miniキット(Qiagen)を用いて抽出し、次いでEpiTect Bisulfiteキット(Qiagen)を用いてメチル化解析のためのDNAの変換および清浄化を行った。Treg細胞特異的脱メチル化領域(TSDR)のためのPCRを基本的にBaronら(2007年)に記載のように実施した。PCRプライマーは以下のとおりである;順方向−5’−TGTTTGGGGGTAGAGGATTT−3’(配列番号28)および逆方向−5’−TATCACCCCACCTAAACCAA−3’(配列番号29)。PCR産物をゲル抽出し、Qiaquick Gel Extractionキット(Qiagen)を用いて清浄化した。次いで、PCRフラグメントを、配列決定用TOPO TAクローニングキット(Invitrogen)を用いてpCR4−TOPOへクローン化し、One Shot Top10 Chemically competent大腸菌中に形質転換し、アンピシリン寒天プレートにプレーティングした。コロニーを掻き取りアンピシリン含有Luria Broth培地にて一晩培養し、その後QuickLyse Mini−prepキット(Qiagen)を用いてDNAを単離した。プラスミドDNAを、M13universal順方向および逆方向プライマー、順方向5’−GTAAAACGACGGCCAG−3’(配列番号30)および逆方向5’−GTTTTCCCAGTCACGAC−3’(配列番号31)を適用して配列決定し、その後ABI Big Dye Terminator labelling(Applied Biosystems)、およびAB3730xlでのcapilletary separationを行った。次いで、配列ファイルをCpGモチーフでGからAへの変更について解析した。
【0461】
図28に示すように、CRCBT−02−001を用いて単離したPI16
+Tregは、FOXP3のイントロン1のTSDRで脱メチル化された表現型を示す。逆に、PI16発現に欠けるTregは部分的にメチル化された、誘導性Tregと一致した表現型である。
【0462】
実施例5: nTregおよびiTregサブセットの機能的特性解析とその後の炎症性サイトカインへの曝露
PI16の表面発現に基づき単離した増殖臍帯血Tregサブセットに、炎症性サイトカインへの曝露後の適合した比較対照個体群への機能的特徴の変化が見られるかを決定するために、CD25
−レスポンダー細胞の抗CD3 OKT3刺激を用いる混合白血球反応試験を用いた。チミジンサプレッサー試験を、実質的に実施例3に記載のように実施した。増殖臍帯血nTreg(PI16
+およびPI16
−)およびiTreg(PI16
−)をフローサイトメトリにより単離し、次いで完全X−vivo培地にて3日間静止させた。PI16
+、PI16
−nTregおよびPI16
−iTregのサブグループを、10ng/mlのIL−1βおよび50ng/mlのIL−6中で3日間インキュベートした。細胞を十分に洗浄し、その後サプレッサー試験のために細胞を封入した。
【0463】
図29Aは、サプレッサー試験に添加前に3日間炎症性サイトカインIL1βおよびIL6への曝露の場合と比較した、正常細胞培養条件下でのPI16
+nTreg細胞によるエフェクタ細胞の抑制レベルを示す。PI16
+nTregの機能をチミジンおよびCFSEサプレッサー試験により測定した。炎症性環境に曝露した時、抑制は変化せず、これらの細胞は抑制機能を維持した(n=2)。
【0464】
図29Bは、正常細胞培養条件下とIL1βおよびIL6が存在する炎症状態下とでのPI16
−nTregの抑制機能を、チミジンおよびCFSEサプレッサー試験を用いて比較している。PI16
−nTregは炎症環境下で抑制能力を維持している(n=2)。
【0465】
図29Cは同様に、TGF−βおよびATRAと共に、実質的に実施例3.1.2に記載のように臍帯血から増殖したiTreg(PI16
−)の機能特性解析を比較している。これらの細胞を、正常細胞培養条件下またはIL1βおよびIL6が存在する炎症状態下のいずれかで、培地にて3日間静止した。抑制機能を、チミジンおよびCFSEサプレッサー試験を用いて測定した。個体群と異なり、増殖したiTregは正常条件下では良好に抑制したが、IL1βおよびIL6への事前の曝露後では全ての抑制機能を失った。
【0466】
これらのデータは、PI16
+Treg細胞は、通常炎症部位で見られる炎症性サイトカインへの曝露後であっても抑制活性を保持する強力な(robust)細胞型であることを実証する。PI16
−iTreg細胞は炎症性サイトカインの存在下では抑制活性を保持しない。
【0467】
実施例6: PI16
+Treg細胞はHLADRを発現する
CD25およびPI16(CRCBT−02−001)の共発現を用いて特定されたメモリーCD4陽性細胞のサブセットによる、MHCクラス2タンパク質HLADRの発現を評価した。CD4陽性リンパ球のサブセットを
図14に示すように特定し、各メモリー画分をCD45ROの発現により同定した。
図30に提示したデータは、PI16陽性Treg細胞(CD25陽性PI16陽性)のより高い比率でCD4陽性T細胞と抗原提示細胞との抗原特異的同族相互作用に関連するHLADRを発現することを示す。いかなる理論または作用機序に縛られるものではないが、Treg細胞によるHLADRの発現により、Treg細胞がCD4陽性T細胞および抗原提示細胞の正常な同族相互作用を妨げ、これによりエフェクタT細胞の正常な抗原特異的活性化を混乱させることができる。
【0468】
実施例7: 若年性特発性関節炎でのPI16+Treg細胞
成人および若年性特発性関節炎(JIA)に罹患する患者からのPBMCおよびJIA患者からの滑液をTregカクテル(CD4、CD25、CD127)およびCRCBT−02−001と共に染色し、FACSAria IIで解析した。
【0469】
図31に示すように、適合血液試料および成人健常者ドナーからの血液試料と比較して、JIAに罹患している患者の滑液でのTregで著しい増加がみられる。いっぽうで、適合血液試料および成人健常者ドナーからの血液試料と比較して、炎症関節でのPI16陽性Tregで著しい減少がみられる。
【0470】
JIA患者の炎症関節でTreg細胞の濃縮が見られるが、これらのTregは末梢でのTreg細胞よりもきわめて少量がPI16を発現する。いかなる理論または作用機序に縛られるものではないが、本明細書に提示される結果は、健常者ではPI16陽性Treg細胞およびT
H17細胞がT
H17免疫応答を制御するTreg細胞と同じ炎症部位に存在し得ることを示す。一方で、PI16陽性Treg細胞での異常、または該細胞の不足または減少が自己免疫の一因となり得る。
【0471】
いかなる理論または作用機序に縛られるものではないが、本明細書に提示される結果は、健常者ではPI16陽性Treg細胞およびT
H17細胞がT
H17免疫応答を制御するTreg細胞と同じ炎症部位に存在することを示す。一方で、PI16陽性Treg細胞での異常が自己免疫の一因となり得る。
【0472】
実施例8: PI16
+Treg細胞はCLAを発現する
規定のメモリーCD4+細胞サブセットによる、CD25とPI16(CRCBT−02−001)との共発現を用いた皮膚リンパ球抗原(CLA)発現を評価した。
図32に示されるデータから、より高い比率のPI16
+Treg細胞(CD25
+PI16
+)は細胞の皮膚への遊走を伴うCLAを発現する事が示される。いかなる理論または作用機序に縛られるものではないが、CLAのPI16
+Treg細胞による発現により、これらの細胞が皮膚の炎症に遊走し得、一方でPI16
−Treg細胞はCLAを発現せず、皮膚へ遊走し得ない。
【0473】
実施例9: CRCBT−02−001を用いて単離したPI16発現Treg細胞の走化性
9.1 走化性試験
組み換えヒト胸腺および活性化調節ケモカイン(CCL17、CCR4へのリガンド)および組み換えヒトマクロファージ炎症性タンパク質−3アルファ(CCL20、CCR6へのリガンド)をRaybiotech(Norcross、GA)より購入した。走化性試験を5−μm孔(Corning)をもつトランスウェルプレートを用いて実施した。ボトムウェルには培地単独、CCL17およびCCL20両方の100ng/mlのCCL17、100ng/mlのCCL20、または100ng/mlのいずれを入れた。末梢血単核球(PBMC)および滑液単核細胞(SFMC)を標準的な密度勾配遠心法により単離した。アッパーウェルに1ウェルあたり1x10
6の細胞をロードし、細胞を2時間、37℃で遊走させた。走化性後、トップおよびボトム(遊走済み)ウェル中の細胞を回収し、CD4、CD25、CCR4、CCR6およびCRCBT−02−001に対するモノクローナル抗体で染色した。
【0474】
成人健常者PBMCからのCD4
+CD25
brightCRCBT−02−001
+細胞のCCR4およびCCR6リガンド、CCL17およびCCL20に対する応答での遊走能力を、5μm孔Transwells(商標)を用いて検査した。CD4+CD25
brightCRCBT−02−001細胞はCCL17、CCL20および複合CCL17/CCL20リガンドへ遊走した(
図33A)。
【0475】
若年性特発性関節炎に罹患した対象からのPI16
+Tregの能力ついても評価した。成人健常者と同様に、健常児からのCD4
+CD25
brightCRCBT−02−001
+Treg細胞(Normal Juvenile PBMC)およびJIA患者からのCD4
+CD25
brightCRCBT−02−001
+Treg細胞はリガンドCCL17、CCL20およびCCL17およびCCL20に遊走することができた(
図33B).一方で、JIA患者からの滑液単核細胞(SFMCs)はリガンド、CCL17、CCL20およびCCL17およびCCL20への遊走能力が見られなかった。
【0476】
上記提示したデータは、PI16(CRCBT−02−001で検出するこの場合)はケモカインCCL17およびCCL20への遊走能力をもつ機能的安定なメモリーTregの区別可能なサブセットを同定し、したがって炎症誘発T
H17細胞と同様の炎症部位である可能性が最も高いことを示す。
【0477】
JIAの場合、炎症関節をPI16
−Treg細胞中で濃縮する(およびT
H17細胞中で濃縮する)が、PI16
+Treg細胞中では濃縮しない。
【0478】
実施例10: PI16に結合するCRCBT−02−001の確証
10.1 質量分析を用いたCRCBT−02−001と結合したタンパク質の同定
CRCBT−02−001を用いて精製したタンパク質を10mM DTTの50mM Tris(pH8.0)で1時間、60℃で還元し、50mM ヨードアセトアミドで30分間、室温でアルキル化し、その後0.5μg トリプシンを添加し、タンパク質を2時間、40℃で消化した。消化物をRPカラム(150mmx150μmVydac everest C18)上に接種し、溶離液を2,4α−シアノ桂皮酸飽和溶液と共にMALDI−MS target plate上にスポッティングし、放置して乾燥させた。次いで試料を、質量分析法を用いて解析した。
【0479】
10.2 結果
質量分析法を用いてまた、CRCBT−02−001がPI16に結合することを確証した。CRCBT−02−001は、質量2926.31DaのPI16の配列からのペプチドの予測分子量に適合するイオン質量をもつペプチドを含むタンパク質に結合することが認められた。このペプチドはペプチド
80GENLFAITDEGMDVPLAMEEWHHER
105(配列番号27)の予測質量に対応した。その後MALDI−tof/tof−MS解析でペプチド配列を確かめた。
【0480】
実施例11: CRCBT−02−001と結合したエピトープのマッピング
11.1 手法の概略:
エピトープの特性解析
まず、エピトープが立体(不連続、3−D構造に依存して)であるか線形(順次的なアミノ酸)であるかを決定する。還元およびアルキル化(R&A)ステップを実施して、PI16組み換え抗原のジスルフィド結合構造を隠した。mAbが依然としてR&Aタンパク質に結合している場合、ジスルフィドは必要なく、エピトープがアミノ酸の線状伸長部内に大部分含まれている可能性が最も高い。
【0481】
エピトープがグリコシル化されているか決定するため、PI16を糖タンパク質からアスパラギン結合高マンノースならびにハイブリッドオリゴ糖および複合オリゴ糖を切断する酵素ペプチド−N4−アセチル−β−グルコサミニル(PNGase F)で処理した。mAbが脱グリコシル化されたPI16に結合する場合、エピトープはエピトープに結合する糖鎖構造に依らない。
【0482】
mAbのPI16への最小結合領域を決定する。
ファージディスプレイ法を用いて、ヒト PI16 ORFを断片化しバクテリオファージ表面でフラグメントを発現させることにより遺伝子フラグメントライブラリ構築した。目的は、パニングと呼ばれる選択処理を用いて、ライブラリから抗体または「エピトープ」としても特定された最小結合断片に結合する遺伝子の最小結合部分を選択することである。
【0483】
11.2 方法:
溶解性 Fc−融合としてのヒトPI16の細胞外ドメインのクローニング(PI16−Fc)
ヒトPI16のシグナルペプチド(アミノ酸28〜443)を差し引いた細胞外ドメインをコードするDNAを以下のプライマーを用いて増幅した:
PI16_pFUSE_EcoRVFnew:5’ttgatatcactcacagatgaggagaaacgtttgat3’(配列番号25)
PI16_pFUSE_BglII_R:5’aaagatctaccctgaaaatacaggttttcatgaccagggcccgagttcagccct3’(配列番号26)。
【0484】
5’EcoRV部位、3’tev−プロテアーゼ切断部位、およびBglII部位を添加した。次いで、増幅した配列をベクターpFUSE−hIgG1−Fc2(INVIVOGEN)中にクローニングし、結果としてN末端分泌ペプチド、PI16(アミノ酸28〜443)、tevプロテアーゼ切断部位およびC末端ヒトFc部分を含む構築物を得た。この構築物をPI16−Fcと称する。
【0485】
PI16−Fcの発現および精製
PI16−Fcをコードする作製構築物を、Lipofectamine2000(Invitrogen)を用いて、製造者の指示に従ってHEK293T細胞に形質移入した。形質移入して16時間後で、培養培地を、FCSを含まない不完全DMEMに変更し、細胞を6日間、37℃、5%CO
2で培養した。培養上清を0.22μmでの無菌濾過により回収した。上清を1/3体積の結合緩衝液(20mM リン酸ナトリウムpH7.0/150mM 塩化ナトリウム)で希釈し、200μlのProteinA Sepharose 6MBスラリ(GE Healthcare、蒸留水および結合緩衝液で前洗浄した)により、4℃で16時間インキュベートした。混合物を空カラム(Econo、1.5x15cm、BIO−RAD)に適用し、通過画分を廃棄した。3x15ml結合緩衝液で洗浄後、結合タンパク質の溶出を3x0.5ml 0.1M グリシン(pH2.2)を添加することにより実施した。25μlの1.5M Tris(pH11.0)/0.5ml溶出画分をすぐに添加し、試料のpHを平衡に保った。クマシー染色前のSDS−PAGE解析により、タンパク質バンドが、質量スペクトル解析により標的PI16−Fc構築物であることを確かめた全ての溶出画分中に存在することが明らかになった。CRCBT−02−001mAbは免疫検出試験にて得られた溶出画分のSDS−PAGEおよびウェスタン転写後に同じバンドを同様に認識した(データは非表示)。
【0486】
CRCBT−02−001の天然ならびに還元化およびアルキル化(R&A)PI16−Fcへの結合
精製構築物PI16−Fcを用いて、ウエスタンブロット法解析によりCRCBT−02−001との結合を解析した。CRCBT−02001エピトープの性質を明らかにするため、精製PI16−Fc試料を、セクション8で先に述べたように還元しアルキル化した。天然およびR&A PI16試料を4〜12%NuPAGEゲルを用いて分離し、クマシー brilliant blue染色で染色、またはPVDF膜上で電気ブロッティングした。膜を5%スキムミルクでブロッキングし、CRCBT−02−001を用いて抗体、続いてペルオキシダーゼ複合体化抗マウスまたは抗ヒト抗体およびECLを展開した。
【0487】
CRCBT−02−001の天然および脱グリコシル化されたPI16−Fcへの結合
精製構築物PI16−Fcをまた使用してCRCBT−02−001への結合が任意のN−グリコシル化残基に依存的であるかどうかを解析した。この疑問に取り組むため、精製PI16−Fc試料をPNGaseFにより以下のように処理した:8μg PI16−Fcを80ngのPNGaseF(SIGMA)と共に最終体積300μlのPBS中で35℃、3時間インキュベートした。同量のPI16−Fcを含有するが酵素は含まない対照試料を、同じ方法でインキュベートした。処理PNGaseFとPI16−Fcの未処理試料との両方を用いて、並行してELISAプレート(Nunc Maxisorp flat bottom 96ウェル)をコート(3μg/mlのタンパク質濃度でPBSにて4℃、16時間)した。その後に、コートしたウェルをPBSで2回洗浄し、5%ミルク粉末のPBS溶液にて2時間ブロッキングした(全ての洗浄およびブロッキングステップは、特に記載がない限り200μlの緩衝液体積を含んだ)。非コート対照ウェルを、これに応じてブロッキングした。PBSで2回洗浄後、CRCBT−02−001溶液をウェルにPBS中5μg/ml濃度で添加し、22℃、60分インキュベートした。非コート対照ウェルをCRCBT−02−001でこれに応じてインキュベートした。PBSで2回洗浄後、ウェルを抗マウス二次抗体(HRP複合体化抗体、PBS中1:2000)と共にインキュベートした。処理/未処理PI16−Fc PNGaseでコートした対照ウェルを、精製融合タンパク質のC末端Fc部分に対する抗Fc抗体(HRP複合体化抗体、PBS中1:4000で)でプローブ化した。22℃で1時間30分インキュベーションを行った後、ウェルをPBSで3回洗浄し、各ウェルを100μlの基質溶液(120mMクエン酸、1mM ABTS、0.03%過酸化水素)でプローブ化し、22℃、30分間インキュベートした。その後、プレートをプレートリーダーで414nmにて読み取った(4連で試料を処理)。
【0488】
バクテリオファージにディスプレイされたヒトPI16遺伝子フラグメントライブラリの構築およびパニング
本方法の変形(Coleyら,2001年)を用いてM13バクテリオファージ上で発現されるヒトPI16遺伝子フラグメントライブラリを調製した。ファージミドベクターpHENH6(Hoogenboomら,1991年)は、ファージ粒子表面上のpIIIタンパク質と周辺質標的配列およびその機能遺伝子III配列間のマルチクローニング部位とをコードするM13バクテリオファージ遺伝子IIIのコピーを含有する。dsDNAのマルチクローニング部位へのライゲーションの結果、遺伝子III産物に融合した挿入フラグメントが発現し、次いでM13バクテリオファージ表面上に融合タンパク質がディスプレイされる。
【0489】
ヒトPI16のコード領域に隣接するオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、鋳型としてPI16ORFDNAを用いたポリメラーゼ連鎖反応により細胞外のリーディングフレームを増幅した。その後PI16PCR産物をDNase Iで消化し、様々な時点の消化産物をアガロースゲル電気泳動で試験して最適反応条件を決定した。最も広いフラグメントサイズ分布を示す条件を選択し、5μgのDNAを20ngのDNAse Iを用いて反応緩衝液(50mM Tris、pH7.6、10mM MnCl
2、0.1mg/ml BSA)中にて2時間消化した。反応を、EDTAを50mMの最終濃度になるまで添加することにより終了させ、70℃、10分間で熱失活させた。消化したDNAを精製して末端をVent DNAポリメラーゼを用いて平滑末端化した。5.4μgのpHENH6ファージミドベクターをPstIで消化し、その後Vent DNAポリメラーゼを用いて平滑末端化した。ベクターの再環状化を避けるため、アルカリホスファターゼ(CIP)で処理した。次いで、ランダム消化物により産生した平滑末端化したPI16遺伝子フラグメントを、1:9の比率で挿入するベクターを用いて調製pHENH6ベクター中にライゲートした。ライゲート産物をWizard(登録商標)SV GelおよびPCR Clean−Up System(PROMEGA)を用いて精製し、電気穿孔法によりE.coli TG1コンピテント細胞(Stratagene)に形質転換した。
【0490】
形質転換細菌細胞を数回希釈して、遺伝子ライブラリサイズを約1×10
7個体クローンであると推定した。一方向性のクローニングのため、およそ6クローン中1つがフレーム内にあり(40%)、ワークライブラリのおよそのサイズは1x10
6であると推定された。ライブラリでのフラグメントサイズの多様性をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により試験し、個体クローンの配列決定を行った。配列の包含はランダムであると思われた。
【0491】
ライブラリグリセロールストックを200mlの2YT培地にて増幅し、実質的にColeyら,2001年に記載されるようにファージ粒子をヘルパーファージによりレスキューした。パニングの3つのラウンドを、イムノチューブ(NUNC maxisorp)を10μg/mlのmAb CRC−BT−02−001で一晩、4℃でコーティングすることにより実施した。チューブを、5%スキムミルク粉末を含むPBSでブロッキングし、ライブラリ(10
11ファージミド粒子)をmAbに結合させた。1時間後、チューブをPBSで洗浄し、mAbに結合していないファージを取り除き、付着ファージを0.1Mグリシン(pH2.2)で溶出し、1.5M TRIS緩衝液で中和させた。溶出ファージをTG1大腸菌細胞中で再感染させ、レスキューし、増幅し、パニングの次のラウンドのために実質的にColeyら,2001年に記載のようにPEG沈殿を行った。パニングの第2ラウンドのために、PBS含有0.1% TWEEN20(PBST)による2回の洗浄を行い、その後2回のPBSによる洗浄、およびラウンド3にて2回のPBSTによる洗浄を追加した。CRC−BT−02−001 mAbに結合するPI16のフラグメントの同一性を明らかにするため、ラウンド3からのクローンをDNA配列決定し、パニングのより初期のラウンドとクローンを比較した。
【0492】
遺伝子フラグメントの結合がファージ外で生じるかを決定するため、R3 4およびR3 7の重複領域からなるビオチン化ペプチドを合成した(GL Biochem、中国)(配列番号39)。ペプチドをPBS中で可溶化し、neutrAvidin(Pierce)で前コーティングしたマイクロ力価プレートと結合させた。ウェルを洗浄し、モノクローナル抗体CRCBT−02−001をペプチドおよび対照ペプチドとカップリングしたウェルに添加する。対照として、別のアイソタイプコントロール抗体(IC)をペプチドでコートしたウェルに添加した。抗マウスHRPを用いて結合抗体を検出し、TMB基質を用いてELISAを展開した。
【0493】
11.3 結果
PI16のCRCBT−02−001エピトープはジスルフィド結合の有無に依存する。
CRCBT−02−001 mAbは結合のためにPI16抗原内にジスルフィド結合(3D構造)の存在が必要であるかを評価するため、ヒトPI16−Fcの還元およびアルキル化を行った。
【0494】
図34A〜Cのデータは、CRCBT−02−001 mAbは天然PI16に結合するがR&A PI16には結合しないことを説明している。
図34A〜Cは組み換えタンパク質PI16−FcのFc部分が検出され得ることを確証し、これはPI16の完全性がR&A後に保持されていることを確証している。
図34A〜CはELISA、SDS PAGEゲル、およびウエスタンブロット法が、CRCBT−02−001はR&A PI16に結合しないことを確証する。
【0495】
CRCBT−02−001の結合は抗原のN−グリコシル化状態と無関係である
アスパラギン結合型糖鎖構造を除去するための、PI16−FcのPNGase Fによる脱グリコシル化は、CRCBT−02−001の結合への影響を測定可能に有していなかった。対照抗体(抗ヒトFc)は融合タンパク質のFc部分が認められる(
図35)。このことはCRCBT−02−001のエピトープが抗原のN−グリコシル化状態に依存していないことを示す。
【0496】
PNGaseF処理および未処理PI16−Fcの両方をSDS PAGEおよびWestern transferにより解析した。PNGaseF処理後のPI16−Fcに関し分子量の明確な変化が認められた(マイナス約5kDa)(データ非表示)。
【0497】
エピトープを狭小化したPI16に結合するCRCBT−02−001の特性解析
精製PI16−Fcは試料の熱処理後に区別可能な分解産物を示していた(
図36)。SDS−PAGEを用いて解析しCRCBT−02−001で免疫修飾される際、PI16−Fcのフラグメントは、約35kDaの分子量の抗体を認めた。使用したタンパク質構築物でのPI16の細胞外ドメインに融合されるC末端Fcタグに対する対照抗体抗Fcは、記載した分解産物といかなる結合も示さなかった(データは非表示)。
【0498】
試料をSDS−PAGEに処し、クマシー染色後、対応するタンパク質バンドをゲルから切り取った。トリプシンを含むゲル断片のゲル中消化後、抽出したトリプシンペプチドを解析し、PI16のN末端CAPドメインに属するペプチドを、MALDI−tof/tof−MS法を用いて配列決定した:PI16 アミノ酸59〜68(配列:WDEELAAFAK(配列番号32)。
【0499】
これらの結果は、PI16のN末端CAPドメインがmAb CRCBT−02−001の実際の結合部位において関与していることを示す。
【0500】
ランダムなPI16フラグメントを発現するファージライブラリの産生
PI16(アミノ酸28〜443)細胞外ドメインのコード領域を増幅し、DNase Iで消化した。1200から100bp間のフラグメントをもたらす条件を用いてファージミドベクターpHENH6中にクローン化したPI16遺伝子フラグメント(
図37)の混合物を産生し、遺伝子フラグメントライブラリを作製した。無作為に選択したクローンのいくつかは、遺伝子フラグメントの広範囲の分布を示した(
図37)。
【0501】
mAb CRC−BT−02−001でのPI16遺伝子フラグメントライブラリのパニング
3ラウンドのパニングを実施してmAb CRC−BT−02−001に結合したPI16の遺伝子フラグメントを選択した。PI16遺伝子フラグメントクローンのmAbへの結合性をELISAにより解析し、その結果を
図38Aに示す。ラウンド3(R3 4、7、10、12&15)で選択された、抗PI16 mAbに強力に結合する5つのクローンはELISA高シグナルを示し、一方でラウンド2およびラウンド0での非クローンはmAbと結合した。これらの配列は、フレーム外、
図40で示される配列データの概略外であり得る。
図38Bに示す9E10または抗mycシグナルは、mycタグが遺伝子フラグメントのC末端(遺伝子IIIのN末端)に存在するため、ファージの相対量を反映している。抗myc抗体への高い結合シグナルが、ファージ表面で良好に発現する指標である(
図38B)。フラグメントのなかには、陽性抗Mycシグナルに示されるファージ上で発現するが抗PI16 mAbには結合しないものもあった。
【0502】
個々のクローンをラウンド3にて選択し、PCRを行い、遺伝子フラグメントを配列決定した。パニングしていないライブラリ(ラウンド0)およびラウンド1において、フラグメントサイズの広範囲の広がりが存在した一方でラウンド3ではフラグメントの多くがごく小さいサイズであった(
図39)。ラウンド3選択PI16遺伝子フラグメントの配列同一性を
図40に示す。これらのフラグメントはCRCBT−01−001の最小結合領域を示すPI16配列に重複し、このことは、この領域が、抗体が結合するPI16のエピトープを形成することを示す。
【0503】
遺伝子フラグメントライブラリからのCRCBT−02−001結合性クローンの重複配列を
図40Cの下線部に示す。
【0504】
上記提示したデータにより、CRCBT−02−001に関するエピトープは分子内ジスルフィド結合の有無に依存的であるが、N結合炭水化物に依存的でないことが示される。本データは、CRCBT−02−001に関するエピトープはN末端CAPドメインとファージディスプレイにより同定された短配列、RWDEELAAFAKAYARQ(配列番号38)に配置されている(いずれかがエピトープを含むまたは含有する)ことを示唆する。
【0505】
ファージディスプレイにより同定された最小結合領域はシステインまたはジスルフィド結合を含まない。エピトープはファージ外のジスルフィド結合に依存し得る可能性がある。しかしペプチドLHM
RWDEELAAFFAKAYARQCVWGHNKER−ビオチン(配列番号39)が合成され、mAb CRCBT−02−001に結合することがELISAにより示された(
図41)。このペプチドは同定された最小結合領域含む(下線)。このことは、mAb CRCBT−02−001が単離の際にPI16のこの領域に結合するが、全PI16抗原中に存在する場合には同族エピトープと反応するために抗原中に存在するさらなる構成成分を必要とすることを実証する。
【0506】
発明者らは、CRCBT−02−001のエピトープが一次配列RWDEELAAFAKAYARQ内に含まれ、また全PI16抗原中に存在する場合にジスルフィド結合が完全であることによりmAbに接触容易性をもたらすことを結論付けている。
【0507】
実施例12: CRCBT−02−001の親和性
2つの方法を比較してCRCBT−02−001の親和性を測定した。解析を、BIO−RAD Proteon XPR36(商標)タンパク質相互作用アレイシステムを用いて、表面プラズモン共鳴に基づき実施した:
方法1:チップに直接抗原PI16−Fcをカップリングして分析物CRCBT−02−001Fabの上に流す方法。
方法2:抗PI16Mabを捕捉し、分析物としてのPI16−Fc上に流す抗マウス捕捉方法。
【0508】
12.1 方法
方法1:センサーチップにカップリングしたPI16−FcとCRCBT−02−001(Fab)との相互作用
ProteOnセンサーチップ(GLC)を、0.2M N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および0.05M スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド(スルホ−NHS)の混合物をチップ(150μl、30μl/分で5分間)に流すことにより活性化した。組み換えPI16−Fcを、150μlの50μg/mL溶液を含む10mM 酢酸緩衝液(pH4.5)を30μl/分で流すことにより、垂直方向にチップにカップリングした。次いで、残余活性化カルボキシル基を、150μLの1M エタノールアミン−HCl(pH8.5)を30μl/分で流すことにより、非活性化した。PBS Tween20(0.005%)に希釈した抗PI16 Fabフラグメントを、次の濃度:50nM、25nM、12.5nM、6.25nMおよび3.125nMでの5つのチャネルで、リガンドに水平方向に通過させた(100μl、100μl/分)接触時間60秒および解離時間600秒)。PBS Tween20(0.005%)のみを残余チャネルに通過させた。結合しているセンサグラムを回収して、ラングミュア動態モデルを用いたProteOn Manager 2.1 XPR36ソフトウェアで解析し、データを適合し親和性定数(KD)を測定した。
【0509】
方法2:CRCBT−02−001Mabと抗マウス捕捉試薬を用いたPI16−Fcとの相互作用
proteOnセンサーチップ(GLM)を、0.2M EDCおよび0.05M sulpho−NHSの混合物をチップ(150μl、30μl/分で5分間)に流すことにより活性化した。次いで、ウサギ抗マウスIgG全分子(Sigma M−7023)を、150μlの50μg/mL溶液を含む10mM酢酸緩衝液(pH4.5)を30μl/分で流すことにより、チップに垂直方向にカップリングした。次いで、残余カップリング部位を、150μlの1M エタノールアミン−HCl(pH8.5)を30μl/分で流すことにより、非活性化した。次いで、マウスモノクローナル抗PI16 IgGを流して、150μLの100μg/mL IgG、25μl/分でセンサーチップのシングルチャンネル上を平行方向に流すことによりカップリングした抗マウスIgG抗体により捕捉した。次いで、PBS Tween20(0.005%)に希釈した組み換えPI16−Fcを、次の濃度:50nM、25nM、12.5nM、6.25nMおよび3.125nMでの5つのチャネルで、GLMセンサーチップに垂直方向に通過させた(150μl、25μl/分、接触時間240秒および解離時間1200秒)。PBS Tween20(0.005%)のみを残余チャネルに通過させて、参照用とした。結合しているセンサグラムを回収して、ラングミュア動態モデルを用いたProteOn Manager 2.1XPR36ソフトウェアで解析し、データを適合し親和性定数(KD)を測定した。
【0510】
12.2 結果
方法1
このカップリング方法を、PI16−FcのGLCチップへのカップリングを最適化するための様々なpHを用いて実施した。最適カップリングpHは4.5であった。結合曲線および解離曲線ならびに親和性測定を、
図42および表8に示すPI16の3つの希釈により実施した。データは、全体的適合を用いたラングミュア動態モデルに良好に適合した(曲線のすべてが同時に適合した)。
【表9】
【0511】
方法2
公開された方法(Nahsholら,2008年)を用いて、PI16 mabの動態を抗マウス捕捉により測定した。これは比較的穏やかな方法、カップリング方法であり、
結合曲線および解離曲線ならびに親和性測定を、PI16−Fcの4種類の希釈で実施した(
図43および表9)。データは、全体的適合を用いたラングミュア動態モデルに良好に適合した(曲線のすべてが同時に適合した)。
【表10】
【0512】
CRCBT−02−001のPI16−fcへの親和性は方法2を用いて測定された。両方法を用いた親和性(KD)は同程度の1.25〜2.56nMである。
【0513】
実施例13: GVHDの治療
骨髄移植を必要とする対象は放射線治療される。好適な時間に続き、対象は骨髄移植または造血幹細胞の移植を受ける。検査患者では、移植片はさらに実施例2および3に記載のように単離したTreg細胞を含む。次いで、生存率を測定し、Treg細胞を受ける対象の生存率が伸びている場合は細胞が機能的であることを示す。
【0514】
実施例14:自己免疫疾患の治療
自己免疫疾患に罹患する対象に、実施例2および3に記載のように単離した精製Treg細胞または担体単独を投与する。自己抗体、サイトカインのレベルおよび自己免疫性症状を測定する。症状の緩和および/または炎症性サイトカインの血清レベルの減少の検出が、単離Treg細胞が自己免疫疾患を治療または予防し得ることが示す。
【0515】
例示的な自己免疫疾患は、関節リュウマチである。この疾患の場合、対象に実施例2および3に記載のように単離した精製Treg細胞または担体単独を投与する。抗コラーゲン抗体レベル、サイトカインおよび/または関節炎の症状を測定する。関節炎症状の緩和ならびに/またはTNF−alphaおよび/もしくはIL−6などのサイトカインの血清レベルの減少の検出は、単離Treg細胞が関節リュウマチを治療または予防し得ることが示す。
【0516】
実施例15:糖尿病治療
前糖尿病性の表現型に罹患する対象(症候性1型得糖尿病、および好ましくは自己反応性Bおよび/またはT細胞で検出されるレベルではないが例えば耐糖能異常)を、実施例2および3に記載のように単離された精製Treg細胞または担体単独で処理する。処理後、対象を糖尿病の症状、例えば血糖値の増加、インスリン反応異常、耐糖能異常、または自己抗体レベルなどについて評価する。糖尿病の1以上の症状の発症の防止または遅延は、単離Treg細胞が自己免疫性糖尿病を治療し得ることの指標となる。
【0517】
実施例16 CRCBT−02−001により分泌される抗体の可変領域のクローニングおよび配列決定
メッセンジャーRNAを、CRCBT−02−001ハイブリドーマ細胞から、産生およびオリゴ−dTプライマーを用いて逆転写することにより調製しcDNAを作製する。別個のPCR反応のいくつかを、リーダー配列、可変領域および下流配列のいくつかに結合し、これらの配列をコードするcDNAの増幅を容易にするプライマーにより実施する。PCR単位複製配列をアガロースゲル上に分離する。単位複製配列をゲルから単離し、クローニングし、配列決定する。
【0518】
実施例17 ―CRCBT−02−001により分泌される抗体の可変領域を含むキメラ抗体の作製
CRCBT−02−001により分泌される抗体の可変領域を、ヒトIgG1 Fc領域と融合することにより全抗体に変換する。可変領域を実施例1または16に記載のクローニングベクターよりPCR増幅し、抗体配列の直前のリーダー配列により抗体発現ベクター内にインフレームでクローン化する。ベクターでは、軽鎖および重鎖に関する全定常領域のゲノムDNA配列がすでにベクターにて遺伝子操作されている。発現はヒトサイトメガロウイルス(CMV)早期プロモーター、次いでSV40ポリアデニル化信号により促進される。可変領域のインフレーム融合により、全抗体の適切な発現が可能となる。設計により、マウス軽鎖および重鎖からのリーダー配列を、抗体オープンリーディングフレームの直前に含む。
【0519】
組み合わせた軽鎖および重鎖プラスミドDNAまたは1:1の混合比の対応する軽鎖および重鎖プラスミドDNAの混合物のいずれかをリポフェクションによりCHO細胞中に形質移入する。培養培地を採取して、ろ過し、低速Millipore Centricon(登録商標)遠心分離濃縮器を用いて濃縮する。
【0520】
実施例18: CRCBT−02−001により分泌される抗体のヒト化
CRCBT−02−001により分泌される抗体のヒト化形態を、基本的に国際公開第92/22018号に記載のように作製する。簡単には、CRCBT−02−001により分泌される抗体と高い相同性を持つ配列を有するPI16ヒト抗体の結合親和性を保持するヒト化抗体を作製するために選択され、アクセプター軽鎖および重鎖ヒトフレームワークの両方を得る。
【0521】
本明細書で決定される配列を用いて、コンピュータープログラムABMODおよびENCAD(Levitt、1983年およびZilberら,1990年)にて各マウス抗体の可変領域モデルを構築する。このモデルを使用して、アミノ酸と潜在的に相互作用するほどCDRに近い各フレームワークでのアミノ酸を決定する。
【0522】
各ヒト化抗体を設計する際、各位置にて、アミノ酸は、以下の1つ以上のカテゴリ(1)〜(4)に該当する場合を除いては、ヒトアクセプター配列でのアミノ酸と同様であるものを選択した:
カテゴリ1:アミノ酸位置がKabatらにより特定されたCDR内にある;
カテゴリ2:ヒトアクセプター免疫グロブリンのフレームワーク内でのアミノ酸が異常な場合(すなわち「まれ」であり、本明細書に使用される場合、アミノ酸がその位置で、代表的なデーターバンクでのヒト重鎖(各軽鎖)V領域配列の約20%未満であるが通常約10%未満で生じることを示す)、またその位置でのドナーのアミノ酸がヒト配列に典型的なものである場合(すなわち本明細書に使用される場合「一般的」はアミノ酸が代表的なデーターバンクでの配列の約25%超であるか通常約50%超で生じることを示す)、アクセプターよりむしろドナーアミノ酸が選択され得る;
カテゴリ3:ヒト化免疫グロブリン鎖の一次配列での3つのCDRのうち1以上とごく近接する位置において、アクセプターアミノ酸よりむしろドナーアミノ酸が選択され得る。
カテゴリ4:本来のドナー抗体の典型である3次元モデルがCDR外の特定のアミノ酸がCDRに近接し、またCDRでのアミノ酸と、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用などにより良い確率の相互作用をもつ。これらのアミノ酸位置で、アクセプター免疫グロブリンアミノ酸よりむしろドナー免疫グロブリンアミノ酸が選択され得る。
【0523】
上記カテゴリのいずれかに該当するマウスドナー配列でのアミノ酸を用いる。
【0524】
ヒト化抗体をコードする遺伝子の構築のために、ヒト化重鎖および軽鎖のタンパク質配列をコードするヌクレオチド配列を選択し、典型的にはマウス抗体鎖からのシグナルペプチドを含み、一般にマウス配列に見られるコドンを利用する。数種類の縮重コドンを変更して反応部位を作製するか、好ましくない部分を取り除く。ヌクレオチド配列はまた、免疫グロブリン遺伝子の典型的なものとしてスプライスドナーシグナルを含んでいた。重複する合成オリゴヌクレオチドから構築された各遺伝子。各可変ドメイン遺伝子について、交互ストランド上の2対の重複オリゴヌクレオチドは、全コード配列ならびにシグナルペプチドおよびそのスプライスドナーシグナルを包含するように合成される。二重鎖DNAフラグメントはKlenowまたはTaqポリメラーゼを用いてまたはオリゴヌクレオチドの各対からの配列を用いて合成され、制限酵素で消化され、pUC18ベクターにライゲートされ、また配列決定する。次いで、各々正確な2つのフラグメント半配列を発現ベクター中に適する方向でライゲートし、完全重鎖および軽鎖遺伝子を作製する。
【0525】
重鎖および軽鎖プラスミドを、リポフェクションによりCHO細胞内に形質移入させる。
【0526】
培養上清でのヒト抗体の産生を、捕捉試薬としての組み換えPI16または実施例1もしくは2に記載のFACSを用いてELISAにより試験することにより、クローンをスクリーニングし、抗体を最適に産生されたクローンから精製する。Protein Aカラムに組織培養上清を通すことにより抗体を精製する。結合抗体を酸性溶出緩衝液により溶出し、該緩衝液はPD10カラム(Pharmacia)を通過させることによりPBSに変換する。
【0527】
次いで、対応する抗原を発現する細胞型へのヒト化抗体の結合性を、実施例3に記載のように検査する。
【0528】
実施例19: ヒト化抗体の親和性成熟
実施例18に記載のヒト化抗体の可変重鎖および可変軽鎖をコードするDNAを、FabファージディスプレイベクターまたはscFvファージディスプレイベクターにてクローン化する。次いで、クローンDNAを、可変重鎖および軽鎖CDR3領域(各ライブラリは>10
8機能多様性をもつ)にて無作為に突然変異する。ついで結果としてできた変異株を、標準的なファージディスプレイパニングプロトコル(例えばファージディスプレイ法:A Laboratory Manual, 2001年, Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照)を用いて、PI16(実施例2に記載)を発現する細胞に対してパニングする。パニングの各後続周期(続くラウンド)において標的細胞濃度を低下させることによりパニングのストリンジェンシーを効果的に上昇させ、これにより、各後続周期にてより増大した高い親和性ファージを濃縮する。ファージELISAを一次試験として用いて、ファージ結合組み換えFabsまたはscFvのPI16発現細胞認識能力を測定する。
【0529】
PI16発現細胞と結合することができるフラグメントを、発現、産生および特性解析のため、ヒトサブクラスIgG1の完全長抗体へ変換する。
【0530】
実施例20: 競合的結合試験
CRCBT−02−001により産生された抗体を蛍光標識で標識化し、キメラ抗体(実施例17)、ヒト化抗体(実施例18)、親和性成熟抗体(実施例19)、またはナイーブ完全ヒトファージディスプレイライブラリディスプレイscFvと1:1の割合で混合した。対照のため、標識CRCBT−02−001を単独で使用した。
【0531】
PI16を安定的に発現する(実施例2)NIH3T3細胞のほぼ同等量が、94ウェルプレートで培養される。細胞は、抗体の存在下で、結合する抗体ために十分な時間培養される。上清は単離され、細胞は洗浄される。細胞に結合したおよび/または上清での蛍光レベルが次いで測定される。
【0532】
細胞に結合した蛍光レベルが減少する抗体および/または上清で蛍光性が増大する抗体は、CRCBT−02−001により分泌される抗体の結合を競合的に阻害すると考えられる。
【0533】
任意の競合的ファージディスプレイscFvはヒトアイソタイプIgG1完全抗体中にて遺伝子操作される。
【0534】
実施例21:免疫応答の誘発
対象に腫瘍細胞株、例えばNeuro−2AまたはCT26結腸直腸癌細胞を投与する。細胞投与に続いてまたは投与時点で、対象に実施例20で同定された競合的抗体を投与する。あるいは、対象を、Treg細胞を捕捉するCRCBT−02−001により分泌される抗体を用いて白血球除去療法により治療する。対象のサブセットにもまた死滅癌細胞を投与する。腫瘍細胞に対する免疫応答をまたELISAおよび/またはELISPOTを用いて測定する。抗体単独または抗体および細胞のワクチンで治療した対象と対比した、抗体治療なしで腫瘍細胞を投与したマウスでの生存率、腫瘍の存在、腫瘍サイズおよび/または腫瘍に対する免疫応答の程度を測定する。細胞および抗体を投与された、または抗体単独もしくは抗体/白血球除去療法に対比して白血球除去療法を受けたマウスでの、生存率または免疫応答のさらなる増加および/または腫瘍の存在またはサイズの減少により、治療がワクチン治療に対するより強力な応答を可能にすることを示す。
【0535】
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