(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光学組立品上に搭載されたカメラ、トレーサビーム、前記工作物上の複数の登録マークを用いて、前記光学組立品の前記位置を基準とした前記ターゲット面上の前記プロセス領域のジオメトリを較正する工程と、
前記ジオメトリを、前記パターン内のパルス毎に方向、分散、偏光、回転、アスペクト比に関する較正されたパラメータに変換する工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
金属形成及びその表面特性を改良するために機械的衝撃を与えるという方法が従来起用されてきた。現在の産業の実際場面においては、ほとんどの場合、金属表面のピーニング処理は高速ショットを使用して行われている。この処理は表面特性を改良し、多くの用途に対して特に重要なことには、金属疲労欠陥及び腐食欠陥に対する耐性に一部大幅な改善が見られたことがある。航空宇宙産業や自動車産業において、多岐に渡る工作物に対して、このショット・ピーニング法が用いられてきた。しかしながら、多くの用途において、このショット・ピーニング法では、十分に強い又は深い処理が実現できない、或いは、強度又は深さの十分な制御が提供できない、或いは、表面仕上げへの悪影響があるために使用できないということがあった。
【0003】
レーザの発明により、ピーニングに必要とされる強い衝撃が、レーザ駆動の高密度プラズマという手法により達成されうることが急速に認識されるようになった。B.P.フェアランド他、「7075アルミニウムにおけるレーザ・ショットによるミクロ組織及びメカニカル特性の変化」(Journal of Applied Physics,Vol.43,No.9, 3893頁,1972年9月)。典型的には、高エネルギー密度(約200J/cm
2)で短いパルス長(10〜30ナノ秒)のレーザにより10kBから30kBのプラズマ衝撃が金属表面で生成される。金属表面のメタルテープ、黒塗装、又は、他の吸収材の薄膜層が、金属の磨耗を防ぐ衝撃吸収体として使用される場合もある。例えば、水のような、封止或いは充填物質が、強化された強い衝撃を提供して表面層をカバーする。これらの衝撃は、通常のショット・ピーニング法より深く強い圧縮応力を与えることが示されている。試験において、この処理は、金属疲労及び腐食欠陥に対して工作物を強化する点で優越していることが示されている。レーザピーニングは表面形成及び表面テクスチャリングにも用いられる。
【0004】
この目的で利用されてきたあるレーザシステムについては、本願出願人の先願米国特許第5,239,408号「高出力・高品質ビーム再生増幅器」に開示されている。該特許に記載のレーザシステムは、誘導ブリリュアン散乱(SBS)位相共役器/ミラーシステムに基づく波面補償構成を用いて、10〜30ナノ秒以下オーダーのパルス幅のパルス当り20ジュールより大きな出力パルスを発生可能なマスタオシレータ/パワーアンプ(MOPA)構成の高出力アンプからなる。
【0005】
現在商用化されているほとんどの高エネルギーレーザピーニングプロセスでは、レーザビームは固定された場所に保持されている。望ましい入射角、スポットサイズ、及び方向を維持しながら、処理対象の工作物をレーザビーム線に応じて移動させ、照射されたスポットのパターンを形成する。このため、工作物を掴み、プログラムされた複数の位置へ移動させるための自動装置、及び、工作物の保持固定具が必要となる。この方法はコストがかかるだけでなく、工作物の固有性が高くなり、新しい工作物のためのプロセスの開発に相当な工学技術が必要となる。また、工作物のサイズが、利用できる自動化装置の持ち上げ能力、及び、取り扱い能力によって限定される。工作物の構成が、自動化装置の取り扱い能力を上回る(例えば、1m超、かつ/又は、100kg超)場合は、従来の移動方法ではレーザピーニングができない。
【0006】
フレキシブルビーム供給システムでは、光ファイバーが使用されることが多い。しかし、グラスファイバーの透過性が通常程度に高い波長においても、レーザピーニングで使用される非常に高いパルスエネルギーと高ピーク出力がファイバーにダメージを与え、ファイバーの効果を損ねる可能性がある。例えば、25Jのパルスは、1mmのマルチモードのファイバーを介して供給することのできる最大パルスエネルギー(250mJ)の100倍である。典型的なレーザピーニング用途で用いられるような単一周波数ビームに対して、グラスファイバーの損傷閾値はかなり低い。Dane他による「空気中を通る可変光学経路区間を備えたアクティブビーム供給システム」と題する米国特許第7,718,921号(2006/0102602A1として2006年5月18日公開)は、 レーザピーニングに必要なレーザパルスが表面に正確に供給される間に対象物を静止させることが可能な、工業環境でのレーザピーニングに利用されるフレキシブルビーム供給システムについて述べている。
【0007】
該特許のシステムは、ジンバルマウントの伝送ミラーを用いて、出力ビームを自由空間経路を経てレーザ供給ツールに向ける。レーザ供給ツールは、産業ロボットによって支持された光学組立品 (ここでは「スティンガー」と称する)を備える。スティンガーの受光ジンバルが、スティンガーの光軸に対してレーザビームのアライメントを維持することで、プロセスロボットがスティンガーを工作物の表面全体に向けてスキャンし、レーザピーニングスポットの明確に定義されたパターンを生成する。これは既に稼働中のシステムとして成功しており、商用航空用のエンジンのファンの羽根や、発電用の蒸気タービンの羽根、航空機用の大型のブリスク等の部品の加工に用いられている。しかしながら、その設計には多くの不都合な点があり、例えば次のようなものが挙げられる。
1.スティンガーのポインティング精度が、ロボット軸、特に、ロボットの手首の軸の絶対精度に依存する。これにより、しばしば、スポットパターンの配置に誤差が生じ、複数回の繰り返しが必要な工程において手動で訂正を行わなければならず、これに何時間、何日、時には何週間もかかることがある。しかし、幸い、一度パターンが確立されるとロボットの動きは非常に安定するため、工作物においてこのアライメント作業をそう長く繰り返す必要はなく、ロボットは固定される。
2.ロボットは、工作物上の新たなスポットに向けるためにレーザパルス毎にスティンガーを再配置しなければならないため、ロボットの動作速度によってパルス繰り返し周波数(Pulse Repetition Frequency: PRF)が制限される。スティンガー位置毎に1以上のパルスを印加するという案が該特許の第11欄48行目〜第12欄12行目に述べられている。しかしながら、そこで述べられている方法の有効性は、利用可能なスキャン範囲が小さいために限定され、表面が複雑な場合には効果的でない。
3.軸外のピーニング時にスポットの伸長を訂正するためのアスペクト比の制御が行われない。このことは、ビームの入射が法線でない場合、スポットの形状が、(表面法線から測定される)70度の入射角の近くで3:1という高いアスペクト比を有する(正方形でない)長方形となることを意味する。小さなスポット領域については、狭い足跡型のビームとなる。スポットの大きさが大きいほど、金属で生じる衝撃波に対してより平坦な波面が生成されるため、ピーニングの効率は高くなる。そのため、足跡型の狭いビームはピーニングの効率を低下させる。
4.貴重な工作物に近接してロボットが活発に動作すると、ロボットが衝突したり、顧客部分が損傷する可能性が高くなる。
5.スティンガーの最後の光学装置と処理面との間のスタンドオフ距離は、法線に近い入射で工作物の平行でない異なる面に達するために必要なロボットの動きの量を最小にするため、できる限り短く保つ必要がある。
6.スティンガーに内蔵されるエネルギー及びビームプロファイル診断装置の較正は、レーザ出力とスティンガー間のビーム供給経路におけるビームの偏光解消に対して影響を受けやすい。
7.偏光制御が制限される。該特許では、ビームの偏光は、スティンガーの方向に対して固定されている。該特許のシステムでは、空気圧式の台によって出力ビームの内外に移動が可能な90度の合成石英回転子が用いられているが、それでも工作物に対して任意の角度に偏光を設定することはできない。このことは、軸外のピーニングでは、ピーニングの衝撃波に変換されるはずのレーザ光が充填用の水流面で反射し、出力の重大な損失となるため、特に重要である。
8.スティンガー上の診断ビームスプリッタは、弱い光学ゴーストの発生に影響を受け易く、この弱い光学ゴーストはアライメントカメラとエネルギー測定器にスプリアス信号を起こす虞がある。
9.工業用のスティンガーは、堅固なアルミニウム製の回路部品板と、標準的な既成のマウントで保持された光学部品を備えた従来の機械設計を用いる。このため、スティンガーを保持する加工ロボットの推奨される積載量を超えた、重い組立部品となる。
10.スティンガーの光学筐体が密封されていないと、光学面が頻繁に汚染されることになる。これにより、光学面上の塵や破片は重大なレーザの損傷につながり得るため、光学部品の定期的な検査、清掃の必要性が増加する。
【0008】
該特許のシステムの一適用例では、比較的平坦なパネルをレーザピーニングするために用いられている。この平坦なパネルシステムは、スティンガーの1つの受光ジンバル位置から48×48in
2までのプロセス領域全体に対してレーザピーニングパルスをスキャンする固定された加工セルである。この平坦なパネルシステムは、スポットを処理面全体にわたって動かすために、電動式ジンバルマウントに搭載されたスキャンミラーを用いる。ジンバルの位置を1つにすると、ビームは一辺が4フィートの領域をスキャンするに際し、プロセス領域における入射角の範囲のために問題が生じる。したがって、パネル形成工程では、正確に配置され、回転され、成形され、サイズが決められたスポットを、パネル上の位置に関わらず、いかに維持するかが克服すべき課題となる。
【0009】
レーザビームは工作物の表面に到達する途中で収束するため、ビームの指す位置がパネルの中心から離れるにつれて伝播距離が延びるとレーザビームは収縮を起こす。入射角が法線でない場合、ビームが入射面に沿って表面上で伸長される。最終的に、スキャンジンバル上の入射面が正方形のビームに対して垂直でないと、工作物の表面上のスポットが回転してしまう。
【0010】
こうした歪曲収差を解決するために、フラットパネルシステムは、ビームの分散角を調節するためにズーム望遠鏡、及び、アスペクト比を事前に調節するためにチルト式望遠鏡レンズを使用する。フィールド回転子は、ターゲット上のビームプロファイルを回転させて、面外(out-of-plane)ジンバルミラー反射を補償するために使用される。これにより、
図1A〜1Eにおいて、プロセスフィールドの例に関して示されているように、正方形のスポットの均一なパターンが、工作物上に正確に配置されることが可能となる。
【0011】
図1(a)は、フィールド内の異なる位置に対応するスポット位置A〜Iを示しており、Eは、法線入射角で、正方形の中心スポットである。収束するレーザビームは、工作物の表面から66インチの固定されたジンバル位置から、48インチ平方の処理フィールド全体に向けられる。角のスポットA,C,I,Gは、ジンバルから74.2インチの位置にある。また、各辺のスポットB,F,H,Dは工作物の表面から70.2インチの位置にある。補正がない場合、伝播距離が長く、法線でない入射角が中心から離れるに伴って、
図1(b)に示されたスポット形状及びスポットサイズを生むと思われる。ジンバルよりも前にフィールド回転子を用いてスポットを回転させることで、
図1(c)に示す対称なパターンが生まれる。ズーム望遠鏡を用いて出力の分散を調節することによって、スポットの面積を、
図1(d)に示すような均一な面積にすることができる。最後に、ズームレンズ素子を傾けることによって、
図1(e)に示すようにスポットの均一なパターンが生成されるように、相対的な水平及び垂直方向の分散が制御される。このフラットパネルシステムは、前記パターンのスポットに関してパネル上の入射角の範囲が比較的小さく、大型の基本的に平坦なプロセス領域全体にパルスを供給する場合に適している。しかしながら、このフラットパネルシステムは、産業用のレーザピーニングシステムで見られる、複雑な表面形状で利用可能な多用途のシステムの実現に関して、上記で概略を述べた問題に対処していない。
【0012】
従って、航空機の修理工場での航空機や航空機の部品、パイプ作業場での巨大な石油掘削部品のように、巨大な工作物、及び、顧客の設備の本来の位置にある工作物の取り扱いを可能とする十分な柔軟性を備えたシステム、及び、上記の問題の1又は複数を克服するシステムを提供することが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から
図16を夫々参照しつつ、本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0023】
レーザピーニング時のロボットの動きを最小限に抑える移動式ビーム供給システムについて述べる。この移動式ビームシステムは、これらに限定はされないが、レーザコーティング除去、レーザ熱処理、及び、レーザピーニングを含む広範囲の製造プロセスにおいて使用可能なツールを提供する。
【0024】
ここで述べる実施形態に代表されるような移動式ビーム供給システムを用いることによって、以下のことが可能となる。単一のスティンガー/ロボット位置から、複合表面を有する工作物全体に対して、レーザピーニングパターンのかなりの部分を適用することができる。正方形(或いは低アスペクト比の長方形)の衝撃領域を、公知の複雑な形状の処理面上のプロセス領域に配置するために、レーザスポットサイズ、スポット回転、アスペクト比、及び、分散を訂正する。レーザスポット毎のロボットの動きを、高速な光学調節及びジンバルミラービームスキャンで置き換えることによって、レーザ繰り返し周波数を増加させることができる。実際のレーザビーム(トレーサ)を用いる正確なパターン登録方法を組み込むことができ、数分で完了させることができる。固定された位置から(或いは単純なリニアステージ上で)スティンガーを操作することができ、場合によってはロボットの操縦者が不要になる。工作物での偏光制御が連続的に調節可能となる。スティンガー診断において、偏光解消の訂正を行うことができ、エネルギー調整及び近視野での結像を改善できる。トレーサビーム検知システム及びエネルギーメータシステムにおける光学ゴーストの数を減らすことができる。スティンガー組立部品の全体の重量を減らすことができ、ビーム整形光学部品を外部の汚染に対して密封することができる。
【0025】
図2は、レーザピーニングシステムの概略図である。この図は、実際のシステムの比例尺の設計図を表しているのではなく、基本的な部品とそれらの配置を図解している。
図2のシステムは、参照によってここに援用される米国特許第7,718,921号に記載されているようなマスタオスシレータ/パワーアンプ構成、或いは、その他のレーザエネルギーソース内にレーザ100を備え、好ましいシステムにおいて偏光した単一の周波数の出力パルスを提供する。 レーザ100は、安定したレーザテーブル101上に設置されている。レーザエネルギーソースからの出力は、入力光学装置102に入力される。入力光学装置102は、ビームがリレー望遠鏡103を経て、伝送ミラージンバル105上に搭載された伝送ミラー105Aに供給されるようビームを調整するための部品を備える。他の光学伝送部品も同様に用いることができる。正確に制御された伝送ミラー105Aは、同様に正確な制御下で操作されたスティンガー上の受光ミラージンバル106に搭載された受光ミラー106A(或いは他の光学装置)に向けてビームを反射する。受光ミラージンバル106上の受光ミラー106Aは、ロボット搭載スティンガー107の一部であり、同様にロボット108によって位置決めされる。ロボット108は、例えば、7軸の正確な位置制御を有する精密ロボットとすることができる。スティンガー107は、ビーム整形及び診断部品を封止された筐体内に備える。ビームはこの筺体を通過してスキャナに向けられ、この例では、スティンガー上の正確に制御されたジンバル117に搭載された、ビームを工作物109の表面上のターゲット位置に向けるための(ミラー等の)スキャナ光学装置117Aによって実現される。本実施形態では、工作物109は、航空機の翼或いは他の大型の機械等の大型の製品の部分であり、複合表面を備えるプロセス領域を含む。ロボット108は、例えば、工作物の操作範囲内に配置されるように、空気ベアリングを備えた可搬パレット上に搭載される。或いは、工作物は、回転可能部品ホルダー上に搭載されるか、或いは、加工のためにロボット108の付近に配置される。ここで述べる各実施形態のスティンガー107は、スティンガー107は固定されたまま、位置の配列に対してレーザパルスを向けるのを補助するラスタ光学装置を備える。 レーザパルスをターゲットに当てる際のスティンガーの位置決めは、実現可能な出力方向の範囲次第で容易になる。設定によっては、ここで述べる構成のスティンガーは、所定の領域におけるスティンガー107の動きをサポートするため、7軸の運動を可能とする複雑なロボットではなく、垂直運動機構有り又は無しのX−Yステージ上に搭載することができる。特定の設定に合わせて、レーザシステム伝送光学装置に対する正確な配置座標を維持するためのスティンガーのマウントとして機能する、他のスティンガー配置システムを配置することもできる。
【0026】
水供給ロボット111も同様に工作物109付近に配置され、レーザピーニング用途で充填する流体供給用の容器111Aを備える。当該技術の各実施形態のロボット111は、必要に応じて、レーザピーニング処理で用いられる(例えばレニショー式型の)座標測定用タッチプローブの配置を制御することも可能である。水供給ロボット111は、透明充填層を処理対象部品の表面に供給するために用いられる。水供給容器をロボット搭載スティンガー107と共にロボット108に統合してシステムを構成することも可能である。
【0027】
本実施例における制御システムは、ロボット111のコントローラ112、ロボット108のコントローラ113、及び、各ロボット、ビーム供給システムとレーザ100の調整可能な部品、及び、その他制御可能な部品とを連携して動作させるコントローラ114として構成された複数のコンピュータを備える。前記制御システムは、1又は複数のプログラムによって制御されるプロセッサを用いて実現できる。この1又は複数のプログラムには、数的な制御プログラムとロボットの較正及び配置、工作物の3Dコンピュータ支援の設計CADモデルに基づいた光学部品の較正及び制御、及び、ロボットの空間配置等のための他のプログラムが含まれる。
【0028】
入力光学装置102からターゲットの工作物までの基本的な光学経路は、本実施形態では、3つの主な方向の変化により理解され、これらの全ては、高速かつ高分解能のジンバルを用いて制御される。光学経路には伝送ミラー105A及び受光ミラー106Aの間に区間120がある。この区間120は基本的に直線であり、空気中を変更可能な長さで、伝送ミラージンバルの角度設定によって定義される変更可能な方向に延伸している。区間120の長さは、スティンガー107の位置決めに基づいてロボット108によって制御される。同様に、区間102の方向は、スティンガー 107の配置に基づいてジンバル105、106によって設定される。図示されている実施形態では、区間120は、管のような物に囲まれずに自由空間中に延伸している。他の実施形態として、十分に調節が可能であれば、伸縮可能な管やその他の囲いを用いることも可能である。光学経路は、また、スティンガー107の筐体内のビーム整形及び診断部品を介して、受光装置106Aからスキャナ光学装置117Aに至る第2区間121を備える。前記光学経路は、スキャナ光学装置117Aからターゲット表面に至る最終区間122を備える。カメラ等のイメージセンサ125は、スキャナ光学装置に隣接して搭載されており、光学部品の所定の設定によってヒットされる衝撃領域の位置付近のターゲットのイメージを提供するよう配置されている。センサ125は、以下で述べる複雑なターゲット表面用のシステムの較正に用いることができる。
【0029】
加工チャンバーは、技術者用の入口、部品ホルダーへのアクセス用入口、レーザ放射を行うためのシャッターを備えて実現される。加工チャンバーによって、ロボット108を操作するための制御環境の構築が可能となる。加工チャンバーは、土台又は移動可能な厚板等の基台の上に搭載可能であり、伝送ミラージンバル105、ロボット搭載スティンガー107を備えるロボット108、ロボット111、及び、部品ホルダーは全て、基台の上に、固定された空間関係で搭載されている。レーザ100と入力光学装置102は、別々の台に備えられており、加工チャンバーと密接に連携させることが可能である。 入力光学装置102の望遠鏡は、加工チャンバーの隣接領域における空間的制限から必要であれば、レーザテーブル101と加工チャンバーの間に、数百フィートのビーム伝播を提供するように構成することが可能である。
【0030】
図4は、二重ジンバルスティンガー(DGS)の基本的な構成を示している。上記の移動式ビームシステムと同様に、二重ジンバルスティンガーは、伝送ジンバルを用いて、高エネルギーレーザビームを、自由空気経路を越えて、加工ロボットに保持されているスティンガー上の受光ジンバルに供給する。閉ループ制御システムは、高エネルギーのパルスビームと互いに正確にアライメントされた低出力の連続波(CW)トレーサビームを用いて、スティンガーを介した正確なアライメントを維持する。
図4に示すように、DGSによって、スティンガーの出力上に第2ジンバルが追加され、これにより、固定されたスティンガー位置から処理面へビームのスキャンが可能になる。スティンガーに含まれる整形光学装置は、ビームの分散、ビームの形状、偏光を訂正し、工作物上に正方形のスポットの均一なパターンを実現する。DGSには、ビームプロファイルとレーザパルスエネルギーを測定するための診断センサーも含まれる。
【0031】
DGSを保持する加工ロボットは、空気ベアリングを備えたパレット上に搭載されているため、必要に応じて、作業セル内の異なる位置に容易に移動させることができる。上述した通り、他のDGSを搭載した技術も同様に使用することができる。
【0032】
図3は、同図中M55で示された伝送ミラーに至るまでの入力光学装置に関するレイアウトを示している。当該伝送ミラーは、
図2の伝送ミラー105Aに対応している。レーザソース300は、光学経路の第1区間を定義する線301上に出力ビームを提供する。この出力ビームは、断面が正方形であり、偏光されている。ミラーM50は、光学経路の第2区間を定義する線302上のビームを反射して、アライメントレーザAL50、半波長板WP50、レンズL50、偏光子P50、レンズL51、カメラC50を備えるアライメント光学装置を活性化させる。偏光子P50を経て伝播するビームは、線303に沿った光学経路の第3区間上を、波長板WP51を経て、ミラーM51、ミラーM52、ミラーM53を備えるフィールド回転子光学装置まで進む。ミラーM53から、回転したビームは、線304上の光学経路の第4区間上を、ミラーM54まで伝播する。ミラーM54は、ジンバル搭載の伝送ミラーM55までの線305に沿った光学経路の第5区間上で、ビームを、レンズL52及びL53を備えるビーム搬送望遠鏡(リレー望遠鏡とも呼ばれる)に向ける。窓W50及びW51は、望遠鏡に対して、ビームが焦点を経てもたらされる真空室(図示せず)の入出力を定義している。伝送ミラーM55は、線306上の光学経路の第6区間に沿った可変の角度でビームを向け、当該ビームは、可変長の空気を経て、上述のロボット搭載スティンガー上の受光ミラーに向けられる。
【0033】
一実施形態において、アライメントレーザAL50は、アライメントが正確であるかを検証し、レーザショット間のアライメントのフィードバック調整を可能とし、更に、以下で説明する較正工程のための連続波(CW、すなわちパルス無しの)レーザを備える。このレーザの出力は、トレーサビームと称される。一実施形態において、アライメントレーザAL50は比較的出力パワーの低い(500mW未満)ダイオード励起Nd:YLFレーザを備える。アライメントレーザAL50は、ピーニングレーザソース300と同じ或いは類似の波長であるか、もしくは、光学装置の全てを通過するアライメントビームの反射特性と集光特性を高出力ビームのアライメントに確実に用いることができるように構成されている。
【0034】
アライメントレーザAL50(500mW未満)から分散する出力はレンズL50によって平行化され、偏光ビームスプリッタP50において高出力ビーム経路と結合される。1/2波長板WP50を用いて、アライメントレーザがビーム線303上の偏光子で反射するように、アライメントレーザの偏光をS偏光に設定する。P偏光で伝送された高出力ビームのごく一部は偏光子P50で反射され、アライメントビームのごく一部は偏光子P50を経てカメラC50に伝送される。診断カメラC50はアライメントビームと高出力ビームの位置を検知し、相互の正確なアライメントを行うためにフィードバックを提供する。カメラは、レンズL51の焦点に配置する。偏光子P50の表面から僅かに反射された高い出力のビームの遠視野(焦点)が、偏光子P50を透過する一部のアライメントビームの焦点と正確に重なると、相互のアライメントが確認される。波長板WP50は、偏光子P50を透過するアライメントビームの透過率を調節するように回転が可能である。
【0035】
図3のビーム経路305が
図4のM56とM80間のビーム経路と平行でないことによるビームの断面の回転は、フィールド回転子光学装置において補われる。例えば、レーザピーニングシステムでは、ビーム断面は正方形もしくは長方形が望ましい。ジンバル搭載伝送ミラーM55上の入射ビームと反射ビームを含む平面と、ジンバル搭載受光ミラーM56(ミラーM56は
図4に示されている)上の入射ビームと反射ビームを含む平面との間の相対角度に基づいて、正方形のビームはロボット搭載スティンガーの座標に対して回転する。フィールド回転子光学装置は、所望するスポットの配向がターゲット面に伝播されるように、ビーム断面を事前に回転させる。フィールド回転子光学装置は、3つのミラーM51〜53から成り、これらのミラーは共通の構造物に堅固に搭載されており、遠隔制御される回転台で入力ビーム軸の周りを回転することが可能である。反射回数が奇数(3)であるため、この3つのミラー部を回転させることによって、正方形のビームは2倍の回転率で回転することになる。例えば、45度でミラー部が回転すると、ビームは90度回転する。正方形のビームの場合、フィールド回転子を±22.5度回転することによって、全てのビームを所望する配向にすることができる。フィールド回転には、他の構成の光学装置を用いても構わない。フィールド回転素子は比較的大きい為、ロボット上のスティンガーに搭載するのではなく、入力光学装置に搭載するのが望ましい。しかし、他の実施形態では、フィールド回転素子をビーム線上の他の位置に配置することも可能である。
【0036】
図4のビームスプリッタWS58及びWS68からの光学的損失を最小限に抑えるため、DGSに入力されるビームはP偏光していることが望ましい。
図3の偏光回転子WP51は、光学システムにおけるその時点での正方形のビームの配向に関わらず、WS58におけるP偏光を維持するためのフィールド回転角度とは独立して、ビーム偏光角度を調節するために用いられる。
【0037】
レンズL52及びL53から成る輸送望遠鏡は、正方形ビームを拡大し、自由伝播経路を通じてロボット搭載スティンガーを備える加工ヘッドへ光学像をリレーする。一実施形態においては、この望遠鏡を介してビームは23mm角の公称寸法から32.5mm角に、約1.4倍に拡大される。この望遠鏡には3つの機能がある。1つ目は、伝送ミラー及び受光ミラーでビーム面積を2倍増加させる機能で、これにより光学破損の危険性が減少する。2つ目は、望遠鏡のリレー距離を倍率の2乗で増加させて(すなわち2倍)、離れた処理平面に明確なビーム画像を提供することができる機能である。3つ目は、ビームを拡大することによって、(共焦点パラメータの2倍として定義される)レイリー範囲を、倍率の1.4倍の2倍に増加させる機能で、これによりビームの自由空気伝播特性が向上する。加工ヘッドの光学リレー望遠鏡とビーム供給望遠鏡が単一の伝播距離に最適化されるため、この第3の機能は重要である。しかし、加工ヘッドは±45度の範囲の加工立体角で操作されるため、ジンバル間の実際の伝播距離は±1m分まで変化し得る。この変化は、
図2に示した、巨大な部品を本来の場所でレーザピーニングを行う構成にした場合よりもずっと大きくなる可能性がある。
【0038】
本システムの一実施形態では、伝送ジンバルと受光ジンバルは設計、仕様ともに同じである。代表的なシステムでは、各軸のモーターは、25μrad(5.2arcsec)の分解能、50μrad(10.3arcsec)の再現性、及び、100μrad(20.6arcsec)の絶対精度を有する。これらの仕様は、実際の反射されたビームに対する値で、ミラー角度に対する値は、ミラーの方向にもよるが、これらの半分である。代表的な実施例では、伝送ミラーと受光ミラーの直径は4インチであり、15〜55度の範囲の入射角に対してビームを効果的に反射する高損傷閾値コーティングを有する。
【0039】
図4は、支持構造50上に搭載されたDGS内の光学部品とビーム経路の概略図である。支持構造50は、正確な方向でロボットに同様に搭載されている。入射するレーザビームは、図の下部に示されている受光ジンバルミラーM56から反射される。DGSの筐体の入力上の保護窓W57と出力上の保護窓W39は、光学部品にとって密封された清潔な環境を生み出す。制御システムは、入射するビームについて、第1のコーティングされていないビームスプリッタWS58からの反射が0.6%となるように、P偏光を常に維持する。反射されたビームは、90度の石英回転子WP59によってS偏光に回転され、その8%が較正されたエネルギーメータEM61に向けられた次のビームスプリッタWS60で反射される。エネルギーメータEM61は、焦電センサか、他のタイプのエネルギー又はパワーセンサを備えることができる。エネルギーメータスプリッタWS60を通過したビームは、エネルギーメータスプリッタWS60によるオフセット角、ビーム変位(beam displacement)、ビーム形状の変化を相殺する光学くさびを有する別の補償スプリッタWS62を通過する。次に、ビームは、別のビームスプリッタWS63によって、間にビームスプリッタWS66を挟むレンズL64及びL65を備える診断望遠鏡に反射される。診断望遠鏡は、ほぼレーザシステムの出力開口にある画像面から、ビームプロファイルを記録するビームプロファイルカメラC67に、ビームの画像を向ける。
【0040】
高エネルギービームスプリッタWS58を通過した後、次に、主要なビームは、トレーサビームスプリッタWS68に到達する。このスプリッタWS68は、高エネルギービームスプリッタWS58からのオフセット角、ビーム変位、ビーム形状の変化を相殺する光学くさびを有する。トレーサビームスプリッタWS68の第1面は、高エネルギーパルスビームの0.3%未満を反射するが、S偏光したトレーサビームの16%を反射する。サンプルされたビームは、別のビームスプリッタWS69によって、間にビームスプリッタWS73を挟んでレンズL70及びL71を備え、更に2つのカメラを備える診断望遠鏡に向けられる。2つのカメラとは、ビームスプリッタWS73で反射されるビームの経路内にあるトレーサビームポインティングカメラC74と、出力レンズL71の焦点にあるトレーサビームセンタリングカメラC84である。センタリングカメラC84は、受光ジンバルミラーM56の表面上のトレーサビームの像を記録し、ポインティングカメラは、望遠鏡入力レンズL70の焦点(遠視野)の像を見ることで、ビームの指している方向を測定する。これら2つのカメラC74及びC84からの情報は、伝送ジンバル及び受光ジンバルの能動的制御によってスティンガーを介したビームのアライメントの維持に使用される。この望遠鏡に内蔵された高速シャッターS72は、各高エネルギーレーザパルス(の印加)時にこれらのカメラを保護するために使用される。
【0041】
トレーサビームスプリッタWS68の後、高エネルギービームは、正確に制御されたλ/2波長板WP75を通過する。λ/2波長板WP75は、P偏光されたビームを、工作物の表面の軸外ピーニングに最適な有効性を提供するために必要とされる偏光が如何なるものであろうと、当該必要とされる偏光状態に回転させるために用いられる。次の部品であるストークスのレンズペアSP76は、屈折力が等しいが逆の2つの円筒状のレンズからなる。これらの円筒の曲面が回転対称にアライメントされている場合、これらは相殺され、伝送されたビームに変化は起こらない。しかし、1つのレンズが他方に対して回転している場合、ビームは1つの軸で発散し、他方に収束する。このアナモフィックな屈折力を、出力ビームに対して任意の方向に向かせるために、両レンズは一対として回転させることができ、これによって、工作物の表面上のビームのアスペクト比が訂正される。
【0042】
DGSの最後のレンズは、ズーム望遠鏡を構成するネガティブレンズL77とポジティブレンズL78である。ネガティブレンズL77は、レンズ間の間隔を変更するために光学伝播軸に沿って移動させることが可能である。これにより、スティンガーから出射されるビームの分散角が変更され、ターゲット上のスポットサイズが効果的に変更される。DGSの最後の能動部品は、レーザピーニングされる部品の表面に向けて出力ビームをスキャンする、ラスタジンバルミラーM80である。最後に、較正用カメラC81が組立部品上に搭載されており、トレーサビーム又は作業ビームの位置の工作物の像を提供するよう配置されている。較正用カメラC81は、独自のパン/チルトマウント、及び、ズーム/フォーカス制御を有し、トレーサビーム又は作業ビームの位置の工作物の近赤外像を提供するように配置されている。
【0043】
図4に示された光学部品は、二重ジンバルスティンガー(DGS)と称される組立部品に搭載されている。二重ジンバルスティンガーは、能動的に調節可能な光学装置を組み込んだ、ビームスキャン機能及びビーム整形機能を追加する。スティンガー上の能動的なビーム整形部品には、ビームの出力の分散をスポット毎に能動的に調節するズーム望遠鏡L77/L79、アスペクト比の制御に対して大きな調節範囲を提供する、屈折力は等しいが逆の1対の円筒状のレンズ(ストークス・ペアSP76と称する)、及び、スティンガーからの偏光を任意の角度に回転させることのできる、回転可能な1/2波長(λ/2)板WP75或いはその他の偏光コントローラがある。
【0044】
二重スティンガー設計に伴う懸念の一つは重さである。以前の移動式ビームシステムと比べて、第2ジンバル、 波長板用の電動駆動部、ストークス・ペア、及び、ズーム望遠鏡が追加されているため、かなりの量の付加質量が追加される。これに対処するために、支持構造50用の主な構造材料として炭素繊維複合材を用いた。
【0045】
ビーム形状を訂正することによって、固定されたスキャンミラー位置から複雑なパターンのスポットを供給することが可能となるが、このビーム形状の訂正は、個々のレーザパルスに対して行う必要がある。組立装置上の能動的な光学部品は、動的な調節を行うために、正確に移動させなければならない。上述したように、受光ジンバルミラーM56は、受光ジンバル方位軸及び受光ジンバル仰角軸に関する較正パラメータに基づいて正確な制御を有するジンバル上に搭載されている。受光ジンバルは、閉ループ制御下にあり、スティンガー上の光学装置を介して正確に向けられるビームを維持する。ビームのアライメントは、各ショットについて検証され、(必要に応じて)訂正される。精密回転台は、較正されたパラメータに基づき、λ/2波長板WP75(偏光回転子)の調整に使用される。ストークス・ペアを構成する2つの円筒状のレンズは、これも、較正されたパラメータに基づき、アスペクト比の調節に使用される独立した精密回転台によって調節される。ズーム望遠鏡上の入力レンズL77は、200mmの高速リニア台上に搭載され、この高速リニア台は、ターゲット上のスポットサイズを制御するためにズーム望遠鏡からの出力ビームの分散を調節するために用いられる。最後に、ラスタジンバルミラーM80は、正確な制御が可能なスキャナミラーの方位角軸及びスキャナミラーの仰角軸を有する出力ラスタジンバル上に搭載され、較正されたパラメータに基づき工作物の表面上の各スポットにレーザビームを当てる。
【0047】
本DGS光学システムは、衝撃領域において3〜5mmの範囲の正方形のスポットサイズをサポートするように設計した。しかし、当然、更に大きいスポットでも、良好なスポット形状の制御が可能であることが期待される。他のスポットの仕様に関しては勿論のこと、スティンガーの異なる実施形態についても、異なる光学部品が使用可能である。
【0048】
図5は、通常の入射におけるターゲット上の3mm角の正方形のスポットに関して3つの異なる動作点(L77−a、L77−b、L77−c)において、ネガティブレンズ素子L77を備えたズーム望遠鏡システムを示している。動作点L77−aからL77−cまで、ネガティブレンズL77の100mmの移動によって、ネガティブレンズL77とポジティブレンズL78間のビームの分散を変化させることができ、3mmの像となるポイントが、最後のラスタジンバルミラーM80から42インチの距離から、62インチの距離に移動する。
【0049】
ここでは、ズーム望遠鏡の実施例を用いてレーザピーニング処理面が、公称画像面が54インチ(1370mm)に位置する場合に、3mmのスポットに関して48.5インチから62.5インチ(1230〜1590mm)の間で調節可能である。5mmスポットについては、スタンドオフ範囲は、46.5インチから59.5インチ(1180〜1510mm)である。
【0050】
ズーム望遠鏡に関する動作範囲は、トランスレーション台により実現可能な経路長変化に依存する。代表的な例においては、ネガティブレンズに搭載されたリニア台は、合計で200mmの経路長の変更が可能である。しかし、100mmの調節を超える動作は、スポット形状が、理想的な正方形から劣化してしまう虞がある。この劣化は主に、糸巻き型の歪みのレベルが増加することによって特徴付けられる。
図6(a)〜6(c)は、画像システムを不連続に光線追跡した分析の結果を示しており、スポット品質の変化をズームレンズ位置の関数として示している(
図6(a)−樽型歪み、
図6(b)−歪み無し、
図6(c)−糸巻き型歪み)。±4%のスポット形状の歪み(樽型歪みから針刺し型歪み)の限界が、適切な設計目標である。より複雑なレンズ設計、特に、追加の移動素子を取り入れたものを用いれば、正方形のスポットの画像性能を改善することは可能であると考えられる。しかし、高エネルギーで高出力のレーザビームと共に使用する光学システムの設計を成功させることは、反射防止コートされたレンズ面から生じる弱い反射があるため、非常に厳しい。こうした意図しない、発散或いは収束した反射したビーム(一般にゴーストと呼ばれる)は、一連の光学部品(optical train)の他の部分に焦点が合い、多くの場合、レーザ供給システムの全く異なる部分に光学損傷を引き起こす虞がある。最適な設計とは、多数の第1及び第2反射の管理及び方向付けが十分にできる程度にシンプルで、システム内の他の光学部品の不具合を防ぐものでなければならない。当然、新たな表面損失が生じると、ビーム経路全体の透過も低下し、ターゲット上に同じエネルギーを生成するために、レーザがより高い出力エネルギーで操作されることが求められる。最後に設計で検討すべきことは、画像システムがより複雑でより正確になると、通常、介在するレンズ部品上のスポットサイズは、入力ビームサイズよりもかなり小さくなるということである。これもまた、起こり得る高いレーザ出力密度による光学損傷から保護するために避けなければならない。
【0051】
図7は、石英や水等の材料への入射角に対する反射率を示すグラフで、実線はP偏光したビームの反射率を、破線はS偏光したビームの反射率を示している。レーザピーニング動作において、水等の充填流体は、工作物の表面全体を薄膜として流れる。水からのレーザパルスの反射率は、レーザピーニングに必要な衝撃波を引き起こすのに利用されるエネルギーを減少させる。上述したように、ここでは、システムはアクティブビーム整形を提供し、複合表面を備えた工作物に対してパルスを印加するために設計されている。したがって、所定のプロセス領域内において、個々のスポットに関する衝撃領域は、角度が60度以上にわたって変化する面上にあることができるが、ある例では90度以上も変化し得る面上にあり、単一のプロセス領域内のパルスの入射角に著しい差が生じる。
【0052】
システムにおけるレーザパルスは偏光しているため、入射角の変化が反射率の実質的な差を引き起こす。水を例にとると、約30度の入射角は、S偏光ビームとP偏光ビームの反射率に実質的な差を生じさせる。スティンガーの偏光回転子WP75によって、衝撃面に対してほぼP偏光となるように偏光をアライメントするために、偏光をスポット毎に個別に設定することが可能となる。当該偏光は、レーザパルス毎に、衝撃領域に対して公称表面の法線ベクトルを数値的に決定し、偏光回転子WP75によって、当該公称表面の法線ベクトルに対してP偏光に合致する偏光を設定することによって定義できる。これらの偏光の値は、後述する較正段階における3Dモデリングを用いて較正することが可能である。
【0053】
上述したように、スティンガーは、一方のポジティブレンズと他方のネガティブレンズからなる整合した円筒状の一組のレンズからなるストークス・ペアSP76を備える。このストークス・ペアレンズは、それらの軸が揃っている場合は屈折力を持たない。しかし、これらが反対の方向に回転させられると、円筒状の屈折力が、ビーム経路(beam train)に導入される。ポジティブ円筒波面は一方の軸に導入され、ネガティブ円筒波面は他方の軸に導入される。これにより、ターゲット上のビームがある方向において縮小し、他方の方向では拡大する。軸外ピーニングでは多くの場合、ゼロでない入射角を補償するために、1つの軸のみに沿ってスポットを縮小することが目標となる。このため、補正には、長い方の軸が一定の長さで維持されるように、全体のスポットサイズを縮小するために、ズーム望遠鏡のレンズの間隔に対する調節も必要である。
【0054】
スポット形状を補正する工程は、スポットの一次元(直角)に平行な軸に沿った補正に関しては最も容易に視覚化される。しかし、アナモフィックな補正は、入射する正方形のレーザビームに対して如何なる角度にも回転させることができるため、複合曲率を持つ表面形状を正方形のスポットで埋めることができる。フィールド回転子(
図3のM52〜M53)は、スポットに必要なフィールド回転を提供するために用いられる。
【0055】
一般に、高エネルギーレーザシステムを用いる用途では、パルスエネルギー、パルス幅、及び、ビームプロファイル等のビーム特性を監視する必要がある。これは、 ビームスプリッタを用いたビームの弱いサンプルを採取すること、或いは、高反射率のミラーコーティングの低レベルな透過を監視することによって行うことができる。ビームスプリッタ用の光学コーティングは、高エネルギービームのごく一部を反射するように設計することができる。或いは、ミラー用には、高エネルギービームのごく一部を透過するように設計することもできる。しかしながら、メインとなるビームのエネルギー又は出力を監視する目的で、非常に安定した、較正済みのサンプルが必要な場合は、これらの方法のどちらにも問題がある。高損傷閾値誘電体光学コーティングの正確な反射率は、温度、湿度等の環境条件の関数となることが多く、角度に対して非常に左右される。例えば、高品質なミラーコーティングは、99.5%の反射率を有する。もし仮に、環境条件、損傷、或いは高出力レーザビームからの熱が原因で、反射率が99.4%に落ちたとしても、それは非常に良いミラーであることには変わりがない。しかし、光学制御システムが0.5%の透過ビームに依存してメインビームのエネルギーを判定すると、この0.1%の変化が20%という容認し難い大きな較正誤差を引き起こすことになる。同様の事が、反射防止(A/R)コーティングから反射したビームの使用に対しても言える。
【0056】
上記の光学コーティングからの透過又は反射の較正による落とし穴を避けるために、レーザ及びビーム供給システムは、コーティングされていない光学面のみを用いて高出力ビームをサンプリングする。これらの面からの反射率は、レーザ波長における光学基板(ガラス)の屈折率、入射角、ビーム偏光によって決まる。最初の2つのパラメータは容易に制御され、レーザ設計の出力に関して、偏光は非常に安定している。
図8は、P偏光ビームに対して45度の入射角で方向付けられた溶融石英くさび351を用いたビームスプリッタを示している。くさび351に関して、合計の透過率98.8%に対し、スプリッタの各面からの反射率(フレネルの反射率と呼ばれる)はわずか0.6%である。典型的には、ビームスプリッタは0.5〜1.0度のくさびを備えて作製されており、これにより、前後の光学面からビームを空間的に分離させ、サンプリング率を変化させる虞のある光学干渉効果を抑制する。線355上の第1面の反射は、較正されたエネルギーの測定に使用される。典型的なA/Rコーティングは、この場合のコーティングされていない面の0.6%を大きく下回らない程度の反射率となることが多いが、くさび351の第2面は、メインビームに対する全体の挿入損失を減らすために反射防止コーティングを施される場合もある。レーザピーニングに使用されるレーザシステムからの15〜20Jのパルスの内0.6%である反射された成分は、典型的な焦電エネルギーメータにとってやはりエネルギーが強すぎるため、通常、
図8に示すように、サンプリングされたビームを更に弱めるために、第1くさび351の後に第2くさび350を設置する。
【0057】
図8に示すこのコーティングされていないビームスプリッタ方法は、レーザシステムの十分に偏光された出力には効果があるが、可動式のビームスティンガー上のエネルギー測定システムとして設置された場合にはあまり効果がない。レーザシステムからの正方形のビーム(及びその偏光)は、スティンガー内、及び、工作物の表面上で正しく方向付けされたスポットとなるように、レーザの出力において異なる方向に回転されなければならない。誘電体光学コーティングされたミラーでレーザビームが反射する時、偏光の方向が純粋なS又はP偏光である限り、すなわち、入射面に対して平行又は垂直である限り、偏光は全く変わらない。しかし、ビームが非直交性の偏光を有する場合、僅かな偏光解消の誤差によって、ビーム偏光の僅かな変化、及び、偏光コントラストの低下を生むことになる。任意の方向に向けられたビームがレーザシステムの出力と可動式ビームスティンガー間の様々なミラーで反射するにつれて、こうした偏光解消の誤差は蓄積される。誤差の合計は、軸外レーザピーニングの性能を低下させる程ではないが、
図8に示す二重ビームスプリッタペアに対する反射率に重大な変化をもたらす虞がある。例えば、偏光解消状態が表面の反射率を0.25%変化させただけでも、2つのビームスプリッタの反射の後の光のレベルが2倍増加することになる。これは、ターゲット面に供給されるエネルギー及び偏光においてはほとんど取るに足らない変化(偏光においては、数度の回転)であるが、測定されるエネルギーにおいては2倍の誤差が生じる。
【0058】
偏光の誤差に左右されないビームスプリッタシステムを
図9に示す。また、それをスティンガーにおいて実施した図を
図4に示す。
図9のシステムでは、2つのコーティングされていないビームスプリッタ401及び400が、間に90度の回転子402を挟んで配置されている。結果として、経路405上の分割されたビームは、偏光誤差に対して完全に左右されなくなっている。
図9に示す例では、ビームスプリッタくさび401は、高エネルギーレーザビームの経路420に配置されている。ビームのサンプルは、経路404上のスプリッタくさび401の入力面で反射する。経路404上のサンプルは、経路420上のレーザエネルギーの2つの直交する偏光状態(すなわちS偏光及びP偏光)からなる成分を含み、それらの相対的な大きさは、上述したように入力された偏光によって決まる。石英回転子402は、経路404上の透過ビームの両成分の偏光を、ビームの偏光状態に関わらず、一定の角度(この場合は90度)で回転させる。回転後、線404からのビームのサンプルは経路405上のスプリッタくさび400の入力面で反射する。2つのビームスプリッタくさび401及び400は、ビーム経路420及び404夫々に合った入射角(例えば45度)を持つように配置されている。しかし、2つのビームスプリッタの夫々における角度が等しい限り、この設計はどんな入射角にも対応する。偏光の回転及び整合した入射角によって、2つのビームスプリッタ401及び400の表面の反射率は、2つの直交する偏光状態の反射率の積となり、一定となる。これで、経路420上のレーザエネルギーの偏光解消の誤差は、2回の反射を経て経路405上に供給されるメインビームのエネルギーの割合には何ら影響を及ぼさず、偏光に依存しない診断ビームが得られる。
【0059】
図10は、この偏光非依存を実験的に実演したグラフである。これらの測定に対して2つのビームスプリッタ構成を用意した。偏光によって引き起こされる反射率の誤差を強調するため、入射角として
図9に示した45度ではなく72度を選択した。トレース450は、偏光回転子が無い場合の構成についての点を示し、黒塗りの菱形の点は測定値を、実線は完全な360度の偏光スキャンに対する反射率の理論上の値を示しており、著しく変動している。ここで注目すべきは、測定された信号が入力された偏光に対して強く依存していることである。トレース451は、90度の石英回転子をスプリッタの間に挿入した後の構成についての点を示しており、白塗りの菱形の点は測定値を示し、破線は完全な360度の偏光スキャンに対する反射した割合の理論値を示している。ここに示された非常に急激な偏光の変化に対しても、トレース451に見て取れるようにサンプリングされた割合は一定のままである。
【0060】
上記のビームスプリッタくさびについての説明で指摘した通り、ビームスプリッタの両面から生成される反射ビームが存在するため、これらを分離する必要がある。
図9に示すように、経路420上のレーザエネルギーの大半は、スプリッタくさび401の入力面では反射されず、スプリッタを通じて僅かに回折し、経路435上の出力面から出力される。しかし、出力面において、ビームの一部は経路422へ反射される。このビームスプリッタを適用する上で重要なことは、出力面で反射されたビームの部分が、診断部品に供給される、経路404上のビームの部分から分離されることである。この分離は、典型的には、
図8と同様にビームスプリッタ内で行われ、前面と裏面の間に光学くさびを導入することで、2つのビームを互いに発散させることができる。これは、0.5度のくさび角度、及び、入力面に反射するビームの発散に対するスプリッタ301の出力面から反射したビームの僅かな発散を参照することで、
図8において確認することができる。このくさびのサイズは、透過ビームの屈折による再ポインティング(refractive repointing)を最小限にするため、及び、光学入射面でのビームのサイズの変化を避けるために、通常は小さく設定されている。2つのビーム間の角度が完全に分岐するように2つのビームを十分遠く伝播させることによって、或いは、撮像望遠鏡の焦点における視野絞り(field-stop)を用いることによって、診断装置による使用の目的に応じて2つのビームを分離することができる。これらの方法はどちらも、可動式のビームスティンガー、或いは、その他レーザシステム用のコンパクトな診断装置の用途に適用することは難しい。ここに述べたロボット搭載スティンガーのように、空間の限られた環境では、不要なビームをブロックできる点までビームを十分に発散させるための十分な空間が光学筐体にはない。サンプルビームが、光学的追跡(optical tracking)のような診断プロセスに用いられるシステムでは、センタリング/ポインティング望遠鏡での視野絞りが、第2のビームをブロックするために用いられることもある。しかし、こうした視野絞りは、光学的追跡時の、軸外のビームの検知を妨げる可能性もある。
【0061】
図9に示す構成では、不要な裏面のビームスプリッタの反射(ゴーストと称する)を抑えるために、ここで述べる実施形態では、十分大きなくさび角度が用いられ、ビームスプリッタくさびの第2面から反射された経路422、423上のビームが、内部全反射によって光学素子の内部で捕獲されるようになっている。このためには、内部の光学入射角が全反射の臨界角よりも大きい必要がある。溶融石英基板でレーザ波長が1053nmの場合、この臨界角は43.6度である。
図9に示すように、外面上の入射角が45度の場合、これは、ビームスプリッタくさびの角度を7.5度にすることで容易に実現できる。
図9に示すように、2つのビームスプリッタを経た後のサンプリングされたビームの数は、
図8に示す従来の場合の4つのビームから、
図9のくさびを用いることで線405上の1つのクリーンなビームに減少する。内部で反射した光は、スプリッタ内部を跳ね返って、基板の光学的に荒いグラウンドエッジで散乱され失われる。線421及び425上のビームは、望ましいビームサンプルに対して角度が大きいためにブロックすることができる。
【0062】
上で述べたように、
図9のくさび401及びくさび400のようなビームスプリッタくさびは、透過ビームの強い再ポインティングを引き起こし、ビームの幅が減少する(図示したケースの場合、7.5度の再ポインティングと23%の幅の減少が見られる)。しかし、この影響は、
図9に示すように、出力ビーム線内に、第1ビームスプリッタくさびとは方向を逆にした第2ビームスプリッタくさび403を設置することによって完全に除去することが可能である。経路435上のレーザエネルギーは、 くさび403によって屈折し、経路430上に出力される。これにより、経路420と430が平行になるように元のポインティング方向が回復する。また、第1スプリッタくさび401から正しい距離にスプリッタ403を設置することにより、ビームのずれが解消でき、ビーム経路420及びビーム経路430がアライメントされる。結果として、経路430上の高出力ビームは、経路420上のビームに対して、方向、変位、幅は変化しない。二重ビームスプリッタセットの4つのコーティングされていない面によって引き起こされる光学的損失の合計は、P偏光の場合、僅か1.8%である。更に、
図4のスティンガーは、第2補償くさび403の第1面を用いて、
図4に示すように、センタリングカメラC74及びポインティングカメラC84の方向に、S偏光のトレーサビームの経路424上のサンプルを向ける。
【0063】
図4に示すように、ゴーストの発生しないビームスプリッタを用いて、主要な高エネルギービームからビームサンプルを収集し、第2サンプルを較正されたエネルギーメータに向け、診断撮像望遠鏡の夫々にビームを反射する。したがって、組み合わせとして、偏光非依存のエネルギーメータが提供される。また、偏光非依存の診断システムが提供される。
【0064】
二重ジンバルスティンガーを用いることにより、表面全体でレーザビームをスキャンするためにラスタジンバルを用いて、工作物上でスポットパターンの配置を非常に正確にすることが可能である。調節可能な光学装置によって、偏光、スポット方向、サイズ、アスペクト比が訂正される。ラスタジンバルを用いることで、各ショット間で加工ロボットを動かす必要がなくなり、スポット配置の正確性と全体の正確性の両方を向上することが可能である。
【0065】
しかし、これを実現するには、工作物上のパターンを登録し、パルス別の制御のために較正されたパラメータを生成する良い方法が必要となる。上で説明したように、その目的は、スポットパターンを新たな場所に配置する時間を、数日或いは数週間ではなく数分に短縮して、素早く完遂できる方法である。
【0066】
このプロセスの第1ステップは、コンピュータ支援設計CADシステムで工作物のソリッドモデルからもたらされるレーザピーニングスポットの望ましいパターンを設計することである。
【0067】
図11に示す航空機部品510のような、複合表面を備える工作物の場合、レーザパルス毎の衝撃領域は、著しく異なる入射角を有することが考えられる。
図11に示す工作物は、底面側501と、リブ510が取り付けられた外面502を備える航空機製品の部品である。リブは、下側503、機尾側504、及び、前方側505を有する。非常に高い寸法安定性を有するマイラー(Mylar)等の材料から成るオーバーレイマスク511は、工作物の表面に合うように、また、技術者によって迅速、容易、正確に配置が可能なエッジを備えた構造上に配置される構成となっている。オーバーレイマスク511は、構造物の機尾側の2つの追加されたマークに加えてマーク512、及び、下側の2つの追加されたマークに加えてマーク513等の、複数組の登録マークを有する。
【0068】
図12は、リブの面503上の下側パターン553、リブの面504上の機尾パターン554、面505上の前方パターン555からなる、
図11の部品の3つのパターンについて、プロセス領域における公称形状及び位置の一例を示している。各スポットは、サイズ、その中心の3次元の位置、表面上のスポット方向を定義する回転ベクトル、空間内の表面の局所的な方向についての情報を含む(公称面法線ベクトルに基づく)法線ベクトルによって定義される衝撃領域を有する。スポットは約4.5mm角の正方形であり、プロセス領域を覆う配列として、プロセスの許容範囲内で、アライメントされ、互いに隣接している。
【0069】
ビーム供給システムを工作物に対して較正する方法は、高出力のパルスビームと互いにアライメントされる連続波(CW)赤外トレーサビームに依存する。これは、移動式ビームシステムに対して、伝送ジンバル及び受光ジンバルの閉ループアライメント制御を維持するために使用されるビームと同じビームとなる。一実施形態において、寸法の安定したマイラー製表面オーバレイマスク511は、工作物に適合するように形成され、容易に認識される幾何学的形状(エッジ、角、穴等)により印が付けられた工作物に、手動で適用することができる。当該マスクは、各パターン領域上の
図11に示されるような一組の登録マークを有する。この登録マークは、ターゲットの3Dソリッドモデルの対応する位置と相互に関連付けられ、プロセス領域空間の較正に用いられる。マスクのレーザピーニングの実施形態における指針は、工作物上の最もクリティカルで高ストレスな特徴部分に対して、レーザピーニングパターンの正確なアライメント(0.5mm未満、0.020インチ)を提供することである。他の例では、工作物自体の特徴(例えば、角、エッジ、穴等)を、較正プロセス用の登録マークとして用いることができる。
【0070】
図11に示す例として、プロセス領域に対応するアライメントマスク上の各領域は、レーザターゲットとして用いられる3つの登録マークを含んでいる。3つのターゲットの夫々の位置は、
図12に分かり易くするために示されているような、既に生成されたスポットパターンに対して正確に定義されている。パターン較正手順は、例えば0.1mmの精度で3つの登録マークの夫々にトレーサビームをアライメントする工程と、位置毎にラスタジンバルM80に関する方位角及び仰角を記録する工程とから成る。このとき、入力ジンバルM56は固定されたままである。この手順は、
図2に示すような、スティンガーのラスタエンド上に設けられた遠隔制御されるカメラシステム等のセンサー125を用いて実現される。これは同様に
図4のカメラC81に対応している。センサー125は、照射されたターゲットだけでなく、赤外トレーサービームスポットの鮮明な像も生成しなければならないため、可視光線ブロックフィルターを備えている。これにより、センサー125は、940nmの別の拡散赤外光源によって照射される登録マークに対して、高エネルギー加工に使われる1053nmのレーザ波長で正確に焦点を当てることが可能となる。これらの波長は十分に接近しているため、オペレータは、ビームと登録マークの両方に関して十分に焦点が絞られた像を見ることができる。
【0071】
図13は、較正プロセス時にオペレータによって用いられ、レーザターゲットの1つにアライメントされたトレーサビームの画面イメージを含む、オペレータ用の制御盤のグラフィックインターフェースを簡略化した図である。オペレータは、スポットを登録地点まで移動させるために、ラスタジンバルを制御しながら、工作物上に現れる照明を視認する。或いは、オペレータが介入することなく、コンピュータ化されたパターン認識を用いて、各ターゲットの中心を自動的に配置することも可能である。各登録地点で、ラスタジンバルミラーM80に関する方位角及び仰角が記録される。半透明のマイラー膜によるレーザの散乱及びスペックル(speckle)の発生を減らすために、各レーザターゲットの位置で紙製のオーバーレイをマイラー膜上に被せ、像を向上させる。
【0072】
プロセス領域用の空間を較正するために、2つの異なるスティンガーの位置から、3つのレーザターゲットの夫々の位置を決める工程が繰り返され、これにより、工作物上の登録マークの合成された立体画像が、写真測量法で適用される技術と同様の技術を用いて構成される。
図14に見られるように、線610、611、612が位置600にあるラスタジンバルミラーM80から、対応する登録マーク(例えば、工作物上のマーク512)まで延伸している場合、第1スティンガー位置600からの、線610、611、612に関する方位角及び仰角が決定される。次に、スティンガーが、垂直に、或いは、第2位置601に向かって移動させられる。2つの異なるラスタミラー位置から3つのマスクターゲットの位置を決めることで、数値が正確に適合する。ある例では、ラスタミラーを、第1位置600から第2位置601まで垂直な軸に沿って、60cm(23.6インチ)移動させた。上側の位置は、高エネルギーレーザピーニングに用いられるラスタミラー位置を表している。線620、621、622が位置601にあるラスタジンバルミラーM80から、工作物上の登録マークまで延伸している場合、第2位置601からの、線620、621、622に関する方位角及び仰角が決定される。このデータにより、工作物の表面を、スティンガーのラスタジンバルに対して基準となる座標フレーム内に配置することが可能となり、ミラーと工作物間の距離、及び、3次元(3D)空間におけるその方向について正確な情報が提供される。レーザスポットパターンに対するアライメントされたマスクの登録マークの位置が分かっているため、各レーザスポットは、パルス毎に、制御システムによって、処理面上でのサイズ、形状、方向付けが正確に決定される。
【0073】
較正プロセスの最後のステップは、スティンガーの座標フレームに対して、ターゲット面上のプロセス領域の座標フレームを決定することであり、パルスパターンのパルス毎に、ジオメトリを、方向、分散、偏光、回転、アスペクト比に関する較正パラメータに変換する。この座標変換は、パターンにおいて既に定義されたレーザスポット(衝撃領域)の夫々を、当てられたスポット毎の12のサーボモーター光学ポジショナーの夫々の位置に関する較正されたパラメータを含むプロセスファイルに変換するために適用される。夫々の指示されたスポット位置は、以下のサーボモーター位置によって生成される。
1.レーザ偏光回転子
2.レーザフィールド回転子(正方形スポット回転子)
3.伝送ジンバル方位軸
4.伝送ジンバル仰角軸
5.受光ジンバル方位軸
6.受光ジンバル仰角軸
7.スティンガー偏光回転子
8.ストークスレンズ#1
9.ストークスレンズ#2
10.スティンガーズーム望遠鏡台
11.ラスタジンバル方位軸
12.ラスタジンバル仰角軸
【0074】
図15は、位置600にあるスティンガーについて、
図12の工作物上の機尾プロセス領域650の3つのアライメントターゲット位置(例えば登録マーク512)と関係付けられたスポットパターンを示している。3つのプロセス領域の夫々は、異なる複数のスティンガー位置から、別々に較正し、ピーニングすることができる。或いは、1つのスティンガー位置で複数のスポットパターンを適用できるように、スティンガー位置を選択できる。このアライメントの結果、当該部品のフィレット全体を包むスポットのパターンが生成される。ビームは、パターン毎に1つのスティンガー位置から供給されたため、入射角は、パターンの一方における45度から、フィレットの中心における0度(法線入射)を経て、パターンの他方における−45度まで推移する必要があった。この部品形状にも拘わらず、ここに述べた技術を用いることで、レーザスポットは、対応する衝撃領域の公称表面の法線ベクトルに対してP偏光面に合致する偏光で、工作物の表面上において、正方形のまま、サイズ、方向、位置が正確に保たれるように個別に制御することが可能である。
【0075】
図16は、工作物の表面上のプロセス領域内の衝撃領域のパターンで複数のレーザパルスを供給するために、プロセッサによって実行されるアルゴリズムに関して簡略化したフローチャートである。簡略化したプロセスのフローは、ビーム供給システムに用いられる制御システムに1又は複数のパターンを記憶することから始まる(700)。次に、工作物の表面に一連のパルスを供給するのに適した相対的な位置に、スティンガーを支えるロボットが位置決めされるか、或いは、工作物がロボットに隣接して位置決めされるか、或いは、両方が位置決めされる(701)。一組のプロセス領域(1又は複数のメンバーからなる)に用いられる各スティンガー位置に使用可能な、次のステップにおいて、ラスタパターン(i,j)が、ターゲットの3D面(x,y,z)の全域にわたるパターンに対してスポット毎に較正された2次元のプロセス領域上のパターンを定義する(702)。フローチャートに示されるこの較正ステップは、ロボット又は工作物の位置を固定し、工作物とロボットの相関位置を確立した後に行われ、恐らくは1以上のスティンガー位置を用いてロボットと工作物の固定された配置で生成されたすべてのパターンに対して1回実行されるか、或いは、一つのスティンガー位置が使用される一組のパターンにおけるスポットに対する較正されたパラメータを生成するために、使用されるスティンガー位置毎に1回実行することが可能である。正確なアライメントのために、工作物とスティンガーを支えるロボットが加工に適した位置についた後、コントローラは、スキャンに使われる固定されたスティンガー位置毎に較正される。或いは、較正ステップは、レーザ加工が適用される環境に基づいて、必要に応じて実行することができる。
【0076】
次に、プロセス領域毎に、スティンガーは、現在のパターンについてロボットによって位置決めされ、伝送ジンバルと受光ジンバルは、レーザエネルギーがスティンガー上の光学部品に供給可能となるように設定される(703)。次に、プロセス領域上の所定のパターンについてスキャンプロセスが実行される(704)。スキャンプロセスでは、プロセス領域内のスポット(i,j)毎に、ビーム整形・供給光学装置における光学部品は、出力パルス毎に、方向、フィールド回転、分散、アスペクト比、偏光を確立するように設定される(704)。スポット毎に較正されたパラメータを使って光学部品を設定したうえで、レーザパルスは、レーザピーニング用途において、充填流体と共に適用される(705)。プロセッサは、パターン内の最後のスポットが供給されたかどうかを判断する(706)。もしされていなければ、次のスポットが定義され(707)、プロセッサは、ステップ702に(或いは、較正されたパラメータが既に生成済みである場合はステップ703に)戻る。ステップ706で最後のスポットが供給されていれば、プロセッサは、現在のパターンの組の内、最後のパターンが処理されたかどうかを判断する(708)。もし未だであれば、プロセッサによって次のパターンが認識され(709)、プロセッサは、ステップ702に戻る(ここで、ロボットが次のパターン又は次のパターンの組を実行するために再配置される必要がある場合は、プロセッサは、ステップ701の実行を待ってもよい)。ステップ708で最後のパターンが処理されると、プロセスは終了する(710)。尚、
図16のフローチャートによって示されたステップの順番は、プロセスの所定の内容に合うように変更しても構わない。
【0077】
図17は、
図2と同様に、レーザピーニングシステムの簡略化した図である。同様の部品には参照番号が同様に付与されており、部品の中には省略しているものもある。
図2と同様に、線120からのレーザビームはDGS107の受光ジンバル106上のミラー106Aで反射される。当該ビームは、線121に沿ってラスタジンバル117上のラスタジンバルミラー117Aに向けられる。アライメントカメラ125は、ビームが向けられるターゲット位置を撮像するように構成されている。この例における複雑なターゲット109は、DGS107を用いて直接照射(strike)するには難しい、或いは、実際的でないと思われる表面(不図示)を含む。この表面に到達するために、反射鏡900は、ピーニング対象の面を有する部品の近く、或いは、その上に設置することができる。リレーミラーと呼ばれることもある、この反射鏡は、例えば、5インチの平らなミラーであり、用いられる全ての波長(較正画像化(imaging)、アライメント、出力)に対して、線122上のビームを、線901の角に沿って、複雑なターゲットの表面に向けることができる。DGSのスキャン機能は、上記の処理された較正を用いて、到達困難な表面に、固定されたミラーを用いてビームを向けることを可能とする。例えば、工作物自体に支持されているか、或いは、外部手段によって支持されている個別のリレーミラーを静止位置に配置して複雑な部分をレーザピーニングする場合、ラスタリングジンバル117との間で直接視線が届くことがない、レーザピーニング対象の当該部分上の領域をピーニングすることが可能である。DGSを用いれば、較正及びその後に続くレーザピーニングを、高出力ピーニングビームだけでなく較正用の部分の赤外画像やトレーサビームを反射するリレーミラーを使うだけで、反射鏡900がある場合と無い場合とで同じように正確に実行することができる。隠れたスポットに向かってビームを角で曲がらせることができても、スティンガー全体には適合させることができない場合がある。
図17は、レーザピーニング時に工作表面に対して流体充填層を供給するために使われる従来の水供給ロボット111を示している。工作面へ直接の視線を確立することができないために、ロボット制御される水ノズルで工作面に到達することが難しい場合がある。この場合、工作物に直接取り付けられた固定の水ノズルが、充填層の提供に用いられる。個別のコンピュータ制御の下、複数のノズルが大きく複雑なピーニング領域をカバーするために用いられる。
【0078】
上記の技術の代表的な使用例には、大小の工作物及び構造物に対するレーザピーニング、レーザピーニングによる成形、及び、熱処理、テクスチュアリング、切断、溶接といったその他の表面加工のためのレーザビームの供給がある。本システムは、レーザエネルギーを用いた材料加工の際のビーム供給に適用可能である。尚、ここでの材料加工の例としては、超塑性成形、塗装又は他のタイプの塗装除去、エッチング、彫刻、刻印等を含むが、これらだけには限らない。
【0079】
本発明は、上述の詳細な好適実施例及び具体例を参照して示されたが、これら実施例は、限定的な意味ではなく説明のためのものと理解されるべきである。種々の変更及び組み合わせは当業者において容易に想到するものと考えられ、また、かかる変更及び組み合わせは、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内に含まれる。