特許第6046044号(P6046044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エアバス ディフェンス アンド スペース エスアーエスの特許一覧

特許6046044金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法
<>
  • 特許6046044-金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法 図000002
  • 特許6046044-金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法 図000003
  • 特許6046044-金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法 図000004
  • 特許6046044-金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法 図000005
  • 特許6046044-金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法 図000006
  • 特許6046044-金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法 図000007
  • 特許6046044-金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法 図000008
  • 特許6046044-金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法 図000009
  • 特許6046044-金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法 図000010
  • 特許6046044-金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法 図000011
  • 特許6046044-金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法 図000012
  • 特許6046044-金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法 図000013
  • 特許6046044-金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046044
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】金属製ライナーを製造するためのツールセット及び方法
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/00 20060101AFI20161206BHJP
   B21D 51/24 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   F17C1/00 Z
   B21D51/24
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-539290(P2013-539290)
(86)(22)【出願日】2011年11月21日
(65)【公表番号】特表2014-500449(P2014-500449A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2011070529
(87)【国際公開番号】WO2012069399
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年10月21日
(31)【優先権主張番号】1059605
(32)【優先日】2010年11月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507142074
【氏名又は名称】エアバス ディフェンス アンド スペース エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】クローデル,シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ラクール,ドミニク
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0205201(US,A1)
【文献】 米国特許第03508677(US,A)
【文献】 特開平06−346731(JP,A)
【文献】 特表2000−514357(JP,A)
【文献】 特表2000−504810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00 − 13/12
B21D 51/24
F16J 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
属製ライナーを製造するためのツールセットであって、
前記金属製ライナーを構成する一次部品(2a、2b、2c)の支持要素を形成する複数のマンドレル要素(1a、1b、1c)からなるマンドレル(1)と、連接する前記複数のマンドレル要素の接合端部上に位置決めされるよう設計された少なくとも1つの環状セクタ(3a、3b、3c、3d)とを備えることを特徴とする、ツールセット。
【請求項2】
前記金属製ライナーが、複合体容器用の金属製ライナーであることを特徴とする、請求項1に記載のツールセット。
【請求項3】
前記ライナーは丸みを帯びた端部を有する円筒形容器ライナーであり、前記支持要素は少なくとも1つのフロントパネル(1a)、1つのリアパネル(1c)及び少なくとも1つの中間円筒形本体(1b)と、前記フロントパネル(1a)、リアパネル(1c)及び中間円筒形本体(1b)の接合端部上に位置決めされた環状セクタ(3a、3b、3c、3d)とを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のツールセット。
【請求項4】
前記環状セクタ(3a、3b、3c、3d)は鋼鉄製セクタである、請求項1〜のいずれかに記載のツールセット。
【請求項5】
前記環状セクタは、周縁環状セットバック(4a)を備え、前記周縁環状セットバック(4a)は、隣接するセクタの周縁環状セットバック(4b)と共に環状チャネル(4)を形成するよう設計された、請求項1〜のいずれかに記載のツールセット。
【請求項6】
前記環状セクタ(3a、3b、3c、3d)は除去可能なセクタであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のツールセット。
【請求項7】
前記マンドレル要素は可溶性材料製の部品であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のツールセット。
【請求項8】
前記可溶性材料製の部品は、密封被膜(5)で覆われていることを特徴とする、請求項7に記載のツールセット。
【請求項9】
前記マンドレル要素の少なくともいくつかは、前記マンドレルの軸受車軸(6)に設置された回転部品であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のツールセット。
【請求項10】
前記マンドレル要素の少なくともいくつかは、前記マンドレルの軸受車軸(6)の受容チューブ(7a、7b、7c)上に設置されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のツールセット。
【請求項11】
金属製ライナーを備える物品を製造するための方法であって、
マンドレル要素上に金属製ライナーを構成する複数の一次部品(2a、2b、2c)を配置するステップ(100)と、
記複数の一次部品を担持する前記マンドレルの要素を組立てるステップ(110)と、
組立てた前記マンドレル要素上の記複数の一次部品互いに溶接するステップ(111)と
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
複合体容器に適用可能な、請求項11に記載の方法であって、
前記マンドレルの前記要素上に組付けた前記ライナー上に、ファイバ(8)を巻き付けるステップ(120)を含むことを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記マンドレルの前記要素を組立てる前記ステップ(110)は、前記マンドレルの駆動車軸を回転させる際に実現されることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記マンドレルは可溶性マンドレルであり、前記方法は、前記巻き付け又は前記溶接の後で前記マンドレルを融蝕するステップ(130)を含むことを特徴とする、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
記複数の一次部品を前記マンドレル要素上に配置する前記ステップ(100)の前に、前記マンドレル要素の接合端部に環状セクタ(3a、3b、3c、3d)を位置決めするステップ(90)を含むことを特徴とする、請求項11〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記マンドレルの前記要素上に組付けた前記複数の一次部品を溶接する前記ステップ(111)は、前記環状セクタにおいてチャネル(4)上側の前記複数の一次部品に対向する縁部を溶接することによって実現されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
記複数の一次部品を配置する前記ステップ(100)は、
記複数の一次部品を加熱するステップ(101)と、
記複数の一次部品を前記マンドレル要素上に位置決めするステップ(102)と、
記複数の一次部品を冷却して、前記マンドレル要素への前記ライナー部分の締り嵌めを生成するステップ(103)と
を含むことを特徴とする、請求項11〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
金属製ライナーを有する複合体容器の製造に適用される、請求項11〜17のいずれか1項に記載の方法であって、
前記マンドレル要素は、フロントパネル(1a)、リアパネル(1c)及び少なくとも1つの中間円筒形本体(1b)に成形されることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製ライナーの製造及びこのようなライナーを備える物品に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製ライナーは、特に覆われた複合体容器の分野で使用されている。
【0003】
圧力下での流体の保存用、特にスペースアプリケーション用、又は圧力下での低温流体の保存用等の高機能容器の場合、金属製ライナーは容器の容積と比較して薄い。
【0004】
「高機能容器」とは、一般には輸送産業、具体的には空間輸送において使用されるような、体積が最適化された容器を意味する。
【0005】
加圧流体を保存することを目的とした高機能複合体容器は一般に、密閉機能と、圧力に対する機械的復元力とを分離することにより設計される。
【0006】
流体の閉じ込め、密閉、及び/又は流体に対する複合体材料製の壁の保護を、金属またはポリマー性の、一般には薄い、「ライナー」と呼ばれるシェルによって提供し;容器が含む流体の圧力に対する復元力を、樹脂でコーティングした複合体ファイバの巻き付けによって提供する。
【0007】
複合体ファイバ(ファイバ及び樹脂)を、フィラメントワインディングによってライナー上に堆積させる。
【0008】
この技術は公知であり、例としてLockheed Martinによる特許文献1を挙げることができる。
【0009】
シェルは機械的機能を何ら有さず、容器の体積を最小化することを目標としているため、シェルは薄い。
【0010】
密閉機能に加えて、ライナーはカーボンファイバの蒸着によって生じた力に耐える機能も有し、蒸着の間ライナーは巻き付けのマンドレルとして機能し、堆積される複合体構造のための基準面を提供する。
【0011】
ライナーがもたらす、この副次的なワインディング補助機能によって、ライナーの機械的復元力及び/又は剛性が必要となる。
【0012】
このため、材料の特性及び部品のジオメトリに応じた十分な厚さをライナーが有する必要がある。
【0013】
巻き付け力は、ライナーの約0.3MPaの局所圧縮として現れ、結果として容器の完成品の体積の増大として現れる。
【0014】
これはサイズの大きい、数メートルサイズの容器に関して特に問題となり得るが、これは、このような場合にライナーの体積が相当なものとなる、又はライナーの材料が展性を有する及び/若しくは低い弾性限界を有する及び/若しくは低い機械的復元力を有するからである;これは、例えばライナーが高純度アルミニウム製である場合、又は、ライナーの体積を有意に削減するために、数メートルの寸法を有する容器に関して1mm未満の厚さが達成される場合に当てはまる。
【0015】
ファイバを接触巻き付け又はファイバ配置によって配置する場合には、ライナーの抵抗性も重要なパラメータである。
【0016】
実際、これらの方法は、ファイバを堆積させる地点において支持体に直接力を印加するが、巻き付けにおいて、この力は巻き線が受ける張力に由来するものである。
【0017】
ライナーが巻き線の堆積による力に耐えることができない場合、又は密封ライナーが不要である場合、マンドレルを使用する。
【0018】
多数のマンドレル技術が存在し、金属製マンドレル及び可溶性材料(例えば水に水溶性ポリビニルアルコールを加えたもの)製のマンドレルを挙げることができる。
【0019】
一般に、マンドレルには容器の充填ポートとなる部分を通してしか到達することができないため、巻き付け及び複合体材料の製造後にマンドレルを除去することが一般的な問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第6401963号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、サイズが大きなものであってよい高機能複合体容器用の、極めて薄く極めて高精度な金属製ライナーを製造するための新規のツールセット及び新規の方法に関する。
【0022】
本発明の目的は特に、タイプ1050の純アルミニウムの場合のようにそれ固有の特性により、又は、単にライナーが極めて薄いことにより、極めて低い機械的復元力を有する材料を使用することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明に係る方法のために設計されるツールセットは、金属製ライナー用支持体として可溶性マンドレルを備え、可溶性マンドレルの役割は以下の通りである:
−金属ライナー用支持体の機能を果たす;
−機械的観点及び幾何学的観点の両方において、後続の巻き付けのための機械的支持体の役割を果たす;
−金属製ライナーを製造するためのツールセットの機能を果たす。
【0024】
より詳細には、本発明は、金属製ライナーを構成する一次部品の支持要素を形成する複数のマンドレル要素からなるマンドレルを備える、特に複合体容器用の金属製ライナーを製造するためのツールセットを想定している。
【0025】
本発明の特定の実施形態によると、ライナーは丸みを帯びた端部を有する円筒形容器ライナーであり、支持要素は少なくとも1つのフロントパネル、1つのリアパネル及び少なくとも1つの中間円筒形本体を備える。
【0026】
ツールセットは有利には、上記フロントパネル、リアパネル及び中間円筒形本体の接合端部上に位置決めされるよう設計された環状セクタを備え、これらのセクタはマンドレルの要素をそれらの接合部において補強する。
【0027】
特定の実施形態によると、上記環状セクタは鋼鉄製セクタである。
【0028】
環状セクタは有利には周縁環状セットバックを有し、これは、隣接するセクタの周縁環状セットバックと共に環状チャネルを形成するよう設計される。
【0029】
環状セクタは好ましくは除去可能なセクタである。
【0030】
有利な実施形態によると、マンドレルの要素は可溶性材料製の部品である。
【0031】
可溶性材料製の部品は好ましくは密封被膜で覆われている。
【0032】
第1の実施形態によると、マンドレル要素の少なくともいくつかは、マンドレルの軸受車軸に設置された回転部品である。
【0033】
代替として、マンドレル要素の少なくともいくつかは、マンドレルの軸受車軸の受容チューブ上に設置される。
【0034】
本発明は、複合体容器等、ライナーを備える物品を製造するための方法にも関し、この方法は、マンドレル要素上にライナーの部分を配置するステップ、ライナーの部分を担持するマンドレルの要素を組立てるステップ、及び組立てたマンドレル要素上にライナーの部分を溶接するステップを含む。
【0035】
特に巻き付け複合体容器に適用可能な実施形態によると、本発明に係る方法は、マンドレル上に設置完了したライナー上に、ファイバを巻き付けるステップを含む。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によると、マンドレルの要素を組立てるステップは、マンドレルの駆動車軸を回転させる際に実現される。
【0037】
マンドレルが可溶性マンドレルである場合、本発明に係る方法は、巻き付けステップ又は溶接ステップの後でマンドレルを融蝕するステップを含む。
【0038】
本発明に係る方法は、ライナー部分をマンドレル要素上に配置するステップの前に、マンドレル要素の接合端部に環状セクタを位置決めするステップを含む。
【0039】
マンドレルの要素上に組付けたライナーの部分を溶接するステップは、好ましくは、環状セクタにおいてチャネル上側のライナーの部分に対向する縁部を溶接することによって実現される。
【0040】
ライナーの部分を配置するステップは、ライナー部分を加熱するステップ、ライナー部分をマンドレル要素上に位置決めするステップ、及びライナー部分を冷却して、マンドレル要素へのライナー部分の締り嵌めを生成するステップを含む。
【0041】
金属製ライナーを有する複合体容器の製造に適用される本発明に係る方法では、マンドレル要素はフロントパネル、リアパネル、及び少なくとも1つの中間円筒形本体に成形される。
【0042】
本発明の他の特徴及び利点は、図面を参照しつつ、本発明の非限定的実施例に関する以下の説明を読むことにより、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、本発明によるツールセットの一部分の第1の実現例の長手方向断面図である。
図2図2は、本発明によるツールセットの一部分の第2の実現例の展開斜視図である。
図3A図3Aは、本発明のマンドレル要素上にライナー部分を配置するステップの実現例を示す。
図3B図3Bは、本発明のマンドレル要素上にライナー部分を配置するステップの実現例を示す。
図4A図4Aは、本発明のマンドレル要素上にライナー部分を配置するステップの実現例を示す。
図4B図4Bは、本発明のマンドレル要素上にライナー部分を配置するステップの実現例を示す。
図5図5は、本発明のある実施形態によるセクタの実現例の詳細を示す。
図6A図6Aは、本発明によるツールセット上にライナーを溶接する操作の詳細を示す。
図6B図6Bは、図6Aのツールセットを用いた溶接操作の詳細を示す前面断面図である。
図7図7は、本発明によるマンドレル上のライナー部分の断面図である。
図8図8は、本発明に係る方法の主なステップを示す。
図9図9は、本発明のある実施形態による方法のステップを詳細に示す。
図10図10は、本発明の特定の実施形態によるライナー部分を配置するステップを詳細に示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、特に複合体容器用の金属製ライナーを製造するためのツールセットを示す。
【0045】
このツールセットは、金属製ライナーを構成する一次部品の支持要素を形成する複数のマンドレル要素からなるマンドレル1を備える。
【0046】
丸みを帯びた端部を有する円筒形容器ライナーの製造等の応用例では、支持要素は少なくとも1つのフロントパネル1a、1つのリアパネル1c及び少なくとも1つの中間円筒形本体1bを備える。
【0047】
これらのマンドレル要素は有利には可溶性材料製の部品であり、従ってこれらはライナーが完成した後で容易に除去することができる。
【0048】
ライナー部分を配置するための高品質な表面を提供するために、実施例によると、可溶性材料製の部品を密封被膜5で覆う。
【0049】
更に図1によると、ツールセットは、上記フロントパネル、リアパネル及び中間円筒形本体の接合端部上に位置決めされるよう設計された環状セクタ3a、3b、3c、3dを備える。
【0050】
上記環状セクタ3a、3b、3c、3dは、鋼鉄製、例えばオーステナイトステンレス鋼製セクタである。
【0051】
図5をより詳細に見ると、環状セクタは周縁環状セットバック4aを有し、これは、隣接するセクタの周縁環状セットバック4bと共に環状チャネル4を形成するよう設計される。
【0052】
後で見るように、これら環状チャネルは、ライナー部分を互いに溶接する操作のためのクリアランス領域を生成するために使用される。
【0053】
環状セクタ3a、3b、3c、3dは除去可能なセクタである。
【0054】
図1に戻ると、マンドレル要素の少なくともいくつかは、マンドレルの軸受車軸6に設置された回転部品である。
【0055】
図2の実施例によると、マンドレル要素は、マンドレルの軸受車軸6の受容チューブ7a、7b、7c上に設置される。
【0056】
マンドレル要素をチューブ7a、7b、7c上に設置することにより、これらの取り扱いが容易になり、車軸6上に設置する際にこれらが損傷を受けるのが防止される。
【0057】
図2はまた、フロントパネル、リアパネル及び中間本体に対向する端部に共に適合するセクタ3a〜3dを示す。
【0058】
この図によると、セクタはマンドレルを車軸6に設置する際に位置決めされるが、ライナー部分を配置する前にこれらセクタ各々をマンドレル要素上に位置決めすることが好ましい。
【0059】
本発明の方法によると、ライナーを構成する様々な一次部品(フロントドーム、リアドーム及びカラー)は別個に製造され、その後、事前に精確に機械加工された可溶性マンドレルに組付けられる。
【0060】
機械加工又は成形の後、ライナー部分を形成する一次部品を加熱して膨張させ、マンドレルの対応する部品に当接させ、その後、単に冷却による収縮によって、所定の位置に締り嵌めする。
【0061】
図3A及び3Bは、ライナーのフロント又はリアドーム2aを形成するライナー部分を、対応するマンドレル要素1a上に配置する例を示す。
【0062】
図3Aによると、ドーム形状ライナー部分がアルミニウム製要素である場合、これを約100℃まで加熱してこの要素を膨張させ、対応するマンドレル要素上に位置決めする。
【0063】
図3Bによると、ライナー部分2aは冷却され、マンドレル要素の形状になる。
【0064】
非常に大きな膨張を得る必要はなく、膨張は、ライナー部分がマンドレル要素に擦れることなく係合する程度で十分である。
【0065】
ライナー部分がマンドレル要素に適切に付着することを保証するために、マンドレルを、ライナー部分の内側寸法より若干大きな外側寸法を有するよう製造するのが望ましく、これにより、マンドレル要素にライナー部分を確実に締り嵌めする。
【0066】
図4A及び4Bは、マンドレルの中間円筒形本体上への、ライナーのカラー要素の配置を示す。
【0067】
ドームの場合と同様、ライナー部分2bを加熱することによって図4Aのように位置決めすることができ、このライナー部分を冷却することによって円筒形本体1bに締り嵌めすることができる。
【0068】
これらの実施例では、セクタ3a、3b、3cはマンドレル要素上に既に設置されており、ライナー部分の端部がこれらセクタに当接する。
【0069】
ライナーに複合体ファイバを巻き付ける容器の場合、巻き付け表面のジオメトリは、ライナーを構成する一次部品を、締り嵌め中にマンドレル上に予備形成することによって提供され、これにより、例えば低温容器等の最終産物に高いレベルの精度を与えることができる。
【0070】
可溶性マンドレル上にサブアセンブリを溶接することにより、ライナーを閉鎖する。これを達成するために、上述のようにマンドレルに除去可能なセクタを設け、これにより、溶接領域を局所的に保護及び洗浄することができる。
【0071】
図6Aは、使用可能な溶接ツールの例を示す。
【0072】
ツールセットは、複数のアクチュエータ211が固定される剛性フレーム10を備え、これらアクチュエータ211は、図6Bに示すようにライナー要素2a、2b上に位置決めされた外側セクタ212a、212bを強く押圧する。
【0073】
これら外側セクタ及び内側セクタ3a、3bにより、溶接の前後に、溶接されるライナー要素を精確に位置決めすることができる。
【0074】
溶接には例えばTIG技術を使用師、溶接ヘッド213を溶接する領域全体にわたって動かすか、又はヘッドを固定して溶接対象を回転させる。
【0075】
必要であれば、溶接ヘッドを通過させるためにアクチュエータを持ち上げる。
【0076】
次に、図7に示すマンドレル上の所定の位置にある完成したライナーに、巻き付け11操作を実行することができる。
【0077】
巻き付け操作が終わると、マンドレル及びセクタを構造から除去する。
【0078】
可溶性マンドレルの場合、材料を溶融又は溶解することによりマンドレルを除去し、セクタを除去するために、セクタがバネ材料製である場合はセクタを変形させ、ドームのうちの1つの開口端部からこれらを除去する。
【0079】
このツールセットにより、破壊力学的観点におけるライナーの許容誤差の最適化という枠内で正当であるような低さの弾性限界を有する金属材料製のライナーの使用が可能となる。
【0080】
本発明によるツールセットによって可能となる別の応用例では、展性が高い及び/若しくは低い弾性限界を有する材料を複合体容器のライナーに使用することには、複合体構造による変形にライナーが容易に追従するという利点がある。
【0081】
これは、1050アルミニウム合金製のライナーを用いる低温用途の場合に特に関する。
【0082】
本発明の方法を用いれば、圧縮力に耐えるマンドレルの存在により、複合体巻き付けを堆積するためのライナーのある程度の領域を必要以上に大きくする必要はない。
【0083】
あらゆる場合において、本発明によるマンドレルは、薄くなったライナーの本質的に不十分な機械的復元力を克服することができる。このようなライナーは、容器の製造中にそれ自体によって発生する力に耐えるには適していない。
【0084】
先行技術では、複合体の堆積表面の品質を保証するために、ライナーの外側ジオメトリを極めて高い精度で実現する必要がある。その上、ライナーを構成する一次部品を溶接により組立てなければならず、ライナーのジオメトリはまた、巻き付け方法に必要な実装許容誤差の適正さを保証するためにも、非常に高い精度で実現しなければならない。
【0085】
これらの精度要件によってライナーのコストは上昇し、また、ライナーの厚さが減少して寸法が増大するにつれて、これらの精度要件はより重要となる。
【0086】
本発明による方法及びツールセットを用いて製造されるライナーでは、マンドレルによって適正な堆積表面が保証されるため、一次部品において成形許容誤差を増大させることができる。
【0087】
本発明の方法及びツールセットにより、実装許容誤差が厳密でなくてよい、より強力な溶接方法を使用することができるようにもなるが、これは、マンドレル及び溶接領域に位置決めされたセクタによって形成される内部支持体の存在により、溶接中の構造の変形が減少するからである。
【0088】
これは、ライナー製造方法におけるコスト節減につながる。
【0089】
本発明の応用例は、純アルミニウム製の、直径1600mmのライナーの製造に関する。
【0090】
カラー部分におけるライナーの厚さは1mmである。
【0091】
ライナーは、好ましくはTIGである溶接によって組立てられた、3つのセクションから製造される。
【0092】
アレニル(砂及びポリビニルアルコール)タイプの可溶性材料製のマンドレルに、周辺部溶接を実現するために設計されたセクタを装備する。
【0093】
図8に示す一般的な方法は、マンドレル要素上にライナーの部分2a、2b、2cを配置して、フロントパネル1a、リアパネル1c及び少なくとも1つの中間円筒形本体1bを形成するステップ100、ライナーの部分を担持するマンドレルの要素を組立てるステップ110、並びに組立てたマンドレル要素上にライナーの部分を溶接するステップを含む。
【0094】
図9によると、この一般的な方法は更に、マンドレルの要素上に組立てたライナー上に、ファイバ8を巻き付けるステップ120、及び、マンドレルの回転駆動車軸上においてマンドレルの要素の組立てを実現するステップ110を含む。
【0095】
巻き付けステップ120は、樹脂を含浸した複合体ファイバの巻き付けにより公知の方法で行われ、マンドレルが可溶性マンドレルである場合、本方法は、巻き付けステップの後に、マンドレルを融蝕するステップ130を含み、その後、金属製セクタを除去するステップ140へと進む。
【0096】
マンドレルの要素がフロントパネル、リアパネル及び少なくとも1つの中間円筒形本体を含む場合、本発明に係る方法は、マンドレル要素上にライナー部分を配置するステップ100の前に、上記フロントパネル、リアパネル及び少なくとも1つの中間円筒形本体の接合端部上に環状セクタ3a、3b、3c、3dを位置決めするステップ90を含む。
【0097】
その後、環状セクタにおいてチャネル4の上側のライナーの部分に対向する縁部を溶接することによって、マンドレルの要素上に組み付けたライナーの部分を溶接するステップ111を行う。
【0098】
図10によると、ライナー部分を配置するステップ100は、ライナー部分を加熱するステップ101、ライナー部分をマンドレル要素上に位置決めするステップ102、及びライナー部分を冷却してマンドレル要素へのライナー部分の締り嵌めを生成するステップ103を含む。
【0099】
要するに、本発明の特定の実施形態によると、本発明に係る方法は、例えば以下のような順序でマンドレルに一次部品を当接させることから始まる:
1−ライナーのフロントパネル及びリアパネルを形成するライナー部分を、マンドレルのフロント及びリアパネルに当接させる;
2−ライナー部分を対応するマンドレル要素に締り嵌めし、連結を機械加工する;
1−ライナーのカラーを中間円筒形本体上へと当接させる;
2−カラーを中間円筒形本体に締り嵌めし、連結を機械加工する。
【0100】
続くステップでは、マンドレル要素を組立てて、完成品のマンドレルを形成し、続いてライナー部分を溶接する。
【0101】
マンドレルの存在に関して溶接ラインの検査を行い、続いて、図7に示すように、マンドレルをその車軸6の周りで回転させることにより、複合体の材料の巻き付け11を実施する。
【0102】
最後に、マンドレルを除去する。
【0103】
本発明を、金属又は複合体容器用のライナーの製造に応用することができることは明らかである。より一般的には、本発明を、金属部品又はチューブ等の薄い巻き付けの製造に応用することもできる。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10