特許第6046056号(P6046056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6046056脱ラムノシルアクテオシド含有オリーブ抽出物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046056
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】脱ラムノシルアクテオシド含有オリーブ抽出物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20161206BHJP
   A61K 31/7034 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 36/63 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20161206BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20161206BHJP
   C12P 19/14 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   A23L33/105
   A61K31/7034
   A61K36/63
   A61P7/00
   A61P39/06
   C12P19/14 Z
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-554330(P2013-554330)
(86)(22)【出願日】2013年1月17日
(86)【国際出願番号】JP2013050767
(87)【国際公開番号】WO2013108822
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2015年11月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-9399(P2012-9399)
(32)【優先日】2012年1月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(72)【発明者】
【氏名】福井 祐子
(72)【発明者】
【氏名】小野 佳子
(72)【発明者】
【氏名】前田 満
(72)【発明者】
【氏名】冨森 菜美乃
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−206685(JP,A)
【文献】 特開2001−181197(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101816665(CN,A)
【文献】 LIN,L.C. et al,Phenylpropanoid glycosides from Orobanche caerulescens,Planta Med,2004年,Vol.70,p.50-53
【文献】 AMAKURA,Y. et al,Isolation and characterization of phenolic antioxidants from Plantago herb,Molecules,2012年 5月 9日,Vol.17,p.5459-5466,Figure 1, compound no.5
【文献】 HE,J. et al,Advanced research on acteoside for chemistry and bioactivities,J Asian Nat Prod Res,2011年,Vol.13,p.449-464
【文献】 PURI,M.,Updates on naringinase: structural and biotechnological aspects,Appl Microbiol Biotechnol,2011年,Vol.93,p.49-60
【文献】 RIBEIRO,M.H.,Naringinases: occurrence, characteristics, and applications,Appl Microbiol Biotechnol,2011年,Vol.90,p.1883-1895
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
A61K 31/33−33/44
A61K 36/00−36/9068
A61P 1/00−43/00
C12P 19/00−19/64
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱ラムノシルアクテオシドを含むオリーブ抽出物を配合した飲食品
【請求項2】
脱ラムノシルアクテオシドを0.1重量%以上含む、請求項1記載の飲食品
【請求項3】
脱ラムノシルアクテオシドを1重量%以上含む、請求項2記載の飲食品
【請求項4】
血中抗酸化用である、請求項1〜3のいずれか一項記載の飲食品。
【請求項5】
脱ラムノシルアクテオシド含有組成物の製造方法であって、
アクテオシド含有組成物を脱ラムノース活性を有する配糖体加水分解酵素で処理する工程、
を含む、前記製造方法。
【請求項6】
アクテオシド含有組成物がオリーブ抽出物である、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
配糖体加水分解酵素がナリンギナーゼである、請求項5または6記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱ラムノシルアクテオシド(以下、「DRA」という。)を含有するオリーブ抽出物、血中抗酸化剤、およびその製造方法に関する。具体的には、DRAを含有し血中抗酸化作用を有するオリーブ抽出物、DRAを有効成分として含有する血中抗酸化剤、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オリーブ(Olea europaea)は、モクセイ科オリーブ属に属する植物で、地中海地域をはじめとして広く栽培されている。その果実は、オリーブ油の抽出や食用として全世界で幅広く利用されており、食経験は非常に豊富である。
【0003】
オリーブの果実には、オレウロペイン、ヒドロキシチロソール、アクテオシド等のポリフェノールが含まれており(非特許文献1、2)、オリーブ抽出物やそれらのポリフェノール成分は、動脈硬化作用(非特許文献3)、高血圧抑制作用(特許文献1)、骨重量減少抑制作用(非特許文献4)等を有することが報告されている。また、オリーブ抽出物は抗酸化、美白、皮膚の抗老化、抗腫瘍効果を有すること(特許文献2)が報告されている。
【0004】
アクテオシドは、オリーブに含まれる代表的なポリフェノール成分の一つであり、抗酸化活性を有することが知られている(非特許文献2)。
【0005】
一方、DRAは、アクテオシドからラムノース単位が外れた構造を有しており、ゴマノハグサ科植物(Calceolaria hypericina)よりcalceolarioside Aとして単離されたのを始めとして(非特許文献5)、種々の植物での存在が報告されているが、オリーブでの報告はない。また、抗酸化活性について、in vitroでの抗酸化活性の比較では、DRAよりもアクテオシドの方が活性が高いことが報告されている(非特許文献6)。
【0006】
しかし、オリーブの実をヒトが摂取したときのポリフェノール類の吸収と排出、血中抗酸化の経時変化を調べたところ、ともに短時間でクリアされてしまうことが報告されている(非特許文献7)。さらに、抗酸化作用を有することが知られているアクテオシドは、経口摂取ではその吸収性に問題があることも報告されている(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-334022号公報
【特許文献2】特開2002-186453号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. Agric Food Chem, vol.52, pp479-484, 2004
【非特許文献2】J Agric Food Chem, vol.53, pp8963-8969, 2005、
【非特許文献3】Atherosclerosis, vol.188, No.1, pp35-42, 2006
【非特許文献4】Clin Nutr, vol.25, No.5, 859-868, 2006
【非特許文献5】Gazzetta Chimica Italiana, 116, P431-433, 1986
【非特許文献6】Planta Medica, 70(1), 50-53, 2004
【非特許文献7】Phytomedicine, vol.14, pp659-667, 2007
【非特許文献8】J. Chromatogr. B, 844(1), pp89-95, 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、オリーブの果実には抗酸化ポリフェノールであるアクテオシドが含まれているが、アクテオシドは体内吸収性に問題があり、経口摂取した場合の効果は十分ではない。また、その抗酸化作用は摂取後一時的であり、サプリメントなどとして利用する場合には、より長時間の効果の持続が望まれる。
【0010】
本発明は、生体内で効率よく効能を発揮させることができ、長時間血中抗酸化作用を示す食品、医薬部外品及び医薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、驚くべきことに、in vitroでの結果とは異なり、生体内ではDRAがアクテオシドよりも高い抗酸化作用を示すことを見出した。また、その抗酸化作用は、DRAとアクテオシドとの消化性の違いにより長時間にわたり作用を示すことを見出した。さらに、DRAはアクテオシドに比べて体内吸収性が高く、代謝物であるヒドロキシチロソールおよびカフェ酸の有する様々な生理活性が効率的に発揮されることも明らかとなった。また、DRAはアクテオシドを配糖体加水分解酵素にて処理することにより調製することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に限定されるものではないが、次の発明を包含する。
(1) DRAを含むオリーブ抽出物(以下、「DRA含有オリーブ抽出物」という。)。
(2) DRAを0.1重量%以上含む、(1)記載のオリーブ抽出物。
(3) DRAを1重量%以上含む、(2)記載のオリーブ抽出物。
(4) (1)〜(3)のいずれかを配合した組成物。
(5) 組成物が飲食品である、(4)記載の組成物。
(6) DRAを0.1重量%以上含む、飲食品。
(7) オリーブ抽出物を含む、(6)記載の飲食品。
(8) DRAを含む血中抗酸化剤。
(9) DRAを0.1重量%以上含む、(8)記載の血中抗酸化剤。
(10) (8)又は(9)の血中抗酸化剤を配合した組成物。
(11) 組成物が飲食品である、(10)記載の組成物。
(12) DRA含有組成物の製造方法であって、アクテオシド含有組成物を脱ラムノース活性を有する配糖体加水分解酵素で処理する工程を含む、前記製造方法。
(13) アクテオシド含有組成物がオリーブ抽出物である、(12)記載の製造方法。
(14) 配糖体加水分解酵素がナリンギナーゼである、(12)または(13)記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明のDRA含有オリーブ抽出物および血中抗酸化剤は、生体内で高い抗酸化作用を長時間発揮する。そのため、飲食品、医薬部外品及び医薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、酵素反応により生成されたDRA量のHPLCピーク面積を指標とした経時的変化を示すグラフである。
図2図2は、酵素反応によるアクテオシドの減少をHPLCピーク面積を指標とした経時的変化を示すグラフである。
図3図3は、DRAまたはアクテオシドをCMC懸濁液として投与した場合の、血中FRAP(Ferric Reducing Ability of Plasma)活性の経時的変化を示す。
図4図4は、DRAをオリーブオイル溶液として投与した場合の、血中FRAP活性の経時的変化を示す。
図5図5は、DRAまたはアクテオシドをCMC懸濁液として投与した場合の、血中ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)活性の経時的変化を示す。
図6図6は、DRAをオリーブオイル溶液として投与した場合の、血中ORAC活性の経時的変化を示す。
図7図7は、0.5% CMC濁懸水を投与した場合のラットの血中のアクテオシド、DRA、ヒドロキシチロソール、カフェ酸濃度の経時変化を示す図である。
図8図8は、アクテオシド500 mg/0.5% CMC濁懸水を投与した場合のラットの血中のアクテオシド、DRA、ヒドロキシチロソール、カフェ酸濃度の経時変化を示す図である。
図9図9は、DRA423 mg/0.5% CMC濁懸水を投与した場合のラットの血中の、ヒドロキシチロソール、カフェ酸濃度の経時変化を示す図である。
図10図10は、アクテオシドに比べて、DRAの体内吸収量(AUC)が多いことを示す図である。
図11図11は、DRA含有抽出物をオリーブオイル溶解液として単回投与した場合の、血中FRAP活性の経時的変化を示す。
図12図12は、DRA含有オリーブ抽出物または酵素未処理のオリーブ抽出物をオリーブオイル懸濁液として単回投与した場合の、血中FRAP活性の経時的変化を示す。
図13図13は、DRA含有オリーブ抽出物または酵素未処理のオリーブ抽出物をオリーブオイル懸濁液として連続投与した場合の、最終投与9時間後の血中FRAP活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、DRAを含有し生体内で高い抗酸化作用を長時間有するオリーブ抽出物、DRAを含有する飲食品、血中抗酸化剤、およびその製造方法に関する。
【0016】
以下、本発明の実施の態様についてさらに詳しく説明する。
<DRA含有オリーブ抽出物>
本発明のDRA含有オリーブ抽出物は、DRAを含有する。
下にDRAの構造式を示す。
【0017】
【化1】
前述の通り、DRAは1986年に初めてゴマノハグサ科植物(Calceolaria hypericina)よりcalceolarioside Aとして単離され、その後種々の植物での存在が報告されたが、オリーブでは報告されていない。それに対し、本発明のDRA含有オリーブ抽出物におけるDRA含量は極微量であってもよいが、0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上含まれる。
【0018】
DRAは、下記のアクテオシドを酵素処理することにより得られたものであっても、その他の方法によって得られたものでもよい。例えば、アクテオシド含有オリーブ抽出物に対し、アクテオシドのラムノース部分を除去することのできる酵素を用い、適切な条件下にて反応させることにより、DRAを含有するオリーブ抽出物が得られる。また、DRAを含む植物原料等からDRAを抽出し、オリーブ抽出物に添加することによっても得ることができる。
【0019】
下にアクテオシドの構造式を示す。
【0020】
【化2】
本発明のDRA含有オリーブ抽出物には、DRAが含まれていればよく、その他の含有成分は特に制限はない。他の含有成分としては、例えばオリーブ由来成分であるアクテオシド、ヒドロキシチロソールが挙げられる。他の成分の含有量やDRAと他の含有成分との量比は、任意に設定することができる。
【0021】
オリーブはモクセイ科オリーブ属に属する植物であり、いずれの品種であっても抽出物調製の原料として使用することができる。例示すれば、マンザニロ、ルッカ、ネバディロ・ブランコ、ミッション、ピクアル、アルベキナ、オヒブランカ、コルニカブラ、ゴルダル、モロイオロ、フラントイオ、コラティーナ、レッチーノ等の品種を好適に使用することができる。
【0022】
オリーブ抽出物の調製には、オリーブの果実、種子、葉、茎等のいずれの部位を用いてもよいが、アクテオシド含有量が多い部分、例えば果実を用いるのが好ましい。オリーブ果実は生のままで用いてもよいし、凍結乾燥等によって乾燥したものを用いてもよい。また、オリーブ果実から油を搾った後の残滓も、そのまま、あるいは乾燥した状態で用いることができる。オリーブ抽出物の調製は、上記のいずれかを原料として溶剤抽出して得られる抽出物である。溶剤抽出に用いる溶剤は、極性溶媒であっても非極性溶媒であってもよい。例示すれば、水、メタノールまたはエタノールなどのアルコール類、エチレングリコールまたはプロピレングリコール等の多価アルコール類、ケトン類などである。好ましくは、60℃〜90℃の熱水である。
【0023】
本発明のDRA含有オリーブ抽出物は、DRAを含有することから種々の効能を有する。例えば、DRAはアクテオシドに比べて体内吸収量が高く、代謝物であるヒドロキシチロソールおよびカフェ酸の有する様々な生理活性がより効率的に発揮される。また、摂取した後の長時間に渡り血中抗酸化活性を示す。
【0024】
DRAなどの体内吸収量は、例えば実験動物に試験溶液を投与し、一定時間後に血液を採取して濃度を測定することにより評価することができる。一例を示せば、一晩絶食させたラットにDRAのオリーブオイル懸濁液(0.8 mM)を5 ml/kgの用量でゾンデを用いて経口投与する。そして投与後一定間隔で尾静脈よりヘパリン採血管に血液を採取し、遠心分離操作により血漿サンプルを得、濃度分析を行うことにより評価する。
【0025】
DRAの代謝物であるヒドロキシチロソールとカフェ酸の構造式を下に示す。
【0026】
【化3】
【0027】
【化4】
ヒドロキシチロソールは、非常に強い抗酸化作用を有するとともに、悪玉コレステロールであるLDLからさらに悪化した酸化LDLになるのを防ぐ働きのあることが知られている。
【0028】
カフェ酸はコーヒーに含まれるポリフェノールの一種で、香り成分として知られている。このカフェ酸は、がん細胞の転移や増殖を抑制する効果を有することが報告されている。
【0029】
オリーブ抽出物は食用として全世界で幅広く利用されており、食経験は非常に豊富である。したがって、本発明のDRA含有オリーブ抽出物は、そのまま飲食品等として用いることができ、また飲食品や医薬品等に配合することもできる。
【0030】
そのまま飲食品等として用いる場合は、DRAの効果を損なわない、すなわちDRAと好ましくない相互作用を生じない限り、必要に応じて、他の生理活性成分、例えば、ミネラル;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA等のビタミン類;栄養成分;香料;色素などの他の添加物を混合することができる。これらの添加物はいずれも飲食品に一般的に用いられるものが使用できる。
【0031】
また、DRA含有オリーブ抽出物を配合して、機能性食品(健康補助食品、栄養機能食品、特別用途食品、特定保健用食品等の健康食品、動物用サプリメントを含む)、動物用飼料等とすることができる。
<飲食品>
本発明は、DRAを0.1重量%以上含む飲食品に関する。好ましくは、オリーブ抽出物を含む。
【0032】
DRAは、アクテオシドを酵素処理することにより得られたものであっても、その他の方法によって得られたものでもよい。例えば、アクテオシド含有物に対し、アクテオシドのラムノース部分を除去することのできる酵素を用い、適切な条件下にて反応させることにより、DRA含有物が得られる。また、DRAを含む植物原料等からDRAを抽出して得られたものでもよい。
【0033】
飲食品の形態は、錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、ドリンク剤(溶液剤及び懸濁液剤が含まれる)等の健康食品の形態とすることができ、清涼飲料、茶飲料、ヨーグルトや乳酸菌飲料等の乳製品、調味料、加工食品、デザート類、菓子(例えば、ガム、キャンディ、ゼリー)等の形態とすることもできる。本発明の飲食品には、食品として許容される、賦形剤、結合剤、コーティング剤、崩壊剤、添加剤等を含んでもよい。
【0034】
本発明の飲食品は抗酸化活性を有することにより、活性酸素が関与する障害/疾患等の予防または改善に有効である。
<血中抗酸化剤>
本発明は、DRAを含む血中抗酸化剤にも関する。
【0035】
前述のように、これまでの報告とは異なり、アクテオシド投与では血中の抗酸化活性の上昇はほとんど認められないのに対し、DRA投与では投与後に血中抗酸化活性が顕著に上昇することを明らかにした。さらに、その効果は長時間におよぶことから、本発明のDRA含有血中抗酸化剤は徐放性血中抗酸化剤である。抗酸化活性を有することにより、活性酸素が関与する障害/疾患等の予防、改善または治療に有効である。
【0036】
血中抗酸化活性は、例えばFRAP(Ferric Reducing Ability of Plasma)、ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)を用いて評価することができる。
【0037】
本発明の血中抗酸化剤におけるDRAの含有量は、特に制限はないが、効果面から0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上である。DRAは、アクテオシドを酵素処理することにより得られたものであっても、その他の方法によって得られたものでもよい。例えば、アクテオシド含有物に対し、アクテオシドのラムノース部分を除去することのできる酵素を用い、適切な条件下にて反応させることにより、DRA含有物が得られる。また、DRAを含む植物原料等からDRAを抽出して得られたものでもよい。
【0038】
本発明の血中抗酸化剤は、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与剤として、または注射剤等の非経口投与剤の形態であってもよい。そして、本発明の血中抗酸化剤には、製剤的に許容される賦形剤、結合剤、増量剤、分散剤、または保存剤等を添加することができる。
【0039】
本発明の血中抗酸化剤は、そのまま用いることができ、また飲食品や医薬品等に配合することもできる。
【0040】
そのまま飲食品等として用いる場合は、DRAの効果を損なわない、すなわちDRAと好ましくない相互作用を生じない限り、必要に応じて、他の生理活性成分、例えば、ミネラル;ビタミンE、ビタミンC、ビタミンA等のビタミン類;栄養成分;香料;色素などの他の添加物を混合することができる。これらの添加物はいずれも飲食品に一般的に用いられるものが使用できる。
<DRA含有組成物の製造方法>
本発明の製造方法では、DRA含有組成物をアクテオシド含有組成物から調製する。具体的には、アクテオシドのラムノース部分を配糖体加水分解酵素処理によって除去することにより、簡便にDRAを含む組成物を調製することができる。
【0041】
原料として用いるアクテオシド含有組成物は、アクテオシドを含有するものであればよく、精製されたアクテオシドであってもよいし、アクテオシドとオレウロペイン、ヒドロキシチロソールなどの他のポリフェノール化合物などとの混合物であってもよい。また、アクテオシドを含有している植物抽出物を用いることもできる。原料中のアクテオシドの濃度は、目的とする生成物中のDRA含量を考慮して、適宜決定することができる。前述のように、オリーブにはアクテオシドが比較的多く含まれており、公知の方法を適宜用いて、所望の割合でアクテオシドを含有するオリーブ抽出物を得ることができるため、本発明の製造方法においては好ましい原料である。この点から、オリーブ果実が好ましく、市販のオリーブ果実の抽出エキス末の溶解液を用いることもできる。
【0042】
用いる配糖体加水分解酵素は、アクテオシドからラムノースを除去するラムノシダーゼ活性を有するものであれば制限なく用いることができる。ラムノシダーゼ活性を有する酵素としては、例えば、ナリンギナーゼやヘスペリナーゼが挙げられる。酵素処理条件は、用いる酵素の至適反応温度やpHなどを考慮して適宜決定することができる。例えば、ナリンギナーゼを用いる場合は、適切な試薬類を用いてpHを3.5〜5の範囲に調整し、30〜60℃、好ましくは35〜45℃の範囲の温度で反応を行う。酵素処理後は、例えば溶液のpHを3に調整し80℃以上で10分間加熱するなど、公知の適切な手法を用いて酵素を失活させる。
生成されるDRA含有組成物中のDRA濃度は、原料におけるアクテオシド濃度、酵素添加量、反応時間等を適宜設定することにより、所望の濃度のものを得ることができる。
【0043】
酵素反応によって得られるDRA含有組成物中のDRAの濃度、および残存アクテオシドの濃度は、当業者に知られた方法、例えばHPLC分析によって測定することができる。
【0044】
得られたDRA含有組成物から、DRAを分離精製して利用することもできる。DRAの分離精製方法は、溶媒抽出・クロマト分離などの当業者に知られた方法で適宜実施することができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
調製例1.オリーブ抽出物の調製
オリーブ果実のオイル搾りカス8 kgを、80℃の熱水32 Lで30分間ずつ2回抽出した。ナイロンメッシュ(日本理化学器械株式会社製、商品名:NRS-500)でろ過をした後、#131(φ330 mm)ろ紙2枚+200 gハイフロスーパーセル(ナカライテスク株式会社)を用いた吸引ろ過により搾りカスを除き、抽出液を得た。50%アセトンにて洗浄し水で平衡化したアンバーライトXAD7-HP樹脂(ローム・アンド・ハース・ジャパン(株))5 L(カラムサイズφ14×32 cm)に、この抽出液を全量負荷した。5 Lの水で洗浄後、20 Lの水、35 Lの15%エタノール水溶液、20 Lの60%エタノール水溶液で順次溶出した。15%溶出画分と60%溶出画分を各々減圧濃縮した後、凍結乾燥し、それぞれ37.2 gと66.0 gの分画物を得た。このうち、60%溶出画分から得られた分画物をオリーブ抽出物(アクテオシド含量9.1%)として後の動物実験に用いた。
調製例2.アクテオシドの調製
オリーブ果肉の抽出エキス末(インデナ社製のオレアセレクト(商標)(Batch No.10219))100 gをメチルエチルケトン1200 mlと蒸留水600 mlに溶かし、3 L容の分液漏斗でよく振って、有機層を回収した。水層にメチルエチルケトン1200 mlを加えよく振って、有機層を回収し、更に同様の操作を繰返した。計3回分の有機層を合併し、濃縮、凍結乾燥を行い、52.5 gの乾燥物を得た。
【0046】
この乾燥物全量を200 mlの70%エタノール水溶液に溶解させ、更に水で10倍に希釈した後、水で平衡化した1 LのMCI GEL CHP-20P(三菱化学株式会社製、75-150 μm)に負荷した。10 Lの10%エタノール水溶液を流した後、12.5%、15%、17.5%、20%、22.5%、25%、27.5%、30%、35%のエタノール水溶液で各1 Lずつ、さらに、2 Lの40%エタノール水溶液で順次溶出を行った(エタノール濃度はすべてV/V%)。12.5%から27.5%までの溶出液は250 mlずつ4フラクションに分画回収し、このうち20%溶出液の第4フラクションから25%溶出液の第3フラクションまでを合わせて濃縮して5.98 gの精製アクテオシドを得た。
実施例1.DRAの製造−1
ナリンギナーゼ(Penicillium decumbens由来、300 units/g、シグマ社製)0.37 mgを0.1 M酢酸緩衝液( pH 4.0) 1.68 mlに懸濁し、0.22 mg /mlの酵素液を調製した(略称:1/10)。この1/10酵素液を、0.1 M酢酸緩衝液( pH 4.0)を用いて希釈し、3倍、10倍、30倍希釈の酵素液を調製した(それぞれの略称:1/30、1/100、1/300)。ねじ口ガラス試験管にそれぞれの酵素液を0.9 ml採取し、調製例2で得られた精製アクテオシドの50%エタノール水溶液(20 mg/ml)0.1 mlを添加し、40℃にて振とうした(100-130回/分、Water Bath Shaker MM-10型、大洋科学工業(株)(現在タイテック(株))製)。反応開始1、2、3、4、5、24時間後に0.1 ml採取し、除タンパクを目的にして、等量の氷冷したアセトニトリルを添加撹拌し、10分氷冷下に静置したのち、遠心分離をおこなった(10000回転、10分、5℃、微量高速冷却遠心分離機 MX-100型、(株)トミー精工製)。得られた遠心分離上清4μlを下記の分析条件でのHPLC分析に供した。酵素無添加群の5、24時間目を同様に処理し、アクテオシドの安定性をチェックした(略称:Ez(-))。また反応生成物がDRAであることは、LC/MS分析によって確認した。
<HPLC分析条件>
システム:Waters 2690/2695 セパレーションモジュール、996 フォトダイオードアレイ検出器
カラム:Develosil(商標) RPAQUEOUS-AR-5 (3*150 mm)
移動相:A:0.1% ギ酸-15%アセトニトリル/蒸留水、B:0.1% ギ酸-50%アセトニトリル/蒸留水
プログラム:0分(0% B)、30分(100% B)
流速:0.43 ml/分
注入量:4 μl
検出波長:280 nm
上記分析条件で、DRAは8.958±0.008分(n=24)、アクテオシドは9.348±0.009分(n=18)に溶出した。HPLCのピーク面積を指標にした経時的変化の結果を図1および図2に示す。アクテオシドの減少に伴い、DRAが生成することが確認された。
実施例2.DRAの製造−2
調製例2で得られた精製アクテオシド4 gを100 mlの50%エタノール水溶液に溶解した。この溶解液全量を2 Lの0.1 M酢酸緩衝液(pH 4.0)に加えて40℃に保ち、ナリンギナーゼ(Penicilliumdecumbens由来、300 units/g、シグマ社製)400 mgを添加した。40℃で3時間撹拌した後、ただちに反応液全量を、水で平衡化した700 mlのMCI GEL CHP-20P(三菱化学株式会社製、75-150 μm)に負荷した。2 Lの水で洗浄した後、2 Lの15%エタノール水溶液、1200 mlの20%エタノール水溶液を流した。続けて、22.5%、25%、27.5%のエタノール水溶液各750 mlで溶出し、それぞれ250 mlずつ3画分に分画した。さらに、 1250 mlの30%エタノール水溶液で溶出し、250 mlずつ5画分に分けた。このうち、27.5%溶出液の第1および第2画分を合せたもの、27.5%溶出液の第3画分から30%溶出液の第3画分までを合せたものを別々に濃縮し、それぞれ438 mgと1.562 gの乾燥物を得た。27.5%溶出液の第3画分から30%溶出液の第3画分の乾燥物を用いてMSおよびNMR解析を行い、DRAであることを確認した。
実施例3.DRA含有オリーブ抽出物の製造−1
蒸留水160 mlを40℃にインキュベートし、オリーブ果肉の抽出エキス末(インデナ社製 オレアセレクト(商標)(Batch No.10219))4 gの50%エタノール水溶液20 mlを添加して撹拌し(このときのpH 4.7)、氷酢酸を用いてpH 4.0に調整した。次に、ナリンギナーゼ(Penicilliumdecumbens由来、300 units/g、シグマ社製)40 mgの蒸留水懸濁液20 mlを加え、反応を開始した。0.5分、2分から30分まで2分間隔、60分から210分まで30分間隔に100 μl採取し、除タンパクを目的にして、等量の氷冷したアセトニトリル100 μlを添加して撹拌後、遠心分離をおこなった(10000回転、10分、5℃、微量高速冷却遠心分離機 MX-100型、(株)トミー精工製)。加温210分後の反応液のpHは4.1であった。また、酵素液の代わりに蒸留水を添加して同様に処理した試料を対照とした。得られた遠心分離上清4 μlをHPLC分析に供し、DRAとアクテオシドのピーク面積を求めた。また、DRAとアクテオシドを用いて、50%アセトニトリルによる段階希釈液を調製し、同一条件で分析し、検量線を作成した(DRA検量線のR2=0.9999、アクテオシド検量線のR2=1)。検量線の作成に用いたDRAおよびアクテオシドの標品は、それぞれ実施例2、調製例2で得られたものを使用した。ピーク面積値と検量線から濃度を算出し、下記の算出式により元の試料中(分析時10 mg/ml相当)のDRAおよびアクテオシド含量を求めた。結果を表1に示す。
<HPLC分析条件>
システム:Waters 2690/2695 セパレーションモジュール、996 フォトダイオードアレイ検出器
カラム:Develosil(商標) RPAQUEOUS-AR-5 (3*150 mm)
移動相:A:0.1% ギ酸-15%アセトニトリル/蒸留水、B:0.1% ギ酸-60%アセトニトリル/蒸留水
プログラム:0分(0% B)、30分(100% B)
流速:0.43 ml/分
注入量:4 μl
検出波長:280 nm
<算出式>
反応時の試料濃度は20 mg/ml、さらにアセトニトリルで2倍希釈しているので試料濃度は分析時10 mg/ml相当量であることから、含量(%)=100*濃度(μg/ml)/10000(μg/ml)
表1は、DRAおよびアクテオシド含量の経時的変化を示すものである。アクテオシドの減少に伴い、DRAが生成することが確認された。
【0047】
【表1】
実施例4.DRA含有オリーブ抽出物の製造−2
<抽出>
オリーブ果実のオイル搾りカス2 kgを、80℃の熱水16 Lで2時間抽出した。ナイロンメッシュ(日本理化学器械株式会社製、商品名:NRS-500)でろ過をした後、#131(φ330 mm)ろ紙2枚+400 gハイフロスーパーセル(ナカライ株式会社)を用いた吸引ろ過により搾りカスを除き、抽出液を得た。
<脱ラムノシル反応>
抽出液を40℃まで冷やし、酢酸32 mlを添加しpHを3.93まで下げた。水浴中で40℃に保ちながら、ナリンギナーゼ(Penicilliumdecumben由来、540 units/g、シグマ社製)130 mgを添加し、3.5時間反応した。反応を終了させるため、6 N硫酸35 mlを添加してpHを3.0に調整し、80℃で10分間加熱することにより酵素を失活させた。その後水浴にて40℃以下に冷却し、当量の4 N NaOH水溶液52.5 mlを添加した。
<精製>
50%アセトンにて洗浄し水で平衡化したアンバーライトXAD7-HP樹脂(ローム・アンド・ハース・ジャパン(株))1 L(カラムサイズφ8×20 cm)に、上記の反応液を全量負荷した。2 Lの水で洗浄後、6 Lの15%エタノール水溶液、4 Lの60%エタノール水溶液で順次溶出した。この15%溶出画分と60%溶出画分を各々減圧濃縮した後、凍結乾燥し、それぞれ8.73 gと16.8 gの分画物を得た。このうち、60%溶出画分から得られた分画物を、DRA含有オリーブ抽出物(DRA含量8.9%)として後の動物実験に用いた。
実施例5.DRAの血中抗酸化活性
<測定方法>
DRAの血中抗酸化活性におよぼす影響をラットを用いて評価した。血中抗酸化活性の評価にはFRAP、ORACを用いた。また、DRAおよびアクテオシドは、それぞれ実施例2および調製例2と同様の方法で調製したものを用いた。
【0048】
SD(IGS)系雄性ラット(6週齢)を日本チャールスリバー社より購入し、1週間試験環境で馴化させた後、順調な発育を示した動物を試験に供した。一晩絶食させたラットを各群3匹からなる5群に分けた。1群には0.5% CMC溶液を、2群にはDRAの0.5% CMC懸濁液(0.8 mM)を、3群には精製アクテオシドの0.5% CMC懸濁液(0.8 mM)を、4群にはオリーブオイル溶液(ナカライテスクcode.073-26)を、5群にはDRAのオリーブオイル懸濁液(0.8 mM)を、それぞれ5 ml/kgの用量でゾンデを用いて経口投与した。1-3群は投与前、投与後0.5、1、3、6、9、24時間後に、4-5群は投与前、投与後1、3、6、9、24時間後に尾静脈よりヘパリン採血管に血液を採取し、遠心分離操作(8,000 rpm、10 min)により血漿サンプルを得た。後日血漿FRAP活性およびアセトン除タンパク処理後上清のORAC活性を測定した。
【0049】
結果を図3図6に示す。アクテオシド投与群では血中の抗酸化活性の上昇はほとんど認められなかったが、DRA投与群では投与後に血中抗酸化活性の明らかな上昇が認められた。特にFRAP活性で見ると、投与初期(1-3時間後)と9時間目に2相性の抗酸化活性のピークを認めたことから、DRAが徐放的な作用を有することが確認できた。
実施例6.体内吸収
実施例5で血中抗酸化活性の測定用に採取した血漿サンプルのうち、1群(0.5% CMC溶液投与群)、2群(DRAの0.5% CMC懸濁液投与群)、3群(アクテオシドの0.5% CMC懸濁液投与群)の血漿の一部を使用して、各サンプル投与時の血中濃度の測定を行った。
<測定方法>
各群3匹の血漿を等量混合し均一にした後、血漿90 μlにカタツムリ由来のβ-グルクロニダーゼ/アリルスルファターゼ/酢酸緩衝液(pH 5.0) 90 μlを添加し、37℃で1時間インキュベーションを行った。アセトニトリル900 μlを添加し反応を終了、続いて1%アスコルビン酸水溶液10 μl、内部標準容液10 μlを添加し混合し、遠心分離操作(15,000 rpm、10 min)後の上清を回収した。回収した上清を減圧濃縮後、50% メタノールに再溶解しフィルターろ過してLC-MS/MSに付してアクテオシド、DRAおよびヒドロキシチロソール、カフェ酸の定量を行った。アクテオシド、DRA、ヒドロキシチロソール、カフェ酸量は、ピーク面積と、内部標準として用いたヘスペリジン(Wako)のピーク面積との比により決定した。LC-MS/MS分析条件を以下に示す。
<HPLC分析条件>
カラム:ACQUITY BEH18 (1.7 μm、2.1Φ×100 mm、日本ウォーターズ)
移動相:A;0.1% ギ酸水溶液、B;アセトニトリル
流速:0.30 ml/min
グラジエント:B液が5%で5分間、その後5分間でB液が5%から10%、2分間B液が10%を維持、その後7分間でB液が10%から24%、さらに4分間でB液が24%から80%のリニアグラジエント
<MS/MS分析条件>
測定モード:選択反応モニタリング
検出
:アクテオシド(保持時間約17.4分);前駆イオンm/z=623([M-H]-)、生成イオンm/z=161
:DRA(保持時間約17.0分);前駆イオンm/z=477([M-H]-)、生成イオンm/z=161
:ヒドロキシチロソール(保持時間約3.1分);前駆イオンm/z=153([M-H]-)、生成イオンm/z=123
:カフェ酸(保持時間約8.1分);前駆イオンm/z=179([M-H]-)、生成イオンm/z=135
:ヘスペリジン(保持時間約18.7分);前駆イオンm/z=609([M-H]-)、生成イオンm/z=301
イオン化法:ESI法
結果を図7図8図9に示す。アクテオシドを投与した際のアクテオシドの最大血中濃度(Cmax)は1 μMにも満たなかったが、代謝物としてヒドロキシチロソールおよびカフェ酸が検出された。ヒドロキシチロソールの最大血中濃度(Cmax)は11.7 μM、カフェ酸の最大血中濃度(Cmax)は0.7 μMであった。これに対してDRAを投与した際のDRAの最大血中濃度(Cmax)はやはり1 μMにも満たなかったが、代謝物としてヒドロキシチロソールおよびカフェ酸が高濃度検出された。ヒドロキシチロソールの最大血中濃度(Cmax)は32.8 μM、カフェ酸の最大血中濃度(Cmax)は7.3 μMであった。
【0050】
アクテオシド、DRAどちらもそのままの形で吸収、血中移行しておらず、代謝物であるヒドロキシチロソールやカフェ酸として体内に存在していたため、ヒドロキシチロソールおよびカフェ酸のAUCを用いて体内吸収量を比較した結果を図10に示す。DRAの体内吸収量は、ヒドロキシチロソールのAUCで比較するとアクテオシドの約3倍、カフェ酸のAUCで比較すると約13倍上昇した。
【0051】
以上の結果より、DRAはアクテオシドに比べて、体内吸収量が増加し、代謝物であるヒドロキシチロソールおよびカフェ酸のもつさまざまな生理活性が高いことが示唆された。
実施例7.血中抗酸化作用の含量依存性評価
DRAを様々な濃度で含有するオリーブ抽出物の血中抗酸化作用を比較した。
<測定方法>
SD(IGS)系雄性ラット(6週齢)を日本チャールスリバー社より購入し、1週間試験環境で馴化させた後、順調な発育を示した動物を一晩絶食させ、各群4匹からなる5群に分けた。実施例2と同様の方法で製造したDRAと、調製例1で得られたオリーブ抽出物を用いて、DRA含有オリーブ抽出物を調製した。このDRA含有オリーブ抽出物をオリーブオイルに溶解させて、DRAを0、0.5、1、2、5%含有する投与液を作成し、5 ml/kgの用量でゾンデを用いて経口投与した。投与前、投与後1、3、6、9、24時間後に尾静脈よりヘパリン採血管に血液を採取し、遠心分離操作(8,000 rpm、10 min)により血漿サンプルを得た。後日血漿FRAP活性を測定した。
【0052】
結果を図11に示す。DRAの含量依存的に血中抗酸化活性は上昇し、2%以上の濃度で明らかな血中抗酸化活性の上昇作用を認めた。
実施例8.血中抗酸化活性
オリーブ抽出物の脱ラムノシル反応有無による血中抗酸化活性をFRAP活性により比較した。
<測定方法>
サンプルは、実施例4で調製したDRA含有オリーブ抽出物(DRA含量8.9%)と、実施例4の工程のうち、脱ラムノシル反応のみを行わず、他の工程は同様に処理した酵素未処理のオリーブ抽出物(アクテオシド含量9.1%)を用いた。
【0053】
SD(IGS)系雄性ラット(6週齢)を日本チャールスリバー社より購入し、1週間試験環境で馴化させた後、順調な発育を示した動物を試験に供した。一晩絶食させたラットを各群4匹からなる3群に分け、1群にはオリーブオイル溶液、2群にはDRA含有オリーブ抽出物のオリーブオイル懸濁液、3群には酵素未処理オリーブ抽出物のオリーブオイル懸濁液をそれぞれ500 mg/5 ml/kgの用量でゾンデを用いて経口投与した。投与前、投与後1、3、6、9、24時間後に尾静脈よりヘパリン採血管に血液を採取し、遠心分離操作(8,000 rpm、10 min)により血漿サンプルを得た。後日血漿FRAP活性を測定した。
【0054】
結果を図12に示す。酵素処理によりDRA含量を高めることで抗酸化活性を上昇させることが確認できた。
実施例9.DRAの徐放性
試験動物および投与液は実施例8と同様の方法にて準備した。投与は、500 mg/5 ml/kgの用量を24時間間隔で5日間連続投与し、最終投与9時間後にヘパリン採血管に血液を採取し、遠心分離操作(8,000 rpm、10 min)により血漿サンプルを得た。後日血漿FRAP活性を測定した。
【0055】
結果を図13に示す。DRA含有オリーブ抽出物投与群で酵素処理をしないオリーブ抽出物投与群と比較して、最終投与9時間後の血中抗酸化活性の有意な上昇が認められ、DRAの徐放性が確認された。
製剤例1.錠剤
(1粒あたり配合量)
DRA含有オリーブ抽出物(DRA含量8.9%) 25 mg
無水ケイ酸 5 mg
微結晶セルロース 120 mg
マルチトール 150 mg
上記各成分を均一に混合し、単発式打錠機にて打錠し、径10 mm、1粒300 mgの錠剤を製造した。1日あたり4粒を推奨摂取量とする。

製剤例2.顆粒剤
(スティック1本あたり配合量)
DRA含有オリーブ抽出物(DRA含量8.9%) 150 mg
トウモロコシデンプン 400 mg
マルチトール 1000 mg
上記各成分を均一に混合した後に10%ハイドロキシプロピルセルロース・エタノール溶液100 mlを加え、常法通り練和し、押し出し、乾燥して顆粒剤を得た。このスティック1.5g/本を1日あたり1本摂取する。

製剤例3.ソフトカプセル剤
一粒あたり配合量 1日2粒を推奨摂取量とする。
【0056】
(重量%)
ゼラチン 70.0
グリセリン 29.7
カラメル 0.3
水 適量
合計 100
上記成分からなるソフトカプセル剤皮の中に、以下に示す組成物を常法により充填し、1粒300 mgのソフトカプセルを得た。このソフトカプセル1日2粒を推奨摂取量とする。
【0057】
(一粒あたり配合量)
DRA含有オリーブ抽出物(DRA含量8.9%) 50 mg
ビーワックス 0.02 ml
オリーブオイル 0.1 ml

製剤例4.ドリンク剤
呈味:DL−酒石酸ナトリウム 0.1 g
コハク酸 0.009 g
甘味:液糖 800 g
ビタミンC 10 g
DRA含有オリーブ抽出物(DRA含量8.9%) 1 g
ビタミンE 30 g
シクロデキストリン 5 g
香料 15 ml
塩化カリウム 1 g
硫酸マグネシウム 0.5 g
上記成分を配合し、水を加えて10 Lとした。このドリンク剤は、1回あたり約100 mlを飲用する。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、生体内で高い抗酸化作用を長時間発揮する飲食品、医薬部外品及び医薬が提供される。
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図13