(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046061
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】膝蓋大腿関節の切除用案内ツール
(51)【国際特許分類】
A61B 17/15 20060101AFI20161206BHJP
A61B 17/17 20060101ALI20161206BHJP
A61B 17/90 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
A61B17/15
A61B17/17
A61B17/90
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-558514(P2013-558514)
(86)(22)【出願日】2012年3月16日
(65)【公表番号】特表2014-515650(P2014-515650A)
(43)【公表日】2014年7月3日
(86)【国際出願番号】GB2012050583
(87)【国際公開番号】WO2012123758
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2015年1月20日
(31)【優先権主張番号】1104510.1
(32)【優先日】2011年3月17日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512278386
【氏名又は名称】バイオメット ユーケイ ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】マーレイ ディヴィッド ウィクリフ
(72)【発明者】
【氏名】ドッド クリストファー アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ロイド ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】リドリー ダンカン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ウィリアム キース
【審査官】
井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】
特表2000−505337(JP,A)
【文献】
特表2008−540057(JP,A)
【文献】
特表2008−522665(JP,A)
【文献】
特表2000−501633(JP,A)
【文献】
特表平11−504532(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0036383(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0260301(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0153066(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/15
A61B 17/17
A61B 17/90
A61B 17/56
A61F 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨片の切除を案内するための案内ツールであって、
骨対向面を有する本体と、
前記本体を貫通するように延び且つ縁切除面を有する縁切除具案内開口と、
前記本体を貫通するように延び且つ鋸切除面を有する鋸案内開口と、を有し、
前記縁切除具案内開口は、凹凸のある周囲によって定められ、
前記縁切除面及び前記鋸切除面は、前記本体の骨対向面の側で交差して骨片切除面を構成する、案内ツール。
【請求項2】
2つの前記鋸切除面が、前記骨片切除面が凹形であるように互いに傾斜する、請求項1に記載の案内ツール。
【請求項3】
前記縁切除具案内開口は、前記縁切除具案内開口の略中央に配置され且つ骨の解剖学的特徴部と整列することが可能である整列特徴部を有する、請求項1又は2に記載の案内ツール。
【請求項4】
前記本体は、使用時に切除された骨表面に当接させることが可能なプレートを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の案内ツール。
【請求項5】
前記プレートの縁部は、前記骨片の切除に続いて移植される補綴具の対応する縁部と一致するように形状決めされる、請求項4に記載の案内ツール。
【請求項6】
前記本体は、更に、前記プレートの縁部から突出する顆状棚部を有し、前記棚部は、前記プレートに対して傾斜する、請求項4又は5に記載の案内ツール。
【請求項7】
前記顆状棚部は、中央の横方向軸線を横切るように湾曲する、請求項6に記載の案内ツール。
【請求項8】
前記縁切除具案内開口は、前記顆状棚部を貫通するように延びる、請求項6又は7に記載の案内ツール。
【請求項9】
更に、前記顆状棚部の骨側表面から突出する少なくとも1つの突起を有する、請求項6〜8のいずれか1項に記載の案内ツール。
【請求項10】
前記本体は、更に、窓を有し、前記窓は、前記本体を貫通するように開口し、整列特徴部を支持する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の案内ツール。
【請求項11】
更に、追加の鋸切除面を有する追加の鋸案内開口を有し、前記追加の鋸切除面は、前記縁切除面と交差し、前記追加の鋸切除面は、前記鋸切除面と交差する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の案内ツール。
【請求項12】
前記本体は、固定要素を受入れ可能な複数の固定用開口を更に有し、前記固定用開口の少なくとも1つは、前記鋸案内開口と前記縁切除具案内開口との間に位置決めされる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の案内ツール。
【請求項13】
前記固定用開口の少なくとも1つは、前記固定用開口の他のものよりも大きい直径を有する、請求項12に記載の案内ツール。
【請求項14】
前記固定用開口の少なくとも1つは予備の開口である、請求項12又は13に記載の案内ツール。
【請求項15】
更に、少なくとも1つのドリル案内開口を有し、前記ドリル案内開口は、前記骨片の切除に続いて移植される補綴具のペグ用孔の孔開けを案内することが可能である請求項1〜14のいずれか1項に記載の案内ツール。
【請求項16】
前記案内ツールは、前記膝蓋関節の領域において大腿骨遠位部の切除を案内する、請求項1〜15のいずれか1項に記載の案内ツール。
【請求項17】
前記縁切除面と前記鋸切除面は、前記本体の骨対向面から約5mm〜約40mmの間の平均距離のところで交差する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の案内ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内ツールに関し、特に、限定されるものではないが、膝蓋大腿関節のための大腿骨表面置換型補綴具を移植する前に大腿骨遠位部の切除を案内する案内ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
関節の表面置換処置は、表面置換型補綴具の移植を可能とするために、一部又は全てが病気であるか又は退化している場合がある骨の外層の除去又は切除を必要とする。表面置換型補綴具は、露出した骨の表面に接触して固定できる骨係合面と、隣接する天然の又は人工の軸受面と関節連結するように設計された軸受面とを含む。再生された関節の正確な作動を保証するために、表面置換型補綴具の軸受面は、隣接する構造体に対して正確な解剖学的位置となる必要がある。再生された関節の安定性を向上させるために、移植物の骨係合面は、その上に固定されることになる骨の切除面と厳密に一致することが重要である。移植物の端部において、補綴具から骨表面への滑らかな移行を実現することも望ましい。この移行部が滑らかであるか否かは、既存の骨表面の切除の正確性により決まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
膝蓋大腿関節は、大腿骨遠位部補綴具の移植によって表面置換できる天然の関節の例である。この関節に関する既存の表面置換処置は、大腿骨遠位部をフリーハンドで切除することが必要である。通常、切除は、テンプレートの周りで線を引き、骨刀又はやすりで骨を除去することにより行われる。しかしながら、大腿骨遠位部の補綴具の骨係合面は、三次元的に変化する複雑な表面である。このような表面はフリーハンドツールを使用して再現することは不可能なので、このような従来の方法では、外科医は、切除した骨表面と補綴移植物との間の完全な一致を実現することができない。更に、骨の相当領域をフリーハンドで除去することは、外科的に大きい損害を与えることになる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明により、骨片の切除を案内するための案内ツールが提供され、案内ツールは、本体と、本体を貫通するように延び且つ縁切除面を有する縁切除具案内開口と、本体を貫通するように延び且つ鋸切除面を有する鋸案内開口とを有し、縁切除具案内開口及び鋸案内開口は、縁切除面と鋸切除面が交差して、骨片切除面を構成するように整列している。
【0005】
本明細書の目的のために、表面は平坦又は凹凸とすること、閉ループを形成できることに留意すべきである。例えば、鋸案内開口は、鋸刃が通って骨に入り込むことができる平坦な表面を有することができる。縁切除具案内開口は、縁切除具を使用する骨除去の他の方法を可能にするように、鋸を使用する場合に比べて幾分大きくすることができる。従って、縁切除具案内開口が有する縁切除面は、縁切除具案内開口によって案内される縁切除の作用により除去される骨の周りの閉ループを備えることができる。骨片切除表面は、三次元的に変化し、縁切除面と鋸切除面との交差部で形成される複雑な表面を備えることができる。
【0006】
縁切除面と鋸切除面とは、切除方向に収束することができ、骨片切除面は凹形である。切除方向は、典型的には、骨表面へ入り込み、縁切除面及び鋸切除面は、180度よりも小さい内角で合流して凹形の骨片切除面を形成する。
【0007】
縁切除具案内開口は、凹凸のある縁切除面を有することができ、整列特徴部を備えることができる。
【0008】
例えば、整列特徴部は、縁切除具案内開口の片側又は他方側のノッチとすることができる。整列特徴部は、縁切除具案内開口の略中央に位置することができ、骨の解剖学的特徴部と整列することを可能とすることができる。例えば、整列特徴部は、膝蓋大腿関節の表面置換の一部として切除の準備において、関節滑車と整列することを可能とすることができる。
【0009】
案内ツールの本体は、使用時に切除された骨表面の上に当接することが可能なプレートを備えることができる。例えば、プレートは大腿骨遠位部の切除された前方表面の上に載ることが可能な前方プレートとすることができる。
【0010】
鋸案内開口は、プレートを貫通するように延びることができ、プレート平面に対して傾くことができる。
【0011】
プレート端部は、骨片の切除に続いて移植される補綴具の対応する端部と一致するように形作ることができる。このようにして、端部は第2の整列特徴部として機能し、結果的に移植された補綴具が骨表面に当接する場所を視覚化することができる。
【0012】
本体は、前方プレートの端部から突出する棚部をさらに備えることができる。棚部は前方プレートと一体的に形成可能である。
【0013】
棚部は、顆状棚部とすることができる。
【0014】
棚部は、プレートに対して傾斜するのがよく、例えば、大腿骨遠位部の湾曲部に近づくことができる。
【0015】
棚部は、中央の横方向軸線を横切って湾曲して、例えば、ある程度、大腿骨遠位部の顆間ノッチの天然の凹面を反映する凸形の骨側表面を提示することができる。棚部は、切除器具と対向する凹面を提示することができる。
【0016】
縁切除具案内開口は、棚部を貫通するように延びることができる。
【0017】
案内ツールは、棚部の骨係合面から突出する少なくとも1つの突起をさらに備えることができる。案内ツールは、棚部の骨表面からの管理された離隔をもたらすように寸法決めさた少なくとも2つの突起を備えることができる。突起は、骨表面からの一定の離隔をもたらすことができる。突起は、プレートとの結合部から遠く離れた棚部領域に配置することができる。
【0018】
本体は、本体を貫通して整列特徴部を有する窓開口をさらに備えることができる。窓は、例えば、ツールの外側又は内側、例えば、プレート上又はプレートと棚部との結合部に配置することができる。整列特徴部は、ノッチ又は窓の向かい合う端部にある整列された一対のノッチとすることができる。1つのノッチ又は複数のノッチは、骨の切除に続いて移植される補綴具の外側又は内側に対応することができる。従って、窓及び1つ又は複数のノッチとは、別の整列特徴部として機能して、移植した補綴具が最終的に骨表面のどこに当接しているのかを視覚化することができる。
【0019】
案内ツールは、縁切除面と交差する追加の鋸切除面を有する追加の鋸案内開口をさらに備えることができる。同様に、追加の鋸切除面は、鋸切除面と交差することができる。
【0020】
このようにして、2つの鋸切除面は谷部を有して、その端部は縁切除面と交差して骨片切除面を形成することができる。
【0021】
本体は、固定要素を受入れ可能な複数の固定用開口をさらに備えることができる。適切な固定要素は、例えば、ピン又は骨ネジから成ることができる。
【0022】
固定用開口の少なくとも1つは、鋸案内開口と縁切除具案内開口との間に位置決めすることができる。このようにして、案内ツールに関する固定点の少なくとも1つは、ツールの支援により切除されることになる骨片上に位置決めすることができる。
【0023】
固定用開口の少なくとも1つは、他の固定用開口よりも大きい直径を有することができる。少なくとも1つの固定用開口は、対応する固定要素のステム部分よりも大きい直径として、結果的に固定要素とツールとの間に何らかの遊びを確保することができる。
【0024】
固定用開口の少なくとも1つは二重化することができる。この二重化により、外科医の固定位置の選択肢が増えるので、ツールの正確な位置合わせに際して、固定用開口の1つが、骨空洞、又は損傷又は劣化した骨の上に位置決めされたとしても、別の固定用開口をツール全体の安定性を損ねることなく使用できる。
【0025】
案内ツールは、少なくとも1つのドリル案内開口をさらに備え、例えば3つのドリル案内開口を備えることができる。
【0026】
ドリル案内開口は、骨片の切除に続いて移植される補綴具のペグ用孔の孔開けを案内することを可能とすることができる。
【0027】
案内ツールは、膝蓋大腿関節の領域において、大腿骨遠位部の切除を案内するものとすることができる。
【0028】
本発明をより良く理解して、本発明を実行する方法をより明確に示すために、例示的に以下の図面を参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】関節連結表面を示す、大腿骨表面置換補綴具の斜視図である。
【
図2】骨係合面を示す、
図1の大腿骨表面置換補綴具の別の斜視図である。
【
図3】骨係合面を示す、
図1の大腿骨表面置換補綴具の別の斜視図である。
【
図7】大腿骨遠位部に配置された
図4の案内ツールの斜視図である。
【
図14】
図1〜
図3の補綴具を切除後の骨表面に配置した、
図13の切除後の大腿骨遠位部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1〜
図3に、膝蓋大腿関節のための大腿骨表面置換用の補綴具2を示す。補綴具2は、膝蓋骨表面置換用の補綴具又は天然の膝蓋骨(図示せず)と関節連結するように形状決めされた関節連結表面4と、骨係合面6を有している。骨係合面6は、切除後の大腿骨遠位部に隣接して当接するように設計され、適所にセメント固定されるのがよい。骨係合面6は比較的複雑な表面であり、三次元的に変化することに留意すべきである。骨係合面6は、略平坦な第1の部分8と、略「V」字形の第2の部分10を有し、骨係合面6の2つの部分8、10はそれぞれ、補綴具2の前方領域9及び後方領域11に対応する。骨係合面6の各部分8、10は、僅かに凹形であり、その外周に突出境界部16が設けられるのがよい。凹形の表面部分8、10及び突出境界部16により、2つの浅い凹部13、15が形成され、補綴具2をしっかり固定するための骨接着剤を、2つの浅い凹部13、15に充填するのがよい。補綴具2の外周12は、特に骨係合面6の第2の部分10の領域で凹凸の経路をたどる。4つの固定用ペグ14が、骨係合面6から突出し、補綴具が取付けられる骨表面にドリル加工された孔に受入れられる。補綴具の他の実施形態は(図示せず)、異なる数の固定用ペグ14を有していてもよい。例えば、小柄な患者用に設計された小型の大腿骨表面置換用の補綴具2は、3つの固定用ペグ14だけを有していてもよい。
【0031】
図4〜
図6を参照すると、大腿骨遠位部の切除作業を案内するのに適した案内ツール100が、本体102を有し、本体102は、第1の部分104と第2の部分106を有している。第1の部分104は、第1の平面内に延びる前方プレート108を有している。第2の部分106は、顆状棚部110を有し、顆状棚部110は、前方プレート108と一体に形成され、案内ツール100の幅にわたって変化する角度αで前方プレート108の平面から外方に突出している。前方プレート108及び顆状棚部110は、結合領域112で交差する。案内ツール100は、骨側表面114及び切除側表面116を有している。前方プレート108の場合、骨側表面は、骨係合面114である。後で詳細に説明するように、案内ツール100の結合領域112では、骨側表面114は、骨係合面ではなくなる。顆状棚部110は、中央の横方向線を横切って湾曲し、凹形の切除側表面116と、凸形の骨側表面114とを有している。凸形の骨側表面114は、大腿骨遠位部の顆間ノッチの凹面と実質的に同じであり、顆状棚部110は、ノッチに隣接して当接する。
【0032】
案内ツール100は、案内ツール100の前方プレート108を貫通するように延びる第1の鋸案内開口120及び第2の鋸案内開口122を有している。鋸案内開口120、122の各々はそれぞれ、平坦な鋸切除面を有し、往復動鋸(図示せず)が、鋸案内開口によって案内されながら、それに沿って移動する。鋸案内開口120、122の各々は、前方プレート108に対して傾斜し、それに対応する顆状棚部110の領域と略平行である。かくして、鋸案内開口120、122は、互いに対して傾き、それにより、互いに平坦な鋸切除面は、前方プレート108から遠ざかるように延びる谷部を形成する。鋸案内開口120、122において、
図4及び
図6の左側に示すように、その両側が閉じていてもよいし、
図4及び
図6の右側に示すように、その片側が開放していてもよい。
【0033】
また、案内ツール100は、顆状棚部110を貫通するように延びる縁切除具案内開口130を有している。縁切除具案内開口130は、中央から両側へ顆状棚部を横切る凹凸経路に沿っている。縁切除具案内開口130は、閉ループの外周132によって定められ、外周132は、顆状棚部から遠ざかるように且つ顆状棚部に対して実質的に垂直に延びる縁切除面を定める。外周132の下側領域、即ち、後方領域134は、移植すべき補綴具2の後方外周12に実質的に一致する。骨領域の切除を平面に沿って案内する鋸案内開口120、122とは対照的に、縁切除具案内開口は、縁切除面の閉ループ132によって境界が定められる領域である骨の全体領域の除去を案内する。
【0034】
ドリル案内開口140、142、144、146は、案内ツール100の本体102を貫通するように延び、略円柱形のドリルビットをドリル加工軸線に沿って案内するように機能する。ドリル案内開口は、前方プレート108を貫通するように延びる3つの開口140、142、144と、顆状棚部110を貫通するように延びる1つの開口のグループをなして配列される。前方プレート108のドリル開口140、142、144は、これらの開口に対する支持肩部を形成する傾斜突起148、150、152に形成され、案内されるドリルビットに対する追加の安定性を付与し、傾斜したドリル軸線を定める。顆状棚部110のドリル案内開口146も、支持肩部(図示せず)を有するのがよい。ドリル案内開口140、142、144、146の各々は、大腿骨の補綴具2の複数の固定用ペグ14のうちのそれぞれの1つに一致するように配置され且つ傾斜している。3つの固定用ペグ14だけを有する小型の大腿骨表面置換補綴具2と一緒に使用する案内ツール100は、それに対応して、3つのドリル案内開口だけを有し、前方プレート108の開口142は省略される。
【0035】
また、ピン又はねじ(図示せず)の形態の固定要素の通行を可能にする固定用開口が、ドリル案内部100の本体102を貫通するように延びている。後で詳細に説明するように、第1の固定用開口166が、前方プレート108を貫通するように延び、他の固定用開口よりも大きい直径を有し、大きいヘッド付きネイルと協働する。第2の固定用開口160が、顆状棚部110の中央領域の近くで且つ前方プレート108との結合領域112と縁切除具案内開口130との間を、顆状棚部110を貫通するように延びている。また、残りの固定用開口162、164、168が、前方プレート108を貫通するように延び、第2の固定用開口160と同じ直径を有し、適当な固定要素を受入れるように寸法決めされている。
【0036】
特に
図5を参照すると、2つの突起170、172(図示せず)が、顆状棚部110の骨対向面114から、顆状棚部110の骨対向面114に対して実質的に直交するように突出している。突起170、172の自由端は、顆状骨表面に係合するように機能し、案内ツール100を大腿骨遠位部の上に配置したとき、突起170、172は、それが当接する顆状骨表面から立ち上がり、かかる立ち上がりは制御されている。突起170、172は、隣接した顆状骨表面の幾何学形状に順応するように、且つ、案内ツール100を顆状骨表面から所望のオフセット位置に配置するように、異なる長さを有していてもよい。
【0037】
複数の位置決め特徴部が、案内ツール100に組込まれている。ノッチ180が、顆状棚部110の切除側表面116に形成され、縁切除具案内開口130を渡るように延びている。後で説明するように、ノッチ180は、大腿骨の関節滑車と整列するように機能するために、顆状棚部110の切除側表面に配置されている。同様のノッチ182が、前方プレート108に形成され、前方プレート108を貫通するように開口する窓184にわたって延びている。移植すべき補綴具2の側方輪郭を示すノッチ
182が配置されている。また、前方プレートの外周188は、補綴具の前方領域9の外周12と一致するように形状決めされ、骨表面の切除が完了したときに補綴具2が当接する箇所の目印を構成する。
【0038】
案内ツール100の使用方法を
図7から
図14及び膝蓋大腿関節の大腿骨表面置換処置を参照して以下に説明する。
【0039】
大腿骨の表面置換処置において、最初に切開を行って軟組織を取除き、関節にアクセスする必要がある。膝蓋骨を裏返すか又は亜脱臼させて、大腿骨遠位部の前方表面及び顆状表面へのアクセスを可能にする。
【0040】
大腿骨の前方表面を切除して平坦な前方骨表面を形成する。次に、前方プレート108を、大腿骨の切除した前方表面に当接させ、突起170、172を大腿骨の顆状表面に当接させることにより、案内ツール100を大腿骨遠位部に取付ける。案内ツール100の顆状棚部110の傾斜により、顆状棚部が、大腿骨遠位部の前方表面から顆状表面までの湾曲に概ね従うことを可能にする。中央横方向の顆状棚部110の湾曲は、顆間ノッチの湾曲に実質的に従うので、突起が顆状表面に当接することを可能にする。次に、案内ツール100が概ね正しい位置にあることを確保する基本整列を行う。このプロセスは、後で詳細に説明する後続のプロセス段階で行う精密な整列を簡略化したプロセスである。
【0041】
基本整列が完了し、案内ツール100が概ね正しい位置にあれば、大きいヘッド付きネイル(図示せず)を第1の固定用開口166から骨内に挿入する。第1の固定用開口166は大きい直径を有し、ネイルに対して「オーバサイズ」であることに留意すべきである。大きいヘッド付きネイルは、前側プレート108の切除側表面116に係合し、前側プレート108従って案内ツール100が前方骨表面から遠ざかる移動を阻止する。しかしながら、大きいヘッド付きネイルのシャフトは、第1の固定用開口にぴったり受入れられておらず、このことは、前方骨表面の平面内における案内ツール100と大きいヘッド付きネイルとの間のいくらかの移動に順応することを意味する。
【0042】
案内ツール100を前方骨表面に保持したら、案内ツール100の突起170、172及び整列特徴部を使用して、案内ツールの精密な整列を行う。最初、案内ツール100の位置を、突起170、172が遠位顆状表面にしっかり着座するまで調整する。これにより、顆状表面からの正確かつ実質的に一定の立ち上がりが確保され、縁切除具案内開口を介する切除の正確な深さを確保し、このことを後で詳細に説明する。次に、顆状棚部110の切除側表面上の整列用ノッチ
180を、大腿骨の関節滑車の中心と整列させる。最後に、前方プレート108の外周輪郭188、横方向ノッチ
182、及び窓
184を使用して、移植した補綴具の位置が見えるようにし、周辺の骨特徴部を参照して微調整を行う。
【0043】
案内ツールを正確に整列させたら、ネイル又は骨ネジ(図示せず)を顆状棚部110の第2の固定用開口160から下側の骨に挿入する。ネイル又はネジのヘッド部は、顆状棚部110の切除側表面に係合し、案内ツール100を大腿骨顆部にしっかりと押しつける。第2の固定用開口160を通るネイルを使用して、場所的な位置決めを行うことが望ましい。次に、2つの骨ネジ(図示せず)を、前方プレート108の残りの3つの固定用開口162、164、168のうちの任意の2つに挿入する。ある実施形態では、骨ネジは、使い捨てであるのがよい。追加の2つの骨ネジにより、後続の切除工程中、しっかりとした固定を行い、案内部の任意の潜在的な緩みを回避する。残りの3つの固定用開口のうちの2つだけを使用することによって、固定用開口を設ける際のいくらかの冗長性を確保し、固定用開口の1つが骨の空洞の上に配置されていたり、損傷又は劣化した骨の組織の上に配置されていたりしても、追加の外科的選択肢が与えられる。外科医は、残りの2つのネイル又は骨ネジに対して最も有望な2つの固定部位を選択することができる。例示の固定モードを、特定の固定用開口の中を延びるネイル又はネジを参照して説明したけれども、外科医は、外科手術中、固定用開口に最も適切な固定要素を選択できることを認識すべきである。
【0044】
図8に示すように、案内ツール100を大腿骨遠位部の適所にしっかりと固定したら、補綴具ペグ用の孔を、ドリル案内開口140、142、144、146を介してドリル加工する。標準外科用ドリル300を使用するのがよく、深さストッパ310を採用して、正確な深さの孔をドリル加工することを確保する。案内ツール100の本体102を貫通するドリル案内開口の配向は、支持肩部148、150、152と一緒になって、ペグ用孔が補綴具固定用ペグ14を受入れる正確な角度でドリル加工されることを確保する。上述したように、比較的小さい補綴具の案内ツールの場合、3つのペグ用孔だけが、3つの利用可能なドリル案内開口を介してドリル加工される。
【0045】
1つの実施形態では、次に、ダミーペグを、ドリル加工したペグ用孔に挿入して、ドリル加工した骨と案内ツール100の両方に係合させる。ダミーペグは、縁切除プロセスの間、追加の固定及び安定の層を付与する。
【0046】
次に、
図9に示すように、回転式縁切除具200と従動面を有する軸受210とを使用して、縁切除を、縁切除具案内開口130を介して行う。軸受210の従動面から回転式縁切除具の端部までの縁切除具200の長さは、案内ツール100と協働して移植される大腿骨の補綴具2に適するように選択される。従って、正確な深さの輪郭切除部が骨表面に形成され、輪郭切除部は、大腿骨の補綴具2を受入れて、補綴具2の関節連結表面4から残りの骨表面への滑らかな移行部を形成する。案内ツール100の突起170、172、顆状棚部の厚さ、及び、回転式縁切除具200と軸受210の間の協働により、実行すべき切除深さを決定する。縁切除具案内開口130は、骨組織の領域を除去する際、縁切除具200の方向を決定し、骨組織の後方境界部は、大腿骨の補綴具2の後方領域11の境界部12と正確に一致する。
【0047】
縁切除に続いて、
図10〜
図12に示すように、2つの鋸による切除を、2つの鋸案内開口120、122を介して行う。最初、往復式鋸220を鋸案内開口120、122の一方に挿入し、その後、他方に挿入して、鋸案内開口120、122が有する平坦な鋸切除面に沿って骨組織を切除する。このようにして、案内ツール100は、前方骨表面から始まり且つ前に行った縁切除部と交差する谷形状の骨片の切除を案内する。鋸刃が最後の骨繊維を完全に切除して縁切除部に入ると、外科医は、抵抗の突然の減少を認識して、鋸刃を後退させる必要があるとの合図を認識することができる。しかしながら、ストッパを縁切除部に挿入して、骨の過剰な切除を防止することが望ましい。ストッパ(図示せず)は、縁切除部の底部輪郭又は後方輪郭と正確に一致する形状の携帯式の金属プレートであるのがよい。ストッパを適所に保持して、往復式鋸刃が縁切除部の後方の骨組織へ入込むことを阻止する。
【0048】
鋸切除を開始する前、ネイル又はネジを第2の固定用開口160から取出す必要があり、それは、第2の固定用開口160から骨の中に延びるネイル又はネジが存在により、鋸刃と干渉することがあるからである。
【0049】
鋸切除を完了すれば、骨片全体は大腿骨遠位部から切除されている。次に、案内ツール100を、切除した骨片と一緒に、前方骨表面から分離して除去する。
図13に示す、結果として得られた切除骨表面は、平坦な前方大腿骨の骨400と、関節滑車の領域の凹凸のある後方側輪郭412で終端する谷形状の凹部410を有している。切除された骨表面は、大腿骨の表面置換型補綴具2に正確に一致するものであり、これは
図14の移植位置に見られる。補綴具2は、切除した骨表面に着座し、骨輪郭及び補綴具輪郭は正確に一致する。固定用ペグ14を、ドリル加工により開けられたペグ用孔内に正確に受入れられ、2つの骨係合領域の外周境界部16は、切除された骨表面に正確に着座している。浅い骨接着剤用凹部13、15は、補綴具を取外し不能に固定する骨接着剤を収容する。
【0050】
膝蓋大腿骨の表面置換処置を参照して特定の実施形態の案内ツール100を説明したが、本発明は、多数の表面置換処置及び他の整形外科処置の一部として、異なる骨表面部分の領域を切除するのに適した案内ツールを提供するのに利用してもよいことに留意すべきである。
【0051】
また、本発明の案内ツールは単一部品であり、1つの一体形成されたツールが、案内ツール100を周囲の骨構造に対して位置決めされ、案内ツール100が骨に固定され、骨片を複雑な三次元表面に沿って切除し、移植物のペグ用孔をドリルで孔開けすることを可能にする特徴部を組み込んでいることに留意すべきである。
【0052】
本発明のツールと一緒に機能する追加的な位置決めツール、固定ツール、又はテンプレートツールは必要とされない。従って、ツールは、切除処置の種々の段階を単一の装置で完了するには多数の固定及び位置合わせを必要とする従来公知の器具キットに取って代わるものである。本発明により、複雑な骨表面を切除するために必要とされる全ての切除は、同じツールを用いて行うことができ、中間の位置合わせ段階又は固定段階は必要とされない。更に、移植物のペグ用孔は、同じツールによって孔開けすることができ、同様に、ツールの交換又は再調整は必要とされず、追加的な又は補助的な案内ツールの取付けは必要ない。
【0053】
本発明の利点は、移植物の受入れのための骨表面の準備に必要とされる全ての段階を、単一の位置合わせ処置及び固定処置に続いて同じツールで行うことができることである。従って、本発明のツールは、切除された骨表面の準備を著しく単純化する。特に、膝蓋大腿関節の大腿骨部分の表面置換に関連して、本発明のツールは、従来ではフリーハンド及び視覚によって行われて時間がかかり非常に不正確な方法であって処置に、正確性、効率性、及び再現性を与えるものである。