(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
木綿は優れた吸水性を有し、しかも肌触りが優れていることから、衣料等の繊維製品に好適に使用されている。特に梅雨時の湿度の高い時期や、夏場の気温が高い時期においては、汗等の水分を吸収し、衣類と肌との間の環境を整える効果があるため木綿を使用した衣類が好まれている。
しかしながら、汗等の水分を多量に吸収した木綿にあっては、吸収した水分を肌上に再放出するいわゆる"濡れ戻り"が生じる。濡れ戻りにより、衣類が肌に張り付き易くなり、着用者に不快感を与えるだけでなく、肌表面が濡れによってふやけ易くなり、更に肌と衣類との摩擦が大きくなることから、肌トラブルの原因に繋がることが懸念される。
【0003】
このような、汗等で濡れた場合における濡れ戻りを抑制する技術として、特殊な繊維を用いる技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、内層及び/又は中間層がリヨセル構造で構成されている糸条を有することにより、濡れ戻りが少ない多層構造糸条が開示されている。
特許文献2には、芯部にセルロースのフィラメント繊維を改質して保水能を向上させた吸水性繊維を用い、鞘部に合成繊維を配した複合紡績糸を用いることにより、肌と繊維との接触面に汗を残さない技術が開示されている。
【0004】
また、濡れた繊維製品の速乾性を向上させる技術が知られている。
例えば、特許文献3には主にエアゾール製品として用いる吸水速乾性付与剤組成物が開示されている。具体的には、吸水性を大きく損なうことなく速乾性を付与するためにシリコーン構造を有するポリマーを用いる技術が開示されている。
特許文献4には、炭素数7〜11の直鎖炭化水素基を有する脂肪アルコール、炭素数7〜20の分岐炭化水素基を有する脂肪族アルコール又はそれらの混合物を、肌に直接触れる木綿布に付着させて水拡散促進性を付与する木綿布の処理方法が開示されている。
しかしながら、これらの技術は、基本的に繊維製品の乾燥速度を速めることを課題とするものであり、濡れ戻りの問題自体を直接的に解決するものではない。
なお、特許文献5,6には、ジアルキル型4級アンモニウム塩と脂肪族アルコールとを含有する柔軟剤組成物が記載されているが、これらの特許文献では化繊に対する柔軟性や帯電防止性を改善することについての検討がなされているのみであって、濡れ戻りを改善する点については、なんら検討されていない。また特許文献7には、カチオン性ポリマー等の送達増進剤と布地柔軟化活性物質との安定化剤として炭素数8〜20の飽和分枝鎖アルコールを含有する布地ケア剤が開示されている。
【0005】
一方、特許文献8には、エステル基含有4級アンモニウム型柔軟剤、及び脂肪酸モノグリセリドを含有する柔軟剤が開示されており、特許文献9には、ジメチルジエステル4級アンモニウム型柔軟剤、及び多価アルコールの脂肪酸エステルを含有する柔軟剤組成物が記載されている。
特許文献10には、脂肪酸エステル基を3個以上有する第4級アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤、及び3〜6価の多価アルコールと脂肪酸とのエステル化合物を含有する柔軟仕上げ剤組成物が記載されている。
更に、特許文献11には、特定のカチオン性界面活性剤、多価アルコール非イオン性界面活性剤を含有する液体柔軟剤組成物が開示されている。
これら柔軟剤組成物もまた、濡れ戻りを改善する点については、なんら検討されていない。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、下記(A)成分を5質量%以上、20質量%以下、下記(B)成分を0.5質量%以上、10質量%以下、下記(C)成分を0.5質量%以上、10質量%以下及び水を含有する繊維製品処理剤組成物である。
本発明の繊維製品処理剤組成物によれば、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を併用しているため、この繊維製品処理剤組成物により処理した繊維製品は、未処理の繊維製品と比べて、単繊維が束になって構成される糸に吸収された内部の水が糸表面にしみ出しにくくなり、該糸で構成される繊維製品の濡れ戻りを抑制することができると考えられる。
【0015】
<(A)成分>
本発明の(A)成分は、下記一般式(1)で表され、R
4が炭素数1以上、3以下のアルキル基であり、X
-が有機又は無機の陰イオンである4級アンモニウム塩の混合物において、
R
1が炭素数16以上、22以下の脂肪酸からOHを除いた脂肪酸残基(x)であり、R
2及びR
3が水素原子である化合物(a1)を、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、10質量%以上、45質量%以下含有し、
R
1及びR
2が前記脂肪酸残基(x)であり、R
3が水素原子である化合物(a2)を、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、25質量%以上、70質量%以下含有し、
R
1、R
2及びR
3が前記脂肪酸残基(x)である化合物(a3)を、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中、5質量%以上、40質量%以下含有する4級アンモニウム塩の混合物である。
【0017】
一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中の前記(a1)成分、(a2)成分、及び(a3)成分の割合が前記範囲内であると、繊維製品に付与される濡れ戻り抑制効果が向上する。このような観点から、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中の前記(a1)成分、(a2)成分、及び(a3)成分の割合は、以下のとおりであることが好ましい。
【0018】
一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中の(a1)成分の割合は、10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上であり、そして、45質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは32質量%以下である。
一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中の(a2)成分の割合は、25質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは45質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上であり、そして、70質量%以下、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中の(a3)成分の割合は、5質量%以上、好ましくは8質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは12質量%以上であり、そして、40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
なお、(a2)成分及び(a3)成分は、(B)成分を含有する繊維製品処理剤組成物の保存安定性に影響を与える。そのため(a1)成分の含有量が前記範囲内であると保存安定性を向上させることができる。
【0019】
本発明においては、前記(a1)成分、(a2)成分、及び(a3)成分の割合を満たした上で、一般式(1)で表される4級アンモニウム塩の全量中の(a2)成分の含有量が(a3)成分よりも多いことが好ましく、更に(a2)成分の含有量(質量%)と(a3)成分の含有量(質量%)との差は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上である。
【0020】
一般式(1)において、脂肪酸残基(x)としては、炭素数16以上、22以下、好ましくは炭素数16以上、18以下の脂肪酸からOH(水酸基)を除いた残基が好ましい。 脂肪酸の具体例としては、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、パーム油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、綿実油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、硬化パーム油脂肪酸、牛脂脂肪酸、及び硬化牛脂脂肪酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0021】
一般式(1)中、R
4はメチル基又はエチル基が好ましい。
一般式(1)中、X
-は、有機又は無機の陰イオンであり、クロロイオン等のハロゲンイオン、炭素数1以上、3以下のアルキル硫酸エステルイオン、炭素数12以上、18以下の脂肪酸イオン、及び炭素数1以上、3以下のアルキル基が1個以上、3個以下置換していてもよいベンゼンスルホン酸イオンから選ばれる陰イオンが好ましい。本発明においては、より好ましくは炭素数1以上、3以下のアルキル硫酸エステルイオンであり、更に好ましくはメチル硫酸エステルイオン又はエチル硫酸エステルイオンである。
【0022】
本発明に用いる(A)成分は、脂肪酸とトリエタノールアミンとを脱水エステル化反応させる方法(以下、「脱水エステル化法」という)、又は脂肪酸低級アルキルエステル(低級アルキルはメチル基、エチル基、プロピル基)とトリエタノールアミンとをエステル交換反応させる方法(以下、「エステル交換法」という)により得られたエステル化反応物を、アルキル化剤で4級化反応させることにより得ることができる。
本発明の(A)成分の(a1)成分〜(a3)成分の割合を満たす混合物を得るには、例えば、トリエタノールアミン1モルに対して脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルを1.3モル以上、好ましくは1.5モル以上、そして、2.0モル以下、好ましくは1.9モル以下の比率で反応させたトリエタノールアミン脂肪酸エステルの混合物を4級化反応することにより得ることができる。
【0023】
脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルは、牛脂、パーム油、ヒマワリ油、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油から選ばれる油脂をケン化して得られる脂肪酸組成のものが好ましく、特に牛脂、パーム油及びヒマワリ油から得られる脂肪酸組成のものがより好ましい。
また、これらの脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルは、炭素−炭素不飽和結合を2つ以上有するアルケニル基を多量に含有するため、例えば特開平4−306296号公報に記載されているような晶析や、特開平6−41578号公報に記載されているようなメチルエステルを減圧蒸留する方法、或いは特開平8−99036号公報に記載の選択水素化反応を行うことにより、炭素−炭素不飽和結合を2つ以上含有する脂肪酸の割合を制御することができる。例えば硬化牛脂は牛脂由来の脂肪酸を水素添加により飽和にしたものであり、一部を硬化させたものとして半硬化と表現する場合もある。また、これら硬化の程度を調整したものと硬化処理をしていない脂肪酸とを任意に混合してもよい。
なお、前記選択水素化反応を行った場合には不飽和結合の幾何異性体の混合物が形成するが、本発明ではシス/トランスが25/75〜100/0、好ましくは50/50〜95/5(モル比)が好ましい。
【0024】
脱水エステル化法においては、エステル化反応温度を140℃以上、230℃以下とし、縮合水を除去しながら反応させることが好ましい。反応を促進させる目的から通常のエステル化触媒を用いても差し支えなく、例えば硫酸、燐酸等の無機酸、酸化錫、酸化亜鉛等の無機酸化物、テトラプロポキシチタン等のアルコラート等を選択することができる。
【0025】
反応の進行はJIS K0070−1992に記載の方法で酸価(AV)及び鹸化価(SV)を測定することで確認することができ、AVが好ましくは10mgKOH/g以下、より好ましくは6mgKOH/g以下となった時にエステル化反応を終了する。
得られたエステル化合物の混合物のSVは、好ましくは110mgKOH/g以上、より好ましくは130mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは210mgKOH/g以下、より好ましくは190mgKOH/g以下である。
【0026】
エステル交換法においては、反応温度を好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上、そして、好ましくは150℃以下とし、生成する低級アルコールを除去しながら行うことが好ましい。反応促進のために水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリや、メチラート、エチラート等のアルコキシ触媒を用いることも可能である。
反応の進行はガスクロマトグラフィー等を用いて脂肪酸低級アルキルエステルの量を直接定量することが好適であり、未反応脂肪酸低級アルキルエステルが仕込みの脂肪酸低級アルキルエステルに対してガスクロマトグラフィーチャート上で10面積%以下、特に6面積%以下となった時に反応を終了させることが好ましい。
得られたエステル化合物の混合物のSVは、好ましくは110mgKOH/g以上、より好ましくは130mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは210mgKOH/g以下、より好ましくは190mgKOH/g以下である。
【0027】
4級アンモニウム塩を得るためには前述の方法で得られたエステル化合物の4級化を行う。4級化に用いることができるアルキル化剤としては、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が好適である。アルキル化剤として、メチルクロリドを用いる場合には、特に溶媒を使用する必要はないが、溶媒を使用する場合は、エタノールやイソプロパノール等の溶媒を、エステル化合物に対して10質量%以上、50質量%以下程度混合した溶液をチタン製のオートクレーブ等の加圧反応器に仕込み、密封下30℃以上、120℃以下の反応温度でメチルクロリドを圧入させて反応させる。このときメチルクロリドの一部が分解し塩酸が発生する場合があるため、反応を効率的に進行させる観点から、アルカリ剤を少量加えることが好ましい。
メチルクロリドとエステル化合物とのモル比は、エステル化合物のアミノ基1当量に対してメチルクロリドを1当量以上、1.5当量以下用いることが好ましい。
【0028】
アルキル化剤としてジメチル硫酸、ジエチル硫酸を用いる場合には、好ましくは、エタノールやイソプロパノール等の溶媒をエステル化合物に対して10質量%以上、50質量%以下程度混合した溶液を40℃以上、100℃以下に加熱混合し、ジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸を滴下して行うことができる。
ジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸とエステル化合物とのモル比は、エステル化合物のアミノ基1当量に対してジメチル硫酸及び/又はジエチル硫酸を好ましくは0.9当量以上、より好ましくは0.95当量以上、そして、好ましくは1.1当量以下、より好ましくは0.99当量以下である。
【0029】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A)成分の製造時に生成される副生成物を含有してもよい。副生成物としては、例えば、4級化されなかった未反応アミン、具体的には脂肪酸トリエステルのアミンと脂肪酸ジエステルのアミンが挙げられる。脂肪酸トリエステルのアミンと脂肪酸ジエステルのアミンとの合計量は、製造方法にもよるが、通常、(A)成分100質量部に対して30質量部以下である。
一方、脂肪酸モノエステルのアミンは4級化され易いことから、通常、反応生成物中の含有量は(A)成分100質量部に対して0.5質量部以下である。
更に、脂肪酸エステル化されなかったトリエタノールアミン及びトリエタノールアミンの4級化物の合計含有量は、通常、(A)成分100質量部に対して0.5質量部以上、3質量部以下であることが多く、このうちの90質量%以上は4級化物である。
また、前記副生成物以外にも、(A)成分中には未反応脂肪酸が含まれることもある。
【0030】
(A)成分である(a1)、(a2)及び(a3)化合物やアミン化合物の割合等は高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」ともいう)を用い、検出器として荷電荷粒子検出器(Charged Aerosol Detection、以下、「CAD」ともいう)を使用して求めた。CADを用いた測定方法については「荷電化粒子検出器Corona CADの技術と応用」(福島ら Chromatography, Vol.32 No.3(2011))を参考にすることができる。なお、質量比率は、一般式(1)の陰イオン(X
-)をメチル硫酸イオンとして仮定することで求めるものとする。
【0031】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、ソルビタンと炭素数16以上、22以下の脂肪酸とから得られるソルビタン脂肪酸エステルである。本発明においては、ソルビタン脂肪酸エステルを前記(A)成分と併用することで、優れた濡れ戻り抑制効果を得ることができる。
本発明におけるソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸がパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びエライジン酸から選ばれる1種以上であるソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、ソルビタンステアリン酸エステルがより好ましい。
ソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタン脂肪酸モノエステル、ソルビタン脂肪酸ジエステル、及びソルビタン脂肪酸トリエステルから選ばれる1種以上であり、濡れ戻り抑制性及び安定性の観点から、ソルビタン脂肪酸モノエステルが好ましく、ソルビタンステアリン酸モノエステルがより好ましい。
なお、本発明におけるソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビタン脂肪酸モノエステル、ソルビタン脂肪酸ジエステル、及びソルビタン脂肪酸トリエステルの混合物(場合によっては、更に微量のソルビタン脂肪酸テトラエステル含む混合物)であってもよい。該混合物を用いる場合は、該混合物中においてソルビタン脂肪酸モノエステルの含有量が一番多いことが好ましい。
ソルビタン脂肪酸エステルは、レオドールの商品名で花王株式会社から購入することができる。また公知の方法で製造してもよい。
【0032】
本発明における(B)成分の酸価(AV)は、濡れ戻り抑制効果を向上させる観点から、好ましくは3mgKOH/g以上、より好ましくは5mgKOH/g以上であり、好ましくは12mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以下である。
また本発明における(B)成分の鹸化価(SV)は、濡れ戻り抑制効果を向上させる観点から、好ましくは130mgKOH/g以上、より好ましくは145mgKOH/g以上であり、好ましくは170mgKOH/g以下、より好ましくは160mgKOH/g以下である。
なお、酸価(AV)及び鹸化価(SV)は、JIS K0070−1992に記載の方法で測定することができる。
【0033】
<(C)成分>
(C)成分としては、濡れ戻り抑制効果を向上させる観点から、炭素数12以上、18以下の直鎖脂肪族第一級飽和アルコールを用いる。本発明における(C)成分は直鎖脂肪族第一級アルコールであることが重要であり、当該脂肪族アルコールが、前記(A)成分及び前記(B)成分の併用による濡れ戻り防止効果を効果的に発揮する上で重要な因子である。
直鎖脂肪族第一級飽和アルコールの炭素数は、濡れ戻り抑制効果をより向上させる観点から、12以上、18以下、好ましくは14以上、18以下である。
具体的なアルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、及びステアリルアルコールから選ばれる1種以上を用いることができる。
これらの中でも、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールが好ましく、ミリスチルアルコール、セチルアルコールがより好ましい。
【0034】
<(A)〜(C)成分の含有量及び含有比>
本発明の繊維製品処理剤組成物中の(A)成分の含有量は、5質量%以上、好ましくは6質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、より更に好ましくは9質量%以上であり、そして、20質量%以下、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは13質量%以下である。
【0035】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物中の(B)成分の含有量は、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上であり、そして、10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
【0036】
また、本発明の繊維製品処理剤組成物中の(C)成分の含有量は、濡れ戻り抑制効果を向上させる観点、及び繊維製品処理剤の分散安定性を向上させる観点から、0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、10質量%以下、好ましくは9質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
【0037】
本発明の繊維製品処理剤組成物において、(B)成分に対する(A)成分の質量比[(A)/(B)]は、より優れた濡れ戻り抑制効果を向上させる観点、及び繊維製品処理剤組成物の安定性を向上させる観点から、好ましくは0.6以上、より好ましくは1以上であり、濡れ戻り抑制効果を向上させる観点から、好ましくは19以下、より好ましくは13.3以下、更に好ましくは9以下、より更に好ましくは7以下、より更に好ましくは5以下である。
本発明の繊維製品処理剤組成物の残部は水である。水は、脱イオン水、脱イオン水に次亜塩素酸塩を少量配合した滅菌した水、水道水等を用いることができる。
【0038】
<繊維製品処理剤組成物のpH>
本発明の繊維製品処理剤組成物の30℃におけるpHは、好ましくは2.5以上、より好ましくは3.0以上であり、そして、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下である。繊維製品処理剤組成物のpHが前記範囲内であると、処理後の繊維製品の発香性及び残香性が向上すると共に、繊維製品処理剤組成物の保存安定性が向上する。なお、本明細書におけるpHは、JIS K 3362;2008の項目8.3に従って30℃で測定した値である。
繊維製品処理剤組成物のpHを前記範囲内に調整する方法としては、アルカリ剤と酸性化合物によって調整する方法が挙げられる。
【0039】
<繊維製品処理剤組成物の粘度>
本発明の繊維製品処理剤組成物の30℃における粘度は、使用しやすさの観点から、好ましくは5mPa・s以上、より好ましくは10mPa・s以上であり、そして、好ましくは300mPa・s以下、より好ましくは200mPa・s、より更に好ましくは150mPa・sである。
本明細書における粘度は、B型粘度計を用いて、No.1〜No.3ローターの何れかのローターを用い、60r/minで、測定開始から1分後の指示値により測定することができる。なお、測定にあたっては繊維製品処理剤組成物を30±1℃に調温して測定する。
【0040】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、以下に示す成分を含有することが好ましい。
〔(D)その他の界面活性剤〕
本発明の繊維製品処理剤組成物には、(D)成分として、(A)成分及び(B)成分以外の界面活性剤を含有することが好ましい。
(D)成分としては、陽イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
陽イオン性界面活性剤としては、下記(I)〜(III)から選ばれる一種以上が好ましく、(II)から選ばれる一種以上がより好ましい。
(I):アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上、22以下のジ長鎖アルキル又はアルケニルジメチルアンモニウム塩
(II):アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上、22以下のモノ長鎖アルキル又はアルケニルトリメチルアンモニウム塩
(III):アルキル基又はアルケニル基の炭素数が10以上、22以下のモノ長鎖アルキル又はアルケニルジメチルフェニルアンモニウム塩
【0041】
非イオン性界面活性剤としては、下記(IV)及び(V)から選ばれる1種以上が挙げられる。
(IV):下記一般式(D1)で表される非イオン性界面活性剤
R
1g−O−[(C
2H
4O)
s(C
3H
6O)
t]−H (D1)
〔式中、R
1gは、炭素数8以上、好ましくは10以上であり、そして、18以下、好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基である。s及びtは平均付加モル数であって、sは6以上、好ましくは10以上であり、そして、50以下、好ましくは40以下の数であり、tは0以上、好ましくは1以上であり、そして、5以下、好ましくは3以下の数である。(C
2H
4O)及び(C
3H
6O)は、ランダム型又はブロック型に結合している。〕
(V):下記一般式(D2)で表される非イオン性界面活性剤
【0043】
〔式中、R
1gは、炭素数8以上、好ましくは10以上であり、そして、18以下、好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基である。Aは−N<又は−CON<であり、u及びvはそれぞれ独立に0以上、40以下の数であり、u+vは5以上、そして、60以下、好ましくは40以下の数である。R
2g、R
3gはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1以上、3以下のアルキル基である。〕
【0044】
(D)成分としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、前記一般式(D1)で表される非イオン性界面活性剤がより好ましい。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(D)成分を含有する場合の(D)成分の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.2質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0045】
〔(E)水溶性有機溶剤〕
本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維製品処理剤組成物の安定性を向上させる観点、粘度を調整する観点から、(E)成分として水溶性有機溶剤を含有することが好ましい。
本発明においては、水溶性有機溶剤として繊維製品処理剤に一般的に用いられるものを使用することができる。なお、(E)成分における「水溶性」とは、20℃の100gの脱イオン水に対して20g以上溶解することをいう。
水溶性有機溶剤としては、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコール、モノエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、イソプロパノール、及びエタノールから選ばれる1種以上を挙げることができる。
これらの中でも、エチレングリコール及びエタノールが好ましい。
本発明の繊維製品処理剤組成物が(E)成分を含有する場合の(E)成分の含有量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下、更に好ましくは4質量%以下である。
【0046】
〔(F)無機塩〕
本発明の繊維製品処理剤組成物は、繊維製品処理剤組成物の貯蔵安定性を向上させる観点から、(F)成分として無機塩を配合することが好ましい。
無機塩としては水溶性無機塩が好ましく、繊維製品処理剤組成物の貯蔵安定性を向上させる観点から、ナトリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩から選ばれる1種以上の水溶性無機塩が好ましく、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムから選ばれる1種以上がより好ましい。なお、(F)成分における「水溶性」とは20℃の100gの脱イオン水に対して20g以上溶解することをいう。
本発明の繊維製品処理剤組成物に(F)成分を配合する場合の(F)成分の配合量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、そして、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0047】
〔(G)酸性化合物〕
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(A)成分である第4級アンモニウム化合物の加水分解を抑制することを目的として、繊維製品処理剤組成物の原液のpHを2.5以上、4.5以下に調整する観点から、(G)成分として酸性化合物を配合することが好ましい。
酸性化合物としては、無機酸又は有機酸が挙げられる。無機酸の具体例としては、塩酸、硫酸が使用できる。
有機酸の具体例としては、炭素数1以上、10以下の1価又は多価のカルボン酸、又は炭素数1以上、20以下の1価又は多価のスルホン酸が挙げられる。より具体的にはメチル硫酸、エチル硫酸、p−トルエンスルホン酸、(o−、m−、p−)キシレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、グリコール酸、メチルグリシン2酢酸、エチレンジアミン4酢酸、クエン酸、安息香酸、及びサリチル酸から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、メチルグリシン2酢酸、エチレンジアミン4酢酸、及びクエン酸から選ばれる1種以上が好ましい。
酸性化合物の配合量に特に制限はなく、pHが前記範囲になるように適宜使用することができる。
【0048】
〔(H)脂肪酸〕
本発明の繊維製品処理剤組成物は柔軟剤組成物として用いることができ、その場合における柔軟効果を向上させる観点から、(H)成分として、脂肪酸を含有することが好ましい。なお、脂肪酸は(A)成分の合成時の未反応物として配合してもよく、また、(A)成分の分解物として含有してもよい。
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸、ベヘニン酸等の炭素数12以上、22以下の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、これらの中でも、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸から選ばれる脂肪酸がより好ましい。
【0049】
〔(I)香料〕
本発明の繊維製品処理剤組成物は、(I)成分として、香料を含有することができる。香料は、通常、繊維製品処理剤組成物の液体部分に溶解又は分散して存在する。
香料としては、一般に繊維製品処理剤組成物に使用される天然香料或いは合成香料が挙げられ、例えば、1969年化学工業日報社刊印藤元一著「合成香料 化学と商品知識」、1969年MONTCLAIR, N. J.刊STEFFEN ARCTANDER著‘Perfume and Flavor Chemicals’等に記載の香料を用いることができる。
また、本発明に使用される香料は、香料として使用されることが知られている有機化合物であって、「香料と調香の実際知識」(中島基貴著、産業図書株式会社、1995年6月21日発行)に記載の香料を適宜、香調、用途にしたがって組み合わせて用いることができる。
更に、香料としては、香りの持続性、残香性を向上させることを目的として、特開2009−256818号に記載されるヒドロキシ基を有する香料成分をケイ酸エステル体として併用することもできる。また、洗濯用仕上げ剤として知られている、柔軟剤、糊剤、スタイリング剤又はその他仕上げ剤の特許文献に記載された香料成分や香料組成物を用いることができる。
【0050】
本発明において好適に使用することができる香料の一例は以下のとおりである。
(I
1)脂肪酸エーテル、芳香族エーテル(フェノールエーテルを除く)等のエーテル、
(I
2)脂肪酸オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド、
(I
3)アセタール、
(I
4)ケタール、
(I
5)フェノール、
(I
6)フェノールエーテル、
(I
7)脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸、
(I
8)酸アマイド、ニトロムスク、ニトリル、アミン、ピリジン、キノリン、ピロール、インドール等の含窒素化合物
【0051】
更に本発明の繊維製品処理剤組成物は、好ましくはlogP値が2.0以上、6.0以下である香料化合物を90質量%以上含有する香料を内包したマイクロカプセル〔以下、(I
m)成分という〕を含有することができる。
【0052】
本発明の繊維製品処理剤組成物が(I)成分を含有する場合の(I)成分の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.7質量%以上であり、そして、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0053】
〔酸化防止剤〕
本発明の繊維製品処理剤組成物は、基材劣化を抑制する観点から、BHT等の周知の酸化防止剤を含有してもよい。なお、(A)成分や香料成分等において既に配合されている場合もある。酸化防止剤を配合することにより、基剤の分解により生じる臭気を抑制することができる。
【0054】
〔染料、顔料、防菌、及び防黴剤〕
本発明の繊維製品処理剤組成物は、審美上の観点及び長期保存時の着色を目立たないようにする観点から、柔軟剤や糊剤等の繊維製品仕上げ剤に配合されていることが知られている、染料及び顔料を含有することができる。
また、本発明の繊維製品処理剤組成物は、「プロキセル」として市販されている防菌、防黴剤を、繊維製品処理剤組成物の安定性を損なわない範囲で含有することができる。
【0055】
本発明の繊維製品処理剤組成物は、上記その他の成分の他に、シリコーンエマルションを本効果の効果を損なわない程度に配合してもよい。
本発明の繊維製品処理剤組成物は、濡れ戻り抑制剤として作用するが、(A)成分の性質から柔軟効果も示す。更に、(A)成分を主基材とする従来の柔軟剤組成物よりも優れた柔軟性を示す。
本発明において処理の対象となる繊維製品は、衣料、寝具、タオル等が挙げられる。
【0056】
<繊維製品処理剤組成物の製造方法>
本発明の繊維製品処理剤組成物の製造方法に特に制限はなく、例えば以下の方法で製造することができる。
まず、好ましくは40℃以上、80℃以下のイオン交換水に対して、必要に応じて(D)成分である界面活性剤、(E)成分である水溶性有機溶剤、及び(G)成分である酸性化合物を入れ、水溶液を好ましくは50℃以上、70℃以下に加熱する。
次いで、得られた水溶液を撹拌しながら(A)成分である4級アンモニウム塩混合物及び(B)成分であるソルビタン脂肪酸エステル、また、必要に応じて(I)成分である香料、及びシリコーン以外のその他成分を投入し、好ましくは50℃以上、70℃以下に加熱しながら5分以上、1時間以下程度撹拌し、更に必要に応じて(F)成分である水溶性無機塩を加えて撹拌する。なお、水溶液に対して前記(A)成分を加える際には、均一に混合する観点から、(A)成分を予め、好ましくは50℃以上、70℃以下で溶融させておくことが好ましい。
次いで、得られた水溶液に対して(C)成分である直鎖脂肪族第一級アルコールを加えて5分以上、1時間以下程度撹拌し、その後、水溶液を好ましくは15℃以上、35℃以下になるように撹拌しながら冷却する。冷却後、任意成分であるシリコーン及び濃度を調整することを目的として必要に応じてイオン交換水を添加し、好ましくは15℃以上、35℃以下で5分以上1時間以下程度撹拌することにより本発明の繊維製品処理剤組成物を得ることができる。
なお、繊維製品処理剤組成物のpHは必要に応じて、塩酸水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液等を用いて調整することができる。
【実施例】
【0057】
<合成例1;(A−1)成分の合成>
パーム油を原料とした酸価206.9mgKOH/gの脂肪酸と、トリエタノールアミンとを、反応モル比1.65/1(脂肪酸/トリエタノールアミン)で、脱水エステル化反応させることにより、N,N−ジアルカノイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチルアミンを主成分とする縮合物を得た。
次にこの縮合物のアミン価を測定し、該縮合物のアミノ基1当量に対してジメチル硫酸を0.95当量用い、定法に従って4級化を行ない、N,N−ジアルカノイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウムメチルサルフェートを主成分とし、エタノールを10質量%含有する第4級アンモニウム塩混合物(A−1)を得た。但し、ここでいう“アルカノイル”の用語は、アルカノイルがパーム油原料の脂肪酸残基であるため、飽和脂肪酸以外に不飽和脂肪酸由来の残基、例えばアルケノイル等の意味も含むものとする。なお、前記調製手順や反応条件は、特開2010−209493号公報の合成例2にしたがって行った。
(A−1)成分中、(a1)成分の割合は30質量%、(a2)成分の割合は55質量%、(a3)成分の割合は15質量%であった。(A−1)成分は、4級化率が92%(4級化率はアミン価から求めた)であり、(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分、及びエタノール以外に、ジエステル及びトリエステルの3級アミン化合物、微量のトリエタノールアミン及びその4級化物、並びに微量の脂肪酸を含んでいた。ここで(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分の割合、並びにその他成分の分析はHPLCを用い下記条件により測定した。
【0058】
<HPLC条件>
カラム:Inertsil NH2 5μm(4.6×250mm)室温(25℃)
移動相:0.05質量%TFA ヘキサン:MeOH:THF=85:10:5(質量比)
流速:測定開始から10分までは0.8mL、測定開始から10分超55分までは1.2mL、測定開始から55分超60分までは0.8mL
注入:20μL
検出:CAD
【0059】
実施例及び比較例で使用した成分を以下に示す。
<(A)成分>
(A−1):前記合成例1で製造した4級アンモニウム塩混合物を含む反応生成物。表2,3に示した(A−1)の数値は(A−1)の有姿での配合量である。(A−1)中の(A)成分濃度は75質量%である。
【0060】
<(B)成分>
(B−1):レオドールSP−S10V(ソルビタンモノステアレート、AV=7mgKOH/g、SV=155mgKOH/g、花王株式会社製)
【0061】
<(C)成分>
(C−1):ミリスチルアルコール
(C−2):セチルアルコール
(C−3):ステアリルアルコール
<(C’)成分>
(C’−1):1−デカノール
(C’−2):2−テトラデシルアルコール
(C’−3):オレイルアルコール
(C’−4):1−エイコサノール
【0062】
<(D)成分>
(D−1):オキシエチレン基の平均付加モル数が30モルであるポリオキシエチレンラウリルエーテル
<(E)成分>
(E−1)エチレングリコール
<(F)成分>
(F−1)塩化カルシウム
<(G)成分>
(G−1)クエン酸
【0063】
<(I)成分>
(I−1):表1に記載の香料組成物
【表1】
【0064】
<その他成分>
シリコーン :SH200−3000cs(東レ・ダウコーニング株式会社製:ジメチルポリシロキサン)
その他添加剤:プロキセルBDN(実施例及び比較例の組成物中83ppmとなる濃度)
【0065】
実施例1〜5及び比較例1〜13
表2,3に示す組成の繊維製品処理剤組成物を以下の方法で調製した。得られた繊維製品処理剤組成物について、下記要領で濡れ戻り量及び感触を評価した。結果を表2,3に示す。
【0066】
<繊維製品処理剤組成物の調製>
300mLのガラスビーカー(内径7cm、高さ11cm)に、繊維製品処理剤組成物のできあがり質量が300gになるのに必要な量の95%に相当する量のイオン交換水(65℃)と(D)成分である界面活性剤、(E)成分である水溶性有機溶剤、及び(G)成分である酸性化合物を入れ、このビーカーをウォーターバスにて内容物温度が65℃となるよう加熱した。
次いで、スリーワンモーター(新東科学株式会社製、TYPE HEIDON 1200G)に装着した撹拌羽根(タービン型撹拌羽根、3枚翼、翼長2cm)を前記ビーカーの底面から1cmの高さに設置し、回転数350r/minで撹拌しながら、予め65℃で溶融、混合した(A)成分である4級アンモニウム塩混合物と、(B)成分であるソルビタンステアリン酸エステルと、(I)成分である香料、及びその他成分を投入した後、65℃加熱下、10分間、350r/minにて撹拌し、更に(F)成分である水溶性無機塩を加え10分間撹拌した。
次いで、(C)成分を加え、65℃加熱下、10分間、350r/minにて撹拌した。その後、氷水を入れたウォーターバス中で内容物が30℃になるまで、回転数350r/minで撹拌冷却した。内容物温度が30℃まで下がった後、任意成分であるシリコーン及び各成分の濃度が表2,3に記載の値となるのに必要な量のイオン交換水を添加し、30℃、回転数200r/minにて10分間撹拌し、繊維製品処理剤組成物を得た。
なお、繊維製品処理剤組成物のpHは必要に応じて、塩酸水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液を用いて3.5に調整した。
【0067】
<繊維処理方法>
市販の木綿肌着(グンゼ株式会社、YG/半袖U首)を市販粉末洗剤「アタック高活性バイオEX」(花王株式会社製、登録商標、2012年製造)にて5回繰り返し洗濯した。更に前記木綿肌着を洗剤なしで3回洗濯をし、布についている油剤、洗剤を除去した後、実施例及び比較例の繊維製品処理剤組成物を処理液中の濃度が1質量%になるように投入し、20℃、浴比1/30、5分間撹拌することにより処理した後、室内で乾燥後、20℃、65%RHの恒温、恒湿室にて24時間放置し、処理布を作成した。
【0068】
<濡れ戻り量の測定方法>
調製した処理布を11cm角に切り取り、自重の80質量%分の水をスプレーで均一に噴きかけ、10分間密閉状態で馴化させた後、キムタオル(日本製紙クレシア株式会社製)の上に載せ、20g/cm
2の荷重を10秒間かけた。その後、キムタオルの重量を測定し、重量増加分を濡れ戻り水として計測した。未処理布の濡れ戻り水を100とした場合の各処理布の濡れ戻り量を算出した。結果を表2,3に示す。
【0069】
<感触評価>
調製した処理布を11cm角に切り取り、自重の80質量%分の水をスプレーで均一に噴きかけ、10分間密閉状態で馴化させた後、訓練した研究員が処理した布を手で触り、下記の評価基準で判定した。評価2以上、好ましくは3以上であれば良好と判断する。
評価基準
4:湿り気が非常に少なく、非常にサラサラした手触りである。
3:湿り気が少なく、サラサラした手触りである。
2:やや湿り気があり、ややサラサラした手触りである。
1:湿り気が強く、ベタベタした手触りである。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
表2,3の結果から明らかなように、本発明の繊維製品処理剤組成物によれば、発汗等によって生じる繊維製品の濡れ戻りを効果的に抑制することができる。
したがって、肌に接触する部分が多い衣料、例えば肌着に対して予め本発明の処理を施すことにより、発汗後、繊維製品と肌との間に生じる不快感を低減させることができる。