特許第6046098号(P6046098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046098
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】障子
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/70 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   E06B3/70 D
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-225964(P2014-225964)
(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公開番号】特開2016-89502(P2016-89502A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年7月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513029655
【氏名又は名称】中井産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 義明
(72)【発明者】
【氏名】西澤 明洋
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−109388(JP,U)
【文献】 特開2011−153415(JP,A)
【文献】 特開2001−314315(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3136581(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3192392(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側に貼り付けられる第一障子紙を貼り付けるための第一組子と、
他面側に貼り付けられる第二障子紙を貼り付けるための第二組子と、
からなり、
前記第一組子の竪子又は/及び横子が前記第二組子の竪子又は/及び横子と正面視にて完全には重ならない位置になるように第一組子と第二組子が構成された二重組子障子構体。
【請求項2】
請求項1に記載の二重組子障子構体の第一組子に第一障子紙を貼り付け、第二組子に第二障子紙を貼り付けた二重組子障子。
【請求項3】
第一障子紙は第一障子紙を介して第二組子の影を透かして見通せる紙質であり、
第二障子紙は第二障子紙を介して第一組子の影を透かして見通せる紙質である請求項2に記載の二重組子障子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、障子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、障子紙を一つの組子の内側と外側に二重張りした障子が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2006−45978
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術は、組子を構成する全ての竪子(組子のタテの木材等)と横子(組子のヨコの木材等)の両端面(障子紙を貼るべき面)に障子紙を貼ったもので、組子自体に特段の特徴があるわけではなく、前後の組子が作る陰影・奥行きといった美観をことさら生じさせるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本願の発明者は、竪子及び横子の組み方が異なる二以上の組子を前後に組み合わせてなる障子を開発した。すなわち、後述する第一組子と第二組子の端面に障子紙を貼るが、第一組子と第二組子の裏面同士は向かい合った状態となり、場合によっては組み合わされ、障子紙を貼るものではない。第一組子と第二組子の端面にそれぞれ障子紙を貼ることにより、障子紙から透過する光によって前後の組子の遠近が織りなす異なる陰影が生まれ、見る者が奥行きを感じることができる、かつてない美観を備える障子を提供することが可能となった。また、障子紙が二重になり、前後の組子の間に空間が生まれるため、保温性や遮音性がさらに向上した。さらに、組子が二重になることから、建具としての強度を増すことも可能となった。
【0006】
上記課題を解決するために、第一の発明としては、一面側に貼り付けられる第一障子紙を貼り付けるための第一組子と、他面側に貼り付けられる第二障子紙を貼り付けるための第二組子と、からなり、前記第一組子の竪子又は/及び横子が前記第二組子の竪子又は/及び横子と正面視にて完全には重ならない位置になるように第一組子と第二組子が構成された二重組子障子構体を提供する。
【0007】
第二の発明としては、第一の発明に記載の二重組子障子構体の第一組子に第一障子紙を貼り付け、第二組子に第二障子紙を貼り付けた二重組子障子を提供する。
【0008】
第三の発明としては、第一障子紙は第一障子紙を介して第二組子の影を透かして見通せる紙質であり、第二障子紙は第二障子紙を介して第一組子の影を透かして見通せる紙質である第二の発明に記載の二重組子障子を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本件発明にかかる障子により、前後に陰影の異なる奥行きを持たせた障子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】デザイン1の二重組子障子構体の斜視図
図2】デザイン2の二重組子障子構体の斜視図
図3】デザイン1の第一組子の正面図
図4】デザイン2の第一組子の正面図
図5】デザイン1の分解図
図6】デザイン2の分解図
図7】デザイン1の第二組子の正面図
図8】デザイン2の第二組子の正面図
図9】デザイン1の第一障子紙を張った場合の正面図
図10】デザイン2の第一障子紙を張った場合の正面図
図11】デザイン1の第二障子紙を張った場合の正面図
図12】デザイン2の第二障子紙を張った場合の正面図
図13】デザイン2の参考写真
図14】デザイン1の正面図
図15】デザイン1の背面図
図16】デザイン1の右側面図
図17】デザイン1の平面図
図18】デザイン1のA−A切断部拡大断面図
図19】デザイン1のB−B切断部拡大断面図
図20】デザイン1の第一障子の正面図
図21】デザイン1の第二障子の正面図
図22】デザイン1の参考斜視図
図23】デザイン1の参考分解斜視図
図24】デザイン1の使用状態を示す参考正面図
図25】デザイン1の使用状態を示す参考背面図
図26】デザイン2の正面図
図27】デザイン2の背面図
図28】デザイン2の右側面図
図29】デザイン2の平面図
図30】デザイン2のA−A切断部拡大断面図
図31】デザイン2のB−B切断部拡大断面図
図32】デザイン2の第一障子の正面図
図33】デザイン2の第二障子の正面図
図34】デザイン2の参考斜視図
図35】デザイン2の参考分解斜視図
図36】デザイン2の使用状態を示す参考正面図
図37】デザイン2の使用状態を示す参考背面図
【符号の説明】
【0011】
0100 デザイン1の二重組子障子構体
0200 デザイン2の二重組子障子構体
0301 第一組子(デザイン1)
0401 第一組子(デザイン2)
0702 第二組子(デザイン1)
0802 第二組子(デザイン2)
0907 第一障子紙(デザイン1)
1007 第一障子紙(デザイン2)
1108 第二障子紙(デザイン1)
1208 第二障子紙(デザイン1)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本件発明の実施形態について、図面を用いて説明する。実施形態1は請求項1に関する。実施形態2は請求項2及び3に関する。なお、本件発明はこれら実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の態様で実施しうる。
【0013】
≪実施形態1≫
【0014】
<概要>
本実施形態は、異なる組子を前後に組み合わせた二重組子障子構体に関する。
【0015】
<機能的構成>
本実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態の二重組子障子構体(0100(図1・デザイン1)、0200(図2・デザイン2))は、「第一組子」と、「第二組子」とを有し、第一組子の竪子又は/及び横子と、第二組子の竪子又は/及び横子とが正面視にて完全に重ならないように構成された二重組子障子構体に関する。以下、本明細書中「枠」とは、桟(0105、0105(以上デザイン1)、0205、0205(以上デザイン2))及び框(0106、0106(以上デザイン1)、0206、0206(以上デザイン2))をいい、「組子」とは、竪子及び横子が組み合わされたものを言い、「障子構体」とは、枠及び組子をいい、「障子」とは、障子構体に障子紙を貼った状態のものをいうこととする。
【0016】
<各構成の説明>
(第一組子)
「第一組子」(0301(図3・デザイン1)、0401(図4・デザイン2))は、前面側の組子であり、一面側に貼り付けられる後述する第一障子紙を貼り付けるよう構成される。実際には本件発明の二重組子障子構体ならびに二重組子障子に前後の区別はないが、例えば、部屋とそれに連なる縁側を隔てる場所に二重組子障子(構体)を配置するとして、部屋側に面する面を前面ないしは一面、縁側に面する面を背面ないしは他面と表現して説明する。ただし、この説明により、権利範囲に限定を加える意図はない。分解斜視図を用いて説明すると、第一組子は、0501(図5・デザイン1)、0601(図6・デザイン2)であり、単独でも障子の組子としての構成を有するものである。なお、分解斜視図では、後述する第二組子に対して、第一組子が組み合わされるような表現をしており、組み方の主従関係ないし先後関係があるように見えるが、これは説明の便宜上であり、実際には第一組子と第二組子とに主従関係等があるものではない。
【0017】
(第二組子)
「第二組子」(0702(図7・デザイン1)、0802(図8・デザイン2))は、前面側の組子である第一組子に対する背面側の組子であって、当該組子の端面部である他面側に貼り付けられる後述する第二障子紙を貼り付けるよう構成される。具体的には、第二組子は分解斜視図における0502(図5・デザイン1)、0602(図6・デザイン2)であり、単独でも障子の組子としての構成を有するものである。
【0018】
第一組子の竪子又は/及び横子と、第二組子の竪子又は/及び横子とが正面視にて完全に重ならないように構成される。ここにいう「完全に重ならない」とは、第一組子と第二組子のデザインが異なるため、竪子又は/及び横子の一部が合わさらない状態をいう。第一組子と第二組子とが直接に接している場合のほか、第一組子と第二組子との間に第三の組子がある等、第一組子と第二組子とが接していない場合であってもよい。したがって、第一組子を正面視したときには、第二組子の一部の裏側が見える状態になり、第二組子を正面視したときには、その逆で、第一組子の一部の裏側が見える状態となる。よって、障子紙を貼り付けた状態で障子を観察すると観察する側からみて手前の障子紙が貼り付けられている組子の陰影は濃く観察され、観察する側から見て奥側の組子の陰影は薄く観察される(図13の写真参照)。
【0019】
<効果>
本実施形態の二重組子障子構体は、障子紙から透過する光により前後の組子の遠近が織りなす異なる陰影により、奥行きが生まれ、かつてない美観を備える障子の構体を提供することができる。
【0020】
≪実施形態2≫
【0021】
<概要>
本実施形態は、実施形態1の二重組子障子構体に障子紙を張り付けた状態の障子に関する。
【0022】
<機能的構成>
本実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態の障子(0900(図9・デザイン1)、1000(図10・デザイン2))は、実施形態1の構成に加え、さらに「第一障子紙」と、「第二障子紙」とを有する。
【0023】
<各構成の説明>
(第一障子紙)
「第一障子紙」(図9(デザイン1)において斜線加工がされている0907、図10(デザイン2)において斜線加工がされている1007)は、第一組子(図9(デザイン1)において黒く塗りつぶされている0901、図10(デザイン2)において黒く塗りつぶされている1001)の一面側に貼り付けられるよう構成される障子紙である。第一障子紙は、透明・半透明・不透明のいずれであってもよく、素材は選ばない。ただし、二重組子構体が織りなす陰影や遠近感を発揮させるためには、第一組子の端面に障子紙を貼った状態を正面から見た場合に、第一組子及び第二組子(図9(デザイン1)において黒く塗りつぶされていない0902、図10(デザイン2)において黒く塗りつぶされていない1002)の構造や、後述する第二障子紙に描かれた絵などを透かして見えるような透過性のある素材であることが好ましい。これはたとえば、和紙等が考えられる。
【0024】
(第二障子紙)
「第二障子紙」(図11(デザイン1)において斜線加工がされている1108、図12(デザイン2)において斜線加工がされている1208)は、第一障子紙が貼りつけられる一面側に対して他面側であり、第二組子(図11(デザイン1)において黒く塗りつぶされている1102、図12(デザイン2)において黒く塗りつぶされている1202)において黒く塗りつぶされている1202)の端面部に張り付けられるよう構成される障子紙である。第二障子紙は、透明・半透明・不透明のいずれであってもよく、素材は選ばない。ただし、二重組子構体が織りなす陰影や遠近感を発揮させるためには、第二組子の端面に障子紙を貼った状態を正面視で見た場合に、第二組子及び第一組子(図11(デザイン1)において黒く塗りつぶされていない1101、図12(デザイン2)において黒く塗りつぶされていない1201)の構造や、第一障子紙に描かれた絵などを透かして見えるような透過性のある素材であることが好ましい。これはたとえば、第一障子紙の場合と同様、和紙等が考えられる。
【0025】
<効果>
本実施形態の障子は、障子紙から透過する光により前後の組子の遠近が織りなす異なる陰影により、奥行きが生まれ、かつてない美観を備える障子が可能となった(図13の写真参照)。また、障子紙が二重になり、前後の障子の間に空間が生まれるため、二重になり、保温性や遮音性がさらに向上した。さらに、障子に用いる組子・木枠が二重になることから、建具としての強度を増すことが可能となった。
【0026】
(本件発明の六面図及び参考図面の開示)
以下、本件発明の障子についての図面を開示する。図14から図25はデザイン1に、図26から図37はデザイン2に関する。すなわち、図14は、デザイン1の正面図であり、図15は、デザイン1の背面図であり、図16は、デザイン1の右側面図であり、図17は、デザイン1の平面図であり、図18は、デザイン1のA−A切断部拡大断面図であり(切断箇所については図14の正面図に図示)、図19は、デザイン1のB−B切断部拡大断面図であり(切断箇所については図14の正面図に図示)、図20は、デザイン1の第一障子の正面図であり、図21は、デザイン1の第二障子の正面図であり、図22は、デザイン1の参考斜視図であり、図23は、デザイン1の参考分解斜視図であり、図24は、デザイン1の使用状態を示す参考正面図であり、図25は、デザイン1の使用状態を示す参考背面図であり、図26は、デザイン2の正面図であり、図27は、デザイン2の背面図であり、図28は、デザイン2の右側面図であり、図29は、デザイン2の平面図であり、図30は、デザイン2のA−A切断部拡大断面図であり(切断箇所については図26の正面図に図示)、図31は、デザイン2のB−B切断部拡大断面図であり(切断箇所については図26の正面図に図示)、図32は、デザイン2の第一障子の正面図であり、図33は、デザイン2の第二障子の正面図であり、図34は、デザイン2の参考斜視図であり、図35は、デザイン2の参考分解斜視図であり、図36は、デザイン2の使用状態を示す参考正面図であり、図37は、デザイン2の使用状態を示す参考背面図である。なお、デザイン1及び2ともに、右側面図は左側面図と同じであるから省略し、底面図は平面図と同じであるから省略している。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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