特許第6046113号(P6046113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046113
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】粘着性組成物、及び粘着性シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/22 20060101AFI20161206BHJP
   C09J 157/02 20060101ALI20161206BHJP
   C09J 183/05 20060101ALI20161206BHJP
   C09J 7/00 20060101ALI20161206BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20161206BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20161206BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C09J123/22
   C09J157/02
   C09J183/05
   C09J7/00
   C09K3/10 Z
   H05B33/04
   H05B33/14 A
【請求項の数】11
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-504996(P2014-504996)
(86)(22)【出願日】2013年3月14日
(86)【国際出願番号】JP2013057205
(87)【国際公開番号】WO2013137397
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2016年1月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-59340(P2012-59340)
(32)【優先日】2012年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-258956(P2012-258956)
(32)【優先日】2012年11月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100089185
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】上村 和恵
(72)【発明者】
【氏名】中山 秀一
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−169814(JP,A)
【文献】 特開平04−145188(JP,A)
【文献】 特開2006−273705(JP,A)
【文献】 特開2011−231313(JP,A)
【文献】 特表2009−524705(JP,A)
【文献】 特開2010−235845(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/031656(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/002288(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/032907(WO,A1)
【文献】 特表2009−503133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
C09K 3/10
H01L51/00− 51/56
H05B33/00− 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量2万〜80万の末端に重合性二重結合を有しないポリイソブチレン系樹脂(A)、軟化点90〜135℃の水素化石油樹脂(B)、一分子あたり0.3個以上の二重結合を有するオレフィン系重合体(C)、及び2又は3個のヒドロシリル基を有するシラン系化合物(D)を含む粘着性組成物であって、
オレフィン系重合体(C)が、両末端に重合性二重結合を有するポリイソブチレン系樹脂(C1)、並びに、エチレン、プロピレン、及び下記式(I)又は(II)で表されるノルボルネン化合物由来の構成単位を有する共重合体(C2)の少なくとも一方を含み、オレフィン系重合体(C)の含有量が、(A)成分100質量部に対して、10質量部以上である、粘着性組成物。
【化1】

(上記式(I)中、Rは、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基であり、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であり、pは0〜10の整数である。また、上記式(II)中、R〜Rは、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基である。なお、上記式(I)中のR又はRとRとが結合して二重結合を有する環を形成してもよく、上記式(II)中のR又はRとRとが結合して二重結合を有する環を形成してもよい。)
【請求項2】
オレフィン系重合体(C)の含有量が、(A)成分100質量部に対して、10〜100質量部である、請求項1に記載の粘着性組成物。
【請求項3】
シラン系化合物(D)の含有量が、(A)成分100質量部に対して、0.05〜9質量部である、請求項1又は2に記載の粘着性組成物。
【請求項4】
水素化石油樹脂(B)の含有量が、(A)成分100質量部に対して、10〜55質量部である、請求項1〜3のいずれかに記載の粘着性組成物。
【請求項5】
水素化石油樹脂(B)が、C5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂の水添樹脂、C9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂の水添樹脂、及びC5留分とC9留分の共重合石油樹脂の水添樹脂からなる群より選択される1種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の粘着性組成物。
【請求項6】
さらに白金系触媒(E)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の粘着性組成物。
【請求項7】
ポリイソブチレン系樹脂(A)として、重量平均分子量27〜80万のポリイソブチレン系樹脂(A1)と、重量平均分子量2〜25万のポリイソブチレン系樹脂(A2)とを併用する、請求項1〜6のいずれかに記載の粘着性組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の粘着性組成物からなる粘着層を有する、粘着性シート。
【請求項9】
波長550nmにおける可視光線透過率が90%以上である、請求項8に記載の粘着性シート。
【請求項10】
前記粘着層の40℃、90%RHにおける水蒸気透過率が10g/m/day以下である、請求項8又は9に記載の粘着性シート。
【請求項11】
有機EL素子の封止用途として用いられる、請求項8〜10のいずれかに記載の粘着性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性組成物、及び該粘着性組成物からなる粘着層を有する粘着性シートに関する。より詳しくは、例えば有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescense、以下「EL」とも略す)を利用した有機EL素子等のディスプレイデバイス等、電子デバイスの封止に好適に用いられる粘着性組成物及び粘着性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロニクスは、塗布や印刷プロセスを用いて、フレキシブルなプラスチック基板上に、室温に近い低温でディスプレイ、回路、電池等を形成できる技術として注目されており、様々な有機デバイス、液晶ディスプレイ、電子ペーパー、薄膜トランジスタ等の研究開発が進められている。
例えば、有機デバイスで用いられる有機EL素子は、陽極と陰極との間に、有機電荷輸送層や有機発光層を積層させた有機層を設けたものであり、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。また、有機EL素子は、プラスチックフィルムを基板として用いることで、薄型化、軽量化、フレキシブル化等を実現するディスプレイとしても期待されている。
【0003】
ところで、有機EL素子は、一定時間駆動した場合、発光輝度、発光効率、発光均一性等の発光特性が初期に比べて劣化するという問題がある。この問題の原因としては、有機EL素子内に侵入した酸素や水蒸気等による電極の酸化や有機物の変性、駆動時の熱による有機材料の酸化分解等が考えられる。
また、酸素や水分(水蒸気)の影響や、駆動時の発熱や駆動時に高温下に曝されることで、各構成要素の熱膨張率の違いにより有機EL素子中の構造体の界面で応力が発生し、構造体の界面が剥離する場合もある。このような構造体の機械的劣化も、発光特性の劣化の原因として考えられる。
【0004】
このような問題を防止するため、有機EL素子を封止し、酸素や水分(水蒸気)との接触を抑制するため、例えば、以下の特許文献1〜4に記載の技術が提案されている。
特許文献1には、ガラス基板上に形成された有機EL層を、耐湿性を有する光硬化性樹脂で覆い、且つ光硬化性樹脂層の上部に透水性の小さい基板を固着させる方法が開示されている。
特許文献2には、対向する透明基板をフリットガラスからなるシール材で封止する方法が開示されている。
特許文献3には、基板とシールド材によって気密空間を形成する際に、両者をカチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤で接着する方法が開示されている。
特許文献4には、防湿性高分子フィルムと接着層により形成された封止フィルムを有機EL素子の外表面上に被覆する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、上述のような従来の技術では、封止工程における加熱により、有機発光層及び電荷輸送層が熱劣化する場合や、光硬化性の樹脂接着剤を使用した際に、硬化のために多量の紫外線照射を必要とするため、有機発光層及び電荷輸送層が劣化する場合がある。また、封止材が硬化物であると、製品使用時に生じうる衝撃や振動により、亀裂等が発生し易く、素子特性の劣化を招く場合がある。さらに、特許文献4では、封止材として使用するだけの粘着力及び保持力が不十分であり、耐湿性及び防湿性等の要求水準を満たすに至っていない。
【0006】
特許文献5では、上述の課題を解決することを目的として、水素添加された環状オレフィン系重合体と、50万以上の重量平均分子量を有するポリイソブチレン樹脂とを有する、電子デバイスで使用される接着性封止組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−182759号公報
【特許文献2】特開平10−74583号公報
【特許文献3】特開平10−233283号公報
【特許文献4】特開平5−101884号公報
【特許文献5】特開2007−197517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献5に記載の接着性封止組成物は、水蒸気透過率が十分では無い。さらに、高温・紫外線等に弱く、長時間の駆動や駆動環境によって前記有機EL素子やデバイスが高温下又は紫外線照射下に曝されることによって、樹脂自体が劣化してしまう恐れがある。その結果、特許文献5に記載の接着性フィルムでは、粘着力や保持力、水蒸気透過率の抑制等の性能の低下が起こり、それに伴い、有機EL素子の劣化が引き起こるという問題を有している。
【0009】
また、特許文献5記載のような粘着性組成物では、粘着力及び保持力が十分に向上しない傾向にある。代わりにアクリル系樹脂を用いることで、粘着性及び保持力を向上させることはできるが、アクリル系樹脂を用いた粘着性組成物からなる粘着層は、水蒸気透過率が高く、粘着層から発生するアウトガスの発生量が多く、有機EL素子の封止用には不向きである。
【0010】
本発明は、優れた粘着力及び保持力を有し、水蒸気透過率が低く、透明性に優れ、アウトガス発生量を抑制しうる、粘着性シートの粘着層の形成材料となり得る粘着性組成物、及び当該粘着性組成物からなる粘着層を有する粘着性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ポリイソブチレン系樹脂(A)及び特定の軟化点を有する水素化石油樹脂(B)と共に、特定構造のオレフィン系重合体(C)を特定量含有し、且つ、一分子内に2又は3個のヒドロキシル基を有するシラン系化合物(D)を含む粘着性組成物が、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、下記〔1〕〜〔11〕を提供するものである。
〔1〕重量平均分子量2万〜80万のポリイソブチレン系樹脂(A)、軟化点90〜135℃の水素化石油樹脂(B)、一分子あたり0.3個以上の二重結合を有するオレフィン系重合体(C)、及び2又は3個のヒドロシリル基を有するシラン系化合物(D)を含む粘着性組成物であって、
オレフィン系重合体(C)が、末端に重合性二重結合を有するポリイソブチレン系樹脂(C1)、並びに、エチレン、プロピレン、及び下記式(I)又は(II)で表されるノルボルネン化合物由来の構成単位を有する共重合体(C2)の少なくとも一方を含み、オレフィン系重合体(C)の含有量が、(A)成分100質量部に対して、10質量部以上である、粘着性組成物。
【化1】

(上記式(I)中、R1は、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基であり、R2〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であり、pは0〜10の整数である。また、上記式(II)中、R5〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基である。なお、上記式(I)中のR2又はR3とR4とが結合して二重結合を有する環を形成してもよく、上記式(II)中のR5又はR6とR7とが結合して二重結合を有する環を形成してもよい。)
〔2〕オレフィン系重合体(C)の含有量が、(A)成分100質量部に対して、10〜100質量部である、上記〔1〕に記載の粘着性組成物。
〔3〕シラン系化合物(D)の含有量が、(A)成分100質量部に対して、0.05〜9質量部である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の粘着性組成物。
〔4〕水素化石油樹脂(B)の含有量が、(A)成分100質量部に対して、10〜55質量部である、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の粘着性組成物。
〔5〕水素化石油樹脂(B)が、C5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂の水素化樹脂、C9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂の水素化樹脂、及びC5留分とC9留分の共重合石油樹脂の水素化樹脂からなる群より選択される1種以上である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の粘着性組成物。
〔6〕さらに白金系触媒(E)を含む、上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の粘着性組成物。
〔7〕ポリイソブチレン系樹脂(A)として、重量平均分子量27〜80万のポリイソブチレン系樹脂(A1)と、重量平均分子量2〜25万のポリイソブチレン系樹脂(A2)とを含む、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の粘着性組成物。
〔8〕上記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の粘着性組成物からなる粘着層を有する、粘着性シート。
〔9〕波長550nmにおける可視光線透過率が90%以上である、上記〔8〕に記載の粘着性シート。
〔10〕前記粘着層の40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率が10g/m2/day以下である、上記〔8〕又は〔9〕に記載の粘着性シート。
〔11〕有機EL素子の封止用途として用いられる、上記〔8〕〜〔10〕のいずれかに記載の粘着性シート。
【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着性組成物からなる粘着性シートの粘着層は、優れた粘着力及び保持力を有し、水蒸気透過率が低く、透明性に優れ、アウトガス発生量を低減することができる。特に、本発明の粘着性組成物を用いた粘着性シートは、粘着力及び保持力を向上させることができる。そのため、本発明の粘着性シートは、封止している素子の特性の劣化を効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の粘着性シートの構成の一例を示す断面図である。
図2】本発明の粘着性シートを具備する有機デバイスの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[粘着性組成物]
本発明の粘着性組成物は、重量平均分子量2万〜80万のポリイソブチレン系樹脂(A)、軟化点90〜135℃の水素化石油樹脂(B)、一分子あたり0.3個以上の二重結合を有するオレフィン系重合体(C)、及び一分子内に2又は3個のヒドロシリル基を有するシラン系化合物(D)を含むものである。そして、本発明の粘着性組成物は、さらに、白金系触媒(E)を含有することが好ましく、また、必要に応じて、その他の成分を含有することもできる。
【0015】
本発明の粘着性組成物は、(A)成分及び(B)成分を含有することで、該組成物からなる粘着性シートの粘着層の粘着力と保持力をバランス良く向上させると共に、粘着層の水蒸気透過率を低減させ、透明性を向上させ、さらにアウトガス発生量を抑制することができる。そして、本発明の粘着性組成物では、さらに特定量の(C)成分及び(D)成分を含有することで、更に保持力を格段に向上させることができる。
その理由としては、(C)成分と(D)成分とが架橋した重合体が、樹脂(A)の重合体間に擬似的な架橋構造を形成すると考えられる。そのため、本発明の粘着性組成物は、凝集力が向上し、該組成物よりなる粘着層の保持力が格段に向上すると考えられる。
【0016】
以下、本発明の粘着性組成物の含まれる(A)〜(E)成分、及びその他の成分について詳述する。
なお、本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」及び「数平均分子量(Mn)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値を意味する。また、「軟化点」は、JIS K 2531に準拠して測定した値を意味する。
【0017】
<ポリイソブチレン系樹脂(A)>
本発明で用いるポリイソブチレン系樹脂(A)(以下、「樹脂(A)」ともいう)は、重量平均分子量が2万〜80万であるポリイソブチレン系樹脂である。
なお、本発明において、樹脂(A)は、後述の末端に重合性二重結合を有するポリイソブチレン系樹脂(C1)を除くポリイソブチレン系樹脂を指し、末端に重合性二重結合を有しないポリイソブチレン系樹脂である。
【0018】
樹脂(A)の重量平均分子量が2万未満であると、粘着性組成物の凝集力が十分に得られず、該組成物からなる粘着層は、水蒸気透過率を十分に低減させることができず、また、被着体を汚染してしまう場合もある。なお、基本的に、樹脂(A)の重量平均分子量が高いほど、形成される粘着層の水蒸気透過率が低下すると共に、保持力が向上する傾向にある。
一方、樹脂(A)の重量平均分子量が80万を超えると、柔軟性や流動性が劣り、該組成物からなる粘着層は、被着体との濡れが十分に得られない。また、粘着性組成物を調製する際に、溶媒に対する溶解性が低下する場合がある。
樹脂(A)の重量平均分子量は、凝集力と被着体に対する濡れ性のバランスの観点から、好ましくは3万〜55万、より好ましくは5万〜45万、更に好ましくは10万〜40万である。
【0019】
ポリイソブチレン系樹脂(A)の構造は、主鎖又は側鎖にポリイソブチレン骨格を有する樹脂であり、下記構成単位(a)を有する樹脂である。
【0020】
【化2】
【0021】
樹脂(A)としては、例えば、イソブチレンの単独重合体であるポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレンの共重合体、イソブチレンとn−ブテンの共重合体、イソブチレンとブタジエンの共重合体、及びこれら共重合体を臭素化又は塩素化等したハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。これらの樹脂(A)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、樹脂(A)が共重合体である場合、イソブチレンからなる構成単位が、全構成単位の中で一番多く含まれているものとする。
イソブチレンからなる構成単位の含有量は、樹脂(A)の全構成単位に対して、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%、より更に好ましくは実質的に100質量%である。
【0022】
なお、本発明で用いる樹脂(A)は、樹脂の末端以外の分子内部に重合性二重結合を有するポリイソブチレン系樹脂であってもよいが、本発明の粘着性組成物からなる粘着層の耐久性及び耐候性を向上させる観点、並びに水蒸気透過率を低下させる観点から、重合時に重合性二重結合が消失し、密な分子構造を形成し得る、主鎖及び側鎖に重合性二重結合を残さないイソブチレンからなる構成単位を多く含むものが好ましい。
このような主鎖及び側鎖に重合性二重結合を残さないイソブチレンからなる構成単位の含有量は、樹脂(A)の全構成単位に対して、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%、より更に好ましくは実質的に100質量%である。
【0023】
樹脂(A)の合成方法としては、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素等のルイス酸触媒の存在下で、イソブチレン等のモノマー成分を重合する方法が挙げられる。
また、樹脂(A)としては、市販品を使用することもできる。市販品としては、Vistanex(Exxon Chemical Co.製)、Hycar(Goodrich社製)、Oppanol(BASF社製)等が挙げられる。
【0024】
ここで、樹脂(A)は、重量平均分子量が高いポリイソブチレン系樹脂と、重量平均分子量が低いポリイソブチレン系樹脂とを含むことが好ましい。
つまり、本発明で用いる樹脂(A)は、重量平均分子量が27〜80万のポリイソブチレン系樹脂(A1)(以下、「樹脂(A1)」ともいう)と、重量平均分子量が3〜25万のポリイソブチレン系樹脂(A2)(以下、「樹脂(A2)」ともいう)とを含むことが好ましい。
粘着剤組成物中に重量平均分子量の高い樹脂(A1)を含むことで、当該粘着性組成物からなる粘着層の耐久性及び耐候性を向上させると共に、該粘着層の水蒸気透過率の低下、及び保持力の向上に寄与する。
また、粘着剤組成物中に重量平均分子量の低い樹脂(A2)を含むことで、樹脂(A2)が樹脂(A1)と良好に相溶して、適度に樹脂(A1)を可塑化させることができ、それにより、当該粘着性組成物からなる粘着層の被着体に対する濡れ性を高め、得られる粘着性シートの粘着物性、柔軟性、保持力等を向上させることができる。
【0025】
樹脂(A1)の重量平均分子量としては、粘着性組成物の凝集力を向上させ、該組成物からなる粘着層の水蒸気透過率を低下させる観点から、好ましくは27万〜80万、より好ましくは30万〜60万、更に好ましくは32万〜45万、より更に好ましくは33万〜40万である。
樹脂(A1)の重量平均分子量が27万以上であれば、粘着性組成物の凝集力を十分向上させることができ、該組成物から形成された粘着層の水蒸気透過率を低下させることができ、また、被着体への汚染の懸念も解消し得る。
一方、樹脂(A1)の重量平均分子量が80万以下であれば、粘着性組成物の凝集力が高くなりすぎることにより柔軟性や流動性の低下という弊害を避けることができ、該組成物からなる粘着層の被着体との濡れを良好にすることができる。また、粘着性組成物を調製する際、溶媒に対する溶解性を良好とすることができる。
【0026】
樹脂(A2)の重量平均分子量は、樹脂(A1)と良好に相溶し、適度に樹脂(A1)を可塑化させる観点、並びに水蒸気透過率等の他の物性への影響を抑える観点から、好ましくは2万〜25万であるが、より好ましくは8万〜23万、より好ましくは14万〜22万、更に好ましくは18万〜21万である。
重量平均分子量が2万以上であれば、粘着性組成物から形成した粘着層において、樹脂(A2)が低分子成分として分離して、被着体が汚染される弊害を回避でき、また、高温下で発生するアウトガス発生量が増加する等の物性に及ぼす影響も回避することができる。一方、25万以下であれば、樹脂(A1)を十分に可塑化させることができ、形成される粘着層の被着体との濡れを良好にすることができる。
【0027】
ここで、樹脂(A2)の含有割合としては、粘着力及び保持力、並びに水蒸気透過率の低下効果とのバランスの観点から、樹脂(A1)100質量部に対して、好ましくは5〜55質量部、より好ましくは6〜40質量部、更に好ましくは7〜30質量部、より更に好ましくは8〜20質量部である。
5質量部以上であれば、樹脂(A1)を十分に可塑化させることができ、粘着性組成物からなる粘着層の被着体との濡れを良好とすることができ、また、粘着力を向上させることができる。一方、55質量部以下であれば、凝集力を十分に向上させることができるため、優れた粘着力及び保持力を有し、耐久性も良好な粘着性シートの粘着層を形成することができる。
なお、上記の樹脂(A1)及び(A2)は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
<水素化石油樹脂(B)>
本発明で用いる水素化石油樹脂(B)とは、石油樹脂を水素添加したものであり、完全水素化樹脂だけでなく、水素化率を異にする部分水素化樹脂も含まれる。また、本発明において、石油樹脂とは、石油由来の樹脂であることを特徴とし、水素化テルペン系樹脂、水素化ロジン及び水素化ロジンエステル系樹脂、不均化ロジン、不均化ロジンエステル系樹脂等の生体由来の樹脂を除く概念である。
水素化石油樹脂(B)を含有することで、樹脂(A)が高湿熱や紫外線により変色(黄変)することを防ぐことができ、耐候性の優れた粘着性組成物とすることができる。
本発明で用いる水素化石油樹脂としては、樹脂(A)との相溶性、粘着性組成物からなる粘着層の水蒸気透過率の低下効果、高湿熱や紫外線に対する耐久性の観点から、完全水素化された石油樹脂が好ましい。
【0029】
具体的な石油樹脂としては、石油ナフサの熱分解で生成する、ペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3−ペンタジエン等の炭素数5の不飽和炭化水素を主成分(少なくとも20質量%以上)とするC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂の水素化樹脂である水素化ジシクロペンタジエン系樹脂又は部分水素化芳香族変性ジシクロペンタジエン系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成する、インデン、ビニルトルエン、α又はβ−メチルスチレン等の炭素数9の不飽和炭化水素を主成分(少なくとも20質量%以上)とするC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂の水素化樹脂、これらのC5留分とC9留分の共重合石油樹脂の水素化樹脂等が好ましい。
なお、水素化石油樹脂(B)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、粘着性組成物からなる粘着層の低透湿性及び透明性の点から、C5留分とC9留分の共重合石油樹脂の水素化樹脂がより好ましい。
【0030】
水素化石油樹脂(B)の軟化点は、粘着性組成物からなる粘着層が、被着体の種類によらず優れた粘着力を有すると共に、粘着力と保持力とのバランスの向上を図る観点から、90〜135℃であるが、好ましくは95〜130℃、より好ましくは98〜128℃、更に好ましくは105〜126℃である。軟化点が90℃未満であると、粘着性組成物の凝集力が十分に得られず、該組成物からなる粘着層は、十分な粘着力が得られない。また、軟化点が135℃を超えると、該組成物からなる粘着層は、ガラス等の被着体に対して十分な粘着力が得られず、粘着性シートの剥離時にジッピングが発生する場合がある。
また、軟化点の異なる水素化石油樹脂(B)を2種以上併用することで、粘着力の向上を図ることもできる。
【0031】
水素化石油樹脂(B)の含有量は、被着体の種類に依存しない優れた粘着力及び保持力を付与する観点から、(A)成分100質量部に対して、好ましくは10〜55質量部、より好ましくは12〜50質量部、より好ましくは14〜45質量部、更に好ましくは16〜35質量部、より更に好ましくは18〜25質量部である。
10質量部以上であれば、優れた粘着力を付与することができ、また、粘着性組成物よりなる粘着層の被着体との濡れが良好となる。一方、55質量部以下であれば、粘着性組成物の凝集力が十分に得られ、保持力を向上させ、粘着性組成物よりなる粘着性シートの粘着層と被着体とを貼り付けた際に、粘着性シートは剥れ難くなる。また、特に、ガラスやITO等の被着体に対して、優れた粘着力を有する。
【0032】
<オレフィン系重合体(C)>
本発明の粘着性組成物には、一分子あたり0.3個以上の二重結合を有するオレフィン系重合体(C)を含有する。
オレフィン系重合体(C)が有する一分子あたりの二重結合の数は、0.3個以上であるが、好ましくは0.3個以上3.0個未満、より好ましくは0.5個以上3.0個未満、更に好ましくは0.7個以上2.5個未満、より更に好ましくは1.1個以上2.2個未満である。
【0033】
オレフィン系重合体(C)は、後述のシラン系化合物(D)と架橋して、樹脂(A)の高分子量の重合体間に、擬似的な架橋構造を形成すると考えられる。
つまり、本発明の粘着性組成物においては、本来可塑剤的に作用する低分子量の重合体である(C)成分が、(D)成分と化学的に架橋し、三次元網目構造を形成し、その三次元網目構造に、樹脂(A)の複数の高分子量の重合体を挿入させることで、高分子量の重合体同士を拘束し、樹脂(A)の高分子量の重合体間に擬似的な架橋構造を形成するものと考えられる。このようにして得られた粘着性組成物は凝集力が向上し、形成される粘着層の粘着力及び保持力が向上すると考えられる。
そして、オレフィン系重合体(C)は、末端に重合性二重結合を有するポリイソブチレン系樹脂(C1)、並びに、エチレン、プロピレン、及び上述の式(I)又は(II)で表されるノルボルネン化合物由来の構成単位を有する共重合体(C2)の少なくとも一方を含む。
(C)成分中の(C1)成分及び(C2)成分の合計含有量は、好ましくは80〜100質量%、より好ましくは90〜100質量%、更に好ましくは95〜100質量%、より更に好ましくは実質的に100質量%である。
【0034】
オレフィン系重合体(C)の含有量は、粘着性組成物からなる粘着層の粘着力及び保持力の向上の観点から、(A)成分100質量部に対して、10質量部以上であり、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは11〜70質量部、更に好ましくは12〜50質量部、より更に好ましくは13〜35質量部である。10質量部未満であると、粘着力の向上効果を十分に発現させることができない。また、保持力も劣る傾向にある。一方、100質量部以下であれば、優れた粘着力を有する粘着層を形成することができる。
【0035】
(末端に重合性二重結合を有するポリイソブチレン系樹脂(C1))
ポリイソブチレン系樹脂(C1)は、末端に重合性二重結合を有する、ポリイソブチレン系樹脂であり、末端に下記式(b)で表される基を有していることが好ましい。
なお、当該(C1)成分は、重合性二重結合(もしくは下記式(b)で表される基)を、主鎖の一方の末端のみに有しているポリイソブチレン系樹脂であってもよく、両末端に有しているポリイソブチレン系樹脂であってもよい。
【0036】
【化3】
【0037】
上記式(b)中、*は結合部分を示し、R11は、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基を示す。
炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。
なお、当該アルキル基が有してもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0038】
1は、単結合、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキレン基を示し、好ましくは置換基を有してもよい炭素数1〜3のアルキレン基である。
炭素数1〜10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、2−メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、2−エチル−2−メチルトリメチレン基、ヘプタメチレン基、2−メチル−2−プロピルトリメチレン基、2,2−ジエチルトリメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が挙げられる。
なお、当該アルキレン基が有してもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0039】
ポリイソブチレン系樹脂(C1)の重量平均分子量としては、樹脂(A)の重合体間に擬似的な架橋構造を形成し、架橋密度を高めて凝集力を向上させる観点から、好ましくは2,000以上20,000未満、より好ましくは3,000以上18,000以下、更に好ましくは4,000以上16,000以下である。
【0040】
(エチレン、プロピレン、及び式(I)又は(II)で表されるノルボルネン化合物由来の構成単位を有する共重合体(C2))
(C2)成分の共重合体は、エチレン、プロピレン、及び下記式(I)又は(II)で表されるノルボルネン化合物由来の構成単位を有する。
【0041】
【化4】
【0042】
上記式(I)中、R1は、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基であり、R2〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基であり、pは0〜10の整数である。また、上記式(II)中、R5〜R7は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基である。
【0043】
2〜R7が示す炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。
また、R1が示す炭素数1〜5のアルキル基としては、上記R2〜R7の具体例のうち、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられる。
なお、R1〜R7がアルキル基である場合、当該アルキル基が有してもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0044】
上記一般式(I)及び(II)で表されるノルボルネン化合物としては、例えば、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(2,3−ジメチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−メチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(3,4−ジメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−エチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2−ジメチル−5−ヘキセシル)−2−ノルボルネン、5−(5−エチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2,3−トリメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等が挙げられる。
これらの化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
また、上記一般式(I)中のR2又はR3とR4とが結合して二重結合を有する環を形成してもよく、同様に、上記一般式(II)中のR5又はR6とR7とが結合して二重結合を有する環を形成してもよい。このような二重結合を有する環が形成されたノルボルネン化合物としては、下記式(i)〜(viii)で表される化合物等が挙げられる。なお、下記式(i)〜(viii)で表される化合物は、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基等の置換基を有していてもよい。
【0046】
【化5】
【0047】
これらの中でも、比較的剛直な骨格を有し、凝集力を向上する観点から、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、及び上記式(i)及び(ii)で表される化合物が好ましく、5−ビニル−2−ノルボルネンがより好ましい。
【0048】
共重合体(C2)中のエチレン由来の構成単位の含有割合としては、共重合体(C2)の全構成単位100モル%に対して、好ましくは10〜90モル%、より好ましくは20〜90モル%、より好ましくは25〜87モル%、より好ましくは30〜85モル%、更に好ましくは35〜83モル%、更に好ましくは40〜80モル%、より更に好ましくは50〜75モル%である。
共重合体(C2)中のプロピレン由来の構成単位の含有割合としては、共重合体(C2)の全構成単位100モル%に対して、好ましくは10〜75モル%、より好ましくは10〜65モル%、より好ましくは20〜60モル%、更に好ましくは20〜55モル%、更に好ましくは30〜50モル%、より更に好ましくは30〜45モル%である。
共重合体(C2)中の一般式(I)又は(II)で表されるノルボルネン化合物由来の構成単位の含有割合としては、共重合体(C2)の全構成単位100モル%に対して、好ましくは0.3〜35モル%、より好ましくは0.4〜30モル%、より好ましくは0.5〜25モル%、より好ましくは0.6〜20モル%、更に好ましくは0.7〜15モル%、更に好ましくは0.8〜12モル%、より更に好ましくは1〜5モル%である。
また、共重合体(C2)には、エチレン、プロピレン、及び一般式(I)又は(II)で表されるノルボルネン化合物以外の化合物由来の構成単位を有していてもよい。
【0049】
共重合体(C2)の全構成単位100質量部に対する、共重合体(C2)中のエチレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは25〜70質量%、更に好ましくは35〜60質量%である。
共重合体(C2)の全構成単位100質量部に対する、共重合体(C2)中のプロピレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは10〜75質量%、より好ましくは20〜60質量%、更に好ましくは30〜50質量%である。
共重合体(C2)の全構成単位100質量部に対する、共重合体(C2)中の一般式(I)又は(II)で表されるノルボルネン化合物由来の構成単位の含有割合は、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜12質量%である。
【0050】
なお、共重合体(C2)は、ブロック共重合体、交互共重合体、ランダム共重合体のいずれであってもよい。
また、共重合体(C2)の数平均分子量(Mn)としては、樹脂(A)の重合体間に擬似的な架橋構造を形成し、架橋密度を高めて凝集力を向上させる観点から、好ましくは300〜40,000、より好ましくは500〜20,000、更に好ましくは1,000〜10,000、より更に好ましくは2,000〜5,000である。
【0051】
本発明で用いられる共重合体(C2)は、例えば、公知のバナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物を主成分として含有する触媒の存在下に、重合温度30〜60℃、重合圧力4〜12kgf/cm2の条件で、エチレン、プロピレン、及び上記一般式(I)又は(II)で表わされるノルボルネン化合物とを共重合することにより得られる。共重合は、炭化水素媒体中で行うことで製造することができる。
【0052】
<シラン系化合物(D)>
本発明の粘着性組成物には、2又は3個のヒドロシリル基(SiH基)を有するシラン系化合物(D)を含有する。シラン系化合物(D)は、オレフィン系重合体(C)中の二重結合と反応し、架橋剤として作用する。
このシラン系化合物(D)は、その分子構造に特に制限はなく、線状、環状、分岐状構造、又は三次元網目状構造の樹脂状物等も使用可能であるが、1分子中に2又は3個のケイ素原子に直結した水素原子、すなわちSiH基を含んでいることが必要である。
SiH基の数が2個未満であると、架橋によるネットワークが形成し難く、保持力が低下する傾向にあるため好ましくない。
一方、SiH基の数が3個を超えると、架橋部分の割合が高くなりすぎ、粘着力が低下する傾向にあるため好ましくない。
シラン系化合物(D)の一分子中に含まれるSiH基の数は、2又は3個であるが、粘着力と保持力のバランスの観点から、2個であることが好ましい。
【0053】
このようなシラン系化合物(D)としては、上記観点から、下記一般式(1)〜(9)で表わされる化合物が好ましい。
【0054】
【化6】
【0055】
【化7】
【0056】
【化8】
【0057】
【化9】
【0058】
上記一般式(1)〜(9)中のRは、それぞれ独立して、置換基を有してもよい炭素数1〜10(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6)の1価炭化水素基(但し、脂肪族不飽和結合を有するものを除く)である。
1価炭化水素基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
この1価炭化水素基としては、例えば、前記のR2〜R7が示す炭素数1〜10のアルキル基として例示した直鎖又は分岐鎖のアルキル基の他に、フェニル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換のアルキル基等が挙げられる。なお、フェニル基については、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基等の置換基を有していてもよい。
これらの1価炭化水素の中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、トリフロロプロピル基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましく、Rの一部又は全部がフェニル基であることが更に好ましい。
【0059】
上記一般式(1)〜(9)中の、aは2又は3、bは1以上の整数、cは0又は1である。なお、bは1以上の整数であるが、好ましくは1〜5の整数、より好ましくは1〜3の整数である。
【0060】
上記一般式(1)〜(9)で表されるシラン系化合物(D)の中でも、粘着力と保持力のバランスの観点から、SiH基を2個有する化合物が好ましく、一般式(5)で表される化合物がより好ましい。
【0061】
上記のシラン系化合物(D)は、公知の方法により製造することができる。例えば、上記式のRがメチル基である場合、オクタメチルシクロテトラシロキサン及びテトラメチルシクロテトラシロキサンの少なくとも一方と、末端基となる、ヘキサメチルジシロキサン、あるいは1,3−ジハイドロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等のトリオルガノシリル基又はジオルガノハイドロジェンシロキシ基を含む化合物とを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に、−10℃〜+40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。
【0062】
シラン系化合物(D)の含有量は、(C)成分の含有量に応じて適宜調整されるが、粘着力及び保持力を向上させる観点から、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.05〜9質量部、より好ましくは0.1〜6質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部である。0.05質量部以上であれば、(C)成分との反応が十分に進行し、樹脂(A)の重合体間に擬似的な架橋構造を形成することができるため、形成される粘着層の粘着力及び保持力を向上させることができる。一方、9質量部以下であれば、ネットワークに関与しない成分を適量存在させることができるため、粘着力を向上させることができる。
【0063】
<白金系触媒(E)>
本発明の粘着性組成物には、さらに(C)成分の化合物中に含まれる二重結合と、(D)成分のヒドロシリル基との架橋反応を適度に促進させる観点から、白金系触媒(E)を含有することが好ましい。白金系触媒(E)を用いることで、架橋密度が適度で強度特性及び伸び特性に優れた重合体を得ることができる。
白金系触媒としては、通常、付加硬化型の硬化に使用される公知のものを用いることができ、例えば、米国特許第2,970,150号明細書に記載の微粉末金属白金触媒、米国特許第2,823,218号明細書に記載の塩化白金酸触媒、米国特許第3,159,601号公報明細書及び米国特許第159,662号明細書に記載の白金と炭化水素との錯化合物、米国特許第3,516,946号明細書に記載の塩化白金酸とオレフィンとの錯化合物、米国特許第3,775,452号明細書及び米国特許第3,814,780号明細書に記載の白金とビニルシロキサンとの錯化合物等が挙げられる。
また、より具体的には、白金の単体(白金黒)、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、アルミナ、シリカ等の担体に白金を担持させたもの等が挙げられる。
【0064】
白金系触媒(E)の含有量としては、架橋反応を促進させ、架橋密度が適度で強度特性及び伸び特性に優れた重合体を得る観点から、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.005〜3質量部、更に好ましくは0.01〜1.5質量部である。
【0065】
<その他の添加剤>
本発明の粘着性組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲において、更にその他の添加剤として、硬化遅延剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、樹脂安定剤、充填剤、顔料、増量剤等を含んでもよい。これらの添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0066】
硬化遅延剤は、粘着性組成物をシート化する際のポットライフの最適化の観点から、(C)成分として、末端に重合性二重結合を有するポリイソブチレン系樹脂(C1)を用いる場合に添加することが好ましい。
硬化遅延剤としては、例えば、エチニルアルコール、2−プロピン−1−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3−トリメチルシロキシプロピン等のアセチレン化合物、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等のアミン化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物等が挙げられる。これらの硬化遅延剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0067】
これらの硬化遅延剤の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.05〜3質量部、更に好ましくは0.1〜1.5質量部である。
【0068】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系の光安定剤等が挙げられる。これらの光安定剤の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0〜2質量部である。
酸化防止剤としては、例えば、リン酸エステル系化合物等が挙げられる。これらの酸化防止剤の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0〜2質量部である。
【0069】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、オキサゾリアックアシッドアミド化合物、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0〜3質量部である。
樹脂安定剤としては、例えば、イミダゾール系樹脂安定剤、ジチオカルバミン酸塩系樹脂安定剤、リン系樹脂安定剤、硫黄エステル系樹脂安定剤等が挙げられる。これら樹脂安定剤の含有量は、樹脂(A)100質量部に対して、好ましくは0〜3質量である。
【0070】
[粘着性シート]
本発明の粘着性シートは、上述の本発明の粘着性組成物からなる粘着層を有する。
本発明の粘着性シートの構成は、特に限定されず、図1(a)のように、基材11上に粘着層12を形成した粘着性シート1aに限られない。
例えば、図1(b)に示す基材11の両面に粘着層12、12’を形成した粘着性シート1bや、図1(c)に示す基材11上に形成した粘着層12上に剥離可能な剥離材13を形成した粘着性シート1cとしてもよい。
また、図1(d)のように、基材を用いずに、粘着層12を、剥離材13と別の剥離材13’とで挟持した粘着性シート1dとしてもよい。この際、粘着性シート1dの剥離材13、13’の素材は、同じものでもよく、異なるものでもよいが、剥離材13と剥離材13’との剥離力差が異なるように調整することが好ましい。
他にも、表面が剥離処理された剥離材の片面に粘着層を設けたものをロール状に巻いたもの等も挙げられる。
【0071】
粘着性シートの粘着層の厚さとしては、用途等に応じて適宜選定されるが、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは1〜60μm、更に好ましくは3〜40μmである。0.5μm以上であれば、被着体に対し良好な粘着力が得られ、100μm以下であれば、生産性の面で有利であり、取扱い易い粘着性シートとなり得る。
【0072】
(基材)
基材としては、特に限定されず、使用目的に応じて適宜選定される。例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等のプラスチックフィルム又はシート及びこれらの樹脂の混合物又は積層物からなるプラスチックフィルム又はシート等が挙げられる。プラスチックフィルム又はシート等の基材シートは、未延伸でもよいし、縦又は横等の一軸方向あるいは二軸方向に延伸されていてもよい。
【0073】
また、上記のプラスチックフィルム又はシート以外の基材としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、グラシン紙等や、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙等の各種紙類、各種合成紙、アルミニウム箔や銅箔や鉄箔等の金属箔、不織布等の多孔質材料等が挙げられる。
【0074】
使用する基材の着色の有無については問わないが、表示体背面の封止に用いる場合は、白色等の反射する色としてもよい。また、表示体前面の封止に用いる場合は、可視光領域においても無色透明であることが好ましい。また、太陽電池のフロントシート等の前面封止材として用いる場合は、紫外線と可視光線を十分に透過するものが好ましい。逆に有機エレクトロルミネッセンスのように発光素子が紫外線に弱い場合は、紫外線を遮蔽するものが好ましい。また、有機エレクトロルミネッセンスの封止材として使用する場合は、ガスバリア性能を有するフィルムを用いることが好ましく、側面からは本発明の粘着性組成物からなる粘着層がガスの侵入を抑制し、上面からはフィルムと本発明の粘着性組成物がガスの侵入を抑制できる構造とすることができる。そのようなガスバリア性能を有するフィルムとしては、例えば、表面に金属蒸着処理を行ったフィルム、金属箔をラミネートしたフィルム、ガス透過率が低い樹脂を表面に塗布したフィルム等が挙げられる。
【0075】
基材の厚さは、特に制限はないが、取り扱い易さの観点から、好ましくは10〜250μm、より好ましくは15〜200μm、更に好ましくは20〜150μmである。
なお、基材には、更に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、着色剤等が含有されていてもよい。
【0076】
基材がプラスチック系材料の場合、基材と粘着層との密着性を向上させるために、必要に応じて、基材表面に対し酸化法や凹凸化法等の表面処理を施すことが好ましい。
酸化法としては、特に限定されず、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、クロム酸酸化(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理等が挙げられる。また、凹凸化法としては、特には限定されず、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選定されるが、粘着層との密着性の向上効果や操作性の観点から、コロナ放電処理法が好ましい。また、プライマー処理を施すこともできる。
【0077】
(剥離材)
剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、基材上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
剥離材用の基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、又はポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。
剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
剥離材の厚さは、特に制限ないが、好ましくは20〜200μm、より好ましくは25〜150μmである。
【0078】
〔粘着性シートの製造方法〕
粘着性シートの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。例えば、本発明の粘着性組成物に対して、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶媒を配合して、粘着性組成物の溶液を調整し、当該溶液を、基材上又は剥離材の剥離処理面上に、公知の塗布方法により塗布して粘着層を形成して製造する方法が挙げられる。
【0079】
有機溶媒を配合した粘着性組成物の溶液の固形分濃度は、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは10〜45質量%、更に好ましくは15〜30質量%である。当該固形分濃度が10質量%以上であれば、溶剤の使用量としては十分である。一方、当該固形分濃度が60質量%以下であれば、適度な粘度となり、優れた塗布作業性を有する溶液となり得る。
【0080】
塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0081】
また、基材上又は剥離材の剥離処理面上に、粘着性組成物の溶液を塗布して塗布膜を形成した後、溶剤や低沸点成分の残留を防ぐために、当該塗布膜を、80〜150℃の温度で30秒〜5分間加熱し、乾燥処理することが好ましい。
【0082】
具体的な粘着性シートの製造方法として、図1(a)のような、基材11上に粘着層12が形成された粘着性シート1aの製造方法としては、例えば、基材11の一方の面に、本発明の粘着性組成物を直接塗布し、乾燥して粘着層12を形成させて製造する方法や、本発明の粘着性組成物を用いて予め作製した、後述の粘着性シート1dの一方の剥離材を除去して、基材11の一方の面と粘着層12とを貼り合わせて製造する方法等が挙げられる。
また、図1(b)のような、基材11の両面に粘着層12、12’を形成した粘着性シート1bの製造方法としては、例えば、基材の両面のそれぞれに、本発明の粘着性組成物を直接塗布し、乾燥して粘着層12、12’を形成させて製造する方法や、予め作製した後述の粘着性シート1dの一方の剥離材を除去して基材11の一方の面と粘着層とを貼り合わせ、基材11の他方の面に、本発明の粘着性組成物を直接塗布し、乾燥して粘着層を形成させる製造する方法等が挙げられる。
さらに、図1(c)のような、基材11上に形成した粘着層12上に剥離可能な剥離材13を形成した粘着性シート1cの製造方法としては、例えば、上述の粘着性シート1aの粘着層12の面と剥離材13とを貼り合わせて製造する方法や、剥離材13の剥離処理面に、本発明の粘着性組成物を直接塗布し、乾燥して粘着層12を形成させた後、粘着層12と基材11とを貼り合わせて製造する方法等が挙げられる。
そして、図1(d)のような、基材を用いずに、粘着層12を、剥離材13と別の剥離材13’とで挟持した粘着性シート1dの製造方法としては、例えば、剥離材13の剥離処理面に本発明の粘着性組成物を直接塗布し、乾燥して粘着層12を形成させた後、粘着層12と剥離材13’とを貼り合わせて製造する方法や、両面に剥離処理された剥離材の片面に、本発明の粘着性組成物を直接塗布し、乾燥して粘着層を形成させた後、ロール状に巻いて1層テープ状の基材を有さない両面粘着性テープとして製造する方法等が挙げられる。なお、前述のように、剥離材13と剥離材13’との剥離力差が異なるように調整することが好ましい。
【0083】
〔粘着性シートの特性〕
本発明の粘着性シートは、粘着層自体の厚みが薄い場合でも、高い粘着力を有する。本発明の粘着性シートの粘着力は、被着体の種類によらず、比較的高い粘着力を発現する。
被着体がガラスである場合の粘着性シートの粘着力は、好ましくは1.3N/mm以上、より好ましくは3.0N/25mm以上、更に好ましくは4.0N/25mm以上である。
なお、上述の粘着性シートの粘着力は、実施例に記載の測定方法による値を意味する。
【0084】
また、本発明の粘着性シートは、高い粘着力を有するだけでなく、優れた保持力も有する。本発明の粘着性シートの保持力としては、実施例に記載の評価方法において、被着体としてステンレス板を用い、40℃で1kgの重りを取り付けた際に、70000秒経過しても、完全にずれ落ちないことが好ましく、ずれ落ちても移動した長さが5.0mm以下であることがより好ましく、3.5mm以下であることが更に好ましく、0.5mm以下であることがより更に好ましい。
【0085】
本発明の粘着性シートにおける厚さ50μmの粘着層の水蒸気透過率は、40℃、90%RH(相対湿度)において、好ましくは10g/m2/day以下、より好ましくは7g/m2/day以下、更に好ましくは5g/m2/day以下、より更に好ましくは4g/m2/day以下である。水蒸気透過率が10g/m2/day以下であれば、有機EL素子等の封止用途に用いた場合でも、粘着層からの水蒸気の入り込みを十分に抑制することができる。
【0086】
本発明の粘着性シートは、優れた透明性を有する。本発明の粘着性シートの波長550nmにおける可視光線透過率としては90%以上であることが好ましい。可視光線透過率が90%以上であれば、有機EL素子等の封止用途として好適に用いることができる。
また、本発明の粘着性シートの粘着層の波長550nmにおける可視光線透過率も90%以上であることが好ましい。
【0087】
本発明の粘着性シートは、粘着層からのアウトガス発生量を抑制することができる。本発明において、粘着層からのアウトガス発生量は、n−デカン換算値の比較で評価される。
120℃の温度で30分間加熱した際の厚さ50μmの粘着層からのアウトガス発生量は、n−デカン換算量で、好ましくは1.0μg/cm2未満、より好ましくは0.5μg/cm2以下である。1.0μg/cm2未満であれば、粘着層が被着体を腐食させることがなく、例えば、精密機器への貼付用途に適応した場合でも、精密電子部材の誤動作をもたらす可能性が著しく低減する。
【0088】
以上の粘着性シートの粘着力、保持力、水蒸気透過率、可視光線透過率、及びアウトガス発生量の値は、実施例に記載の方法により測定した値を示す。
【0089】
本発明の粘着性シートの形状は、特に制限されず、例えば、シート状、ロール状等が挙げられる。例えば、電子デバイス用部材として用いる場合には、シート状であることが好ましい。
【0090】
本発明の粘着性組成物及び粘着性シートは、被着体によらず優れた粘着力を有すると共に、粘着力と保持力とのバランスが良く、水蒸気透過率が低く、透明性に優れ、且つアウトガス発生量を抑制することができる。更には、高湿熱や紫外線に対する優れた耐久性を発揮する。そのため、本発明の粘着性シートは、封止用部材として好適である。
封止用部材としては、有機トランジスタ、有機メモリー、有機EL素子等の有機デバイス;液晶ディスプレイ;電子ペーパー;薄膜トランジスタ;エレクトロクロミックデバイス;電気化学発光デバイス;タッチパネル;太陽電池;熱電変換デバイス;圧電変換デバイス;蓄電デバイス;等の電子デバイス用途に用いることができる。
これらの中でも、本発明の粘着性シートは、有機EL素子の封止用途として用いられることが好ましい。
【0091】
本発明の粘着性シートで封止した有機EL素子の例を図2に示す。なお、以下、有機EL素子の封止について説明するが、本発明の粘着性シートは、有機EL素子等の有機デバイスに限らず、上述の種々の電子デバイスの封止用途でも好適に用いることができる。
有機EL素子20は、ガラス基板21上に構造体22が形成されている。構造体22は、透明電極、正孔輸送層、発光層及び背面電極等が積層されたものである。そして、この構造体22及びガラス基板21上に、本発明の粘着性シート1が積層され、更にこの粘着性シート1上にガスバリアフィルム23が固着されている。本発明の粘着性シート1の粘着層が、構造体22及びガラス基板21と密着し固着されることで、封止された有機EL素子20となる。本発明の粘着性シートを用いれば、高温加熱や紫外線照射等の処理を必要とせず、簡便に有機EL素子を封止することができる。
【実施例】
【0092】
[実施例1〜13、比較例1〜7]
表1及び2に示す、ポリイソブチレン系樹脂(A)の総量100質量部(固形分比)に対して、表1及び2に示す種類及び質量比(固形分比)の(B)〜(E)成分、及び硬化遅延剤を混合し、トルエンに溶解し、固形分濃度20質量%の粘着性組成物の溶液を調製した。
次いで、基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、製品名「コスモシャインA4100」、厚み50μm)を用い、得られた粘着性組成物の溶液を乾燥後の厚さが20μmになるように基材上に塗布した後、120℃で2分間乾燥させて粘着層を形成させた。
そして、この粘着層の表面上に、表面がシリコーン剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製、製品名「SP−PET381130」、厚み38μm)を軽剥離シートとして、剥離処理面を貼付し粘着性シートを作製した。
【0093】
[比較例8〜9]
(A)及び(B)成分を配合せず、表2に示す(C)成分の総量100質量部(固形分比)に対して、表2に示す種類及び質量比(固形分比)の(D)〜(E)成分、及び硬化遅延剤を混合し、トルエンに溶解し、固形分濃度20質量%の粘着性組成物の溶液を調製した。
次いで、得られた粘着性組成物の溶液を用いて、上記と同様にして、粘着性シートを作製した。
【0094】
なお、実施例1〜13及び比較例1〜9で用いた各成分の詳細は以下のとおりである。
(A)成分
・OppanolB10(製品名、BASF社製):重量平均分子量3.6万。
・OppanolB30(製品名、BASF社製):重量平均分子量20万。
・OppanolB50(製品名、BASF社製):重量平均分子量34万。
(B)成分
・アルコンP−125(製品名、荒川化学工業社製):水素化石油樹脂、軟化点125℃。
【0095】
(C)成分
・エピオンEP−200A(製品名、カネカ社製):両末端にビニル基(R11=水素原子、X1=メチレン基である上記式(b)で表される基)を有するポリイソブチレン系樹脂、重量平均分子量20,000未満。
・エピオンEP−400A(製品名、カネカ社製):両末端にビニル基(R11=水素原子、X1=メチレン基である上記式(b)で表される基)を有するポリイソブチレン系樹脂、重量平均分子量20,000未満。
・三井EPT3062E(製品名、三井化学社製):エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体。
・三井EPT3045(製品名、三井化学社製):エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエン共重合体。
・PX−062(製品名、三井化学製):エチレン/プロピレン/5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体(含有比率;エチレン/プロピレン/5−ビニル−2−ノルボルネン=50.0/45.3/4.7(質量%))、Mn=3160。
【0096】
(D)成分、(D)成分の類似成分
・X93−1260(製品名、信越化学工業社製):1分子中にSiH基を2つ有するシラン系化合物(上記一般式(5)においてb=1の場合の化合物)。
・X93−916(製品名、信越化学工業社製):1分子中にSiH基を3つ有するシラン系化合物(上記一般式(9)で表される化合物)。
・X93−1346(製品名、信越化学工業社製):1分子中にSiH基を6つ有するシラン系化合物(上記一般式(1)においてa=6の場合の化合物)。
【0097】
(E)成分
・BY24−835(製品名、東レ・ダウコーニング社製):白金系触媒
・X93−1410(製品名、三井化学社製):白金系触媒
その他成分
・硬化遅延剤(ジメチルマレート)
【0098】
[比較例10]
スチレン−イソブテン−スチレンブロック共重合体(SIS共重合体)(日本ゼオン社製、製品名「Quintac3421」、スチレン含有量14質量%、Mw:12万)100質量部(固形分)をトルエンに溶解し、固形分濃度20質量%の粘着性組成物の溶液を調製した。
次いで、得られた粘着性組成物の溶液を用いて、上記と同様にして、粘着性シートを作製した。
【0099】
[比較例11]
単量体成分として、アクリル酸ブチル90質量部、及びアクリル酸10質量部、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部を反応器に入れ混合した。そして、4時間窒素ガスで脱気を行い、60℃まで徐々に昇温した後、24時間撹拌しながら重合反応を行ない、アクリル系共重合体(重量平均分子量:65万)含有酢酸エチル溶液(固形分33質量%)を得た。
得られたアクリル系共重合体含有酢酸エチル溶液100質量部(固形分)に、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、製品名「コロネートL」、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートの酢酸エチル溶液、固形分75質量%)1.5質量部(固形分比)を添加してトルエンに溶解し、固形分濃度20質量%の粘着性組成物の溶液を調製した。
次いで、得られた粘着性組成物の溶液を用いて、上記と同様にして、粘着性シートを作製した。
【0100】
上記のようにして得た粘着性組成物及び粘着性シートについて、以下の方法により物性を評価した。結果を表1、2に示す。
【0101】
<粘着力>
上記実施例及び比較例で作製した粘着性シートを25mm×300mmの大きさに裁断し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下で、軽剥離シートを剥がし、下記被着体に貼付した。
・「ソーダライムガラス(ガラス)」:エヌ・エス・ジー・プレシジョン社製、製品名「コーニングガラス イーグルXG」、150mm×70mm×2mm。
貼付に際しては、重さ2kgのローラーを用い、1往復させて、被着体に圧着した。その後、23℃、50%RHの環境下で、貼付後24時間放置した後、同環境下で、引張試験機(オリエンテック社製、製品名「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で測定した値(N/25mm)を粘着力とした。
【0102】
<保持力>
上記実施例及び比較例で作製した粘着性シートを25mm×100mmの大きさに裁断し、23℃、50%RH(相対湿度)の環境下にて、貼付面積25mm×25mmとなるようにステンレス板(SUS304鋼番、360番研磨)に貼付した。貼付に際しては、重さ2kgのローラーを用い、5往復させて、被着体に圧着した。貼付後20分間放置した後、温度40℃の恒温層内に移し、1kgの重しを粘着性シートに垂直方向に荷重がかかるよう取り付けて、恒温槽内に放置し、粘着性シートがずれ落ちて被着体から完全に剥がれ落ちるまでの経過時間(秒)を測定した。ただし、70000秒経過しても完全にずれ落ちなかった場合は、ずれ落ちた長さを測定した。なお、ずれ落ちた長さが0.1mm未満である場合は、表1及び2においては「NC」と表記している。剥がれ落ちるまでの経過時間が長いほど、及び、ずれ落ちた長さが短いほど保持力が優れている。
【0103】
<粘着層の水蒸気透過率>
上記実施例及び比較例において、基材の代わりに、重剥離シートとして表面がシリコーン剥離処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック社製、製品名「SP−PET38T103−1」、厚み38μm)を用い、得られた粘着性組成物の溶液を乾燥後の厚さが50μmになるように塗布した後、120℃で2分間乾燥させて粘着層を形成させて、2枚の剥離シートに挟持された基材無しの粘着性シートを得た。
この粘着性シートの2枚の剥離シートを剥離して表出した粘着層に、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、厚さ6μm)でラミネートし、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムで挟まれた粘着層からなる水蒸気透過率測定用のサンプルとした。
水蒸気透過率の測定は、透過率測定器(LYSSY社製、製品名「L89−500」)を用いて、40℃、90%RH(相対速度)の環境下で測定した。なお、ラミネートに用いたポリエチレンテレフタレートフィルムの水蒸気透過率は2枚で43g/m2/dayであった。
【0104】
<可視光透過率>
水蒸気透過率の測定に用いた2枚の剥離シートに挟持された基材無しの粘着性シートの、軽剥離シートを剥離して表出した粘着層に、ガラス板(エヌ・エス・ジー・プレシジョン社製、製品名「コーニングガラス イーグルXG」、150mm×70mm×2mm)でラミネートし、重剥離シートを剥離し、一方の粘着層が剥き出しになったガラス板付き粘着性シートを得た。このガラス板付き粘着性シートの波長550nmの可視光透過率を、可視光透過率測定装置(島津製作所社製、製品名「UV−3101PC」)を用いて、測定した。
【0105】
<アウトガス発生量>
水蒸気透過率の測定に用いた2枚の剥離シートに挟持された基材無しの粘着性シートを20cm2の大きさに裁断した。その後、2枚の剥離シートを剥離除去し、両面剥き出しになった粘着性シートをアンプル瓶に封入し、アンプル瓶を、パージ&トラップGC Mass(日本電子工業社製、製品名「JHS−100A」)を用いて、120℃、30分間加熱して、発生するガスを採取した。その後、GC Mass(PERKIN ELMER製、製品名「Turbo Mass」)に導入して、n−デカンを用いて作成した検量線より、粘着層から発生するガス量をn−デカン換算量(μg/cm2)として求めた。
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
表1の実施例1〜13の粘着性シートは、粘着力及び保持力のバランスに優れ、可視光透過率が高く、該粘着性シートの粘着層の水蒸気透過率が低く、粘着層からのアウトガス発生量も抑えられていることが分かる。特に、粘着力及び保持力が優れた結果となった。
一方、表2の比較例1〜9の粘着性シートは、可視光透過率が高く、水蒸気透過率及びアウトガス発生量は抑制されているが、粘着力及び保持力が劣る結果となった。なお、比較例3の粘着性シートにおいては、測定時にジッピングが見られた。
また、比較例10及び11の粘着性シートは、粘着力及び保持力は優れているが、粘着層の水蒸気透過率が高く、また、アウトガス発生量も多く、有機EL素子等の封止用途には適さない結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の粘着性組成物からなる粘着層を有する粘着性シートは、封止用部材として、有機トランジスタ、有機メモリー、有機EL等の有機デバイス;液晶ディスプレイ;電子ペーパー;薄膜トランジスタ;エレクトロクロミックデバイス;電気化学発光デバイス;タッチパネル;太陽電池;熱電変換デバイス;圧電変換デバイス;蓄電デバイス;等の電子デバイスの用途に好適である。
【符号の説明】
【0110】
1、1a、1b、1c、1d 粘着性シート
11 基材
12、12’ 粘着層
13、13’ 剥離材
20 有機EL素子
21 ガラス基板
22 構造体
23 ガスバリアフィルム
図1
図2