(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046130
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】眼用レンズ(OPHTHALMICLENSES)の検査に最適な波長の決定方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20161206BHJP
G02C 13/00 20060101ALI20161206BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20161206BHJP
G01M 11/00 20060101ALN20161206BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C13/00
G01N21/27 Z
!G01M11/00 L
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-515961(P2014-515961)
(86)(22)【出願日】2012年6月13日
(65)【公表番号】特表2014-518403(P2014-518403A)
(43)【公表日】2014年7月28日
(86)【国際出願番号】US2012042277
(87)【国際公開番号】WO2012174131
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2015年3月10日
(31)【優先権主張番号】61/497,825
(32)【優先日】2011年6月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510294139
【氏名又は名称】ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Vision Care, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】サイツ・ピーター・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】エドワーズ・ラッセル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ケーグル・ケネス・エル
【審査官】
小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−283716(JP,A)
【文献】
特表2010−514463(JP,A)
【文献】
特表2005−518536(JP,A)
【文献】
特開2001−289618(JP,A)
【文献】
米国特許第06577387(US,B2)
【文献】
特開2009−053134(JP,A)
【文献】
特開平10−221038(JP,A)
【文献】
特開平05−010727(JP,A)
【文献】
特開平09−136902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 − 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼロ付近と特定の厚さ付近との間の量の欠損材料に関して最大厚の眼用レンズを自動的に検査するために使用されてよい、放射線の波長を決定する方法であって、
(a)複数の異なる既知の厚さの眼用レンズを透過する、複数の異なる波長の放射線の透過率パーセントを測定することと、
(b)前記複数の異なる波長の各波長に対して、ベールの法則において各波長が有する特定の定数であるk値を算出し、前記眼用レンズを透過する光の透過率がベールの法則に従うことを確認することと、
(c)前記複数の異なる波長において、眼用レンズ不在時の透過率パーセントから前記特定の厚さにおける透過率パーセントを減じて、第1のコントラスト値を算出することと、
(d)前記複数の異なる波長において、前記特定のレンズ厚における透過率パーセントから前記最大厚における透過率パーセントを減じて、第2のコントラスト値を算出することと、
(e)各波長において前記第1のコントラスト値を前記第2のコントラスト値と比較し、各波長において最低コントラスト値を選択し、波長に対して最低コントラスト値をプロットすることと、
(f)欠損材料の欠陥を検査するために、最高ピークにおける前記工程(e)のプロットから波長を選択することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記最大厚が60μm〜400μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最大厚が85μm及び209μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記特定の厚さが20μm〜100μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記特定の厚さが、30μm、40μm、50μm、及び60μmからなる群から選択される数である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の異なる波長の放射線が340nm〜430nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の異なる波長の放射線が340nm〜550nmである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記眼用レンズが、エタフィルコンA、ネルフィルコンA、ヒラフィルコン、ポリマコン、コムフィルコン、ガリフィルコン、セノフィルコン、及びナラフィルコンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼用レンズ、特にハイドロゲルコンタクトレンズの欠損材料の欠陥を調べる検査に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルコンタクトレンズなどの眼用レンズは、人間の介在を最小限に抑えた製品製造ラインで形成、検査、及びパッケージ化が行われる。これらのレンズには、これらのプロセスにおいて特定の欠陥が発生するが、一般的な欠陥の1つが形成レンズにおける欠損材料である。このような欠損材料がコンタクトレンズの厚さ全体であるか、その厚さの一部だけであるかにかかわらず、このような欠陥を有するレンズは、最終的にエンドユーザーに届けられる製品から排除される必要がある。
【0003】
眼用レンズ内の穴を検出する検査方法が存在する。しかし、市場に出ている様々な種類のコンタクトレンズ材料を考慮すると、レンズ製造業者は、多くの場合、様々な波長の放射線を使用してこのようなレンズを検査する必要がある。これは、レンズ材料内の凹部など、レンズの貫通穴ではない欠損材料の欠陥を探している場合、特に該当する。通常、最適な波長の放射線を探すプロセスは、試行錯誤のプロセスである。この試行錯誤の方法は、非常に多くの時間及び材料を浪費し、必ずしも最適な波長を選択できるとは限らない。したがって、試行錯誤のプロセスを経ずに、このような欠損材料の欠陥の検査に使用する最適な波長を決定することが望ましい。この要望は、上述の発明によって満たされる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】複数の波長における複数の厚さに関する透過率パーセントのプロットである。
【
図2】
図1の実験データに関する、理論的なベールの法則の計算値のプロットである。
【
図3】複数の波長に関するコントラストのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、ゼロ付近とある厚さ付近との間の量の欠損材料に関して最大厚の眼用レンズを自動的に検査するために使用されてよい、放射線の波長を決定する方法を提供し、この方法は、
(a)複数の異なる既知の厚さの眼用レンズを透過する、複数の異なる波長の放射線の透過率パーセントを測定することと、
(b)複数の異なる波長の各波長に対してk値を算出し、眼用レンズを透過する光の透過率がベールの法則に従うことを確認することと、
(c)複数の異なる波長において、眼用レンズ不在時の透過率パーセントから特定の厚さにおける透過率パーセントを減じて、第1のコントラスト値を算出することと、
(d)複数の異なる波長において、特定のレンズ厚における透過率パーセントから最大厚における透過率パーセントを減じて、第2のコントラスト値を算出することと、
(e)各波長において第1のコントラスト値を第2のコントラスト値と比較し、各波長において最低コントラスト値を選択し、波長に対してこのような最低コントラスト値をプロットすることと、
(f)欠損材料の欠陥を検査するために、最高ピークにおける工程(e)のプロットから波長を選択することと、を含む。
【0006】
本明細書で使用する場合、用語「眼用レンズ」は、モノマー、マクロマー、又はプレポリマーから作製されるハイドロゲルなどのソフトコンタクトレンズを指す。このような眼用レンズの例としては、ジェネリック処方のアコフィルコンA、アロフィルコンA、アルファフィルコンA、アミフィルコンA、アスティフィルコンA、アタラフィルコンA、バラフィルコンA、ビスフィルコンA、ブフィルコンA、コムフィルコン、クロフィルコンA、シクロフィルコンA、ダーフィルコンA、デルタフィルコンA、デルタフィルコンB、ジメフィルコンA、ドロオキシフィルコンA、エプシフィルコンA、エステリフィルコンA、エタフィルコンA、フォコフィルコンA、ゲンフィルコンA、ゴバフィルコンA、ヘフィルコンA、ヘフィルコンB、ヘフィルコンD、ヒラフィルコンA、ヒラフィルコンB、ヒオキシフィルコンB、ヒオキシフィルコンC、ヒクソイフィルコンA、ヒドロフィルコンA、レネフィルコンA、リクリフィルコンA、リクリフィルコンB、リドフィルコンA、リドフィルコンB、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、マフィルコンA、メシフィルコンA、メタフィルコンB、ミパフィルコンA、ナラフィルコン、ネルフィルコンA、ネトラフィルコンA、オキュフィルコンA、オキュフィルコンB、オキュフィルコンC、オキュフィルコンD、オキュフィルコンE、オフィルコンA、オマフィルコンA、オキシフィルコンA、ペンタフィルコンA、パーフィルコンA、ペバフィルコンA、フェムフィルコンA、ポリマコン、シラフィルコンA、シロキシフィルコンA、テフィルコンA、テトラフィルコンA、トリフィルコンA、及びキシロフィルコンAから作製されるレンズが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のより特に好ましい眼用レンズは、ゲンフィルコンA、レネフィルコンA、コムフィルコン、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、及びバラフィルコンAである。最も好ましいレンズとしては、エタフィルコンA、ネルフィルコンA、ヒラフィルコン、ポリマコン、コムフィルコン、ガリフィルコン、セノフィルコン、及びナラフィルコンが挙げられる。
【0007】
用語「厚さ」は、前面から対向する背面までの眼用レンズの寸法を指す。典型的なハイドロゲルコンタクトレンズは、約60μm〜約600μmの厚さを有する。本発明の目的では、最終製品の厚さは「最大厚」である。本発明の方法では、放射線は、約200μm〜約600μm、好ましくは約85μm〜約209μmの厚さを有するハイドロゲルコンタクトレンズを透過する。
【0008】
用語「特定の厚さ」は、眼用レンズの最大厚全体には広がっていない、欠損材料の欠陥の深さを指す。例えば、約350μmの最大厚を有する眼用レンズの場合、特定の厚さは約300μm〜約50μmの任意の数である。好ましくは、特定の厚さは、30μm、40μm、50μm、及び60μmからなる群から選択される。
【0009】
本明細書で使用する場合、用語「透過率パーセント」は、キュベット、眼用レンズ及び溶液、又はキュベット及び溶液のいずれかを透過した後、分光計に達する放射線の量を意味する。いずれの場合においても、溶液の非限定例は、脱イオン水及び生理食塩水溶液であり、好ましくは生理食塩水溶液である。
【0010】
本方法では、透過した放射線は、可視放射、紫外放射、又は赤外放射の波長を有してよい。可視放射は約390nm〜約700nmの波長を有し、紫外放射は約10nm〜約390nmの波長を有し、赤外放射は約700nm〜約3000nmの波長を有する。約340nm〜約550nmの範囲の放射線が眼用レンズを透過することが好ましい。
【0011】
本明細書で使用する場合、用語「コントラスト値」は、レンズ材料の2つの異なる厚さにおける透過率の差を意味する。
【0012】
本明細書で使用する場合、「k」値は、ベールの法則として知られる理論的関係に見られる定数である。ベールの法則は、ある材料を透過する放射線の透過率(「%T」)をその材料の厚さ(「t」)及び定数(「k」)に関連付ける(%T=10
(2−kt))。各波長は、回帰フィッティングなど既知の方法で算出されてよい、特定のkを有する。
【0013】
この方法で見出される波長は、多数の検査方法で使用され得る。このような方法の非限定例は、米国特許第6,882,411号、同第6,577,387号、同第6,246,062号、同第6,154,274号、同第5,995,213号、同第5,943,436号、同第5,828,446号、同第5,812,254号、同第5,805,276号、同第5,748,300号、同第5,745,230号、同第5,687,541号、同第5,675,962号、同第5,649,410号、同第5,640,464号、同第5,578,331号、同第5,568,715号、同第5,443,152号、同第5,528,357号、及び同第5,500,732号に開示されており、これらすべては、参照することによりこれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0014】
93μm〜252μmの中心厚を有する10枚のエタフィルコンAハイドロゲルレンズを調製した。キャップをした状態で約1650mLの液体を保持する、内法18.5mm(幅)×5.1mm(幅)×21.2(高さ)(キャップなしの場合)のキュベット内に各サンプルを配置した。レンズ/キュベット/生理食塩水溶液を透過して340nm〜420nmの波長の光を照射し、Perkin Elmer UV/VIS Lambda18分光計を使用して透過率パーセントを得た。各レンズ厚の波長に対する透過率パーセントを
図1にプロットした。
図2は、
図1の実験データに理論計算を重ね合わせて、この材料がベールの法則に従うことを説明している。
【0015】
各波長について、キュベット/生理食塩水溶液の透過率パーセントから50μmの厚さを有するキュベット/生理食塩水溶液/レンズの透過率パーセントを減じて、第1のコントラスト値を算出した。各波長について、300μmの厚さを有するキュベット/生理食塩水溶液/レンズの透過率パーセントから350μmの厚さを有するキュベット/生理食塩水溶液/レンズの透過率パーセントを減じて、第2のコントラスト値を算出した。第1のコントラスト値と第2のコントラスト値とを各波長で比較し、2つの値のうちの小さい値を
図3で波長に対してプロットした。この図は、最高ピークが375nm付近で発生することを示す。したがって、約50μmの欠損材料の欠陥を判定するのに最適な波長は375μmである。
【0016】
〔実施の態様〕
(1) ゼロ付近と特定の厚さ付近との間の量の欠損材料に関して最大厚の眼用レンズを自動的に検査するために使用されてよい、放射線の波長を決定する方法であって、
(a)複数の異なる既知の厚さの眼用レンズを透過する、複数の異なる波長の放射線の透過率パーセントを測定することと、
(b)前記複数の異なる波長の各波長に対してk値を算出し、前記眼用レンズを透過する光の透過率がベールの法則に従うことを確認することと、
(c)前記複数の異なる波長において、眼用レンズ不在時の透過率パーセントから前記特定の厚さにおける透過率パーセントを減じて、第1のコントラスト値を算出することと、
(d)前記複数の異なる波長において、前記特定のレンズ厚における透過率パーセントから前記最大厚における透過率パーセントを減じて、第2のコントラスト値を算出することと、
(e)各波長において前記第1のコントラスト値を前記第2のコントラスト値と比較し、各波長において最低コントラスト値を選択し、波長に対してこのような最低コントラスト値をプロットすることと、
(f)欠損材料の欠陥を検査するために、最高ピークにおける前記工程(e)のプロットから波長を選択することと、を含む、方法。
(2) 前記最大厚が約60μm〜約400μmである、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記最大厚が約85μm及び約209μmである、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記特定の厚さが約20μm〜約100μmの数である、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記特定の厚さが、30μm、40μm、50μm、及び60μmからなる群から選択される数である、実施態様1に記載の方法。
【0017】
(6) 前記複数の異なる波長の放射線が約340nm〜約430nmである、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記複数の異なる波長の放射線が約340nm〜約550nmである、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記眼用レンズが、エタフィルコンA、ネルフィルコンA、ヒラフィルコン、ポリマコン、コムフィルコン、ガリフィルコン、セノフィルコン、及びナラフィルコンからなる群から選択される、実施態様1に記載の方法。