【文献】
Mahindroo N. et al.,Structure-Activity Relationships and Cancer-Cell Toxicity of Novel Inhibitors of Glioma-Associated Oncogene Homologue 1(Gli1) Mediated Transcription,J. Med. Chem.,2009年,Vol.52,pp.4277-4287
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明
本開示の局面は、GLIタンパク質が過剰発現される多数の癌の検出および治療に有用な化合物、薬学的組成物、キットおよび方法を含む。組成物は、ヘッジホッグおよびGLIシグナル伝達経路を阻害する小分子化合物を含む。
【0038】
本発明および本発明の具体的で例示的な態様を説明する前に、本発明は、記載される特定の態様に限定されず、従って、当然ながら、変化し得ることが理解される。本明細書において使用される用語は、特定の態様を説明する目的のために過ぎず、限定的であるようには意図されず、何故ならば、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるためであることも理解される。
【0039】
値の範囲が与えられている場合、その範囲の上限値および下限値ならびにその記載の範囲内の任意の他の記載のまたは中間の値の間の、文脈が明確にそうではないように規定しない限り下限値の単位の10分の1までの、各中間の値が、本態様に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限値と下限値は、そのより小さな範囲内に独立して含まれ得、記載の範囲において具体的に排除された限界値に従って、本態様に包含される。記載の範囲が限界値のうちの一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方または両方を排除する範囲も本態様に包含される。
【0040】
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと同様のまたは同等の任意の方法および材料も本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および材料をここで記載する。
【0041】
本明細書において援用される全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が、参照により組み入れられるように具体的にかつ個々に記載されるかのように参照により本明細書に組み入れられ、援用される刊行物に関連して方法および/または材料を開示および記載するように参照により本明細書に組み入れられる。いずれの刊行物の援用も、出願日前のその開示のためであり、本発明が先行発明の理由でこのような刊行物に先行する権利がないという承認と解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、独立して確認される必要があり得る実際の刊行日とは異なる場合がある。
【0042】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「ある」、「1つの」および「その」は、文脈が明確にそうではないように規定しない限り、複数形を含むことに留意しなければならない。従って、例えば、1つの「化合物」への言及は、複数のこのような化合物および当業者に公知のその同等物などを含む。
【0043】
用語
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、本発明において使用される多くの用語の一般的な定義を当業者に提供する:Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology (2nd ed. 1994); The Cambridge Dictionary of Science and Technology (Walker ed., 1988); The Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger et al. (eds.), Springer Verlag (1991);およびHale & Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology (1991)。本明細書において使用される場合、以下の用語は、特に指定されない限り、それらに与えられる意味を有する。
【0044】
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖の炭化水素基を指し、指定された数の炭素原子を有する(即ち、C
1〜C
10は、1から10個の炭素を意味する)、二価および多価の基を含むことができる。飽和炭化水素基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、例えば、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルの同族体および異性体などのような基が挙げられる。
【0045】
本明細書において使用される場合、用語「アルケニル」とは、1つまたは複数の二重結合を有する不飽和アルキル基を指す。アルケニル基の例としては、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニルおよび3−(1,4−ペンタジエニル)、ならびにより高級な同族体および異性体が挙げられる。
【0046】
本明細書において使用される場合、用語「アルキニル」とは、1つまたは複数の三重結合を有する不飽和アルキル基を指す。アルキニルの例としては、エチニル(アセチレニル)、1−プロピニル、1−および2−ブチニル、ならびにより高級な同族体および異性体が挙げられる。
【0047】
本明細書において使用される場合、用語「アリール」とは、単環、または一緒に縮合しているかもしくは共有結合的に連結している複数の環(最大3つの環)であり得る、5〜12個の環員を有する多価不飽和芳香族炭化水素置換基を指す。アリール基の非限定的な例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、4−ビフェニル、およびベンジルが挙げられる。他のアリール基も、本態様において有用である。
【0048】
本明細書において使用される場合、用語「シクロアルキル」とは、3から15個の炭素、および縮合しているかもしくは共有結合的に連結していることのできる1から3個の環を有する、飽和環式炭化水素を指す。本態様において有用なシクロアルキル基としては、これらに限定されないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。本態様において有用なビシクロアルキル基としては、これらに限定されないが、[3.3.0]ビシクロオクタニル、[2.2.2]ビシクロオクタニル、[4.3.0]ビシクロノナン、[4.4.0]ビシクロデカン(デカリン)、スピロ[3.4]オクタニル、スピロ[2.5]オクタニルなどが挙げられる。
【0049】
本明細書において使用される場合、用語「シクロアルケニル」とは、3から15個の炭素、および縮合しているかもしくは共有結合的に連結していることのできる1から3個の環を有する、不飽和環式炭化水素を指す。本態様において有用なシクロアルケニル基としては、これらに限定されないが、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニルおよびシクロオクテニルが挙げられる。ビシクロアルケニル基も、本態様において有用である。
【0050】
本明細書において使用される場合、用語「ハロゲン」とは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)およびヨウ素(I)を含む元素を指す。
【0051】
本明細書において使用される場合、用語「ヘテロアリール」とは、単環、または一緒に縮合しているかもしくは共有結合的に連結している複数の環(最大3つの環)であり得、環中に、N、O、またはSなどの少なくとも1つのヘテロ原子を有する、5〜12個の環員を有する多価不飽和芳香族炭化水素置換基を指す。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残部へ結合され得る。ヘテロアリール基の非限定的な例としては、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、2−フェニル−4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンゾイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリルおよび6−キノリルが挙げられる。本態様において有用な追加のヘテロアリール基としては、ピリジルN−オキシド、テトラゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インダゾリル、または置換されている、特に一置換もしくは二置換されている任意の基が挙げられる。
【0052】
本明細書において使用される場合、用語「ヘテロシクリル」とは、3から15個の環員、および縮合しているかもしくは共有結合的に連結していることのできる1から3個の環を有し、環中に、N、O、またはSなどの少なくとも1つのヘテロ原子を有する、飽和環式炭化水素を指す。さらに、ヘテロ原子は、複素環が分子の残部へ結合されている位置を占めることができる。ヘテロシクリル基の例としては、1−(1,2,5,6−テトラヒドロピリジル)、1−ピペリジニル、2−ピペリジニル、3−ピペリジニル、4−モルホリニル、3−モルホリニル、テトラヒドロフラン−2−イル、テトラヒドロフラン−3−イル、テトラヒドロチエン−2−イル、テトラヒドロチエン−3−イル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニルなどが挙げられる。
【0053】
本明細書において使用される場合、用語「立体異性体」とは、不斉炭素原子(光学中心)または二重結合を有する、本態様の化合物を指す。ラセミ化合物、ジアステレオマー、エナンチオマー、幾何異性体(即ち、シス/トランス異性体)、および個々の立体異性体は、全て本態様の範囲内に包含されるように意図される。
【0054】
「標識」または「検出可能な部分」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識としては、
3H、
125I、
32P、蛍光色素、高電子密度試薬、酵素(例えば、ELISAにおいて一般に用いられるような)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテン、および例えば、小分子化合物中へ放射標識を組み入れることによって検出可能にすることのできるタンパク質もしくは他のエンティティーが挙げられる。標識は、任意の位置で化合物中へ組み入れることができる。
【0055】
用語「薬学的に許容される」とは、対象、例えばヒト対象に投与された場合、生理的に許容でき、アレルギー反応または同様の有害反応を典型的に生じさせない組成物を指す。例えば、本明細書において使用される場合、用語「薬学的に許容される」とはまた、動物、例えばヒトにおける使用について、連邦政府もしくは州政府の監督官庁によって認可されている、または米国薬局方もしくは他の一般的に認知された薬局方に記載されていることも意味する。
【0056】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指すために、本明細書において交換可能に使用される。この用語は、天然アミノ酸ポリマー、修飾残基を含有するもの、および非天然アミノ酸ポリマーだけでなく、1つまたは複数のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工的化学的模倣体であるアミノ酸ポリマーにも適用する。
【0057】
本明細書において使用される場合、用語「プロドラッグ」とは、生理的条件下で容易に化学変化を起こし、本態様の化合物を提供する化合物を指す。さらに、プロドラッグは、エクスビボ環境において、化学的または生化学的方法によって、本態様の化合物へ変換され得る。例えば、プロドラッグは、適切な酵素または化学的試薬と共に経皮パッチのリザーバに入れられると、本態様の化合物へ徐々に変換され得る。
【0058】
本明細書において使用される場合、用語「塩」とは、本明細書に記載される化合物上に見出される置換基に応じて、比較的無毒性の酸または塩基を用いて作製される化合物の塩を指す。本態様の化合物が、比較的酸性の官能性を含む場合、中性形態のそのような化合物を、ニートでまたは適切な不活性溶媒中のいずれかで、十分な量の所望の塩基と接触させることによって、塩基付加塩を得ることができる。薬学的に許容される塩基付加塩の例としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、またはマグネシウム塩、または同様の塩が挙げられる。本態様の化合物が、比較的塩基性の官能性を含む場合、中性形態のそのような化合物を、ニートでまたは適切な不活性溶媒中のいずれかで、十分な量の所望の酸と接触させることによって、酸付加塩を得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸(monohydrogencarbonic acid)、リン酸、一水素リン酸(monohydrogenphosphoric acid)、二水素リン酸(dihydrogenphosphoric acid)、硫酸、一水素硫酸(monohydrogensulfuric acid)、ヨウ化水素酸、または亜リン酸のような無機酸に由来するもの、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p−トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような比較的無毒性の有機酸に由来する塩が挙げられる。アルギン酸塩(arginate)などのアミノ酸の塩、グルクロン酸またはガラクツロン酸などのような有機酸の塩も含まれる(例えば、Berge, S.M., et al, "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutical Science, 1977, 66, 1-19を参照のこと)。本態様のある特定の化合物は、塩基性官能性および酸性官能性の両方を含み、この化合物が塩基付加塩または酸付加塩のいずれにも変換されることを可能にしている。
【0059】
中性形態の化合物は、塩を、塩基または酸と接触させ、従来の様式で親化合物を単離することによって再生することができる。親形態の化合物は、極性溶媒中の溶解性などのある物理的特性の点で様々な塩形態とは異なるが、その他の点では、該塩は、本態様の目的については親形態の化合物と同等である。
【0060】
本明細書において使用される場合、用語「溶媒和物」とは、溶媒と複合体を形成した本態様の化合物を指す。本態様の化合物と溶媒和物を形成することのできる溶媒としては、通常の有機溶媒、例えば、アルコール(メタノール、エタノールなど)、エーテル、アセトン、酢酸エチル、ハロゲン化溶媒(塩化メチレン、クロロホルムなど)、ヘキサンおよびペンタンなどが挙げられる。さらなる溶媒には、水が含まれる。水が、複合体を形成する溶媒である場合、複合体は「水和物」と呼ばれる。
【0061】
「置換された」とは、1つまたは複数の水素原子が各々独立して同一のまたは異なる置換基で置き換えられている基を指す。典型的な置換基としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:−X、−R
14、−O−、=O、−OR
14、−SR
14、−S
−、=S、−NR
14R
15、=NR
14、−CX
3、−CF
3、−CN、−OCN、−SCN、−NO、−NO
2、=N
2、−N
3、−S(O)
2O
−、−S(O)
2OH、−S(O)
2R
14、−OS(O
2)O
−、−OS(O)
2R
14、−P(O)(O−)
2、−P(O)(OR
14)(O
−)、−OP(O)(OR
14)(OR
15)、−C(O)R
14、−C(S)R
14、−C(O)OR
14、−C(O)NR
14R
15、−C(O)O
−、−C(S)OR
14、−NR
16C(O)NR
14R
15、−NR
16C(S)NR
14R
15、−NR
17C(NR
16)NR
14R
15および−C(NR
16)NR
14R
15、ここで、各Xは独立してハロゲンであり、「R
14」、「R
15」、「R
16」、および「R
17」は、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、置換ヘテロアリールアルキル、−NR
18R
19、−C(O)R
18または−S(O)
2R
18であり、または場合によりR
18およびR
19は、それらが両方とも結合されている原子と一緒にシクロヘテロアルキルまたは置換シクロヘテロアルキル環を形成し、ここで、「R
18」、「R
19」、および「R
22」は、各々独立して、水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換アリール、置換または非置換アリールアルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換シクロヘテロアルキル、置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換ヘテロアリール、および置換または非置換ヘテロアリールアルキルからなる群より選択される。
【0062】
上記で定義された全ての置換された基において、それら自体に対するさらなる置換基を有する置換基を定義することによって達成されるポリマー(例えば、置換基として置換アリール基を有する置換アリールであって、該置換アリール基自体が置換アリール基で置換されており、該置換アリール基が置換アリール基でさらに置換されている、置換アリールなど)は、本明細書に含まれるようには意図されないことが理解される。このような場合、このような置換の最大数は3である。例えば、置換アリール基の連続的な置換は、置換アリール−(置換アリール)−置換アリールに限定される。
【0063】
本明細書において使用される「生体試料」とは、核酸またはポリペプチドを含有する生物組織または体液の試料である。そのような試料は、典型的にはヒト由来であるが、非ヒト霊長類、またはげっ歯類、例えばマウス、およびラットから分離された組織を含む。生体試料は、生検および剖検試料などの組織の切片、組織学的目的のために採取された凍結切片、血液、血漿、血清、痰、糞便、涙、粘液、毛、皮膚なども含むことができる。生体試料には、患者組織に由来する、外植片および初代細胞培養物および/または形質転換細胞培養物も含まれる。「生体試料」とは、動物からの細胞または細胞集団、またはある量の組織もしくは体液も指す。大抵の場合、生体試料は動物から取り出されてきたが、用語「生体試料」とは、インビボで、即ち動物から取り出すことなく分析される、細胞または組織も指すことができる。典型的には、「生体試料」は、動物からの細胞を含むが、この用語は、非細胞生体物質、例えば、血液の非細胞画分、唾液、または尿も指すことができ、これらは、癌に関係するポリヌクレオチドまたはポリペプチドのレベルを測定するために使用することができる。これらに限定されないが、組織生検、血液試料、口腔スクレイプ(buccal scrape)、唾液試料、または乳糖分泌物を含む、多数の種類の生体試料を本態様において使用することができる。本明細書において使用される場合、「組織生検」とは、診断分析のために、動物、例えばヒトから取り出されるある量の組織を指す。癌を有する患者において、組織は、腫瘍から取り出すことができ、腫瘍内の細胞の分析を可能にする。「組織生検」とは、任意の種類の生検、例えば、針生検、細針生検、外科生検などを指すことができる。
【0064】
「生体試料を提供する」とは、本態様において記載された方法において使用するための生体試料を得ることを意味する。大抵の場合、これは、患者から細胞試料を取り出すことによって行われるが、予め分離された細胞を用いることによって(例えば、別の人によって、別の時間に、および/または別の目的のために分離された)、またはインビボで本態様の方法を実施することによっても行うことができる。治療歴または転帰歴(outcome history)を有する保存組織は、特に有用である。
【0065】
「癌細胞」、「形質転換」細胞または組織培養での「形質転換」とは、必ずしも新規な遺伝物質の取り込みを伴うとは限らない、自然発生的な、または誘発された表現型の変化を指す。形質転換は、形質転換ウイルスの感染、および新規なゲノムDNAの取り込み、または外来DNAの取り込みから生じうるが、自然発生的に、または発癌物質への曝露後にも生じることができ、それによって内在性遺伝子を突然変異させる。形質転換は、表現型の変化、例えば、細胞の不死化、異常増殖制御、非形態変化、および/または悪性腫瘍に関係する(Freshney, Culture of Animal Cells a Manual of Basic Technique (3rd ed. 1994)を参照のこと)。
【0066】
語句「細胞増殖の変化」とは、インビトロまたはインビボでの細胞増殖および増殖特性の任意の変化、例えば、病巣の形成、足場非依存性、半固体または軟寒天増殖、増殖の接触阻害および密度制限の変化、増殖因子または血清要求性の低下、細胞形態の変化、不死化の獲得または喪失、腫瘍特異的マーカーの獲得または喪失、適切な動物ホストに注射された場合に腫瘍を形成または抑制する能力、および/または細胞の不死化などを指す。例えば、Freshney, Culture of Animal Cells a Manual of Basic Technique pp. 231-241 (3
rd ed. 1994)を参照のこと。
【0067】
「量を相関させる」とは、一試料において決定された物質、分子またはマーカー(例えばGliまたはGLI)の量を、別の試料において決定された同じ物質、分子またはマーカーの量と比較することを意味する。別の試料において決定された同じ物質、分子またはマーカーの量は、所定の癌に特異的である場合がある。
【0068】
用語「量を決定する」の同義語は、本態様の範囲内に企図されており、これらに限定されないが、GliまたはGLIなどの分子の存在、非存在、量または濃度を検出すること、測定すること、試験すること、または決定することを含む。
【0069】
用語「決定する」の同義語は、本態様の範囲内に企図されており、これらに限定されないが、GLIポリペプチド、標識、本態様の化合物などの分子の存在、非存在、量または濃度を検出すること、測定すること、アッセイすること、試験すること、または決定することを含む。この用語は、定性的および定量的決定の両方を指す。
【0070】
Shhシグナル伝達、GLIシグナル伝達、またはWnt2シグナル伝達の文脈における、用語「下方調節する」または「阻害する」とは、Shhシグナル伝達、GLIシグナル伝達、またはWnt2シグナル伝達についての公知のアッセイによって測定した場合、Shhシグナル伝達、GLIシグナル伝達、またはWnt2シグナル伝達を部分的または完全に遮断することを指す。例えば、阻害剤は、本態様の化合物である。
【0071】
治療用の本態様の化合物の「有効量」、「有効用量」、「十分な量」、またはその文法的同等物は、症状を寛解させるか、もしくはある様式では、低減する、または状態の進行を停止するかもしくは逆転させるのに十分な量である。特定の薬学的組成物の投与による、特定の状態、例えば、癌の症状の寛解とは、永久的または一時的、永続的または移行的にかかわらず、薬学的組成物の投与に関係し得る任意の軽減を指す。「有効量」はインビボおよびインビトロで投与することができる。
【0072】
用語「GLI」とは、GLIタンパク質のファミリーを指す。GLIタンパク質には、GLI(GLI1とも呼ばれる)、GLI2、およびGLI3が含まれる。GLIタンパク質の例は、GLI1、GLI2またGLI3である。
【0073】
「GLI」ポリペプチドは、天然型または組換え型の両方を含む。従って、ある態様では、本明細書に記載される、GLIポリペプチドおよびGLIサブドメインポリペプチドは、ヒトGLI配列に対応する配列を含むことができる。従って、例示的なGLIが本明細書で提供され、当技術分野で公知である。例えば、いくつかの脊椎動物のGLI1、GLI2、およびGLI3タンパク質、例えば、ヒトGLI1(GenBankアクセッション番号NM_005269、P08151)、マウスGLI1(GenBankアクセッション番号NM_010296、AB025922、AAC09169、P47806)、ゼブラフィッシュGLI1(GenBankアクセッション番号NM_178296)、ヒトGLI2(GenBankアクセッション番号NM_030381;NM_030380;NM−030379、DQ086814)、マウスGLI2(GenBankアクセッション番号XM_922107)、ヒトGLI3(GenBankアクセッション番号NM_000168、AJ250408、M57609、P10071、AAY87165)、チンパンジーGLI3(GenBankアクセッション番号NM_001034190、AY665272、Q5IS56)、マウスGLI3(GenBankアクセッション番号X95255、NM_008130、NP_032156、Q61602)、ラットGLI3(GenBankアクセッション番号XM_225411)、ゼブラフィッシュGLI3(GenBankアクセッション番号NM_205728、AY377429)が、特徴決定された。
【0074】
GLIタンパク質は、全長GLIタンパク質であってもよく、GLIタンパク質のサブドメインなどの部分GLIタンパク質であってもよい。例えば、「GLI3」ポリペプチドは、(i)GenBankアクセッション番号NM_000168、AJ250408、M57609、P10071、およびAAY87165から選択されたヒトGLI3に対して、少なくとも約100、150、200、250、300、500またはそれ以上のアミノ酸の領域にわたって、約60%超のアミノ酸配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、または91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%またはそれ以上のアミノ酸配列同一性を有する、アミノ酸配列を有する、(ii)アミノ酸モチーフFXXΦΦ(F=フェニルアラニン;X=任意の残基;Φ=任意の疎水性残基)、例えばアミノ酸配列FDAIIを含む、(iii)転写活性化ドメインを含む、(iv)GLI DNA結合部位へ結合する、かつ/または(v)TAFへ結合する、ヒトGLI3のポリペプチドおよび多型変異体、対立遺伝子、突然変異体を指す。
【0075】
用語「GLIタンパク質活性」とはGLIシグナル伝達を指し、例えば、GLIによる下流遺伝子の転写活性化、GLI DNA結合部位へのGLIタンパク質の結合、および他のタンパク質、例えば、TAF、またはCBP(Crebタンパク質結合タンパク質)などのコアクチベーターへのGLIタンパク質の結合を含む。
【0076】
用語「Gli」とは、GLIタンパク質をコードする遺伝子を指す。従って、Gli1、Gli2、およびGli3は、それぞれGLI1、GLI2またGLI3タンパク質をコードする遺伝子である。
【0077】
「Gli核酸」または「gliポリヌクレオチド」とは、GLI、GLI2、またはGLI3タンパク質をコードする脊椎動物遺伝子を指す。「Gli核酸」は、天然型または組換え型の両方を含む。GliポリペプチドまたはGLIポリペプチドコード配列は、典型的にはヒト由来であるが、他の哺乳動物、これらに限定されないが、非ヒト霊長類、げっ歯類、例えばラット、マウス、もしくはハムスター;ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、または他の哺乳動物由来であってもよい。本態様を実施するのに有用なGli核酸、例えば、ヒトGli1(GenBankアクセッション番号NM_005269)、マウスGli1(GenBankアクセッション番号NM_010296、AB025922)、ゼブラフィッシュGli1(GenBankアクセッション番号NM_178296)、ヒトGli2(GenBankアクセッション番号NM_030381;NM_030380;NM−030379、DQ086814)、マウスGli2(GenBankアクセッション番号XM_922107)、ヒトGli3(GenBankアクセッション番号NM_000168、AJ250408、M57609)、チンパンジーGli3(GenBankアクセッション番号NM_001034190、AY665272)、マウスGli3(GenBankアクセッション番号X95255、NM_008130)、ラットGli3(GenBankアクセッション番号XM_225411)、ゼブラフィッシュGli3(GenBankアクセッション番号NM_205728、AY377429)が、クローニングされ、特徴決定された。Gliポリヌクレオチドは、全長Gliポリヌクレオチド、即ち、完全なGLIタンパク質をコードするものであってもよく、またはGLIタンパク質のサブドメインをコードする、部分Gliポリヌクレオチドであってもよい。
【0078】
用語「GLI経路」、「GLIシグナル伝達」または「GLIシグナル伝達経路」は、交換可能に使用され、その受容体へ結合するヘッジホッグタンパク質によって開始され、GLIタンパク質の発現および/または活性を導く、シグナル伝達経路を指す。
【0079】
用語「ヘッジホッグ」は、用語「Hh」と交換可能に使用され、Hh受容体に結合し、それによって、GLIタンパク質の発現または活性化を導くHhシグナル伝達経路を開始する、サイトカインである。哺乳動物において、3種のHhファミリー遺伝子、ソニックヘッジホッグ(Shh)、インディアンヘッジホッグ(Ihh)、およびデザートヘッジホッグ(Dhh)が存在する。いくつかの脊椎動物ヘッジホッグタンパク質、例えば、ヒトSHH、マウスSHH、ラットSHH、ヒトIHH、およびマウスDHHが、当技術分野で公知である。
【0080】
生体試料における「Gli mRNAのレベル」または「Wnt2 mRNAのレベル」という用語は、細胞または生体試料中に存在する、それぞれ、GliまたはWnt遺伝子から転写されたmRNAの量を指す。mRNAは、機能的なGLIまたはWNTタンパク質を一般にコードするが、コードされたタンパク質の機能を変化させるかまたは排除する、突然変異が存在し得る。「Gli mRNAのレベル」または「Wnt2 mRNAのレベル」は、定量化する必要はなく、対照試料からのレベルまたは対照試料から予期されるレベルとの比較有り無しで単純に検出することができ、例えば、ヒトによる主観的な視覚的検出である。
【0081】
生体試料における「GLIポリペプチドのレベル」または「Wnt2ポリペプチドのレベル」とは、細胞または生体試料中に存在する、それぞれ、GliまたはWnt2 mRNAから翻訳されたポリペプチドの量を指す。このポリペプチドは、GLIまたはWNT2タンパク質活性を有していても有していなくてもよい。「GLIポリペプチドのレベル」または「WNT2ポリペプチド」は、定量化する必要はなく、対照試料からのレベルまたは対照試料から予期されるレベルとの比較有り無しで単純に検出することができ、例えば、ヒトによる主観的な視覚的検出である。
【0082】
本明細書において使用される場合、GLIなどのポリペプチドのレベルまたは活性の「モジュレーター」は、そのポリペプチドのアクチベーターおよび/またはインヒビターを含み、これは、ポリペプチドの発現のレベルまたはポリペプチドの活性を活性化または阻害する化合物を指すために用いられる。ある態様において、ポリペプチドは、GLI1、GLI2、またはGLI3である。アクチベーターは、例えば、本態様のポリペプチドの発現を誘発するかまたは活性化する、あるいは本態様のポリペプチドへ結合する、本態様のポリペプチドの活性を刺激する、増大させる、開始する、活性化する、促進する、または活性化を増強する、活性を敏感にする、または上方調節する化合物である。アクチベーターには、天然および合成化合物、化学小分子などが含まれる。アクチベーターのアッセイには、例えば、GLIポリペプチドを発現する細胞に候補化合物を適用し、次いで機能効果を測定することが含まれる。有望なアクチベーターで処理されるGLIポリペプチドを含む試料またはアッセイは、このアクチベーターを含まない対照試料と比較され、効果の程度が検討される。対照試料(候補化合物で処理されていない)には、100%の相対活性値が割り当てられる。ポリペプチドの活性化は、対照と比べたポリペプチド活性値が110%、場合により130%、150%、場合により200%、300%、400%、500%、または1000〜3000%またはそれ以上である場合に達成される。インヒビターは、例えば、本態様のポリペプチドの発現を抑圧するかまたは不活化する、あるいは本態様のポリペプチドへ結合する、本態様のポリペプチドの活性を減少させる、終了させる、不活化する、妨害する、または活性化を低減する、活性を鈍くする、または下方調節する化合物である。インヒビターには、GLIタンパク質の発現に干渉する、siRNAおよびアンチセンスRNAなどの核酸、ならびに天然および合成化合物、化学小分子などが含まれる。インヒビターのアッセイは、本明細書に記載されている。有望なインヒビターで処理されるGLIポリペプチドを含む試料またはアッセイは、このインヒビターを含まない対照試料と比較され、効果の程度が検討される。対照試料(候補化合物で処理されていない)には、100%の相対活性値が割り当てられる。ポリペプチドの阻害は、対照と比べたポリペプチド活性値が、10%、場合により20%、場合により30%、場合により40%、場合により50%、60%、70%、80%、または90〜100%低減される場合に達成される。
【0083】
「プロモーター」は、核酸の転写を指示する、数多くの核酸制御配列として定義される。本明細書において使用される場合、プロモーターは、転写の開始部位付近の必要な核酸配列、例えば、ポリメラーゼII型プロモーターの場合、TATAエレメントなどを含む。プロモーターは、転写の開始部位から数千塩基対と同じ程度に位置することのできる、遠位のエンハンサーまたはリプレッサーエレメントも場合により含む。
【0084】
「構成的」プロモーターは、大抵の環境条件および発生条件下で活性であるプロモーターである。「誘導」プロモーターは、環境調節または発生調節下で活性であるプロモーターである。用語「機能的に連結された」とは、核酸発現制御配列(例えば、プロモーターまたは転写因子結合部位のアレイ)と第2の核酸配列との間の機能的な連結を指し、この発現制御配列は、第2の配列に対応する核酸の転写を指示する。
【0085】
例えば、細胞、もしくは核酸、タンパク質、またはベクターに関して用いる場合、用語「組換えの」は、細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種の核酸もしくはタンパク質の導入または天然の核酸もしくはタンパク質の変化によって修飾されていること、あるいは細胞が、そのように修飾された細胞に由来することを示す。従って、例えば、組換え細胞は、天然(非組換えの)形態の細胞内では見出されない遺伝子を発現するか、あるいは他の方法で異常に発現されている、十分に発現されていない、またはまったく発現されていない天然遺伝子を発現する。本明細書において、用語「組換え核酸」とは一般的に、例えばポリメラーゼおよびエンドヌクレアーゼを用いて核酸を操作することによって、通常天然で見出されない形態の、元々インビトロで形成された核酸を意味する。このようにして、異なる配列の機能的な連結が達成される。従って、直鎖状形態の単離された核酸、または通常連結されていないDNA分子を連結することによってインビトロで形成された発現ベクターは、両方とも組換え型と見なされる。組換え核酸が作製されて宿主細胞または生物中に再導入されると、これは、非組換え的に、即ちインビトロ操作ではなく宿主細胞のインビボ細胞機構を用いて、複製する;しかし係る核酸は、一度組換えで生成されると、その後非組換えで複製されるにもかかわらず、依然として組換え型であると見なされる。同様に、「組換えタンパク質」とは、組換え技術を用いて、即ち、上記に示した組換え核酸の発現を通じて作製されたタンパク質である。
【0086】
本明細書において「化学療法剤に耐性である」とは、化学療法剤での治療に応答しない、即ち、そのような治療によって死滅しない、または増殖が阻害されない腫瘍を意味する。
【0087】
用語「対象」または「患者」とは、癌などの状態、障害、または疾患の治療を必要とする、ヒトなどの、哺乳動物を指す。
【0088】
用語「TAF」とは、TBP関連因子を指す。ある態様において、TAFは、TAF
II、即ち、RNAポリメラーゼIIによって転写される真核生物遺伝子の転写活性を媒介することに関与するTAFタンパク質である。TAFタンパク質は、他の転写アクチベーターまたはリプレッサーと相互作用する(Goodrich and Tjian, Curr Opin Cell Biol 6(3):403-9 (1994); Albright and Tjian, Gene 242(1-2):1-13 (2000))。TAFは、ヒト、マウス、ショウジョウバエ、または酵母由来であり得る。GLIと相互作用するTAFタンパク質の例は、TAF
II31タンパク質である。Klemmらは、ヒトTFIIDサブユニットをクローニングし、hTAF
II32と名付けた(Klemm et al. 1995, Proc Natl Acad Sci USA, 92(13):5788-92)。32kDタンパク質は、HeLa細胞核抽出物から単離され、部分的に配列決定された。同定されたcDNAは、264残基の推定アミノ酸配列を有し、ショウジョウバエTAF
II40に関連している。Klemmらは、TAF
II32は、GTF2Bおよびウイルス転写トランスアクチベーターVPI6と相互作用することを示した(Klemm et al. 1995, Proc Natl Acad Sci USA, 92(13):5788-92)。この著者らは、組換えで発現されたTAF
II32が、部分組換えTF
IID複合体中で機能的であり、この組換え複合体が、GAL4−VP16融合タンパク質による活性化を媒介することを示した。TAF
II32およびTAF
II31は、同じタンパク質に対する2つの名称であり、これは、現在では、TAF9とも呼ばれる。Luらは、TAF9をクローニングし、これをTAF
II31と呼んだ。TAF9は、264アミノ酸タンパク質をコードする。免疫沈降分析および結合分析により、TAF9は、主要な細胞のp53活性の負の調節因子であるMDM2が結合する部位と同一な部位で、p53のN末端ドメインと相互作用することが示された(Lu et al., 1995, Proc Natl Acad Sci USA, 92(11):5154-8)。ヒトTAF
II31ヌクレオチドおよびタンパク質の配列は、例えば、GenBankアクセッション番号U25112、U21858、およびNM_016283において見出すことができる。
【0089】
本明細書において使用される場合、用語「治療する」、「治療すること」、および「治療」には、(1)癌などの疾患を予防すること、即ち、疾患に罹る恐れがあるが、まだ疾患のあらゆる症状を経験していない対象において、疾患の臨床症状を発生させないこと;(2)疾患を阻害すること、即ち、疾患またはその臨床症状の発生を抑止または低減すること;あるいは(3)疾患を軽減すること、即ち、疾患またはその臨床症状を退行させることが含まれる。治療は、状態、障害、または疾患の症状または病態が寛解するかまたは他の方法で有利に変化する、任意の様式を意味する。ある態様において、そのような治療を必要とする対象は、哺乳動物、例えばヒトである。
【0090】
「腫瘍細胞」とは、腫瘍における前癌細胞、癌細胞、および正常細胞を指す。
【0091】
用語「Wnt」とは、ショウジョウバエのセグメントポラリティー遺伝子winglessに関連する、哺乳動物遺伝子およびコード化タンパク質のファミリーを指す。ヒトにおいて、Wntファミリーの遺伝子は、典型的には、疎水性シグナル配列および保存されたアスパラギン連結オリゴ糖共通配列を有する、38から43kDaのシステインに富む糖タンパク質をコードする(Shimizu et al., Cell Growth Differ 8(12):1349-58 (1997))。Wntファミリーは、少なくとも19の哺乳動物メンバーを含む。代表的なWntタンパク質としては、Wntl、Wnt2、Wnt3、Wnt3A、Wnt4、Wnt5A、Wnt5B、Wnt6、Wnt7A、Wnt7B、Wnt8A、Wnt8B、WNT10A、Wnt10B、Wnt11、Wnt12、Wnt13、Wntl4、Wntl5、およびWntl6が挙げられる。ある態様において、Wntタンパク質は、Wnt2、例えばヒトWnt2タンパク質である。
【0092】
本態様の説明において、化合物の構造を議論する。次いで、化合物を含有する薬学的製剤を議論し、続いてそれらの使用方法およびキットを説明する。
【0093】
小分子化合物
本開示の組成物は、以下に示される、式I〜IIIの化合物を含む。本開示の薬学的組成物および方法も、式I〜IIIの化合物を含む。
【0094】
これらの化合物は1つまたは複数のキラル中心を含有し得、従って、本態様は、特に指定のない限り、ラセミ混合物;純粋な立体異性体(即ち、エナンチオマーまたはジアステレオマー);立体異性体に富む混合物などに関する。特定の立体異性体が本明細書において表示または指定される場合、全体としての組成物の所望の有用性がこのような他の異性体の存在によって排除されないならば、特に指定のない限り、少量の他の立体異性体が組成物中に存在し得ることが当業者によって理解される。
【0095】
ある態様において、本開示の化合物はラセミ混合物である。
【0096】
式I
本開示は、式(I)の化合物:
式中、
X
1およびX
2の各々は独立してNまたはCであり、ここで環のNがX
1およびX
2のうちのいずれかCであるものと二重結合を形成するように、X
1およびX
2のうちの1つはNでありかつX
1およびX
2のうちの1つはCであり;
R
1は、アリールまたは置換アリールであり;
R
2は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、およびアルキルより選択され;
R
3は、アリールまたは置換アリールであり;
Yは、直接結合またはC
1−C
4アルキルであり;
Zは、C
1−C
4アルキルまたはアリールであり;
R
4は、−OHであり;
R
5は、水素またはC
1−C
6アルキルである;
ならびにそれらの塩、水和物、溶媒和物、およびプロドラッグを提供する。
【0097】
式II
本開示は、式(II)の化合物:
式中、
R
1は、アリールまたは置換アリールであり;
R
2は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、およびアルキルより選択され;
R
3は、アリールまたは置換アリールであり;
Yは、直接結合またはC
1−C
4アルキルであり;
Zは、C
1−C
4アルキルまたはアリールであり;
R
4は、−OHであり;
R
5は、水素またはC
1−C
6アルキルである;
ならびにそれらの塩、水和物、溶媒和物、およびプロドラッグを提供する。
【0098】
式III
本開示は、式(III)の化合物:
式中、
R
1は、アリールまたは置換アリールであり;
R
2は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、およびアルキルより選択され;
R
3は、アリールまたは置換アリールであり;
Yは、直接結合またはC
1−C
4アルキルであり;
Zは、C
1−C
4アルキルまたはアリールであり;
R
4は、−OHであり;
R
5は、水素またはC
1−C
6アルキルである;
ならびにそれらの塩、水和物、溶媒和物、およびプロドラッグを提供する。
【0099】
式(I)において、X
1およびX
2の各々は独立してNまたはCであり、ここで環のNがX
1およびX
2のうちのいずれかCであるものと二重結合を形成するように、X
1およびX
2のうちの1つはNでありかつX
1およびX
2のうちの1つはCである。ある態様において、X
1はNであり、X
2はCである。ある態様において、X
1はCであり、X
2はNである。
【0100】
式(I)〜(III)において、R
1はアリールまたは置換アリールである。ある態様において、R
1はアリールである。ある態様において、R
1は置換アリールである。ある態様において、R
1は置換アリールであり、置換基はアルキルまたはハロゲンである。
【0101】
式(I)〜(III)において、R
2は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、およびアルキルより選択される。ある態様において、R
2はアリールまたは置換アリールである。ある態様において、R
2はアリールである。ある態様において、R
2は置換アリールである。ある態様において、R
2はヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールである。ある態様において、R
2はヘテロアリールである。ある態様において、R
2は置換ヘテロアリールである。ある態様において、R
2はアルキルである。
【0102】
ある態様において、R
2は、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、およびアルキルより選択される。ある態様において、R
2は、ヘテロアリール、およびアルキルより選択される。ある態様において、R
2は置換アリールであり、置換基はアルキルまたはハロゲンである。
【0103】
式(I)〜(III)において、R
3はアリールまたは置換アリールである。ある態様において、R
3はアリールである。ある態様において、R
3は置換アリールである。ある態様において、R
3は置換アリールであり、置換基はアルキルまたはハロゲンである。
【0104】
式(I)〜(III)において、R
5は水素またはC
1−C
6アルキルである。ある態様において、R
5は水素である。ある態様において、R
5はC
1−C
6アルキルである。
【0105】
式(I)〜(III)において、Yは直接結合またはC
1−C
4アルキルである。ある態様において、Yは直接結合である。ある態様において、YはC
1−C
4アルキルである。
【0106】
式(I)〜(III)において、ZはC
1−C
4アルキルまたはアリールである。ある態様において、ZはC
1−C
4アルキルである。ある態様において、Zはアリールである。
【0107】
ある態様において、Yは直接結合であり、ZはC
1−C
4アルキルである。ある態様において、Yは直接結合であり、Zはアリールである。ある態様において、YはC
1−C
4アルキルであり、ZはC
1−C
4アルキルである。ある態様において、YはC
1−C
4アルキルであり、Zはアリールである。
【0108】
ある態様において、Yは直接結合であり、ZはC
1−C
4アルキルであり、R
5は水素である。ある態様において、Yは直接結合であり、Zはアリールであり、R
5は水素である。ある態様において、YはC
1−C
4アルキルであり、ZはC
1−C
4アルキルであり、R
5は水素である。ある態様において、YはC
1−C
4アルキルであり、Zはアリールであり、R
5は水素である。
【0109】
ある態様において、R
1はアリールであり、R
2はヘテロアリールであり、R
3はアリールである。
【0110】
ある態様において、R
1はアリールであり、R
2はアルキルであり、R
3は置換アリールである。
【0111】
ある態様において、R
1はアリールであり、R
2はアリールであり、R
3はアリールである。
【0112】
ある態様において、R
1はアリールであり、R
2は置換アリールであり、R
3は置換アリールである。
【0113】
ある態様において、YおよびZが−(CH
2)
3−C(CH
3)
2−CH
2−を形成するように、YはC
1−C
4アルキルでありかつZはC
1−C
4アルキルである。
【0114】
ある態様において、YおよびZが
を形成するように、YはC
1−C
4アルキルでありかつZはアリールである。
【0115】
本化合物のある態様を下記の表に示す。
【0116】
本化合物、およびそれらの塩または溶媒和物の態様は、以下に示される、1,3−ジフェニル−5−チオフェン−3−イル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(5−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−ペンチル)−アミド(化合物1)を含む。
【0117】
本化合物、およびそれらの塩または溶媒和物の態様は、以下に示される、3−(4−フルオロ−フェニル)−1−フェニル−5−プロピル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(5−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−ペンチル)−アミド
を含む。
【0118】
本化合物、およびそれらの塩または溶媒和物の態様は、以下に示される、1,3,5−トリフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−カルボン酸4−ヒドロキシ−ベンジルアミド(化合物2)を含む。
【0119】
本化合物、およびそれらの塩または溶媒和物の態様は、以下に示される、3−(4−フルオロ−フェニル)−5−(3−フルオロ−フェニル)−1−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(5−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−ペンチル)−アミド(化合物6)を含む。
【0120】
本化合物、およびそれらの塩または溶媒和物の態様は、以下に示される、1−(5−クロロ−2−メチル−フェニル)−5−(2,6−ジメチル−フェニル)−3−(2−フルオロ−フェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−カルボン酸[2−(4−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−アミド(化合物3)を含む。
【0121】
本化合物、およびそれらの塩または溶媒和物の態様は、以下に示される、3−(4−フルオロ−フェニル)−1,5−ジフェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−4−カルボン酸(5−ヒドロキシ−4,4−ジメチル−ペンチル)−アミド(化合物5)を含む。
【0122】
小分子化合物の製造
開示される化合物を合成するために有用な一般に知られた化学合成スキームおよび条件を提供する多くの一般的な参考文献が入手可能である(例えば、Smith and March, March's Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, Fifth Edition, Wiley- Interscience, 2001;またはVogel, A Textbook of Practical Organic Chemistry, Including Qualitative Organic Analysis, Fourth Edition, New York: Longman, 1978を参照のこと)。
【0123】
本明細書に記載の化合物は、クロマトグラフィー手段、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、分取薄層クロマトグラフィー、フラッシュカラムクロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーを含む、当技術分野において公知の手段のいずれかによって精製することができる。順相および逆相ならびにイオン樹脂を含む、任意の適切な固定相を使用することができる。例えば、Introduction to Modern Liquid Chromatography, 2nd Edition, ed. L. R. Snyder and J. J. Kirkland, John Wiley and Sons, 1979;およびThin Layer Chromatography, ed E. Stahl, Springer-Verlag, New York, 1969を参照のこと。
【0124】
本開示の化合物を製造するためのプロセスの間、関係している分子のいずれかの敏感なまたは反応性の基を保護することが必要でありかつ/または望ましい場合がある。これは、T. W. Greene and P. G. M. Wuts, "Protective Groups in Organic Synthesis", Fourth edition, Wiley, New York 2006などの、標準研究に記載されるような従来の保護基によって達成することができる。保護基は、当技術分野で公知の方法を使用して、好都合な後の段階で除去することができる。
【0125】
本態様の化合物は、下記の合成スキームに従って製造することができる。合成スキーム1において、例示を目的として、R
1およびR
3はフェニルであり;R
xは離脱基であり;X
1、X
2、R
2、R
5、Y、Z、およびR
4は、前に定義された通りである。
合成スキーム1
【0126】
ピラゾール誘導体は、ヒドラゾンと不飽和化合物との反応で形成することができる。合成スキーム1において、化合物Aを化合物Bと縮合し、化合物Cを形成する。反応はニートでまたは適切な溶媒を用いて行うことができる。反応は、冷却して、室温で、または加熱してを含む、様々な温度で行うことができる。ある態様において、化合物Aを適切な溶媒中において化合物Bと共に還流する。適切な溶媒は、例えば、メタノール、塩化メチレン、DMF、またはTHFである。当業者は、特定の反応物に応じて適切な反応条件を決定することができる。
【0127】
合成スキーム1をさらに参照して、化合物Cを鹸化する。ある態様において、化合物Cはエステルを含み、ここで、R
xはアルキル基である。化合物Cの鹸化のための条件は、適切な溶媒中での塩基との反応を含む。鹸化のための適切な溶媒としては、水、アルコール、例えばメタノールおよびエタノール、THF、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。適切な塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
次いで、鹸化された化合物Cを、ペプチドカップリング反応において、アミンDと反応させ、化合物Eを形成させる。ペプチドカップリング反応は、典型的に、従来のペプチドカップリング試薬を用い、従来のカップリング反応条件下で行われる。使用のための適切なカップリング試薬としては、例として、カルボジイミド、例えば、エチル−3−(3−ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド(EDCまたはEDCI)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)など、ならびに他の周知のカップリング試薬、例えば、Ν,Ν'−カルボニルジイミダゾール、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)などが挙げられる。場合により、周知のカップリング促進剤、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール(HOAT)、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)などが、この反応において用いられ得る。典型的に、このカップリング反応は、約0℃〜約60℃の範囲の温度で、約1〜約72時間、塩化メチレン、THFまたはDMFなどの不活性希釈剤中において行われる。
【0129】
例示的な例において、本態様の化合物は、実施例に示されるように、ケイ皮酸エチルまたは不飽和エステルとベンズアルデヒドフェニルヒドラゾンとの縮合、続いてエチルエステルの鹸化、およびアミンとの反応によって、所望のアミド最終生成物を得ることによって製造することができる。あるいは、本態様の化合物は、先ず、ケイ皮酸または不飽和エステルとアミンとを反応させてアミドを製造し、次いで、ベンズアルデヒドフェニルヒドラゾンと縮合させることによって、製造することができる。当業者は、本態様の化合物の製造についてさらなる方法が存在することを認識する。
【0130】
ある態様において、式(I)の化合物は標識を含む。これは、インビボで投与した後に化合物の分布を検出および検査するために有用である。例えば、トリチウム(
3H)は、従来の薬物動態学的/薬力学的研究における標識として用いることができる。標識を含む化合物は、例えば、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的、または他の物理的手段によって検出することができる。
【0131】
本態様の化合物は、そのような化合物を構成する1つまたは複数の原子において、不自然な比率の原子同位体を含有することもできる。例えば、化合物は、放射性同位元素、例えば、トリチウム(
3H)または炭素−14(
14C)などで放射標識することができる。放射性であるかないかにかかわらず、本態様の化合物の全ての同位体変種は、本態様の範囲内に包含されることが意図される。
【0132】
細胞ベースのアッセイにおける小分子化合物の試験
本態様の化合物は、インビトロおよびインビボで活性をスクリーニングすることができる。インビトロアッセイについては、本開示は、本明細書に記載されるような、細胞ベースの細胞毒性アッセイを提供する。インビボアッセイについては、本発明は、本明細書に記載されるような、マウス異種移植モデルアッセイを提供する。
【0133】
薬学的組成物
本開示は、少なくとも1つの式(I)の化合物、および場合により薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物または医薬を提供する。薬学的組成物または医薬は、例えば、癌などの状態の治療のために患者に投与することができる。
【0134】
処方および投与
本態様の化合物は、経腸的なまたは非経口的な適用のいずれかに適した賦形剤または担体と組み合わせたまたは混合したその有効量を含む薬学的組成物または医薬の製造に有用である。
【0135】
本態様において使用するための薬学的組成物または医薬は、1つまたは複数の生理学的に許容される担体または賦形剤を使用して標準的技術により処方することができる。適切な薬学的担体は、本明細書およびE. W. Martinによる"Remington's Pharmaceutical Sciences"に記載されている。本態様の化合物およびそれらの生理学的に許容される塩および溶媒和物は、吸入を含む任意の適切な経路による、局所的、経鼻的、経口的、非経口的、または直腸的な投与のために処方することができる。従って、薬学的組成物の投与は、皮内、皮下、静脈内、筋肉内、鼻腔内、脳内、気管内、動脈内、腹腔内、膀胱内、胸膜内、冠内または腫瘍内注射により、注射器またはその他の器具を使用して実行してよい。吸入またはエアロゾル投与と同様に、経皮投与も企図される。錠剤およびカプセル剤を経口的に、直腸的に、または経膣的に投与することができる。
【0136】
経口投与のためには、薬学的組成物または医薬は、例えば、薬学的に許容される賦形剤を使用して従来の手段により製造される、錠剤またはカプセル剤の形をとることができる。ある態様において、錠剤またはゼラチンカプセル剤は、(a)希釈剤または充填剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース(例えば、エチルセルロース、微結晶性セルロース)、グリシン、ペクチン、ポリアクリル酸および/またはリン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム;(b)滑沢剤、例えば、シリカ、滑石、ステアリン酸、そのマグネシウムまたはカルシウム塩、ステアリン酸金属塩、コロイド状二酸化ケイ素、硬化植物油、コーンスターチ、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムおよび/またはポリエチレングリコール;また錠剤には(c)結合剤、例えば、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン糊、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドンおよび/またはヒドロキシプロピルメチルセルロース;必要であれば(d)崩壊剤、例えば、デンプン(例えば、ジャガイモデンプン、またはデンプンナトリウム)、グリコレート、寒天、アルギン酸もしくはそのナトリウム塩、または発泡性混合物;(e)湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ならびに/または(f)吸収剤、着色剤、フレーバー、および甘味剤と共に、有効成分、即ち、本態様の化合物を含む。
【0137】
錠剤は、当技術分野で公知の方法に従って、フィルムコートまたは腸溶コートされ得る。経口投与のための液体調製物は、例えば、液剤、シロップ剤、もしくは懸濁剤の形をとることができ、または、使用前に水または他の適切なビヒクルと構成するための乾燥製品として提示することができる。そのような液体調製物は、薬学的に許容される添加剤、例えば、懸濁化剤、例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化食用脂;乳化剤、例えば、レシチンまたはアカシア;非水性ビヒクル、例えば、アーモンドオイル、油性エステル、エチルアルコール、または分画植物油;および、保存剤、例えば、メチルもしくはp−ヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸を使用して従来の手段により調製することができる。調製物は、必要に応じて、緩衝塩、矯味矯臭剤、着色剤、および/または甘味剤を含有することもできる。必要であれば、経口投与のための調製物は、活性化合物の放出制御を与えるように適切に処方することができる。
【0138】
吸入による投与のためには、化合物は、適切な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切な気体を使用して、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレー提示の形で都合よく送達してもよい。加圧エアゾールの場合、投薬量単位は、計量された量を送達する弁を提供することにより決定することができる。化合物と適切な粉末基剤、例えば、ラクトースまたはデンプンの混合粉末を含有する、インヘラーまたは吸入器で使用するための例えばゼラチン製のカプセルおよびカートリッジを処方することができる。
【0139】
本態様の化合物は、注射による、例えばボーラス注射または持続注入による、非経口投与のために処方することができる。注射用の製剤は、単位投薬形態で、例えば、保存剤を添加したアンプルでまたは多用量容器で提示することができる。ある態様において、注射用組成物は、等張液剤または懸濁剤であり、坐薬は、脂肪乳濁液または懸濁液から製造される。組成物は、無菌化されてもよく、かつ/あるいは、アジュバント、例えば、保存剤、安定化剤、湿潤剤、もしくは乳化剤、溶液促進剤、浸透圧を調節するための塩類、および/または緩衝剤を含有してもよい。あるいは、有効成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、無菌無発熱物質水と構成するための粉末形態であり得る。さらに、それらはまた、他の治療的に価値のある物質を含有してもよい。組成物は、それぞれ、従来の混合法、顆粒化法、または被膜法に従って製造され、約0.1から75%までの、好ましくは、約1から50%までの有効成分を含有している。
【0140】
経皮的適用に適した製剤は、担体と共に有効量の本態様の化合物を含む。ある態様において、担体は、ホストの皮膚の通過を支援する吸収性の薬学的に許容される溶媒を含む。例えば、経皮的器具は、裏打ち部分と、化合物を場合により担体と共に含有するリザーバと、場合により、長期間にわたり制御された所定の速度で化合物をホストの皮膚へ送達するための速度制御バリアと、場合により、器具を皮膚に固定するための接着性のオーバーレイとを含む包帯の形態である。マトリクス経皮製剤も使用され得る。
【0141】
ある態様において、例えば皮膚および眼への、局所的適用に適した製剤は、当技術分野で周知の水性液剤、軟膏剤、クリーム剤またはゲル剤である。そのような製剤は、可溶化剤、安定剤、浸透圧増強剤、緩衝剤および保存剤を含有し得る。
【0142】
本化合物はまた、直腸組成物、例えば、従来の坐薬基剤、例えば、ココアバターもしくは他のグリセリドを含有する、例えば、坐薬または停留浣腸で処方することができる。
【0143】
さらに、化合物はデポー調製物として処方することができる。そのような長時間作用製剤は、埋め込みにより(例えば、皮下にもしくは筋肉内に)、または筋肉内注射により投与することができる。従って、例えば、化合物は、適切な高分子もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中の乳剤として)またはイオン交換樹脂を用いて、またはやや溶けにくい誘導体として、例えば、やや溶けにくい塩として、処方することができる。
【0144】
組成物は、必要であれば、有効成分を含有する1つまたは複数の単位投薬形態を含有することができるパックまたはディスペンサー器具で提示することができる。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔、例えば、ブリスターパックを含むことができる。パックまたはディスペンサー器具には、投与説明書を添付することができる。
【0145】
組み合わせ製剤
ある態様において、薬学的組成物または医薬は、有効量の本明細書に定義されるような本態様の化合物、および化学療法剤などの別の治療剤を含む。
【0146】
化学療法剤の例としては、ダウノルビシン、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、エソルビシン、ブレオマイシン、マフォスファミド、イホスファミド、シトシンアラビノシド、ビスクロロエチルニトロソ尿素、ブスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロン、テストステロン、タモキシフェン、ダカルバジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ペンタメチルメラミン、ミトキサントロン、アムサクリン、クロラムブシル、メチルシクロヘキシルニトロソ尿素、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、シクロホスファミド、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン(CA)、5−アザシチジン、ヒドロキシ尿素、デオキシコホルマイシン、4−ヒドロキシペルオキシシクロホスホラミド、5−フルオロウラシル(5−FU)、5−フルオロデオキシウリジン(5−FUdR)、メトトレキサート(MTX)、コルヒチン、タキソール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、トリメトレキサート、テニポシド、シスプラチン ジエチルスチルベストロール(DES)、ビスモデギブ(GDC−0449)、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ペメトレキセド(Alimta(登録商標))、PI3K阻害剤LY294002、TGFβ阻害剤SB431542、およびシスプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。一般的には、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 15th Ed. 1987, pp.1206-1228, Berkow et al., eds., Rahway, N.J.を参照のこと。
【0147】
ある態様において、薬学的組成物または医薬は、本態様の化合物、ならびにビスモデギブ(GDC−0449)、エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ペメトレキセド(Alimta(登録商標))、LY294002、SB431542、およびシスプラチンより選択される別の治療剤を含む。ある態様において、薬学的組成物または医薬は、本態様の化合物およびビスモデギブ(GDC−0449)を含む。ある態様において、薬学的組成物または医薬は、本態様の化合物およびエルロチニブ(Tarceva(登録商標))を含む。ある態様において、薬学的組成物または医薬は、本態様の化合物およびペメトレキセド(Alimta(登録商標))を含む。ある態様において、薬学的組成物または医薬は、本態様の化合物およびLY294002を含む。ある態様において、薬学的組成物または医薬は、本態様の化合物およびSB431542を含む。ある態様において、薬学的組成物または医薬は、本態様の化合物およびシスプラチンを含む。
【0148】
ある態様は、例えば下記の表に示されるような、化合物1〜6の1つまたは複数と別の治療剤との組み合わせを提供する。
化合物1〜6および別の治療剤の組み合わせの例
【0149】
本態様の化合物と一緒に使用する場合、そのような化学療法剤は、個々に(例えば、5−FUと本態様の化合物とを)、連続的に(例えば、一定期間にわたり5−FUと本態様の化合物とを、続いて、例えばMTXと本態様の化合物とを)、または、1つもしくは複数の他のそのような化学療法剤と組み合わせて(例えば、5−FUと、MTXと、本態様の化合物とを、または、5−FUと、放射線療法と、本態様の化合物とを)、使用してもよい。投与は、同一または異なる投与経路によるものでもよく、同一の薬学的製剤中で一緒に行ってもよい。
【0150】
ある態様において、治療有効量の本態様の化合物は、外科手術、および場合により別の化学療法剤の投与と併用して投与される。
【0151】
治療有効量および投薬
ある態様において、薬学的組成物または医薬は、癌を予防する、治療する、または抑制するために治療有効用量で患者へ投与される。薬学的組成物または医薬は、患者において効果的な治療応答を誘発するために十分な量で患者へ投与される。効果的な治療応答とは、疾患の症状または合併症を少なくとも部分的に停止させるまたは遅らせる応答のことである。これを達成するために適した量は、「治療有効用量」と定義される。
【0152】
投与される化合物の投薬量は、温血動物(哺乳動物)の種類、体重、年齢、個体の状態、治療すべき領域の表面積、および投与形態に依存する。用量のサイズは、特定の対象における特定の化合物の投与に付随するあらゆる有害作用の存在、性質、および程度によっても決定される。約50から70kgの哺乳動物への経口投与のための単位投薬量は、有効成分を約5〜500mg含有し得る。典型的には、本態様の化合物の投薬量は、所望の効果を達成するために十分である投薬量である。
【0153】
最適な投薬スケジュールは、対象の身体における化合物蓄積の測定値から計算することができる。一般に、投薬量は1ng〜1,000mg/kg体重であり、毎日、毎週、毎月、または毎年1回または複数回与えてよい。当業者は、最適な投薬量、投薬方法、および繰返し率を容易に決定することができる。
【0154】
ある態様において、本態様の化合物を含む薬学的組成物または医薬は、複数日間、化合物約1mg/対象の体重1kg(1mg/kg)〜約1g/kgの範囲の日用量で投与される。別の態様では、日用量は約5mg/kg〜約500mg/kgの範囲の用量である。ある態様では、日用量は約10mg/kg〜約250mg/kgである。ある態様では、日用量は約25mg/kg〜約150mg/kgである。日用量は、1日1回投与することができるか、またはサブ用量に分けて複数の用量で、例えば、1日2回、3回、もしくは4回投与することができる。
【0155】
所望の治療効果を達成するために、化合物は、治療的に有効な日用量で複数日間投与することができる。従って、対象における癌を治療するための化合物の治療的に有効な投与は、3日から2週間またはそれ以上にわたる期間の間継続する定期的な(例えば、毎日)投与を必要とする。典型的には、化合物は、少なくとも3日間連続して、多くの場合、少なくとも5日間連続して、さらに多くの場合、少なくとも10日間、および時には、20日間、30日間、40日間またはそれ以上連続して投与される。連続日用量は、治療的有効用量を達成するための一つの経路であるが、治療的に有益な効果は、投与が対象における化合物の治療的有効濃度を維持するために十分に頻繁に繰り返される限り、たとえ化合物が毎日投与されなくても達成することができる。例えば、化合物を、1日おきに、3日おきに、または、さらに高用量範囲を用いて対象が許容すれば、一週間に1回投与することができる。
【0156】
最適投薬量、毒性、およびそのような化合物の治療効果は、個々の化合物の相対的効力によって異なることがあり、細胞培養物または実験動物における標準的製薬手順によって、例えば、LD
50(集団の50%において致死的な用量)およびED
50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定することにより決定することができる。毒性効果と治療効果との用量比は、治療指数であり、比LD
50/ED
50として表すことができる。ある態様において、本開示は、大きな治療指数を示す化合物を示す化合物を提供する。中毒性副作用を示す化合物を使用することはできるが、そのような化合物を罹患組織の部位へ標的化して、正常細胞への潜在的損傷を最小限にし、それによって副作用を減らす送達系を設計するよう注意を払うべきである。
【0157】
例えば、細胞培養アッセイおよび動物実験から得られたデータを使用して、ヒトで使用するための投薬量範囲を処方することができる。ある態様において、そのような化合物の投薬量は、ほとんどまたはまったく毒性のないED
50を含む血中濃度の範囲内にある。投薬量は、用いる投薬形態および投与経路に応じてこの範囲内で変化し得る。本態様の方法で使用するいかなる化合物についても、治療有効用量は、はじめに細胞培養アッセイから評価することができる。細胞培養で決定されたIC
50(症状の最大半量の抑制を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成する用量は、動物モデルにおいて処方することができる。そのような情報を使用して、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定することができる。一般に、小分子化合物の投薬量当量は、典型的な対象で約1ng/kgから100mg/kgまでである。
【0158】
治療の成功に続いて、治療された状態、例えば、癌の再発を予防するために、対象に維持療法を受けさせるのが望ましい場合がある。
【0159】
小分子化合物を使用する癌治療
本態様は、例えば、GLIポリペプチドを発現する状態、例えば癌などを治療するための、式(I)の化合物を使用する方法を提供する。GLIポリペプチドを発現する任意の細胞または腫瘍細胞が、本態様の方法を実施するために使用され得る。
【0160】
ある態様において、癌性状態を患っている対象を治療するための方法を提供する。この方法は、治療有効量の本態様の化合物を対象へ投与する工程を含み、ここで、癌性状態が、GLIポリペプチドを発現することを特徴とし、かつ該投与する工程が該対象の治療をもたらす。
【0161】
さらに、本態様は、薬物療法における使用のための式(I)の化合物を提供する。さらに、本態様は、癌の治療における使用のための式(I)の化合物を提供する。さらに、本態様は、癌の治療用の医薬の製造における式(I)の化合物の使用を提供する。
【0162】
ある程度の癌はGLIポリペプチドを発現する。従って、対象における大抵の癌性状態または癌は、本態様の化合物を使用して治療することができる。ある態様において、癌性状態または癌は、結腸癌、メラノーマ、中皮腫、肺癌、腎細胞癌、乳癌、前立腺癌、肉腫、卵巣癌、食道癌、胃癌、肝細胞癌、鼻咽腔癌、膵癌、およびグリオーマより選択される。
【0163】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する結腸癌を患っている対象を治療するために使用される。
【0164】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する乳癌を患っている対象を治療するために使用される。
【0165】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する鼻咽腔癌を患っている対象を治療するために使用される。
【0166】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する肺癌を患っている対象を治療するために使用される。肺癌としては、気管支原性肺癌[扁平細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌]、肺胞[細気管支]癌、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫、SCLC、およびNSCLCが挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する肉腫を患っている対象を治療するために使用される。肉腫としては、血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫、および奇形腫などの癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する消化器癌を患っている対象を治療するために使用される。消化器癌としては、食道[扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫]、胃[癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫]、膵臓[導管腺癌、インスリノーマ、グルカゴノーマ、ガストリノーマ、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍]、小腸[腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫]、および大腸[腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫]の癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する泌尿生殖器系の癌を患っている対象を治療するために使用される。泌尿生殖器系の癌としては、腎臓[腺癌、ウィルムス腫瘍(腎芽腫)、リンパ腫、白血病、腎細胞癌]、膀胱および尿道[扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌]、前立腺[腺癌、肉腫]、ならびに精巣[精上皮腫、奇形腫、胚性癌腫、奇形癌腫、絨毛癌、肉腫、ライディッヒ細胞腫、線維腫、線維腺腫、類腺腫瘍、脂肪腫]の癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0170】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する肝臓癌を患っている対象を治療するために使用される。肝臓癌としては、肝細胞癌、肝管癌、肝芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、および血管腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する皮膚癌を患っている対象を治療するために使用される。皮膚癌としては、悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、母斑、異形成母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、および乾癬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する婦人科癌を患っている対象を治療するために使用される。婦人科癌としては、子宮[子宮内膜癌]、子宮頚部[子宮頚癌、前浸潤子宮頚部異形成]、卵巣[卵巣癌(漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、類内膜癌、明細胞腺癌、未分類癌腫)、顆粒膜莢膜細胞腫、セルトリライディッヒ細胞腫、未分化胚細胞腫、悪性奇形腫および他の胚細胞腫瘍]、外陰部[扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、メラノーマ]、膣[明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)]、ならびにファロピウス管[癌腫]の癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する骨癌を患っている対象を治療するために使用される。骨癌としては、骨原性肉腫[骨肉腫]、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫[細網肉腫]、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫、脊索腫、骨軟骨腫[骨軟骨性外骨症]、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液線維腫、類骨骨腫、および巨細胞腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0174】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する神経系の癌を患っている対象を治療するために使用される。神経系の癌としては、頭蓋骨[骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、骨パジェット病]、髄膜[髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症]、脳[星細胞腫、髄芽腫、グリオーマ、脳室上衣腫、胚細胞腫(松果体腫)、多形神経膠芽腫、乏突起膠腫、シュワン腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍]、および脊髄[神経線維腫、髄膜腫、グリオーマ、肉腫]の癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する血液癌を患っている対象を治療するために使用される。血液癌としては、血液[骨髄性白血病(急性および慢性)、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群]、ホジキン病、および非ホジキンリンパ腫(悪性リンパ腫)の癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0176】
ある態様において、化合物は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドを発現する副腎の癌を患っている対象を治療するために使用される。副腎の癌としては、神経芽細胞腫が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0177】
本開示は、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、またはGLI3ポリペプチドが発現される癌の治療または予防のための方法を提供する。ある態様において、この方法は、患者へ薬学的組成物を投与する工程を含む。このような薬学的組成物は、例えば、式(I)の化合物を含む。ある態様において、化合物は化合物1である。ある態様において、化合物は化合物4である。ある態様において、化合物は化合物2である。ある態様において、化合物は化合物6である。ある態様において、化合物は化合物3である。ある態様において、化合物は化合物5である。
【0178】
本態様の薬学的組成物は、単独で、あるいは1つまたは複数の追加の治療化合物または治療と組み合わせて投与される。そのような治療化合物または治療の例としては、タキソール、シクロホスファミド、タモキシフェン、フルオロウラシルおよびドキソルビシンが挙げられるが、これらに限定されない。ある態様において、薬学的組成物または医薬は、本態様の化合物、ならびにエルロチニブ(Tarceva(登録商標))、ペメトレキセド(Alimta(登録商標))、LY294002、SB431542、およびシスプラチンより選択される別の治療剤を含む。さらに、他の化学療法剤が本明細書に記載されている。
【0179】
癌を治療するための方法は、場合により、以下の工程のうちの1つまたは複数を含み得る:個体から組織または体液の生体試料を得る工程;例えば、生体試料をGLI1、GLI2、もしくはGLI3に向けられた抗体と接触させることにより、GLIポリペプチド、例えば、GLI1、GLI2、もしくはGLI3ポリペプチドの発現について生体試料をスクリーニングする工程;または、例えば、Gli1、Gli2、もしくはGli3 mRNAを検出することにより、Gli1、Gli2、もしくはGli3ポリヌクレオチドの発現について生体試料をスクリーニングする工程。
【0180】
多くの癌は、最初に本明細書に記載の化学療法剤を使用して治療される。しかし、非常に多くの場合、癌はそのような化学療法剤に対して耐性になり、そのときには化学療法剤はもはや有効ではなくなる。従って、ある態様において、癌は多剤耐性癌、または他の点で治療に対して抵抗性の癌である。従って、ある態様において、本態様の化合物は、腫瘍細胞における化学療法剤に対する耐性を克服するために使用される。この方法は、少なくとも1つの化学療法剤に耐性を有する腫瘍細胞へ本態様の化合物を投与する工程を含み、該投与する工程が次に、腫瘍細胞死をもたらす。ある態様において、化合物は化合物1である。ある態様において、化合物は化合物4である。ある態様において、化合物は化合物2である。ある態様において、化合物は化合物6である。ある態様において、化合物は化合物3である。ある態様において、化合物は化合物5である。
【0181】
ある態様において、癌の治療における使用のための本態様の化合物を提供する。ある態様において、本開示は、GLIポリペプチドが発現される状態、例えば癌の治療的および/または予防的処置用の薬学的組成物または医薬の製造における本態様の化合物の使用を提供する。
【0182】
ある態様において、本開示は、GLIポリペプチドを発現する癌の治療用の別の抗癌化学療法剤と組み合わせて使用するための薬学的組成物または医薬の製造における化合物の使用を提供する。本開示によって提供される薬学的組成物および医薬は、本明細書に記載されている。
【0183】
キット
上記で示唆されている診断的、研究的、および治療的適用で使用するために、キットも本開示により提供される。診断的および研究的適用において、そのようなキットは、以下のいずれでもまたは全てを含んでもよい:アッセイ試薬、緩衝液、本態様の化合物、GLIポリペプチド、Gli核酸、抗GLI抗体、ハイブリダイゼーションプローブおよび/またはプライマー、Gli発現構築物など。治療薬は、無菌食塩水または別の薬学的に許容される乳濁液および懸濁液ベースを含んでもよい。
【0184】
さらに、キットは、本態様の方法の実施のための使用法(即ち、プロトコル)を含有する指示資料を含んでもよい。指示書は種々の形態で本キット中に存在してもよく、そのうちの1つまたは複数がキット中に存在してもよい。指示資料は、典型的には、書かれたまたは印刷された資料を含むが、そうしたものに限定されるものではない。そのような指示書を保存し、それを最終使用者に伝えることができるあらゆる媒体が、企図される。そのような媒体としては、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ、フラッシュメモリ)、光学媒体(例えば、CD−ROM、DVD、ブルーレイ)などが挙げられるが、これらに限定されない。そのような媒体は、そのような指示資料を提供するインターネットサイトへのアドレスを含んでいてよい。
【0185】
キットの意図される使用者および使用者の特定の要求に応じて、広範囲のキットおよび構成要素を本態様に従って作製することができる。
【0186】
ある態様において、キットは薬学的キットであり、(i)本態様の小分子化合物、および(ii)薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物を含む。薬学的キットは、薬学的組成物が、GLIポリペプチドまたはGli核酸を発現する癌を治療するために使用できることまたは使用するべきであることを記載する指示書を場合により含む。
【0187】
追加のキット態様は、当業者が本明細書に記載の方法の変法のいずれかを実行するのを可能にする、任意選択の機能的構成要素を含む。
【0188】
前述の本発明を明確さと理解のために図示および例によって多少詳細に記載したが、本発明の精神と範囲から必ずしも逸脱することなく、ある変更、変化、修正および同等物の置換をそれに加えられることは、本発明の教示を考慮して、当業者に容易に明らかである。結果として、本明細書に記載の態様は、様々な修正、変化などを受け、本発明の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ決定される。当業者は、変化させ、変更し、または修正することができても本質的に類似の結果を生じる種々の重要ではないパラメーターを容易に認識する。
【0189】
本発明の要素の各々は複数の態様を含有するものとして本明細書に記載されているが、特に指定のない限り、本発明の所定の要素の態様の各々は、本発明の他の要素の態様の各々と共に使用することができ、それぞれのそのような使用は、本発明の異なる態様を形成するよう意図されることが、理解されるべきである。
【0190】
上記の開示から認識され得るように、本発明は広範囲の適用を有する。本発明は、以下の実施例によりさらに例証されるが、実施例は説明的にすぎず、本発明の定義および範囲を限定するようには決して意図するものではない。
【実施例】
【0191】
実施例1:一般的方法
A.細胞株
大半のヒト細胞株はアメリカンタイプカルチャーコレクション(バージニア州、マナサス、A.T.C.C.)から入手した。これら細胞株は以下を含む:非小細胞肺癌(NSCLC)細胞A549、H1703、H460、H358、H322、H838、H1299、H1650、H1975、H522、H441、H1666、H2170、H820、HCC2935、HCC4006、およびA427;中皮腫細胞211H、H513、H2052、H28、およびH2452;結腸癌細胞SW480、HCT116、HT29、Lovo、DLD−1、COLO−205、COLO−201、およびCaCO2;乳癌細胞MCF7、HuL100、HCC1569、SKBR−3およびBT474;膵癌細胞Panc−1、Panc02.13、HPAF−II、SW1990、Ypac、8902−1、および8988−1;メラノーマ細胞LOX、A375、A2058、Calu、Calv6、HA−A、AS2504、Mel202、MaMell44、SK−Mel−2、SK−Mel−5、SK−Mel−28、SK−Mel−3、SK−Mel−24、SK−Mel−30、およびMelJuso;多発性骨髄腫細胞PRMI−8226、H929、MM1.R、およびU266;前立腺癌細胞株LnCAPおよびDU145;正常肺線維芽細胞MRC5。他のヒト中皮腫癌細胞株H290およびMS−1は、米国立保健研究所(メリーランド州、フレデリック、NIH)から入手し、RENはペンシルベニア大学(ペンシルベニア州、フィラデルフィア)のSteven Albelda博士の研究室のご好意により提供された。ヒト膵癌細胞株BxPC3、Panc4.21、およびCFPAC−1は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(カリフォルニア州、サンフランシスコ)のMatthias Hebrok博士の研究室のご好意により提供された。ヒト胃癌細胞株MNK28およびAGSは、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(カリフォルニア州、サンフランシスコ)のXin Chen博士のご好意により提供され;食道癌細胞株OE19、TE−7、OE31、およびOE21は、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(カリフォルニア州、サンフランシスコ)のMichael Korn博士のご好意により提供された。
【0192】
B.組織試料
初回の治癒的腫瘍切除を受ける患者からの新鮮な癌組織および隣接する正常組織を、手術時に採取し(IRB認証第H8714−15319−040号)、直ちに液体窒素中に瞬間凍結した。これら組織試料をその後の使用まで液体窒素フリーザー中にて−170℃で維持した。初代組織培養物を以下のように作製した:切除を受ける患者からの同意を得て、新鮮な癌細胞を取得し、小片(直径1〜2nm)に切り分けた後、製造業者のプロトコルに従い、コラゲナーゼA(インディアナ州、インディアナポリス、Roche Applied Science)により室温で2時間消化した。消化による単細胞を遠心沈殿し、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン(100IU/ml)、およびストレプトマイシン(100μg/ml)を添加したRPMI1640を用いて細胞ペレットを2度洗浄した。次いで、同じ培地に細胞を再懸濁させ、その後の処理の準備ができるまで、5%CO
2を含む加湿インキュベータ中にて37℃で6ウェルプレートにおいて培養した。
【0193】
C.細胞生存アッセイ(細胞ベースの細胞毒性アッセイ)
典型的に、本態様の化合物を濃度30mMでDMSO中に溶解した。次いで、化合物を、0、10、30、50、100μMの範囲の異なる濃度で細胞培養条件下にて調べた。処理後の細胞生存を測定するために、細胞を化合物と共に6ウェルプレート中において約3日間インキュベートした。細胞培養培地の除去後、1mlの0.5%クリスタルバイオレット液(20%エタノールおよび20%メタノール中に調製)を添加して、5分間細胞を染色した。次いで、水道水でクリスタルバイオレット溶液をきれいにすすいだ。細胞生存は、クリスタルで染色されたプレートの密度に基づいて推定した。
【0194】
増殖または細胞毒性アッセイにおける生存細胞数測定のための別のアッセイは、比色分析法であるMTSアッセイである。MTSアッセイ試薬は市販されている(ウィスコンシン州、マジソン、Promega Corp.)。試薬は、テトラゾリウム化合物[3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム分子内塩:MTS]および電子結合試薬(フェナジンエトスルファート:PES)を含有する。PESは、化学的安定性を高めることで、MTSと結合し、安定的な溶液を形成する。MTSテトラゾリウム化合物(Owen試薬)は、組織培養培地中で可溶性である有色ホルマザン産物へ細胞によって生体還元される。この変換は、代謝活性細胞中のデヒドロゲナーゼ酵素によって産生されるNADPHまたはNADHによって達成され得る。490nmでの吸光度により測定されるホルマザン産物の量は、培養物中の生細胞数に直接比例する。MTSホルマザン産物は組織培養培地中で可溶性であるので、このアッセイは、MTTなどのテトラゾリウム化合物を用いる手順よりも必要な工程が少ない。MTT還元のホルマザン産物は結晶性沈殿物であり、これは、570nmでの吸光度測定値を記録する前に結晶を溶解させる工程を、該手法に追加することを必要とする。
【0195】
D.定量的RT−PCR
Qiagen社製RNeasy Mini Kit(カリフォルニア州、バレンシア)を用いて、トータルRNAを単離した。ハイブリダイゼーションプローブおよびプライマー(表1)をApplied Biosystems(カリフォルニア州、フォスターシティ、ABI)から購入した。cDNA合成およびTaqman(登録商標)PCRを製造業者のプロトコルに従って行った。遺伝子発現をABI 7300 Real−time PCR Systemにおいてトリプリケートでアッセイした。サンプルをハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して標準化し、次いで、2
−dCt法を使用することによって計算した。
【0196】
(表1)定量的RT−PCRのためのハイブリダイゼーションプローブおよびプライマー
【0197】
E.インビボ抗腫瘍原性試験
ヒト癌細胞を有するマウス異種移植モデルにおいて、投与化合物をインビボで調べた。略述すると、雌性無胸腺ヌードマウス系統NCRNU−M(5〜10週齢、体重20〜25グラム;ニューヨーク州、ジャーマンタウン、Taconic)を、無病原体状態に維持した。3つのヒト癌細胞株:NSCLC A549、メラノーマMelJuso、および中皮腫MS−1を使用した。各群において5又は10匹のマウスを用い、癌細胞3×10
6個を100μl体積で背部に皮下注射した。接種後、マウス中でヒト癌細胞を10〜13日間にわたり成長させ、目に見える腫瘍小結節とした。次いで、動物に本態様の化合物を、50mg/kg体重(1日当たり1mg/マウス1匹)の用量で注射した。ビヒクル単独を対照として用いた。化合物および対照を、マウス腹部における腹腔内注射のために40μl体積に調節した。14日間にわたり毎日同じ時間帯に注射を行った。化合物処置の完了後、さらに1〜2週間にわたり、腫瘍を成長させた。3〜4日ごとに腫瘍サイズを測定し、幅(x)および長さ(y)を用いて、腫瘍体積を計算した(x
2y/2、ただしx<y)。この期間の間、マウスの体重を測定することによって、処置の一般毒性もモニタリングした。データは、平均値(±S.D.)として示した。
【0198】
F.マウスにおける化合物の薬物動態(PK)研究
マウス(1群当たり3匹)に、10mg/kg体重の用量で、化合物の各々を静脈内注射または経口投与した。次いで、注射または経口投与(PO)の20分、1時間、3時間、10時間および24時間後に、各マウスのから尾静脈から血漿を採取した。各血漿サンプル中の化合物濃度をMass Specによって測定し、マウスの血流中への化合物吸収を確認した。
【0199】
G.毒性評価のための組織学的検査
インビボ試験の完了後、マウスから種々の器官を切除した。これら器官には、肝臓、肺、心臓、腎臓、小腸、卵巣、脳、脾臓、皮膚、および筋肉を含めた。4%緩衝ホルムアルデヒド中に標本を固定し、パラフィン中に包埋し、切片化し、ヘマトキシンおよびエオシン(HE)染色により組織学的分析を行った。ビヒクル対照と比較した全ての器官からの毒性の証拠について、HE染色済みスライドをマウス病理学者が調べた。さらに、全処置群の各動物から白血球(leukocyte)(WBC:白血球細胞(white blood cell)、NE:好中球、LY:リンパ球、MO:単球、EO:好酸球、BA:好塩基球)を採取し、白血球集団を血球計数器によってカウントした。
【0200】
H.統計学的解析
示したデータは、平均値(±S.D.)を表す。Excel中の独立T検定を用いて、様々な処置および細胞株を比較した。
【0201】
I.小分子化合物の製造
特に断りのない限り、試薬および溶媒は、供給業者から受け取ったまま使用した。プロトンおよび炭素核磁気共鳴スペクトルを、プロトンについて400MHzでBruker AVANCE分光計において得た。スペクトルはppm(δ)で与え、結合定数Jはヘルツで報告する。溶媒ピークをプロトンスペクトルについての参照ピークとして使用した。LC−MSスペクトルを、Agilent 1100 HPLC LC−MSイオントラップエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析計において得た。
【0202】
実施例2:化合物1の合成
【0203】
A.化合物2−2の製造
乾燥THF500mL中の60%NaH(37g、0.93mol)の混合物へ、2−(ジメトキシホスホリル)酢酸メチル(102g、0.56mol)を添加した。次いで、乾燥THF100mL中の化合物2−1(41g、0.37mol)の溶液を、この混合物へ添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物へ飽和NH
4Cl水溶液を添加した。得られた混合物を濃縮し、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。有機相を水(3×25mL)、鹹水(3×25mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で乾燥させ、粗生成物を得た。残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル中の酢酸エチル 10%v/v)で精製し、化合物2−2(30g、収率:48%)を透明な液体として得た。m/z:169[M+H]
+。
【0204】
B.化合物2−4の製造
CH
2Cl
2400mL中の化合物2−3(121g、0.64mol)、ピリジン(101g、1.28mol)の混合物へ、室温で、CH
2Cl
2100ml中の塩化ベンゾイル(90g、0.64mol)の溶液を添加した。反応混合物を12時間撹拌した。反応混合物を水(4×50mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で乾燥させた。残渣を酢酸エチルで再結晶させ、化合物2−4(72g、収率52%)を白色固体として得た。m/z
:213[M+H]
+。
【0205】
C.化合物2−5の製造
CH
2Cl
2(250mL)中の化合物2−4(15g、72mmol)および化合物2−2(13g、79mmol)およびPh
3PCl
2(48g、144mmol)の溶液へ、室温でEt
3N(36g、360mmol)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物を水(3×30mL)、鹹水(3×30mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で乾燥させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル中の酢酸エチル 1%v/v)で精製し、化合物2−5(10g、収率:38%)を黄色固体として得た。m/z:363[M+H]
+。
【0206】
D.化合物2−6の製造
THF(150mL)中の化合物2−5(10g 28mmol)の溶液へ、水(80mL)中のKOH(4.7g、84mmol)を添加し、反応混合物を12時間室温で撹拌した。反応混合物を1N HClでpH値6へ調節し、濃縮し、酢酸エチル(4×30mL)で抽出した。有機相を水(2×20mL)、鹹水(2×20mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で乾燥させ、粗製化合物2−6(9.0g、収率:92%)を黄色固体として得た。m/z:349[M+H]
+。
【0207】
E.化合物1の製造
CH
2Cl
2中の、化合物2−6(9.0g、26mmol)、5−アミノ−2,2−ジメチルペンタン−1−オール(5.1g、39mmol)、Et
3N(5.2g、52mmol)、およびO−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU、14.8g、39mmol)の混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物を水(3×20mL)、鹹水(2×20mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で乾燥させた。残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル中の酢酸エチル 25%v/v)によって精製し、化合物1(6.0g、収率:50%)を白色固体として得た。
【0208】
実施例3:化合物3の製造
【0209】
A.化合物3−2の製造
乾燥THF500mL中の60%NaH(37g、0.93mol)の溶液へ、2−(ジメトキシホスホリル)酢酸メチル(102g、0.56mol)を添加した。次いで、乾燥THF100mL中の化合物3−1(50g、0.37mol)の溶液を前記溶液へ添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物へ飽和NH
4Cl水溶液を添加した。反応混合物を濃縮し、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。有機相を水(3×25mL)、鹹水(3×25mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮し、粗生成物を得た。残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル中の酢酸エチル 10%v/v)で精製し、化合物3−2(30g、収率43%)を黄色液体として得た。m/z:191[M+H]
+。
【0210】
B.化合物3−4の製造
CH
2Cl
2400mL中の化合物3−3(100g、0.64mol)およびピリジン(101g、1.28mol)の混合物へ、室温で、CH
2Cl
2100ml中の4−フルオロベンゾイルクロリド(101g、0.64mol)の溶液を添加した。反応混合物を12時間撹拌した。反応混合物を水(4×50mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチルで再結晶させ、化合物3−4(70g、収率39%)を白色固体として得た。m/z
:279[M+H]
+。
【0211】
C.化合物3−5の製造
CH
2Cl
2(250mL)中の化合物3−4(20g、72mmol)および化合物3−2(15g、79mmol)およびPh
3PCl
2(48g、144mmol)の溶液へ、室温でEt
3N(36g、360mmol)を添加した。この反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物を水(3×30mL)、鹹水(3×30mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル中の酢酸エチル 1%v/v)で精製し、化合物3−5(10g、収率31%)を黄色固体として得た。m/z:451[M+H]
+。
【0212】
D.化合物3−6の製造
THF(150mL)中の化合物3−5(10.0g 22mmol)の溶液へ、水(60mL)中のKOH(3.7g、67mmol)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物を1N HClでpH値6へ調節し、濃縮し、酢酸エチル(4×30mL)で抽出した。有機相を水(2×20mL)、鹹水(2×20mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮し、粗製化合物3−6(8.0g、収率:83%)を黄色固体として得た。m/z:437[M+H]
+。
【0213】
E.化合物3の製造
CH
2Cl
2中の、化合物3−6(8.0g、18mmol)、4−(2−アミノエチル)フェノール(3.7g、27mmol)、Et
3N(3.6g、36mmol)、O−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(10.3g、27mmol)の混合物を、室温で12時間撹拌した。反応混合物を水(3×20mL)、鹹水(2×20mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル中の酢酸エチル 25%v/v)によって精製し、化合物3(5.0g、収率:50%)を白色固体として得た。
【0214】
実施例4:化合物4の合成
【0215】
A.化合物4−2の製造
乾燥THF500mL中の60%NaH(34.8g、870mmol)の溶液へ、2−(ジメトキシホスホリル)酢酸エチル(102g、522mmol)を添加した。次いで、乾燥THF100mL中の化合物4−1(30g、348mmol)の溶液を混合物へ添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物へ飽和NH
4Cl水溶液を添加した。反応混合物を濃縮し、酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。有機相を水(3×25mL)、鹹水(3×25mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮し、粗生成物を得た。残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル中の酢酸エチル 10%v/v)で精製し、化合物4−2(20g、収率37%)を黄色液体として得た。m/z:157[M+H]
+。
【0216】
B.化合物4−4の製造
CH
2Cl
2400mL中の化合物4−3(100g、0.9mol)およびピリジン(146g、1.9mol)の混合物へ、室温で、CH
2Cl
2100ml中の4−フルオロベンゾイルクロリド(147g、0.9mol)の溶液を添加した。反応混合物を12時間撹拌した。反応混合物を水(4×50mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチルで再結晶させ、化合物4−4(200g、収率94%)を白色固体として得た。m/z
:231[M+H]
+。
【0217】
C.化合物4−5の製造
CH
2Cl
2(250mL)中の化合物4−4(20g、87mmol)および化合物4−2(15g、96mmol)およびEt
3N(44g、435mmol)の溶液へ、室温で、Ph
3PCl
2(58g、174mmol)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物を水(3×30mL)、鹹水(3×30mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル中の酢酸エチル 1%v/v)で精製し、化合物4−5(9g、収率28%)を黄色固体として得た。m/z:369[M+H]
+。
【0218】
D.化合物4−6の製造
THF(150mL)中の化合物4−5(9.0g 24mmol)の溶液へ、水(60mL)中のLiOH(4.1g、72mmol)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物を1N HClでpH値6へ調節し、濃縮し、酢酸エチル(4×30mL)で抽出した。有機相を水(2×20mL)、鹹水(2×20mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮し、粗製化合物4−6(8.0g、収率:98%)を黄色固体として得た。m/z:341[M+H]
+。
【0219】
E.化合物4の製造
CH
2Cl
2中の、化合物4−6(8.0g、24mmol)、5−アミノ−2,2−ジメチルペンタン−1−オール(5.3g、41mmol)、Et3N(5.4g、54mmol) O−(7−アザ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N',N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(15.4g、40.5mmol)の混合物を、室温で12時間撹拌した。反応混合物を水(3×20mL)、鹹水(2×20mL)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル中の酢酸エチル 25%v/v)によって精製し、化合物4(6.0g、収率:55%)を白色固体として得た。
【0220】
実施例5:化合物5の合成
【0221】
A.化合物5−2の製造
THF(500ml)中のNaH(60%)(19.83g、0.496mol、1.5等量)の懸濁液へ、氷浴下で、2−(ジメトキシホスホリル)酢酸メチル(66g、0.363mol、1.1等量)を滴下した。添加が完了した後、混合物を30分間撹拌した。次いで、THF(100ml)中の化合物5−1(40g、0.33mol、1.0等量)を添加した。反応混合物を室温へ加温し、一晩撹拌した。水(100ml)を0〜10℃で滴下した。反応混合物を層へ分離し、水層を酢酸エチル(2×100mL)によって抽出した。合わせた有機層を鹹水(2×100ml)で洗浄し、無水Na
2SO
4によって乾燥させた。合わせた有機層を真空下で濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物を酢酸エチルで再結晶させ、化合物5−2(45g、収率73%)を白色固体として得た。MS(ESI)mlz 163.1(M+H)
+。
【0222】
B.化合物5−4の製造
CH
2Cl
2(500ml)中の化合物5−3(100g、0.926mol、1.0等量)およびピリジン(110g、1.39mol、1.5等量)へ、CH
2Cl
2(100mL)中の4−フルオロベンゾイルクロリド(146.3g、0.926mol、1.0等量)を添加した。反応混合物を12時間撹拌した。反応混合物を水(4×100ml)で洗浄し、真空下で濃縮した。残渣を酢酸エチルで再結晶させ、化合物5−4(150g、収率70%)を白色固体として得た。MS(ESI)m/z231(M+H)
+。
【0223】
C.化合物5−5−1の製造
CH
2Cl
2中の、化合物5−4(20.82g、0.091mol、1.0等量)および化合物5−2(16.2g、0.10mol、1.1等量)、およびEt
3N(46.0g、0.455mol、5.0等量)の溶液へ、室温で、Ph
3PCl
2(60.4g、0.182mol、2.0等量)を添加した。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物を水(3×50ml)、鹹水(2×50ml)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させ、真空下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(MeOH:DCM=1:100)で精製し、化合物5−5−1(9g、収率26%)を白色固体として得た。MS(ESI)m/z375(M+H)
+。
【0224】
D.化合物5−6の製造
THF(50ml)およびH
2O(50ml)中の化合物5−5−1(9g、0.024mmol、1.0等量)およびNaOH(1.93g、0.048mmol、2.0等量)の混合物を室温で4時間撹拌した。反応混合物を真空下で濃縮し、pH1〜2へ調節した。反応混合物を濾過し、白色固体を分離した。固体をCH
2Cl
2中へ溶解した。溶液を鹹水(2×100ml)で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させた。溶液を真空下で濃縮し、化合物5−6(7.65g、収率88%)を白色固体として得た。MS(ESI)mlz361(M+H)
+。
【0225】
E.化合物5の製造
CH
2Cl
2中の、化合物5−6(9g、0.025mol、1.0等量)、o−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N\N'−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)(14.25g、0.038mol、1.5等量)、Et
3N(5.06g、0.050mol、2.0等量)の溶液を、室温で2時間撹拌した。反応混合物へ水(100ml)を添加し、有機相を分離した。有機層を鹹水(2×50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶液を真空下で濃縮し、残渣をシリカゲル上でのクロマトグラフィーで精製し、化合物5(5.6g、収率47%)を白色固体として得た。
【0226】
実施例6:化合物2の合成
実施例2〜5と同様の合成手順を使用して、化合物2を合成した。
【0227】
実施例7:化合物6の合成
実施例2〜5と同様の合成手順を使用して、化合物6を合成した。
【0228】
実施例8:本態様の化合物はインビボで腫瘍成長を抑制する(マウス異種移植モデル:メラノーマMelJuso)
化合物1、2、4、および6のインビボ効果の調査を、マウス異種移植モデル(メラノーマMelJuso)を使用して行った。マウスの背部に100μl体積で細胞3×10
6個を皮下注射した。接種の13日後から、マウスに、14日間毎日、50mg/kg体重の用量で投与化合物による処置を受けさせた(n=10)。ビヒクル単独を対照として使用した(n=10)。投与化合物およびビヒクルを、マウスの腹部における腹腔内注射のために40μlの体積に調節した。腫瘍サイズおよび腫瘍体積を上述のように計算した。
図1に見られる通り、投与化合物での処置後、腫瘍成長は劇的に抑制された。
【0229】
実施例9:本態様の化合物はインビボで腫瘍成長を抑制する(マウス異種移植モデル:中皮腫MS−1)
化合物1および4のインビボ効果の調査を、マウス異種移植モデル(中皮腫MS−1)を使用して行った。1群当たり5匹の雌性無胸腺ヌードマウスの背部に、100μl体積で細胞3×10
6個を皮下注射した。接種の10日後から、14日間毎日、50mg/kg体重で化合物の腹腔内注射を行った(n=5)。ビヒクル単独を対照として使用した(n=5)。処置の完了後、さらに2週間にわたり、腫瘍を成長させた。実験の完了まで週2回、腫瘍サイズを測定した。腫瘍重量は、対照群と比較して投与化合物での処置後に減少した(
図2)。
【0230】
実施例10:本態様の化合物はインビボで腫瘍成長を抑制する(マウス異種移植モデル:肺癌A549)
マウス異種移植モデル(NSCLC A549)における化合物1および4のインビボ効果の調査を調べた。マウスの背部に、100μl体積で細胞3×10
6個を皮下注射した。接種の10日後から、マウスに、50mg/kg体重の用量で14日間毎日、化合物1または4による処置(n=5)を受けさせた後、50mg/kg体重で1×7日間毎日、もう1ラウンドの処置を受けさせた。ビヒクル単独を対照として使用した(n=5)。投与化合物およびDMSOを、マウスの腹部における腹腔内注射のために50μlの体積に調節した。最初の腫瘍接種の43日後、腫瘍を各群のマウスから切り取り、それらの重量を、はかりを使用して測定した。腫瘍重量は、対照群と比較して投与化合物での処置後に減少した(
図3)。この低用量インビボ結果は、本明細書において示したインビトロデータと一致している。
【0231】
実施例11:インビボでの腫瘍におけるヘッジホッグ経路に対する本態様の化合物の効果
化合物1、2、4、および6が、インビボでヘッジホッグシグナル伝達経路の阻害によって腫瘍成長を抑制するかどうかを調べるために、Hh経路の重要な成分および直接標的遺伝子(例えば、Gli1、Gli2、Gli3、HHIPおよびサイクリンD1)の発現を、異種移植腫瘍から単離されたトータルRNAを使用して、定量的リアルタイムRT−PCRによって分析した。GAPDHは対照として役立った。合理的なサイズの腫瘍を有する各群の無作為に選択した2匹のマウス由来の「プールした」腫瘍を使用して、このRT−PCR分析を行った。メラノーマ腫瘍(MelJuso)において化合物1、2、4、および6によってHhシグナル伝達が阻害されたことがわかった(
図4)。結果を
図4に示し、ここで、Cは対照であり、Vはビヒクルである。
【0232】
実施例12:インビボでの腫瘍における古典的Wnt経路に対する本態様の化合物の効果
化合物1、2、4、および6が、インビボでWntシグナル伝達経路の阻害によって腫瘍成長を抑制するかどうかを調べるために、Wnt経路の重要な成分および直接標的遺伝子(例えば、Wnt2、Axin2、EGFR、およびサイクリンD1)の発現を、異種移植腫瘍から単離されたトータルRNAを使用して、定量的リアルタイムRT−PCRによって分析した。GAPDHは対照として役立った。合理的なサイズの腫瘍を有する各群の無作為に選択した2匹のマウス由来の「プールした」腫瘍を使用して、このRT−PCR分析を行った。古典的Wnt活性化の重要な指標の発現が、対照と比較して化合物1、2、および4で処置したメラノーマ腫瘍において有意に下方調節されたことがわかった(
図4)。結果を
図4に示し、ここで、Cは対照であり、Vはビヒクルである。
【0233】
実施例13:インビボ処置後のマウスにおける本態様の化合物の毒性分析
化合物1、2、4、および6の予備的インビボ毒性研究のように、処置後にマウスにおいて体重減少および白血球集団の変化が存在するかどうかを調べた。本明細書に記載のインビボ研究の完了時に、全処置群の各動物から白血球(WBC:白血球細胞、NE:好中球、LY:リンパ球、MO:単球、EO:好酸球、BA:好塩基球)を採取し、白血球集団を血球計数器によってカウントした。対照群(n=10)および処置群(n=10)の体重を、薬物投与の過程において、はかりを使用して測定した。顕著な白血球集団の変化または体重の減少は、投与化合物での処置後に観察されなかった(
図5および6)。追加の毒性研究において、マウスの体重に対する様々な用量の化合物4および6の効果を調べた。化合物を、6連続日の間、マウス(1投薬群当たりマウス3匹)へ3つの異なる用量:25、50、および100mg/kg体重で腹部に腹腔内注射した。一貫して、投与化合物での処置後、顕著な体重減少は観察されなかった(
図7)。
【0234】
実施例14:マウス中の様々な細胞に対する本態様の化合物の効果
インビボでの化合物1、2、4、および6の毒性を分析するために、各群(マウス3匹)に、6日間毎日、2つの用量の各化合物を腹腔内注射し、次いで、肝臓、脾臓、腎臓および心臓などの主要なマウス器官を、マウスから切除した。4%緩衝ホルムアルデヒド中に標本を固定し、パラフィン中に包埋し、切片化し、ヘマトキシンおよびエオシン(H&E)染色により組織学的分析を行った。化合物で処置したマウスからの器官において顕著な毒性は観察されなかった。結果を
図8〜11に示す。
【0235】
実施例15:癌細胞の処理における本態様の化合物および化学療法剤の相乗効果
本化合物といくつかの化学療法剤:エルロチニブ(Tarceva(登録商標))、PI3K阻害剤LY294002、TGFβ阻害剤SB431542、およびペメトレキセド(Alimta(登録商標))との組み合わせ処理を、ヒトNSCLCおよびMM細胞株において行った(
図12〜17)。全ての実験において、NSCLCおよびMM細胞株を、様々な用量の各化合物または組み合わせで72時間処理し、MTSアッセイを行い、細胞増殖を測定した。CalcuSynソフトウェア(UK、ケンブリッジ、Biosoft)によって計算された、コンビネーションインデックス(CI)を適用し、2つの化合物の組み合わせ効果の効果を示し、ここで、CI<1は相乗作用を示し、CI=1は相加効果を示し、CI>1は拮抗作用を示す。スチューデントt検定を統計分析のために適用した。組み合わせ処理はNSCLCおよびMM細胞の増殖を相乗的に抑制することができることがわかった。