(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046157
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】運動靴
(51)【国際特許分類】
A43B 5/00 20060101AFI20161206BHJP
A43B 13/14 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
A43B5/00 310
A43B13/14 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-541614(P2014-541614)
(86)(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公表番号】特表2014-533529(P2014-533529A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2012072322
(87)【国際公開番号】WO2013072260
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年8月5日
(31)【優先権主張番号】MI2011A002089
(32)【優先日】2011年11月17日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514118686
【氏名又は名称】エンリコ・カンパリ
【氏名又は名称原語表記】Enrico CAMPARI
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】エンリコ・カンパリ
【審査官】
青木 良憲
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−003006(JP,U)
【文献】
国際公開第2005/079616(WO,A1)
【文献】
実開昭58−014701(JP,U)
【文献】
特開昭58−097301(JP,A)
【文献】
実開昭51−095442(JP,U)
【文献】
実開昭59−150310(JP,U)
【文献】
特開2007−312856(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第2257616(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 5/00
A43B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動靴(1b)であって、
アッパー(2)と、少なくとも1つのスタッド(4b)を備えたソール(3b)とを含み、
上記少なくとも1つのスタッド(4b)が、そのスタッド自身の長手方向の軸(8)の周りの、上記少なくとも1つのスタッド(4b)の少なくとも一部の動きのための少なくとも1つの弾性変形可能要素(7)によって、その運動靴(1b)を着用しているスポーツ選手の方向転換、牽引および停止の動きに追従する態様で上記ソール(3b)に付けられ、
上記運動靴(1b)の使用中における上記少なくとも1つの弾性変形可能要素(7)の不測の破損および/または上記少なくとも1つのスタッド(4b)の分離を防ぐために、上記ソール(3b)と上記少なくとも1つのスタッド(4b)の内部に位置し、かつ上記少なくとも1つの弾性変形可能要素(7)を貫通する剥離防止要素(9)を備えた運動靴(1b)において、
上記少なくとも1つのスタッド(4b)は、
第1の端部(19)によって、また、ねじ込む手段によって把持されるようになっている外側輪郭を有する第2のディスク状部(20)によって形成され、
上記第2のディスク状部(20)から突出するネジ付きシャンク(21)を備え、
接地面側で上記ソール(3b)に付けられたネジ付き爪(22)の中へねじ込まれ、
上記弾性変形可能要素(7)は、上記第1の端部(19)と上記第2のディスク状部(20)との間に介挿されたディスク状要素(23)によって形成されていることを特徴とする運動靴。
【請求項2】
請求項1に記載の運動靴(1b)において、
上記剥離防止要素(9)は、上記第2のディスク状部(20)に付けられ、上記ディスク状要素(23)を貫通し、かつ上記第1の端部(19)に埋め込まれた端部(25)を備えたフレキシブルなケーブル(24)によって、形成されていることを特徴とする運動靴。
【請求項3】
請求項2に記載の運動靴(1b)において、
上記フレキシブルなケーブル(24)は鋼からなっていることを特徴とする運動靴。
【請求項4】
請求項2または3に記載の運動靴(1b)において、
上記端部(25)は放射状に拡張されていることを特徴とする運動靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、特にサッカー用などのための運動靴に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばサッカー、ラグビーのような、草で覆われた地形上でのランニングを含む多くのスポーツの訓練で、スポーツのアクティビティが進行中である間、望まれないスリップを防ぐように、スポーツ選手がソールと地面との間の優れた牽引力を有することを可能にする特別の靴の使用は、既知である。
【0003】
より具体的には、ソールの接地面側にスパイクあるいはスタッド(それらは、ソールに一体に固定された複数の剛スタッドからなる。)を有する運動靴は、既知である。
【0004】
このやり方では、スポーツ選手の重量は完全にそのようなスタッド上に放出され、それらのスタッドを地面に沈ませ、また、特に滑りやすい地形上であっても、スポーツ選手が停止、牽引動作、または方向転換をすることを可能にする。
【0005】
市場はスタッドを持った広範囲の運動靴を提供することができるけれども、そのような靴は、靴が地面と強く係合する特別の牽引条件の下では、スポーツ選手の運動エネルギがそのスポーツ選手の下肢の関節に放出され、筋肉疲労を起こし、そして、或る場合には怪我に変わる、という多少深刻な問題につながる共通の欠点を示す。
【0006】
より正確には、そのような従来の運動靴は、地面と靴の間の推進力を適切に吸収および/または放出することができないことによって、足首や膝の関節の捻挫、および/または、そのような関節に影響する靭帯構造の緊張を引き起こす場合がある。
【0007】
例えば、通常のスポーツのアクティビティ中のサッカー選手は、主として、高頻度で、時間をかけて繰り返される連続的な方向転換の態様で走ることによって移動する。それは、正に加速と停止のステップのように、高速で実行される同心および偏心のタイプの作業ステップを含む。
【0008】
十字靭帯は、捻り動作に最も敏感である膝の靱帯構造であるので、特に、前十字靭帯の中心位置と、膝の安定性におけるその機能を、側副靱帯と一緒に考えると、これらは、頻繁に応力、マイクロ外傷、病変、全断裂、それらを刺激するねじれ/屈曲動作によって誘発される全てのものに晒される。
【0009】
より具体的には、外側の回転を有する外反の外傷は、内側側副靭帯、後斜め靭帯と前十字靭帯に損傷を引き起こす可能性がある。
【0010】
さらに、内側の回転を有する内反の外傷は、前十字靭帯に損傷を引き起こす可能性があり、また、前外側と後外側莢膜−靱帯損傷を引き起こす可能性がある。
【0011】
より正確には、前十字靱帯は、異なる長さと方向を有する繊維の束の洗練された構造によって、屈曲伸展の骨四肢の転がりと滑り運動を補助し、かつ、積極的に脚の屈曲および伸展の両方において回転運動を制御することにより、回転中に膝の安定性を維持するために、膝関節の矢状面と前頭面に安定性を提供する。
【0012】
前十字靱帯は、さらに、脛骨がロックされているとき、その逆に、大腿骨がロックされ脛骨が可動であって負荷によって応力を加えられているとき、脛骨の過度の前方並進運動と脛骨に対する大腿骨の同調を妨げる。
【0013】
前十字靱帯への外傷は、ほとんどの場合、脛骨がロックされ大腿骨が可動である動作によって引き起こされる。それにより、一般的に「地面に植えられた足」と呼ばれる動作を実行する。
【0014】
そのような外傷は、屈曲および伸展の両方に、大腿四頭筋の収縮に起因した十字靭帯に依存する指数関数的で連続的な係合があるという事実のせいである。
【0015】
そのような欠点を克服するために、近年、運動靴に適用され、前述の停止、牽引および/または方向転換のステップの間に放出される仕事を少なくとも部分的に吸収することが可能である減衰システムが考案された。
【0016】
より正確には、そのような減衰システムは、ソールとスタッドとの間に弾性変形可能な材料を介在させることからなる。
【0017】
このやり方では、停止、牽引および/または方向転換のステップの間に放出される仕事は、そのような弾性変形可能な材料によって吸収される。それにより、スポーツ選手の関節が保護される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そのような減衰システムを備えた従来の運動靴にも、欠点がなくもない。それらの欠点の中には、特別の重い条件の下では、弾性変形可能な材料が受ける切断及び屈曲力は、その材料が剥離することにつながり、その材料が付けられているスタッドの損失につながる、という事実がある。
【0019】
この発明の目標は、特にサッカー用などのための運動靴であって、スポーツ実施時にスポーツ選手が要求する靴と地面との間の牽引の本質的な認識を、靴を履いているスポーツ選手から奪うことなく、下肢の関節系全体の怪我を防止および回避でき、とりわけその靴が受ける連続的な応力に耐えることができるものを提供することにある。
【0020】
この目標内で、本発明の目的は、スポーツ選手の下肢の運動の運動学における安定性を改善する運動靴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目標およびこれらの目的および以下により明白になるその他の目的は、
運動靴であって、
アッパーと、少なくとも1つのスタッドを備えたソールとを含み、
上記少なくとも1つのスタッドが、そのスタッド自身の長手方向の軸の周りの、上記少なくとも1つのスタッドの少なくとも一部の動きのための少なくとも1つの弾性変形可能要素によって、その運動靴を着用しているスポーツ選手の方向転換、牽引および停止の動きに追従する態様で上記ソールに付けら
れ、
上記運動靴の使用中における上記少なくとも1つの弾性変形可能要素の不測の破損および/または上記少なくとも1つのスタッドの分離を防ぐために、上記ソールと上記少なくとも1つのスタッドの内部に位置し、かつ上記少なくとも1つの弾性変形可能要素を貫通する剥離防止要素を備えた
運動靴において、
上記少なくとも1つのスタッドは、
第1の端部によって、また、ねじ込む手段によって把持されるようになっている外側輪郭を有する第2のディスク状部によって形成され、
上記第2のディスク状部から突出するネジ付きシャンクを備え、
接地面側で上記ソールに付けられたネジ付き爪の中へねじ込まれ、
上記弾性変形可能要素は、上記第1の端部と上記第2のディスク状部との間に介挿されたディスク状要素によって形成されていることを特徴とする運動靴
によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明のさらなる特徴および利点は、特にサッカー用などのための、本発明に従う運動靴
の好ましい(しかし、排他的ではない)実施形態
および3つの参考例の説明からよりよく明らかになるであろう。それらは、非限定的な例の目的のために添付の図面に示されている。
【
図1】
図1は、特にサッカー用などのための運動靴の概略側面図である。それは、本発明によって提案された
1つの実施形態
および3つの参考例のすべての特徴を有している。
【
図3】
図3は、
第1参考例の運動靴
の、外部応力を受けていないスタッドの細部の断面図である。
【
図4】
図4は、外部応力を受けている
図3に示されたスタッドの細部の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明に従う運動靴の
実施形態の、外部応力を受けていないスタッドの細部の断面図である。
【
図6】
図6は、外部応力を受けている
図5に示されたスタッドの細部の断面図である。
【
図7】
図7は、外部応力を受けている
図5に示されたスタッドの細部の断面図である。
【
図8】
図8は、
第2参考例の運動靴
の、外部応力を受けていないスタッドの細部の断面図である。
【
図9】
図9は、外部応力を受けている
図8に示されたスタッドの細部の断面図である。
【
図10】
図10は、
第3参考例の運動靴
の、外部応力を受けていないスタッドの細部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図を参照して、特にサッカー用などのための運動靴は、アッパー2と、スタッド4a,4b,4cまたは4dが設けられているソール3a,3b,3cまたは3dとを備えている。それらは、参照数字1a,1b,1cおよび1dを持つ提案された
1つの実施形態
および3つの参考例で一般的に指定されている。
【0024】
より具体的には、
1つの実施形態
および3つの参考例で、アッパー2は、ひも5又は引き剥がし閉鎖システムによって閉じることができる前面開口部を有することができ、また、側面および前面(そこではボールとの衝突が起こる)の補強材6を備えることができる。
【0025】
便宜的に、以下に一層よく説明されるように、運動靴1a,1b,1cまたは1dを着用しているスポーツ選手の方向転換の動作、牽引および停止に追従する態様で、各スタッド4a,4b,4cまたは4dは、そのスタッド自身の長手方向の軸8の周りの、少なくとも1つのスタッド4a,4b,4cまたは4dの少なくとも一部の動きのための、少なくとも1つの弾性変形可能要素7を介して、それぞれのソール3a,3b,3cまたは3dに付けられている。
【0026】
上記1つの実施形態および3つの参考例は、ソール3a,3b,3cまたは3dおよびスタッド4a,4b,4cまたは4dの内側にあり、かつ実質的に長手方向の軸8に沿って弾性変形可能要素7を貫通している剥離防止要素9を有する。運動靴1a,1b,1cまたは1dの使用中に、偶発的なその破損および/またはスタッド4a,4b,4cまたは4dの分離を防止するためである。
【0027】
特に、
図3および
図4を参照して、
第1参考例では、運動靴1aにおいて、弾性変形可能要素7は、カラー要素10によって形成されている。上記カラー要素は、このカラー要素の軸方向の両端に、2つの放射状フランジ11および12を有している。
【0028】
より正確には、カラー要素10は、貫通孔13によって、ソール3aの一方の側から他方の側へ通っている。この貫通孔はソール3a内に形成されて、その結果、ソール3aが2つの放射状フランジ11および12の間に介在したままになっている。
【0029】
この態様では、運動靴1a内に配置された放射状フランジ11は区画14内に収容されたままになっている。この区画は、運動靴1aの補償ミッドソール15内に形成されている。また、ソール3aの接地面側に配置された放射状フランジ12は、錐台状のスタッド4aに付けられている。
【0030】
剥離防止要素9を考察すると、この
第1参考例では、これはネジ16によって形成されている。そのネジは、インナーソール18を除去して、放射状フランジ11の側でカラー要素10に挿入されており、また、スタッド4a内に形成されたそれぞれのネジ穴17にねじ込まれている。
【0031】
違った態様では、特に
図5〜
図7を参照して、提案された
実施形態では、運動靴1bにおいて、スタッド4bは、錐台状である第1の端部19によって、また、ねじ込む手段(例えば六角棒スパナ)によって係合されるようになっている外側輪郭を有する第2のディスク状部20によって、形成されている。
【0032】
より正確には、スタッド4bは、第2のディスク状部20から突出するネジ付きシャンク21を備え、接地面側でソール3bに付けられたネジ付き爪22の中へねじ込まれている。
【0033】
弾性変形可能要素7および剥離防止要素9を考察すると、これらは、それぞれ、第1の端部19と第2のディスク状部20との間に介挿されたディスク状要素23によって、また、第2のディスク状部21に付けられ、実質的に長手方向の軸8に沿ってディスク状要素22を貫通し、かつ第1の端部19に埋め込まれた端部25を備えたフレキシブルなケーブル24によって、形成されている。
【0034】
より正確には、端部25は、放射状に拡張された形状の構造を有し、実質的に球状である。また、フレキシブルなケーブル24は鋼からなっている。
【0035】
特に
図8および
図9を参照して、
第2参考例では、運動靴1cにおいて、スタッド4cは、錐台状である第1の端部26によって、また、ソール3cと一体である第2のディスク状部27によって、形成されている。
【0036】
上記実施形態と同様に、弾性変形可能要素9および剥離防止要素7は、それぞれ、第1の端部26と第2のディスク状部27との間に介挿されたディスク状要素28によって、また、第2のディスク状部27に付けられ、実質的に長手方向の軸8に沿ってディスク状要素28を貫通し、かつ第1の端部26に埋め込まれた端部25を備えたフレキシブルなケーブル24によって、形成されている。
【0037】
より正確には、端部25は、放射状に拡張された形状の構造を有し、実質的に球状である。また、フレキシブルなケーブル24は鋼からなっている。
【0038】
特に
図10および
図11を参照して、
第3参考例では、運動靴1dにおいて、スタッド4dは、弾性変形可能な材料からなる内側部分30によって、また、錐台状であり、剛性材料からなり、且つねじ込む手段(例えば六角棒スパナ)によって係合されるようになっている外側輪郭31によって、形成されている。
【0039】
弾性変形可能要素7は、外側輪郭31とソール3dとの間に介挿されたディスク状要素32によって形成されている。
【0040】
剥離防止要素9を考察すると、これはピン33によって形成されている。このピンは、一端に、スタッド4dの内側部分30に埋め込まれた球状ヘッド34を有し、他端に、外側輪郭31から突出し、実質的に長手方向の軸8に沿ってディスク状要素32を貫通し、かつ接地面側でソール3dに付けられたネジ付き爪36の中へねじ込まれたネジ付きシャンク35を備えている。
【0041】
運動靴1a,1b,1cおよび1dの動作は次の通りである。
【0042】
第1参考例1aでは、
図1に示すように、スタッド4aがソール3aに対する外部横応力を受けた場合、スタッド4aは横に傾くことを強いられ、したがって、ネジ16も傾くことを強いられる。それらは、弾性変形することによって、スポーツ選手の運動エネルギの一部を吸収し、したがって彼/彼女を怪我から守る。
【0043】
違った態様で、
実施形態1bおよび
第2参考例1cでは、スタッド4bおよび4cが外部横応力を受けた場合、それらは回転する傾向があり、したがって、それぞれのディスク状要素23および28を変形させる。
【0044】
スタッド4bおよび4cとそれぞれのディスク状要素22または27との間の保持は、破損することなく変形するフレキシブルなケーブル24によって保証される。
【0045】
特に
図7を参照して、圧縮応力のみの場合には、フレキシブルなケーブル24は、湾曲し、その後、応力が終了した場合に、ストレートの形態をとるように戻ることができる。
【0046】
同様に、
図11を参照して、
第3参考例1dでは、スタッド4dは、それが外部横応力を受けた場合、ジョイントとして働くピン33の球状ヘッド34の周りに回転する傾向がある。
【0047】
そのような回転中に、ディスク状要素32は弾性変形し、スポーツ選手の運動エネルギの一部を吸収し、したがって彼/彼女を怪我から守る。
【0048】
実際に、提案された
1つの実施形態
および3つの参考例で、スタッド4a,4b,4cおよび4dは、弾性変形可能要素7のおかげで、運動靴1a,1b,1cおよび1dがスポーツ選手の方向転換に伴うことを可能にし、したがって、彼/彼女の動きをより自然かつ調和のとれたものにする。
【0049】
より正確には、方向転換時の選手の平衡と推進力は、足の第1中足骨に局在している。この領域におけるスタッド4a,4b,4cおよび4dの位置は、多方向運動における運動選手のためのより良い安全性に都合が良い。しかし、とりわけ、それは、スポーツ選手によって地面に及ぼされる力の調節可能性との良好な協調を維持しながら、方向転換で発生する負の摩擦力に対してスポーツ選手がより良く反応することを可能にする。または、その逆も正しい。
【0050】
十分な安定性および最大の協調をもって方向転換を達成することは、関わっている力を能力と予防に有利に最適化することを意味する。
【0051】
実際に、特にサッカー用などのための本発明に従う運動靴は、構造の弱化を受けることなく、足の正しい安定性を保証することによって、怪我の危険を減少させることを可能にするという点で、意図された目標および目的を完全に達成するということが分かってきた。
【0052】
より詳しくは、任意の方向転換の回転ステップにおいて、上記スタッドの又は少なくともその一部の弾性変形能は、大腿骨と脛骨との間の回転運動における回転角を減少させ、また、前十字靱帯に加わる負荷および膝関節に加わる捻り応力を制限するように、足首の回転角度を減少させる。
【0053】
地面に対する靴の回転は、体の軸のより良い安定性を維持することを可能にし、動きにより良い方向性および安全性を与える。
【0054】
さらに、膝関節の回転中に、本発明に従うスタッドの助けを借りて、脛骨のロックが低減される。したがって、大腿骨によって誘導される回転運動に追従することがより自由になる。また、最も頻繁に膝関節への間接的な外傷をもたらす状態(それは、脛骨がロックされ、大腿骨が可動で、地面に植えられた足を有することにある。)で終わることを回避させる。
【0055】
さらに、方向転換では、荷重点は足の前−内側の第1中足骨であるという事実を考慮すると、この推進力領域に配置された本発明に従うスタッドは、そのスタッドの弾性変形能によって、進行の有効な方向に向けられる動きを可能にする。
【0056】
実質的な怪我を含む怪我の予防に関して、本発明に従うスタッドは、正しい随意筋応答を生ずるためのスポーツ選手の応答時間を短縮できるという点で、有効な怪我予防要素である。したがって、前十字靱帯が破損されるべき時間を減少させる。
【0057】
本発明に従う運動靴の別の利点は、その運動靴が支援中の足の支点の正確な安定性、さらに、地面に対して停止し、牽引する時の両方で、方向変換とグリップのステップにおけるスポーツ選手の平衡を保証することにある。
【0058】
本発明に従う運動靴の別の利点は、その運動靴がスポーツ選手の足と地面との間の摩擦を減少させる。したがって、急停止後の再スタート時に、スタッドの弾性変形可能部分の弾性復帰が利用されるという点で、エネルギ節約にかなり寄与する。
【0059】
より正確には、弾性変形可能なスタッドを持つ靴は、足の生体力学的支点が推進力の点の近くに、すなわち、以前のストロークの方向にではなく、方向転換の方向に移動されるという点で、スポーツ選手の総合的能力を改善する。
【0060】
さらに、身体の回転移動を実行し、かつ方向転換を完了する時間は、従来のタイプのスタッドを有する靴による場合よりも相当に低い。したがって、スポーツ選手の能力水準を押し上げる。
【0061】
このように考案された、特にサッカー用などのための運動靴は、多数の修正および変形の余地がある。それらの全ては、添付のクレームの範囲内にある。
【0062】
さらに、全ての細部は、他の、技術的に等価な要素によって置換され得る。
【0063】
実際上、使用された材料(それらは特定の用途、および条件付きの寸法・形状に適合すると仮定された)は、要求および従来の技術に応じて任意であってもよい。
【0064】
イタリア国特許出願No.MT2011A002089中の開示(それに基づいて本願が優先権を主張する)は、参照によって、本明細書に組み込まれる。
【0065】
任意のクレームで言及された技術的特徴に参照記号が続いている場合、それらの参照記号は、クレームの明瞭度を増加させる目的のみのために含まれている。
そのような参照記号は、そのような参照符号によって一例として識別される各要素の解釈にいかなる限定的影響を及ぼさない。
【0066】
なお、次の事項は、本願の開示範囲内にある。
[項目1]
特にサッカー用などのための運動靴(1a,1b,1c,1d)であって、
アッパー(2)と、少なくとも1つのスタッド(4a,4b,4c,4d)を備えたソール(3a,3b,3c,3d)とを含み、
上記少なくとも1つのスタッド(4a,4b,4c,4d)が、そのスタッド自身の長手方向の軸(8)の周りの、上記少なくとも1つのスタッド(4a,4b,4c,4d)の少なくとも一部の動きのための少なくとも1つの弾性変形可能要素(7)によって、その運動靴(1a,1b,1c,1d)を着用しているスポーツ選手の方向転換、牽引および停止の動きに追従する態様で上記ソール(3a,3b,3c,3d)に付けられている運動靴において、
上記運動靴(1a,1b,1c,1d)の使用中における上記少なくとも1つの弾性変形可能要素(7)の不測の破損および/または上記少なくとも1つのスタッド(4a,4b,4c,4d)の分離を防ぐために、上記ソール(3a,3b,3c,3d)と上記少なくとも1つのスタッド(4a,4b,4c,4d)の内部に位置し、かつ上記少なくとも1つの弾性変形可能要素(7)を貫通する剥離防止要素(9)を備えたことを特徴とする運動靴。
[項目2]
項目1に記載の運動靴(1a)において、
上記少なくとも1つの弾性変形可能要素(7)はカラー要素(10)によって形成され、
上記カラー要素は、このカラー要素の軸方向の両端に、2つの放射状フランジ(11,12)を有し、
上記カラー要素(10)は、貫通孔(13)によって、上記ソール(3a)の一方の側から他方の側へ通っており、この貫通孔は上記ソール(3a)内に形成されて、その結果、上記ソール(3a)が2つの放射状フランジ(11)および(12)の間に介在したままになっており、
上記運動靴(1a)内に配置された上記放射状フランジ(11)は区画(14)内に収容され、この区画は、上記運動靴(1a)の補償ミッドソール(15)内に形成され、また、上記ソール(3a)の接地面側に配置された上記放射状フランジ(12)は、上記少なくとも1つのスタッド(4a)に付けられていることを特徴とする運動靴。
[項目3]
項目1に記載の運動靴(1a)において、
上記剥離防止要素9は、ネジ16によって形成され、そのネジは、上記運動靴(1a)の内部に配置された上記放射状フランジ(11)の側から上記カラー要素(10)内に挿入されており、また、上記少なくとも1つのスタッド(4a)内に形成されたそれぞれのネジ穴(17)にねじ込まれていることを特徴とする運動靴。
[項目4]
項目1に記載の運動靴(1b)において、
上記少なくとも1つのスタッド(4b)は、
第1の端部(19)によって、また、ねじ込む手段によって把持されるようになっている外側輪郭を有する第2のディスク状部(20)によって形成され、
上記第2のディスク状部(20)から突出するネジ付きシャンク(21)を備え、
接地面側で上記ソール(3b)に付けられたネジ付き爪(22)の中へねじ込まれ、
上記弾性変形可能要素(7)は、上記第1の端部(19)と上記第2のディスク状部(20)との間に介挿されたディスク状要素(23)によって形成されていることを特徴とする運動靴。
[項目5]
項目1に記載の運動靴(1c)において、
上記少なくとも1つのスタッド(4c)は、
第1の端部(26)によって、また、上記ソール(3c)と一体である第2のディスク状部(27)によって形成され、
上記弾性変形可能要素(7)は、上記第1の端部(26)と上記第2のディスク状部(27)との間に介挿されたディスク状要素(28)によって形成されていることを特徴とする運動靴。
[項目6]
項目4または5に記載の運動靴(1b,1c)において、
上記剥離防止要素(9)は、上記第2のディスク状部(20,27))に付けられ、上記ディスク状要素(23,28)を貫通し、かつ上記第1の端部(19,26)に埋め込まれた端部(25)を備えたフレキシブルなケーブル(24)によって、形成されていることを特徴とする運動靴。
[項目7]
項目6に記載の運動靴(1b,1c)において、
上記フレキシブルなケーブル(24)は鋼からなっていることを特徴とする運動靴。
[項目8]
項目6または7に記載の運動靴(1b,1c)において、
上記端部(25)は放射状に拡張されていることを特徴とする運動靴。
[項目9]
項目1に記載の運動靴(1d)において、
上記少なくとも1つのスタッド(4d)は、
弾性変形可能な材料からなる内側部分(30)によって、また、剛性材料からなり、且つねじ込む手段によって係合されるようになっている外側輪郭(31)によって、形成されており、
上記少なくとも1つの弾性変形可能要素(7)は、上記外側輪郭(31)と上記ソール(3d)との間に介挿されたディスク状要素(32)によって形成されていることを特徴とする運動靴。
[項目10]
項目9に記載の運動靴(1d)において、
上記剥離防止要素(9)は、ピン(33)によって形成され、このピンは、一端に、上記少なくとも1つのスタッド(4d)の上記内側部分(30)に埋め込まれた球状ヘッド(34)を有し、他端に、外側輪郭(31)から突出し、上記ディスク状要素(32)を貫通し、かつ接地面側で上記ソール(3d)に付けられたネジ付き爪(36)の中へねじ込まれたネジ付きシャンク(35)を備えたことを特徴とする運動靴。