(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の飛翔害虫捕獲器において、止まり木効果を与えるとされている突出部は、蓋の一部を上方に膨出させて角型形状に露出させたものである。このため、突出部に飛翔害虫が止まったとしても、その飛翔害虫は周囲から視認され易く、人の気配等を感じると逃げてしまう虞がある。また、突出部のうち飛翔害虫が止まり易い先端部と、飛翔害虫が侵入する開口部とが離れているため、突出部の先端付近に飛翔害虫が止まった場合、その飛翔害虫を開口部までスムーズに導くことができるとは限らない。さらに、飛翔害虫が侵入する開口部は、突出部を中心として、その周囲に同形状のものが対称に配置されている。このため、開口部から放出される誘引成分の拡散状態に変化をもたせることができず、単調で画一的な拡散となり易くなり、その結果、飛翔害虫の誘引効果が持続しない可能性がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、特に、飛翔害虫捕獲器の誘引口の形状に着目することで、ショウジョウバエ、ノミバエ、クロバネキノコバエ、キノコバエ、チョウバエ等のコバエ類に代表される飛翔害虫に対して、優れた誘引効果を発揮することができる飛翔害虫捕獲器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明に係る飛翔害虫捕獲器の特徴構成は、
内部の誘引成分を外部に揮散させて飛翔害虫を捕獲する飛翔害虫捕獲器であって、
前記飛翔害虫を内部に誘引する複数の誘引口が形成された蓋部と、
前記誘引成分を含有する薬剤部を収納するとともに、前記複数の誘引口から内部に侵入した飛翔害虫を溜めるトレイ部と、
を備え、
前記複数の誘引口は、その
60%以上が
重ね合わせたときに完全一致しない形状を有することにある。
【0008】
本構成の飛翔害虫捕獲器は、蓋部に複数の誘引口を形成し、さらに、その
60%以上の誘引口の形状は
重ね合わせたときに完全一致しないものとした。これにより、飛翔害虫捕獲器の内部に収納した薬剤部から誘引成分を、誘引口を介して外部に揮散させるとき、誘引成分は誘引口の形状の違いにより複雑に拡散することになる。従って、様々な環境において、様々なパターンで飛び交う飛翔害虫に誘引成分を到達させ易くなり、その結果、飛翔害虫を効果的且つ持続的に飛翔害虫捕獲器に誘引することが可能となる。
【0009】
本発明に係る飛翔害虫捕獲器において、
前記複数の誘引口は、上面視で前記蓋部の中心に対してランダムな位置に形成されていることが好ましい。
【0010】
本構成の飛翔害虫捕獲器によれば、蓋部に形成される複数の誘引口を上面視でランダムに配置することにより、誘引口からの誘引成分の拡散状態がより複雑になるため、誘引成分を広範囲に拡散させることができ、飛翔害虫捕獲器への飛翔害虫の誘引効果をより向上させることができる。
【0011】
本発明に係る飛翔害虫捕獲器において、
前記複数の誘引口は、上面視で前記蓋部の中心に対して点対称となる位置に形成されていることが好ましい。
【0012】
本構成の飛翔害虫捕獲器によれば、蓋部に形成される複数の誘引口を点対称に配置することにより、誘引口からの誘引成分の拡散量を一定の規則で異ならせることができるため、誘引成分の拡散状態がコントロールし易いものとなる。
【0013】
本発明に係る飛翔害虫捕獲器において、
前記蓋部は、前記複数の誘引口の高さ位置を異ならせる段部を有することが好ましい。
【0014】
本構成の飛翔害虫捕獲器によれば、蓋部に段部を設けることで、複数の誘引口が段状に配置されることになるので、飛翔害虫捕獲器の通気性が高まるとともに気流の通路が複雑になる。その結果、薬剤部から揮散した誘引成分の拡散が促進され、飛翔害虫の誘引効果をさらに向上させることができる。
【0015】
本発明に係る飛翔害虫捕獲器において、
前記蓋部は、光を反射可能な傾斜部を備えることが好ましい。
【0016】
本構成の飛翔害虫捕獲器によれば、蓋部の傾斜部が光を反射することで、蓋部を飛翔害虫に確実に視認させることができるので、飛翔害虫を誘引口が形成された蓋部の方に効果的に誘引することが可能となる。
【0017】
本発明に係る飛翔害虫捕獲器において、
前記トレイ部は、少なくとも一部が前記薬剤部と接触する帯状突起部を有することが好ましい。
【0018】
本構成の飛翔害虫捕獲器によれば、飛翔害虫が蓋部の複数の誘引口から侵入すると、その飛翔害虫はトレイ部に設けた帯状突起部を伝って薬剤部に導かれる。このように、帯状突起部を設けることで、捕獲した飛翔害虫を薬剤部が設置されているトレイ部の深い位置まで確実に導くとともに、薬剤部に到達して死滅した飛翔害虫をトレイ部に溜めておくことができる。
【0019】
本発明に係る飛翔害虫捕獲器において、
前記トレイ部を高さ方向に複数個重ねた場合に、前記帯状突起部の上端が係合する凹部が前記トレイ部の外側面に形成されていることが好ましい。
【0020】
本構成の飛翔害虫捕獲器によれば、トレイ部を高さ方向に複数個重ねたとき、トレイ部に設けた帯状突起部の上端が、その上に重ねたトレイ部の外側面に形成した凹部と係合し、空間容積をコンパクト化することができる。その結果、製品の保管及び搬送時の積載効率が向上する。
【0021】
本発明に係る飛翔害虫捕獲器において、
前記トレイ部は、透明ないし半透明に構成されていることが好ましい。
【0022】
本構成の飛翔害虫捕獲器によれば、飛翔害虫が溜まるトレイ部の内側を外側から確実に視認することができるので、誘引効果の確認や取り換え時期の把握が容易となり、取り扱いが容易な飛翔害虫捕獲器とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の飛翔害虫捕獲器に関する実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0025】
<飛翔害虫捕獲器の構造>
図1は、本発明の実施形態に係る飛翔害虫捕獲器100の斜視図である。飛翔害虫捕獲器100は、様々な飛翔害虫(特に、コバエ類)を捕獲し、防除するために使用するものであり、トレイ部10及び蓋部20を備えている。以下、トレイ部10及び蓋部20について、詳細に説明する。
【0026】
〔トレイ部〕
図2は、飛翔害虫捕獲器100の下部を構成するトレイ部10の斜視図である。トレイ部10は、飛翔害虫の死骸を蓄えるカップ形状の容器である。
図2に示すように、トレイ部10は、その内側底部又はその近傍に後述する薬剤部30が設置され、薬剤部30に保持された薬剤に含まれる殺虫成分によって飛翔害虫を死滅させるように構成されている。トレイ部10には、薬剤部30を略中央に位置決めするための配置部材11が設けられている。本実施形態では、薬剤部30の側面を4つの配置部材11で規制することで、薬剤部30がトレイ部10の略中央に配置される。4つの配置部材11の間に薬剤部30をセットした後、配置部材11の上に固定パーツ(図示せず)が装着され、薬剤部30が固定される。なお、薬剤部30の固定には、配置部材11及び固定パーツの代わりに、薬剤部30の中央を貫通する棒状の部材や、薬剤部30を挟持するクランプ等を採用することも可能である。
【0027】
トレイ部10には、後述する蓋部20を着脱するためのフランジ部12が設けられている。新品状態では、フランジ部12に、例えば、アルミニウム膜と樹脂膜とを積層してなるバリアフィルム(図示せず)が貼着されて内部が密封されており、薬剤部30に含まれる薬剤の乾燥を防止している。使用時には、フランジ部12からバリアフィルムを剥がして、内部を露出させた状態で蓋部20と嵌合させる。
【0028】
トレイ部10の内側側面には、飛翔害虫を薬剤部30に導くための帯状突起部13が設けられている。本実施形態では、帯状突起部13は、トレイ部10の内側側面に等間隔で4箇所設けられている。一つの帯状突起部13のサイズは、幅3〜10mm、厚さ0.5〜3mm、長さ10〜30mm程度に設定される。夫々の帯状突起部13は、フランジ部12から配置部材11の根元付近までの範囲に亘って設けられる。薬剤部30は、夫々の帯状突起部13の少なくとも一部と接触するように設置される。飛翔害虫捕獲器100の内部に侵入した飛翔害虫は、帯状突起部13を伝いながら、下方の薬剤部30に向かって移動する。そして、帯状突起部13と薬剤部30とが接触する位置又はその付近まで到達すると、薬剤に含まれる殺虫成分の作用により飛翔害虫は死滅する。このように、帯状突起部13をトレイ部10の内側側面に設けておくことにより、捕獲した飛翔害虫を薬剤部30が設置されているトレイ部10の深い位置まで確実に導くとともに、薬剤部30に到達して死滅した飛翔害虫をトレイ部10に溜めておくことができる。
【0029】
トレイ部10に設置される薬剤部30は、上述のように、染み込ませた薬剤に含まれる誘引成分を外部に揮散させて飛翔害虫を飛翔害虫捕獲器100の内部に誘引するとともに、誘引した飛翔害虫に対して薬剤に含まれる殺虫成分を接触又は摂取させることにより死滅させる。薬剤部30は、吸収性の担体に薬剤を染み込ませたものである。担体には、例えば、パルプ不織布やフェルトを使用することができる。担体を肉厚にするために、薄手のパルプ不織布やフェルトを複数枚積層しても構わない。パルプ不織布やフェルトは、形状を保持しつつ、薬剤を効率良く吸収するために、スパンレース法で表面にウェブを形成したり、エンボス加工を施したりすることができる。パルプ不織布やフェルトの代わりに、液体を吸収可能なスポンジ、紙、繊維集合体等で薬剤部30の担体を構成しても構わない。あるいは、液体の誘引成分及び殺虫成分を混合してゲル状に固めたものを薬剤部30として使用しても構わない。薬剤には、飛翔害虫をトレイ部10の内部に侵入させるための誘引剤と、飛翔害虫を死滅させる殺虫剤とが含まれている。誘引剤としては、例えば、バルサミコ酢、リンゴ酢、米酢、玄米酢、粕酢、大豆酢、黒酢、ワインビネガー、すだち酢、赤酢、柿酢、麦芽酢、紫イモ酢、サトウキビ酢等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用することができる。これらの誘引剤のうちバルサミコ酢は、飛翔害虫に対する誘引効果が優れているため、特に好ましい。殺虫剤としては、例えば、アレスリン、プラレトリン、イミプロトリン、フタルスリン、トランスフルトリン、レスメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、サイパーメスリン、エトフェンプロックス、シフルスリン、デルタメスリン、ビフェントリン、フェンバレレート、フェンプロパスリン、エムペンスリン、シラフルオフェン、メトフルトリン、プロフルトリン、天然ピレトリン、除虫菊エキス等のピレスロイド系化合物、カルバリル、プロポクスル、メソミル、チオジカルブ等のカーバメート系化合物、フェニトロチオン、ダイアジノン、マラソン、ピリダフェンチオン、プロチオホス、ホキシム、クロルピリホス、ジクロルボス等の有機リン系化合物、メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系化合物、フィプロニル等のフェニルピラゾール系化合物、アミドフルメト等のスルホンアミド系化合物、ジノテフラン、イミダクロプリド等のネオニコチノイド系化合物、メトプレン、ハイドロプレン、ピリプロキシフェン等の昆虫成長制御化合物等が挙げられ、これらを単独又は混合して使用することができる。これらの殺虫剤のうち、ネオニコチノイド系化合物であるジノテフランは、飛翔害虫に対する忌避性が小さく、誘引剤の誘引作用を阻害しないため、特に好ましい。薬剤には、上記の誘引剤及び殺虫剤に加えて、例えば、酒類、酒粕、糖類、果実、果実加工品、乳酸製品、魚介類、魚介類加工品、魚介類抽出物、食肉、食肉加工品、食肉抽出物、香料等の他の誘引剤を含んでいても構わない。さらに、グリセリン等の脂肪族多価アルコール、ソルビトール等の糖アルコール、キサンタンガム等の増粘多糖類等の保湿成分を含ませれば、長期に亘って薬剤の効能を発揮させることができる。
【0030】
トレイ部10と蓋部20とは着脱可能に構成されているため、必要に応じて、蓋部20を取り外し、トレイ部10の内部の薬剤部30を取り替えることや、トレイ部10の内部に誘引されて死滅した飛翔害虫の死骸を取り出すことが可能である。トレイ部10の水平方向の断面は、台所や居間等の生活空間に設置し易いように矩形、円形等に構成されるが、不定形でも構わない。トレイ部10の底面積は、飛翔害虫捕獲器100を目立たせることなく設置できるように、10〜100cm
2程度に設定される。また、トレイ部10の深さを1〜10cm程度にすれば、薬剤部30を確実に設置しつつ、安定性が良好となる。トレイ部10は、熱可塑性樹脂を用いた射出成型、真空成型、膨出成型、ブロー成型等によりカップ形状に形成される。
【0031】
トレイ部10の外側面には、帯状突起部13が係合する凹部14が形成されている。凹部14は、トレイ部10の積載効率を向上させるために設けられるものである。カップ形状のトレイ部10を大量に製造し、それらを高さ方向に積み重ねると、トレイ部1
0に設けた帯状突起部13の上端が、その上に重ねたトレイ部10の外側面に形成した凹部14と係合する。このため、複数のトレイ部10をコンパクトに積載することができるようになり、製品の保管及び搬送時の積載効率が向上する。
【0032】
トレイ部10は、透明ないし半透明に構成されていることが好ましい。この場合、飛翔害虫が溜まるトレイ部10の内側を外側から確実に視認することができるので、例えば、誘引効果の確認や取り換え時期の把握が容易となり、取り扱いが容易な飛翔害虫捕獲器100とすることができる。トレイ部10を透明ないし半透明に構成するためには、例えば、トレイ部10の素材として、ポリプロピレン樹脂、PET樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の無色の材料を使用する。あるいは。トレイ部10の肉厚を薄く形成し、内側が透けて見えるようにしても構わない。
【0033】
〔蓋部〕
図3は、トレイ部10に蓋部20を取り付けた飛翔害虫捕獲器100の側面図である。
図4は、飛翔害虫捕獲器100の側断面図である。
図5は、蓋部20側から見た飛翔害虫捕獲器100の平面図である。蓋部20は、外気を飛翔害虫捕獲器100の内部に導入し、薬剤部30から誘引成分を外部に拡散させることにより、飛翔害虫を誘引する。また、蓋部20は、トレイ部10に収容した薬剤部30が露出することを防止する。
図3に示すように、蓋部20は、飛翔害虫を誘引する誘引構造部21と、トレイ部10のフランジ部12と係合する接続部22とを備えている。蓋部20は、熱可塑性樹脂を用いた射出成型、真空成型、膨出成型、ブロー成型等により形成され、
図4に示すように、誘引構造部21と接続部22とが一体となった中空構造体として構成される。
【0034】
図5に示すように、誘引構造部21は、飛翔害虫を飛翔害虫捕獲器100の内部に誘引する複数の誘引口23を備えている。本発明では、薬剤部30に含まれる誘引成分を、誘引口23を通して外部に効率よく揮散させるため、
図4に示すように、誘引構造部21を高さの異なる4つの段部21a〜21dで構成し、各段部21a〜21dに誘引口23a〜23eを形成している。なお、
図4は、飛翔害虫捕獲器100の中央(
図5の点P)を通る側断面図であるため、段部21cに誘引口は現れていないが、実際には段部21cに誘引口23c及び23dが形成されている。本実施形態では、段部21a〜21cを順に低くなるように隣接して設け、段部21dを段部21aの反対側に設けている。そして、段部21aに誘引口23a、段部21bに誘引口23b、段部21cに誘引口23c及び23d、段部21dに誘引口23eを夫々形成している。このように、複数の誘引口23を段状に配置すると、飛翔害虫捕獲器100の通気性が高まるとともに気流の通路が複雑になるため、薬剤部30から揮散した誘引成分の拡散が促進され、その結果、飛翔害虫の誘引効果を向上させることができる。
【0035】
各段部21a〜21dに形成された誘引口23a〜23eは、半数以上が互いに異なる形状を有する。「互いに異なる形状」とは、重ね合わせたときに完全一致しない形状を意味する。従って、例えば、相似している形状や、線対称(鏡像)の関係にある形状は、両者を重ね合わせても完全一致しないので、本発明では互いに異なる形状となる。なお、誘引構造部21に形成される複数の誘引口23は、その全てが互いに異なる形状を有していれば最も好ましいが、それは必須ではなく、誘引口23の半数以上が互いに異なる形状を有していればよい。誘引口23の半数以上が互いに異なる形状となるように構成すれば、飛翔害虫捕獲器100の内部の薬剤部30に含まれる誘引成分を、誘引口23を介して外部に揮散させるとき、誘引口23の形状の違いにより誘引成分が複雑に拡散しながら放出される。従って、様々な環境において、様々なパターンで飛び交う飛翔害虫に誘引成分を到達させ易くなり、その結果、飛翔害虫を効果的且つ持続的に飛翔害虫捕獲器100に誘引することが可能となる。
【0036】
誘引口23a〜23eは、上面視で蓋部20の中心に対してランダムな位置、あるいは点対称となる位置に形成される。「蓋部20の中心」とは、上面視における形状の重心位置に対応する。例えば、
図5に示されるように、蓋部20を上面視で円形に構成した場合、円の中心が蓋部20の中心Pに相当する。「蓋部20の中心Pに対してランダムな位置」とは、特に、蓋部20の中心Pから誘引口23a〜23eを見た場合、各誘引口23a〜23eまでの距離及び各誘引口23a〜23eの形状の少なくとも一方が互いに異なるような位置関係を意味する。つまり、複数の誘引口23は、上面視で実質的に不規則な配置となるように蓋部20に形成される。このように、蓋部20に複数の誘引口23をランダムな配置で形成すると、誘引口23からの誘引成分の拡散がより複雑になるため、誘引成分を広範囲に拡散させることができ、飛翔害虫捕獲器100への飛翔害虫の誘引効果をより向上させることができる。また、誘引口23a〜23eを、上面視で蓋部20の中心Pに対して点対称となる位置に形成した場合は、各誘引口23a〜23eからの誘引成分の拡散量を一定の規則で異ならせることができるため、誘引成分の拡散状態がコントロールし易いものとなる。例えば、誘引成分を蓋部20の中心Pを通る垂線を軸に渦流を形成するように上方に拡散させ、特定の方向に対する飛翔害虫捕獲器100への飛翔害虫の誘引効果を強化することが可能となる。
【0037】
誘引構造部21は、光を反射可能な傾斜部24を備えている。本実施形態では、傾斜部24は、段部21a〜21cを取り囲むように設けられている。傾斜部24が光を反射することで、蓋部20を飛翔害虫に確実に視認させ、飛翔害虫を誘引口23が形成された蓋部20の方に効果的に誘引することが可能となる。このように、傾斜部24を設けることで、蓋部20の表面を有効に利用しながら、誘引成分による誘引効果を傾斜部24によって補助することができる。なお、傾斜部24の傾斜角は、側面視において、接続部22に対して15度以上に設定することが好ましい。
【0038】
接続部22は、誘引構造部21をトレイ部10に接続する。このため、接続部22は、トレイ部10のフランジ部12を受け入れ可能な形状に構成されている。接続部22は、突起物の係合等によってフランジ部12に簡単に着脱できることが好ましいが、例えば、フランジ部12に対してねじ込み式とすることも可能である。蓋部20側の接続部22とトレイ部10側のフランジ部12とを係合させると、飛翔害虫捕獲器100の使用状態となる。
【0039】
<飛翔害虫捕獲器の配色>
飛翔害虫は、様々な色に対して異なる反応性(誘引性)を示すことが知られている。そこで、本発明者らは、色に対する飛翔害虫の誘引性について鋭意検討したところ、台所等の飛翔害虫が好んで出現する環境下では、飛翔害虫は色相・彩度が比較的大きい色(オレンジ色、褐色等)に対して敏感な反応を示すことを突き止めた。そして、そのような色の方向に、飛翔害虫が効果的に誘引されることが判明した。この新たな知見に基づき、上述した飛翔害虫捕獲器100を飛翔害虫の誘引効果に優れた色に着色することを試みた結果、トレイ部10及び蓋部20の外観に現われる色による誘引効果と、飛翔害虫捕獲器100の内部の薬剤部30から揮発する誘引成分による誘引効果との相乗効果が認められ、従来に比して顕著な飛翔害虫の誘引効果が得られることが判明した。以下、飛翔害虫捕獲器100におけるトレイ部10及び蓋部20の配色について説明する。
【0040】
飛翔害虫捕獲器100の配色を行うにあたり、トレイ部10及び蓋部20の色調(物体色)を、L*a*b*表色系に基づいて決定した。L*a*b*表色系とは、明度、及び色相・彩度を表すために、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した3次元の近似的な均等色空間である。L*a*b*表色系(CIE1976)は、日本工業規格ではJIS Z 8729として規定されている。L*a*b*表色系(CIE1976)のうち、L*は明度を表す指標であり、L*:0が黒色、L*:100が白色となる。a*及びb*は色相・彩度を表す指標である。a*では、プラスが赤色に近づき、マイナスが緑色に近づく。b*では、プラスが黄色に近づき、マイナスが青色に近づく。L*a*b*表色系(CIE1976)は、例えば、標準光源であるC光源を使用し、視野角10度で測定される。L*a*b*表色系(CIE1976)における明度、及び色相・彩度の測定は、例えば、色彩色差計(例えば、コニカミノルタ株式会社製の色彩色度計「CR−400」)、分光色彩濃度計(例えば、日本平板機材株式会社製の分光色彩濃度計「X−Rite939」)を用いて行われる。
【0041】
本実施形態では、飛翔害虫捕獲器100を構成するトレイ部10及び蓋部20を、L*a*b*表色系(CIE1976)で、共にL*:20以上、a*:0以上、b*:0以上の色調を有し、且つ、両者のa*及びb*の少なくとも一方が互いに異なる色調を有するように設定した。L*:20以上は、トレイ部10及び蓋部20が一定以上の明度を有することを意味する。a*:0以上、b*:0以上は、トレイ部10及び蓋部20が赤色〜褐色〜黄色となることを意味する。また、a*及びb*の少なくとも一方が互いに異なると、トレイ部10及び蓋部20の色調が互いに異なることになる。ここで、トレイ部10及び蓋部20のa*及びb*については、両者のa*の差及び/又は両者のb*の差が10以上となるように設定されていることが好ましい。すなわち、トレイ部10と蓋部20との間で、a*の差のみを10以上としたり、b*の差のみを10以上としたり、a*の差及びb*の差の双方が10以上となるように設定する。このような色調に設定すると、トレイ部10及び蓋部20は、明度が一定以上に確保されるとともに、色相・彩度が比較的大きいものとなるため、飛翔害虫を効果的に飛翔害虫捕獲器100に誘引することができる。また、トレイ部10及び蓋部20の色調の差が明確になると、飛翔害虫がトレイ部10と蓋部20とを区別することが容易になるため、トレイ部10及び蓋部20の色調を適切に設定すれば、例えば、飛翔害虫を蓋部20の方に効果的に誘引しつつ、飛翔害虫が溜まるトレイ部10の内側を外部から視認可能な、取り扱いが容易な飛翔害虫捕獲器100を設計することができる。
【0042】
飛翔害虫捕獲器100の配色を行うにあたり、好ましくは、蓋部20の色調を、L*a*b*表色系(CIE1976)で、L*:30以上、a*:15以上、b*:15以上に設定し、トレイ部10の色調を、L*a*b*表色系(CIE1976)で、L*:40以上、a*:5以上、b*:5以上に設定する。より好ましくは、蓋部20の色調を、L*a*b*表色系(CIE1976)で、L*:30以上、a*:30以上、b*:20以上に設定し、トレイ部10の色調を、L*a*b*表色系(CIE1976)で、L*:40以上、a*:10以上、b*:10以上に設定する。このように色調を設定した場合、概して、蓋部20はオレンジ色の色調を有し、トレイ部10は褐色の色調を有することになる。この色の組み合わせに対し、飛翔害虫は特に良好な反応(誘引性)を示すため、飛翔害虫捕獲器100の内部に飛翔害虫をさらに効率的に誘引し、捕獲することが可能となる。
【0043】
飛翔害虫捕獲器100の着色方法としては、トレイ部10及び蓋部20を成型する際に、原料となる樹脂に顔料や着色料を混合しておく。あるいは、成型後のトレイ部10及び蓋部20の表面を塗料で着色する方法や、成型後のトレイ部10及び蓋部20に着色したフィルム又はシールを貼り付ける方法でも構わない。
【0044】
以上のように色調を設定した飛翔害虫捕獲器100は、トレイ部10の色と蓋部20の色との組み合せにより飛翔害虫を誘引する効果が高まり、また、薬剤部30から揮散する誘引成分による飛翔害虫の誘引効果とも相まって、顕著な誘引効果(相乗効果)を発揮することができる。
【0045】
<別実施形態>
(1)上記実施形態では、トレイ部10を透明ないし半透明に構成し得ることを説明したが、蓋部20についても透明ないし半透明に構成することが可能である。この場合、飛翔害虫捕獲器100は、高い誘引効果を維持しながら、蓋部20を外すことなくトレイ部10の内部を容易に視認することができる。
【0046】
(2)上記実施形態では、蓋部20がオレンジ色の色調を有することが好ましいことを説明したが、蓋部20を黒色に近い色に着色することも可能である。この場合、トレイ部10の内部に溜まった飛翔害虫の死骸が上方から見え難くなるため、使用者に不快な印象を与え難くすることができる。
【0047】
(3)上記実施形態では、トレイ部10及び蓋部20の夫々について、一つのパーツを全て同じ色で着色したものを想定しているが、トレイ部10又は蓋部20の一部を他方の色と同じ色で着色しても構わない。例えば、蓋部20のうち、誘引構造部21をオレンジ色に着色し、接続部22についてはトレイ部10と同じ褐色に着色することも可能である。この場合も、上記実施形態の飛翔害虫捕獲器100と同程度の誘引効果が得られる。
【実施例】
【0048】
本発明の飛翔害虫捕獲器について、特に、飛翔害虫捕獲器の構造の違いによる捕獲性能への影響を確認するため、本発明の特徴構成を備えた複数の飛翔害虫捕獲器(実施例1〜6)を準備し、飛翔害虫捕獲試験を実施した。また、比較のため、本発明の特徴構成を備えていない飛翔害虫捕獲器(比較例1及び2)を準備し、同様の飛翔害虫捕獲試験を実施した。
図6は、実施例1〜6、並びに比較例1及び2において使用した飛翔害虫捕獲器が備える誘引口の形状を示す概略図である。なお、誘引口の面積の合計は、すべての実施例及び比較例において、夫々960mm
2となるように調整した。
【0049】
<飛翔害虫捕獲器>
飛翔害虫捕獲器を構成する各部を、以下のように作製した。
(1)トレイ部:ポリプロピレン(PP)樹脂を射出成型することによりトレイ部を作製した。トレイ部の外観は、薄褐色を呈している。
(2)蓋部:ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を真空成型することにより蓋部を作製した。蓋部の外観は、オレンジ色を呈している。
(3)薬剤部:担体としてのパルプ不織布に薬剤を染み込ませることにより薬剤部を作製した。パルプ不織布は、長さ50mm×幅50mm×厚さ17mmのサイズを有する。薬剤は、誘引成分としてバルサミコ酢及び三温糖を含み、殺虫成分としてジノテフランを含み、保湿成分としてグリセリンを含み、その他の成分として精製水等を含む。
【0050】
<試験方法>
約25m
3の試験室の床面のほぼ中央に、実施例1〜6及び比較例2の飛翔害虫捕獲器の何れか一つと、比較例1の飛翔害虫捕獲器とを並べるように配置し、試験室にショウジョウバエを200匹放った。2時間経過後、夫々の飛翔害虫捕獲器に捕獲されたショウジョウバエの個体数を計測した。飛翔害虫捕獲器の捕獲性能は、比較例1の飛翔害虫捕獲器に捕獲されたショウジョウバエの個体数を基準とし(これを1.0とする)、比較例1に対する捕獲倍数として表した。飛翔害虫捕獲試験を夫々2回行い、その平均値を求めた。
【0051】
<試験結果>
〔試験1〕「すべての誘引口」に対する「互いに異なる形状を有する誘引口」の比率(以後、「異形状比率」と称する。)を異ならせた飛翔害虫捕獲器について、捕獲倍数を求めた。実施例1は、
図6(a)の誘引口を有する捕獲器、実施例2は、
図6(b)の誘引口を有する捕獲器、実施例3は、
図6(c)の誘引口を有する捕獲器、比較例1は、
図6(d)の誘引口を有する捕獲器、比較例2は、
図6(e)の誘引口を有する捕獲器を夫々使用した。
図6に示すように、実施例1の捕獲器(a)は、誘引口23a〜23eが蓋部の中心Pに対してランダムに配置されており、実施例2の捕獲器(b)及び実施例3の捕獲器(c)は、誘引口23a〜23eが蓋部の中心Pに対して点対称に配置されており、比較例1の捕獲器(d)及び比較例2の捕獲器(e)は、誘引口23a〜23eが蓋部の中心Pに対して完全に対称に配置されている。試験1の結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示すように、異形状比率を50%以上に設定した実施例1〜3の飛翔害虫捕獲器は、誘引口の開口面積の合計が同じであっても、比較例1に比して高い捕獲性能が認められた。この傾向は、異形状比率が高いもの程、顕著に表れた。
【0054】
〔試験2〕蓋部に複数の誘引口の高さ位置を異ならせる段部を設けた場合の飛翔害虫捕獲器の捕獲性能を確認した。試験2の結果を表2に示す。実施例1及び比較例1は、試験1で説明した実施例1及び比較例1と同一である。実施例4は、誘引口の配置が実施例1と実質同一であり、誘引口の開口面積及び形状、並びに開口面積の合計及び異形状比率も実施例1と同一であるが、蓋部に
図4及び
図5に示すような段部を設けてある。
【0055】
【表2】
【0056】
表2に示すように、蓋部に複数の誘引口の高さ位置を異ならせる段部を設けると(実施例4)、実施例1よりも捕獲性能がさらに向上することが認められた。比較例1との対比では、2.4倍となった。
【0057】
〔試験3〕蓋部に光を反射可能な傾斜部を設けた場合の飛翔害虫捕獲器の捕獲性能を確認した。試験3の結果を表3に示す。実施例1、実施例4、及び比較例1は、試験2で説明した実施例1、実施例4、及び比較例1と同一である。実施例5は、誘引口の配置が実施例4と実質同一であり、誘引口の開口面積及び形状、開口面積の合計及び異形状比率、並びに段部を有することも実施例4と同一であるが、蓋部に
図3及び
図5に示すような傾斜部を設けてある。
【0058】
【表3】
【0059】
表3に示すように、蓋部に光を反射可能な傾斜部を設けると(実施例5)、実施例4よりも捕獲性能がさらに向上することが認められた。比較例1との対比では、2.7倍となった。
【0060】
〔試験4〕トレイ部に飛翔害虫を薬剤部に導くための帯状突起部を設けた場合の飛翔害虫捕獲器の捕獲性能を確認した。試験4の結果を表4に示す。実施例1、実施例4、実施例5、及び比較例1は、試験3で説明した実施例1、実施例4、実施例5、及び比較例1と同一である。実施例6は、誘引口の配置が実施例5と実質同一であり、誘引口の開口面積及び形状、開口面積の合計及び異形状比率、並びに段部及び傾斜部を有することも実施例5と同一であるが、トレイ部に
図2に示すような帯状突起部を設けてある。
【0061】
【表4】
【0062】
表4に示すように、トレイ部に飛翔害虫を薬剤部に導くための帯状突起部を設けると(実施例6)、実施例5よりも捕獲性能がさらに向上することが認められた。比較例1との対比では、2.9倍となった。
【0063】
以上のように、本発明の構成を備える飛翔害虫捕獲器(実施例1〜6)は、ショウジョウバエ等のコバエ類に対して高い捕獲性能を発揮することができ、有用な防虫製品であることが確認された。