(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
出発状態で液相にあるか又は液相へ液状化することのできる硬化可能な材料から3次元物体(50)を製造するために、順次続く滴(70)から成る容積流を提供する方法であって、
材料蓄積部(12c)へ前記材料の液相をもたらすステップと、
前記材料蓄積部(12c)内の前記材料の液相に対して圧力(p)を発生させるステップと、
作成空間(20)内に3次元物体(50)を作り上げるために、サイクル作動可能な放出開口部(12b)から前記材料を滴の形で放出するステップとを含むこと、
前記材料の液相は、温度(θ)に依存した粘度を有すること、
少なくとも1つのプロセスパラメータが、3次元物体(50)の製造中に、それ以外のプロセスパラメータの維持のもと、滴サイズの適合のために追従制御されること、
前記材料の液相の粘度の変化が連続的に検知されること、及び、
前記粘度に変化のある場合には、前記材料蓄積部(12c)内の前記圧力(p)が、前記少なくとも1つのプロセスパラメータとして、前記材料の液相の粘度の変化時に、それ以外のプロセスパラメータの維持のもと、制御回路を用い、予め定められた滴サイズを保つために追従制御され、前記圧力(p)は、搬送要素により加えられ、更に測定量としての、放出される滴(70)ごとの該搬送要素の平均的な移動速度が、前記制御回路の調整量へ換算されること
を特徴とする方法。
【実施例】
【0019】
以下、有利な実施例の詳細な説明である。
【0020】
さて、本発明が添付の図面に関連して例示として詳細に説明される。この際、以下の実施例は、発明のコンセプトを特定の装置に限定すべきではない単なる例示に関するものである。本発明を詳細に説明する前に、本発明が装置の各々の構成部品並びに各々の方法ステップに限定されるものではないことを指摘しておくが、それはそれらの構成部品並びに方法が変更可能なためである。またここで使われている用語は、特別な実施形態を説明するためだけに定められており、限定として使われるものではない。それに加え、本明細書又は本請求項で単数形又は不定冠詞が使われる場合には、それらの要素は複数形であってもよいものとするが、それは全脈絡において明らかに単数形又は不定冠詞でなくてはならない場合は別である。(尚、これに対応し、和文訳文において単数は、複数をも表現しているものとする。)
【0021】
図1及び
図2による方法フローを説明する前に、先ず、硬化可能な材料から3次元物体50又は所定の部品を製造するための
図3による装置について説明する。出発状態で液相にあるか又は液状化(流動化 verfluessigen)することのできる材料が、滴70を順次的(シーケンシャル)に放出することにより3次元物体50を製造するために用いられる。このことは、例えば、個々の滴70が順次的に放出ユニット12の放出開口部12bから放出されることにより行うことができ、従って層状(層的)に3次元物体50が、作成空間(造形空間 Bauraum)20内で駆動ユニット16により放出開口部12bに対して相対的に可動の目的物支持体13上に作られる。硬化可能な材料は、例えばシリコーンのような可塑化された材料や、熱可塑性プラスチックのような可塑化可能な材料や、粉状の材料であってもよい。これらの材料は、射出成形法において普通に入手可能であり従って比較的有利な材料であるが、その理由は、特別なラピッドプロトタイピング用の材料を必要としないためである。また材料は、熱のもと可逆的に溶融可能であり、従ってリサイクル可能な材料とすることもできる。任意の他の材料も、これらの材料が当該装置により可塑化可能であり、とりわけ少なくとも1つの放出ユニット12により放出可能である場合には使用することができる。
【0022】
材料は、機械テーブル15上に配設された調製ユニット11内で可塑化ないし調製され、圧力発生ユニット10により圧力が加えられる。圧力pは、材料温度θ又は放出開口部12bのサイクル時間(Taktzeit)t
B又はサイクル運動(Taktbewegung)s
Bと同様に、滴70の形成態様を、従って製造すべき3次元物体50の品質を決定する。滴の所望の容積は、特に0.01〜1mm
3の範囲内にある。放出開口部12bの直径は、特に1mm以下であり、好ましくは、ほぼ0.1mmである。0.1mmの直径を有する所謂点状注入口を介して材料(質量体 Masse)を搬送する搬送要素の100cm/sという至って通常の搬送速度では、面を通過する容積流で10000m/sの値が得られる。このことは、構造粘性材料において10000m/sに至るまでの流動速度を有する前面層流(laminarer Quellfluss)をもたらすことになる。
【0023】
材料蓄積部12c内にある材料の液相は、駆動部12aにより操作され、放出開口部12bを介して3次元物体50に向かって放出可能である。放出開口部12bには、絞り(Blende)として、好ましくは、上記特許文献3による固体ジョイント(Festkoerpergelenk)を使用することができる。
【0024】
処理される材料は、一般的に所謂非ニュートン流体である。その構造粘性ηは、温度、圧力、温度下の滞留時間、出発固形物の乾燥度などの任意のプロセス設定値(プロセス調整値)に強く依存する。ところがCADモデルから計算された成形すべき部品の層構造は、好ましくは、一定の滴サイズを前提とする。しかし構造粘性は、逆比例して滴サイズと関連するので、3次元物体50の作成時間中に構造粘性の一時的な変化を補償すること、ないしバッチ変動分に関して最初から設定(調整)することも必要である。そのためには、以下の方法が使用される。
【0025】
順次続く滴から成る、好ましくは一定の非連続的な容積流の提供を保証するために、材料の液相が材料蓄積部12cへもたらされる。材料蓄積部12c内の材料の液相に対して圧力pが加えられる。この圧力pのもと材料は、滴70の形で、サイクル作動可能(サイクル的に開閉可能 taktbar)な放出開口部12bから放出され、それにより作成空間20内に3次元物体50を作り上げることができる。この際、液相は、温度θを有する。
【0026】
容積流を一定に保つために、圧力p、又は放出開口部12bのサイクル時間t
B若しくはサイクル運動s
B、又は温度θを含んだプロセスパラメータのうちの1つが、材料の液相の粘度の変化時には、それ以外のプロセスパラメータの維持のもと、追従制御(後追い制御 geregelt nachgefuehrt)される。この目的のために、
図1によるステップ100では、そのために必要な複数のパラメータが測定され、即ち特に、圧力p(t
0)と、絞りを流れる理論的に計算された通流容積v
D(t
0)と、逆流防止部27の遮断リングを流れる漏れ容積v
L(t
0)と、材料の温度θとが測定される。更に補足的に又は選択的(代替的)に、秒単位の滴の数たる周波数f、搬送要素の移動距離s、放出開口部12bのサイクル時間t
B若しくはサイクル運動s
B、搬送用のスクリュ26が収容されている調製ユニットの(スクリュ)横断面積A
S、放出開口部12bの直径d
Dを測定することもできる。
【0027】
以下、搬送要素(スクリュ26)により発生される圧力pを調整量(制御量 Stellgroesse)とした一定の滴容積の制御について説明する。因みに上述のように、放出開口部12bのサイクル時間t
B、サイクル運動s
B、又は温度θも、同様に、別のプロセスパラメータがそれ以外で固定されている場合には、制御回路の調整量として使用することができる。
【0028】
下記数式1で表わされる部品作成のスタート(基準)時点(即ちn
0個の滴が時間t
0内に構成される)において、理論的な粘度の代替値として、基準特性値(対照特性値 Referenzkennzahl)が構成され、この際、t
0は、この時点の後にn
0個の滴が放出された時点であり、測定インターバルt
0の任意の整数倍である時間の経過後の時点tにおいて、下記数式2で表わされる:
【0029】
(数式1)
【0030】
(数式2)
【0031】
線形に近似されたプロセス環境において、時点tにおける全滴容積v
Dは、絞り開口関数t
B(t)のもと、ハーゲン・ポアズイユ(Hagen-Poiseuille)の法則により下記数式3で表わされる:
【0032】
(数式3)
(Duesenkonstante:ノズル定数)
【0033】
滴容積は全作成プロセスにわたって一定であるべきであり、即ち以下の関係が成り立つべきであり、
【0034】
【0035】
上記数式3から下記数式4が得られ、
【0036】
(数式4)
【0037】
一定の絞り開口関数t
B(t)=t
B(t
0)により下記数式5が得られ、
【0038】
(数式5)
【0039】
従って、設定(調整)された圧力と、場合により変化する相対的な粘度特性値との間の直接的な比例関係が、可能な滴容積一定化レギュレータのための関係として得られる。
【0040】
他方、圧力発生スクリュにおいて逆流防止部が理想的な密封状況を有する場合には(ある時点から)時点t
0に至るまでの時間インターバル、ないしtとt−t
0との間の時間インターバルにおいて放出された材料容積は、対応するスクリュ移動距離を検出することにより測定される。個々の滴の平均的な容積V
T(t)は、対応するインターバルt
0において放出された滴の数n
0を用いた割算により、下記数式6から得られる:
【0041】
(数式6)
(Tropfen:滴、gemessen:測定された、Schneckenweg:スクリュ移動距離、Schneckendurchmesser:スクリュ直径)
【0042】
測定時点t
0及びtにおける滴容積一定化(Tropfenvolumenkonstanz)の要求により下記数式7が得られる:
【0043】
(数式7)
(Schneckenweg:スクリュ移動距離)
【0044】
この際、スクリュ移動距離の測定により計算される特性値(Kennzahl)は、下記数式8により表わされる:
【0045】
(数式8)
(Schneckenweg:スクリュ移動距離)
【0046】
関数f(p(t))は、実際には、処理される材料のpVT特性マップ(圧力と比容積と温度の相互関係を示す線図)を介して定義されているにもかかわらず、上記数式7と上記数式5との間の関係の直接的な比較が、測定された特性値K(t)による圧力の追従制御を用い、良好な滴容積一定化制御(Tropfenvolumenkonstanzregelung)を可能とすることが分かった。
【0047】
1つの滴のためのスクリュ移動距離は極めて小さく、実際の装置内では更に逆流防止部の遮断リングの漏れにより多くの場合誤りを含む可能性があるので、比較的多数の滴にわたり10以上から100以上のn
0個の滴について平均化が行われるべきであろう。従って時間的に不連続の複数のt
0間隔(t
0 Abschnitten)において、スクリュ移動距離の変化が、所定数n
0個の滴にわたって観察される。
【0048】
スクリュを有する材料圧力発生器内では、シリンダ管と遮断リングとの間の隙間が、圧力が加えられた可塑化された材料に対し、同様に漏れ流の絞りとして作用する。このことは、測定された平均的な容積移動vが、遮断リングを介した漏れ流のv
L(t)と、ノズルを通して放出された容積のv
D(t)とから構成されることを意味し、下記数式9が得られる:
【0049】
(数式9)
【0050】
この際、
v
Dは、測定インターバルt
0における放出ノズルからの容積(放出容積)であり、
v
Lは、測定インターバルt
0における逆流防止部27からの容積(漏れ容積)である。
【0051】
遮断リングからの漏れ容積は、放出ノズルのために記載された上記数式3と同様の挙動を呈するが、但し、シリンダ管と遮断リングとの間の隙間に依存する他の装置定数をもっている。
【0052】
(数式10)
(Anlagenkonstante Sperrring:装置定数 遮断リング)
【0053】
測定インターバルt
0における漏れ容積v
L(t)の値は、放出ノズルを閉じることによりいつでも測定することができる:
【0054】
(数式11)
(gemessen:測定された、Schneckenweg:スクリュ移動距離、Schneckendurchmesser:スクリュ直径)
【0055】
同じ状態において放出開口部12bが開かれると、材料圧力発生器における全容積変化は増加する。全容積v(t)は、放出ノズルを同時に操作することにより、絞り関数t
B(t)を用い、再び上記数式11に対応して測定可能である。既知の漏れ容積v
Lと、上記数式9の置き換えとにより、放出開口部12bからの、測定インターバルt
0内の時間tにおけるノズル容積を導出することができる。
【0056】
(数式12)
【0057】
放出された容積と漏れ容積との比率は、一定の絞り関数t
B(t)において上記数式3及び上記数式10により、装置固有の定数を構成する:
【0058】
(数式13)
【0059】
そのようにしてステップ101において計算された装置定数K
*には、実質的に、材料圧力発生器の遮断リングとシリンダ管との間の漏れ隙間(リークギャップ)の幾何学形状も、絞り時間と絞り開口移動距離(Blendenoeffnungsweg)が一定の場合の放出ノズルの出口幾何学形状も、含まれている。装置定数K
*は、特性マップとして予備テストを用い、設定されたプロセスパラメータと、使用される材料とに依存して決定することができ、部品の層分解の精密さをより良くするために、各作成開始時に新たに検出することもできる。装置定数K
*がこの特性マップデータに関して許容範囲内にある場合には(質問102)、装置定数K
*は、修正ファクタとして層分解プログラムへ部品プロセスのスタート前に伝送でき(ステップ104)、そして修正された層分解ないし滴サイズを用いて部品構成プログラムがスタートされる(ステップ105)。それ以外の場合、装置は、ステップ103においてストップされる。
【0060】
上記数式12への取り込み(代入)により、下記数式14が得られる:
【0061】
(数式14)
【0062】
測定インターバル内で数n
0=t
0*fで放出された滴(複数)について、v(t)をステップ110において(動的(連続的)に)ローリング測定(rollierendes Messen:平均をとる測定対象の滴の範囲を所定数ずつずらして部分的に再帰重複して測定していくこと)することにより、滴容積を、下記数式15により直接的に決定することができ、層分解プログラムへ部品プロセスのスタート前に伝送することができる。
【0063】
(数式15)
【0064】
作成プロセス中の滴サイズを一定に保つためには、上記数式5で導き出されたように、プロセス調整量(プロセス制御量)である圧力のための特性値レギュレータが、変化する材料の粘度を、滞留時間か又は、例えば放出ノズルの閉鎖機構における僅かな変更により補償するために用いられる。特性値K(t)のために又は選択的(代替的)に圧力p(t)のために、最大プロセス可能範囲(最大プロセス窓 maximales Prozessfenster)を定めることができ(質問111)、この最大プロセス可能範囲を超過した場合には、装置故障が検知され(例えば、放出絞りの詰まりか、又は材料蓄積部12cと放出開口部12bにおける放出絞りとの間の漏れ)、装置は、ステップ112においてストップされる。
【0065】
その以外の場合、圧力は、ステップ113において必要に応じ、部品が完成するまで、追従制御される(質問114、ステップ115)。
【0066】
装置特性値K
*並びに初期の滴サイズV
T(t
0)のための一例を以下に記す:
【0067】
実現化された装置において、0.15mmの放出ノズル直径と、材料圧力発生器内の400barの圧力における直径15mmのスクリュと、90Hzの滴周波数と、t
0=77sの測定時間におけるt
B(t)=0.5
*t
0の絞り時間とにより、K
*=0.014と、滴サイズV
T(t
0)=0.020mm
3が得られたが、このことは、実験的に極めて良好に確認することができた。
【0068】
基本的に、相対的な粘度測定のための説明した関係(複数)は、所定の作動点の範囲内でのみ直線的である。従って、対応する特性マップを、設定されたプロセスパラメータ(複数)と使用される材料とに依存して予め決定し、データベース内に格納することが推奨される。
【0069】
自明のことであるが、本説明には極めて様々な修正形や変更形や適合形があるが、これらは、添付の請求項に対する均等の範囲内で変更可能とされるものである。