特許第6046172号(P6046172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046172
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】容積流を提供するための方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 67/00 20060101AFI20161206BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20161206BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20161206BHJP
【FI】
   B29C67/00
   B33Y10/00
   B33Y30/00
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-561315(P2014-561315)
(86)(22)【出願日】2013年3月12日
(65)【公表番号】特表2015-512812(P2015-512812A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】EP2013000717
(87)【国際公開番号】WO2013135367
(87)【国際公開日】20130919
【審査請求日】2016年2月29日
(31)【優先権主張番号】102012004988.9
(32)【優先日】2012年3月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510332006
【氏名又は名称】アールブルク ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】クライビューラー、ヘルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ドゥフナー、エバーハルト
(72)【発明者】
【氏名】ケスリング、オリバー
【審査官】 深草 祐一
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第2266782(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出発状態で液相にあるか又は液相へ液状化することのできる硬化可能な材料から3次元物体(50)を製造するために、順次続く滴(70)から成る容積流を提供する方法であって、
材料蓄積部(12c)へ前記材料の液相をもたらすステップと、
前記材料蓄積部(12c)内の前記材料の液相に対して圧力(p)を発生させるステップと、
作成空間(20)内に3次元物体(50)を作り上げるために、サイクル作動可能な放出開口部(12b)から前記材料を滴の形で放出するステップとを含むこと、
前記材料の液相は、温度(θ)に依存した粘度を有すること、
少なくとも1つのプロセスパラメータが、3次元物体(50)の製造中に、それ以外のプロセスパラメータの維持のもと、滴サイズの適合のために追従制御されること、
前記材料の液相の粘度の変化が連続的に検知されること、及び、
前記粘度に変化のある場合には、前記材料蓄積部(12c)内の前記圧力(p)が、前記少なくとも1つのプロセスパラメータとして、前記材料の液相の粘度の変化時に、それ以外のプロセスパラメータの維持のもと、制御回路を用い、予め定められた滴サイズを保つために追従制御され、前記圧力(p)は、搬送要素により加えられ、更に測定量としての、放出される滴(70)ごとの該搬送要素の平均的な移動速度が、前記制御回路の調整量へ換算されること
を特徴とする方法。
【請求項2】
一定の滴容積の追従制御のための測定量は、動的にローリング方法において決定されること
を特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記搬送要素は、前記材料の液相を前記材料蓄積部(12c)へ搬送するスクリュ(26)であること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記搬送要素は、漏れ流のある逆流防止部(27)を有し、該漏れ流は、制御において修正ファクタ(K)の決定により考慮されること
を特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
レギュレータは、比例レギュレータであり、特性値は、比例制御アルゴリズムを用いて追従制御されること
を特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
測定量の検出の際に、装置及び材料に固有の限界値が予め定められるか又は予め計算され、該限界値を超過した場合には、装置故障が検知されること
を特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連の出願)
本出願は、2012年03月14日付けドイツ特許出願第 10 2012 004 988.9 号の優先権を主張し、その開示内容は、本出願の対象としても本明細書に援用されるものとする。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、請求項1の上位概念部に記載した、3次元物体を製造するために、順次続く滴から成る容積流を提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
この種の方法は、下記特許文献1から公知であり、そこでは、一反応成分の滴が放出され、基板上にもたらされた一基本反応成分と接触され、それにより、変化する材料特性を有する3次元物品が層状に作り上げられる。この際、一方の材料特性から他方の材料特性への漸進的な移行が行われる物品部分が得られる。測定された層厚に依存し、場合により製造過程中に変化する処理材料の粘度に留意することなく、必要に応じて滴の大きさを制御することができる。
【0004】
下記特許文献2から、射出成形技術では既知の可塑化ユニットを、材料の液相の生成のために圧力を加えることのできる材料蓄積器に連結させることが公知である。作成空間内で目的物支持体上に物体を作成するためにその材料は、放出開口部を介して滴の形で放出され、この際、材料の付着力が原因で、高圧を加える必要があり、また多くの場合は高温を加える必要もある。
【0005】
この装置においては、大量生産により入手可能であり通常は射出成形において使用される材料を用いるというプラスチック部品製造の利点と、個数1個や小バッチサイズのためのプラスチック部品を製造するという可能性とが兼ね備えられている。従って射出成形加工された部品の特性と類似の特性を有する部品を、工具(型工具)を用いずに製造することができる。
【0006】
例えばサンプル部品のような、そのような個別部品や小バッチサイズの部品を製造するためには、他の製造方法も既知であり、これらの製造方法は、プロトタイピングやラピッドマニュファクチュアリングとの概念のもと広く既知である。そのような部品の製造は、工具なしで、即ち型工具を用いずに、多くの場合は3Dデータから幾何学形状を生成することに基づいている。これらの幾何学形状は、極めて異なる形式により、例えばレーザを用いた熱導入による粉末層の溶融のような対応する手段や、粉末材料の異なる結合形式による圧力法のような生成システムや、或いはまた所謂溶融押し出し成形法によっても製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】DE 10 2004 025 374 A1
【特許文献2】EP 1 886 793 A1
【特許文献3】DE 10 2009 030 099 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実際には、上記特許文献2から公知の方法による製造においては、1つの部品のために比較的長い作成時間が必要であることが分かった。材料圧力発生器内、従ってシステム内にある溶融された材料(質量体 Masse)は、確かに幾何学形状の仕様によりできるだけ少なく保たれるが、他方において材料は、少なすぎてもよくなく、その理由は、そうでなければ放出開口部の各開口部が、滴の放出に際し、圧力レベルに対して決定的に動的な影響を及ぼし、該圧力レベルに材料圧力レギュレータの慣性が追従できないためである。他方において、放出されるプラスチック量は、圧力発生器内の液状化された材料の温度や、材料の圧力や、放出ノズルの幾何学形状や、放出開口部の絞り(Blende)の開口時間及びストロークや、全滞留時間により影響される溶融された材料の粘度などのパラメータ(複数)に依存する。更にプラスチックの構造粘性により、せん断速度が大きいと粘度は減少し、このことは、滴サイズと、該滴サイズの、既にもたらされた滴との融合の傾向(Neigung)とに対して影響をもつ。
【0009】
従来技術においては、1つのノズルからの単位時間あたりの材料放出量が決定されるという測定方法が既知である。その値は、g/10minにおいて表わされ、この際、プラスチックは、タペットを用い、2.095mmの直径を有するノズルを通して押し出される。重り部材により必要な力が加えられる。値の表示には、常に検査温度と、使用された基準材料(Nennmasse)とが表示されなくてはならない。この方法は、DIN EN ISO 1133 により定義されている。メルトフローレートに応じ、そのように検出されるMFI値(メルトフローインデックス値)の決定では、プラスチックの流動性は、定義された稼働点においてのみ検出される。この際、特に滞留時間に依存してプロセスパラメータが変化する場合の流動性の変化は、考慮されない。
【0010】
前記従来技術から出発し、本発明の基礎となる課題は、一定の非連続的な容積流を達成するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、請求項1の特徴を有する方法により解決される。
即ち本発明の一視点により、出発状態で液相にあるか又は液相へ液状化することのできる硬化可能な材料から3次元物体を製造するために、順次続く滴から成る容積流を提供する方法であって、材料蓄積部へ前記材料の液相をもたらすステップと、前記材料蓄積部内の前記材料の液相に対して圧力を発生させるステップと、作成空間内に3次元物体を作り上げるために、サイクル作動可能な放出開口部から前記材料を滴の形で放出するステップとを含むこと、前記材料の液相は、温度に依存した粘度を有すること、少なくとも1つのプロセスパラメータが、3次元物体の製造中に、それ以外のプロセスパラメータの維持のもと、滴サイズの適合のために追従制御されること、前記材料の液相の粘度の変化が連続的に検知されること、及び、前記粘度に変化のある場合には、前記材料蓄積部内の前記圧力が、前記少なくとも1つのプロセスパラメータとして、前記材料の液相の粘度の変化時に、それ以外のプロセスパラメータの維持のもと、制御回路を用い、予め定められた滴サイズを保つために追従制御され、前記圧力は、搬送要素により加えられ、更に測定量としての、放出される滴ごとの該搬送要素の平均的な移動速度が、前記制御回路の調整量へ換算されることを特徴とする方法が提供される。
尚、本願の特許請求の範囲に付記されている図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)出発状態で液相にあるか又は液相へ液状化することのできる硬化可能な材料から3次元物体を製造するために、順次続く滴から成る容積流を提供する方法であって、材料蓄積部へ前記材料の液相をもたらすステップと、前記材料蓄積部内の前記材料の液相に対して圧力を発生させるステップと、作成空間内に3次元物体を作り上げるために、サイクル作動可能な放出開口部から前記材料を滴の形で放出するステップとを含むこと、前記材料の液相は、温度に依存した粘度を有すること、少なくとも1つのプロセスパラメータが、3次元物体の製造中に、それ以外のプロセスパラメータの維持のもと、滴サイズの適合のために追従制御されること、前記材料の液相の粘度の変化が連続的に検知されること、及び、前記粘度に変化のある場合には、前記材料蓄積部内の前記圧力が、前記少なくとも1つのプロセスパラメータとして、前記材料の液相の粘度の変化時に、それ以外のプロセスパラメータの維持のもと、制御回路を用い、予め定められた滴サイズを保つために追従制御され、前記圧力は、搬送要素により加えられ、更に測定量としての、放出される滴ごとの該搬送要素の平均的な移動速度が、前記制御回路の調整量へ換算されること。
(形態2)一定の滴容積の追従制御のための測定量は、動的にローリング方法において決定されることが好ましい。
(形態3)前記搬送要素は、前記材料の液相を前記材料蓄積部へ搬送するスクリュであることが好ましい。
(形態4)前記搬送要素は、漏れ流のある逆流防止部を有し、該漏れ流は、制御において修正ファクタの決定により考慮されることが好ましい。
(形態5)レギュレータは、比例レギュレータであり、特性値は、比例制御アルゴリズムを用いて追従制御されることが好ましい。
(形態6)測定量の検出の際に、装置及び材料に固有の限界値が予め定められるか又は予め計算され、該限界値を超過した場合には、装置故障が検知されることが好ましい。

【0013】
本発明に従い、プロセスに依存する(prozessrelative)目下のスタート構造粘性が出発点又は基準点において決定され、そして修正量として、プロセス調整要素を用い、滴サイズに関して修正が行われる。好ましくは、調整量は、材料蓄積部内の圧力であり、この際、測定量として、好ましくは、放出される滴ごとの、圧力を発生させる搬送要素の平均的な移動速度が検出され、その変化が、それ以外のプロセスパラメータが固定されている場合には、修正制御量(Korrekturregelgroesse)として圧力に対して提供される。選択的(代替的)に、好ましくは固体ジョイントが使用される放出開口部ないし絞りの、サイクル時間(Taktzeit)ないし閉鎖時間t、又はサイクル運動sないしストローク(作動距離 Hub)を、調整量(制御量 Stellgroesse)として使用することもできる。基本的に、材料温度θも調整量として適しているが、材料温度θは、その反応において遥かに緩慢であり、部分的には非線形であるので、レギュレータをそれに対応して構成するのは明らかに困難である。このようなレギュレータは、強いD要素をもつか、又はファジーレギュレータとして稼働されなくてはならないだろう。
【0014】
制御(レギュレーション)により、独立して測定されたモデル基準点に関し、例えば生材料のバッチ(チャージ Charge)の変動による、一般的な構造粘性の妨害影響ないし差異を補償することができる。類似の妨害影響は、材料蓄積部内の材料の滞留時間によっても発生する可能性がある。
【0015】
好ましくは、圧力は、閉鎖要素として逆流防止部が装着されている、例えば射出スクリュのような搬送要素により加えられる。このような逆流防止部は、漏れ流をもつ可能性があり、該漏れ流は、修正ファクタにより、制御アルゴリズムの特性値決定の際に考慮可能である。
【0016】
更なる利点は、下位請求項、並びに実施例の以下の説明から明らかになる。
【0017】
以下、本発明を、図面に図示した実施例に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】装置特性値とスタート時の滴サイズとを決定するためのフローチャートを示す図である。
図2】調整量(制御量)として圧力を用いた、滴安定化のための特性値制御のフローチャートを示す図である。
図3】3次元物体を製造するための装置を部分切断図として示す図である。
【実施例】
【0019】
以下、有利な実施例の詳細な説明である。
【0020】
さて、本発明が添付の図面に関連して例示として詳細に説明される。この際、以下の実施例は、発明のコンセプトを特定の装置に限定すべきではない単なる例示に関するものである。本発明を詳細に説明する前に、本発明が装置の各々の構成部品並びに各々の方法ステップに限定されるものではないことを指摘しておくが、それはそれらの構成部品並びに方法が変更可能なためである。またここで使われている用語は、特別な実施形態を説明するためだけに定められており、限定として使われるものではない。それに加え、本明細書又は本請求項で単数形又は不定冠詞が使われる場合には、それらの要素は複数形であってもよいものとするが、それは全脈絡において明らかに単数形又は不定冠詞でなくてはならない場合は別である。(尚、これに対応し、和文訳文において単数は、複数をも表現しているものとする。)
【0021】
図1及び図2による方法フローを説明する前に、先ず、硬化可能な材料から3次元物体50又は所定の部品を製造するための図3による装置について説明する。出発状態で液相にあるか又は液状化(流動化 verfluessigen)することのできる材料が、滴70を順次的(シーケンシャル)に放出することにより3次元物体50を製造するために用いられる。このことは、例えば、個々の滴70が順次的に放出ユニット12の放出開口部12bから放出されることにより行うことができ、従って層状(層的)に3次元物体50が、作成空間(造形空間 Bauraum)20内で駆動ユニット16により放出開口部12bに対して相対的に可動の目的物支持体13上に作られる。硬化可能な材料は、例えばシリコーンのような可塑化された材料や、熱可塑性プラスチックのような可塑化可能な材料や、粉状の材料であってもよい。これらの材料は、射出成形法において普通に入手可能であり従って比較的有利な材料であるが、その理由は、特別なラピッドプロトタイピング用の材料を必要としないためである。また材料は、熱のもと可逆的に溶融可能であり、従ってリサイクル可能な材料とすることもできる。任意の他の材料も、これらの材料が当該装置により可塑化可能であり、とりわけ少なくとも1つの放出ユニット12により放出可能である場合には使用することができる。
【0022】
材料は、機械テーブル15上に配設された調製ユニット11内で可塑化ないし調製され、圧力発生ユニット10により圧力が加えられる。圧力pは、材料温度θ又は放出開口部12bのサイクル時間(Taktzeit)t又はサイクル運動(Taktbewegung)sと同様に、滴70の形成態様を、従って製造すべき3次元物体50の品質を決定する。滴の所望の容積は、特に0.01〜1mmの範囲内にある。放出開口部12bの直径は、特に1mm以下であり、好ましくは、ほぼ0.1mmである。0.1mmの直径を有する所謂点状注入口を介して材料(質量体 Masse)を搬送する搬送要素の100cm/sという至って通常の搬送速度では、面を通過する容積流で10000m/sの値が得られる。このことは、構造粘性材料において10000m/sに至るまでの流動速度を有する前面層流(laminarer Quellfluss)をもたらすことになる。
【0023】
材料蓄積部12c内にある材料の液相は、駆動部12aにより操作され、放出開口部12bを介して3次元物体50に向かって放出可能である。放出開口部12bには、絞り(Blende)として、好ましくは、上記特許文献3による固体ジョイント(Festkoerpergelenk)を使用することができる。
【0024】
処理される材料は、一般的に所謂非ニュートン流体である。その構造粘性ηは、温度、圧力、温度下の滞留時間、出発固形物の乾燥度などの任意のプロセス設定値(プロセス調整値)に強く依存する。ところがCADモデルから計算された成形すべき部品の層構造は、好ましくは、一定の滴サイズを前提とする。しかし構造粘性は、逆比例して滴サイズと関連するので、3次元物体50の作成時間中に構造粘性の一時的な変化を補償すること、ないしバッチ変動分に関して最初から設定(調整)することも必要である。そのためには、以下の方法が使用される。
【0025】
順次続く滴から成る、好ましくは一定の非連続的な容積流の提供を保証するために、材料の液相が材料蓄積部12cへもたらされる。材料蓄積部12c内の材料の液相に対して圧力pが加えられる。この圧力pのもと材料は、滴70の形で、サイクル作動可能(サイクル的に開閉可能 taktbar)な放出開口部12bから放出され、それにより作成空間20内に3次元物体50を作り上げることができる。この際、液相は、温度θを有する。
【0026】
容積流を一定に保つために、圧力p、又は放出開口部12bのサイクル時間t若しくはサイクル運動s、又は温度θを含んだプロセスパラメータのうちの1つが、材料の液相の粘度の変化時には、それ以外のプロセスパラメータの維持のもと、追従制御(後追い制御 geregelt nachgefuehrt)される。この目的のために、図1によるステップ100では、そのために必要な複数のパラメータが測定され、即ち特に、圧力p(t)と、絞りを流れる理論的に計算された通流容積v(t)と、逆流防止部27の遮断リングを流れる漏れ容積v(t)と、材料の温度θとが測定される。更に補足的に又は選択的(代替的)に、秒単位の滴の数たる周波数f、搬送要素の移動距離s、放出開口部12bのサイクル時間t若しくはサイクル運動s、搬送用のスクリュ26が収容されている調製ユニットの(スクリュ)横断面積A、放出開口部12bの直径dを測定することもできる。
【0027】
以下、搬送要素(スクリュ26)により発生される圧力pを調整量(制御量 Stellgroesse)とした一定の滴容積の制御について説明する。因みに上述のように、放出開口部12bのサイクル時間t、サイクル運動s、又は温度θも、同様に、別のプロセスパラメータがそれ以外で固定されている場合には、制御回路の調整量として使用することができる。
【0028】
下記数式1で表わされる部品作成のスタート(基準)時点(即ちn個の滴が時間t内に構成される)において、理論的な粘度の代替値として、基準特性値(対照特性値 Referenzkennzahl)が構成され、この際、tは、この時点の後にn個の滴が放出された時点であり、測定インターバルtの任意の整数倍である時間の経過後の時点tにおいて、下記数式2で表わされる:
【0029】
(数式1)
【0030】
(数式2)
【0031】
線形に近似されたプロセス環境において、時点tにおける全滴容積vは、絞り開口関数t(t)のもと、ハーゲン・ポアズイユ(Hagen-Poiseuille)の法則により下記数式3で表わされる:
【0032】
(数式3)
(Duesenkonstante:ノズル定数)
【0033】
滴容積は全作成プロセスにわたって一定であるべきであり、即ち以下の関係が成り立つべきであり、
【0034】
【0035】
上記数式3から下記数式4が得られ、
【0036】
(数式4)
【0037】
一定の絞り開口関数t(t)=t(t)により下記数式5が得られ、
【0038】
(数式5)
【0039】
従って、設定(調整)された圧力と、場合により変化する相対的な粘度特性値との間の直接的な比例関係が、可能な滴容積一定化レギュレータのための関係として得られる。
【0040】
他方、圧力発生スクリュにおいて逆流防止部が理想的な密封状況を有する場合には(ある時点から)時点tに至るまでの時間インターバル、ないしtとt−tとの間の時間インターバルにおいて放出された材料容積は、対応するスクリュ移動距離を検出することにより測定される。個々の滴の平均的な容積V(t)は、対応するインターバルtにおいて放出された滴の数nを用いた割算により、下記数式6から得られる:
【0041】
(数式6)
(Tropfen:滴、gemessen:測定された、Schneckenweg:スクリュ移動距離、Schneckendurchmesser:スクリュ直径)
【0042】
測定時点t及びtにおける滴容積一定化(Tropfenvolumenkonstanz)の要求により下記数式7が得られる:
【0043】
(数式7)
(Schneckenweg:スクリュ移動距離)
【0044】
この際、スクリュ移動距離の測定により計算される特性値(Kennzahl)は、下記数式8により表わされる:
【0045】
(数式8)
(Schneckenweg:スクリュ移動距離)
【0046】
関数f(p(t))は、実際には、処理される材料のpVT特性マップ(圧力と比容積と温度の相互関係を示す線図)を介して定義されているにもかかわらず、上記数式7と上記数式5との間の関係の直接的な比較が、測定された特性値K(t)による圧力の追従制御を用い、良好な滴容積一定化制御(Tropfenvolumenkonstanzregelung)を可能とすることが分かった。
【0047】
1つの滴のためのスクリュ移動距離は極めて小さく、実際の装置内では更に逆流防止部の遮断リングの漏れにより多くの場合誤りを含む可能性があるので、比較的多数の滴にわたり10以上から100以上のn個の滴について平均化が行われるべきであろう。従って時間的に不連続の複数のt間隔(t Abschnitten)において、スクリュ移動距離の変化が、所定数n個の滴にわたって観察される。
【0048】
スクリュを有する材料圧力発生器内では、シリンダ管と遮断リングとの間の隙間が、圧力が加えられた可塑化された材料に対し、同様に漏れ流の絞りとして作用する。このことは、測定された平均的な容積移動vが、遮断リングを介した漏れ流のv(t)と、ノズルを通して放出された容積のv(t)とから構成されることを意味し、下記数式9が得られる:
【0049】
(数式9)
【0050】
この際、
は、測定インターバルtにおける放出ノズルからの容積(放出容積)であり、
は、測定インターバルtにおける逆流防止部27からの容積(漏れ容積)である。
【0051】
遮断リングからの漏れ容積は、放出ノズルのために記載された上記数式3と同様の挙動を呈するが、但し、シリンダ管と遮断リングとの間の隙間に依存する他の装置定数をもっている。
【0052】
(数式10)
(Anlagenkonstante Sperrring:装置定数 遮断リング)
【0053】
測定インターバルtにおける漏れ容積v(t)の値は、放出ノズルを閉じることによりいつでも測定することができる:
【0054】
(数式11)
(gemessen:測定された、Schneckenweg:スクリュ移動距離、Schneckendurchmesser:スクリュ直径)
【0055】
同じ状態において放出開口部12bが開かれると、材料圧力発生器における全容積変化は増加する。全容積v(t)は、放出ノズルを同時に操作することにより、絞り関数t(t)を用い、再び上記数式11に対応して測定可能である。既知の漏れ容積vと、上記数式9の置き換えとにより、放出開口部12bからの、測定インターバルt内の時間tにおけるノズル容積を導出することができる。
【0056】
(数式12)
【0057】
放出された容積と漏れ容積との比率は、一定の絞り関数t(t)において上記数式3及び上記数式10により、装置固有の定数を構成する:
【0058】
(数式13)
【0059】
そのようにしてステップ101において計算された装置定数Kには、実質的に、材料圧力発生器の遮断リングとシリンダ管との間の漏れ隙間(リークギャップ)の幾何学形状も、絞り時間と絞り開口移動距離(Blendenoeffnungsweg)が一定の場合の放出ノズルの出口幾何学形状も、含まれている。装置定数Kは、特性マップとして予備テストを用い、設定されたプロセスパラメータと、使用される材料とに依存して決定することができ、部品の層分解の精密さをより良くするために、各作成開始時に新たに検出することもできる。装置定数Kがこの特性マップデータに関して許容範囲内にある場合には(質問102)、装置定数Kは、修正ファクタとして層分解プログラムへ部品プロセスのスタート前に伝送でき(ステップ104)、そして修正された層分解ないし滴サイズを用いて部品構成プログラムがスタートされる(ステップ105)。それ以外の場合、装置は、ステップ103においてストップされる。
【0060】
上記数式12への取り込み(代入)により、下記数式14が得られる:
【0061】
(数式14)
【0062】
測定インターバル内で数n=tfで放出された滴(複数)について、v(t)をステップ110において(動的(連続的)に)ローリング測定(rollierendes Messen:平均をとる測定対象の滴の範囲を所定数ずつずらして部分的に再帰重複して測定していくこと)することにより、滴容積を、下記数式15により直接的に決定することができ、層分解プログラムへ部品プロセスのスタート前に伝送することができる。
【0063】
(数式15)
【0064】
作成プロセス中の滴サイズを一定に保つためには、上記数式5で導き出されたように、プロセス調整量(プロセス制御量)である圧力のための特性値レギュレータが、変化する材料の粘度を、滞留時間か又は、例えば放出ノズルの閉鎖機構における僅かな変更により補償するために用いられる。特性値K(t)のために又は選択的(代替的)に圧力p(t)のために、最大プロセス可能範囲(最大プロセス窓 maximales Prozessfenster)を定めることができ(質問111)、この最大プロセス可能範囲を超過した場合には、装置故障が検知され(例えば、放出絞りの詰まりか、又は材料蓄積部12cと放出開口部12bにおける放出絞りとの間の漏れ)、装置は、ステップ112においてストップされる。
【0065】
その以外の場合、圧力は、ステップ113において必要に応じ、部品が完成するまで、追従制御される(質問114、ステップ115)。
【0066】
装置特性値K並びに初期の滴サイズV(t)のための一例を以下に記す:
【0067】
実現化された装置において、0.15mmの放出ノズル直径と、材料圧力発生器内の400barの圧力における直径15mmのスクリュと、90Hzの滴周波数と、t=77sの測定時間におけるt(t)=0.5の絞り時間とにより、K=0.014と、滴サイズV(t)=0.020mmが得られたが、このことは、実験的に極めて良好に確認することができた。
【0068】
基本的に、相対的な粘度測定のための説明した関係(複数)は、所定の作動点の範囲内でのみ直線的である。従って、対応する特性マップを、設定されたプロセスパラメータ(複数)と使用される材料とに依存して予め決定し、データベース内に格納することが推奨される。
【0069】
自明のことであるが、本説明には極めて様々な修正形や変更形や適合形があるが、これらは、添付の請求項に対する均等の範囲内で変更可能とされるものである。
【符号の説明】
【0070】
10 圧力発生ユニット
11 調製ユニット
12 放出ユニット
12a 駆動部
12b 放出開口部
12c 材料蓄積部
13 目的物支持体
15 機械テーブル
16 駆動ユニット
20 作成空間(造形空間)
26 スクリュ
27 逆流防止部
50 3次元物体
70 滴

100〜115 フローステップ
図1
図2
図3