(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
心膜腔にアクセスするためのデバイスであって、
該デバイスは、
組織穿刺部材であって、該組織穿刺部材は、少なくとも部分的に自身を通って延在する第1の長手管腔と、少なくとも部分的に自身を通って延在する第2の長手管腔とを備える、組織穿刺部材と、
該第1の長手管腔を通って前進するための組織係合部材と、
該第2の長手管腔を通って前進するための第1のガイド要素と、
該組織穿刺部材、該組織係合部材、および第1のガイドワイヤのうちの1つ以上を作動させるように構成されるアクチュエータと
を備える、デバイス。
(項目2)
前記組織穿刺部材は、針を備える、項目1に記載のデバイス。
(項目3)
前記デバイスは、シースをさらに備え、前記組織穿刺部材は、該シースを通って少なくとも部分的に前進可能である、項目1に記載のデバイス。
(項目4)
前記組織係合部材の遠位端は、少なくとも部分的にコルク栓抜きまたは鋸歯の形態である、項目1に記載のデバイス。
(項目5)
前記組織係合部材は、1つ以上の組織係合要素を備え、該組織係合要素は、非展開構成と展開構成との間で移動可能である、項目1に記載のデバイス。
(項目6)
前記組織穿刺部材は、前記第1の管腔と連絡している1つ以上の側面開口部をさらに備え、前記組織係合要素のうちの1つ以上は、展開構成にあるときに、少なくとも部分的に該1つ以上の側面開口部を通って延在する、項目5に記載のデバイス。
(項目7)
前記組織係合要素は、尖叉、フック、四爪アンカ、歯、または組織把持アンテナを備える、項目5に記載のデバイス。
(項目8)
心臓の心膜腔にアクセスするためのシステムであって、
該システムは、
シースと、
少なくとも部分的に該シースを通って前進可能である組織穿刺部材であって、該組織穿刺部材は、第1の管腔を備える、組織穿刺部材と、
少なくとも部分的に該シースを通って前進可能である組織係合部材と、
該組織穿刺部材の該第1の管腔を通る前進のための第1のガイド要素と
を備える、システム。
(項目9)
前記組織穿刺部材は、少なくとも部分的に前記シースの第1の管腔の中に設置され、前記組織係合部材は、少なくとも部分的に該シースの第2の管腔の中に設置される、項目8に記載のシステム。
(項目10)
前記組織係合部材は、1つ以上の組織係合要素を備え、前記シースは、該シースの前記第1の管腔と連絡している1つ以上の側面開口部を備え、該組織係合要素は、非展開構成と展開構成との間で移動可能であり、該組織係合要素のうちの1つ以上は、展開構成にあるときに、少なくとも部分的に該1つ以上の側面開口部を通って延在する、項目8に記載のシステム。
(項目11)
心臓の心膜腔にアクセスするためのデバイスであって、
該デバイスは、
近位部分と、遠位部分とを備えるカテーテル本体と、
該カテーテル本体の該遠位部分から接線方向に突出する鉤であって、該鉤は、該カテーテル本体の該近位部分と遠位部分との間に延在するワイヤ管腔を備える、鉤と、
該カテーテル本体および該鉤を包むシースと
を備える、デバイス。
(項目12)
心臓の心膜腔にアクセスするためのデバイスであって、
該デバイスは、
係合要素であって、該係合要素は、穿孔先端と、心膜に係合するための貫通リミッタと、自身を通る第1の管腔と、遠位開口とを備える、係合要素と、
自身を通る第1の管腔を備える内側管状本体であって、該内側管状本体は、該係合要素の該第1の管腔の中に摺動可能に配置され、該内側管状本体の遠位端は、該係合要素から該遠位開口を通って前進可能である、内側管状本体と
を備える、デバイス。
(項目13)
ガイドワイヤをさらに備え、該ガイドワイヤは、前記内側管状部材の前記第1の管腔を通って前進可能である、項目12に記載のデバイス。
(項目14)
前記穿孔深さリミッタは、前記穿孔先端の近位に位置する溝またはチャネルである、項目12に記載のデバイス。
(項目15)
前記内側管状本体は、該内側管状本体の前記第1の管腔と連絡している複数の側面開口を備える、項目12に記載のデバイス。
(項目16)
ハンドルと、該ハンドルに取り付けられた弁とをさらに備え、前記ガイドワイヤは、該弁およびハンドルを通って前進可能である、項目13に記載のデバイス。
(項目17)
心臓の心膜腔にアクセスするための方法であって、
該方法は、
デバイスを胸腔の中に挿入することであって、該デバイスは、組織穿刺部材と、組織係合部材と、第1のガイド要素とを備える、ことと、
該組織係合部材を扁平な非展開構成から拡張した展開構成まで展開することと、
心膜の一部分を該拡張した組織係合部材と係合させることと、
該心膜の該係合した部分と該心臓との間の距離を増大させるために、該心膜の該係合した部分を操作することと、
該組織穿刺部材を該心膜を通して該心膜腔の中に前進させることと、
少なくとも一部分のガイド要素を該組織穿刺部材の管腔を通して該心膜腔の中に前進させることと
を含む、方法。
(項目18)
前記心膜の前記係合した部分を操作することは、前記組織穿刺部材をその長手軸の周りで回転させることを含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記デバイスは、シースをさらに備え、前記心膜の前記係合した部分を操作することは、該シースをその長手軸の周りで回転させることを含む、項目17に記載の方法。
(項目20)
心臓の心膜腔にアクセスするための方法であって、
該方法は、
デバイスを胸腔の中に前進させることであって、該デバイスは、係合要素と、内側管状本体と、ガイドワイヤとを備え、該係合要素は、穿孔先端と、心膜に係合するための貫通リミッタと、自身を通る第1の管腔と、遠位開口とを備え、該内側管状本体は、自身を通る第1の管腔を備え、該係合要素の該第1の管腔の中に摺動可能に配置され、該ガイドワイヤは、該内側管状本体の該第1の管腔を通って前進可能である、ことと、
係合部材の穿孔先端を用いて該心膜を穿孔し、該穿孔先端を該心膜腔の中に前進させることと、
該心膜の一部分を該穿孔深さリミッタと係合させることと、
該内側管状本体を該心膜腔の中に前進させることと、
該ガイドワイヤを該内側管状本体を通して該心膜腔の中に前進させることと
を含む、方法。
(項目21)
前記心膜の前記係合した部分を操作することをさらに含む、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記内側管状部材の前記第1の管腔を通して前記心膜腔に、1つ以上のガスまたは流体を導入することをさらに含む、項目20に記載の方法。
心臓の心膜腔にアクセスするためのデバイスおよび方法を本明細書で説明する。アクセスデバイスは、概して、組織係合部材と、組織穿刺部材と、ガイド要素とを備えてもよい。アクセスデバイスは、心膜の表面に導入されてもよく、組織係合部材は、心臓の心外膜面に係合することなく、心膜の一部分に係合するように展開されてもよい。いったんアクセスデバイスが心膜に係合すると、デバイスは、心膜の一部分と心臓の心外膜面との間の距離を増大させるように心膜を操作してもよい。いったん十分な空間が作成されると、組織穿刺部材は、心膜を穿刺し、心膜腔に進入するように前進させられてもよい。次いで、ガイド要素は、他のデバイスのための心臓へのアクセス経路を提供するように、心膜腔に導入されてもよい。
【0006】
一変化例では、心膜腔にアクセスするためのデバイスは、第1の長手管腔および第2の長手管腔を有する、組織穿刺部材と、第1の長手管腔を通して前進させられてもよい、組織係合部材と、第2の長手管腔を通して前進させられてもよい、第1のガイド要素と、ハンドルアクチュエータとを備えてもよい。第1および/または第2の長手管腔は、それを通して流体および/またはガイド要素を通過させるように構成されてもよい。アクチュエータは、組織穿刺部材、組織係合部材、および第1のガイド要素を作動させるように構成されてもよい。いくつかの変化例では、組織穿刺部材は、尖った、および/または勾配付きの遠位先端を有してもよい。組織穿刺部材はまた、先細遠位先端を有してもよい。組織穿刺部材の変化例は、組織を機械的に切断または穿刺する構成要素、例えば、針、ランセット、ブレード等、組織を化学的にエッチングする構成要素、例えば、酵素、酸、組織を電気的に弱める構成要素、例えば、電気プローブ、および/または組織を熱的に弱める構成要素、例えば、低温プローブおよび低温物質を含んでもよい。
【0007】
種々の組織係合部材は、針の第1の管腔を通して前進させられてもよい。組織係合部材の表面は、摩擦係数を増加させるように修飾されてもよく、例えば、表面は、テクスチャ加工または被覆されてもよい。いくつかの変化例では、被覆は、親水性、疎水性であってもよく、および/または接着剤であってもよく、あるいは接着剤を含んでもよい。組織係合部材は、心膜に係合して操作するために好適な任意の形状を有してもよく、例えば、組織係合部材の遠位端の少なくとも一部は、コルク栓抜きまたは鋸歯の形態であってもよい。いくつかの変化例では、組織係合部材は、1つ以上の組織係合要素を備えてもよく、組織係合要素は、組織係合要素が第1の管腔の中で圧縮される、第1の非展開構成と、組織係合要素が拡張される、第2の展開構成とを有してもよい。
【0008】
組織穿刺部材のある変化例は、組織穿刺部材の遠位端より近位の位置に1つ以上の側面開口部を備えてもよく、1つ以上の側面開口部は、第1の管腔と連絡している。側面開口部は、1つ以上の組織係合部材および/または組織係合要素の通過のためにサイズ決定および成形されてもよい。
【0009】
種々の組織係合要素が、組織係合部材とともに使用されてもよい。例えば、組織係合要素の遠位端の少なくとも一部は、尖叉、フック、四爪アンカ、または組織把持構造を伴うアンテナ、および/または歯の形態であってもよく、加えて、摩擦係数を増加させるように、それらの表面上に1つ以上の修飾を有してもよい。
【0010】
心膜腔にアクセスするためのデバイスのいくつかの変化例では、第1のガイド要素は、ガイドワイヤである。デバイスはまた、第2のガイド要素を備えてもよく、第1および第2のガイド要素の両方は、ガイドワイヤであってもよい。
【0011】
また、心臓の心膜腔にアクセスするためのシステムの一変化例も本明細書で説明する。この変化例は、組織穿刺部材、組織係合部材、および第1のガイド要素を有する、アクセスデバイスを備え、組織係合部材および第1のガイド要素は、組織穿刺部材に収納される。システムはまた、シースと、アクセスデバイスに付着するように構成される二酸化炭素通気デバイスとを備えてもよい。任意で、システムはまた、第2のガイド要素を備えてもよい。
【0012】
心臓の心膜腔にアクセスする方法も提供される。心臓の心膜腔にアクセスする方法の一変化例は、心膜の表面に近接してアクセスデバイス導入するステップであって、アクセスデバイスは、組織穿刺部材と、1つ以上の組織係合部材と、ガイド要素とを備えてもよく、組織係合部材およびガイド要素は、組織穿刺部材に収納されてもよい、ステップと、組織係合部材を展開するステップと、心膜の一部分に係合するステップと、心膜の一部分と心臓との間の距離を増大させるように、心膜の一部分を操作するステップと、心膜腔の中に組織穿刺部材を前進させるステップと、心膜腔の中にガイド要素を前進させるステップとを含む。アクセスデバイスは、経皮的または低侵襲的に導入されてもよい。任意で、方法はまた、ガイド要素を前進させる前に、組織穿刺部材が心膜腔に進入したことを確認するステップを含んでもよい。ガイド要素は、機械的に前進させられ、および/または機械制御されてもよく、機械は、事前にプログラムされたシーケンスに従って、またはユーザ入力に従って、ガイド要素を前進させてもよい。ガイド要素は、ユーザによって手動で前進させられてもよい。方法のいくつかの変化例では、心膜を操作するステップは、心臓から心膜を分離してもよい、心膜を捻転または回転させるステップを含んでもよい。加えて、または代替として、心膜の一部分を操作するステップは、心膜に係合するように組織係合部材を前進させるステップと、心膜の一部分と心臓との間の距離を増大させるように組織係合部材を後退させるステップと、心膜腔に進入するように組織穿刺部材を前進させるステップとを含む。いくつかの変化例では、心臓および周辺心膜構造が、手技の全体を通して撮像されてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で説明されるデバイスおよび方法は、心膜の穿孔を通して心臓および心膜腔にアクセスするために使用されてもよい。
図1は、心膜(102)によって取り囲まれた心臓(100)を描写する。
図1はまた、左心房(106)、左心耳(108)、左心室(110)、および大動脈弓(103)を含む、心臓の種々の解剖学的構造も描写する。心膜(102)は、心臓からそれを分離してもよい、流体で充填される。心膜(102)と心臓(100)との間の空間は、心膜腔(104)である。心膜と心臓の表面との距離は、変化してもよい。例えば、心膜が、いくつかの領域中で心臓から約5ミリメートル離れていてもよい一方で、心膜は、他の領域中で心臓(100)に直接接触してもよい。そのようなものとして、心臓の表面(100)に接触する、それを穿孔する、および/または損傷することなく、心膜(102)を穿孔することが困難な場合がある。以下で説明されるデバイスおよび方法は、意図した心膜穿孔部位において、心膜の一部分と心臓との間の距離を増大させて、心臓を損傷する危険性を最小化するために使用されてもよい。
【0015】
本明細書で説明されるデバイスおよび方法は、心臓へのアクセスを提供するように心膜を穿孔することに関して説明されるが、これらのデバイスおよび方法は、任意の流体で充填された膜または嚢に穿孔を作成する、または別様にそれへのアクセスを促進して、その中の構造、例えば、硬膜、腹膜、羊膜嚢等にアクセスするために使用されてもよいことを理解されたい。
【0016】
(I.アクセスデバイス)
種々のデバイスが、心膜腔にアクセスするために、心膜腔を穿孔するように使用されてもよい。典型的には、これらのアクセスデバイスは、心膜に係合して操作し、それを穿孔し、ガイド要素を心膜腔の中に前進させるように構成されてもよい。場合によっては、心膜に係合して操作することは、心臓の表面から心膜を分離して、心膜腔の拡大したテント状領域を形成するように、心膜を把持することを伴ってもよい。心膜腔の拡大領域は、心臓への不意の穿孔または損傷の危険性を低減することに役立ってもよい、アクセスデバイスの穿刺部材と心臓の表面との間の緩衝材としての機能を果たしてもよい。いったん心膜腔へのアクセスが達成されると、次いで、1つ以上のガイド要素の一部分が、心膜腔の中に配置されてもよく、心膜腔へのアクセス経路を提供してもよい。この心膜腔へのアクセスは、以下でさらに詳細に説明されるように、1つ以上の手技が、心膜腔の中で、心膜腔の周囲で、または心膜腔を通して行われることを可能にしてもよい。アクセスデバイスは、概して、係合するステップ、操作するステップ、穿孔するステップ、および前進させるステップのうちの1つ以上を達成してもよい、1つ以上の構成要素を備える。例えば、本明細書で説明されるアクセスデバイスは、1つ以上のシース、1つ以上の組織係合部材、1つ以上の組織穿刺部材、および1つ以上のガイド要素を備えてもよい。これらのデバイスは、心臓への経皮または低侵襲アプローチのために構成されてもよい。例えば、デバイス構成要素は、施術者が心膜に向かってデバイスを非外傷性に前進させることを可能にするように、サイズ決定および成形されてもよい。
【0017】
心膜腔にアクセスするためのデバイスの一変化例が、
図2A−2Eに示されている。
図2Aは、組織穿刺部材(202)と、第1のガイド要素(204)と、第2のガイド要素(206)と、シース(208)と、組織穿刺部材アクチュエータ(210)と、シースアクチュエータ(211)と、組織係合部材(図示せず)とを備える、アクセスデバイス(200)を描写する。概して、シース(208)は、心膜の付近の位置へのデバイス(200)の種々の構成要素の前進を補助することに役立ってもよい。いったん適所になると、組織係合部材は、心膜に係合および/または操作してもよく、組織穿刺部材(202)は、心膜を穿指し、穿孔し、または別様に貫通してもよい。次いで、1つ以上のガイド要素(例えば、第1のガイド要素(204)および/または第2のガイド要素(206))が、心膜を通して心膜腔の中に配置されてもよく、心膜腔の中への他のデバイスのためのアクセス経路を提供してもよい。これらの構成要素のそれぞれは、本明細書で説明されるアクセスデバイスを使用する方法のように、以下でさらに詳細に説明される。
【0018】
前述のように、本明細書で説明されるアクセスデバイスは、心膜を穿刺する、穿孔する、または別様に心膜を通したアクセスを促進するための組織穿刺部材を備えてもよい。
図2Bは、すぐ上記で説明されたアクセスデバイス(200)とともに使用されてもよい、組織穿刺部材(202)の一変化例を描写する。そこで示されるように、組織穿刺部材(202)は、組織穿刺遠位先端(220)、複数の側面開口(222)、および少なくとも部分的にそれを通って延在する1つ以上の作業長手管腔(図示せず)を有する、本体(201)を備える。組織穿刺部材は、ここで示されているものと同様の尖った遠位先端を伴う、針または他の細長い部材であってもよい。例えば、いくつかの変化例では、本体および組織穿刺遠位先端(220)は、一片の材料から形成されてもよい。他の変化例では、組織穿刺遠位先端は、本体とは別に形成されてもよく、それに取り付けられてもよい。例えば、場合によっては、可撓性材料(例えば、1つ以上の金属ブレイズ、形状記憶合金等)から組織穿刺部材の本体を作製するが、剛性金属または他の材料から組織穿刺遠位先端を作製することが望ましくてもよい。これらの場合において、可撓性本体が、生体構造を通した組織穿刺部材のより容易な操作または操縦を可能にしてもよい一方で、剛性遠位先端は、組織を穿孔するように十分硬くてもよい。
【0019】
使用される組織穿刺部材は、上記の組織を穿刺し、穿孔し、または別様に通過してもよい。例えば、上記で説明されたように、いくつかの変化例では、組織穿刺部材は、尖った縁または先端、あるいは勾配付きまたは先細である組織穿刺遠位先端(220)を備えてもよい。他の変化例では、組織穿刺部材遠位先端は、心膜にスリットを形成してもよい切断要素、例えば、単一のブレード、またはブレードが開閉することを可能にするピンによって接合された2つ以上のブレードを備えてもよい。なおも他の変化例では、組織穿刺部材遠位先端は、心膜に開口部を作製してもよい化学剤、例えば、心膜の一部分を通してエッチングしてもよい酵素または酸のためのポートを備えてもよい。
【0020】
なおも他の変化例では、組織穿刺部材は、電流を印加することにより組織を切除することによって、心膜に開口部を作成してもよい(または別様に心膜の組織を弱めてもよい)。組織穿刺部材は、任意の好適な部材で組織を切除するように構成されてもよい。いくつかの変化例では、1つ以上の電極が、組織穿刺部材の本体を、および組織穿刺部材の本体のポートまたは開口を(例えば、上記で説明された組織穿刺部材(202)の側面開口(222)のうちの1つを)通過させられてもよい。他の変化例では、組織穿刺部材の1つ以上の部分は、エネルギーを組織に送達するように構成されてもよい(例えば、少なくとも部分的に導電性組織穿刺部材でできていてもよい)。組織穿刺部材(またはそれを通して挿入された電極)は、電流パルス、例えば、10pAから1000pAを印加してもよく、または心膜の領域を薄くするように、ある電流密度を印加してもよい。代替として、または加えて、組織穿刺部材は、心膜の一部分を弱めてもよい、心膜の内側と外側との間の電位降下(すなわち、電圧)、例えば、10mVから500mVを生成するように配設されてもよい。組織穿刺部材は、組織穿刺部材を介して爆発的な局所陽圧を心膜に印加することによって、心膜に開口部を作成してもよい(または別様に心膜を弱めてもよい)。組織穿刺部材はまた、例えば、冷凍腐食および/または冷凍手術器具および技法を使用して、心膜の一部分を凍結することによって、心膜に開口部を作成してもよい。いくつかの組織穿刺部材は、心膜に開口部を作成する、または別様に心膜を弱めるために、上記の方法の組み合わせ(例えば、物理的切断および電気的切除、電気的切除を伴う化学エッチング、圧力パルスを伴う電気的切除、圧力パルスを伴う化学エッチング等)を採用してもよい。
【0021】
図2Bに示されるように、組織穿刺部材(202)は、1つ以上の側面開口(222)を備えてもよい。本明細書で説明される組織穿刺部材が、単一の側面開口または複数の側面開口(例えば、2、4、6、12、25等)を備えてもよい一方で、組織穿刺部材の他の変化例は、いずれの側面開口も備えなくてもよいことを理解されたい。
図2Bに示される側面開口(222)等の側面開口を備えない変化例では、側面開口は、1つ以上のデバイスまたは物質がそれを通過させられてもよいように、組織穿刺部材の作業管腔のうちの1つ以上と連絡していてもよい。例えば、いくつかの変化例では、組織穿刺部材の1つ以上の側面開口は、1つ以上のガイド要素(例えば、ガイドワイヤまたはカテーテル)が、それを通過して組織穿刺部材から退出してもよいように、サイズ決定および構成されてもよい。他の変化例では、組織穿刺部材の作業管腔の中に通された1つ以上の物質(例えば、造影溶液)は、側面開口のうちの1つ以上を通って組織穿刺部材から退出してもよい。
【0022】
加えて、上述のように、組織穿刺部材は、少なくとも部分的に組織穿刺部材の本体を通って延在する、1つ以上の長手作業管腔を備えてもよい。本明細書で説明される組織穿刺部材は、単一の作業管腔または複数の作業管腔(例えば、2、3、または4以上)を備えてもよく、または場合によっては、いずれの作業管腔も備えなくてもよいことを理解されたい。作業管腔は、種々のデバイス、例えば、組織係合デバイス、ガイド要素等のうちの1つ以上を摺動可能に収納するように構成されてもよい。組織穿刺部材(202)は、管、例えば、ハイポチューブから鋳造または別様に形成されてもよく、任意の不活性な生体適合性材料、例えば、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金等の金属材料、および/またはTeflon(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のポリマー材料等でできていてもよい。組織穿刺部材(202)は、単一の連続管であってもよく、または一連の関節動作セグメントであってもよい。上述のように、他の変化例では、組織穿刺部材は、少なくとも部分的にそれを通る長手管腔を持たなくてもよく、例えば、ランセット、外科用メス、またはワイヤであってもよい。いくつかの変化例では、操縦可能な組織穿刺部材は、単一の可撓性材料でできていてもよく、またはヒンジによって接合されてもよい2つ以上の関節動作セグメントを備えてもよい。組織穿刺部材のある変化例は、1つ以上の事前成形された曲線を有してもよく、事前成形された曲線は、適宜に可撓性または剛性であってもよい。
【0023】
組織穿刺部材と関連付けられる作業管腔(ならびに本明細書の全体を通して説明されるような組織係合部材、デバイス、および/または管状本体と関連付けられる任意の長手管腔)は、任意の好適な方法によって形成されてもよい。例えば、組織穿刺部材は、管、例えば、ハイポチューブ、または任意の好適な管状構造でできていてもよく、それを通る1つ以上の長手管腔は、管を製造する経過中に形成される。代替として、または加えて、第1の管腔を有する組織穿刺部材よりも小さい直径を有する管が、第1の管腔を通して挿入されてもよく、管は、第2の針管腔を形成するように、組織穿刺部材管腔の内面に溶接され、結合され、または別様に取り付けられてもよい。他の変化例では、組織穿刺部材は、ともに溶接または結合される、2つ以上の小径管から形成されてもよく、加えて、管のうちの1つは、尖った遠位先端を保有してもよい。管は、一方が他方の内側で入れ子になってもよく、または並んで配設されてもよく、すなわち、2つ以上の管が、相互と平行である長手軸を有してもよい。ある長手管腔は、組織穿刺部材と同心状であってもよい。他の変化例では、長手管腔は、組織穿刺部材の外周上に位置してもよく、それら自体が、針の外面に溶接され、結合され、または型打ちされた管であってもよい。組織穿刺部材のいくつかの変化例が、閉鎖形状(例えば、円、長方形、六角形、八角形等)を有する、長手管腔を有してもよい一方で、他の長手管腔は、1つ以上の側面スロットまたは開口を有してもよい。いくつかの変化例では、長手管腔は、部分的に開いた幾何学形状を有してもよく、例えば、C字形の断面を有してもよく、または少なくとも管腔の長手方向の一部分に沿って延在する長手方向側面開口を有してもよい。任意の数または構成の長手管腔は、心膜腔にアクセスするために必要に応じて、組織穿刺部材(および他のデバイス構成要素)と関連付けられてもよい。
【0024】
組織穿刺部材(202)の移動は、組織穿刺部材(202)の近位端に設置される、組織穿刺部材アクチュエータ(210)によって制御されてもよい。組織穿刺部材アクチュエータは、1つ以上の自由度に沿って組織穿刺部材を移動させ、操縦するように構成される任意の構造(例えば、ハンドル)であってもよい。例えば、組織穿刺部材(202)は、1つの軸に沿って、例えば、長手軸に沿って前後に前進させられてもよく、または複数の軸および平面に沿って操縦され、例えば、長手軸の周囲で回転させられ、長手軸に対して横方向に屈曲または屈折される等してもよい。組織穿刺部材が、1つ以上の平面内に1つ以上の事前成形された曲線を有する、いくつかの変化例では、組織穿刺部材アクチュエータは、1つの軸に沿って移動してもよいが、組織穿刺部材は、異なる軸に沿って穿刺してもよい。組織穿刺部材アクチュエータ(210)はまた、組織標的に向かって組織穿刺部材(202)を前進させるように、および組織標的から離して組織穿刺部材を後退させるように構成されてもよい。組織穿刺部材が操縦可能である、または別様に形状を変化させるように構成される、変化例では、アクチュエータは、組織穿刺部材を操縦または操作するための1つ以上の制御機器を備えてもよい。いくつかの変化例では、組織穿刺部材アクチュエータは、コンピュータ制御され、または別様にロボット制御されてもよく、組織穿刺部材は、事前にプログラムされたシーケンスに従って移動させられ、または組織穿刺部材アクチュエータは、施術者によって手動で制御されてもよい。加えて、1つ以上のガイド要素、物質、または他のデバイスが、組織穿刺部材の作業管腔を通して前進させられる、変化例では、組織穿刺部材アクチュエータは、作業管腔にガイド要素、物質、または他のデバイスを導入するための1つ以上のポート、弁、または他の構造を備えてもよい。
【0025】
本明細書で説明されるアクセスデバイスは、心膜を通して心膜腔の中に少なくとも部分的に配置されてもよい、1つ以上のガイド要素を備えてもよい。いったん心膜腔の中に配置されると、ガイド要素は、以下でさらに詳細に説明されるように、それに沿って1つ以上のデバイスが心膜腔に進入するように通ってもよい、アクセス経路を提供してもよい。
図2Cは、アクセスデバイス(200)とともに使用するために好適なガイド要素の2つの変化例、特に、小型ガイドワイヤ(204)および大型ガイドワイヤ(206)を図示し、そのそれぞれは、組織穿刺部材(202)またはシース(208)のいずれか一方を通過させられてもよい。ガイド要素の選択は、部分的に、 に沿って、またはそれを通して前進させられてもよいデバイスによって、決定されてもよい。小型ガイドワイヤ(204)が、約0.014インチから約0.030インチ、例えば、0.025インチの直径を有してもよい一方で、大型ガイドワイヤ(206)は、約0.025インチから約0.038インチ、例えば、0.035インチの直径を有してもよい。いくつかの変化例では、ガイドワイヤ(204)および(206)はそれぞれ、他のデバイス、例えば、他のガイド要素および/または縫合糸を通すために、その少なくとも一部分を通る長手管腔(図示せず)を有してもよい。例えば、大型ガイドワイヤ(206)は、それに小型ガイドワイヤ(204)を通過させるためにサイズ決定される、管腔を有してもよい。さらに、ガイド要素は、デバイス送達を促進してもよい、平滑な低摩擦表面を有してもよい。ガイドワイヤ(204、206)の遠位端(205)および(207)は、スロット付きであってもよく、または区分化されてもよく、それは、付加的な可撓性を提供し、ガイドワイヤ(204)および(206)の前進および操縦性を補助してもよい。ガイドワイヤ(204)および(206)は、任意の不活性な生体適合性材料、例えば、ニッケルチタン合金、ステンレス鋼、またはポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、PVC等等のポリマー材料でできていてもよい。いくつかの変化例では、遠位端(205、207)が、丸みを帯び、または別様に非外傷性であってもよい一方で、他の変化例では、それらは、心膜の特性(例えば、厚さ、脂肪沈着の量、鼓動している心臓による動き等)に応じて望ましく得るように、組織を穿刺することが可能であってもよい。遠位端(205)が非外傷性であってもよい一方で、遠位端(207)は鋭くてもよく、逆もまた同様である。ガイドワイヤ(204、206)の移動およびナビゲーションは、近位ハンドルアクチュエータによって作動させられてもよい。例えば、いくつかの変化例では、組織穿刺部材アクチュエータ(210)は、1つ以上のガイドワイヤを前進させ、または別様に操縦するための1つ以上の制御機器または他の構造を備えてもよい。2つのガイドワイヤ(小型ガイドワイヤ(204)および大型ガイドワイヤ(206))を有するものとして
図2A−2Dに示されているが、本明細書で説明されるアクセスデバイスは、任意の数のガイド要素(例えば、1、2、3、またはそれ以上)を備えてもよく、任意の好適なガイド要素またはガイド要素の組み合わせ(例えば、1つ以上のガイドワイヤ、1つ以上のカテーテル等)を含んでもよい。
【0026】
上述のように、本明細書で説明されるアクセスデバイスの1つ以上の部分(例えば、上記でさらに詳細に説明されるアクセスデバイス200のガイドワイヤ(204)および(206)および/または組織穿刺部材(202))は、任意で、少なくとも部分的にシースに収納され、および/またはシースを通して前進させられてもよい。例えば、
図2Dに示されるように、アクセスデバイス(200)は、シース(208)を備えてもよい。そこで示されるように、シース(208)は、シースアクチュエータ(211)と、長手管腔(図示せず)と、側面開口部(209)とを備える。シースアクチュエータ(211)は、生体構造を通してシース(208)を制御し、操縦し、または別様に操作するように構成されてもよく、それを通して1つ以上のデバイスまたはデバイス構成要素が前進させられてもよい、1つ以上の開口、ポート、および/または弁(図示せず)を備えてもよい。本明細書で説明されるシースは、任意の好適な数の長手管腔(例えば、1つ、2つ、3つ、または4つ以上の長手管腔)を備えてもよく、これらの管腔は、上記で説明されたもの等の任意の好適な方式で形成されてもよい。1つまたは複数の長手管腔は、それらの1つ以上を通したアクセスデバイスの1つ以上の部分(例えば、1つ以上のガイド要素、1つ以上のカテーテル、1つ以上の組織係合部材、1つ以上の組織穿刺部材、それらの組み合わせ等)の通過のために構成されてもよい。いくつかの変化例では、アクセスデバイス構成要素のそれぞれは、シース(208)の単一の管腔を通過してもよい。他の変化例では、シース(208)は、第1および第2の管腔を備えてもよく、第1の管腔は、組織穿刺部材および組織係合要素を摺動可能に収納するように構成されてもよく、第2の管腔は、1つ以上のガイド要素(例えば、第1(204)および/または第2の(206)ガイド要素)を収納するように構成されてもよい。1つ以上のデバイスが、少なくとも部分的に心膜腔内に配置されたガイド要素に沿って、またはそれを通して前進させられる、変化例では、これらのデバイスは、以下でさらに詳細に説明されるように、シースを通して前進させられてもよい。加えて、または代替として、1つ以上の流体または物質(例えば、造影溶液)が、シースを通過させられてもよい。また、別個のアクチュエータ(組織穿刺部材アクチュエータ(210)およびシースアクチュエータ(211))によって制御されるものとして
図2A−2Dに示されているが、シース(208)および組織穿刺部材(202)は、単一のハンドルまたはアクチュエータによって制御されてもよいことを理解されたい。実際に、本明細書で説明されるアクセスデバイスは、アクセスデバイスの種々の構成要素を制御するための複数のハンドルを備えるように構成されてもよく、またはデバイス構成要素のそれぞれを制御する単一のハンドルを備えてもよい。
【0027】
図2Dに示されるように、シース(208)は、側面開口部(209)を備えてもよいが、側面開口部を備える必要はない。側面開口部を含まない変化例では、シースは、任意の好適な数の側面開口部(例えば、1、2、3、または4以上)を備えてもよい。側面開口部(209)は、それを通る治療薬、造影剤等の通過のため、ならびに長手管腔を通して前進させられてもよいデバイスの通過のためにサイズ決定および成形されてもよい。側面開口部(209)は、
図2Dに示されるように、シース(208)の遠位端に向かって位置してもよいが、任意の好適な場所、例えば、概して、組織穿刺部材(202)の側面開口(222)と整合させられ、連絡しているような場所にあってもよい。いくつかの変化例では、複数の側面開口部があってもよく、例えば、同等数の側面開口(222)および側面開口部(209)があってもよい。
【0028】
いくつかの変化例では、シース(208)はまた、操縦可能であってもよい。操縦可能なシースは、可撓性材料でできている単一の管で形成されてもよく、または、各セグメントがヒンジによって接続される、複数の関節動作セグメントを有してもよい。代替として、または加えて、シースは、1つ以上の事前成形された曲線を有してもよい。例えば、シースおよび組織穿刺部材は、相互に合致する同数の事前成形された曲線を有してもよく、および/または両方とも同じ自由度で操縦可能であってもよい。他の変化例では、シースおよび組織穿刺部材は、異なる自由度を有してもよく、例えば、シースが、静止していてもよい一方で、組織穿刺部材は、操縦可能であってもよく、または逆も同様である。シース(208)は、所望量の構造的支持および操縦性を提供する、任意の不活性な生体適合性材料、例えば、ステンレス鋼等のある金属材料、および/またはポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、PVC等等のポリマー材料でできていてもよい。いくつかの変化例では、シース(208)は、周辺構造への外傷を低減することに役立ってもよい、直径を有してもよく、例えば、シース(208)の直径は、約0.053インチから0.210インチに及んでもよい。シース(208)は、ステンレス管、例えば、ハイポチューブから鋳造され、または金属あるいはポリマー物質を使用して押し出されてもよい。
【0029】
アクセスデバイスのある変化例では、ガイドワイヤ、カテーテル、および組織係合部材は、選択されるアクセス経路に好適であるように、(例えば、右または左肋間部位、胸部下部位、横隔膜の下側等から)カニューレまたは他のガイド要素を通して前進させられてもよい。代替として、または加えて、アクセスデバイスは、摺動可能に入れ子にされてもよい、先細形状を伴う複数のシースまたは管を備えてもよい。各入れ子シースが遠位に外向きに前進させられるにつれて、アクセスデバイスの遠位部分は、心膜に向かって押し進められてもよい。アクセスデバイスのいくつかの変化例はまた、1つ以上の拡張器を備えてもよい。
【0030】
上述のように、本明細書のアクセスデバイスのシースは、心臓へのアクセスを促進するための1つ以上の曲線を備えてもよい。これらの変化例では、アクセスデバイスの付加的な構成要素(例えば、針、ガイド要素、組織穿刺要素等)は、シースにおける1つ以上の曲線に対応するようにサイズ決定および成形されてもよい。1つ以上の曲線を伴うシースの一実施例が、
図9Aおよび9Bに示されている。そこで示されるように、シース(902)は、近位部分(904)と遠位部分(908)との間に曲線領域(906)を有してもよい。近位部分(904)は、前述のように、シースアクチュエータに接続されてもよい。シースアクチュエータは、例えば、長手軸に沿って、シースを前進させ、シースの遠位部分を操縦するために使用されてもよく、および/または曲線領域(906)を屈折させるように構成されてもよい。曲線領域(906)は、1つ以上の事前成形された曲線を有してもよく、または近位部分(904)においてシースアクチュエータによって制御される好適な作動機構を使用して、可撓性または屈折可能であってもよい。シース(902)の断面が、
図9Bで描写されている。シース(902)は、それを通る1つ以上の長手管腔、例えば、ワイヤ管腔(910)およびアクセスデバイス管腔(912)を有してもよい。ワイヤ管腔(910)は、それにワイヤを通過させるためにサイズ決定および成形されてもよい。ワイヤへの張力を調整することは、曲線領域(906)の曲率を改変してもよい。例えば、ワイヤ張力を増加させることが、曲線領域(906)の屈折を引き起こしてもよい一方で、ワイヤ張力を減少させることは、曲線領域(906)の直線化を引き起こしてもよい。曲線または屈折可能シースの他の変化例は、それを通る任意の数の管腔、例えば、2、3、5、8等を有してもよい。アクセス管腔(912)は、それに心膜アクセスデバイス、例えば、上記で説明されたアクセスデバイスのうちのいずれかを通過させるようにサイズ決定および成形されてもよい。いくつかの変化例では、シースは、それを通して他のデバイスを挿入するため、および/または必要に応じて、曲線領域(906)の屈曲を制御するために使用されてもよい機構を収容するための付加的な管腔を有してもよい。
【0031】
曲線領域(906)は、可撓性または屈折可能材料でできていてもよく、作動させられたときに曲線領域(906)が屈折することを可能にする、関節動作セグメントの中に配設された実質的に剛性の材料でできていてもよい。曲線領域(906)は、シース(902)の本体と一体的に形成されてもよく、または別々に形成され、シース(902)に取り付けられてもよい。例えば、曲線領域(906)は、Pebax(登録商標)、ナイロン、フッ素重合体(例えば、PTFE、FEP)、ポリエチレン、Teflon(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、Tecothane(登録商標)等のポリマー管類および/または材料でできていてもよい。いくつかの変化例では、曲線領域(906)は、強化ステンレス鋼またはニチノールによるポリマー管でできていてもよい。曲線領域(906)は、実質的に剛性の材料、例えば、ステンレス鋼、ニッケルチタン、ニチノール、コバルト合金(例えば、ニッケル・コバルト、コバルト・ニッケル・クロム・モリブデン)、および/またはPEEK、ポリエチレン(HDPE)、ポリイミド等のポリマー等でできている場合、曲線領域は、屈折が起こることを可能にするようにスロット付きであってもよく、または区分化されてもよい。いくつかの変化例では、曲線領域(907)は、
図9Cに図示されるように、1つ以上のスロット(905)を有してもよい。他の変化例では、曲線領域(906)は、複数のセグメントを備えてもよく、相互に対するセグメントの設置は、ワイヤまたは枢動マンドレルによって制御される。セグメントは、機械的ヒンジおよび/またはリビングヒンジを介して、ともに連結されてもよい。シースはまた、複数の曲線領域を備えてもよく、曲線領域のそれぞれは、同じまたは異なる曲率半径を有してもよい。例えば、1つの曲線領域が、ある可撓性を伴う材料でできていてもよい一方で、別の曲線領域は、異なる可撓性を伴う材料でできていてもよい。他の曲線領域が、適宜に、スロット付きであってもよく、または区分化されてもよい。異なる曲線領域が、シースの真っ直ぐな部分によって分離されてもよく、または連続的であってもよい。複数の曲線領域は、シースの遠位部分を心臓の標的領域へ操縦するように、付加的な操縦性を提供することに役立ってもよい。
【0032】
いくつかの変化例では、曲線領域(906)の曲率は、係止または固定されてもよく、例えば、曲線領域(906)は、最初に、所望の程度の曲率を達成するように作動させられ、次いで、その所望の曲率を保持するように係止される。好適な係止機構は、例えば、ワイヤ管腔(910)を通して挿入されてもよいワイヤの張力を維持すること、またはヒンジ機構を所望の構成に固定化することを含んでもよい。可撓性または軟質曲線領域は、ワイヤ管腔(910)内でワイヤの構成(例えば、曲率、張力等)を固定することによって、所定の位置に係止されてもよい。シースのいくつかの変化例は、事前成形された曲線を有してもよく、曲率半径は、製造時に決定され、シースが使用される際に不変のままである。
【0033】
前述のように、上記の心膜アクセスデバイスのうちのいずれかは、1つ以上の曲線領域を有するシースとともに使用されてもよい。アクセスデバイスの針、組織穿刺部材、およびガイド要素は、それらがシースにおける曲線を通って移動することを可能にする特徴を有してもよい。例えば、アクセスデバイスの針、組織穿刺部材、およびガイド要素は、シースにおける任意の曲線を通過するように構成されるように、屈折可能、可撓性、スロット付き(
図9Cで描写されるスロットと同様)、柔軟であってもよく、および/またはヒンジ連結領域(機械的またはリビング)、事前成形された曲線等を有してもよい。いくつかの変化例では、アクセスデバイスは、シースにおける曲線に合致する、事前成形された曲線を有してもよい。
【0034】
図9Dは、シース(902)を使用する方法の一変化例を描写する。シース(902)は、胸骨(922)の下の位置で被検者(930)に挿入されてもよい。挿入前に、シースは、適宜に、実質的に真っ直ぐであってもよく、または曲線であってもよい。いったんシース(902)が挿入されると、曲線領域(906)は、遠位部分(908)を心臓(920)の表面に近づけるために調整されてもよい。例えば、遠位部分(908)は、肋骨(928)の下で心臓(920)に向かって操縦されてもよい。いったんシース(902)の遠位部分(908)が、所望の場所、例えば、心臓の前側および/またはわずかに外側にあると、曲線領域(906)は、曲線領域の曲率を保持するように係止されてもよい。遠位部分(908)の場所は、任意の好適な撮像モダリティ、例えば、超音波、蛍光透視法等を使用して監視されてもよい。いくつかの方法では、遠位部分(908)の場所は、接触フィードバックによって監視されてもよい。
【0035】
被検者(930)の腹部(924)が、シース(902)が設置されてもよい角度を制限してもよい場合に、上記で示され、説明されるような関節動作シースは、心臓(920)にアクセスするために有用であってもよい。より小さい腹部(924)等のある対象生体構造が、シース(902)に対する広い範囲の操縦性を提供してもよい一方で、より大きい腹部(924)は、シースに対する操縦性の範囲を制限してもよい。対象生体構造が、シースが設置されてもよい範囲を制限する場合に、1つ以上の曲線領域を提供することは、心臓がより容易にアクセスされることを可能にしてもよい。例えば、1つ以上の曲線領域を提供することは、シース(902)を設置するために必要とされてもよい力を低減することに役立ってもよく、最初に計画された経路が利用不可能になった場合に、心臓への付加的なアクセス経路を提供してもよい。
【0036】
本明細書で説明されるアクセスデバイスのうちのいくつかが、シースを備えてもよい一方で、他のアクセスデバイスは、シースおよびシースアクチュエータを持たなくてもよい。実際に、いくつかの変化例では、アクセスデバイスの1つ以上の部分は、シースを用いることなく前進させられてもよい。例えば、いくつかの変化例では、アクセスデバイスは、シースを用いずに前進させられてもよい、上記でさらに詳細に説明されるもの等の組織穿刺部材を備えてもよい。そのような組織穿刺部材は、少なくとも部分的にそれを通る1つ以上の長手管腔、ならびに1つ以上の側面開口を有してもよい。これらの変化例のうちのいくつかでは、アクセスデバイスの1つ以上の構成要素(例えば、1つ以上のガイド要素、1つ以上のカテーテル、1つ以上の組織係合部材、それらの組み合わせ等)が、組織穿刺部材の1つ以上の管腔を通して前進させられてもよい。加えて、または代替として、アクセスデバイスの1つ以上の構成要素は、組織穿刺部とは別に前進させられてもよい。
【0037】
任意で、アクセスデバイス(例えば、アクセスデバイス(200))はさらに、組織穿刺部材(例えば、組織穿刺部材(202))および/またはシース(例えば、シース(208))の中の管腔のうちの1つに接続されてもよい、ガスまたは液体流体源を備えてもよい。ガス状および/または液体化合物を使用して心膜に通気することは、心膜の一部分と心臓との間の距離を増大させることに役立ってもよい。これは、心臓を穿刺することなく、心膜が穿刺されることを可能にしてもよい。
図2Eに示されるように、二酸化炭素吸入器(230)が、アクセスデバイス(200)とともに含まれてもよいが、二酸化炭素(CO
2)、亜酸化窒素(N
2O)、ヘリウム(He)、空気、窒素(N
2)、アルゴン(Ar)、またはドデカフルオロペンタン、オクタフルオロプロパン、デカフルオロブタン等のフッ素化ガス、生理食塩水、ヒアルロン酸、トリアムシノロン等の抗炎症薬等を含むが、それらに限定されない、他の種類のガスおよび流体も使用されてもよいことを理解されたい。二酸化炭素吸入器(230)は、流量調節器(232)と、弁(234)とを備えてもよい。流量調節器(232)は、穿孔のために心膜腔を準備するために必要とされるガスの量を提供するように、手動で、または機械で調整されてもよい。いくつかの変化例では、流量調節器は、事前にプログラムされたアルゴリズムに従ってガスの流量を調節してもよく、および/またはリアルタイム測定(例えば、撮像、センサ、および/または生理学的データ)に応答して調整されてもよい。弁(234)は、アクチュエータ(210)および/または(211)と相互係止するようにサイズ決定および成形されてもよく、例えば、インターロックは、Luer−Lok
TM、Luer−Slip
TM、摩擦嵌合、スナップ嵌合、ネジ嵌合、または任意の好適なコネクタ機構であってもよい。弁(234)は、アクセスデバイス(200)上の他のアクチュエータと同時に作動させられてもよく、または独立して作動させられてもよい。弁は、組織穿刺部材および/またはシースと併せて作動させられてもよく、または独立して作動させられてもよい。いくつかの変化例では、組織穿刺部材およびシースが、ともに作動させられてもよい一方で、他の変化例では、それらは、独立して作動させられてもよい。
【0038】
上記で説明されたように、アクセスデバイス(200)は、1つ以上の組織係合部材を備えてもよい。概して、組織係合部材は、心膜の一部分に係合してもよく、それは、以下でさらに詳細に説明されるように、心膜の操作を可能にしてもよい。管腔(例えば、シース管腔および/または組織穿刺部材管腔)を通して前進させられ得る組織係合部材の例示的な変化例が、
図3A−3Hに示されている。
図3Aは、組織係合部材(304)の第1の変化例を描写する。そこに示されるように、組織係合部材(304)は、遠位端(305)を有し、少なくとも部分的にフックの形態であり、少なくとも部分的に組織穿刺部材(302)(例えば、多重管腔針)の第1の管腔(図示せず)を通して前進させられるようにサイズ決定および構成される。組織係合部材(304)は、遠位端(305)の組織係合部材(304)が、組織穿刺部材(302)に対して前進させられるか、または引き込まれ得るように、組織穿刺部材(302)の第1の管腔内に摺動可能に担持されてもよい。組織係合部材(304)の遠位端(305)が組織穿刺部材(302)の遠位端を越えて前進させられたときに、遠位端(305)のフック付き部分は、以下でさらに詳細に説明されるように、心膜に係合して操作してもよい。
【0039】
フック付き遠位端(305)を有するものとして
図3Aに示されているが、組織係合部材は、心膜組織に係合することが可能な1つまたは複数の任意の好適な構造を有してもよい。例えば、組織係合部材の遠位端はまた、その遠位端にコルク栓抜き組織係合要素(309)を備える、
図3Bに示される組織係合部材(308)等の1つ以上のコルク栓抜きの形状であってもよい。組織係合部材(308)は、組織穿刺部材(302)の第1の管腔の中に摺動可能に配置されてもよい。組織係合部材(308)のコルク栓抜き組織係合要素(309)を回転させることは、組織係合部材(308)を心膜組織に係合させ、心膜組織の中にねじ込ませ得る。他の変化例では、組織係合要素は、組織穿刺部材の遠位部分に複数の組織係合要素を備えてもよい。組織係合部材の別の変化例が
図3Cに示されており、組織係合部材は、アンテナのように成形される2つの組織係合要素(310a)および(310b)を備える。組織係合要素(310a)および(310b)は、組織係合要素の間に組織を引っ掛けること、および/または把持することによって、組織に係合するように、組織穿刺部材(312)(例えば、針)の中の2つの長手管腔(図示せず)を通して前進させられてもよい。長手針管腔は、それに1つ以上のガイド要素が通過させられ得るように、第3の管腔(313)と平行に配設されてもよい。組織係合部材はまた、1つ以上の長手管腔を介して、組織穿刺部材を通して前進させられてもよい1つ以上の四爪アンカ組織係合要素を備えてもよい。
【0040】
本明細書の全体を通して説明される組織係合部材の遠位端は、組織穿刺部材またはシースの管腔を通過するときの扁平な構成と、組織穿刺部材の遠位端から外に前進させられたときの展開構成との間で変化し得る。折畳み、圧縮、または狭い外形を有することは、組織穿刺部材の管腔を通して前進させられる際に、組織係合部材の移動を促進し得る。組織係合部材の遠位端は、例えば、組織穿刺部材の遠位端において、管腔から退出した後に、曲線、拡張、または拡大外形(例えば、組織係合部材(304)、組織係合部材(308)、および組織係合要素(310a)および(310b)について
図3A−3Cで描写されるように)を成してもよい。組織係合部材の1つ以上の部分は、組織穿刺部材の管腔の中では真っ直ぐにされ、または別様に拘束されてもよく、展開時にその展開形状を成し得るニッケルチタン合金等の超弾性または形状記憶材料でできていてもよい。いくつかの変化例では、非展開構成から展開構成まで組織係合部材を押し進めて得る付加的な作動機構があってもよい。例えば、組織係合部材は、管腔を通して送達中に概して真っ直ぐである複数のセグメントを備えてもよく、セグメントを相互に連結するマンドレルを作動させることによって、曲線形状に遷移されてもよい。代替として、組織係合部材は、組織に係合するためにすでに好適となっている構成で、組織穿刺要素(302)の管腔を通して前進させられてもよく、展開時に別個の構成を成す必要がない。
【0041】
図3Dは、遠位端が少なくとも鋸歯の形態である組織係合部材(316)の別の変化例を描写する。具体的には、組織係合部材(316)は、(上記で説明されたように)組織穿刺部材(322)の第1の管腔を通って前進可能であり得、心膜組織に係合するために望ましいように、複数の歯(317)(例えば、1、2、3、5、10等)を備えてもよい。組織係合部材のある変化例は、尖叉が心膜面を横断して引かれるにつれて、心膜組織に係合し得る複数の尖叉を備えてもよい。組織係合部材(316)が、針(322)の第2の管腔を通して前進させられてもよい一方で、ガイド要素は、針(図示せず)の第1の管腔を通して前進させられてもよい。組織係合部材(316)は、心膜の表面を横断して歯(317)を前進させ、次いで、歯(317)を心膜に突き立てさせ、固定させ、または別様に係合させるように、組織係合部材(316)を後退させ、または別様に引き込むことによって、組織に係合してもよい。歯(317)は、針(322)の第2の管腔を通して前進させられ、それによって拘束させられているときは非展開構成を成し、針管腔から退出するときに展開構成を成してもよい。非展開構成において、歯(317)が、針(322)の管腔を容易に通過して得るように、組織係合部材の輪郭に沿って圧縮されてもよい。展開構成において、歯(317)は、組織係合部材(316)から突出していてもよい。いくつかの変化例では、歯が、ニッケルチタン合金等の超弾性または形状記憶材料、またはポリエチレン、ナイロン、ポリプロピレン、PVC等等のポリマーでできていてもよい一方で、他の変化例では、歯は、ステンレス鋼、コバルト合金(例えば、ニッケル・コバルト、コバルト・ニッケル・クロム・モリブデン)等の非弾性生体適合性材料でできていてもよい。超弾性または形状記憶材料でできている歯は、付加的な作動を伴わずに非展開構成から展開構成まで可逆的または不可逆的に遷移し得る。例えば、組織係合部材および/または歯は、歯が組織係合部材から突出する拡張構成を手動で有してもよく、針管腔の中で拘束されたときには、圧縮構成のみである。いったん管腔から解放されると、組織係合部材および/または歯は、自動的にその拡張構成を成してもよい。組織係合部材および/または歯が非弾性材料でできている他の変化例では、歯は、付加的な作動機構を使用することによって、非展開構成から展開構成まで(例えば、折り畳んだおよび/または圧縮した非展開構成から拡張した展開構成まで)遷移してもよい。例えば、歯のそれぞれは、ヒンジによって組織係合部材に取り付けられてもよく、非展開構成である場合、歯は、組織係合部材の長手軸に向かって内向きに回転させられ、展開構成では、歯は、組織係合部材の主軸から離れるように外向きに回転させられる。しかしながら、組織に係合するときに歯が超柔軟に抵抗し得るように、歯は、主軸に対してある点を越えて回転するように構成されてもよい。他の好適な機械的構成が、歯(317)の展開を補助するために使用されてもよい。
【0042】
組織係合部材の別の変化例が
図3Eおよび3Fに示されている。そこに示されるように、組織穿刺部材(332)(例えば、針)は、遠位場所における1つ以上の側面開口(334)と、それを通る少なくとも1つの管腔とを備えてもよく、側面開口(334)および管腔は、相互に連絡している。歯(336)等のブラシ状特性を有する組織係合部材は、前述のように歯(336)が後退させられる展開していない折畳み構成において、少なくとも1つの管腔を通して前進させられてもよい。いったん組織係合部材が完全に前進させられると、以下でさらに詳細に説明されるように、歯(336)が心膜組織に係合するように側面開口(334)を通って突出する、
図3Fに見られるような展開した拡張構成に押し進められてもよい。加えて、組織穿刺部材(332)の側面開口(334)を通って延在するものとして
図3Eおよび3Fに示されているが、組織係合部材の歯(336)は、加えて、または代替として、以下でさらに詳細に説明されるように、シースまたは他のカテーテルの1つ以上の側面開口(図示せず)を通って延在するように構成されてもよい。
【0043】
いくつかの変化例では、組織係合部材はまた、心膜を穿刺する組織穿刺部材としての役割を果たしてもよい。例えば、
図3Gは、心臓の心膜腔にアクセスするためにアクセスデバイス(348)とともに使用され得る組織係合部材の別の変化例を描写する。そこで示されるように、デバイス(348)は、シース(342)と、カテーテル(344)と、組織係合部材、例えば、カテーテル(344)から延在する鉤(347)とを備える。鉤(347)は、カテーテル(344)に接続され、またはカテーテル(344)と一体的に形成されてもよく、ガイド要素(図示せず)または1つ以上の流体が、カテーテル管腔(346)を通って鉤管腔(345)から外に通過させられ得るように、カテーテル管腔(346)に続く鉤管腔(345)を備えてもよい。鉤(347)は、カテーテルの外面に対して角度を成して、カテーテル(344)から突出してもよい。例えば、鉤(347)は、カテーテルの表面とほぼ垂直に突出してもよく、またはほぼ接線方向に、あるいは約1°〜30°、または約20°〜30°、または約30°〜50°、または約40°〜70°、または約65°〜90°、または約90°以上等の間の任意の角度で突出してもよい。カテーテル(346)が心膜に対して(例えば、横方向運動、回転等)移動させられたときに、鉤(347)の最遠位端は、例えば、引っ掛けることまたは穿刺することによって、組織に係合することが可能であってもよく、および/または組織に密接に接触するように構成されてもよい。鉤(347)の長さ(L
1)は、心膜組織の厚さによって決定されてもよい。例えば、長さ(L
1)は、心臓を穿刺または損傷することなく心膜が係合されることを確実にすることに役立つように選択されてもよく、約0.1ミリメートルから約12ミリメートル、例えば、0.1ミリメートルから10ミリメートル、または6ミリメートルから12ミリメートルであってもよい。鉤(347)のいくつかの変化例は、心膜の厚さに近似する、例えば、約0.2ミリメートルから約7ミリメートルの長さ(L
1)を有してもよい。カテーテル(344)は、シース(342)の管腔(343)内に摺動可能に包み込まれてもよい。シース(342)は、鉤(347)を覆って延在するように、例えば、鉤(347)を覆い、組織が鉤と不慮に係合することを防止することに役立ち得るように、例えば、ハンドルアクチュエータを使用して、近位部分から作動させられてもよく、例えば、鉤(347)を露出させて組織に係合するように、鉤(347)から後退させられてもよい。
図3Gに示されるデバイス(348)のいくつかの変化例では、デバイス全体が、その長手軸の周りを回転または捻転させられてもよい。デバイス(348)を使用する方法を以下で説明する。
【0044】
図3Hは、組織係合部材が組織穿刺部材としての役割も果たし得る、アクセスデバイス(360)の別の変化例を図示する。心膜腔にアクセスする組織係合要素を備えるアクセスデバイス(360)の別の変化例の遠位部分が、
図3Hに示されている。そこで示されるように、デバイス(360)と、係合要素(362)と、内側管状本体(364)とを備える。係合要素(362)は、少なくとも部分的にそれを通って延在する長手管腔(361)を有してもよく、内側管状本体(364)は、管腔(361)に収納されてもよく、または別様に少なくとも部分的に管腔(361)を通って延在してもよい。内側管状本体(364)は、次に、それを通って延在する長手管腔(373)を有してもよい。長手管腔(361、373)は、例えば、係合要素(362)または内側管状本体(364)に完全に取り囲まれた、閉鎖形状を有してもよく、または、1つ以上のデバイスがそれを通して前進させられるために好適であるように、開放形状、例えば、C字形であってもよい。本明細書で説明される係合要素(362)および内側管状本体(364)はそれぞれ、それを通る1つの長手管腔を有するが、それぞれ所望に応じて付加的な長手管腔を有してもよく、上記でさらに詳細に説明されるように構成されてもよいことを理解されたい。例えば、付加的な管腔が、薬剤送達、造影剤注入、ガイドワイヤ送達、デバイス送達等のために係合要素(362)および/または内側管状本体(364)の中で提供されてもよく、各管腔は、1つ以上の機能に使用されてもよい。
【0045】
図3Hにおいて見られるように、長手管腔(361)は、係合要素(362)の遠位先端(369)から延在する開口(367)で終端する。他の変化例では、開口は、完全に係合要素(362)の側壁内に位置してもよい。しかし、他の変化例では、開口(367)は、係合要素(362)の主長手軸に対して角度を成して設定されてもよく、または係合要素および/または長手管腔(361)と平行あるいは同心状であってもよい。遠位先端(369)は、心臓組織を穿孔または穿刺することができる1つ以上の特徴を有してもよい。例えば、
図3Hに描写されるように、遠位先端(369)は、鋭いが、加えて、または代替として、心膜に穿孔またはスリットを作成するために好適であるように尖っていてもよく、勾配付きであってもよく、または角度があってもよい。いくつかの変化例では、係合要素(362)の幾何学形状は、1つ以上の曲線、例えば、丸い縁(370)を備えてもよい。丸い縁(370)は、非外傷性組織接触を促進し得る任意の好適な幾何学形状または曲率半径を有してもよい。例えば、心臓を穿孔する危険性を最小化しながら、心膜が係合および穿孔され得るように、丸い縁は、心臓の1つ以上の曲線に対応する先細または曲線を有してもよく、あるいは卵形または楕円形の一部分であってもよい。係合要素(362)はまた、遠位先端(369)から離れた長さ(L
2)に位置する1つ以上の溝(368)を備えてもよい。長さ(L
2)は、約2ミリメートルから約3ミリメートルであってもよい。例えば、長さ(L
2)は、心臓を穿刺または穿孔することなく遠位先端(369)が心膜のみを穿孔し得るように選択されてもよい。溝(368)は、長さ(L
3)を有してもよく、(L
3)は、約1ミリメートルから約2ミリメートルであってもよい。例えば、長さ(L
3)は、部分的に、約1.5ミリメートルから約4.5ミリメートルの心膜の厚さによって決定されてもよい。下記でさらに説明されるように、組織係合部材(362)が心膜組織の中に前進させられたときに、溝(368)は、心膜組織を捕捉するか、または別様に係合するように作用してもよく、それは、組織係合部材(362)による貫通の深さを制限し、および/または心臓に対して心膜を持ち上げるように作用してもよい。いくつかの変化例では、最大穿孔深さは、部分的に長さ(L
2)によって決定されてもよい。
【0046】
内側管状本体(364)は、管腔(373)と連絡している1つ以上の側面開口(372、374、376、および378)および/または遠位開口(380)と、尖った先端(371)とを備えてもよい。いくつかの変化例では、内側管状本体(364)は、尖った先端(371)が心膜を穿孔するか、穿刺するか、またはそれにスリットを作成することに役立つ針であってもよい。管腔(373)は、それにガイド要素、ガイドワイヤ(366)を通過させるようにサイズ決定および成形されてもよい。いくつかの変化例では、管腔(373)は、それを通るガイドワイヤ(366)の通過を容易にすることに役立ってもよい特徴、例えば、摩擦低減被覆、ガイドワイヤの曲率と対応する曲線等を備えてもよい。代替として、または加えて、管腔(373)は、種々の流体の送達のために構成されてもよい。例えば、任意の好適なガス(例えば、二酸化炭素、酸素、窒素、またはガスの混合物)は、心膜腔に通気するように管腔を通して送達されてもよく、および/または治療薬、洗浄剤、および/または造影剤も送達されてもよい。内側管状本体(364)は、いずれの側面開口も備える必要はないが、内側管状本体(364)が1つ以上の側面開口を備える変化例では、任意の所望の流体の送達のためにサイズ決定および成形された任意の数の側面開口(例えば、1、2、4、7、10等)があってもよい。例えば、略円形であるものとして
図3Hに示されているが、側面開口(372、374、376、および378)は、それを通る所望の流体の効果的な送達のために適宜に、任意の好適な形状であってもよい(例えば、長方形、六角形等であってもよい、および/またはスリットであってもよい)。いくつかの変化例では、内側管状本体(364)の遠位部分は、遠位部分に沿った流体の放出を可能にしてもよい、メッシュ材料でできていてもよい。係合要素(362)および内側管状本体(364)等のデバイス(360)の種々の構成要素は、ナイロン、PEBAX、ポリイミド、PEEK、ニチノール等等の任意の生体適合性材料でできていてもよい。
【0047】
図3A−3Hに示される組織係合部材の前進および展開は、近位に位置するアクチュエータによって制御されてもよい。いくつかの変化例では、組織係合部材を制御するアクチュエータはまた、アクセスデバイスの1つ以上の他の構成要素(例えば、組織穿刺部材、シース等)を制御してもよい。組織係合部材が心膜に係合し、および/または特定の様式でそれを操作するときに、そのような係合および操作は、アクチュエータによって制御されてもよい。例えば、アクチュエータは、組織穿刺部材またはシースに対して組織係合部材を移動させて、扁平な非展開構成と展開構成との間で組織係合部材を移動させるように構成されてもよい。アクチュエータは、回転運動(例えば、コルク栓抜き部材または鉤付きカテーテル)、横方向運動(例えば、鋸歯)、捻転運動、それらの組み合わせ等で、組織係合部材または部材を移動させるようにさらに構成されてもよい。いくつかの変化例では、心膜は、加えて、施術者によって手動で操作されるか、あるいは施術者および/または機械によって機械的に操作されてもよい。
【0048】
いくつかの変化例では、組織係合部材の1つ以上の表面は、心膜組織との摩擦接触または他の係合を増進されるように修飾されてもよい。例えば、いくつかの変化例では、組織係合部材は、心膜組織との表面領域接触を増大させるように、テクスチャ加工表面を有してもよい(例えば、縞模様である、溝付きである、格子縞である、フック付きである、ループ状である等)。組織係合部材は、また、心膜との堅固で確実な相互作用を確保することに役立つように、組織係合要素上に1つ以上の摩擦増進表面被覆を備えてもよい。いくつかの変化例では、被覆は、また、組織接触領域の表面積を増大させるように、テクスチャ加工表面を作成してもよい(例えば、縞模様である、溝付きである、格子縞である、フック付きである、ループ状である等)。代替として、または加えて、組織係合部材および要素の表面は、組織係合要素と心膜との間の接着または他の引力相互作用を促すことに役立ってもよい、任意の材料で修飾されてもよい。例えば、材料は、疎水性または親水性相互作用によって心膜に係合してもよい、接着表面を有してもよく、心膜との一時的または永久的結合を形成するように構成されてもよい。そのような材料の実施例は、アクリル、嫌気性物質、シアノアクリルレート、エポキシ、熱溶解物、シリコーン、ウレタン、および紫外線/光硬化性接着剤等等のポリマー結合剤、生体適合性摩擦粒子および液体樹脂、セルロース繊維、セラミック繊維、綿繊維、雲母、バーミクライト(vermiculate)、シリコーン、ラテックス、ポリイソプレン、またはゴムのような弾性材料等を含む。いくつかの変化例では、表面は、組織係合要素が心膜に付着することに役立ってもよい、心膜の表面に位置する受容体または抗原に結合する、抗原または受容体で修飾されてもよい。
【0049】
組織係合部材および/または要素のいくつかの変化例は、少なくとも部分的に導電性材料でできていてもよく、電気生理学的測定値を得る、ならびに電流を組織に印加する、または組織において電界を作成するために使用されてもよい。電流は、細動心臓組織に対する治療の一部として印加されてもよく、または組織を切除するために使用されてもよい。電界または電位が、心臓組織を刺激するために印加されてもよい。そのような変化例について、組織係合部材および要素は、組織係合部材と心臓組織表面との間の接合点において所望の電流密度を達成するように、ある幾何学形状を有してもよい。例えば、組織係合部材と組織表面との間の接触面積が、(例えば、電流密度を減少させるように)増大させられ、または(例えば、電流密度を増加させるように)減少させられてもよい。また、注入した電流のための経路を提供し、および/または電気測定のための基準基底を提供してもよい、電流源または電流シンクとしての役割を果たす、組織係合部材があってもよい。上述の機能のための好適な電気的性質を有してもよい、生体適合性電極材料は、白金、イリジウム、ロジウム、金、パラジウム、種々の白金合金(例えば、プラチナ・イリジウム)、ステンレス鋼(例えば、316LVM)、コバルト合金(例えば、ニッケル・コバルト、コバルト・ニッケル・クロム・モリブデン等)等の金属材料を含んでもよい。電極は、適宜に、塩化銀、酸化イリジウム等で被覆されてもよい。他の変化例では、電気刺激または測定が望ましくない場合、組織係合部材および/または要素は、電気的に中性であってもよい、ポリカーボネート、Ultem(登録商標)(ポリエーテルイミド)、PEEK、Teflon(登録商標)等の非伝導性または絶縁材料でできていてもよい。
【0050】
(II.方法)
心膜腔にアクセスする方法も本明細書で提供され、上記で説明されたデバイスのうちの1つ以上を使用してもよい。心臓の心膜腔にアクセスするために使用され得る方法(400)の一変化例は、
図4Aにおいてフローチャートとして示されている。心臓および周辺心膜構造は、最初に、任意の適切な撮像モダリティ、例えば、直接可視化、蛍光透視法、内視鏡検査、心エコー検査、またはそれらの任意の組み合わせを使用して撮像されてもよい(401)。本明細書で説明される方法のステップのうちのいくつかまたは全ては、これらの撮像モダリティのうちの1つ以上を使用して可視化の下で行われてもよく、デバイスの1つ以上の部分は、これらのモダリティのうちの1つ以上を使用して視認するために構成されてもよい。組織穿刺部材、例えば、針が、画像誘導下で心膜の表面に向かって前進させられてもよい(402)。組織穿刺部材は、既知の経皮および/または低侵襲技法を使用して導入されてもよい。いくつかの変化例では、シース(例えば、シース(208)またはシース(902))が、最初に、身体の中に(例えば、胸骨の下に)配置されてもよく、組織穿刺部材が、シースの少なくとも一部分を通して前進させられてもよい。組織穿刺部材が心膜に向かって前進させられるにつれて、組織穿刺部材の遠位端は、心膜の表面またはその付近に配置されてもよい。例えば、いくつかの変化例では、組織穿刺部材の遠位端は、心膜に触れることなく心膜の付近に設置されてもよい。他の変化例では、組織穿刺部材の遠位端は、心膜の1つ以上の部分と接触しているように設置されてもよい。組織穿刺部材の設置は、上述の撮像モダリティのうちの1つ以上等の任意の好適な方式で確認および/または誘導されてもよい。組織穿刺部材が心膜の1つ以上の部分と接触しているように設置される、変化例では、設置は、組織穿刺部材の触覚フィードバックによって確認および/または誘導されてもよい。
【0051】
いったん組織穿刺部材が心膜に対して設置されると、1つ以上の組織係合部材は、心膜の組織に係合するように展開されてもよい(404)。次いで、組織係合部材および/または組織穿刺部材は、穿刺するために心膜を操作するために、移動させられ、または別様に操作されてもよい(406)。例えば、組織係合部材および/または組織係合部材は、以下で詳細に説明されるように、心臓から心膜を分離して心膜腔を局所的に拡大するように移動させられ、または別様に作動させられてもよい。加えて、または代替として、以下でさらに詳細に説明されるように、流体通気もまた、心膜腔の一部分を拡大するために使用されてもよい。心膜の設置は、上記で説明されたもの等の任意の好適な方式で確認されてもよい。
【0052】
係合した心膜が所望に応じていったん設置されると、組織穿刺部材は、心膜を穿孔して心膜腔に進入するように前進させられ、または別様に操作されてもよい(408)。針を介した心膜腔へのアクセスが確認されてもよく(410)(例えば、可視化を使用して、および/または組織穿刺部材を介して心膜腔に1つ以上の造影溶液を導入して)、上記で説明されたもの等のガイド要素(例えば、ガイドワイヤ)の遠位端は、心膜腔の中に前進させられてもよい(411)。ガイド要素は、施術者によって手動で、または施術者によって起動されてもよい作動機構によって機械的に、前進させられてもよい。例えば、ガイド要素は、施術者によって起動されてもよい、歯車駆動型またはバネ機構によって前進させられてもよい。ガイドワイヤの前進は、ユーザによって制御され、または機械によって制御されてもよく、ガイドワイヤの移動は、コンピュータデバイスに事前にプログラムされてもよい。いくつかの変化例では、ガイドワイヤのユーザ制御前進は、手動であってもよく、ユーザは、例えば、ガイドワイヤを直接押すことによって、ガイドワイヤを直接前進させる。加えて、または代替として、ユーザ制御前進は、自動であってもよく、ユーザは、機構を作動させ、次に、機構は、ガイドワイヤを前進させる。自動機構の実施例は、歯車駆動、バネ機構等を含む。任意で、ガイドワイヤが前進させられるにつれて、造影剤または他の流体が心膜腔に注入されてもよい。造影剤は、ガイドワイヤが心膜腔の中に前進させられる前および/後に注入されてもよく、いくつかの変化例では、ガイドワイヤの前進と同時に注入されてもよい。加えて、または代替として、ガイドワイヤは、ガイドワイヤの前進の深さを示してもよい、1つ以上の深さマーカーを備えてもよい。
【0053】
いったんガイド要素が少なくとも部分的に心膜腔の中に配置されると、適所にガイド要素を残して、アクセスデバイスの1つ以上の部分(例えば、組織穿刺部材、組織係合部材等)が除去されてもよい。ガイド要素は、1つ以上の他のデバイスのための心膜腔へのアクセス経路を提供することに役立ってもよい。いくつかの変化例では、1つ以上の拡張器が、心膜腔の中にカテーテルまたは他のデバイスを誘導する、または別様に配置するように、ガイド要素上で前進させられてもよい。加えて、または代替として、次いで、1つ以上の付加的なデバイス(例えば、電極リード線、切除デバイス等)が、心膜腔にアクセスするように、ガイド要素上で、ガイド要素に沿って、またはガイド要素を通して前進させられてもよく、1つ以上の手技は、心膜アクセスを介して行われてもよい。そのような手技の実施例は、左心耳閉鎖、薬剤またはインプラント送達、1つ以上の切除手技、弁修復等を含むが、それらに限定されない。また、アクセスデバイスがシースを備える、変化例では、シースは、ガイド要素上で、ガイド要素に沿った、またはガイド要素を通した、付加的なデバイスの前進を補助することに役立つように、少なくとも一時的に適所にとどまってもよいと理解されたい。
【0054】
図4B−4Dは、
図3Aに描写され、示されるデバイス等のアクセスデバイスの組織係合部材が、
図4Aのフローチャート形式で描写される方法(400)とともに使用され得る1つの方法を図示する。具体的には、針(412)は、
図4Bに示されるように、上記で説明された任意の方式で心膜(417)に向かって前進させられてもよい。針(412)を備えるものとして
図4B−4Dに示されているが、アクセスデバイスは、上記で説明された組織穿刺部材のうちのいずれかを含んでもよい。加えて、心膜(417)に接触することなく心膜(417)の付近に前進させられるものとして
図4Bに示されているが、場合によっては、針の少なくとも一部分が心膜(417)と接触しているように、針(412)が前進させられてもよいことを理解されたい。
【0055】
いったん適所に置かれると、組織係合部材(414)のフック付き遠位端(415)は、
図4Bに図示されるように、針(412)の管腔(図示せず)から外に前進させられ、矢印(420)の方向に心膜(417)に向かって前進させられ、心膜(417)と係合するように操作され得る。フック付き遠位端(415)を有するものとして
図4Bに示されるように、組織係合部材(414)は、本明細書の全体を通して説明されるような任意の好適な組織係合部材であってもよいことを理解されたい。いったん心膜がフック付き遠位端(415)によって係合されると、組織係合部材(414)は、
図4Cに示されるように、矢印(422)の方向に引き込まれてもよい。これは、心臓(図示せず)の表面から心膜(417)を引き離すように作用してもよく、それは、心膜の一部分と心臓との間の距離を増大させてもよい。場合によっては、針(412)と組織係合部材(414)とは、同時に引き込まれてもよい。他の場合においては、組織係合部材(414)は、心膜(417)と針(412)との間の距離が減少させられるように、針(412)に対して引き込まれてもよい。これらの変化例のうちのいくつかにおいて、組織係合部材(414)の引き込みは、針が組織を穿孔し、または別様に貫通するように、針(412)に対して心膜(417)を引いてもよい。他の変化例では、針(412)は、
図4Dに示されるように、心膜(417)を穿孔するように矢印(424)の方向へ組織係合部材(414)および心膜(417)に対して前進させられてもよい。また、いくつかの変化例では、組織係合部材(414)が引き込まれてもよく、針(412)が組織を穿刺するように同時に前進させられてもよいことも理解されたい。
【0056】
心臓の心膜腔にアクセスするためのデバイスおよび方法の別の変化例が、
図5A−5Lに描写されている。
図5A−5Eは、方法(400)の変化例とともに使用され得るアクセスデバイス(500)の一変化例を示す。アクセスデバイス(500)は、組織穿刺部材、例えば、針(502)と、1つ以上の組織係合部材、例えば、組織係合部材(506)と、ガイド要素(図示せず)とを備え、組織係合部材(506)およびガイド要素は、針(502)の中に収納される。この変化例では、針(502)は、1つ以上の側面開口(504)に接続される第1の長手管腔(505)と、第2の長手管腔(503)とを備えてもよい。針(502)は、針の近位部分上に位置し得る針アクチュエータ(508)によって移動、操縦されてもよい。組織係合部材(506)は、第1の管腔(505)の中に配置され、非展開構成で遠位に前進させられてもよく、組織係合部材アクチュエータ(510)によって移動、操縦されてもよい。例えば、組織係合部材アクチュエータ(510)は、組織係合部材(506)を前進、後退、および/または展開するために使用してもよい。
図5Bは、
図5Aの点線に沿って得られた断面を描写する。ここで示されるように、第1の長手管腔(505)は、第2の長手管腔(503)より下側に設置され、第1の長手管腔(505)は、円形であり、第2の長手管腔(503)は、半円形である。しかしながら、他の変化例では、第1および第2の長手管腔は、他の好適な構成で配設されてもよく、異なるサイズおよび形状であってもよい。例えば、両方の長手管腔は、半円形、円形、長方形、三角形、六角形、または任意の他の閉鎖形状であってもよい。針の中の長手管腔は、相互とは異なるサイズであってもよく、または同じサイズであってもよい。第1の長手管腔(505)および第2の長手管腔(503)のサイズおよび形状は、それらを通して前進させられるデバイスのサイズおよび形状に応じて変化してもよい。任意で、長手管腔の内面は、それを通るデバイスの通過を促進するように修飾されてもよい。例えば、管腔の内面は、それを通るデバイスの通過に対する抵抗(例えば、摩擦)を増加または減少させるように修飾されてもよい。いくつかの変化例では、長手管腔の内側部分は、それを通して前進させられているデバイスの上にあってもよい1つ以上の突出および溝と相互嵌合し得る1つ以上の溝および突出を備えてもよい。例えば、長手管腔およびデバイスの中の溝または突出は、デバイス上の突出が管腔の中の溝と相互嵌合するときに、デバイスのデバイス場所が固定され得るように構成されてもよい。デバイスをさらに前進させるために、デバイスの突起が管腔の中の溝から係脱され得るように、付加的な力が印加されてもよい。デバイスが、増分的または段階的に管腔を通して前進させられ得るように、長手管腔の中に複数の溝があってもよい。長手管腔の中の溝または突出は、所望に応じて、規則的または不規則的な間隔で離間していてもよい。
【0057】
図に戻ると、組織係合部材(506)は、1つ以上の組織係合要素(509)を備えてもよい。組織係合要素(509)は、1つ以上の鉤、突起、スパイク等を備えてもよく、扁平な圧縮構成と拡張した展開構成との間で動くことが可能であり得る。
図5Aは、組織係合要素が第1の管腔(505)内で圧縮されている非展開構成の組織係合部材(506)を示す。
図5Cは、組織係合要素(509)が拡張されている展開構成の組織係合部材(506)の断面を示す。
図5Dに見られるように、組織係合部材(506)が第1の管腔(505)の中で前方に前進させられるにつれて、個別組織係合要素が、針(502)の側面開口(504)を通って延在し得る一方で、他の変化例では、組織係合部材は、組織係合要素が第1の管腔(505)の外側の場所まで前進させられた後に展開されてもよい。これらの他の変化例では、針(502)は、組織係合要素を通すためにサイズ決定および成形された側面開口(504)を持たなくてもよい。
【0058】
図5Eは、
図5Dの点線に沿ったデバイス(500)の遠位端の正面図を描写し、
図5Fは、デバイス(500)の遠位部分の接近図を描写する。針(502)は、
図5Eに示される、第2の管腔(503)が遠位端における開口部で終端する、勾配付き遠位先端(512)を有する。針または組織穿刺部材の他の変化例の遠位先端は、先細の尖った先端、または他の先端幾何学形状を有してもよい。針(502)の第1の管腔(505)は、針内に完全に封入されたままであり(例えば、
図5F)、展開構成の組織係合要素(509)は、側面開口(504)を介して第1の管腔(505)から退出する。組織係合要素(509)は、(
図5Dに示されるような)鋭角で、(
図5Fに示されるように)第1の管腔(505)の長手軸に対して略垂直に、側面開口(504)を介して第1の管腔(505)から延在してもよく、または組織係合要素(509)は、複数の角度で延在してもよい。前述のように、針の他の変化例が、方法(400)とともに使用されてもよく、針の長手管腔は、遠位端における開口部で終端してもよい。これは、組織係合部材が針の遠位先端を通過することを可能にしてもよい。
【0059】
デバイス(500)は、
図5G−5Lに図示されるような方法(400)の一変化例に従って使用されてもよい。
図5Gに示されるように、針(502)は、任意の好適な技法によって、心膜(530)の表面に向かって導入されてもよい。使用される組織係合部材の変化例および心膜(530)の性質に応じて、示されるような針(502)と心膜(530)との間の直接接触があってもよく、または針(502)が心膜に直接接触することなく心膜にごく接近して設置されてもよい。例えば、針は、心膜の表面に対して接線方向に設置されてもよい。組織係合要素(509)が、
図5Hで描写されるように、側面開口(504)から退出して心膜(530)の一部分に係合するように、組織係合部材アクチュエータ(510)は、組織係合部材(506)を前進させて展開するように作動させられてもよい。いったん心膜が組織係合部材(506)によって係合されると、心膜は、組織係合部材および/または針によって操作されてもよい。例えば、針(502)は、矢印(514)に従って、任意の度数(例えば、10°、30°、45°、90°、120°、180°、270°、300°、360°等)で回転させられてもよい。心膜に係合した後に針(502)を回転させることは、
図5Iの断面側面図および
図5Kの側面図に示されるように、針に心膜を巻き付けるように作用してもよい。これは、心膜(530)の一部分と心臓(532)の心外膜面との間の距離を増大させることに役立ってもよく、それは、心膜腔(534)の領域を拡大してもよい。拡大した心膜腔(534)は、心臓が組織係合部材(506)または針(502)によって接触させられないように、心臓(532)に向かったデバイスの前進のために付加的な作業容量を提供してもよい。概して、心膜と心臓の表面との間の距離を増大させることは、心膜が穿孔されたときに心臓が穿孔される危険性を減少させることに役立ってもよい。いったん心膜(530)が針(502)に十分巻き付けられ、心膜腔(534)が十分拡大されると、
図5Jの断面側面図および
図5Lの側面図に示されるように、針(502)は、心膜(530)を穿刺し、心膜腔(534)に進入するように前進させられてもよい。また、そこで示されるように、第2の管腔(503)に収納されてもよい、ガイド要素、例えば、ガイドワイヤ(516)は、心膜腔に前進させられてもよい。任意で、いったんガイドワイヤ(516)を介した心膜腔へのアクセスが確立されると、針(502)が引き込まれてもよい。
【0060】
図10A−10Gは、アクセスデバイス(1000)の変化例による方法を図示する。そこで示されるように、アクセスデバイス(1000)は、それを通る第1および第2の長手管腔(図示せず)と、第2の管腔と連絡している複数の側面開口(1005)とを備える、シース(1004)を備える。上記で説明されたもの等の組織穿刺部材(1002)は、第1の管腔を通して前進させられてもよく、組織係合部材(図示せず)は、1つ以上の組織係合要素(1009)が側面開口(1005)を通過することを可能にするように、第2の管腔を通して前進させられてもよい。
図10Aに示されるように、シース(1004)は、任意の好適な技法によって、心膜(1030)の表面に向かって導入されてもよい。シース(1004)は、心膜(1030)と直接接触して配置されてもよく、または心膜(1030)に直接接触することなく心膜(1030)にごく接近して設置されてもよい。いったん適所になると、組織係合部材は、
図10Bに示されるように、組織係合要素(1009)が側面開口(1005)から退出するように、作動させられ、または別様に前進させられてもよい。シース(1004)および組織係合要素(1009)は、組織係合要素(1009)が心膜(1030)に係合するように移動させられ、または別様に操作されてもよい。
【0061】
いったん心膜が組織係合要素(1009)に係合されると、心膜(1030)は、組織係合部材および/またはシースによって操作されてもよい。例えば、シース(1004)は、
図10Cの側面図および
図10Dの断面側面図に示されるように、矢印(1014)に従って回転させられてもよい。この回転は、シース(1004)に心膜(1030)を巻き付けるように作用してもよく、それは、心膜(1030)と心臓(1032)の心外膜面との間の距離を増大させるように役立ってもよく、心膜腔(1034)の領域を拡大してもよい。いったん心膜(1030)がシース(1004)に巻き付けられると、組織穿刺部材(1002)は、心膜(1030)を穿孔するようにシース(1004)の第1の管腔を通して前進させられてもよい。いったん組織穿刺部材(1002)が心膜腔(1034)の中に前進させられると、ガイド要素(1016)(例えば、ガイドワイヤ)が心膜腔(1034)に進入するように組織穿刺部材の中の管腔(図示せず)を通して前進させられてもよい。シース(1004)および/または組織穿刺部材(1002)は、任意で、適所にガイド要素(1016)を残して、引き込まれてもよい。
【0062】
他のデバイスが、心膜腔にアクセスするために、上記の方法の変化例とともに使用されてもよい。例えば、
図3Gで描写されるアクセスデバイスは、
図7A−7Eで図示される方法とともに使用されてもよい。
図7Aに示されるように、アクセスデバイス(348)は、(例えば、剣状突起下アプローチまたは別の好適なアプローチから)胸腔に挿入され、心膜のすぐ外側の領域まで心臓(700)の表面まで前進させられてもよい。同時に前進させられるものとして
図7Aに示されているが、シース(342)およびカテーテル(344)は、連続的に前進させられてもよいことを理解されたい。例えば、シース(342)は、その遠位端が心膜の付近に設置されるように前進させられてもよく、カテーテル(344)は、シース(342)を通して連続的に前進させられてもよい。概して、鉤(347)は、デバイス(348)の前進および設置中にシース(342)によって覆われてもよい。シース(342)および/またはカテーテル(344)の前進および/または設置は、上記で説明されたもの等の任意の好適な方式の下で行われ、確認されてもよい。
【0063】
いったんアクセスデバイス(348)の遠位部分が心臓(700)まで前進させられると、デバイスの長手軸が心膜面と実質的に接線方向であるように、設置されてもよい。例えば、
図7Bは、心膜(702)の一部分の上に設置されたデバイス(348)を描写する。そこで見られるように、シース(342)は、鉤(347)を覆って設置される。いったん(例えば、可視化または触覚フィードバックを介して)デバイス(348)が心膜(702)に十分接近していることが決定されると、シース(342)は、カテーテル管腔(346)と連絡している鉤管腔(345)とともに、
図7Cに示されるように、鉤(347)を露出するように矢印(712)の方向へ引き込まれてもよい。アクセスデバイス(348)は、
図7Dに図示されるように(例えば、アクセスデバイス(348)の近位部分を回転させることによって)矢印(714)の方向へ回転させられ、捻転させられ、またはトルクを加えられてもよい。これは、矢印(716)に従ってデバイスの遠位部分を回転させてもよい。矢印(716)の方向への鉤(347)の回転は、鉤(347)が心膜(702)に引っ掛かり、それにより、心膜(702)に係合して穿孔することに役立ってもよい。鉤(347)は、
図7Eに示されるように、鉤が心膜(702)に係合することを可能にする、任意の好適な角度を通して回転させられてもよい。例えば、鉤は、約20°から約30°、約30°から約55°、約50°から約90°、約90°から約120°回転させられてもよい。鉤(347)の回転は、心膜の表面と略接線方向であってもよく、それは、心臓(700)の表面を係合、穿刺、または穿刺することなく、鉤が心膜(702)と係合することに役立ってもよい。鉤(347)の接線方向突出および回転はまた、心膜穿孔の深さを調節することに役立ってもよく、正確な穿孔深さ制御を提供することに役立ってもよい。前述のように、鉤(347)の長さ(L
1)は、心臓(700)を損傷または穿刺することなく心膜(702)の係合を促すように調整されてもよい。心膜を完全に穿孔するものとして
図7Eに示されているが、鉤(347)は、心臓の厚さ全体を通して穿孔しなくてもよい。これらの変化例では、別個の組織穿刺デバイス(図示せず)またはガイド要素は、心膜を穿孔するように鉤(347)に対して前進または移動させられてもよい。
【0064】
いったん心膜(702)が鉤(347)によって係合および/または穿孔されると(例えば、可視化、触覚フィードバックを通して、および/または鉤管腔(345)を介して心膜腔(703)の中に造影剤を通すことにより、確認されてもよい)、ガイドワイヤ(706)等のガイド要素は、
図7Eに示されるように、カテーテル管腔(346)を通り、鉤管腔(345)を通り、心膜腔(703)の中に、矢印(716)の方向へ前進させられてもよい。いくつかの変化例では、ガイドワイヤ(706)は、鉤管腔(345)から外へ出て心膜腔に進入するにつれて、心膜を穿刺または穿孔するように構成されてもよい。いったんガイドワイヤ(706)が心膜腔(703)の中に前進させられると、上記で説明されたように、他のデバイスのための心膜アクセスを提供するように、ガイドワイヤ(706)を適所に残して、デバイス(348)が引き込まれてもよい。
【0065】
アクセスデバイスおよびそれを用いて心臓の心膜腔にアクセスするための方法の別の変化例が、
図6A−6Hに描写されている。
図6Aおよび6Bは、それぞれ、方法(400)の変化例とともに使用されてもよいアクセスデバイス(600)の一変化例の断面側面図および側面図を示す。そこに示されるように、アクセスデバイス(600)は、針(602)と、複数の組織係合要素(609)を備える組織係合部材(606)と、ガイド要素(図示せず)と、針アクチュエータ(608)と、組織係合部材アクチュエータ(610)とを備えてもよい。ここで示される針の変化例は、第1の長手管腔(605)および第2の長手管腔(603)を有し、長手管腔(605)および(603)の両方は、針(602)の遠位部分の開口部で終端する。針(602)を備えるものとして
図6A−6Hに示されているが、アクセスデバイス(600)は、上記で説明されたもの等の任意の好適な組織穿刺デバイスを備えてもよいことを理解されたい。
【0066】
針アクチュエータ(608)が、針(602)の移動(例えば、回転する、前進する、引き込む等)およびナビゲーションを制御してもよい一方で、組織係合部材アクチュエータ(610)は、組織係合部材(606)の移動、ナビゲーション、および展開を制御してもよい。
図6Aは、組織係合要素(609)が第1の管腔(605)内で折り畳まれる、非展開構成で、組織係合部材(606)を示す。
図6Bは、組織係合要素(609)が針(602)の遠位部分における第1の管腔(605)から拡張される、展開構成で、組織係合部材(606)を示す。組織係合要素(609)は、上記でさらに詳細に説明されるように、自己拡張式であってもよいが、その必要はない。示されるように、組織係合要素(609)は、心膜に係合することに役立つように、最遠位端にフックを備える。組織係合部材および組織係合要素の他の変化例が、好適であるようにアクセスデバイス(600)とともに使用されてもよく、例えば、上記で説明され、
図3A−3Fで描写される組織係合部材および要素が、このアクセスデバイスとともに使用されてもよい。
【0067】
図6C−6Hは、心膜腔(634)の中にガイド要素(616)を配置するためにアクセスデバイスが利用されてもよい、方法を描写する。
図6Cに示されるように、アクセスデバイス(600)は、心膜(630)の表面に向かって前進させられ、針(602)は、心膜にごく接近して設置される。いくつかの変化例では、針(602)は、針(602)の一部分が心膜に接触するように設置されてもよい。いくつかの変化例では、アクセスデバイス(600)は、それを通して針(602)が前進させられてもよい、上記で説明されたもの等のシース(図示せず)を備えてもよい。組織係合部材(606)は、
図6Dに示されるように、組織係合要素(609)が拡張され、針(602)の遠位部分から外向きに延在するように、展開されてもよい。組織係合部材アクチュエータ(610)は、矢印(611)の方向へ組織係合要素(609)を前進させ、
図6Eに図示されるように心膜(630)の一部分に係合するために使用されてもよい。(例えば、心膜(630)に引っ掛かる、噛合する、または別様に把持することによって)心膜(630)が係合された後に、心膜(630)は、心臓(632)の表面から心膜(630)を引き離すように操作されてもよく、それは、意図した穿孔部位で心膜腔(634)を増大させてもよい。例えば、
図6Fに示されるように、組織係合部材アクチュエータ(610)は、例えば、心臓(634)から離れて、矢印(613)の方向へ組織係合要素(609)を後退させるように作動させられてもよく、それは、心膜の一部分と心臓の表面との間の距離を増大させることに役立ってもよい。これは、意図した穿孔部位で心膜腔(634)の局所的に拡大した領域を作成することに役立ってもよい。針アクチュエータ(608)は、例えば、心臓(632)に向かって、
図6Gのように矢印(615)の方向へ針(602)を前進させ、心膜を穿刺し、心膜腔に進入する(以下で説明される方法のうちのいずれかを使用して確認されてもよい)ために使用されてもよい。いくつかの変化例では、組織係合要素(609)の後退は、心膜(630)を穿孔するように、針(602)に対して心膜(630)を引いてもよい。他の変化例では、組織係合要素(609)は、心膜(630)を穿孔するように、針(602)の前進と同時に後退させられてもよい。いったん針(602)が心膜腔に進入したと確認されると、第2の管腔(603)に収納されてもよい、ガイド要素(616)が、針(602)から出て心膜腔(634)の中に前進させられてもよい。
【0068】
図8A−8Jは、心膜腔にアクセスするために使用され得る別のデバイスおよび方法を描写する。
図8Aは、
図3Hで描写されたアクセスデバイス(360)の一変化例を示す。係合要素(362)は、部分的に、心臓に対して選択されたアクセス経路によって決定され得る長さ(L
4)を有してもよい。例えば、長さ(L
4)が、胸郭開口術を介した心臓への剣状突起下アプローチのために、約100ミリメートルから約250ミリメートル(例えば、約150ミリメートルから約170ミリメートル)であってもよい一方で、長さ(L
4)は、胸骨切開術を介したアプローチのために、約50ミリメートルから約150ミリメートル(例えば、約80ミリメートルから約150ミリメートル)であってもよい。また、
図8Aには、内側管状本体(364)(係合要素(362)内に摺動可能に収納されてもよい)およびガイドワイヤ(366)(内側管状本体(364)を通して前進させられてもよい)も示されている。
図8Bは、内側管状本体(364)が大部分が係合要素(362)の管腔の中に後退させられたデバイス(360)を描写する。いくつかの変化例では、内側管状本体は、針、ハイポチューブ、Tuohy針等であってもよい。
図8Cは、側面開口(372、374、376、378)および管腔(373)が係合要素(362)から遠位に露出される内側管状本体(364)が前進させられるデバイス(360)を描写する。
図8Dは、ハンドル(380)と、弁コネクタ(384)を介してハンドル(380)に遠位に接続された弁(386)とを備えるデバイス(360)の近位部分の一変化例を描写する。弁(386)および弁コネクタ(384)は、それを通してガイドワイヤ(366)を収容するように構成される管腔を有してもよい。ハンドル(380)は、他のハンドルの変化例で説明されるような1つ以上のアクチュエータ、例えば、係合部材(362)に対して内側管状本体(364)を前進または後退させるように構成されてもよい、スライダ(382)を備えてもよい。任意で、デバイス(360)はまた、ガイドワイヤ(366)の前進を制限するように弁(386)の近位端と係合してもよい、ガイドワイヤ(366)に取り付けられた移動リミッタ(388)を備えてもよい。
図8Dで見られるように、弁(386)は、1つ以上のポート、例えば、係合要素(362)の管腔と流体連絡している弁ポート(387)を備えてもよい。弁ポート(387)は、弁(386)に対して角度(A1)を成して傾斜してもよく、角度(A1)は、約10°から約180°、例えば、約30°であってもよい。種々の流体が、係合要素(362)の管腔を通して心臓に送達するために、弁ポート(387)を通して導入されてもよい。例えば、弁ポート(387)は、造影剤、生理食塩水洗浄液、治療薬、ならびに弁ポートを通して係合要素の中に通気するためのガス(例えば、CO
2、N
2O、He、N
2等)のガス状流体を心臓に提供するために使用されてもよい。いくつかの変化例では、ガイドおよび/または穿刺要素が、弁ポート(387)を通した流体の注入と同時に、弁(386)を通して前進させられてもよい。例えば、ガイド要素の遠位部分が可視化されてもよいように、ガイド要素が前進させられるにつれて、造影剤が注入されてもよい。これは、施術者が心臓に対してガイド要素を正確に設置することに役立ってもよい。
【0069】
図8Jは、すぐ上記で説明されたアクセスデバイス(360)と同様のアクセスデバイス(802)のハンドル部分(800)の第2の変化例を示す。そこで示されるように、アクセスデバイス(802)は、係合要素(812)(例えば、
図8A−8Iに関して説明される係合要素(362)等)、または他の組織穿刺要素と、弁(810)および弁ポート(800)を備えるハンドル(800)と、ガイドワイヤ(816)とを備えてもよい。いくつかの変化例では、アクセスデバイス(800)は、内側管状部材(図示せず)を備えてもよい。そこで示されるように、シリンジ(818)は、弁(810)を介してハンドル(800)に接続されてもよい。シリンジ(818)は、内側管状部材および/または係合要素(812)の管腔に導入されてもよい、造影剤を保持してもよい。弁(810)は、弁(810)に対して角度(A2)を成して傾斜してもよい弁ポート(814)を備え、角度(A2)は、約10°から約180°、例えば、約150°であってもよい。弁(810)の遠位部分は、本明細書で説明されるように心膜に係合し、または別様にアクセスするために使用されてもよい、係合要素(812)に連結されてもよい。ガイドワイヤ(816)は、側面ポート(814)を介して、係合要素(812)の管腔および/または内側管状部材の管腔の中に前進させられてもよい。使用中に、係合要素(812)は、穿刺して、心膜を通るアクセスポートを作成してもよい。いったん係合要素(812)が、例えば、心膜腔の中に、心膜を通して前進させられると、ガイドワイヤ(816)は、弁ポート(814)を通り、管腔(813)を通して導入され、または別様に前進させられ、心膜腔の中に前進させられてもよい。同時に、または連続的に、施術者が心膜腔を造影することを可能にするように、シリンジ(818)の中の造影剤または染料が注入されてもよい。弁ポート(814)は、心膜腔を造影し、ガイドワイヤを前進させるために必要とされるステップの数を削減することに役立ってもよい。例えば、弁(810)は、心膜腔を造影するように造影剤シリンジを取り付け、ガイドワイヤを前進させるようにシリンジを着脱するのに費やされる時間量を削減することに役立ってもよい。ステップおよび取付と着脱の反復の数を削減することはまた、心臓組織を無意識に穿孔する危険性を低減することに役立ってもよい。
【0070】
図8A−8Jに戻って、アクセスデバイス(360)が、前述のアクセスルートのうちのいずれかを通して胸腔に導入された後に、デバイスは、内側管状本体(364)が係合要素(362)内で後退させられた、
図8Eに示される構成で、心臓に向かって前進させられてもよい。いったん係合要素(362)が心膜まで前進させられ、心膜に沿って設置されると、遠位先端(369)で心膜を穿孔するように作動させられ、前進させられ、または別様に操作されてもよく、心膜が溝(368)の中で係合されるように前進させられてもよい。係合要素の貫通の深さは、部分的に長さ(L
2)によって決定されてもよく、例えば、穿孔深さは、ほぼ長さ(L
2)に限定されてもよい。丸い縁(370)が、心臓を穿孔することを防止することに役立ってもよい一方で、遠位先端(369)は、心膜を穿孔する。いくつかの変化例では、係合要素(362)が心膜を穿孔して係合した(以下で説明される任意の好適な方法によって確認されてもよい)後に、係合要素(362)は、任意で、心臓の表面から離れるように心膜を持ち上げるために、持ち上げられ、移動させられ、または別様に操作されてもよい。アクセスデバイス(360)は、
図8Fおよび8Gに示されるように、内側管状本体(364)が開口(367)を通して前進させられるように、作動させられ得る。
【0071】
そこで示されるように、内側管状本体(364)が、
図8Fに示されるように、係合要素(362)の長手軸と平行な方向へ前進させられ得るように、内側管状本体(364)は、最初に係合要素(362)によって拘束されてもよい。内側管状本体(364)が開口(367)を通って係合要素(362)から退出するにつれて、内側管状本体(364)は、
図8Gに示されるように、係合要素(362)から離れるように曲がってもよい。内側管状本体(364)は、任意の好適な方式で(例えば、係合要素(362)の長手軸と平行に、または係合要素から角度を成して)開口を通って移動してもよいことを理解されたい。内側管状本体(364)が前進させられるにつれて、尖った先端(371)はまた、心膜を穿孔し、心膜腔に進入してもよい。いくつかの変化例では、管状本体(364)の前進は、心膜腔の中に側面開口(372、374、376、378)を配置し得る。開口が心膜腔の中にあるときに、種々の流体、例えば、造影剤、治療薬、洗浄液、通気液体および/またはガス等が、弁ポート(387)を介して心膜に導入されてもよい。加えて、内側管状本体(364)の遠位端が心膜腔の中に配置されている間に、
図8Hおよび8Iに示されるように、ガイドワイヤ(366)は、内側管状本体(364)を通して心膜腔の中に前進させられてもよい。
図8Iは、心膜(802)に係合し、心膜(802)と心臓(800)との間の距離を増大させることによって、心膜腔の一部分を拡大するために、どのようにして溝(368)が使用され得るかという実施例を描写する。いったん心膜腔の領域が拡大されると、内側管状本体(364)が心膜腔(803)の中に前進させられてもよい。加えて、または代替として、いくつかの変化例では、心膜は、内側管状本体(364)の前進後に係合要素(362)および内側管状本体(364)によって操作されてもよい。ガイドワイヤ(366)は、心膜腔(803)の中に配置されてもよく、その後に、内側管状本体、係合部材、および他の構成要素が適宜に引き込まれてもよい。内側管状部材(364)が、係合要素(362)に対して角度を成して係合要素(362)から外に前進させられる変化例において、ガイドワイヤは、また、係合要素(362)に対して角度を成して心膜腔に導入されてもよい。
【0072】
心膜の一部分に係合する方法および機構のある変化例が上記で説明されているが、心膜組織に係合する付加的および/または代替的な方法および機構も使用されてもよい。例えば、心膜組織は、機械的に係合されてもよく、心膜の一部分が、挟まれ、締め上げられ、留められ、把持され、引っ張られ、引っ掛けられ、掴まれ、および同等のことをされてもよい。操作のために心膜組織の一部分に機械的に係合してもよいデバイスは、止血鉗子、ピンチャ、クランプ、引き紐機構、ピン、フック、および留め金を含む。心膜組織はまた、心臓から心膜を引き離して心膜腔の一部分を拡大するように作用し得る吸引または真空デバイスを使用することによって、係合されてもよい。代替として、または加えて、心膜は、種々の接着力、例えば、疎水性または親水性相互作用等の分子接着力によって係合されてもよい。心膜の一部分を磁気的に締め付け、次いで、心膜腔の一部分を拡大するように心膜を引っ張ることによって、心膜に係合するために、磁力を利用してもよいデバイスも使用されてもよい。
【0073】
いったん係合されると、心膜の操作は、心膜の一部分と心臓との間の距離を増大させ、したがって、心膜腔の一部分を局所的に拡大してもよい任意の数および組み合わせの方策を含んでもよい。例えば、心膜は、ガス状または液体の流体を用いて、回転させられ、捻転させられ、引かれ、押され、穿刺され、穿孔され、突き刺され、および/または通気されてもよい。心膜はまた、化学的に処理されてもよく、それはまた、心膜に穿孔を作成してもよい。例えば、アクセスデバイスが、心膜の表面を薄くしてアクセス経路を作成するように、酵素を制御可能に導入してもよい。心膜を操作するために使用されてもよい化学剤は、リソソーム酵素、酸性ホスファターゼ、アリルスルファターゼ、グルコサミニダーゼ、トリプシン、および/または任意の他の好適な酵素消化物を含む。心膜はまた、伝導性組織係合部材または電極を介して電流を印加することによって、前述のように電気的に操作されてもよい。いくつかの変化例では、電流(1pAから200mAの間の)を局所的に印加することは、心膜の領域を破壊し、および/または薄くしてもよい。心膜に穿孔または切開を作成する他の方法は、電気焼灼器、化学腐食、冷凍腐食、およびレーザ焼灼器を含んでもよい。
【0074】
前述のように、本明細書で説明される方法は、心臓から心膜を離すために、ガス状または液体の流体を用いて心膜腔を通気するステップを含んでもよい。心膜腔の通気は、方法の任意の好適なステップで生じてもよい。例えば、いくつかの変化例では、心膜腔は、心膜をアクセスデバイスと係合させる前に通気されてもよい。他の変化例では、心膜腔は、心膜を1つ以上の組織係合部材と係合させた後であるが、組織穿刺部材で心膜を穿刺する前に通気されてもよい。なおも他の変化例では、心膜腔は、組織穿刺部材が心膜を穿孔し、穿刺し、または別様に貫通した後に通気されてもよい。
【0075】
心膜腔が通気される場合、任意の好適な方式で通気されてもよい。いくつかの変化例では、アクセスデバイスの1つ以上の部分が心膜腔を通気してもよい。これらの変化例のうちのいくつかにおいて、組織係合部材が、心膜腔を通気するために使用されてもよい。例えば、
図3Gおよび
図7A−7Eに関して上記で説明されたアクセスデバイス(348)の変化例では、心膜腔は、鉤が心膜に係合して穿孔した後に、鉤(347)の管腔(345)を介して通気されてもよい。これらの変化例のうちのその他では、組織穿刺部材が、心膜腔を通気するために使用されてもよい。例えば、
図5A−5Jに関して上記で説明されたアクセスデバイス(500)の変化例では、組織穿刺部材が心膜を穿刺または貫通した後に、組織穿刺部材(502)は、(例えば、組織穿刺部材(502)の第1の管腔(503)および/または第2の管腔(505)を介して)心膜腔を通気するために使用されてもよい。
【0076】
なおも他の変化例では、1つ以上の別個のデバイスが、心膜を通気するために使用されてもよい。これらの変化例のうちのいくつかでは、針または他の部材が、心臓から外部より前進させられてもよく、心膜腔を通気するために少なくとも部分的に心膜を通過してもよい。これらの変化例のうちのいくつかでは、通気部材は、剣状突起下アプローチで前進させられてもよい。これらの変化例のうちのその他では、通気部材は、横静脈洞アプローチで前進させられてもよい。他の変化例では、心膜腔はまた、血管内アプローチから通気されてもよい。例えば、バルーンが、血管内で左心耳(または心臓の任意の好適な部分)まで前進させられ、左心耳を閉塞するように拡張されてもよい。それを通る管腔を有する血管内穿刺部材が、バルーンを通して前進させられてもよい。管腔は、ガス状または液体流体源に接続されてもよい。次いで、血管内穿刺部材は、左心耳から退出し、心膜腔に進入してもよい。いったん左心耳から心膜腔の中への進入が確認されると、心膜と心臓の心外膜面との間に所望の距離が達成されるまで、ガスおよび/または液体が心膜腔の中に送出されてもよい。いくつかの変化例では、外部穿刺部材によって心膜に作成された穿孔および血管内穿刺部材によって左心耳壁に作成された穿孔は、心臓の中へのアクセスポートまたは進入点を作成してもよく、アクセスが、デバイスおよび治療の送達のために、心臓の内部と外部との間に提供される。これが利用されてもよい用途は、心内膜および心外膜面上の心房細動の治療のための切除手技、僧帽弁修復または置換術、構造的心臓修復およびCHFのためのデバイスの送達、ASDおよびPFO閉鎖、左心耳閉鎖、または上記のうちのいずれかの組み合わせを含む。
【0077】
心膜腔が通気される場合、通気の量は、例えば、心膜における圧力および/または容量変化を測定することによって、または撮像方法によって決定されてもよい。いくつかの変化例では、心膜腔に導入されてもよい流体の量は、事前にプログラムされるか、または事前に決定される。心膜と心臓の心外膜面との間に所望の距離が達成されると、心膜腔の通気が停止されてもよい。また、心膜に通気するために使用され得るデバイスは、心膜の1つ以上の部分を吸引するためにも使用されてもよいことを理解されたい。
【0078】
上述のように、いくつかの変化例では、それを通してガイド要素を前進させる前に心膜腔(410)の中への穿刺部材の進入を確認することが望ましくあり得る。いくつかの穿刺部材は、種々の好適な撮像モダリティ、例えば、蛍光透視法、超音波、X線等によって、穿刺部材の移動が監視されることを可能にする撮像マーカー(例えば、音波発生マーカー、放射線不透過性マーカー等)を保有してもよい。
【0079】
いくつかの変化例では、穿刺部材が心膜腔に進入するときのインピーダンスまたは伝導度の変化を検出するために電流および/または電圧測定を使用して、導電性穿刺部材が監視されてもよい。例えば、電圧が、2つの組織係合部材の間に印加されてもよく、媒体(例えば、心膜、心膜液等)を通る結果として生じる電流が、別の組織係合部材によって測定されてもよい。印加された電圧が、(例えば、20pAで)組織係合部材上にわたって段階的に増加または減少させられてもよい一方で、電流は、組織穿刺部材で測定される。結果として生じるI−V曲線は、組織穿刺部材の場所を示してもよく、例えば、組織穿刺部材が心膜嚢内にあるときに測定されるI−V曲線は、心膜を通る途中等にあるときに測定されるI−V曲線とは異なってもよい。異なる媒体および組織(例えば、空気、液体、心膜組織、脂肪組織、心臓組織等)が異なる電気的性質(例えば、伝導性、抵抗性等)を有するので、上記で説明されたもの以外の種々の電気パラメータが、心膜および心臓に対する組織穿刺部材の場所を決定する(または少なくとも概算する)ために測定されてもよい。
【0080】
外側から心膜腔の中への組織穿刺部材の進入はまた、ガス状環境(例えば、心膜腔の外側)および液体環境(例えば、心膜腔の内側)とを区別するように構成される穿刺部材を使用することによって、確認されてもよい。例えば、穿刺部材は、液体流体が、検出器、例えば、液体センサまで流れることを可能にするポートを有してもよい。検出器は、穿刺部材が液体環境内にあること、すなわち、心膜腔への進入が達成されたことを施術者に示してもよい。いくつかの変化例では、心膜腔は、ガスおよび/または液体センサとともに組織穿刺部材を前進させる前に、ガスまたは流体で通気されてもよい。
【0081】
心膜腔の中への組織穿刺部材の進入が確認されてもよい別の方法は、圧力の変化を監視することによる。組織穿刺部材は、圧力センサと関連付けられてもよい。使用されてもよい圧力センサの実施例は、ピエゾ抵抗ひずみゲージ、容量圧力センサ、電磁圧力センサ、圧電圧力センサ、共振圧力センサ、および任意の他の好適な圧力センサを含む。穿刺部材が心膜腔に進入するにつれて圧力の変化があってもよく、この圧力の変化は、組織穿刺部材が心膜腔内にあることを施術者に示してもよい。組織穿刺部材によって体験される圧力は、いったん組織穿刺部材が心膜を穿刺すると期待されてもよい、圧力の急変を検出するように、常に監視されてもよい。
【0082】
前述の発明は、明確さおよび理解の目的で、例示および実施例によっていくらか詳細に説明されているが、ある変更および修正が実践されてもよく、添付の請求項の範囲内に入ることを目的とすることが明白となるであろう。