特許第6046222号(P6046222)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6046222-エレベータシステム 図000002
  • 特許6046222-エレベータシステム 図000003
  • 特許6046222-エレベータシステム 図000004
  • 特許6046222-エレベータシステム 図000005
  • 特許6046222-エレベータシステム 図000006
  • 特許6046222-エレベータシステム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6046222
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20161206BHJP
   B66B 1/18 20060101ALI20161206BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B66B5/02 S
   B66B1/18 N
   B66B3/00 R
   B66B3/00 S
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-178219(P2015-178219)
(22)【出願日】2015年9月10日
【審査請求日】2015年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 広悠
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−096978(JP,A)
【文献】 特開2013−184816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00−1/52
B66B 3/00
B66B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗場に設置された乗場行先階登録装置と、
この乗場行先階登録装置によって登録された利用者の行先階を考慮するDCS制御により、複数台の乗りかごの中から割当かごを選出して登録階に応答させる第1の制御装置と、
この第1の制御装置の指示に従って上記各乗りかごの運転を制御する複数の第2の制御装置とを備え、
上記DCS制御を行う第1の制御装置が故障した場合に、上記各第2の制御装置の中で予めマスターとして設定された第2の制御装置が上記乗場行先階登録装置から出力される行先階と登録階を含むDCS制御系の第1の呼び信号を群管理制御系で用いられる運転方向と登録階を含む第2の呼び信号に変換して運転を継続することを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
上記マスターとして設定された第2の制御装置は、
上記乗場行先階登録装置から出力されるDCS制御系の第1の呼び信号を群管理制御系で用いられる第2の呼び信号に変換する信号変換手段と、
この信号変換手段によって得られた第2の呼び信号に基づいて、上記各乗りかごの中から最適な乗りかごを割当かごとして選出し、上記行先階が登録された階に応答させる割当制御手段と、
この割当制御手段によって選出された割当かごに上記行先階を登録し、当該割当かごの応答後に上記行先階まで運転する運転制御手段と
を具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【請求項3】
上記信号変換手段は、
上記第1の呼び信号に含まれる行先階と登録階との関係から運転方向を判断し、上記登録階に上記運転方向を加えて上記第2の呼び信号に変換することを特徴とする請求項2記載のエレベータシステム。
【請求項4】
上記マスターとして設定された第2の制御装置は、
上記乗場行先階登録装置に設けられた表示部に、利用者に乗車させる乗りかごの情報として、上記割当制御手段によって選出された割当かごの号機名を表示する第1の表示制御手段をさらに具備したことを特徴とする請求項2記載のエレベータシステム。
【請求項5】
上記マスターとして設定された第2の制御装置は、
上記各乗りかご毎に設けられた複数の表示器の中の上記割当かごに対応した表示器に上記割当かごの行先階を表示する第2の表示制御手段をさらに具備したことを特徴とする請求項2記載のエレベータシステム。
【請求項6】
上記マスターとして設定された第2の制御装置は、
上記DCS制御を行う第1の制御装置が故障した旨を外部に発報する発報手段をさらに具備したことを特徴とする請求項2記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗場行先階登録装置を備えたエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物の各階の乗場には、乗場呼びを登録するための乗場呼びボタンが設置されている。エレベータの利用者がこの乗場呼びボタンを操作すると、乗りかごが乗場呼びの登録階に応答する。利用者が乗りかごに乗り込み、かご操作盤の行先階ボタンを操作すると、行先階が登録され、乗りかごがその行先階に移動する。
【0003】
近年、上述した乗場呼びボタンとは別に、乗場にて直接行先階を指定可能な乗場行先階登録装置(HDC:Hall Destination Controller)を備えたエレベータシステムが実用化されている。このようなエレベータシステムを「行先階制御システム(DCS:Destination Control System)」と呼ぶ。DCSは、利用者が乗場にて登録した行先階に基づいて、複数台の乗りかごの中から最適な乗りかごを選出して、当該乗場に応答させる。この場合、同じ行先階の利用者を同じ乗りかごに乗車させることで、輸送効率の向上を図っている。
【0004】
ここで、すべての階に乗場行先階登録装置が設置されたDCSを「フルDCS」と呼ぶ。フルDCSでは、各階の乗場で行先階を登録できるので、乗りかご内に行先階ボタンを必要としない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2012−502864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したエレベータシステムでは、DCS制御が故障した場合、バックアップ運転(非常用運転)に切り替えられて、特定の号機のみで運転が継続される。その際、フルDCSでは、利用者が乗りかご内で行先階を指定することができないため、特定の号機を各階に停止させることで対応している。しかしながら、このような各階停止運転は、運行効率が著しく悪く、利用者にも迷惑をかけてしまう。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、DCS制御が故障した場合に、各階を停止させずに運転を継続することのできるエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るエレベータシステムは、乗場に設置された乗場行先階登録装置と、この乗場行先階登録装置によって登録された利用者の行先階を考慮するDCS制御により、複数台の乗りかごの中から割当かごを選出して登録階に応答させる第1の制御装置と、この第1の制御装置の指示に従って上記各乗りかごの運転を制御する複数の第2の制御装置とを備える。
【0009】
上記DCS制御を行う第1の制御装置が故障した場合に、上記各第2の制御装置の中で予めマスターとして設定された第2の制御装置が上記乗場行先階登録装置から出力される行先階と登録階を含むDCS制御系の第1の呼び信号を群管理制御系で用いられる運転方向と登録階を含む第2の呼び信号に変換して運転を継続する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は一実施形態に係るエレベータシステムの構成を示すブロック図である。
図2図2は同実施形態におけるエレベータ制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図3図3は同実施形態におけるエレベータシステムの動作を示すフローチャートである。
図4図4は同実施形態におけるエレベータシステムのDCS故障時の運転動作を説明するための具体例である。
図5図5は同実施形態における乗場行先階登録装置に表示される割当かごの表示例を示す図である。
図6図6は同実施形態における各号機の表示器に表示される行先階の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0012】
図1は一実施形態に係るエレベータシステムの構成を示すブロック図であり、複数台のエレベータが群管理された構成が示されている。なお、ここで言うエレベータとは、主として乗りかごのことであり、複数台存在する場合には「号機」という言い方もする。また、乗場呼びが割り当てられた乗りかごのことを「割当かご」あるいは「割当号機」と呼ぶ。
【0013】
本システムは、1つのDCS制御装置11と、複数台のエレベータ制御装置12a,12b,12c…とを備える。DCS制御装置11とエレベータ制御装置12a,12b,12c…とは群管理制御用ケーブル13で接続されている。
【0014】
DCS制御装置11は、DCSの制御系を実現するためのメインコントローラである。DCS制御装置11は、DCS用の制御プログラムを有し、乗場行先階登録装置21によって登録された利用者の行先階を考慮して各乗りかご24a,24b,24c…の中から最適かごを割当かごとして選出して登録階(行先階が登録された階)に応答させる。
【0015】
乗場行先階登録装置21は、利用者が乗場で行先階を事前に登録するための装置である。乗場行先階登録装置21は、行先階を登録操作するための操作部22と、利用者が登録した行先階とその行先階が割り当てられた乗りかご(割当かご)を表示するための表示部23とを有する。
【0016】
なお、行先階の登録方法としては、テンキーの操作によるものが一般的であるが、例えばICカードなどを用いた方法であっても良い。また、乗場行先階登録装置21は、乗場から離れた場所に設置されていても良い。
【0017】
本実施形態では、各階の乗場に乗場行先階登録装置21が設置された「フルDCS」を想定している。これらの乗場行先階登録装置21は、登録装置用ケーブル14を介してDCS制御装置11に接続され、また、登録装置用ケーブル15を介してエレベータ制御装置12a,12b,12c…にも接続されている。これにより、任意の階の乗場行先階登録装置21によって行先階が登録されると、乗場行先階登録装置21から出力されるDCS制御系の呼び信号がDCS制御装置11だけでなく、エレベータ制御装置12a,12b,12c…にも送られる。
【0018】
エレベータ制御装置12a,12b,12c…は、各号機の乗りかご24a,24b,24c…に対応して設けられている。これらのエレベータ制御装置12a,12b,12c…は、通常運転時はDCS制御装置11からの指示に従って、それぞれに図示せぬ巻上機の駆動制御やドアの開閉制御などを含む乗りかご単体での制御を行う。
【0019】
乗りかご24a,24b,24c…は、図示せぬ巻上機の駆動により昇降路内を昇降動作する。これらの乗りかご24a,24b,24c…には、行先階を指定するための行先階ボタンは設置されていない。
【0020】
また、これらのエレベータ制御装置12a,12b,12c…には、それぞれに各号機用の表示器25a,25b,25c…が接続されている。A号機の表示器25aは、A号機の乗りかご24aの乗降口付近に設置され、乗りかご24aの行先階や運転方向などを表示する。他の号機の表示器25b,25c…についても同様である。これらの表示器25a,25b,25c…は、各階の乗場に各号機毎に設置されている。
【0021】
ここで、本実施形態において、エレベータ制御装置12a,12b,12c…には、一般的な群管理システムで用いられる運転制御機能(群管理制御)が備えられている。DCS制御が故障した場合に、エレベータ制御装置12a,12b,12c…の中で予めマスターとして設定されたエレベータ制御装置は、群管理制御によるバックアップ運転を行う。なお、「DCS制御の故障」とは、DCS制御装置11に何らかの異常が発生し、正常なDCS制御を行えない状態のことを言う。このとき、乗場行先階登録装置21は正常であり、行先階の登録操作は通常通り行えるものとする。
【0022】
以下では、エレベータ制御装置12aがマスターとして設定されているものとして説明する。
【0023】
図2はエレベータ制御装置12aの機能構成を示すブロック図である。なお、他の号機のエレベータ制御装置12b,12c…についても、エレベータ制御装置12aと同様の構成である。
【0024】
エレベータ制御装置12aには、DCS制御が故障したときに運転を継続するための機能として、信号変換部31、割当制御部32、運転制御部33、第1の表示制御部34、第2の表示制御部35、発報部36が備えられている。
【0025】
信号変換部31は、DCS制御系が故障した場合に、乗場行先階登録装置21によって登録された行先階と登録階(行先階を登録操作した階)を含むDCS制御系の呼び信号(以下、第1の呼び信号と称す)を群管理制御系で用いられる呼び信号(以下、第2の呼び信号と称す)に変換する。
【0026】
割当制御部32は、信号変換部31によって得られた第2の呼び信号に基づいて、複数台の乗りかご24a,24b,24c…の中から最適な乗りかごを割当かごとして選出して登録階に応答させる。運転制御部33は、割当制御部32によって選出された割当かごに行先階を登録し、当該割当かごが登録階に応答した後に行先階まで運転する。
【0027】
第1の表示制御部34は、乗場行先階登録装置21に設けられた表示部23に、利用者に乗車させる乗りかごの情報として、割当制御部32によって選出された割当かごの号機名を表示する。第2の表示制御部35は、各号機毎に設けられた表示器25a,25b,25c…の中の割当かごに対応した表示器に当該割当かごの行先階を表示する。
【0028】
発報部36は、DCSの制御系(DCS制御装置11)が故障した旨を外部に発報する。外部とは、例えば図示せぬ監視センタやビルの監視室などである。監視センタは、遠隔地にあって、各地に存在するエレベータの動作状態を通信ネットワークを介して遠隔で監視している。
【0029】
次に、同実施形態におけるエレベータシステムの動作について説明する。
図3は同実施形態におけるエレベータシステムの動作を示すフローチャートである。
【0030】
DCS制御が正常な場合、つまり、DCS制御装置11が正常に動作している場合には(ステップS10のNo)、乗場行先階登録装置21によって登録された利用者の行先階を考慮した割当制御が実行される(ステップS12)。
【0031】
すなわち、乗場行先階登録装置21の操作によって利用者の行先階が登録されると、その行先階と登録階(行先階の登録操作が行われた階)の2つの情報を1つの組とした第1の呼び信号がDCS制御装置11に送られる。このとき、乗場行先階登録装置21の表示部23に利用者が登録した行先階が表示される。
【0032】
DCS制御装置11は、第1の呼び信号を受信すると、その第1の呼び信号に含まれる利用者の行先階に基づいて各号機の乗りかご24a,24b,24c…の中から最適な乗りかごを割当かごとして選出する。この場合、利用者の行先階を考慮するDCS制御が実施され、最も効率良く運行できる最適かごが割当かごとして決定される。割当かごが決定されると、DCS制御装置11は、エレベータ制御装置12a,12b,12c…の中の当該割当かごに対応したエレベータ制御装置に対して指示を送って登録階に応答させる。
【0033】
また、割当かごが決定されたときに、乗場行先階登録装置21の表示部23に当該割当かごとした選出された乗りかごの種類(号機名)が表示される。利用者はこの表示を見て自分が乗る乗りかごを確認し、当該乗りかごの乗降口付近で待つ。当該乗りかごには既に利用者の行先階が登録されているので、乗りかご内での行先階の指定操作(かご呼びの登録操作)は不要である。
【0034】
一方、DCS制御が故障している場合、つまり、DCS制御装置11に何らかの異常が発生して正常に動作していない場合には(ステップS11のYes)、予めマスターとして設定されたエレベータ制御装置12aによって外部に異常発報がなされ(ステップS12)、バックアップ運転に切り替えられる(ステップS13)。
【0035】
ここで言う「バックアップ運転」とは、メインコントローラであるDCS制御装置11に異常が発生したときに実施される非常用の運転のことである。DCS制御装置11とエレベータ制御装置12a,12b,12c…は群管理制御用ケーブル13によって互いにデータの送受信可能に接続されている。マスターであるエレベータ制御装置12aは、DCS制御装置11から信号応答がない場合に何らかの異常が発生しているものと判断してバックアップ運転に切り替える。
【0036】
なお、上記外部とは、例えば図示せぬ監視センタやビルの監視室などである。発報先が遠隔地の監視センタであった場合には、通信ネットワークを介してDCS制御の故障が監視センタに発報される。発報先がビルの監視室であった場合には、有線または無線によりDCS制御の故障が監視室に発報される。
【0037】
また、A号機のエレベータ制御装置12aがマスターとして設定されているが、もし、エレベータ制御装置12aが故障した場合には、他の号機のエレベータ制御装置12b,12c…のいずれかがマスターとなり、異常発報とバックアップ運転を実施することになる。
【0038】
バックアップ運転に切り替えられると、マスターであるエレベータ制御装置12aは、乗場行先階登録装置21からDCS制御系で用いられる第1の呼び信号を取得し、図示せぬ内部メモリに保持する(ステップS14)。この第1の呼び信号には、利用者の行先階と登録階が含まれる。エレベータ制御装置12aは、この第1の呼び信号を群管理制御系で用いられる第2の呼び信号に変換する(ステップS15)。この第2の呼び信号には、運転方向と登録階が含まれる。
【0039】
詳しくは、エレベータ制御装置12aは、上記内部メモリに保持された第1の呼び信号の行先階と登録階との関係から利用者が運転方向を判断する。例えば、登録階が1階で、行先階が4階であった場合には、運転方向=上方向と判断される。逆に登録階が4階で、行先階が1階であった場合には、運転方向=下方向と判断される。エレベータ制御装置12aは、このようにして判断した「運転方向」に、第1の呼び信号から得られた「登録階」の情報を追加して第2の呼び信号を生成する。
【0040】
次に、エレベータ制御装置12aは、変換後の第2の呼び信号に基づいて割当制御を行う(ステップS16)。詳しくは、エレベータ制御装置12aは、所定の演算式を用いて、乗りかご24a,24b,24c…のそれぞれに第2の呼び信号を割り当てた場合の評価値を求め、その中で最も評価の高い乗りかご(最適かご)を割当かごとして選出する。
【0041】
なお、「所定の演算式」とは、例えばニューロ・ファジーなどの手法を利用した評価演算式などである。ただし、本発明は特にその手法について限定されるものではなく、一般的なエレベータの群管理制御で用いられている手法を用いて、エレベータ全体の運転効率を考慮した割当評価演算を行うものとする。また、「評価値」とは、乗場呼びを割り当てた場合の最適さを表す指標である。この評価値は、数値が小さいほど評価が高く、その数値が大きいほど評価が低くなることを表わす。
【0042】
割当かごが選出されると、エレベータ制御装置12aは、当該割当かごを登録階(行先階の登録操作が行われた階)に応答させる(ステップS17)。この場合、エレベータ制御装置12a,12b,12c…の中の当該割当かごに対応したエレベータ制御装置を通じて当該割当かごの運転が制御される。
【0043】
すなわち、A号機の乗りかご24aが割当かごとして選出された場合には、マスターであるA号機のエレベータ制御装置12aによって乗りかご24aの運転が制御される。一方、例えばB号機の乗りかご24bが割当かごとして選出された場合には、マスターであるエレベータ制御装置12aからエレベータ制御装置12bに対して割当指令が送られ、この割当指令を受けたエレベータ制御装置12bによって乗りかご24bの運転が制御される。
【0044】
以下では、B号機の乗りかご24bが割当かごとして選出された場合されたものとして説明する。
【0045】
B号機の乗りかご24bが割当かごとして選出された場合において、エレベータ制御装置12aは、上記内部メモリに保持された第1の呼び信号の行先階をB号機のエレベータ制御装置12bに送り、乗りかご24bのかご呼びとして登録させる(ステップS18)。例えば、4階が行先階として登録されていた場合には、乗りかご24bのかご呼びとして4階が登録されることになる。
【0046】
なお、割当かごに行先階(かご呼び)を登録するタイミングは、例えば割当かごが選出されたときであっても良いし、その割当かごが登録階に応答(到着)したときであっても良い。
【0047】
また、割当かごが選出された際に、エレベータ制御装置12aは、乗場行先階登録装置21に割当かごを表示すると共に、割当かごに対応した乗場の表示器25bに行先階を表示する(ステップS19)。
【0048】
具体的には、まず、エレベータ制御装置12aは、各階の乗場行先階登録装置21の中から利用者が行先階操作を登録した乗場行先階登録装置21を表示先として選択し、その乗場行先階登録装置21に割当かごの情報を送る。これにより、乗場行先階登録装置21の表示部23に割当かごの号機名(B号機)が表示される(図5参照)。
【0049】
続いて、エレベータ制御装置12aは、登録階の乗場に設置された表示器25a,25b,25c…の中からB号機の表示器25bを表示先として選択し、その表示器25bにB号機のかご呼びとして登録された行先階を送る。これにより、表示器25bにB号機の行先階が表示される(図6参照)。
【0050】
このように、DCS故障中であっても、割当かごと行先階の表示をDCSと同様に行うことで、利用者を割当かごに正しく誘導することができる。割当かごであるB号機の乗りかご24bが登録階に応答(到着)すると、エレベータ制御装置12aは、B号機のエレベータ制御装置12bを通じて乗りかご24bを戸開して利用者を乗車させた後、乗りかご24bを行先階に向けて運転する(ステップS19)。このとき、割当かごであるB号機の乗りかご24bには利用者の行先階が登録されているので、かご内での行先階の登録(かご呼びの登録)は不要である。
【0051】
なお、DCS制御が故障したときに、例えば監視センタあるいはビルの監視室に異常が発報されている(ステップS12)。この異常発報を受けて保守員が現場に来て復旧作業を行うまでの間、上述したようなバックアップ運転が実施される。DCS制御の復旧後は、通常通りDCS制御装置11から指示に従ってエレベータ制御装置12a,12b,12c…によって各号機の乗りかご24a,24b,24c…の運転が制御される。
【0052】
図4に具体例を示す。
いま、1階〜15階の建物において、3台(A〜C号機)の乗りかご24a〜24cが各階を運転中であるとする。各階には、少なくとも1台の乗場行先階登録装置21がそれぞれ設置されている。通常は、これらの乗場行先階登録装置21によって登録された利用者の行先階に基づくDCSの割当制御によって割当かごが選出される。この場合、同じ行先階の利用者を同じ乗りかごに乗車させるように割当かごが選出され、輸送力の向上が図られる。
【0053】
このようなDCSの制御系(DCS制御装置11)が故障した場合、群管理制御によるバックアップ運転に切り替えられる。例えば、図4に示すように、1階の乗場行先階登録装置21で利用者が4階を行先階として登録したとする。このとき、乗場行先階登録装置21の表示部23には、利用者が登録した行先階を示す「4F」が表示される。
【0054】
ここで、1階の乗場行先階登録装置21から「行先階=4階,登録階=1階」といったDCS制御系の第1の呼び信号が出力される。この第1の呼び信号をマスターのエレベータ制御装置(例えばエレベータ制御装置12a)が受け取り、群管理制御系で用いられる第2の呼び信号に変換する。この例では、登録階が1階に対し、行先階が4階であるので、運転方向=上方向である。したがって、第1の呼び信号は、「運転方向=上方向,登録階=1階」といった第2の呼び信号に変換される。
【0055】
この第2の呼び信号を用いて割当制御が実施される。この場合、行先階は考慮されず、例えば各号機のかご位置や運転方向などから最も早く応答できる乗りかごが最適かごとして選出され、その最適かごに第2の呼び信号が割り当てられる。
【0056】
図4の例では、B号機の乗りかご24bが割当かごとして選出され、1階の登録階に応答している。このとき、乗りかご24bに対して上記第1の呼び信号から得られた行先階がかご呼びとして登録される。上述したように、割当かごに行先階(かご呼び)を登録するタイミングは、例えば割当かごが選出されたときであっても良いし、その割当かごが登録階に応答(到着)したときであっても良い。
【0057】
割当かごがB号機の乗りかご24bに決まったときに、図5に示すように、1Fの乗場行先階登録装置21の表示部23には、利用者が登録した行先階を示す「4F」に代えて、割当かごの号機名である「B」の記号が表示される。
【0058】
また、図6に示すように、1階の乗場には、例えば各号機の乗場ドア26a,26b,26cの近傍に表示器25a,25b,25cが設置されている。これらの表示器25a,25b,25cの中でB号機に対応した表示器25bに、「4F」の行先階が表示される。
【0059】
このように、DCS制御が故障した場合に、群管理制御によって各号機の運転が継続される。したがって、特定号機のみを各階停止させる一般的なバックアップ運転と違って、運行効率を著しく低下させることはない。この場合、DCSと同様に割当かごと行先階が表示されるので、利用者にはあたかもDCSで最適かごを割り当てたかのように見せながら運転を続けることができる。
【0060】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、DCS制御が故障した場合に、各階を停止させずに運転を継続することのできるエレベータシステムを提供することができる。
【0061】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
11…DCS制御装置、12a,12b,12c…エレベータ制御装置、13…群管理制御用ケーブル、14…登録装置用ケーブル、15…登録装置用ケーブル、21…乗場行先階登録装置、22…操作部、23…表示部、24a,24b,24c…乗りかご、25a,25b,25c…表示器、26a,26b,26c…乗場ドア、31…信号変換部、32…割当制御部、33…運転制御部、34…第1の表示制御部、35…第2の表示制御部、36…発報部。
【要約】
【課題】DCS制御が故障した場合に、各階を停止させずに運転を継続する。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、乗場に設置された乗場行先階登録装置21と、DCS制御装置11(第1の制御装置)と、複数のエレベータ制御装置12a,12b,12c…(第2の制御装置)とを備える。DCS制御装置11によるDCS制御が故障した場合に、エレベータ制御装置12a,12b,12c…の中で予めマスターとして設定された制御装置が乗場行先階登録装置21から出力されるDCS制御系の第1の呼び信号を群管理制御系で用いられる第2の呼び信号に変換して運転を継続する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6