特許第6046237号(P6046237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046237
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】マイクロ波プラズマ化学気相成長装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/27 20060101AFI20161206BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20161206BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20161206BHJP
   C30B 29/04 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   C23C16/27
   C23C16/511
   C23C16/455
   C30B29/04 E
【請求項の数】19
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-505687(P2015-505687)
(86)(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公表番号】特表2015-518088(P2015-518088A)
(43)【公表日】2015年6月25日
(86)【国際出願番号】SG2013000144
(87)【国際公開番号】WO2013154504
(87)【国際公開日】20131017
【審査請求日】2015年2月5日
(31)【優先権主張番号】13/445,070
(32)【優先日】2012年4月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514260446
【氏名又は名称】トゥーエイ テクノロジーズ プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121979
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 吉信
(72)【発明者】
【氏名】ミスラ デヴィ シャンカー
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0239078(US,A1)
【文献】 特開平09−111461(JP,A)
【文献】 特開平02−137796(JP,A)
【文献】 特開2004−244298(JP,A)
【文献】 特開平08−255760(JP,A)
【文献】 特開昭59−162118(JP,A)
【文献】 特開2005−255507(JP,A)
【文献】 特開2007−191362(JP,A)
【文献】 特開2002−194549(JP,A)
【文献】 特開平09−025196(JP,A)
【文献】 特開平05−195225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又はそれ以上のチャンバを含み、各チャンバは、1つ又はそれ以上の他のチャンバと流体連通しており、各チャンバは、複数のダイヤモンドシードが上に配置される基材ステージを支持する1つ又はそれ以上の基材ステージ組立体を前記チャンバ内に含むことを特徴とする、ダイヤモンドを成長させるための装置。
【請求項2】
前記チャンバを、各チャンバ間にガスフロー管で直列に配置することができることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記チャンバを、前記チャンバ間でガスが流れることができるように各チャンバが隣接チャンバと接続されたネットワーク状に配置することができることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記チャンバは、前記チャンバ内にマイクロ波エネルギーを供給するためのマイクロ波機構をさらに含むことを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記マイクロ波機構は、2.45GHzのマイクロ波を発生させ、前記マイクロ波のエネルギーを前記チャンバ内の前記基材ステージの領域に振り向けて、偏球プラズマ領域を形成することを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記チャンバは、前記基材ステージ組立体を内部に収容するようになっている筐体を有することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
基材ステージ組立体は、プレートと、基材ステージと、周縁反射体とを含み、前記基材ステージ及び前記周縁反射体は、前記プレート上に支持されることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記プレートは、高い熱伝導率を有する金属で作られることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記基材ステージは、
実質的に円形の平面状の基部と、
前記基部に対する周縁隆起縁部と、を含み、
前記周縁隆起縁部は、それにより中央凹部基材受入れ面を定め、前記中央凹部基材受入れ面は実質的に平面であり、前記基部に対する前記周縁隆起縁部は、内縁部及び外縁部を含み、前記内縁部は、斜面を含む、
ことを特徴とする、請求項7または請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記周縁隆起縁部は、環状溝を含むことを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記周縁隆起縁部は、上面及び下面を含み、前記周縁隆起縁部は、少なくとも前記上面及び前記下面の一方に環状溝を含むことを特徴とする、請求項9または請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記周縁反射体は、前記基材ステージを中心とする円筒形本体を含み、前記周縁反射体は、前記基材ステージの前記周縁隆起縁部から横方向に離間していることを特徴とする、請求項9〜請求項11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記斜面は、上方鋭縁部及び下方鋭縁部を定め、前記上方鋭縁部及び前記下方鋭縁部は共同で、使用時のプラズマ領域を定めることを支援することを特徴とする、請求項9〜請求項12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記基材ステージは、モリブデンで作られることを特徴とする、請求項7〜請求項13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
前記基材ステージの外周は、前記基材ステージ組立体の主要な大部分から、前記基材ステージの上面及び下面の両方にある環状又はスロット状の溝で隔てられていることを特徴とする、請求項7〜請求項14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
請求項1〜請求項15の装置の第1のチャンバの前に配置され、ガスを供給して前記チャンバ内でダイヤモンドを形成するようになっていることを特徴とする、ガス供給部。
【請求項17】
請求項1〜請求項15の装置の最終チャンバの後に配置され、全ての前記チャンバを排気し、一連のチャンバを通して、プロセスガスをガス入口から第1のチャンバの中に引き込むようになっていることを特徴とする、真空ポンプ。
【請求項18】
請求項1〜請求項15の装置の各々のチャンバ上に固定され、前記チャンバ内のガス品質比率を測定するようになっていることを特徴とする、測定手段。
【請求項19】
請求項1〜請求項15の装置の各々のチャンバ上に固定され、前記チャンバ内の圧力を測定するようになっていることを特徴とする、圧力測定手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波プラズマ化学気相成長を作動させることができる装置内で単結晶ダイヤモンド、並びに、黒鉛及び非黒鉛内包物を含まないダイヤモンドを成長させることに関する。
【背景技術】
【0002】
人工単結晶ダイヤモンドは、例えば、宝飾品、ヒートシンク、電子機器、レーザウィンドウ、光学ウインドウ、粒子検出器及び量子コンピューティング装置などにおける様々な科学的、工業的及び商業的用途にとっての可能性を有している。単結晶ダイヤモンドに対する商業的需要が年々増大しているので、単結晶ダイヤモンドの品質を損なうことなく高品質の光学及び科学グレードの単結晶ダイヤモンドの生産を増やすことが必須である。事実として、特に半導体デバイス及び粒子検出器用の科学製品における用途向けの単結晶に対する品質要件は非常に厳格である。欠陥、内包物、微視的粒界、その他の配向が単結晶ダイヤモンドにおける幾つかの顕著な欠陥であり、詳細に深く特徴付けされる必要がある。
【0003】
今までの従来技術では、1つのチャンバを用いて、その中にメタン、水素などの適切な気体、並びに、窒素、酸素及びジボランなどのその他のガスを供給して単結晶ダイヤモンドを成長させ、排気は大気中に排出していた。ガスは、周波数2.45GHzの強いマイクロ波電場を用いて種々のイオン形態及びラジカルに分解される。ガス系統、チャンバ及びその他の汚染源から不純物がダイヤモンド構造の中に取り込まれることが多い。しかし留意すべき重要な点は、ガスがイオン形態になる分解効率がかなり低いこと、及び、排気が更なるダイヤモンド成長のための構成気体をまだ含んでいる可能性があることがおそらくは認識されていないことである。そのうえさらに、気体組成物は、プラズマ相を通過した後には大部分の不純物がプラズマによって除去されるので、精製されている。本発明は、このことを理解した上で、この基礎となる事実を利用しようとする試みに向けられたものである。
【0004】
ダイヤモンドの多結晶粒子を成長させるプロセスは、特許文献1において開示された。そのときから、多結晶及び単結晶ダイヤモンドを生成するための、メタン及び水素を前駆体ガスとして用いる種々の化学気相成長(CVD)技術が考案されてきた。メタンの役割は気相中に炭素を確実に供給することであり、他方、水素は、ダイヤモンド相の安定化に重要な役割を果たす。
【0005】
多結晶ダイヤモンドは、単結晶ダイヤモンドと同様の性質を有しているとはいえ、中に含まれる粒界及び欠陥の存在のため、新規な工業的用途にとっては推奨される材料ではない。それに加えて、多結晶ダイヤモンドの熱伝導率は、単結晶ダイヤモンドの熱伝導率に劣る。さらに、粒界は散乱中心として作用するので、多結晶ダイヤモンド内の粒界は、質の悪化をもたらす役割を果たし、天然ダイヤモンドに特有の優れた性質の発現を阻害する。多結晶ダイヤモンド内の粒界の存在は、工業用途における主要な欠点である。
【0006】
従って、工業用途では単結晶ダイヤモンドを使用することが好まれるのは明らかである。しかし、天然ダイヤモンドと同じ質感、透明度、純度及び仕上がり(finish)の単結晶ダイヤモンドを成長させることは難しい。単結晶ダイヤモンドは多結晶ダイヤモンドと比べて優れた性質を有してはいるが、CVD成長単結晶ダイヤモンドには、微視的及び巨視的な黒鉛及び非黒鉛内包物、フェザー(長い線状の欠陥)がよくあることである。
【0007】
CVD成長単結晶ダイヤモンドの詳細な特徴付けは、サブミクロンから数ミクロンまでの範囲の大きさの黒鉛領域で構成される欠陥を明らかにする、ラマン分光法及びX線回折(XRD)によって行うことができる。
【0008】
単結晶化学気相成長ダイヤモンド(CVDダイヤモンド)内の黒鉛及び非黒鉛内包物の存在は、蒸着チャンバ内の未反応メタンの存在によるものであり得る。ほぼ全ての技術が、ダイヤモンドのCVDにメタンと水素ガスとの混合物を使用する。メタンガスが周波数2.45GHzのマイクロ波の電場によって電気的に分解されて、励起メチル基化学種(CH3+イオン)の形成に至る。メタン及び水素ガスの放電が、CH3+イオン、原子水素、H2+イオン及び有意濃度の電子から成る熱プラズマを形成する。従来技術のプラズマ領域は実質的に楕円体であり、これが基材ステージ組立体を完全に包み込む。
【0009】
従来技術の基材ステージは、一般に平坦な円盤形のモリブデンで作られており、これは、場合に応じて1mm×1mmから10mm×10mmまでの様々なサイズの、1mmから3mmの厚さを有するダイヤモンドシード(基材)を載せるための台座として用いられる。台座は、タングステン又は他の任意の適切な金属で作ることもできる。メチルイオンは温度900℃で基材に到達するので、その移動度は高く、高濃度の水素の存在下でsp3結合ダイヤモンド網状構造の形成を開始する。プラズマの境界(外周)は、中性の分子状メタンガスを含む場合があり、これが熱分解することがある。メタンの熱分解は800℃で生じ、熱分解の結果、黒色の炭素の煤が形成され、これがダイヤモンド蒸着物の中に黒鉛及び非黒鉛不純物を誘発することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,030,187号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、マイクロ波電場の均一性をもたらし、プラズマ領域内のCH3+イオンの濃度を高め、プラズマ領域内の未反応メタンの比率を減らす、基材ステージを提供することである。この基材ステージはまた、ステージの外周の温度が台座の残りの部分よりもかなり低くなるように熱流を流動させることも保証する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様により、ダイヤモンドを成長させるための装置が提供され、この装置は、1つ又はそれ以上のチャンバを含み、各チャンバは、1つ又はそれ以上の他のチャンバと流体連通しており、各チャンバは、複数のダイヤモンドシードが上に配置される基材ステージを支持する1つ又はそれ以上の基材ステージ組立体をチャンバ内に含む。
【0013】
本明細書は以下、本発明を全般的に説明するが、理解を助けるために、本発明の好ましい実施形態を示す添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態による、宝石グレードのダイヤモンドを成長させるための装置の略図を示す。
図2】本発明の第1の実施形態による図1に示す装置の1つのチャンバの略図を示す。
図3】本発明の第1の実施形態によるチャンバ内で用いられる基材ステージを示す。
図4】本発明の第1の実施形態による図3の基材ステージの断面図を示す。
図5】本発明の第2の実施形態による、宝石グレードのダイヤモンドを成長させるための装置の略図を示す。
図6】本発明の第3の実施形態による、宝石グレードのダイヤモンドを成長させるための装置の略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態による宝石グレードのダイヤモンドを成長させるための装置の略図を示し、図2は、本発明の第1の実施形態による図1の装置の一部をより詳細に示す。
【0016】
本発明の一態様によれば、装置は、1つ又はそれ以上のチャンバを含み、各チャンバは1つ又はそれ以上の他のチャンバと流体連通している。図1に示す本発明の第1の実施形態において、装置50は、各チャンバ間にガスフロー管56を伴って直列に配置された一連のチャンバ52を含む。ガス供給部が、ガス入口54を通して第1のチャンバ52aの中にガスを供給する。最終チャンバ52gの後に配置された真空ポンプ58が全てのチャンバを排気し、後述のように、一連のチャンバを通して、プロセスガスをガス入口54から第1のチャンバ52aの中へ引き込む。
【0017】
本発明の一態様によれば、各チャンバ52は、1つ又はそれ以上の基材ステージ組立体32と、マイクロ波機構37とを有する。
【0018】
図1に示す本発明の第1の実施形態によれば、使用中、供給されたガスは、第1のチャンバから出たガスが第2のチャンバに入り、順々に用いられる。全てのチャンバ内の真空が同じ真空ポンプ58によって作り出される。使用済みガスは、ガス出口62で排気される。各チャンバは、チャンバ内の圧力を測定するように適合された専用の独立した圧力測定手段60を有する。ガスの純度は、各チャンバを通るにつれて有意に高まるので、ダイヤモンドの品質が有意に向上し、欠陥を有さないダイヤモンド単結晶の作製に至る。本発明により、多数のチャンバをこの方式で接続することが可能である。測定手段(図示せず)をチャンバ上に固定して、チャンバ内のガス品質比率を測定するようにすることができる。ひとたび最終チャンバ内のガス品質比率が特定のレベルに達すると、チャンバ数が最大数に達したことになるということを提示する。従って、最大チャンバ数を決定することができれば過剰のチャンバ数を避けることができる。
【0019】
ガス組成物は、各チャンバ内でダイヤモンドが同様の成長速度で成長するように、かつ費用を浪費しないように配合することができ、大量のダイヤモンドをより高い収率で成長させることができる。
【0020】
チャンバに供給されるガスを上記の方法で再使用することにより、高品質ダイヤモンド製造の費用の削減及び排気ガス放出量の削減が可能になることを提示する。チャンバ数が測定手段により決定される最大数を超えない限り、ガスを再使用することができる。ガスは、1つのチャンバから1つ又はそれ以上の先行チャンバに流路を繋ぐことで再使用することができる。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施形態による、内包物を有さない宝石グレードのダイヤモンドの製造のための1つのチャンバを示す。
【0022】
本発明の第1の実施形態において、チャンバ52は、1つの基材ステージ組立体32を中に収容するように適合された筐体30を有する。他の実施形態において、チャンバは、2つ又はそれ以上の基材ステージ組立体を含むことができる。基材ステージ組立体32は、より詳細に後述する基材ステージ10と、周縁反射体34とを含む。周縁反射体34は、基材ステージ10を囲む円筒形本体を含み、基材ステージ10の周縁隆起縁部13から横方向に離間している。熱遮蔽として機能することができる周縁反射体34を基材ステージ10の外側で用いるので、基材ステージ10は、チャンバに対する適度な出力で要求温度に達することができる。基材ステージ10及び周縁反射体34は、水、液体窒素等の流体冷媒で冷却される金属プレート35上に支持される。金属プレート35は、銅、モリブデン等、熱伝導率が高い金属で作られる。
【0023】
周縁反射体34は、主として熱を封じ込めるために用いられ、マイクロ波電場を封じ込めるという副次的な役割を有する。その構造は、モリブデン製の非常に薄い円形環状リングであり、熱封じ込めのための光沢のある内面を有する。これを基材ステージ10から約2.5mm離して保持する。熱封じ込めが有効なので、より低いマイクロ波出力で基材温度に達することができ、機械の出力プロファイルを改善することができる。
【0024】
チャンバ52にマイクロ波出力を供給するためのマイクロ波機構37は、2.45.GHzのマイクロ波を発生させ、このマイクロ波エネルギーをチャンバ52の中の基材ステージ10に振り向けて、偏球プラズマ領域14を形成する。後述のガスをチャンバ52内に添加して、ダイヤモンドが形成される。ガスは、ガス供給部又は一連のチャンバ内の前のチャンバからポート56aを介して供給され、チャンバからポート56bを介して次のチャンバへ引き出される。
【0025】
本発明による一連のチャンバ内で使用される基材ステージの第1の実施形態を図3及び図4に示す。
【0026】
基材ステージの異なるセクタの温度を制御するための新規な基材ステージ10及び基材ステージ組立体32は、メタンガスの熱分解が基材近傍に制御され、電場が基材の位置の全領域内で均一になるように設計される。
【0027】
基材ステージ10の周縁部は、基材ステージ10の大部分よりも温度がかなり低く、従って炭素煤の形成が著しく削減されるということを提示する。
【0028】
基材ステージ10は、実質的に円形の平面状の基部12と、基部12に対する周縁隆起縁部13とを有する。周縁隆起縁部13は、中央凹部基材受入れ面15を定める。中央凹部基材受入れ面15は、実質的に平面である。周縁隆起縁部13は、外縁部13a及び内縁部13bを含み、内縁部13bは、中央凹部基材受入れ面15に向かって下方に延びる斜面24を含む。
【0029】
使用時には、より詳細に後述するように、1mm×1mmと10mm×10mmとの間の様々な大きさとすることができる1mmから3mmの範囲の厚さを有するダイヤモンドシード19が、中央凹部基材受入れ面15の上にアレイ状又はマトリックス状に配置される。
【0030】
基部に対する周縁隆起縁部13は、上面13c及び下面13dを含む。本発明の第1の実施形態において、周縁隆起縁部13は、上面13c及び下面13dの少なくとも一方に、それぞれ環状溝18a、18bを含む。本発明の別の実施形態において、上面13c及び下面13dの両方にそれぞれ環状溝18a及び18bが存在する。
【0031】
多数のダイヤモンドシードが中央凹部基材受入れ面15上の凹領域21内に装填される。1mm×1mmから10mm×10mmの範囲の均一なサイズの、1mmから3mmの範囲の厚さを有するダイヤモンドシードが、マトリックス状のレイアウトで配置される。水素の存在下でマイクロ波出力がチャンバに結合されると、プラズマ領域14(図2参照)が形成され、ホルダ領域全体が温度900℃乃至1200℃に加熱される。凹領域21の周縁において、斜面24が、プラズマ領域14の形状の管理を支援する。詳細には、斜面24は、図3に示すように、上方鋭縁部13bと下方鋭縁部17とを定める。上方鋭縁部と下方鋭縁部とが共同で、プラズマ領域14の所望の形状及び性質を定めて維持することを支援することを提示する。
【0032】
本発明の第1の実施形態によれば、基材ステージ10はモリブデンで作られる。モリブデンは高い熱伝導率を有しており、そのことが基部12上で一様な温度を維持することを助ける。
【0033】
基材ステージ10の外周部16は、組立体の主要な大部分から、基材ステージ10の上面及び下面の両方にあることが好ましい環状又はスロット状の溝18で隔てられている。外周部領域への熱伝導は、狭いフランジ20のため少なくなっており、結果として、外周部16の温度は、ステージ組立体12の大部分よりも低い。周縁部の温度が低くなることで、メタンの熱分解が防止され、それゆえ炭素不純物の形成が防止されることを提示する。
【0034】
スロット状溝18及び傾斜縁部24の存在は、プラズマ領域内のCH3+イオン濃度を高めること及びプラズマ領域内の未反応メタンの比率を小さくすることにより、均一性をもたらす。基材ステージ10はまた、領域内のマイクロ波放射の電場を強化することにより、プラズマに安定性をもたらす。最後に申し添えるが、基材ステージ10は、ステージの周縁部の温度が台座の残りの部分よりもかなり低くなるように熱流が流れることを保証する。
【0035】
本発明の目的は、基材ステージ10を用いて、ダイヤモンドシードが配置されている領域におけるメタンガスの熱分解を防ぐようにすることにより、内包物を有さないダイヤモンド、好ましくは宝石グレードのダイヤモンドを生成することである。
【0036】
本発明の第1の実施形態において、メタン、水素、窒素及びジボラン含有ガスが、マイクロ波プラズマ化学気相成長プロセスのための前駆体として用いられる。チャンバ内のガスの主要濃度は、メタン及び水素である。好ましくは、水素ガスの流量は800sccm(標準立方センチメートル毎分)、メタンガスの流量は55sccmである。これらのガスのプラズマは、基材ステージ10の上方の領域14内で生成される。電場は鋭い縁部において強くなるので、プラズマは、説明した構造の基材ステージ10において、より安定かつ均一になる。
【0037】
図5は、複数のチャンバがガスフロー管によって相互接続されてネットワークを形成する、本発明の第2の実施形態による宝石グレードのダイヤモンドの製造のための装置の略図を示す。ダイヤモンド製造装置550の構成要素のうちの幾つかは、ダイヤモンド製造装置50の構成要素と実質的に同じであるので、図1に関して上で説明したことで、同様に番号付けされた図5の構成要素を説明するには十分であろう。例えば、ガス入口54、ガスフロー管56、マイクロ波機構37、基材ステージ組立体32、圧力測定手段60、及び真空ポンプ58は、図1に記載したものと実質的に同じものである。
【0038】
図5に示すように、チャンバ52a1、52a2、52a3及び真空ポンプ58は、それらの間にガスフロー管56を伴って直列に配置され、チャンバネットワーク内の第1の分岐を形成するようになっている。チャンバ52b1、52b2、52b3及びチャンバ52c1、52c2、52c3も同様に配置され、それぞれ第2の分岐及び第3の分岐を形成する。第1の分岐、第2の分岐及び第3の分岐は、互いに平行に延びている。更に、ガスは、主ガス系統500から各々のガス入口54を通って各分岐に供給される。主ガス系統500、第1の分岐、第2の分岐及び第3の分岐が一緒になって、その中をガスが流れるチャンバネットワークを形成する。
【0039】
図6は、複数のチャンバがガスフロー管によって相互接続されて別のネットワークを形成する、本発明の第3の実施形態による宝石グレードのダイヤモンドの製造のための装置の略図を示す。ダイヤモンド製造装置650の構成要素のうちの幾つかは、ダイヤモンド製造装置50及び550の構成要素と実質的に同じであるので、図1及び図5に関して上で説明したことで、同様に番号付けされた図6の構成要素を説明するには十分であろう。例えば、ガス入口54、ガスフロー管56、マイクロ波機構37、基材ステージ組立体32、圧力測定手段60、及び真空ポンプ58は、図1に記載したものと実質的に同じものである。この別の実施形態において、主ガス系統500は、図5において説明したものと実質的に同じである。
【0040】
図6に示すように、チャンバ52a1、52a2、及び真空ポンプ58aは直列に配置されてガスフロー管56によって接続され、ガスがチャンバ間を流れることができるようになっている。従って、チャンバ52a1、52a2、及び真空ポンプ58aは、チャンバネットワーク内の第1の分岐を形成する。真空ポンプ58bは、チャンバ52b1と直列に結合しているので、これら両方が一緒にチャンバネットワーク内の第2の分岐を形成するようになっている。第1の分岐内のガスフロー管56sは、第2の分岐内のチャンバ52b1のガス入口54sに結合し、ガスが分岐間を流れることができるようになっている。主ガス系統500、第1の分岐及び第2の分岐が一緒になって、それらの間をガスが流れるチャンバネットワークを形成する。チャンバネットワークは任意の数の分岐を含むことができ、分岐は任意の数のチャンバを含むことができ、ネットワーク内の分岐の数及び分岐内のチャンバの数は、真空ポンプ系及びガス供給系の能力に依存することを理解されたい。
【0041】
さらに、比較的少量の窒素しか必要としないとはいえ、CVDプロセスで蒸着されるダイヤモンドの成長速度を高めるためには、CVDプロセス中に供給されるガス内にはジボランガスと組み合わされた少なくとも幾らかの窒素ガスが存在しなければならないことを提示する。さらに、非常に少量の窒素をジボランと組み合わせて用いることにより、ダイヤモンド結晶の色及び透明度を著しく向上させることができる。窒素原子を含有するダイヤモンド構造内のホウ素の存在が、黄褐色のダイヤモンドを無色に変えて、宝石グレードのダイヤモンドにすることを提示する。
【0042】
マイクロ波プラズマを利用したCVDプロセスを伴う、本発明の第1の実施形態による基材ステージを用いて単結晶ダイヤモンドを成長させる方法は、以下の通りである。
【0043】
ダイヤモンドを、1mm×1mmと10mm×10mmとの間の様々な大きさとすることができる1mmから3mmの範囲の厚さを有するダイヤモンドシード19の上で成長させる。この方法は、マイクロ波プラズマチャンバ内で行われる。
【0044】
ダイヤモンドシード19の結晶方位を決定し、{100}以外の方位を有するダイヤモンドシード19は排除する。方位{100}を有するダイヤモンドシード19を、CVDプロセスのための準備として、可視光波長のオーダーの粗度の光学仕上げ(optical finish)まで研磨する。
【0045】
ひとたびダイヤモンドシード19がチャンバ52の内部に配置されると、チャンバ52内部の温度を周囲温から750℃乃至1200℃の範囲の温度まで昇温し、チャンバ内部の圧力を120mbar乃至160mbarの範囲の圧力まで減圧する。
【0046】
ダイヤモンドの成長に適したガスをチャンバに供給し、このガスは、メタン(CH4)、水素(H2)、ジボラン(B26)と組み合わせた窒素(N2)、及びヘリウム(He)を含み、これらガスを30 l/hrのガス流量で各チャンバに通す。
【0047】
ジボランガスと組み合わされた窒素ガスは、ダイヤモンドの成長用に平衡をとったガスの0.0001乃至0.1vol%を構成する量で供給される。窒素及びジボランの最適混合物に関して、ダイヤモンドの成長速度は、約18〜20ミクロン毎時である。
【0048】
シードを取り囲むように電場を印加して、チャンバ52内のガスからプラズマが生成されるようにする。電場は、6000ワット及び2.45GHzで作動するマグネトロンによって発生させる。発生した電場は、水素ガスを電離させ、それによりダイヤモンドシード19の近傍でプラズマを形成させる。これらのプロセス条件下で、ダイヤモンドシード19上でダイヤモンドの成長が生じる。
【0049】
ダイヤモンドの成長パターンは段階的であるので、それにより、実質的に欠陥及び不純物を含まないダイヤモンドを成長させることが可能になる。
【0050】
上記の本発明の好ましい実施形態に対して、本発明の意図及び範囲から逸脱することなく、多くの修正、変更及び変形を行うことができることが、当業者には明らかである。従って、添付の特許請求の範囲内に入る、かかる修正、変更及び変形の全てを包含することが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6