特許第6046285号(P6046285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6046285
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20161206BHJP
   B66B 13/26 20060101ALI20161206BHJP
   B66B 13/30 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   B66B11/02 P
   B66B13/26 F
   B66B13/30 Q
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-4676(P2016-4676)
(22)【出願日】2016年1月13日
【審査請求日】2016年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 厚太
【審査官】 大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−047015(JP,A)
【文献】 特開2002−046965(JP,A)
【文献】 特開平06−016368(JP,A)
【文献】 実開平05−082974(JP,U)
【文献】 特開2008−273709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/02
B66B 13/26
B66B 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗籠のドア装置の上部に配置され乗場側に面した外板から底板にかけて開口した窓部を有する幕板と、
記窓部の上部に配置され、前記ドア装置が開かれた状態で前記乗籠の内側から前記乗場までの範囲を撮影する撮影画角を有するカメラと、
前記撮影画角の中心線を前記乗場側に向けた角度に前記カメラを固定する取付具と、を備え、
前記ドア装置は、片開きドアであり、
前記窓部は、前記幕板の幅方向中央位置より前記ドア装置の戸当たり部側で、かつ前記戸当たり部から前記ドア装置の開扉方向に離して設けられ、前記乗場側に設けられた三方枠の戸当たり側の縦枠の乗場側角部と前記カメラとを結ぶ線が、前記乗場において前記エレベータに乗り込む乗客の動線より外方に位置していることを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記取付具は、前記撮影画角の中心線を、平面視で前記ドア装置の開閉方向に垂直に設定することを特徴とする請求項1に記載されたエレベータ。
【請求項3】
前記窓部は、前記ドア装置が閉じたとき、乗場ドアと前記乗場ドアの戸袋との隙間を前記カメラの撮影画角が含む位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載されたエレベータ。
【請求項4】
前記窓部と少なくとも前記カメラの受光部を囲って前記幕板の前記底板の上面に取り付けられるカバーを更に備え、
前記カバーは、前記取付具と一続きに形成されていることを特徴とする請求項に記載されたエレベータ。
【請求項5】
前記窓部には、透明部材が嵌められていることを特徴とする請求項1に記載されたエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗籠の乗り口から乗場にかけての範囲を撮影するカメラを乗籠に備えるエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータには各種センサが組み込まれ、乗り降りする乗客を検出している。ドア装置の上部にカメラを設置し、乗籠の内部と乗場側の両方を観察することが考えられている。
【0003】
例えば、カメラの映像からドアに近づいてくる人を感知したときは、ドアを再開扉させたり、乗客の手指等が戸袋に引き込まれることを感知したときは、ドアの開放を制限したりする。カメラは、乗場と乗籠内部を広く撮影する観点から、乗籠の幕板の中央に取り付けることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5201826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、乗籠の幕板の中央にカメラを設置すると、ドア装置が片開き方式のエレベータの場合には、籠ドアが乗り口の中央に達したとき、カメラが籠ドアで遮蔽され、撮影がなされなくなる。
【0006】
又、エレベータごとにカメラの撮影方向を変更させると、種類の異なる複数の取付具を必要とし、部品点数が増加したり、カメラの取り付け作業が複雑になり、取付作業に手間と時間がかかる。
【0007】
簡易な構成で、ドア装置が閉じられる直前まで撮影可能なカメラを備えたエレベータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態のエレベータは、乗籠に設けられた幕板と、カメラと、取付具と、を備える。幕板は、ドア装置の上部に配置され、乗場側に面した外板から底板にかけて開口した窓部を有している。カメラは、窓部に設けられ、ドア装置が開かれた状態で乗籠の内側から乗場までの範囲を撮影する。取付具は、カメラの撮影画角の中心線を乗場側に向けた角度にカメラを固定する。ドア装置は、片開きドアであり、窓部は、幕板の幅方向中央位置よりドア装置の戸当たり部側で、かつドア装置の戸当たり部からドア装置の開放方向に離して設けられている。
更に、乗場側に設けられた三方枠の戸当たり側の縦枠の乗場側角部とカメラとを結ぶ線が、乗場においてエレベータに乗り込む乗客の動線より外方に位置している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のエレベータを示す斜視図。
図2】同エレベータの乗籠を示す正面図。
図3】同乗籠を示す斜視図。
図4】同乗籠の幕板を示す斜視図。
図5】同幕板を示す正面図。
図6図5のF6−F6線で破断した幕板とカメラを示す断面図。
図7】同幕板とカメラを示す断面図。
図8】同幕板とカメラを示す分解斜視図。
図9】同エレベータのドア装置を示す断面図。
図10】同エレベータのドア装置を示す平面図。
図11】乗籠を示す斜視図。
図12】第2の実施形態の幕板とカメラを示す分解斜視図。
図13】同幕板とカメラを示す断面図。
図14】第3の実施形態の幕板とカメラを示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
第1の実施形態のエレベータ10について、図1から図10を参照して説明する。図1は、任意の階に着床した乗籠12のドアが開き、乗籠12の内部と乗場14とが連続している状態を示す斜視図である。以下、エレベータ10について基本的に、乗籠12の内部から乗場14への方向を前方とし、その逆を後方とし、それを基準に左右を定める。又、重力が作用する方向を下方とし、その逆を上方とし、乗籠12の周囲から乗籠12の中心に向かう側を内側とし、その逆を外側とする。又、左右方向を幅方向といい、上下方向を縦方向ともいう。
【0011】
図2図3に、乗籠12の内部の状態を示す。乗籠12は、籠床20と左右の側壁22と天井板24と後壁26とを備えている。乗籠12の前方には、籠ドア28と三方枠29と、籠ドア幕板30(以下、幕板30とする)とスイッチ部32とセンサ部34とが設けられている。
【0012】
籠ドア28は、高速側籠ドア28aと低速側籠ドア28bを備え、高速側籠ドア28aと低速側籠ドア28bとが、図2図3の左方に移動して閉じる片開きドアである。三方枠29は、幕板30と縦枠25とを備えている。幕板30は、天井板24と左右の側壁22の間に取り付けられ、天井板24と籠ドア28の間を覆っている。スイッチ部32は、乗籠12の三方枠29の戸袋側の縦枠25に取り付けられている。三方枠23の戸締り側には、籠ドア28が閉められた際に、戸先が当たる戸当たり部としての戸当たり柱31(図10参照)が設けられている。
【0013】
乗場14には、図1に示すように、乗場ドア40(図9図10参照)と三方枠42とスイッチ部44と乗場床46が設けられている。三方枠42は、乗場側幕板42aと左右の縦枠42bを備えている。スイッチ部44は、縦枠42bに設けられている。乗場ドア40は、図9に示すように、高速側乗場ドア40aと低速側乗場ドア40bを備えた、籠ドア28同様の片開きドアである。各階の乗場ドア40は、各階に着床した乗籠12の籠ドア28と一体に作動する。籠ドア28と乗場ドア40とを合わせて、ドア装置という。センサ部34は、幕板30に設けられている。
【0014】
次に、センサ部34について説明する。センサ部34は、図6に示すようにカメラ36と透明部材38と取付具48とカバー50とを備え、幕板30の窓部58に設けられている。
【0015】
図4図5に、幕板30を示す。図4は、幕板30を斜め下方から見た状態を示す斜視図である。図5は、幕板30を前方、つまり乗場14側から見た状態を示す正面図である。
【0016】
幕板30は、乗場14側に面した外板52と、乗籠12の内側に面した内板54と、外板52と内板54とを繋ぐ底板56とを備えている。内板54及び底板56は、乗籠12の中から見える意匠部材の一部である。底板56には、籠ドア28の高速側籠ドア28a及び低速側籠ドア28bに合わせた段差が形成されている。
【0017】
外板52は、底板56の段差に合せて、底板56の乗場14側の端部に立ち上げられている。内板54には、乗籠12の着床階や移動方向、各階に関連する情報等を示す表示装置が設けられることもある。
【0018】
窓部58は、幕板30の表裏を貫通した矩形の開口部で、底板56と外板52にかけて形成されている。窓部58は、図5に示すように、幕板30を正面から見たとき、幕板30の中央より右方に寄せて設けられている。一例として窓部58は、左右の横幅が800mmの幕板30に対して、幕板30の右端Rから150mm、幕板30の中央に寄った位置に設けられている。尚、窓部58の取付位置は、これに限るものではない。
【0019】
内板54には、幕板30の窓部58に合せて予めスタッドボルト55(図6参照)が設けられている。窓部58に、透明部材38が取り付けられている。
【0020】
透明部材38は、透光性を有する材質で形成された、L字状に屈曲された板状部材である(図6図8参照)。透明部材38は、外板52及び底板56に沿って、窓部58の形状にほぼ一致した本体部39と、本体部39の外周に一回り大きく広がったフランジ41とを備えている。
【0021】
透明部材38は、窓部58に上方から取り付けると、本体部39が窓部58に嵌り、フランジ41が幕板30の内面に当接して、幕板30の窓部58に保持される。又、透明部材38は、窓部58に上方から取り付けると、透明部材38の外表面が、幕板30の外表面、すなわち外板52の乗場14に面した外面及び底板56の下面とほぼ同一面となる板厚を有している。
【0022】
尚、フランジ41は、透明部材38の全周に設けなくてもよく、透明部材38が窓部58に保持されれば、部分的に設けられていてもよい。又、透明部材38は、カメラ36での撮像に支障が生じない程度に着色されていてもよい。又、透明部材38は、外から入射される光の強さを調整するために、内側または外側、あるいは積層部材の中間層に光透過可変フィルム等を有していてもよい。透明部材38の内側に、カメラ36を取り付ける取付具48が設けられる。
【0023】
取付具48は、図6図8に示すように、基台49と基台49に対して所定角度で連結された傾斜壁51とを備えている。取付具48は、例えば金属板を鋭角に屈曲して形成される。基台49には、内板54に接合されたスタッドボルト55に対応したねじ孔47(図4参照)が設けられている。傾斜壁51には、カメラ36のねじ孔53(図7参照)に対応する位置に貫通孔が設けられている。尚取付具48は、ドア装置が両開き方式の場合も、本実施形態と共通に使用される。
【0024】
基台49は、図6に示すように、内板54に接合されたスタッドボルト55にナットで固定される。尚、基台49は、スタッドボルトを用いる代わりに接着剤で幕板30に張り付けても、ろう付けで固定してもよい。又、取付具48の基台49に対して傾斜壁51が振動しないように、基台49と傾斜壁51の間に補強部を設けてもよい。傾斜壁51には、カメラ36が取り付けられ、カメラ36が所定の角度に設定される。
【0025】
図6図7に示すように、傾斜壁51にカメラ36を固定し、窓部58に透明部材38を組み付けたら、スタッドボルト55を介して幕板30の内板54に基台49を取り付ける。例えば、基台49と傾斜壁51とのなす角度は、約60度であり、これによりカメラ36は、乗場床46に対して約60度傾斜して幕板30に固定される。尚、カメラ36の傾斜角度は、この値に限るものではない。
【0026】
カメラ36は、図6から図8に示すように、円筒形の受光部としての鏡筒部35と方形の台座部37を有している。図6に示すように、カメラ36は、Vで示す撮影画角を有している。Aは、撮影画角Vの中心線である。台座部37は、鏡筒部35よりも半径方向に突出しており、台座部37の四隅にねじ孔53が設けられている。傾斜壁51の貫通穴とねじ孔53にボルトを通して締着させることによって、傾斜壁51にカメラ36が固定される。尚、カメラ36は、ボルトを用いる代わりに接着剤で傾斜壁51に張り付けてもよいし、ろう付けで固定してもよい。
【0027】
カメラ36を取付具48を介して幕板30に取り付けると、基台49と傾斜壁51とのなす角度が約60度であるので、カメラ36の撮影画角Vの中心線Aは、乗籠12の前後方向に沿った垂直な面内で、図9に示すように、乗場床46に対して60度の角度に設定される。図9は、エレベータ10と乗場14を前後方向に沿った面で破断して示す概略断面図である。
【0028】
カメラ36は、例えば72度の撮影画角Vを有しているとすると、点線で示すように、乗籠12の前方の乗場床46及び乗籠12の出入り口周辺を撮影範囲内に含める。更にカメラ36は、左右方向には、籠ドア28の幅方向全体を撮影する撮影範囲を有している。カメラ36の周囲にはカバー50が設けられる。
【0029】
カバー50は、図6から図8に示すように、前板72と天井板74と左右の側板76と脚部78とを備え、幕板30の外板52と内板54との間に、適度な隙間を有して納まる幅方向に長い長方形の箱型の外形を有している。
【0030】
前板72は、外板52に面し、天井板74は、カメラ36の上部に配置され、側板76は、前板72と天井板74の左右両側に前後方向に沿っている。脚部78は、側板76の下端に設けられている。
【0031】
カバー50は、窓部58に面した範囲、すなわち下方及び外板52側の一部と、内板54に面した範囲、すなわち乗籠12側とが開放されている。カバー50は、幕板30の外板52と内板54との間に配置して、脚部78に設けられたねじ孔79(図8参照)に、スタッドボルト57を通して底板56に固定される。ねじ孔79は、前後方向に長い長孔である。
【0032】
カバー50は、幕板30に固定されると、窓部58及び少なくともカメラ36の鏡筒部35の先端部である受光部を囲う。又、カバー50は、図6及び図7に示すように、幕板30の外板52側の窓部58の縁に沿って延びた透明部材38のフランジ41を、幕板30の外板52の内面に前板72で押し当てるように、内板54とカバー50とで透明部材38を挟んで固定する。尚、透明部材38は、フランジ41に塗布したコーキング剤や接着剤により幕板30に固定してもよい。
【0033】
次に、カメラ36がエレベータ10を撮影する状態について説明する。
【0034】
図1に示すように、カメラ36は、幕板30に、戸当たり柱31側から所定距離離して設けられている。カメラ36は、透明部材38を通して窓部58から、乗場ドア40と籠ドア28が閉じられた状態で、籠ドア28の内側を撮影し、乗場ドア40と籠ドア28が開かれた状態で、乗籠12の内側及び乗場14を撮影する。
【0035】
カメラ36の撮影範囲を図9図10に示す。図10は、エレベータ10と乗場14を上方から示す概略平面図である。カメラ36の撮影画角Vの中心線Aは、図10に示すように、戸当たり柱31側から所定距離(150mm)離れたセンサ部34の位置から前後方向に沿って、図9に示すように、乗場14に向かって斜め前方に傾斜して延びている。
【0036】
カメラ36は、図9の点線で示すように、乗場ドア40及び籠ドア28が開いた状態で、乗籠12の内部から乗場14まで、乗籠12の内部より乗場14側の方が広く撮影するように撮影画角Vが設定されている。
【0037】
撮影範囲は、概ね、乗籠12の籠ドア28の内側に人が一人立った程度の位置から、乗場14側へ乗場ドア40から一般的な人の歩幅で5〜6歩程度進んだ位置までを撮影する範囲となっている。
【0038】
更にカメラ36は、乗場14の左方部分を、カメラ36と乗場14の三方枠42の縦枠42bの乗場側角部とを結ぶ線Cより右側部分を撮影する。これは、乗場14の状態、特に、エレベータ10に乗り込む人の動線を撮影するには十分な範囲となっている。
【0039】
エレベータ10の制御装置は、カメラ36が撮影する映像情報を基に、乗場14の近くにエレベータ10を利用しようとしている人がいるか否かを判定し、籠ドア28の動作制御を行う。例えば、乗場ドア40を閉扉動作をしているときに、エレベータ10に乗ろうとしている人を検出したときは、籠ドア28の閉扉動作を中断させ、開扉させる。
【0040】
そして、図11に示すように、エレベータ10は、カメラ36が乗場14の状態を、籠ドア28がセンサ部34の前面の位置に達するまで撮影でき、制御装置により安全に制御される。又、エレベータ10は、カメラ36が乗籠12内の籠ドア28全体を撮影できるので、例えば籠ドア28が開く際に、戸袋に手が引き込まれるおそれを検出したとき制御装置が、開扉動作を中断したり、注意を促して、事故発生を未然に防止できる。
【0041】
第1の実施形態のエレベータ10は、片開きドアであっても、カメラ36が乗場14の状態を広く撮影し、また、乗籠12の籠ドア28の全体を撮影し、更に、乗場ドア40が閉じられる直前まで撮影できるので、エレベータ10を安全に作動できる。
【0042】
又、取付具48は、エレベータ10が両開きドアであっても、同一のものを使用でき、部品点数の増加、取付作業の煩雑さや手間の増加を抑制できる。カメラ36は、取付具48によって幕板30に固定するとともにカバー50によって囲われ、かつ透明部材38がカバー50により窓部58にしっかりと押え込まれる。
【0043】
よって、容易にかつ精度よく幕板30の中にカメラ36を設置することができる。カメラ36の撮影画角Vは、精度よく設定される。又、エレベータ10の乗客の携行物が下方から透明部材38に当たっても、カバー50で押さえられるので、透明部材38が浮き上がることを防止できる。カメラ36を幕板30に設置するための構造として簡素であり、現地での組み立て作業が容易である。
【0044】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のエレベータ10について、図12図13を参照して説明する。第2の実施形態のエレベータ10では、カメラ36を固定する取付具がカバーと連続して形成され、ハウジング102を構成している。その他の構成は、第1の実施形態のエレベータ10と同じである。第1の実施形態のエレベータ10と同じ機能を有する部材は、第1の実施形態と同じ符号を付し、詳細な説明は、第1の実施形態の対応する記載を参酌する。
【0045】
図12は、乗籠12の幕板30に設置されたカメラ36及びその周辺部を、乗場14側の下方から見上げた分解斜視図である。図12は、ハウジング102とカメラ36と透明部材38を幕板30の底板56に対して上方へ取り外した分解斜視図である。
【0046】
ハウジング102は、第1の実施形態と同様に板金を折り曲げて形成されている。ハウジング102は、前板72と天井板74と左右の側板76と後板104と傾斜壁106と脚部78とを備えている。又、ハウジング102は、幕板30の外板52と内板54との間に、適度な隙間を有して納まる幅方向に長い長方形の箱型の外形を有している。
【0047】
後板104は、左右の側板76の間に設けられている。傾斜壁106は、後板104を破断し、後板104の一部を前方に折り曲げて形成されている。傾斜壁106には、貫通孔107が設けられている。傾斜壁106は、第1実施形態の傾斜壁51と同様、所定の角度に設定されている。又、傾斜壁106は、先端縁がハウジング102の前板72と天井板74の角部に当接している。
【0048】
カメラ36は、ねじ孔53に通したボルトを用いて傾斜壁106の貫通孔107に固定される。ハウジング102は、脚部78を介して幕板30の底板56に固定される。このようにしても、カメラ36は、幕板30に確実に固定され、所定の範囲を撮影して映像を制御装置に送ることができる。
【0049】
傾斜壁106の先端縁がハウジング102の角部の内側に接しているので、傾斜壁106がしっかり保持され、かつハウジング102自体の剛性を高めることができ、カメラ36を確実に固定させることができる。
【0050】
第2の実施形態のエレベータ10によれば、第1の実施形態と同様の効果を奏するとともに、カメラ36が窓部58にしっかりと固定され、かつ、カメラ36を組み立て現地で幕板30に組み込む作業も、ハウジング102を幕板30の底板56に固定するだけであるので容易に行える。
【0051】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係るエレベータ10について、図14を参照して説明する。第3の実施形態のエレベータ10では、カメラ36を固定する取付具がカバーと一続きに形成されたハウジング110である点が第1の実施形態と異なっている。その他の機能及び構成は第1の実施形態と同じであるので同じ機能を有する構成は、第1の実施形態と同じ符号を付し、詳細な説明は第1の実施形態の対応する記載を参酌することとする。
【0052】
図14は、幕板30に設置されたカメラ36と透明部材38とハウジング110とをそれぞれ幕板30の底板56から上方へ取り外した状態を、乗籠12側の左上方から見た分解斜視図である。図14においてハウジング110よりも幅方向外側の幕板30の両側部は省略している。
【0053】
第3の実施形態において、ハウジング110は、第1及び第2の実施形態と同様に板金を折り曲げて造られる。第3の実施形態のハウジング110は、第2の実施形態と同様に取付具と一体に形成されている。ハウジング110は、図14に示すように、前板72と天井板112と左右の側板114と後板116と脚部78とを備えている。ハウジング110は、幕板30の外板52と内板54との間に、適度な隙間を有して納まる幅方向に長い長方形の箱型の外形を有している。
【0054】
天井板112は、傾斜壁51や106と同様に傾斜している。左右の側板114と後板116は、天井板112の傾斜角度に合せて形成されている。したがって、ハウジング110は、乗場14側が高く乗籠12側が低い台形形状を有している。
【0055】
天井板112には、貫通孔107とカメラ36の鏡筒部35が通る径を有する挿通孔120とが形成されている。つまり、天井板112は、第1実施形態の傾斜壁と同等の機能を備えて形成されている。
【0056】
天井板112に設けられた挿通孔120にカメラ36の鏡筒部35を斜め上方から差し込み、ボルトを貫通孔107とねじ孔53に通して締着させることによって、カメラ36をハウジング110に固定する。ハウジング110は、第1の実施形態や第2の実施形態と同様に、脚部78のねじ孔79を幕板30の底板56のスタッドボルト57に嵌めて、ナットで固定する。ハウジング110が幕板30の底板56に固定されることで透明部材が幕板30にしっかりと固定される。尚、ねじ孔やボルトの組み合わせはこれに限るものではない。
【0057】
第3の実施形態のエレベータ10によれば、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の効果を奏するとともに、カメラ36をハウジング110の上方から取り付けることができるので、透明部材38及びハウジング110を幕板30に組み付けた後で、カメラ36を設置することができる。
【0058】
そのため、組み立て現場において、カメラ36及びその配線を設置するタイミングの自由度が増すとともに、工場で部組する場合にもカメラ36及びその配線を幕板30に組み付ける作業が容易になる。更に、幕板30に設置されたカメラ36を交換する必要が生じた場合にも簡単に交換できる。
【0059】
尚、カバー50やハウジング102、110は、板金を折り曲げて造られる以外に、合成樹脂を射出成型して作られたものでもよい。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0061】
例えば、第1の実施形態の取付具48の傾斜壁51に挿通孔120を設け、第3の実施形態において用いられるように、カメラ36の鏡筒部35を上方から装着することもできる。
【0062】
又、第1の実施形態の取付具48は、外板52に固定してもよい。この場合、基台49の上端から乗籠12側に向かって下がるように傾斜壁51が延びる状態になる。その際、取付具48に干渉する範囲でカバー50を切り欠くこととする。
【0063】
又、第2の実施形態のハウジング102に対して第3の実施形態のようにカメラ36を上方から装着する場合は、カメラ36の台座部37が通過する大きさの開口部を、ハウジング110に設ける。ハウジング102は、幅方向にカメラ36よりも十分に大きいので、傾斜壁106は、開口部の両側部で側板76に一続きにつながる。
【符号の説明】
【0064】
A…中心線、V…撮影画角、10…エレベータ、12…乗籠、14…乗場、20…籠床、22…側壁、23…三方枠、24…天井板、25…縦枠、26…後壁、28…籠ドア、28a…高速側籠ドア、28b…低速側籠ドア、29…三方枠、30…幕板、31…柱、32…スイッチ部、34…センサ部、35…鏡筒部、36…カメラ、37…台座部、38…透明部材、39…本体部、40…乗場ドア、40a…高速側乗場ドア、40b…低速側乗場ドア、41…フランジ、42…三方枠、42a…乗場側幕板、42b…縦枠、44…スイッチ部、46…乗場床、47…孔、48…取付具、49…基台、50…カバー、51…傾斜壁、52…外板、53…ねじ孔、54…内板、55…スタッドボルト、56…底板、57…スタッドボルト、58…窓部、72…前板、74…天井板、76…側板、78…脚部、79…孔、102.110…ハウジング、104…後板、106…傾斜壁、107…貫通孔、112…天井板、114…側板、116…後板、120…挿通孔。
【要約】
【課題】ドア装置が閉じられる直前まで撮影可能なカメラを備えたエレベータを提供する。
【解決手段】エレベータ10は、乗籠12に設けられた幕板30と、カメラ36と、取付具48と、を備える。幕板30は、ドア装置の上部に配置され、乗場14側に面した外板52から底板56にかけて開口した窓部58を有している。カメラ36は、窓部58に設けられ、ドア装置が開かれた状態で乗籠12の内側から乗場14までの範囲を撮影する。取付具48は、撮影画角の中心線を乗場14側に向けた角度にカメラを固定する。ドア装置は、片開きドアであり、窓部58は、幕板30の幅方向中央位置よりドア装置の戸当たり部側で、かつドア装置の戸当たり部からドア装置の開放方向に離して設けられている。
【選択図】図10
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