【文献】
渡辺治夫,実用木材加工全書 第5巻 合板の製造,日本,森北出版株式会社,1968年12月 5日,p.244-251
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記テーブル上に固定された固定部と、前記テーブル上に摺動可能に配置された摺動部と、当該摺動部を当該固定部に向けて押圧するばね部材とを備える支持板保持手段を有し、当該固定部と当該摺動部との間に支持板を挟み込んで当該ばね部材で付勢することにより前記支持板を前記テーブル上で立設させることを特徴とする請求項1または2記載の曲面合板の加工装置。
前記支持板保持手段は前記直線レールの延伸方向に沿って一定の間隔で複数配置されており、被加工物である曲面合板の寸法に応じて、複数の支持板を任意の前記支持板保持手段に挟み込んで前記テーブル上に立設し、複数の当該支持板により当該曲面合板を支持することを特徴とする請求項3記載の曲面合板の加工装置。
前記ロッドの下端に前記直線レールの延伸方向に長尺の合板押えを装着し、当該合板押えを介して被加工物である曲面合板を押圧することを特徴とする請求項1ないし4記載の曲面合板の加工装置。
【背景技術】
【0002】
建築土木現場において鉄筋コンクリート製の構造物を構築する際には、木製や金属製、FRP製などのコンクリート型枠パネルが多用されている。美術館、博物館や競技場などの意匠性の高い構造物には湾曲した外観形状を有するものが多いが、これらの構造物を構築する場合には、その外面形状にあわせて、曲率(曲げ)半径の異なる様々な曲面合板(「曲げ合板」ともいう。)がコンクリート型枠として用いられている。また、土木現場においても、アーチ状のダムや円柱状の橋脚などを構築する場合には、その外面形状にあわせて、曲率半径の異なる様々な曲面合板がコンクリート型枠として用いられている。
【0003】
合板は、複数の単板に接着剤を塗布して相互に貼り合せ、圧力を加えて接合することにより形成される。この形成過程において、所望の曲率半径を有する雌雄の金型の間に板材を入れて高温で加圧して接着剤を乾燥させることにより、所望の曲率半径を有する曲面合板を成型することができる。例えば、単板として910mm×1820mmの長方形状のベニヤ板(厚さは2.5mm、3mm、4mm、5mm、6mm、9mm、12mm等)が用いられ、厚さ4mmのベニヤ板を3枚ほど積層して12mm厚の曲面合板が形成される。なお、曲面合板の曲率が小さいものほど、薄いベニヤ板を使わないと所望の曲率半径の合板に形成し難いため、曲率半径の大小に応じて任意の厚さのベニヤ板が選択される。
【0004】
コンクリート型枠は複数の型枠パネルを建築土木現場に搬入し、現場において相互に連結することにより所望の型枠形状に組み上げて使用される。これら型枠パネルの組み上げ作業は、各型枠パネルの側面を隙間なく相互に突き合わせて接触させた後、例えば、各型枠パネルの両端辺に設けられた桟木同士を釘やビスなどの金物を用いて相互に連結することにより行われる。現場において曲面型枠を形成する方法として、工場内において予め所望の曲率半径に加工を施した型枠パネルを現場に複数搬入して連結して使用する場合と、平板状の型枠パネルを現場に搬入した後に現場において所望の曲率半径に変形して使用する場合とがある。後者の例として、特許文献1には現場において任意の曲率の曲面型枠を設置する工法に関する技術が開示されているが、この技術は、各型枠パネルの側面を隙間なく相互に突き合わせて接触させた後、緊締金具を用いて相互に連結し、各型枠パネル間に架設されたターンバックルを回転させることにより型枠パネルを湾曲させて任意の曲率の曲面型枠を実現しようとするものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
型枠パネル相互の連結部分となる型枠パネル側面の仕上げ精度が悪いと、型枠パネル間の連結部分に隙間が生じ、当該隙間からコンクリートが漏れ出すなどしてコンクリート表面の仕上げ精度(平滑さ等)に悪影響を及ぼす。そこで、連結部分となる型枠パネルの両側の端辺(以下「両側端辺」という。)は、隙間無く連結できるように直線的かつ平滑に精度よく仕上げる必要がある。
【0007】
ところで、合板は複数の単板(ベニヤ板)を積層して形成されるものであるところ、各単板に接着剤を塗布して相互に貼り合せ、圧力を加えて接合させる過程で、各単板(各層)のもつ寸法精度のばらつきや、相互に貼り合せる際の位置ズレなどを原因として、通常、その端辺部には凹凸が生じてしまう。とくに、円弧状に湾曲させた曲面合板については、外層側の弧長と内層側の弧長が異なるため、曲面合板の各端辺には凹凸が生じやすいことから、圧締成型後の曲面合板を型枠パネルとして用いる場合には、その端辺を直線的かつ平滑に精度よく仕上げる必要がある。
【0008】
この点、特許文献1に開示される技術は、型枠パネルを湾曲させた際に型枠パネル間の連結部分に生じる隙間の問題を考慮するものではない。また、複数のベニヤ板を積層して成る合板性の型枠パネルを、特許文献1に開示される技術のように、建築土木現場において、ターンバックル等の緊締金具を用いて機械的に曲げようとする場合、元々が平らなベニヤ板であるから綺麗な局面を形成することが困難であり、これを無理に曲げようとすると、内層側と外層側の弧長が異なるため各ベニヤ板を接合する接着剤を破壊することになり、曲率半径が小さい(カーブがきつい)場合には対応できない。
【0009】
曲面合板をコンクリート型枠として用いる場合、その曲面合板の連結部分となる端部を、丸鋸を切断手段とするパネルソーにより仕上げることが考えられる。このパネルソーはパネル(面板)の底面を水平定規の上に載せ、パネルの背面を所定の傾斜角で立設されたテーブル面に立てかけ、テーブル面に対してパネルをクランプ固定した後、丸鋸を用いて切断するというものである。
【0010】
しかしながら、パネルソーを用いて曲面合板の端部の仕上げ処理を行う場合には、曲面合板の各端辺には不均一な凹凸があり、かつ、合板自体が湾曲しているため、曲面合板の底面を水平定規の上に載せたときに不安定でぐらつき易い。そのため、テーブル面の所望の位置及び角度で載置させることが極めて困難であるため所望の位置を精度よく切断することが困難であるか、曲面合板を所望の位置及び角度で載置するまでに相当の時間を要してしまい作業効率が悪いという問題がある。加えて、パネルソーは通常1枚の丸鋸を用いてパネルを1辺ずつ切断するものであるため、曲面合板のように各端辺に大きな凹凸がある場合には、各端辺を平行に切断することが困難であるという問題もある。
【0011】
例えば、曲面合板の右側端辺を処理するため下側端辺を水平定規の上に載せた場合には下側端辺の凹凸のために曲面合板を垂直に立てかけることが困難であり、傾きのある状態で右側端辺を切断しかねない。また、左側端辺を切断すべく、曲面合板を上下反転させて上側端辺を水平定規の上に載せた場合には上側端辺の凹凸のために曲面合板を垂直に立てかけることが困難であり、傾きのある状態で左側端辺を切断しかねず、結果として、型枠の連結部分となる右側端辺と左側端辺を平行に切断することが困難である。このような曲面合板を型枠パネルとして現場に搬入して組み上げようとしても、型枠パネル間の連結部分に隙間が生じ、コンクリート表面の仕上げ精度(平滑さ等)に悪影響を及ぼす。
【0012】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、コンクリート型枠等として用いられる曲率半径の異なる様々な曲面合板の端部を所定の寸法で精度よく切断するための曲面合板の加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の曲面合板の切断装置は、基台上に敷設された直線レール上を移動するテーブルと、前記テーブルに固定されるフレームを介して前記テーブルの上方に設置され、上下方向に伸縮するロッドを備える押圧手段と、被加工物である曲面合板の曲率に対応する曲率半径に加工された円弧部を備える支持板と、前記基台の両外側に配置される一対の丸鋸とを有し、前記テーブル上に前記円弧部を上向きにして前記支持板を立設した後、当該円弧部上に曲面合板を載置し、前記ロッドにより当該曲面合板を下方に押圧した状態で、前記テーブルを前記丸鋸に向けて移動させることにより、当該曲面合板の両側端辺を同時に切断することを特徴とする。
【0014】
本発明の曲面合板の切断装置は、好ましくは、前記一対の丸鋸の刃先のそれぞれを前記支持板上に載置された曲面合板の曲率中心に向けて配置するようにしても良い。
【0015】
本発明の曲面合板の切断装置は、好ましくは、前記テーブル上に固定された固定部と、前記テーブル上に摺動可能に配置された摺動部と、当該摺動部を当該固定部に向けて押圧するばね部材とを備える支持板保持手段を有し、当該固定部と当該摺動部との間に支持板を挟み込んで当該ばね部材で付勢することにより前記支持板を前記テーブル上で立設させるようにしても良い。
【0016】
本発明の曲面合板の切断装置は、好ましくは、前記支持板保持手段は前記直線レールの延伸方向に沿って一定の間隔で複数配置されており、被加工物である曲面合板の寸法に応じて、複数の支持板を任意の前記支持板保持手段に挟み込んで前記テーブル上に立設し、複数の当該支持板により当該曲面合板を支持するようにしても良い。
【0017】
本発明の曲面合板の切断装置は、好ましくは、前記ロッドの下端に前記直線レールの延伸方向に長尺の合板押えを装着し、当該合板押えを介して被加工物である曲面合板を押圧するようにしても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンクリート型枠等として用いられる曲面合板の端部、例えば両側端辺を所定の寸法で精度よく切断することができる。とくに、基台の両外側に1枚ずつ配置された一対の丸鋸を用いることにより、曲面合板の両側端辺を同時に切断することができるので、両側端辺を平行に切断することができるとともに、仕上げに要する時間を短縮することができる。本発明により切断処理された曲面合板を建築土木現場に持ち込んで、型枠パネルとして利用する場合、型枠パネルの連結部分となる両側端辺が平行かつ平滑に精度よく仕上げられているので、型枠パネル間の連結部分に隙間が生じない。
【0019】
また、本発明は、曲面合板の曲率に応じて、曲面合板の曲率に対応する曲率半径に加工された円弧部を有する支持板を適宜選択して利用することができるので、曲げ(曲率)半径の異なる様々な曲面合板の加工装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態である曲面合板の加工装置において、被加工物である曲面合板を載置し押圧手段により押圧した段階を模式的に示した側面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態である曲面合板の加工装置において、被加工物である曲面合板を載置し押圧手段により押圧した段階を模式的に示した正面図であり、丸鋸の刃先の位置および角度を調整するための手段も模式的に示している。
【
図3】支持板の一例を模式的に示した斜視図であり、(a)は半円状のものであり、(b)は逆U字状のものである。
【
図4】支持板保持手段の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図5】被加工物である曲面合板の一例を模式的に示した斜視図である。
【
図6】本発明の一実施の形態である曲面合板の加工装置において、支持板を載置する前の段階を模式的に示した側面図である。
【
図7】本発明の一実施の形態である曲面合板の加工装置において、支持板を載置する前の段階を模式的に示した正面図である。
【
図8】本発明の一実施の形態である曲面合板の加工装置において、支持板を載置した後の段階を模式的に示した側面図である。
【
図9】本発明の一実施の形態である曲面合板の加工装置において、支持板を載置した後の段階を模式的に示した正面図である。
【
図10】本発明の一実施の形態である曲面合板の加工装置において、テーブルを丸鋸に向けて移動させることにより曲面合板の端辺を切断する開始段階を模式的に示した側面図である。
【
図11】本発明の一実施の形態である曲面合板の加工装置において、曲面合板の端辺を切断する終了段階を模式的に示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態である曲面合板の加工装置1について説明する。
図1および
図2に示されるように、本発明の曲面合板の加工装置1は、基台2上に敷設された直線レール6上を移動するテーブル7と、テーブル7に固定されるフレーム12を介してテーブル7の上方に設置され、上下方向に伸縮するロッド17を備える押圧手段としてのエアシリンダ16と、被加工物である曲面合板Wの曲率に対応する曲率半径に加工された円弧部19を備え、円弧部19を上向きにしてテーブル7上に立設される支持板18と、基台2の両外側に1枚ずつ配置される一対の丸鋸26、29とを有する。
【0022】
基台2は、工場等の床面上に設置固定され、レール6やテーブル7等を所定の高さ位置に支持するものである。本実施の形態においては、基台2は、床面上に設置固定されるベースフレーム3と、ベースフレーム3に立設固定される複数本の支柱4と、各支柱4により支持固定され地面から1メートルほどの高さ位置において略水平に設置される平板状のステージ5とを備えている。ステージ5上には、ステージ5の長手方向に沿って、2本の直線レール6が平行に敷設されている(
図2参照)。なお、ステージ5の下側の空間は、支持板18置き場として活用することができる。
【0023】
テーブル7は、直線レール6上を転動する車輪8を備えており、直線レール6上を前後進自在に移動することができる。テーブル7を走行させるための駆動機構として、曲面合板の加工装置1は、ステージ5の両端部に配置される一対のスプロケット9と、これらのスプロケット9に掛け渡される無端のワイヤ10と、減速機を介して一方のスプロケットに連結した可逆式の電動モータ(図示省略)を備えている。テーブル7の底部には、このワイヤ10に装着される連結部11が固定されている。そして、電動モータを操作してワイヤ10を巻き取ることにより、連結部11を介してテーブル7を前後進自在に走行させることができる。なお、テーブル7を走行させるための駆動機構としては、チェーン機構や、ラックピニオン機構、送りネジなど様々なテーブル搬送手段を用いることができる。
【0024】
フレーム12は、押圧手段としてのエアシリンダ16をテーブル7の上方に配置するための部材である。本実施の形態においては、フレーム12は、側面視で門型に構成されており(
図1参照)、テーブル7の前後端にそれぞれ2本ずつ立設固定される支柱13、14と(
図2参照)、前端側の支柱13と後端側の支柱14に架け渡されるビーム15とを備えている。
図2に示されるとおり、前端側の支柱13は直線レール6の幅方向(
図2の左右方向)に所定の間隔で2本立設固定されており、これらの支柱13の間には、後述する合板押え21が配置されている。同様に、後端側の支柱14は直線レール6の幅方向に所定の間隔で2本立設固定されており、これらの支柱14の間に合板押え21が配置されている。合板押え21は、前端側の支柱13および後端側の支柱14のそれぞれに対して嵌め込まれることなく、上下動自在である。
【0025】
テーブル7の上方には、エアシリンダ16が、フレーム12を介して配置されている。本実施の形態においては、エアシリンダ16は、ビーム15の底側に一定の間隔で下向きに装着されている。エアシリンダ16は上下方向に伸縮するロッド17を備えており、ロッド17を降下させることにより下方に向けて押圧力を作用させることができる。なお、ロッド17の伸縮操作は、通常一般に用いられる図示しない制御装置により、作業員が手元で行うことができる。押圧手段はエアシリンダ16に限らず、油圧シリンダ、その他伸縮ロッドを上下動させることが可能な動力源をもつ昇降手段であれば幅広く利用することができる。
【0026】
図3は支持板の一例を示した模式図である。
図3(a)に示されるとおり、支持板18は、曲面合板Wの曲率に対応する曲率半径に加工された円弧部19と、テーブル7上に載置される挟込部20とを備える、半円状の板材(R型枠とも称する。)である。支持板18は、合板製の部材であり、被加工物である曲面合板の曲率に対応可能なように、様々な曲率半径や縦横寸法を有するものが作成され、予め保管されている。逆U字状(
図3(b)参照)のものは、半円状の円弧部と長方形状の挟込部とにより構成されており、長方形状の挟込部を備えることにより、半円状の支持板を使用する場合よりも、より上方に曲面合板を配置したい場合に用いられる。丸鋸26、29の高さ位置に合わせて、半円状(
図3(a)参照)もしくは逆U字状(
図3(b)参照)の支持板が任意に選択され使用される。
【0027】
エアシリンダ16の下端、即ちロッド17の先端には、直線レール6の延伸方向に長尺の合板押え21が装着されている。合板押え21は、所定の高さ寸法を有する直方体状の木製の部材であり、例えば、複数の角材を高さ方向に連結して形成される。このロッド17先端に吊り下げられた合板押え21は、エアシリンダ16の押圧力を曲面合板Wに対して均等に負荷するとともにロッド痕を曲面合板Wに残さないための当て板として用いられる他、支持板18上に載置された曲面合板Wまでの離隔距離が大きい場合(即ち、エアシリンダ16の伸縮ストロークが離隔距離よりも小さい場合)には離隔を埋めるスペーサーとして用いられるものである。所定の高さ寸法の角材を釘等の金具により連結することにより、所望の高さ寸法の合板押え21を容易に形成することができる。
【0028】
テーブル7上には、直線レール6の延伸方向に沿って、複数の支持板保持手段22が一定の間隔で設けられている。
図4は支持板保持手段の一例を模式的に示した斜視図である。支持板保持手段22は、テーブル7上に固定された固定部23と、テーブル7上に摺動可能に配置された摺動部24と、摺動部24を固定部23に向けて押圧するばね部材25とを備える。本実施の形態においては、固定部23は、直線レール6の幅方向に設置されたL型鋼板をテーブル7に固定することにより形成される。このばね部材25の押圧力により、通常、摺動部24は固定部23に接近ないし接触する位置にあるが(閉状態、
図4、
図6参照)、人力等により、ばね力に抗して摺動部24を固定部23から遠ざけることができる(開状態、
図8参照)。人力等により摺動部24を固定部から遠ざけた状態(開状態)において固定部23と摺動部24との間に支持板18を配置した後、ばね力により閉状態として固定部23と摺動部24との間に支持板18を挟み込むことにより、支持板18をテーブル7上に着脱自在に保持することができる。すなわち、支持板保持手段22によれば、固定部23と摺動部24との間に支持板18を挟み込んでばね部材25で付勢することにより支持板18をテーブル7上に立設させることができる。
【0029】
支持板18は、このような支持板保持手段22により、
図2に示されるように、直線レール6の幅方向に、円弧部19が上向きとなるように配置される。前述のとおり、支持板18は、円弧部19の曲率半径が異なるものが複数備え付けられており、これらの支持板18のうちから被加工物である曲面合板Wの曲率に対応する支持板18が選択されて、テーブル7上に立設される。
【0030】
基台2の両外側の所定の位置(基台2の長手方向中央付近)には、切断装置27、30が設置されている。それぞれの切断装置27、30は、切断手段としての丸鋸26、29と、切り屑を吸引して回収するフード28、31と、丸鋸26、29を高さ方向(上下方向)に移動させるZ軸駆動部と、丸鋸26、29を直線レール6の幅方向(
図7の左右方向)に移動させるY軸駆動部とにより構成される位置調整手段(図示省略)と、ロール回転(Y・Z両軸に直交するX軸をロール軸とするロール回転、
図6・
図7参照)させる角度調整手段(図示省略)とを備えている。本実施の形態においては、Z軸駆動部およびY軸駆動部は従来一般に用いられるボールねじ送り機構により実現されており、手動ハンドルないし電動モータにより、高さ方向および幅方向(
図7の左右方向)の位置を調整することができるようになっている。また、角度調整手段はロール軸方向に配置され丸鋸に連結された回転軸を備えており、この回転軸を手動ハンドルないし電動モータにより回転させることにより、丸鋸26、29を
図7においてカーブの矢印で示す方向にロール回転させることができるようになっている。
【0031】
これらの丸鋸26、29は、曲面合板Wを同一面側から切り込むように、その回転方向が設定されている(例えば、曲面合板Wの上面から下面に向けて切り込むように設定されている。)。これら一対の丸鋸26、29により、曲面合板Wに対する切削ないし切断加工が行われる。前述のとおり、丸鋸26、29のYZ方向の位置およびロール角を図示しない手動ハンドルを回転させることにより手動で調整することもできるが、各駆動部及び角度調整手段を構成する電動モータに駆動信号を出力して電動モータを回転させることにより調整することもできる。すなわち、
図2に模式的に示すとおり、切断装置27、30を構成する各駆動部及び角度調整手段は制御部32に接続されており、この制御部32はインターフェースとしての操作パネル33に接続されている。作業員は、操作パネル33に所望の移動量等の情報を入力することにより、制御部32からZ軸駆動部・Y軸駆動部(位置調整手段)や角度調整手段を構成する各電動モータに駆動信号が出力されることにより、両丸鋸26、29のYZ方向の位置およびロール角を調整することができる。
【0032】
図5は、本発明の被加工物である曲面合板の一例を模式的に示した斜視図である。本発明の被加工物である曲面合板Wは、複数の単板(ベニヤ板)に接着剤を塗布して相互に貼り合せ、所望の曲げ(曲率)半径を有する雌雄の金型の間に板材を入れて加圧することにより形成されるものである。曲面合板Wは複数の単板を積層して形成されるものであり、各単板(各層)のもつ寸法精度のばらつきや、相互に貼り合せる際の位置ズレ、外層と内層の弧長の違いなどを原因として、その各端部に凹凸が発生してしまう。
【0033】
次に、曲面合板の加工装置1の実施工程、即ち、曲面合板Wの端部を所定の寸法で精度よく切断することにより、各端部の凹凸を処理して平滑な側面を形成するための工程について説明する。
【0034】
〔第1工程〕初期状態(
図6、
図7):先ず、
図5および
図6に示されるように、テーブル7を移動して直線レール6の一端側に配置する。エアシリンダ16のロッド17は上昇位置にあり、合板押え21とテーブル7との間には支持板18や曲面合板Wの出し入れが可能な程度のスペースが確保されている。
【0035】
〔第2工程〕準備工程(
図8、
図9):作業者は、事前に製作し備え付けられている曲率半径の異なる多種多様な支持板のうちから、被加工物である曲面合板Wの曲率に対応する支持板18を選択して、
図7および
図8に示されるように、円弧部19が上方となるようにテーブル7上に立設する。このとき、曲面合板Wの寸法(
図1に示すように寝かせて配置したときの横方向の寸法)に応じて、複数枚の支持板18が任意の支持板保持手段22に挟み込まれる。
図7に示される場合にあっては、半円状の3枚の支持板18がテーブル7上に立設されている。
【0036】
〔第3工程〕被加工物配置工程(
図1):次に、支持板18の円弧部19上に、被加工物である曲面合板W(側端辺の凹凸処理前のもの)を、内層面側(凹側)を下向きにして載置する。そして、
図1に示すように、エアシリンダ16を作動してロッド17を下方に伸ばし、合板押え21を介して、曲面合板Wを下方に押圧する。このように曲面合板Wを押圧して、曲面合板Wの位置ずれを防止する。
【0037】
〔第4工程〕丸鋸調整工程(
図2):次いで、丸鋸26、29の刃先を、
図2において破線で模式的に示すように、曲面合板Wの曲率中心に向けて配置する。丸鋸26、29の位置及び角度は、前述のとおり、手動でハンドルを回転して調整することもできるが、操作パネル33に所望の移動量を入力して前記位置調整手段や角度調整手段の電動モータを駆動させることにより、調整することも可能である。
【0038】
〔第5工程〕切断工程(
図10):丸鋸26が配置されている方向に向けて、テーブル7を移動させる。一対の丸鋸26、29を同一速度で共に回転させて、曲面合板Wの両側端辺を切断する。なお、最初に切断する際には、数ミリ〜数センチ程度試し切りし、試し切りした切り込み位置の距離(円弧の距離)を巻尺等で測ることが望ましい。所定の寸法(許容誤差)内にある場合にはテーブル7を移動させて端辺の切断を実行し、誤差が大きい場合には丸鋸の配置を調整し直して再度試し切りを行う。曲面合板Wの両側端辺は同時に切断処理される。曲面合板は下方に押圧されているため、位置ズレを防止することができる。2台の丸鋸26、29を用いることにより、曲面合板Wの両側端辺を同時に切断することができるので、両側端辺を平行に切断することができるとともに、仕上げに要する時間を短縮することができる。
【0039】
〔第6工程〕終了工程(
図11):曲面合板Wの端部までテーブル7を送り終えたら、丸鋸26、29の回転を停止し、ロッド17を上昇させた後、曲面合板Wを取り外す。最後に、支持板18を立設させた状態で、テーブル7を初期状態(
図1)の位置まで戻し、以後、同様の工程(前記第2工程および第4工程は2枚目以降の切断処理においては省略することもできる)を繰り返すことにより、大量の曲面合板Wの端辺処理を迅速に行うことができる。
【0040】
前述のとおり、支持板は、半円状もしくは逆U字状に形成された板状の部材であり(
図3参照)、被加工物である曲面合板の曲率に対応して、様々な曲率半径や縦横寸法を有するものが予め作成、保管されている。そのため、丸鋸26、29の高さ位置に合わせて、任意の半円状もしくは逆U字状の支持板を選択し、使用することが可能である。即ち、支持板18上に配置された曲面合板Wの高さ位置にあわせて丸鋸26、29を移動調整することもできるが、丸鋸26、29の高さ位置にあわせて任意の半円状もしくは逆U字状の支持板を選択して使用することができる。これにより、丸鋸26、29の高さ方向の可動量(Z軸駆動部の可動ストローク)が小さくても、様々な曲率半径を有する曲面合板の加工処理に対応することができる。
【0041】
丸鋸26、29の刃先を曲面合板Wの曲率中心に向けて配置したうえで切断加工をしているので、曲面合板Wの両側端辺の仕上がり面は曲率中心方向を向いており、現場において、型枠パネルとしての曲面合板Wを相互に連結する際に、連結部分となる型枠パネルの両側端辺を隙間無く連結することができる。
【0042】
また、支持板18上に載置された曲面合板Wまでの離隔距離が大きい場合(即ち、エアシリンダ16の伸縮ストロークが離隔距離よりも小さい場合)には、この離隔を埋めるスペーサーとして合板押え21を用いることができ、前述のとおり所望の高さ寸法の合板押え21を容易に形成することができる。すなわち、可動量の大きな切断装置やエアシリンダを用意しなくとも、曲面合板の高さ位置調整手段として、所望の形状を有する合板製の支持板や合板押えを容易に形成して用いることができるので、コストをかけずに、様々な形状の曲面合板の加工処理を行うことができる。
【0043】
なお、複数のベニヤ板を積層して成る合板性の型枠パネルを、建築土木現場において、ターンバックル等の緊締金具を用いて機械的に曲げようとする場合には、元々が平らなベニヤ板であるから綺麗な局面を形成することが困難であり、これを無理に曲げようとすると、内層側と外層側の弧長が異なるため各ベニヤ板を接合する接着剤を破壊することになり、曲率半径が小さい(カーブがきつい)場合には対応できないという問題が生じる。この点、本願発明は、工場内において予め所望の曲率半径に加工を施した型枠パネルを現場に複数搬入して連結して使用するものであるから、このような問題は生じない。
【解決手段】基台2上に敷設された直線レール6上を移動するテーブル7と、テーブル7に固定されるフレーム12を介してテーブル7の上方に設置され、上下方向に伸縮するロッド17を備えるエアシリンダ16と、被加工物である曲面合板Wの曲率に対応する曲率半径に加工された円弧部を備える支持板18と、基台2の両外側に配置される一対の丸鋸26、29とを有し、テーブル7上に円弧部19を上向きにして支持板18を立設した後、円弧部19上に曲面合板Wを載置し、エアシリンダ16のロッド17により曲面合板Wを下方に押圧した状態で、テーブル7を丸鋸26、29に向けて移動させることにより、曲面合板Wの両側端辺を同時に切断する。