(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記廃液循環手段は、オゾンガス発生源で発生されたオゾンガスを、反応槽内に側方から噴出させる吐出部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の感染性廃液の処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の特許文献1に開示される従来技術では、第1処理槽に殺菌消毒剤を注入して、感染性廃棄物を含む廃液を循環させながら前記感染性廃棄物に存在する病原性細菌およびウイルスを不活性化するため、第1処理槽と第2処理槽との2つの処理槽を用いているが、構成が大型でかつ複雑であるという問題があり、医療機関における用地スペースが十分でなければ設置できない。
【0008】
また、特許文献2に記載された発明では、実際のEmbalming廃液(死体保存処理廃液)を用いた処理例が記載されているものの、感染性微生物として記載されているのは、ブドウ球菌に対する効果に過ぎず、病原性ウイルスについても不活性化効果があるかどうかはわからないという問題がある。
【0009】
特許文献3に記載された発明は、大腸菌やB型肝炎ウイルスに対して完全に殺菌できるとされているが、具体的データとともに記載されているのは大腸菌のみであるうえ、高濃度のオゾンを使用するので、そのための大規模な装置が必要となり、結果として、特許文献1と同様、医療機関の用地スペースが必要となる。
【0010】
本発明の目的は、構成の小型化および簡素化を図ることができ、医療機関等において十分な用地がない場合でも、占有面積または占有空間を少なくして設置可能とし、感染性廃液を低コストで効率よく処理することができる感染性廃液の処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、
病原性ウイルスを含む病原性微生物を含
有する、医療機関または微生物関連の施設からの感染性廃液を貯留する廃液貯留槽と、
廃液貯留槽に貯留される廃液が供給され、供給された廃液にオゾンガスおよび二酸化塩素を含有する薬液を順次接触させて、廃液中の
病原性微生物を不活性化する反応槽と、
前記薬液を貯留する薬液貯留槽と、
前記オゾンガスを発生するオゾンガス発生源と、
薬液貯留槽に貯留される薬液を、反応槽に供給する薬液輸送手段と、
オゾンガス発生源からオゾンガスが供給されるとともに、反応槽内の廃液を循環させる廃液循環手段と、
薬液輸送手段から反応槽へ供給される薬液の供給量および廃液循環手段から反応槽へ供給されるオゾンガスの供給量を、時系列的に制御する制御手段とを含む感染性廃液の処理装置であって、
前記制御手段は、廃液循環手段から反応槽へオゾンガスを予め定める第1
の時間供給させ
て、該オゾンガスにより病原性微生物の細胞壁を破壊ないし損傷させた後、廃液循環手段から反応槽へのオゾンガスの供給を停止させ、薬液輸送手段から反応槽へ薬液を予め定める第2
の時間供給させた後、廃液循環手段から反応槽へオゾンガスを予め定める第3
の時間供給させた後、オゾンガスの供給を停止させる供給パターンを繰り返す動作モードに設定可能であることを特徴とする感染性廃液の処理装置である。
また、本発明は、
病原性ウイルスを含む病原性微生物を含
有する、医療機関または微生物関連の施設からの感染性廃液を貯留する廃液貯留槽と、
廃液貯留槽に貯留される廃液が供給され、供給された廃液にオゾンガスおよび二酸化塩素を含有する薬液を順次接触させて、廃液中の
病原性微生物を不活性化する反応槽と、
前記薬液を貯留する薬液貯留槽と、
前記オゾンガスを発生するオゾンガス発生源と、
薬液貯留槽に貯留される薬液を、反応槽に供給する薬液輸送手段と、
オゾンガス発生源からオゾンガスが供給されるとともに、反応槽内の廃液を循環させる廃液循環手段と、
薬液輸送手段から反応槽へ供給される薬液の供給量および廃液循環手段から反応槽へ供給されるオゾンガスの供給量を、時系列的に制御する制御手段とを含む感染性廃液の処理装置であって、
前記制御手段は、廃液循環手段から反応槽へオゾンガスを連続的に供給させた状態で、オゾンガスの供給開始から予め定める第4
の時間が経過
し、該オゾンガスにより病原性微生物の細胞壁を破壊ないし損傷されると、薬液輸送手段から反応槽へ薬液を予め定める第5
の時間供給させた後、薬液の供給を予め定める第6
の時間停止させる供給パターンを繰り返す動作モードに設定可能であることを特徴とする感染性廃液の処理装置である。
【0012】
また本発明は、前記廃液循環手段は、オゾンガス発生源で発生されたオゾンガスを、反応槽内に側方から噴出させる吐出部を有することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、
病原性ウイルスを含む病原性微生物を含
有する、医療機関または微生物関連の施設からの感染性廃液を貯留する廃液貯留槽から反応槽に前記感染性廃液を供給し、次いで前記感染性廃液を、反応槽から配管を経由して反応槽に戻る循環路で循環させつつ、オゾンガスを反応槽に供給し
て該オゾンガスにより病原性微生物の細胞壁を破壊ないし損傷させ、ついで二酸化塩素を含有する薬液を反応槽に供給し、さらにオゾンガスを反応槽に供給して、それぞれ前記循環中の前記
病原性微生物を含む廃液と接触させることによって、廃液中の
病原性微生物を不活性化することを特徴とする廃液中の
病原性微生物の不活性化方法である。
【0017】
また本発明は、
病原性ウイルスを含む病原性微生物を含
有する、医療機関または微生物関連の施設からの廃液を反応槽側方から吐出させて反応槽内に旋回流を発生させ、前記循環により、反応槽内の旋回流を維持することを特徴とする。
【0018】
また本発明は、
病原性ウイルスを含む病原性微生物を含
有する、医療機関または微生物関連の施設からの廃液を前記循環路で循環させつつ、オゾンガスを継続的に供給し
て該オゾンガスにより病原性微生物の細胞壁を破壊ないし損傷させ、前記オゾンガスの継続供給中に、二酸化塩素の薬液を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、
病原性ウイルスを含む病原性微生物
(以下、感染性微生物ということがある)を含
有する、医療機関または微生物関連の施設からの感染性廃液
(以下、感染性廃液という)を貯留する廃液貯留槽と、廃液中の感染性微生物を不活性化する反応槽と、薬液を貯留する薬液貯留槽と、オゾンガスを発生するオゾンガス発生源とを有し、オゾンガス、二酸化塩素を含有する薬液およびオゾンガスの供給量を、時系列的に制御する制御手段とを含むことによって、小規模な装置でありながら、確実かつ安全に感染性微生物を不活性化できる。
【0020】
また装置規模が小さいので、比較的小規模の感染性微生物や感染性廃棄物を処理するための装置として、占有可能な面積または占有可能な空間が少ない場所でも設置可能であって、感染性廃液を低コストで効率よく処理することができるという利点も有する。
【0021】
さらに、高濃度のオゾンや二酸化塩素を使用しないので、従来のように加圧容器などの特殊な装置を必要とせず、トリハロメタンなどの副生成物が次亜塩素酸などの処理に比べて少ないので、環境に対する負荷も少ないという利点も併せ有する。
【0022】
さらに、本発明によれば、感染性廃液を循環させつつオゾンガス、二酸化塩素を含有する薬液、オゾンガスの順で加えて感染性微生物を不活性化できるので、オゾンや二酸化塩素を高濃度で使用する場合のような大掛かりな装置や設備が不要であり、環境への負荷が大きいトリハロメタンなどの副生物もないので、廃液を処理した後、一般の下水道等に放流することが容易である。
【0023】
本発明によれば、旋回流によって、オゾンガス、二酸化塩素を含有する薬液を廃液に接触させて感染性微生物を不活性化できるので、攪拌のための装置が不要であり、より小さな装置とすることができる。また循環路における循環と、反応槽内における旋回流による攪拌・混合が繰り返されるので、効率的にオゾン等と廃液を混合でき、不活性化をより短い時間で行うことができるという利点がある。
【0024】
本発明によれば、処理中はオゾンが廃液中に存在するので、廃液中に、感染性微生物による疾病に罹患した患者からの離脱物や感染性微生物が多く含まれる場合であっても、オゾンが早く消費されて不足するようなことがなく、感染性微生物の不活性化を確実に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明の一実施形態の感染性廃液の処理装置1の全体の構成を示す系統図である。本実施形態の感染性廃液の処理装置(以下、「処理装置」と略記する場合がある。)1は、感染性微生物を含む感染性廃液2を貯留する廃液貯留槽3と、廃液貯留槽3に貯留される廃液が供給され、供給された廃液に二酸化塩素を主成分とする薬液およびオゾンガスを接触させて、廃液中の感染性微生物を不活性化する反応槽5と、薬液を貯留する薬液貯留槽6と、オゾンガスを発生するオゾンガス発生源7と、薬液貯留槽6に貯留される薬液を、反応槽5に供給する薬液輸送手段8と、オゾンガス発生源7によって発生されたオゾンガスが供給され、反応槽5内の廃液を循環する廃液循環手段9と、薬液輸送手段8から反応槽5へ供給される薬液の供給量およびオゾンガス発生源7から廃液循環手段9へ供給されるオゾンガスの供給量を、時系列的に制御する制御手段としての制御装置10とを含む。前記制御装置10は、シーケンス制御装置によって実現されてもよく、コンピュータによって実現されてもよい。
【0027】
図2は、反応槽5、薬液貯留槽6、オゾンガス発生源7、薬液輸送手段8および廃液循環手段9の拡大系統図である。
図1をも参照して、前記反応槽5は、廃液を貯留する貯留空間12を有し、大略的に中空円柱状の反応槽本体13と、洗浄液輸送管70を介して導かれる水道水などの水を洗浄液として反応槽本体13内の貯留空間12に上方から散水するための散水ヘッド14と、反応槽本体13の側壁15の底部16寄りの部位から前記貯留空間12内にオゾンガス発生源7から廃液循環手段9にオゾンガスが供給されたオゾンガス混合廃液を噴射する吐出部としての噴射ノズル17と、貯留空間12内に貯留された廃液の前記底部16から液面18までの鉛直高さに相当する液位H1を検出する液位検出器FS1とを含む。液位検出器FS1は、たとえばフロート式レベルスイッチによって実現される。
【0028】
前記薬液貯留槽6は、薬液を貯留する貯留空間20を有し、大略的に中空直方体状の貯留槽本体21と、貯留空間20内に貯留された薬液の底部22から液面23までの鉛直高さに相当する液位H2を検出する液位検出器FS2とを含む。液位検出器FS2は、たとえばフロート式レベルスイッチによって実現される。
【0029】
前記薬液輸送手段8は、薬液貯留槽6の貯留槽本体21に貯留される薬液を汲み上げる2台の薬液供給ポンプ24a,24bと、一方の薬液供給ポンプ24aの出力ポートに一端部が接続され、他端部が反応槽本体15に接続される第1薬液輸送管25と、他方の薬液供給ポンプ24bの出力ポートに一端部が接続され、他端部が原水貯留槽3に接続される第2薬液輸送管26とを含む。
【0030】
第1薬液輸送管25には、管内の薬液の逆流を防止するため、逆止弁V1が介在される。また、第2薬液輸送管26は、廃液の原水を原水貯留槽3近傍まで導く本管27と、原水貯留槽3内で隔壁28によって仕切られた2つの貯留空間29a,29bに原水を個別に導くため、本管27から分岐した2本の分岐管30a,30bとを有する。各分岐管30a,30bには、仕切弁V2a,V2bがそれぞれ介在される。
【0031】
前記廃液循環手段9は、第1〜第5仕切弁V11;V12;V13a,V13b;V14a,V14b;V15、第1〜第6輸送管31;32;33;34a,34b;35;36、第1および第2フレキシブル管継手J1a,J1b;J2a,J2b、逆止弁V16a,V16b、第1および第2バイパス管38,39、オゾンガス供給管40、開閉操作弁V19a,19b、圧力検出器PG1a,PG1b、導圧管41a,41b、三方弁V25ならびに循環ポンプ45a,45bを含む。オゾンガス供給管40は、本管42と、本管42に分岐して接続される分岐管43a,43bとを含む。
【0032】
本実施形態において、前記第1〜第4仕切弁V11;V12;V13a,V13b;V14a,V14bは、手動操作弁によって実現され、第5仕切弁V15は、たとえば電動弁によって実現されるが、本発明の他の実施形態では、前記第1〜第5仕切弁V11;V12;V13a,V13b;V14a,V14b;V15のすべてが電動弁によって実現されてもよく、あるいは手動操作弁によって実現されてもよく、さらに手動操作弁および電動弁が開閉動作の切換え頻度などに応じて選択的に用いられてもよい。
【0033】
第1輸送管31は、その一端部が反応槽15の側壁の底部近傍に接続され、他端部は第2輸送管32に接続される。第2輸送管32は、その一端部が常閉の第1仕切弁V11に接続され、他端部は一方のフレキシブル管継手J1aに接続される。この第2輸送管32には、第2仕切弁V12、第5仕切弁V15、ストレーナS1および一方の第3仕切弁V13aが介在される。一方のフレキシブル管継手J1aには、第3輸送管33の一端部が接続され、第3輸送管33の他端部は、一方の循環ポンプ45aの入力ポートに接続される。一方の循環ポンプ45aの出力ポートには、一方の第4輸送管34aの一端部が接続され、第4輸送管34aの他端部は第5輸送管35に接続される。
【0034】
第3輸送管33には、オゾンガス発生源7からのオゾンガスを導くオゾンガス供給管40の一方の分岐管43aが接続される。第2輸送管32の前記ストレーナS1と第3仕切弁V13aとの間には、第1バイパス管38の一端部が接続され、第1バイパス管38の他端部は、他方の第1フレキシブル管継手J1bおよび第3仕切弁V13bに接続される。他方の第1フレキシブル管継手J1bには、第2バイパス管39の一端部が接続され、第2バイパス管39の他端部は、他方の循環ポンプ45bの入力ポートに接続される。
【0035】
また、第3輸送管39には、オゾンガス供給管40の他方の分岐管43bが接続され、
分岐管43bの他端は、第2バイパス管39の第1フレキシブル管継手J1bと循環ポンプ45bの入力ポートの間に接続される。
【0036】
他方の循環ポンプ45bの出力ポートには、他方の第4輸送管34bの一端部が接続され、他方の第4輸送管34bの他端部は、前記第5輸送管35に接続される。他方の第4輸送管34bには、他方の導圧管41bによって圧力検出器PG1bが接続される。また前記一方の第4輸送管34aには、一方の導圧管41aによって圧力検出器PG1aが接続される。各導圧管41a,41bには、開閉弁V19a,V19bがそれぞれ介在される。
【0037】
一方の第4輸送管34aには、前記一方の導圧管41aの接続位置と第5輸送管35に接続される他端部との間に、一方のフレキシブル管継手J2a、逆止弁V16aおよび第4仕切弁V14aが介在される。また、他方の第4輸送管34bには、前記他方の導圧管41bの接続位置と第5輸送管35に接続される他端部との間に、他方のフレキシブル管継手J2b、逆止弁V16bおよび第4仕切弁V14bが介在される。
【0038】
第5輸送管35の他端部は、三方弁V25の入力ポートに接続される。三方弁V25の一方の出力ポートには、第6輸送管36の一端部が接続され、三方弁V25の他方の出力ポートには第7輸送管37の一端部が接続される。
【0039】
図3は、
図2の切断面線III−IIIから見た水平断面図である。前記廃液循環手段9は、オゾンガス発生源7で発生させたオゾンガスが混合した廃液を、反応槽本体13内に側方から噴出させる噴射ノズル17を有する。前記噴射ノズル17は、反応槽本体13の略鉛直な軸線L1に垂直な一仮想平面上において、前記軸線L1を中心とする一半径線L2に垂直な軸線L3上に周壁に近接して配置される。前記反応槽本体13は、本実施形態では、中空の円柱体から成るが、その他の形態、たとえば中空の直方体から成ってもよい。
【0040】
図4は、廃液貯留槽3およびその付近を拡大した系統図である。前記廃液貯留槽3は、地上の略水平な設置面50に設置され、前記隔壁28によって2つの貯留空間29a,29bが形成される貯留槽本体51と、各貯留空間29a,29bに貯留される原水の底部52から液面53a,53bまでの鉛直高さに相当する液位H3a,H3bをそれぞれ検出する2つの液位検出器FS3a,FS3bと、各貯留空間29a,29b内の底部52近傍に配置され、各貯留空間29a,29bに貯留された原水を撹拌するための気泡を放出する2つのバブリングヘッド54a,54bとを含む。前記各液位検出器FS3a,FS3bは、たとえばフロート式レベルスイッチによって実現される。
【0041】
貯留槽本体51の天壁には、各貯留空間29a,29b内に貯留される廃液から発生したガスを外部へ導く一対の第1排気管60a,60bの各一端部が接続され、各第1排気管60a,60bの他端部は第2排気管61に接続される。第2排気管61には、フィルタHPおよび排気ファンFが介在され、フィルタHPによって排気中の異物を除去し、異物が除去された排ガスが排気ファンFによって強制排気される。前記フィルタHPは、たとえばヘパフィルタによって実現される。
【0042】
図5は、制御装置10の電気的構成を示すブロック図である。前記制御装置10は、廃液循環手段9から反応槽5へオゾンガスを予め定める第1時間W11、供給させた後、廃液循環手段9から反応槽5へのオゾンガスの供給を停止させ、薬液輸送手段8から反応槽5へ薬液を予め定める第2時間W12、供給させた後、薬液輸送手段8から反応槽5への薬液の供給を停止させ、薬液循環手段9から反応槽5へオゾンガスを予め定める第3時間W13供給させた後、廃液循環手段9から反応槽5へのオゾンガスの供給を停止させる供給パターンを繰り返す第1動作モードと、廃液循環手段9から反応槽5へオゾンガスを連続的に供給させた状態で、オゾンガスの供給開始から予め定める第4時間W21が経過すると、薬液輸送手段8から反応槽5へ薬液を予め定める第5時間W22、供給させた後、薬液の供給を予め定める第6時間W23停止させる供給パターンを繰り返す第2動作モードとを、入力手段55によって選択的に設定可能に構成される。
【0043】
制御手段10は、各液位検出器FS1,FS2;FS3a,FS3bからの液位を表す液位検出信号SH1,SH2;SH3a,SH3bが入力され、これらの液位検出信号SH1,SH2,SH3a,SH3bに応答して、各循環ポンプ45a,45b;オゾンガス発生源7;各薬液供給ポンプ24a,24b;三方弁V25;第5仕切弁V15;各原水ポンプP10,P20の動作を制御する制御信号を出力する制御部56とを含む。入力
手段55は、タッチパネル、キーボード、表示装置に画面に画像として表示されるメニューボタンなどにいずれか1種または複数種によって実現される。また制御部56は、中央演算処理装置(Central Processing Unit、略称CPU)によって実現されても良く、PLC(Programmable Logic Controller)によって実現されても良い。
【0044】
図6は第1動作モードに設定された制御装置10の動作を説明するためのフローチャートであり、
図7は第1動作モードに設定された制御装置10によって制御される薬液輸送手段8および廃液循環手段9の動作を説明するためのタイミングチャートである。ステップa0で廃液の処理動作が開始され、操作者は第1動作モードおよび第2動作モードのいずれかを選択し、選択した動作モードを入力手段55によって操作入力する。本実施形態では、第1動作モードが選択された場合について、次に第2動作モードが選択された場合について説明する。
【0045】
操作者による入力手段55の入力操作によって第1動作モードが選択されると、制御部56に入力手段55から第1動作モードのモード選択信号が入力され、制御部56は第1動作モードに設定される。
【0046】
第1動作モードに設定された制御部56は、ステップa1で、液位検出器FS3aによって検出される貯留槽本体51内の廃液の液位H3aが汲上可能な液位に達したか否かを判断し、汲上げ可能な液位に達したと判断すると、ステップa2へ移行し、制御部56は原水ポンプP20を駆動させて、汲み上げ動作を開始させ、貯留槽本体51の一方の貯留空間29a内の廃液が、廃液輸送管58,59を経て、反応槽本体13内へ供給される。
【0047】
反応槽本体13内の廃液の液位H1が液位検出器FS1によって検出され、ステップa3で制御部56が汲上げ停止液位に達したと判断すると、ステップa4において、制御部56は、時刻t11で廃液循環手段9を稼働させて廃液を循環させるとともに、オゾンガス発生源7からオゾンガス供給管40にオゾンガスの供給を開始させてオゾンガス混合廃液を循環させ、こうしてオゾンガスを反応槽5へ供給する。
【0048】
ステップa5で、制御部56が時刻t11から第1時間W11が経過したものと判断す
ると、ステップa6に移行し、時刻t12で、制御部56は一方の薬液供給ポンプ24aを駆動させ、薬液貯留槽6から第1薬液輸送管25を経て反応槽本体13内に薬液を供給するとともに、ステップa7で廃液循環手段9によって廃液を循環させた状態で、オゾンガス発生源7から廃液循環手段9、したがって反応槽5へのオゾンガスの供給を停止させる。
【0049】
ステップa8で、時刻t12から第2時間W12が経過すると、ステップa9でオゾンガス発生源7から廃液循環手段9へのオゾンガスの供給を再開させて反応槽5へオゾンガスを供給し、ステップa9で、時刻t13から第3時間W13が経過すると、ステップa10に移行し、三方弁V25を、第5輸送管35と第6輸送管36とを接続する接続位置から第5輸送管35と第7輸送管37とを接続する接続位置に切換え、反応槽本体13および廃液循環手段9の系内に存在する処理後の廃液を第7輸送管37から外部の廃水設備へ放流し、放流が完了すると、三方弁V25を、第5輸送管35と第7輸送管37とを接続する接続位置から第5輸送管25と第6輸送管36とを接続する接続位置に切換えて復帰させる。
【0050】
次に、制御部56は、ステップa11において、もう一方の液位検出器FS3bからの検出信号によって、貯留槽本体51の他方の貯留空間29b内の液位H3bが汲上げ可能な液位に達したか否かを判断し、達していれば、前述のステップa1〜a10の工程を実行し、達していなければ、ステップa12で循環ポンプ45a,45b、オゾンガス発生源7、薬液供給ポンプ24a、原水ポンプP10,P20を停止させて、廃液処理動作を終了する。
【0051】
図8は第2動作モードに設定された制御装置10の動作を説明するためのフローチャートであり、
図9は第2動作モードに設定された制御装置10によって制御される薬液輸送手段8および廃液循環手段9の動作を説明するためのタイミングチャートである。ステップb0で廃液の処理動作が開始され、操作者による入力手段55の入力操作によって第2動作モードが選択されると、制御部56に入力手段55から第2動作モードのモード選択信号が入力され、制御部56は第2動作モードに設定される。
【0052】
第2動作モードに設定された制御部56は、ステップb1で、液位検出器FS3aによって検出される貯留槽本体51内の廃液の液位H3aが汲上げ可能な液位に達したか否かを判断し、汲上げ可能な液位に達したと判断すると、ステップb2へ移行し、制御部56は原水ポンプP20を駆動させて、汲上げ動作を開始させ、貯留槽本体51の一方の貯留空間29a内の廃液が、廃液輸送管58,59を経て、反応槽本体13内へ供給される。
【0053】
反応槽本体13内の廃液の液位H1が液位検出器FS1によって検出され、ステップb3で制御部56が汲上げ停止液位に達したと判断すると、ステップb4において、制御部56は、時刻t21で廃液循環手段9を稼働させて廃液を循環させるとともに、オゾンガス発生源7からオゾンガス供給管40にオゾンガスの供給を開始させてオゾンガス混合廃液を循環させ、こうしてオゾンガスを反応槽5へ後述するステップb8で第6時間W23が経過するまで継続的に供給させる。
【0054】
ステップb5で、制御部56が時刻t21から予め定める第4時間W21が経過したものと判断すると、時刻t22でステップb6へ移行し、制御部56は一方の薬液供給ポンプ24aを駆動させ、薬液貯留槽6から第1薬液輸送管25を経て反応槽本体13内に薬液を供給させ、廃液循環手段9による循環によってオゾンと薬液とを廃液中に攪拌して混合する。ステップb7で、時刻t22から第5時間W22が経過すると、ステップb8で薬液輸送手段8による薬液の供給を停止させる。ステップb9で、時刻t23から第6時間W23が経過すると、ステップb10に移行し、三方弁V25を、第5輸送管35と第6輸送管36とを接続する接続位置から第5輸送管35と第7輸送管37と接続する接続位置に切換え、反応槽本体13および廃液循環手段9の系内に存在する処理後の廃液を第7輸送管37から外部の廃水設備へ放流し、放流が完了すると、三方弁V25を、第5輸送管35と第7輸送管7とを接続する接続位置から第5輸送管35と第6輸送管6とを接続する接続位置切換えて復帰させる。
【0055】
次に、制御部56は、ステップb11において、もう一方の液位検出器FS3bからの検出信号によって、貯留槽本体51の他方の貯留空間29b内の液位H3bが汲上げ可能な液位に達したか否かを判断し、達していれば、前述のステップb1〜b10の工程を実行し、達していなければ、ステップb11で、循環ポンプ45a,45b、オゾンガス発生源7、薬液循環ポンプ24a、原水ポンプP10,P20を停止させて、廃液処理動作を終了する。
【0056】
前記の感染性微生物を含む感染性廃液としては、感染性微生物を含む水溶液または廃液があげられ、具体的には、たとえば実験室規模ないし比較的小規模で使用されたウイルスおよび有機物を含む廃液のほか、微生物関連の施設や医療機関、とりわけ感染症を対象とした医療機関や施設からの廃液があげられる。
【0057】
これらの廃液には、本発明の対象となる感染性微生物以外の成分が含まれていても、当該微生物を不活性化することができ、また、感染性微生物のみを含む廃液であっても該微生物を不活性化することができる。
【0058】
本発明の作用機作については、明らかではないが、まず最初の活性酸素供与体による活性酸素が、病原性微生物の細胞壁を破壊ないし損傷させ、二酸化塩素が病原性微生物の内部により深く浸透しやすくなるためと推測される。
【0059】
本発明の実施形態に係る感染性微生物としては、宿主である人、家畜、家禽に感染する能力を有し、かつ疾病を発症させる能力を有する病原性細菌またはウイルスが挙げられる。
【0060】
かかる病原性細菌としては、例えば、結核菌、コレラ菌、梅毒トレポネーマ、淋菌、赤痢菌、劇症型溶血性連鎖球菌、チフス菌、パラチフス菌、鼻疽菌、類鼻疽菌、炭疽菌、髄膜炎菌、破傷風菌、レンサ球菌、突発性発しん、百日咳、肺炎球菌、肺炎桿菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、ジフテリア菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、薬剤耐性緑膿菌、腸管毒素原性大腸菌、腸管出血性大腸菌、ベロ毒素産生大腸菌などの病原性大腸菌、ペスト菌、野兎病菌、ブルセラ菌、ボツリヌス菌、レジオネラ菌、回帰熱菌、オウム病クラミジア、ライム病菌などの細菌のほか、Q熱リケッチャ、コクシジオイデス症真菌、マラリア原虫、クリプトスポリジウム原虫などに対しても不活性化効果を有する。
【0061】
また、ウイルスとしてはインフルエンザウイルス(RNA型でエンベロープ有)、ヘルペスウイルス(DNA型でエンベロープ有)、ネコカリシウイルス(RNA型でエンベロープ無)など、ウイルス構造がそれぞれ異なるものに有効である。
【0062】
かかるウイルスとしては、たとえば、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(平成十年十月二日法律第百十四号)に定める1類,2類,4類,5類感染症ウイルスがあげられ、具体的には、エボラウイルス、クリミア・コンゴウイルス、痘瘡ウイルス、フニンウイルス、サビアウイルス、ガナリトウイルスまたはマチュポウイルス、マールブルグウイルス、ラッサウイルスなどの1類感染症ウイルス、ポリオウイルス、SARコロナウイルス、H5N1ウイルスなどの2類感染症ウイルス、HEVウイルス、ウエストナイルウイルス、HAVウイルス、黄熱ウイルス、オムスクウイルス、キャサヌル森林病ウイルス、狂犬病ウイルス、サル痘ウイルス、ハンタウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、デングウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、鳥インフルエンザ(H5N1を除く)ウイルス、ニパウイルス、日本脳炎ウイルス、ハンタウイルス、Bウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルス、ヘンドラウイルス、リッサウイルス、リフトバレー熱ウイルスなどの4類感染症ウイルス、さらには、肝炎(E,Aを除く)ウイルス(B、Cその他の肝炎ウイルス)、急性脳炎ウイルス、風疹ウイルス、麻疹ウイルスなどの5類感染症ウイルスがあげられる。
【0063】
上記以外の感染症原因ウイルス、たとえば、ヒト免疫不全ウイルス、高病原性インフルエンザ以外の季節性インフルエンザ、ヘルパンギーナ、水痘・疱疹ウイルスなどのほか、サイトロメガウイルス、単純疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルスや、無菌性髄膜炎の原因となるエンテロウイルス、エコーウイルス、コクサッキーウイルスなどのウイルスも不活性化することができる。
【0064】
また、本発明の実施形態によれば、対象となるウイルスがヒト免疫不全、B型肝炎、C型肝炎、風疹、HSV、インフルエンザ、ワクシニアなどのエンベロープを有するウイルスであっても、またロタ、アデノ、ポリオ、コクサッキー、エコー、ライノ、A型肝炎、牛ロタなどエンベロープを有しないウイルスであっても不活性化でき、さらにはウイルスがRNA型ウイルスであってもDNA型ウイルスであっても不活性化することができる。
【0065】
さらに、家畜・家禽に感染し、発症させるウイルスとしては、たとえば、上記ウイルスのうち、家畜・家禽に伝染・発症するもの、たとえば典型的なものとしてトリインフルエンザ、ブタインフルエンザなどのほか、ウシ、ウマ、ブタ、トリなどに感染して、呼吸疾患や伝染性下痢をおこさせる各種コロナウイルスのほか、ウシウイルス性下痢ウイルス、ウシヘルペスウイルス、ウシ白血病ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、口蹄疫ウイルスなどが挙げられる。
【0066】
さらに本発明の実施形態において、処理される感染性廃液には、前記感染性微生物の保菌者などまたは家畜、家禽、ペットから離脱した物質が含まれていてもよく、かかる離脱物としては、骨、毛髪、爪、皮膚、臓器、筋肉などのヒトを構成する組織、細胞もしくは成分、血液、リンパ液などの体液、糞便などの排せつ物があげられる。
【0067】
また家畜・家禽からの離脱物としては、体毛、筋肉、臓器、血液などの諸組織のほか、糞便などの排せつ物があげられる。
【0068】
さらに、本発明の実施形態における感染性廃液としては、ウイルスおよび有機物を含む水溶液または感染性廃液があげられ、具体的には、たとえば実験室規模ないしは比較的小規模で使用されたウイルスおよび有機物を含む廃液のほか、微生物関連の施設や医療機関、とりわけ感染症を対象とした医療機関や施設からの廃液があげられる。
【0069】
次いで、ステップa1,b1に示すように、廃液貯留槽3に導入された感染性廃液の当該廃液貯留槽3内における貯留量が一定の液位H3に達すると、原水ポンプP10,P20が制御装置10によって駆動され、廃液の原水が反応槽5に供給される。
【0070】
廃液を廃液貯留槽3に貯留する場合において、廃液中には、蛋白質や塩類その他、種々の微生物や菌類、藻類の生育に適した栄養源が含まれているので、高温高湿の時期や比較的装置の運転間隔があく場合には、種々の微生物や菌類、藻類が生育する。本発明においては、薬剤貯留槽6から廃液貯留槽3に防除用薬剤を散布する手段を備えているが、別途、これら微生物の繁殖、増加を抑えるための防除用薬剤を貯留槽に供給または散布する手段を貯留槽に設けてもよい。
【0071】
かかる防除用薬剤としては、たとえば、二酸化塩素があげられる。また、防除用薬剤としては、感染性微生物を不活性化するためのオゾン、二酸化塩素の前記感染性微生物に対する作用を損なうことがなく、前記廃液中で生育する微生物などの生育を妨げるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0072】
反応槽5に廃液が供給されたのち、ステップa4,b4に示すように、反応槽5に貯留される廃液を循環する廃液循環手段9にオゾン発生源7からオゾンガスが供給される。
【0073】
オゾンガス発生源7としては、この技術分野で汎用されるオゾン発生装置を用いることができ、かかる発生装置としては、コフロック社製 オゾンガス発生装置 PZHシリーズなどがあげられる。
【0074】
反応槽5に供給されるオゾンは、廃液中の濃度が0.5〜20ppmとなる量を供給すればよく、好ましくは0.5〜10ppm、もっとも好ましくは1〜5ppmとなるよう供給すればよい。
【0075】
オゾンは、前記濃度となるようであれば、連続して供給してもよく、また断続的に供給してもよい。さらには、オゾン供給中の濃度を前記範囲内で変更することもでき、断続供給と濃度変更を組み合わせてもよい。
【0076】
たとえば、本発明の第1動作モードの場合であれば、第1の時間W11と第3の時間W13におけるオゾン濃度を異ならせ、かついずれか一方の時間のオゾンを断続的に供給してもよい。
【0077】
オゾンによる廃液処理は、第1動作モードの場合も、第2動作モードの場合も、ともに廃液を廃液輸送管58、59を通じて反応槽5に供給し、オゾン発生源7からオゾンを反応槽5に供給することによって開始される。
【0078】
ついで、ステップa4,b4に示すように、廃液とオゾンガスを、第1輸送管31〜第5輸送管35、三方弁V25、第6輸送管36で構成される循環経路(以下、循環路という)を、循環ポンプ45aまたは45bにより循環させて接触させることによって実施することができる。
【0079】
このとき、反応槽5内では、廃液が槽内でオゾンガスと十分混合するような流れ、たとえば気泡流、過流、旋回流などが発生するように吐出圧を設定すればよく、とりわけ旋回流を生じるように吐出圧を設定するのが好ましい。旋回流を維持しながら、底部のドレン管を開放し、循環路内を廃液とオゾンが接触しつつ循環するよう吐出圧および循環ポンプ圧を制御するのが好ましい。
【0080】
旋回流は廃液の反応槽5内への吐出圧を制御するなどして発生させ、維持できる。かかる吐出圧は、反応槽5の容量や形状によって異なるが、概ね、0.15〜0.5MPa、好ましくは0.15〜0.3MPaであればよい。循環ポンプ圧は、前記吐出圧で廃液が反応槽5内に吐出される圧力となるよう制御すればよい。
【0081】
また、廃液の循環は、オゾンガスを廃液に供給する前に開始し、廃液を循環させながらオゾンを供給してもよい。
【0082】
循環路内の循環速度は、概ね50〜500リットル/分、好ましくは100〜250リットル/分程度であればよい。
【0083】
オゾン処理時間は、廃液量、廃液中に含まれる感染性微生物の種類や濃度、あるいは廃液中の有機物濃度によっても、異なるが、概ね数十分〜1時間程度でよく、第1動作モードにおける第1の時間および第3の時間は、この範囲において決定すればよい。
【0084】
第1動作モードにおいては、第1の時間におけるオゾン処理が終了した反応槽5中の廃液に、薬液貯留槽6から薬液輸送手段8を介して反応槽5へ、第2の時間における二酸化塩素を含有する薬液を供給して、廃液と二酸化塩素を接触させることにより実施することができる。
【0085】
二酸化塩素を含有する薬液は、オゾン処理を終えた後、循環路を介した廃液の循環を停止して供給してもよく、あるいは廃液の循環を継続させつつ、オゾン処理を終えた時点で、供給してもよい。
【0086】
二酸化塩素(ClO
2)は、塩素酸に酸を溶解して製造される二酸化塩素のほか、二酸化塩素をアルカリ性水溶液または水溶液に溶存させて貯蔵を可能にした安定化二酸化塩素を好適に使用することができる。
【0087】
本発明の実施形態においては、取り扱い容易性や安全性の面で優れている安定化二酸化塩素を用いるのが好ましく、二酸化塩素はそのまま、または適当な媒体に存在させて使用することができる。
【0088】
二酸化塩素の使用量は、廃液中の濃度が5〜1000ppmとなるよう添加すればよく、好ましくは5〜600ppm、とりわけ好ましくは5〜200ppmとなるよう添加すればよい。
【0089】
二酸化塩素処理は、オゾン処理と同様に、反応槽5から循環路を介して反応槽5に戻る循環方式により実施することができ、処理に必要な時間は、廃液量、廃液中に含まれる感染性微生物の種類や濃度、あるいは廃液中の有機物濃度によっても、異なるが、概ね数分〜1時間程度行えばよい。
【0090】
さらに、二酸化塩素による廃液の処理が終了すれば、第1動作モードの場合、ステップa8に示すとおり、廃液中にオゾンガスを供給して、第3時間のオゾン処理を行う。
【0091】
ステップa8のオゾン処理は、オゾン供給方法、オゾン濃度、オゾン処理時間などはステップa4の第1回目のオゾン処理と全く同様に実施することができる。
【0092】
第1動作モードの場合、第1時間W11のオゾン処理、第2時間W12の二酸化塩素処理および第3時間W13のオゾン処理は、それぞれの処理直後に次の時間の処理を開始してもよく、またそれぞれの処理後に一定の時間的間隔を設けて次の処理を行うこともできる。また、それぞれの処理終了直前に次の処理を開始し、それぞれの処理が短時間、重復するように実施してもよい。
【0093】
かくして、感染性廃液中の感染性微生物は不活性化されるので、前記のとおり、第1輸送管31〜第5輸送管35、三方弁V25から第7輸送管37を経由して放流することができる。
【0094】
また、本発明の他の実施形態においては、反応槽5に廃液を供給し、これにオゾンガスを供給して循環路を循環させ、廃液とオゾンガスを接触させつつ、オゾンガスの供給を継続しつつ適当な時期に二酸化塩素を供給し、さらにオゾンガスを供給する第2動作モードとしてもよい。
【0095】
すなわち、第2動作モードにおいては、廃液貯留槽3から反応槽5に廃液を供給したのち、オゾンガスが所定濃度を維持するように、オゾンガス発生源7からオゾンガスを反応槽5の側方から吐出させ、循環路をオゾンガスと廃液とが接触しつつ循環するようにしながら、一定時間経過後に二酸化塩素を供給し、さらに一定時間経過した後も前記オゾンガスの供給を継続することによって、本発明の目的を達成することができる。
【0096】
このときのオゾンおよび二酸化塩素は、第1動作モードと同様に、連続的にでも断続的にでも供給することができ、また廃液中の濃度は、一定濃度となるよう供給してもよく、変化させて供給してもよい。
【0097】
[実験例1]
本発明の実施形態における不活性化対象ウイルスとして、インフルエンザウイルス、ヒト単純疱疹ウイルス、ネコカリシウイルス(ロタウイルスの代用ウイルス)の3種類のウイルスを用いた。
【0098】
有機物としてFBS(ウシ胎児血清)1%を含む蒸留水に、オゾンを濃度が2ppmを維持するよう通気したのち、安定化二酸化塩素の薬液を10ppmとなるように添加し、さらにオゾンが2ppmとなるように、オゾンガスを通気した処理水をウイルス含有液に加えて、30分間静置したのち、ウイルスの感染価を測定した。
【0099】
このとき、用いたウイルスの感染価は、インフルエンザウイルスが1.1×10
7PFU/ml、ヒト単純疱疹ウイルスが2.6×10
6PFU/ml、ネコカリシウイルス4.2×10
6PFU/mlである。
【0100】
なお、ウイルス感染価は、それぞれの細胞を用いて以下のとおり、プラック感染価測定を行った。
【0101】
[プラック感染価測定]
<ウイルス>
インフルエンザウイルスPR8株を、ニワトリ受精卵(10日卵)の漿尿膜腔に接種し、2日間培養した後、漿尿液を採取し、4℃で3,000rpm10分間遠心分離した上清を30%、60%ショ糖のうえに重層し、25,000rpm90分間遠心分離し、ウイルスを精製した。ヒト単純疱疹ウイルスI型F株(HSV)は、Vero細胞で増殖させた上清を用いた。また、ネコカリシウイルスF9株(FCV)は、CRFK細胞で増殖させた上清を用いた。
【0102】
<細胞>
インフルエンザウイルスの感染価測定用細胞として、ヒト大腸癌由来CaCo2細胞を
用いた。ネコカリシウイルスの感染価測定用細胞は、ネコ腎臓由来CRFK細胞を用いた。HSVの感染価測定用細胞はミドリザル腎臓由来Vero細胞を用いた。
【0103】
<二酸化塩素の検定>
安定化二酸化塩素(50,000ppm)を最終希釈濃度100ppmとなるように滅菌蒸留水で希釈した。有効塩素濃度10ppmの水溶液990μLにウイルス原液10μLを加え1〜60分間室温で処理した。処理時間経過後、10%(W/V)チオ硫酸ナトリウム10μLを加え反応を停止した後、ウイルスを血清不含のDMEMで希釈し0.1mLずつ4ウェルのそれぞれの感受性細胞に接種し、37℃で60分間吸着させた。吸着後、0.8%アガロースゲルまたはメチルセルロースを含む培養液を加え、48〜96時間培養した。48〜96時間培養後にメタノール又は10%ホルマリンでウイルス細胞を固定し、0.1%クリスタルバイオレットを含む20%エタノール液を加え、プラックを算定し、感染価を算出した。
【0104】
<オゾン存在下での安定化二酸化塩素の殺ウイルス効果>
ウイルス10μLに200ppm安定化二酸化塩素50μLを加え、2.2ppmになるようにオゾンを通気したオゾン水940μLを加え1〜5分間処理した。処理時間経過後、10%(W/V)チオ硫酸ナトリウム10μLを加え反応を停止した後、ウイルスを血清不含のDMEMで希釈し0.1mLずつ4ウェルのそれぞれの感受性細胞に接種し、37℃で60分間吸着させた。吸着後、0.8%アガロースゲルまたはメチルセルロースを含む培養液を加え、48〜96時間培養した。48〜96時間培養後にメタノール又は10%ホルマリンでウイルス細胞を固定し、0.1%クリスタルバイオレットを含む20%エタノール液を加え、プラックを算定し、感染価を算出した。
【0105】
<結果>
結果は、次の表1に示すとおりである。
【0107】
上記の表1から明らかなように、インフルエンザウイルス、HSVは、感染価がいずれも5PFU/ml以下で感染価は検出できず、ウイルスを100%不活性化していることが明らかである。またFCVの感染価は16PFU/mlであり、不活性化前の感染価(4.2×10
6)に比べて99.999%の感染価減衰率を示した。なお、上記実施例1の実験は、北里大学医療衛生学部にて行われたものである。
【0108】
以上のとおり、オゾンガス、二酸化塩素を含有する薬液、オゾンガスを用いた場合には、ウシ胎児血清のような有機物が存在する場合でも、ウイルスを不活性化できることが明らかである。
【0109】
[実験例2]
<供試菌株>
使用菌株としてバチルスズブチリスATCC19659(以下、供試菌株という)を用い、使用培地としてバクトトリプチカーゼソイアガー(TSA)(ディフコ社製)およびティピコソイブロスTSB−BP13(TSB)(レーベンラボラトリー社製)を用いた。
【0110】
<培養方法>
供試菌株の芽胞形成を促進させるための硫酸マンガン5μg/mlを添加したTSA培地に供試菌株を培養し、Rothらの方法(Roth,S.,J.Feichtinger,C.,Hertel.2010,Journal of Applied Microbiology 108,521−532)によって、芽胞菌液を作製した。
菌液は4℃で保存した。
【0111】
また、培養に際して、使用した試薬は次のとおりである。
安定化二酸化塩素(インターナショナルジオキシドインク社製)
10mMリン酸緩衝溶液(シグマ社製)
中和剤:10%トゥイーン80、0.1%ヒスチジン、0.5%チオ硫酸ナトリウム /PBS(pH7.4)(シグマ社製)
消泡剤:KM−73E(信越化学社製)
【0112】
<試験方法>
有機物である0.3%ウシアルブミンを含む滅菌蒸留水200mlに終濃度1〜9×10
6CFU/mlとなるよう芽胞菌液2mlを添加した。そこに終濃度3ppmとなるようにオゾンを供給し、60分間供給を継続した。ついで、終濃度10ppmとなるよう安定化二酸化塩素原液(500ppm)を4ml添加し、20℃にて1分間インキュベートし、その後、さらにオゾンを終濃度3ppmで、60分間供給した。
終了後、処理菌液1に対して中和剤9の割合で混和し、二酸化塩素の中和とオゾンの蒸散を促すために、室温にて処理液を10分間放置し、その後生存する菌数を算定した。
【0113】
<判定>
芽胞菌の残存の確認は、採取した菌液からPBSにて10倍希釈系列(10
−1〜10
−4)を作製し、希釈液の各々を100μlずつTSA培地に接種した。37℃、48時間培養後、培地上に発育したコロニー数(CFU)を数えて生存菌数を算出することによって行った。
【0114】
また、同時に液体培地による増菌も行い、残存菌の有無を確認した。具体的には、採取した菌液の200μlをTSB2mlに接種し、37℃で48時間培養した。培地の指示薬の色の変化、もしくは濁りが生じた場合を殺菌不可、いずれも認められない場合を菌の発育なしと判定した。
【0115】
<結果>
TSA培地上に発育したコロニーはなく、またTSB培地における指示薬の色の変化ならびに濁りはみられず、前記有機物を含むオゾン処理液中の芽胞菌を100%不活性化することができた。なお、上記実施例2の実験は、名古屋大学医学部保健学科にて行われたものである。
【0116】
本発明によれば、オゾンガス、安定化二酸化塩素、オゾンガスで処理することにより 以上のとおり、本発明は、活性酸素供与体、安定化二酸化塩素、活性酸素供与体の順に使用することによって、有機物を含む水性媒体中の病原性微生物を、前記成分の相乗効果によって、効率的に不活性化することができる。
【0117】
前記実験例1および2に示すとおり、0.3%または1.0%という通常より高い濃度の有機物を含む水性媒体中の病原性微生物をオゾン2〜3ppm、安定化二酸化塩素10ppm、オゾン2〜3ppmといった低濃度で不活性化できることは極めて高い効果であり、通常の病院廃液中の有機物濃度が0.02%程度であること、安定化二酸化塩素を消毒剤として使用する場合の通常濃度が300〜400ppmであることからすれば、極めて驚異的な効果であることが明らかである。
【0118】
前述の実施形態では、廃液貯留手段3の貯留槽本体51は、地上に設置されるパネル組立て構造体によって実現される構成について述べたが、本発明の他の実施形態では、前記貯留槽本体51に代えて、地中に埋設されるコンクリート構造体によって貯留槽本体を実現してもよく。このような構成を採用した場合であっても、同様な効果を達成することができる。