(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の電磁波遮蔽ケースの外観を示す斜視図である。
【
図2】比較例としての電磁波遮蔽ケースの外観を示す斜視図である。
【
図4】電磁波遮蔽ケースを構成する3つの部品を示す斜視図である。
【
図6】(A)は接合部の構成例(その1)を示す断面図、(B)は(A)に示す2つの部品を樹脂で接合する際の状態を示す断面図である。
【
図7】(A)は接合部の構成例(その2)を示す断面図、(B)は(A)に示す2つの部品を樹脂で接合する際の状態を示す断面図である。
【
図8】(A)は接合部の構成例(その3)を示す断面図、(B)は接合部の構成例(その4)を示す断面図である。
【
図9】接合部の構成例(その5)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、実施形態の電磁波遮蔽ケース1の外観を示す斜視図である。一方、
図2は、比較例としての電磁波遮蔽ケース2の外観を示す斜視図である。また、
図3は、
図2のB−B断面図である。
【0009】
比較例の電磁波遮蔽ケース2は、金属製の板材により形成された3つの部品21,22,23を、従来の接合方法(この例ではリベット24を用いた接合方法)で接合することにより、電子機器を覆うための箱部(筐体)を形成したものである。具体的には、箱部の左右側面を形成する部品21,23の上方端部及び側方端部に、折曲部が形成されており、箱部の正面、上面及び背面を形成する部品22の側方端部に、その折曲部をラップさせた(重ねた)構造となっている。そして、このラップ部に形成された貫通孔に、別部品である金属製のリベット24を挿入してかしめること(カシメ)により、部品22と部品21,23とが接合される。
【0010】
このような接合で部品22と部品21,23との導電性が確保され、電磁波によって発生した電流がアースへ流れることとなる(
図3の破線参照)。逆にいえば、従来の接合方法では、リベット(カシメ)やネジや溶接による接合によって部品同士の導電性を確保している。つまり、このような接合を行わなければ、導電性が不安定な状態となり、シールド性能が発揮されない。また、リベットやネジや溶接による接合が不十分であるなどの理由で、部品同士の間に隙間が空いている場合にも、シールド効果が低減してしまう(外部からの電磁波が内部へ侵入し、内部からの電磁波が外部へ漏洩しやすくなる)。
【0011】
一方、本実施形態の電磁波遮蔽ケース1は、金属製の板材により形成された3つの部品11,12,13(
図4参照)を接合することにより、電子機器を覆うための箱部(筐体)を形成したものである点では、比較例の電磁波遮蔽ケース2と共通する。ただし、3つの部品11,12,13の接合方法が、比較例の電磁波遮蔽ケース2とは異なる。具体的には、リベットやネジや溶接による接合方法に代えて、樹脂14による接合方法を採用している。
【0012】
図5は、
図1のA−A断面図である。本実施形態の電磁波遮蔽ケース1では、部品自体の形状や、樹脂成型用の金型の形状などの工夫により、樹脂14により接合される部品同士を、点、線又は面で接触させた状態に保持する。そして、部品同士の接触が保持された状態で、樹脂14により接合する。つまり、インサート成型前に、型内で板金同士が点、線、面のいずれかの状態で接触している状態とした上で、樹脂を流し込んで形状を固定する。このように、樹脂型形状や板金形状にて良好な接触状態を保持したまま固定することで、リベット等を用いることなく、部品12と部品11,13との導電性が確保され、電磁波によって発生した電流がアースへ流れることとなる(
図5の破線参照)。
【0013】
ここで、部品同士の電気的導通を取りやすくするための接合部の構成例について説明する。
図6(A)に示す例では、接合する部品(この例では部品11,12)の端部がそれぞれ折り曲げられており、端部同士の重なり位置(ラップ部)において内側に位置する部品12の曲げ角度が、外側に位置する部品11の曲げ角度と比較して、大きく形成されている。具体的には、内側の部品12の曲げ角度が90度よりも大きく形成されているのに対し、外側の部品11の曲げ角度が90度よりも小さく形成されている。
【0014】
図6(B)は、
図6(A)に示す2つの部品11,12を樹脂14で接合する際の状態であって、2つの金型15,16により挟まれた状態を示している。
図6(A)に示す2つの部品11,12を
図6(B)に示すように重ね合わせると、前述した曲げ角度の違いに起因して、部品11,12自身の弾性力により互いに押圧する力が働き、内側の部品12の外面と外側の部品11の内面とが強い力で接触する。したがって、良好な接触状態が得られる。なお、
図6(B)において太線で示す部分が接触部位であり、この例では面接触又は線接触となる。
【0015】
また、
図7(A)に示す例では、接合する部品(この例では部品11,12)の端部がそれぞれ折り曲げられており、端部同士の重なり位置(ラップ部)において内側に位置する部品12における外面の曲げ半径R1が、外側に位置する部品11における内面の曲げ半径R2と比較して、小さく形成されている。
【0016】
図7(B)は、
図7(A)に示す2つの部品11,12を樹脂14で接合する際の状態であって、2つの金型15,16により挟まれた状態を示している。
図7(A)に示す2つの部品11,12を
図7(B)に示すように重ね合わせると、内側の部品12の外面と外側の部品11の内面とが強い力で接触するとともに、前述した曲げ半径の違い(R1<R2)に起因して、内側の部品12の角部が外側の部品11にめり込むように接触するため、良好な接触状態が得られる。なお、
図7(B)において太線で示す部分が接触部位であり、この例では面接触又は線接触となる。
【0017】
その他、
図8(A)に示す例では、接合する部品(この例では部品11,12)のうちの一方(この例では部品11)の端部が折り曲げられており、他方(この例では部品12)の端部に点状又は線状の凸部が形成されている。そして、この凸部が折曲部の内面に当接するように接合される。このため、強い接触圧が働き、良好な接触状態が得られる。なお、
図8(A)において太線で示す部分が接触部位であり、この例では点接触又は線接触となる。
【0018】
また、
図8(B)に示す例では、接合する部品(この例では部品11,12)のうちの一方(この例では部品11)の端部が折り曲げられており、他方(この例では部品12)の端部が外側に反って形成されている。そして、反った部分の先端部が折曲部の内面に当接するように接合される。このため、強い接触圧が働き、良好な接触状態が得られる。なお、
図8(B)において太線で示す部分が接触部位であり、この例では線接触となる。
【0019】
また、
図9に示す例では、接合する部品(この例では部品11,12)のうちの一方(この例では部品11)の端部が折り曲げられており、部品11の折曲部と部品12の端部との重なり位置(ラップ部)において、部品11,12が、金型15,16により上下方向から直接(樹脂14を挟まずに)押圧される部分が形成されている。このため、金型による加圧力で良好な接触状態が得られる。なお、
図9において太線で示す部分が接触部位であり、この例では面接触となる。
【0020】
以上説明したように、本実施形態の電磁波遮蔽ケース1は、別部品となる板金同士が樹脂射出成型時に型内部で点・線・面いずれかの接触部を持ち、接触状態が維持されたまま、射出成形によって板金の位置関係が固定される。
【0021】
すなわち、従来から、この種の電磁波遮蔽ケースでは、それぞれ別部品となる板金同士を電気的に導通させ、電磁波シールド性能を確保している。電磁波をシールドするためには基本的に対象物がアルミダイカスト、板金等の導電性を持つケースで覆われている必要がある。また、覆っているケースは構成部品同士の隙間がなく、電気的に導通していることが望ましい。隙間がある場合、その箇所から電磁波の浸入・漏洩が起こるからである。ケース構成部品を導電させるためには、隙間となりうる部分にシールドフィンガーを設置したり、ネジやリベットを介して各々の部品を固定するといった工程が必要となる。
【0022】
これに対し、本実施形態の電磁波遮蔽ケース1によれば、従来の固定方法とは異なり、樹脂成型によって各々の部品を接触状態のまま固定することで導電性を維持し、良好な電磁波シールド効果を得ることができる。その結果、ノイズに対する信頼性を向上させることができる。加えて、リベット(カシメ)やネジや溶接による接合方法と比較して、製造時の工数を大幅に削減することができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。