特許第6046352号(P6046352)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046352
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】染毛剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20161206BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20161206BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   A61K8/86
   A61Q5/10
   A61K8/67
   A61K8/39
   A61K8/34
   A61K8/41
   A61K8/06
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-13916(P2012-13916)
(22)【出願日】2012年1月26日
(65)【公開番号】特開2013-151464(P2013-151464A)
(43)【公開日】2013年8月8日
【審査請求日】2015年1月20日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金山 慎也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晴子
【審査官】 團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−053877(JP,A)
【文献】 特開2003−040747(JP,A)
【文献】 特開2002−029946(JP,A)
【文献】 特開2002−097121(JP,A)
【文献】 特開2009−269876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
DB等 DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤を含有する酸化剤組成物と混合して使用される、乳化物である染毛剤組成物であって、
下記(A)成分〜(D)成分を含有し、
(A)成分と(B)成分の含有量の合計が7〜15質量%であり、
(C)成分の含有量が4〜20質量%であり、そのうち25℃で固形のポリエチレングリコールを3質量%以上含む染毛剤組成物。
(A)酸化染料
(B)アスコルビン酸類及びその塩から選ばれる少なくとも1種
(C)ポリエチレングリコール
(D)非イオン性界面活性剤
【請求項2】
前記(A)成分の含有量が2質量%以上であり、かつ、前記(B)成分の含有量が2質量%以上である請求項1に記載の染毛剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分として塩酸塩及び/又は硫酸塩の形態の酸化染料を0.05質量%以上含有する請求項1又は請求項2に記載の染毛剤組成物。
【請求項4】
前記(D)成分としてHLB値が14以上の非イオン性界面活性剤を2質量%以上含有する請求項1〜3のいずれかに記載の染毛剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪を染色するための染毛剤組成物に関する。詳しくは、酸化染毛剤組成物における第1剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を染色するための組成物として、酸化染料を使用する酸化染毛剤組成物がある。当該酸化染毛剤組成物は染毛力に優れるものの地肌汚れを引き起こしてしまう側面も有している。
【0003】
下記特許文献1はアスコルビン酸類及び炭素数の異なる高級アルコールの組み合わせを利用する染毛剤組成物を開示する。下記特許文献2はアスコルビン酸類及びポリエチレングリコールを利用する染毛剤組成物を開示する。下記特許文献3は特定の染料前駆体とアスコルビン酸類の比率及びアスコルビン酸類とアルカリ剤の比率を利用する酸化染毛剤組成物を開示する。下記特許文献4はアスコルビン酸類及び無機酸又は有機酸のアンモニウム塩でガスを発生する炭酸塩以外の成分を含有する酸化染毛剤組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−053876号公報
【特許文献2】特開2005−053877号公報
【特許文献3】特開2005−298396号公報
【特許文献4】特開2005−298397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1−4に開示されているように、酸化染毛剤組成物の分野では、染毛効果と他の効果の並立を目指して種々の検討がなされてきた。例えば染毛効果、地肌汚れの抑制、及び剤の安定性の並立の検討がなされてきた。時には、更に他の効果をも並立することが検討されてきた。これらの効果の並立は様々な成分の組み合わせによって実現可能である。しかし、各々の組み合わせにより各効果の強弱は存在する。
【0006】
塩酸塩や硫酸塩の形態の酸化染料を配合した場合は塩でない形態の酸化染料を配合した場合と比べて、剤の安定性の効果が向上しにくい場合があった。また、これにより並立すべき他の効果が向上しにくい場合もあった。
【0007】
上記特許文献4では塩酸−2,4−ジアミノフェノキシエタノールを配合する処方の開示があるが、剤の安定性については検討対象となっていない。
【0008】
鋭意検討を重ねた結果、本願発明者は以下の知見を得た。即ち、酸化剤を含有する酸化剤組成物と混合して使用される染毛剤組成物について、(A)酸化染料、(B)アスコルビン酸類及びその塩から選ばれる少なくとも1種、(C)特定組成及び特定配合量のポリエチレングリコール(以下、ポリエチレングリコールを「PEG」と称する場合がある。)、及び(D)非イオン性界面活性剤を含有し、かつ、(A)成分及び(B)成分の合計配合量を特定の範囲内とした場合に、染毛力の良さ及び地肌汚れの少なさを両立し、かつ、剤の安定性に優れる染毛剤組成物が得られる。当該染毛剤組成物の奏する効果は従来の染毛剤組成物より優れたものであった。また、当該染毛剤組成物は塩酸塩や硫酸塩の形態である酸化染料を配合しても剤の安定性が良好であり、染料選択の幅が広がった。
【0009】
よって、染毛力の良さ及び地肌汚れの少なさを両立し、かつ、剤の安定性に優れる染毛剤組成物を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第1発明)
上記課題を解決する為の本願第1発明の構成は、
酸化剤を含有する酸化剤組成物と混合して使用される染毛剤組成物であって、下記(A)成分〜(D)成分を含有し、(A)成分と(B)成分の含有量の合計が7〜15質量%であり、(C)成分の含有量が4〜20質量%であり、そのうち25℃で固形のポリエチレングリコールを3質量%以上含む染毛剤組成物である。(A)酸化染料、(B)アスコルビン酸類及びその塩から選ばれる少なくとも1種、(C)ポリエチレングリコール、(D)非イオン性界面活性剤。
【0011】
(第2発明)
上記課題を解決する為の本願第2発明の構成は、
前記(A)成分の含有量が2質量%以上であり、かつ、前記(B)成分の含有量が2質量%以上である第1発明に記載の染毛剤組成物である。
【0012】
(第3発明)
上記課題を解決する為の本願第3発明の構成は、
前記(A)成分として塩酸塩及び/又は硫酸塩の形態の酸化染料を0.05質量%以上含有する第1発明又は第2発明に記載の染毛剤組成物である。
【0013】
(第4発明)
上記課題を解決する為の本願第4発明の構成は、
前記(D)成分としてHLB値が14以上の非イオン性界面活性剤を2質量%以上含有する第1発明〜第3発明のいずれかに記載の染毛剤組成物である。
【発明の効果】
【0014】
本願染毛剤組成物は、染毛力の良さ及び地肌汚れの少なさを両立し、かつ、剤の安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願に係る発明の実施形態をその最良の形態を含めて説明する。
【0016】
〔酸化染毛剤組成物〕
本願において、酸化染毛剤組成物は染毛剤組成物と酸化剤を含有する酸化剤組成物とを構成に含む。当該酸化染毛剤組成物は2剤式や3剤式等、2剤以上を構成に含む多剤式であることが好ましい。本願においては、前記染毛剤組成物を第1剤と称することがあり、前記酸化剤組成物を第2剤と称することがある。
【0017】
当該第1剤及び第2剤は使用時に混合することが好ましい。3剤式以上の酸化染毛剤組成物である場合は、適宜他剤を混合可能である。以下、第1剤及び第2剤を含有する混合物を単に混合物と称することがある。
【0018】
〔第1剤〕
本願が開示する第1剤は、下記(A)成分〜(D)成分を含有し、(A)成分と(B)成分の含有量の合計が7〜15質量%であり、(C)成分の含有量が4〜20質量%であり、そのうち25℃で固形のポリエチレングリコールを3質量%以上含む染毛剤組成物である。
(A)酸化染料
(B)アスコルビン酸類及びその塩から選ばれる少なくとも1種
(C)ポリエチレングリコール
(D)非イオン性界面活性剤
【0019】
−(A)酸化染料−
(A)成分である酸化染料は、酸化剤による酸化重合によって発色可能な化合物である。酸化染料は特に限定されないが、例えば、染料中間体、カップラー、メラニン前駆物質等が挙げられる。好ましくは、第1剤には染料中間体が含有される。
【0020】
より具体的には、例えば、酸化染料として、フェニレンジアミン及びその誘導体、フェノール誘導体、アミノフェノール及びその誘導体、ジフェニルアミン及びその誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラゾール誘導体、ピロリジン誘導体、トルエン誘導体、インドール誘導体、ピロール誘導体、並びにイミダゾール誘導体等が挙げられる。
【0021】
更に具体的には、例えば、染料中間体としては、フェニレンジアミン類(但し、メタフェニレンジアミンを除く。)、アミノフェノール類(但し、メタアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール及びパラメチルアミノフェノールを除く。)、トルイレンジアミン類(但し、トルエン−3,4−ジアミン及びトルエン−2,4−ジアミンを除く。)、ジフェニルアミン類、ジアミノフェニルアミン類、N−フェニルフェニレンジアミン類、ジアミノピリジン類(但し、2,6−ジアミノピリジンを除く)等が挙げられる。
【0022】
染料中間体の中でも、染毛力が強いことからパラフェニレンジアミン、パラトルイレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−パラフェニレンジアミン、N−フェニル−パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2−クロロパラフェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、オルトアミノフェノール、2,6−ジクロロパラフェニレンジアミン、パラアミノフェニルスルファミン酸等が好ましい。
【0023】
カップラーとしては、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、メタアミノフェノール、メタフェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、トルエン−3,4−ジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノオルトクレゾール、パラメチルアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、没食子酸、タンニン酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール等が挙げられる。
【0024】
(A)成分である酸化染料は、酸化剤による酸化重合によって発色可能な化合物の塩を含む概念である。例えば、上記した各化合物の酸付加塩等が挙げられる。好ましくは、有機酸の付加塩、無機酸の付加塩等が挙げられる。
【0025】
より具体的には、塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、トシル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、安息香酸塩、及びサリチル酸塩等が挙げられる。更に好ましくは、塩酸塩、硫酸塩である。
【0026】
これら酸化染料は単独で配合しても良く、組み合わせて配合しても良い。
【0027】
第1剤における(A)成分である酸化染料の含有量は、後述する(B)成分の含有量との合計が7〜15質量%となる限り限定されない。(A)成分の好ましい含有量は2〜6質量%であり、より好ましくは3〜5質量%である。第1剤における(A)成分の含有量が2質量%以上である場合、染毛力がより向上する。
【0028】
また、塩の形態の酸化染料を0.05〜0.5質量%含有してもよい。第1剤に0.05質量%以上塩の形態の酸化染料を含有しても良好な剤の安定性が実現する。
【0029】
上記(A)成分には含まれない直接染料等の他の染料を第1剤に配合しても良い。当該他の染料として、例えば、酸性染料、塩基性染料、天然染料、ニトロ染料、分散染料等から選ばれる1種以上がある。
【0030】
上記酸性染料としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色227号、赤色230号の(1)、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、だいだい色205号、だいだい色207号、だいだい色402号、緑色3号、緑色204号、緑色401号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、かっ色201号、黒色401号等を例示できる。
【0031】
上記塩基性染料としては、Basic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 41、Basic Blue 47、Basic Blue 99、Basic Brown 4、Basic Brown 16、Basic Brown 17、Basic Green 1、Basic Green 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Orange 31、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 46、Basic Red 51、Basic Red 76、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet 11:1、Basic Violet 14、Basic Violet 16、Basic Yellow 11、Basic Yellow 28、Basic Yellow 57、Basic Yellow 87等を例示できる。
【0032】
上記天然染料としては、クチナシ色素、ウコン色素、アナトー色素、銅クロロフィリンナトリウム、パプリカ色素、ラック色素等を例示できる。
【0033】
上記ニトロ染料としては、4−ニトロ−o−フェニレンジアミン、2−ニトロ−p−フェニレンジアミン、2−アミノ−4−ニトロフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、及びそれらの塩、HC Blue No.2、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15等を例示できる。
【0034】
上記分散染料としては、Disperse Black 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue 3、Disperse Blue 7、Disperse Brown 4、Disperse Orange 3、Disperse Red 11、Disperse Red 15、Disperse Red 17、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4、Disperse Violet 15等を例示できる。
【0035】
−(B)アスコルビン酸類及びその塩−
(B)成分に該当するアスコルビン酸類及びその塩は、染毛処理後の地肌汚れを抑制するために配合される。また、この(B)成分によって、酸化剤による酸化染料の酸化重合反応が促進されるとともに混合物のpHがコントロールされる。
【0036】
アスコルビン酸はビタミンCとしても知られる化合物である。アスコルビン酸類は、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、及びそれらの誘導体、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン、2,3−ジヒドロキシ−2−シクロペンテン−1−オン等が挙げられる。
【0037】
アスコルビン酸の塩は特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸アンモニウム、アスコルビン酸モノエタノールアミン、アスコルビン酸ジエタノールアミン等が挙げられる。好ましくは、アスコルビン酸の塩は、アスコルビン酸ナトリウム等が挙げられる。エリソルビン酸の塩は特に限定されないが、例えば、エリソルビン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0038】
アスコルビン酸類及びその塩は単独で配合しても良く、組み合わせて配合しても良い。
【0039】
第1剤における(B)成分であるアスコルビン酸類及びその塩から選ばれる少なくとも1種の含有量は、上記(A)成分の含有量との合計が7〜15質量%となる限り限定されない。(B)成分の好ましい含有量は2〜6質量%であり、より好ましくは3〜5質量%である。第1剤における(B)成分の含有量が2質量%以上である場合、地肌汚れの抑制効果がより向上する。
【0040】
−第1剤の(A)成分及び(B)成分の含有量−
第1剤は(A)成分含有量と(B)成分含有量の合計が7〜15質量%である。好ましくは7〜13質量%であり、より好ましくは7〜10質量%である。(A)成分含有量と(B)成分含有量の合計が7質量%未満である場合は地肌汚れの抑制効果あるいは染毛力が不十分となる傾向にある。一方、15質量%を超える場合は剤の安定性が不十分となる傾向にある。
【0041】
第1剤の(A)成分の含有量が2質量%以上であり、かつ、(B)成分の含有量が2質量%以上であることが好ましい。この条件を満たす場合、染毛力の良さ及び地肌汚れの抑制効果が共により向上する。より好ましくは、第1剤の(A)成分の含有量が3質量%以上であり、かつ、(B)成分の含有量が3質量%以上である。
【0042】
−(C)ポリエチレングリコール−
第1剤は25℃で固形のポリエチレングリコールを3質量%以上含有し、かつ、第1剤の全ポリエチレングリコール含有量は4〜20質量%である。この条件を満たすことを前提に、第1剤は特定のPEGを単独で配合してもよいし、複数のPEGを組み合わせて配合しても良い。
【0043】
当該特定組成、特定配合量のポリエチレングリコールは、剤の安定性の向上のために配合される。
【0044】
25℃で固形のポリエチレングリコールとして、例えば、PEG1000、PEG1500、PEG1540、PEG2000、PEG4000、PEG6000等が挙げられる。
【0045】
第1剤における25℃で固形のポリエチレングリコールの含有量は3質量%以上である。好ましくは4質量%以上である。当該含有量が3質量%未満である場合、剤の安定性が不十分となる傾向にある。
【0046】
第1剤の全ポリエチレングリコール含有量は4〜20質量%である。好ましくは5〜15質量%であり、より好ましくは5〜10質量%である。当該含有量が4質量%未満である場合、剤の安定性が不十分となる傾向にある。一方、当該含有量が20質量%を超える場合、染毛力が不十分となる傾向にある。
【0047】
−(D)非イオン性界面活性剤−
(D)成分である非イオン性界面活性剤は、剤の安定性を得る目的で第1剤に配合する。第1剤が含有する非イオン性界面活性剤は特に限定されないが、例えば、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、糖系非イオン性界面活性剤、アミド化合物等が挙げられる。
【0048】
具体的には、下記の非イオン性界面活性剤を挙げることができる。
エーテル型非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(以下、POEという。)セチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0049】
エステル型非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、ホホバワックスPEG−80等が挙げられる。
【0050】
好ましい非イオン性界面活性剤としては、例えば、エーテル型非イオン性界面活性剤、HLB値が14以上の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0051】
「HLB」とは、親水親油バランス:Hydrophile-Lipophile Balanceの略称であって、一般的に、界面活性剤の分子が持つ親水性と親油性の相対的な強さを表すパラメーターであり、HLBの値が大きいほど親水性が強く、HLBの値が小さいほど親油性が強い。HLBの値は公知の Griffin の式から算出される。
【0052】
非イオン性界面活性剤は単独で配合しても良く、組み合わせて配合しても良い。
【0053】
第1剤における(D)成分である非イオン性界面活性剤の含有量は特に限定されない。好ましい(D)成分の含有量は3〜10質量%であり、より好ましくは3〜8質量%である。
【0054】
第1剤は、HLB値が14以上の非イオン性界面活性剤を2質量%以上含有することが好ましい。当該含有量は3質量%以上であることが好ましい。当該非イオン性界面活性剤のHLB値は18以上であることが好ましい。第1剤の、HLB値が14以上の非イオン性界面活性剤の含有量が2質量%以上である場合、剤の安定性がより向上する。
【0055】
HLB値が14以上の非イオン性界面活性剤は、例えば、モノラウリン酸デカグリセリル(HLB15.5)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(45E.O.)(HLB18)、モノヤシ油脂肪酸POE(20)ソルビタン(HLB16.9)、モノラウリン酸POE(6)ソルビット(HLB15.5)、POE(40)ラノリンアルコール(HLB17)、POE(30)フィトステロール(HLB18)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)(HLB17.5)、POE(20)POP(4)セチルエーテル(HLB16.5)、POE(25)モノステアレート(HLB15)、POE(21)ラウリルエーテル(HLB19)、POE(30)セチルエーテル(HLB19.5)、POE(20)ステアリルエーテル(HLB18)、POE(20)ベヘニルエーテル(HLB16.5)、POE(80)硬化ヒマシ油(HLB15)、POE(10)オレイルエーテル(HLB14.5)、POE(20)オレイルエーテル(HLB17)、POE(30)ベヘニルエーテル(HLB18)、POE(50)オレイルエーテル(HLB18)、POE(9)ラウリルエーテル(HLB14.5)等が挙げられる。なお、POEに付随する数値は付加モル数を示す。
【0056】
−その他の成分−
第1剤は、その他の成分として、上記(A)成分〜(D)成分に該当しない任意の成分を配合して良い。
【0057】
第1剤はアルカリ剤を含有してもよい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、アルカノールアミン、有機アミン類(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、グアニジン等)、無機アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等)、塩基性アミノ酸(アルギニン、リジン等)及びそれらの塩等が挙げられる。アルカノールアミンの具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
【0058】
これらのアルカリ剤は単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0059】
第1剤は、その他の成分として、例えば、水、低級アルコール、脂肪酸、高級アルコール、芳香族アルコール、グリコール類、グリセリン類、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、増粘剤、アミノ酸類、油脂、ロウ類、シリコーン類、炭化水素、ソルビトール、マルトース等の糖類、パラベン、安息香酸ナトリウム等の防腐成分、EDTA−2Na等のキレート成分、フェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等の安定成分、リン酸、クエン酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、乳酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、グリコール酸アンモニウム等のpH調整成分、植物又は生薬抽出物、ビタミン類、香料等から選ばれる1種以上を配合しても良い。また、例えば、「医薬部外品原料規格2006」(薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。
【0060】
−剤型−
第1剤の剤型は、乳化物状であることが好ましい。具体的にはフォーム状、クリーム状、乳液状等が挙げられる。第1剤は、乳化安定性が得られ易いことから、水中油滴型乳化物であることが好ましい。これらの剤型は、周知の方法や常法に従って実現可能である。第1剤は通常、チューブ容器、エアゾール容器、ガラス瓶等の各種容器に充填され、使用時まで保存される。
【0061】
〔第2剤〕
第2剤は酸化剤を含有する酸化剤組成物である。酸化剤は、酸化染料を酸化重合させて発色させるとともに、毛髪に含まれるメラニンを脱色させるために配合される。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。これらの酸化剤は単独で配合してもよく、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの酸化剤の中でも、メラニンの脱色力に優れることから、好ましくは過酸化水素である。
【0062】
第2剤の酸化剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは2〜9質量%である。
【0063】
第2剤は、任意のその他の成分を配合して良い。例えば、「医薬部外品原料規格2006」(薬事日報社)に収載されるものから選ばれる少なくとも一種を配合してもよい。
【0064】
第2剤の剤型は、水溶液状、分散液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、乳液状等が挙げられる。これらの剤型は、周知の方法や常法に従って実現可能である。第2剤は通常、チューブ容器、エアゾール容器、樹脂容器等の各種容器に充填され、使用時まで保存される。
【0065】
〔他剤〕
酸化染毛剤組成物が3剤式以上の多剤式である場合、他剤としては、酸化助剤、糊剤等が挙げられる。他剤は周知の方法により調製・保存が可能であり、剤型は適宜選択可能である。
【0066】
〔混合物〕
第1剤及び第2剤を含有する混合物の剤型は適宜選択可能である。当該混合物は適宜な方法により毛髪に適用され、一定時間放置されることにより毛髪は染毛される。通常は染毛終了後に、毛髪にはプレーンリンスが施される。酸化染毛剤組成物の使用方法は適宜選択可能である。
【0067】
混合物における第1剤と第2剤(酸化染毛剤組成物が3剤式以上の多剤式である場合は、他剤を含む)との混合比は適宜選択可能であるが、第1剤:第2剤=1:0.5〜1:5であることが好ましく、1:0.5〜1:3であることがより好ましい。
【0068】
混合物の剤型は、例えば、水溶液状、分散液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、乳液状等が挙げられる。
【0069】
よって、本願は上記染毛剤組成物、酸化染毛剤組成物を使用する染毛方法をも開示する。
【0070】
〔染毛用セット〕
上記した染毛剤組成物又は酸化染毛剤組成物を含む染毛用セットも好ましい。当該染毛用セットは、上記した染毛剤組成物又は酸化染毛剤組成物の他、さらに染毛操作に有用な物や染毛操作の前後に毛髪や頭皮を手入れするための物を含んで構成される。
【0071】
染毛用セットは、例えば、地肌汚れ防止剤、前処理剤、シャンプー、トリートメント、コンディショナー、後処理剤、刷毛、櫛、混合用容器、フォーマー容器等から選ばれる少なくとも1つを含んで構成される。
【0072】
これらのうち、前処理剤及び/又は後処理剤を含んで染毛用セットが構成される場合は、本願は当該染毛用セットを使用する美容方法をも開示する。当該美容方法は毛髪についての美容方法であるので、非治療的な方法である。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を記載するが、本願が開示する発明は以下の実施例に限定されない。以下の各実施例では第1剤及び第2剤からなる2剤式の酸化染毛剤組成物を使用する。
【0074】
下記表1〜3に示す実施例1〜12及び比較例1〜7の各処方の第1剤、並びに下記第2剤を常法に従って調製した。各表における処方の数値は質量%を示す。精製水欄の「to 100」は残量を意味する。(C)成分欄における「(液体)」、「(固体)」の括弧書きは、25℃における各(C)成分の形態を指す。(D)成分欄には、各(D)成分のHLB値を記載した。
【0075】
−第2剤−
過酸化水素水(35%) :16.5質量%
スズ酸ナトリウム : 0.1質量%
EDTA : 0.5質量%
セタノール : 2.0質量%
ラウリル硫酸ナトリウム : 0.5質量%
精製水 :残量
【0076】
下記表1〜3に示す各例の第1剤についての剤の安定性は下記のように試験、評価を行った。評価結果は各表の「安定性」欄に記載した。また、各例の第1剤と上記第2剤を1:1で混合して混合物を得た。当該混合物を使用して以下の染毛力及び地肌汚れの試験、評価を行った。染毛力の評価結果は各表の「染毛力」の欄に、地肌汚れの評価結果は各表の「地肌汚れ」の欄に、それぞれ記載した、
【0077】
<剤の安定性>
表1〜3に示す各例の処方の乳化物を常法に従って調製した。当該調製した第1剤を60℃にて保管し、乳化物の分離が確認されるまでの期間を測定した。乳化物の分離は目視にて確認した。
分離するまでの期間が12時間未満であった場合は「×」、12時間以上1日未満であった場合は「△」、1日以上2日未満であった場合は「○」、2日以上3日未満であった場合は「○〜◎」、3日以上であった場合は「◎」と評価した。
【0078】
<染毛力>
各例に係る混合物を白髪混じりの人毛毛束に塗布して30分間放置後、水洗することにより人毛毛束に染毛処理を完了した。10名のパネラーが人毛毛束の染色の程度を目視にて観察し、非常に優れる(4点)、優れる(3点)、やや悪い(2点)及び悪い(1点)の4段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を小数点第1位まで算出し、平均値が3.6点以上を「◎」、2.6点以上3.5点以下を「○」、1.6点以上2.5点以下を「△」及び1.5点以下を「×」とし、評価結果とした。
【0079】
<地肌汚れ>
各例に係る混合物1gを腕の内側部における直径1cmの円状範囲に塗布し、10分間放置した後、温水で洗い流した。次に、石鹸を使用して1分間指で軽く擦り、温水で洗い流した。10名のパネラーが地肌汚れ(皮膚への染着の度合い)を目視にて観察し、地肌汚れが非常に少ない(4点)、地肌汚れが少ない(3点)、地肌汚れがやや多い(2点)及び地肌汚れが多い(1点)の4段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を小数点第1位まで算出し、平均値が3.6点以上を「◎」、2.6点以上3.5点以下を「○」、1.6点以上2.5点以下を「△」及び1.5点以下を「×」とし、評価結果とした。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0083】
本願により、染毛力の良さ及び地肌汚れの少なさを両立し、かつ、剤の安定性に優れる染毛剤組成物が提供される。