(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本明細書に開示する発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本明細書に開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0025】
なお、第1、第2として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として固有の名称を示すものではない。
【0026】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、
図1乃至
図3を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体膜を有するトランジスタを示す。
【0027】
図1に、半導体装置の例として、ボトムゲート型のトランジスタ410の断面図及び平面図を示す。
図1(A)は平面図であり、
図1(B)及び
図1(C)は、
図1(A)におけるA−B断面及びC−D断面に係る断面図である。なお、
図1(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ410の構成要素の一部(例えば、絶縁膜407など)を省略している。
【0028】
図1に示すトランジスタ410は、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、酸化物半導体膜403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b及び絶縁膜407を含む。
【0029】
図1に示すトランジスタ410において、酸化物半導体膜403は、酸素ドープ処理が行われており、酸素過剰領域を有する。酸素ドープ処理を行うことにより、酸化物半導体膜403に膜中の酸素欠損を補填するために十分な量の酸素を含有させることができるので、信頼性が高められたトランジスタ410が実現する。
【0030】
また、絶縁膜407として、酸化アルミニウム膜が設けられている。酸化アルミニウムは、水分、酸素、その他の不純物を透過させにくいというバリア機能を有しているため、デバイス完成後に水分等の不純物が外部より侵入するのを防ぐことができる。また、酸化物半導体膜403より酸素が放出されるのを防ぐことができる。なお、絶縁膜407は、酸素過剰領域を有するのがより好ましい。
【0031】
また、ゲート絶縁膜402は、酸素過剰領域を有するのが好ましい。ゲート絶縁膜402が酸素過剰領域を有していると、酸化物半導体膜403からゲート絶縁膜402への酸素の移動を防ぐことができ、且つ、ゲート絶縁膜402から酸化物半導体膜403への酸素の供給を行うこともできるためである。
【0032】
なお、トランジスタ410上には、さらに絶縁物が設けられていてもよい。また、ソース電極層405aやドレイン電極層405bと配線とを電気的に接続させるために、ゲート絶縁膜402などには開口が形成されていてもよい。また、酸化物半導体膜403の上方に、さらに、第2のゲート電極を有していてもよい。なお、酸化物半導体膜403は島状に加工されていてもよい。
【0033】
図2(A)乃至(D)にトランジスタ410の作製方法の一例を示す。
【0034】
まず、絶縁表面を有する基板400上に導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ工程によりゲート電極層401を形成する。なお、レジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0035】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することもでき、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板400として用いてもよい。
【0036】
また、基板400として、可撓性基板を用いてもよい。可撓性基板を用いる場合、可撓性基板上に酸化物半導体膜を含むトランジスタを直接作製してもよいし、他の作製基板に酸化物半導体膜を含むトランジスタを作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板と酸化物半導体膜を含むトランジスタとの間に剥離層を設けるとよい。
【0037】
下地膜となる絶縁膜を基板400とゲート電極層401との間に設けてもよい。下地膜は、基板400からの不純物元素の拡散を防止する機能があり、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化窒化シリコン膜から選ばれた一又は複数の膜による積層構造により形成することができる。
【0038】
また、ゲート電極層401は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。
【0039】
次いで、ゲート電極層401上にゲート絶縁膜402を形成する。本実施の形態においては、ゲート絶縁膜402として酸化シリコン膜をプラズマCVD法又はスパッタリング法等により形成する。なお、ゲート絶縁膜402を、酸化シリコン膜と、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、又はこれらの混合材料を含む膜と、の積層構造としてもよい。但し、酸化シリコン膜を後に形成される酸化物半導体膜403と接する構造とするのが好ましい。
【0040】
また、μ波(例えば周波数2.45GHz)を用いた高密度プラズマCVDは、緻密で絶縁耐圧の高い高品質な絶縁層を形成できるので、ゲート絶縁膜402の形成に用いると好ましい。高純度化された酸化物半導体と高品質ゲート絶縁膜とが密接することにより、界面準位を低減して界面特性を良好なものとすることができるからである。
【0041】
また、成膜後の熱処理によって、膜質、酸化物半導体との界面特性が改質される絶縁層をゲート絶縁膜として用いてもよい。いずれにしても、ゲート絶縁膜としての膜質が良好であることは勿論のこと、酸化物半導体との界面準位密度を低減し、良好な界面を形成できるものであればよい。
【0042】
なお、ゲート絶縁膜402は酸素過剰領域を有すると、ゲート絶縁膜402に含まれる過剰な酸素によって、酸化物半導体膜403の酸素欠損を補填することが可能であるため好ましい。
【0043】
次いで、ゲート絶縁膜402上に、膜厚2nm以上200nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下の酸化物半導体膜403を形成する(
図2(A)参照)。
【0044】
酸化物半導体膜403は、In、Ga、ZnおよびSnから選ばれた2種以上を含む金属酸化物材料を用いればよい。例えば、四元系金属酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn−O系の材料や、三元系金属酸化物であるIn−Ga−Zn−O系の材料、In−Sn−Zn−O系の材料、In−Al−Zn−O系の材料、Sn−Ga−Zn−O系の材料、Al−Ga−Zn−O系の材料、Sn−Al−Zn−O系の材料や、二元系金属酸化物であるIn−Zn−O系の材料、Sn−Zn−O系の材料、Al−Zn−O系の材料、Zn−Mg−O系の材料、Sn−Mg−O系の材料、In−Mg−O系の材料、In−Ga−O系の材料や、In−O系の材料、Sn−O系の材料、Zn−O系の材料などを用いればよい。また、上記酸化物半導体にInとGaとSnとZn以外の元素、例えばSiO
2を含ませてもよい。
【0045】
ここで、例えば、In−Ga−Zn−O系酸化物半導体とは、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)を有する酸化物半導体、という意味であり、その組成比は問わない。
【0046】
また、酸化物半導体膜403は、化学式InMO
3(ZnO)
m(m>0)で表記される薄膜を用いることができる。ここで、Mは、Zn、Ga、Al、Mn及びCoから選ばれた一または複数の金属元素を示す。例えばMとして、Ga、Ga及びAl、Ga及びMn、またはGa及びCoなどがある。
【0047】
なお、酸化物半導体としてIn−Zn−O系の材料を用いる場合、用いるターゲットの組成比は、原子数比で、In:Zn=50:1〜1:2(モル数比に換算するとIn
2O
3:ZnO=25:1〜1:4)、好ましくはIn:Zn=20:1〜1:1(モル数比に換算するとIn
2O
3:ZnO=10:1〜1:2)、さらに好ましくはIn:Zn=15:1〜1.5:1(モル数比に換算するとIn
2O
3:ZnO=15:2〜3:4)とする。例えば、In−Zn−O系酸化物半導体の形成に用いるターゲットは、原子数比がIn:Zn:O=X:Y:Zのとき、Z>1.5X+Yとする。
【0048】
酸化物半導体膜は、単結晶、多結晶(ポリクリスタルともいう)、又は非晶質などの状態をとる。
【0049】
また、酸化物半導体膜403として、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜を用いてもよい。
【0050】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部及び非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体膜である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0051】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトル又はCAAC−OS膜の表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸及びb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下に範囲も含まれることとする。
【0052】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0053】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトル又は表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状又は表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトル又は表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は成膜することにより、又は成膜後に加熱処理などの結晶成長処理を行うことにより形成される。
【0054】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動を低減することが可能である。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0055】
なお、CAAC−OS膜を構成する酸素の一部は窒素で置換されてもよい。
【0056】
酸化物半導体膜403は、スパッタリング法、分子線エピタキシー法、原子層堆積法またはパルスレーザー蒸着法により形成する。ここでは、スパッタリング法により形成することができる。
【0057】
酸化物半導体膜403をCAAC−OS膜とする際には、基板400を加熱しながら酸化物半導体膜403を形成すればよく、基板400を加熱する温度としては、150℃以上450℃以下、好ましくは基板温度が200℃以上350℃以下とする。なお、酸化物半導体膜の形成時に、基板を加熱する温度を高くすることで、非晶質な部分に対して結晶部分の占める割合の多いCAAC−OS膜とすることができる。
【0058】
スパッタリング法により酸化物半導体膜403を形成する際、できる限り酸化物半導体膜403に含まれる水素濃度を低減させることが好ましい。水素濃度を低減させるには、スパッタリング装置の処理室内に供給する雰囲気ガスとして、水素、水、水酸基または水素化物などの不純物が除去された高純度の希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、および希ガスと酸素との混合ガスを適宜用いる。さらには、該処理室の排気は、水の排気能力の高いクライオポンプおよび水素の排気能力の高いスパッタイオンポンプを組み合わせて用いればよい。
【0059】
また、ゲート絶縁膜402及び酸化物半導体膜403は、大気解放することなく連続的に成膜してもよい。例えば、基板400上に設けられたゲート電極層401の表面に付着した水素を含む不純物を、熱処理またはプラズマ処理で除去した後、大気に解放することなくゲート絶縁膜402を形成し、続けて大気に解放することなく酸化物半導体膜403を形成してもよい。このようにすることで、ゲート電極層401の表面に付着した水素を含む不純物を低減し、また、ゲート電極層401とゲート絶縁膜402との界面、及び、ゲート絶縁膜402と酸化物半導体膜403との界面に、大気成分が付着することを抑制できる。その結果、電気特性が良好で、信頼性の高いトランジスタ410を作製することができる。
【0060】
酸化物半導体膜403を成膜後、酸化物半導体膜403に対して、熱処理(第1の熱処理)を行うことが望ましい。この第1の熱処理によって酸化物半導体膜403中の、過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去することができる。さらに、この第1の熱処理によって、ゲート絶縁膜402中の過剰な水素(水や水酸基を含む)を除去することも可能である。第1の熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。
【0061】
熱処理は、例えば、抵抗発熱体などを用いた電気炉に被処理物を導入し、窒素雰囲気下、450℃、1時間の条件で行うことができる。この間、酸化物半導体膜403は大気に触れさせず、水や水素の混入が生じないようにする。
【0062】
熱処理装置は電気炉に限られず、加熱されたガスなどの媒体からの熱伝導、または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。ガスとしては、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0063】
例えば、第1の熱処理として、熱せられた不活性ガス雰囲気中に被処理物を投入し、数分間熱した後、当該不活性ガス雰囲気から被処理物を取り出すGRTA処理を行ってもよい。GRTA処理を用いると短時間での高温熱処理が可能となる。また、被処理物の耐熱温度を超える温度条件であっても適用が可能となる。なお、処理中に、不活性ガスを、酸素を含むガスに切り替えてもよい。酸素を含む雰囲気において第1の熱処理を行うことで、酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位を低減することができるためである。
【0064】
なお、不活性ガス雰囲気としては、窒素、または希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴン等)を主成分とする雰囲気であって、水、水素などが含まれない雰囲気を適用するのが望ましい。例えば、熱処理装置に導入する窒素や、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上(すなわち、不純物濃度が1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とする。
【0065】
ところで、上述の熱処理(第1の熱処理)には水素や水などを除去する効果があるから、当該熱処理を、脱水化処理や、脱水素化処理などと呼ぶこともできる。当該脱水化処理や、脱水素化処理は、例えば、酸素ドープ処理後などのタイミングにおいて行うことも可能である。また、このような脱水化処理、脱水素化処理は、一回に限らず複数回行ってもよい。
【0066】
次いで、酸化物半導体膜403上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を成膜し、これを加工してソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成する(
図2(B)参照)。
【0067】
ソース電極層405a及びドレイン電極層405bに用いる導電膜としては、後の熱処理工程に耐えられる材料を用いる。例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としてもよい。また、ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成してもよい。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In
2O
3−SnO
2、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛(In
2O
3−ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0068】
なお、導電膜のエッチングの際に、酸化物半導体膜403がエッチングされ、分断することのないようエッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、導電膜のみをエッチングし、酸化物半導体膜403を全くエッチングしないという条件を得ることは難しく、導電膜のエッチングの際に酸化物半導体膜403は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体膜となることもある。
【0069】
次いで、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを覆い、酸化物半導体膜403の一部と接する絶縁膜407を形成する。
【0070】
絶縁膜407としては、酸化アルミニウム膜を用いることができる。酸化アルミニウムは、水分、酸素、その他の不純物を透過させにくいというバリア機能を有している。したがって、酸化物半導体膜403上に酸化アルミニウム膜を設けることで、該酸化アルミニウム膜がパッシベーション膜として機能して、デバイス完成後に水分等の不純物が外部より酸化物半導体膜403へ侵入するのを防ぐことができる。また、酸化物半導体膜403より酸素が放出されるのを防ぐことができる。
【0071】
絶縁膜407は、少なくとも1nm以上の膜厚とし、スパッタ法など、絶縁膜407に水、水素等の不純物を混入させない方法を適宜用いて形成することができる。絶縁膜407に水素が含まれると、その水素の酸化物半導体膜への侵入、又は水素による酸化物半導体膜中の酸素の引き抜き、が生じ酸化物半導体膜のバックチャネルが低抵抗化(N型化)してしまい、寄生チャネルが形成されるおそれがある。よって、絶縁膜407はできるだけ水素を含まない膜になるように、成膜方法に水素を用いないことが重要である。
【0072】
絶縁膜407を、成膜する際に用いるスパッタガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0073】
なお、絶縁膜407は、少なくとも酸化アルミニウム膜を有していればよく、他の無機絶縁材料を含む膜との積層構造とすることも可能である。
【0074】
次に、酸化物半導体膜403に酸素ドープ処理を行い、酸素過剰領域を形成する(
図2(C)参照)。酸素ドープ処理を行うことにより、酸素421を酸化物半導体膜403に供給して、絶縁膜407と酸化物半導体膜403との界面、酸化物半導体膜403中、又は酸化物半導体膜403とゲート絶縁膜402との界面の少なくとも一に酸素を過剰に含有させる。酸化物半導体膜403に酸素過剰領域を形成することで、酸素欠損を直ちに補填することができる。これによって、酸化物半導体膜403中の電荷捕獲中心を低減することができる。
【0075】
酸素ドープ処理によって酸化物半導体膜403の酸素の含有量を、酸化物半導体膜403の化学量論的組成比を超える程度とする。例えば、酸素ドープ処理によって導入された酸化物半導体膜403における酸素濃度のピークを1×10
18/cm
3以上3×10
21/cm
3以下とするのが好ましい。ドープされる酸素421は、酸素ラジカル、酸素原子、及び/又は酸素イオンを含む。なお、酸素過剰領域は、酸化物半導体膜の一部(界面も含む)に存在していればよい。
【0076】
なお、酸化物半導体において、酸素は主たる成分材料の一つである。このため、酸化物半導体膜中の酸素濃度を、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などの方法を用いて、正確に見積もることは難しい。つまり、酸化物半導体膜に酸素が意図的に添加されたか否かを判別することは困難であるといえる。
【0077】
ところで、酸素には
17Oや
18Oといった同位体が存在し、自然界におけるこれらの存在比率はそれぞれ酸素原子全体の0.037%、0.204%程度であることが知られている。つまり、酸化物半導体膜中におけるこれら同位体の濃度は、SIMSなどの方法によって見積もることができる程度になるから、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体膜中の酸素濃度をより正確に見積もることが可能な場合がある。よって、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体膜に意図的に酸素が添加されたか否かを判別してもよい。
【0078】
また、酸化物半導体膜に添加される(含まれる)酸素421の一部は酸素の未結合手を酸化物半導体中で有していてもよい。未結合手を有することにより、膜中に残存しうる水素と結合して、水素を固定化(非可動イオン化)することができるためである。
【0079】
ドープされる酸素(酸素ラジカル、酸素原子、及び/又は酸素イオン)は、酸素を含むガスを用いてプラズマ発生装置により供給されてもよいし、又はオゾン発生装置により供給されてもよい。より具体的には、例えば、半導体装置に対してエッチング処理を行うための装置や、レジストマスクに対してアッシングを行うための装置などを用いて酸素421を発生させ、酸化物半導体膜403へ酸素ドープ処理を行うことができる。
【0080】
なお、酸化物半導体膜403への酸素ドープ処理は、酸化物半導体膜403成膜後であればどのタイミングで行ってもよく、例えば、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b形成前に行ってもよい。
【0081】
酸素ドープ処理後には、熱処理(好ましくは第2の熱処理)を行う。該熱処理の温度は、好ましくは350℃以上650℃以下、より好ましくは450℃以上650℃以下または基板の歪み点未満とする。該熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気に水、水素などが含まれないことが好ましい。また、加熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0082】
以上の工程で、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜403を形成することができる。なお、第2の熱処理によって、酸化物半導体を構成する主成分材料の一つである酸素を、酸素を含有する絶縁膜であるゲート絶縁膜402より酸化物半導体膜403へ供給してもよい。また、酸化物半導体膜403をCAAC−OS膜とした場合、酸素ドープ処理によって酸化物半導体膜403中に含まれる結晶構造が乱されて非晶質化することがあるが、酸素ドープ処理後に熱処理を行うことによって、再度結晶化することが可能である。
【0083】
なお、酸素ドープ処理及び酸素ドープ処理後の熱処理(第2の熱処理)のタイミングは、本実施の形態の構成に限定されないが、該熱処理は、少なくとも絶縁膜407の成膜後に行う必要がある。絶縁膜407として用いる酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高く、絶縁膜407を成膜後に熱処理を行うことで、酸化物半導体膜403からの酸素の放出を防止することができるためである。
【0084】
酸化物半導体膜の脱水化又脱水素化処理、及び酸素ドープ処理を適用することで、酸化物半導体膜403を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化し、i型(真性半導体)又はi型に限りなく近い酸化物半導体膜とすることができる。高純度化された酸化物半導体膜403中にはドナーに由来するキャリアが極めて少なく(ゼロに近い)、キャリア濃度は1×10
14/cm
3未満、好ましくは1×10
12/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
11/cm
3未満である。
【0085】
以上の工程でトランジスタ410が形成される(
図2(D)参照)。トランジスタ410は、酸素ドープ処理によって酸素過剰領域を作製することで、酸化物半導体膜中または界面における酸素欠損の形成を抑制し、酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中のドナー準位を低減する、又は実質的になくすことができる。また、酸素ドープ処理、またはその後の熱処理によって、酸化物半導体膜403へと酸素を供給することで、酸化物半導体膜403の酸素欠損を補填することができる。また、該供給された酸素によって、酸化物半導体膜403中に残留する水素イオンを固定化しうる。よって、トランジスタ410は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0086】
また、トランジスタ410は、脱水化または脱水素化を目的とする熱処理を行うことが好ましく、該熱処理によって、水素、水、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を酸化物半導体膜より意図的に排除された酸化物半導体膜403を含むトランジスタとすることができる。
【0087】
図3に、本実施の形態に係るトランジスタの別の構成例を示す。
図3(A)はトランジスタ420の平面図であり、
図3(B)及び
図3(C)は、
図3(A)におけるE−F断面及びG−H断面に係る断面図である。なお、
図3(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ420の構成要素の一部(例えば、絶縁膜407など)を省略している。
【0088】
図3に示すトランジスタ420は、
図1に示すトランジスタ410と同様に、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極層401、ゲート絶縁膜402、酸化物半導体膜403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b及び絶縁膜407を含む。
【0089】
図3に示すトランジスタ420と
図1に示すトランジスタ410との相違の一は、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bと、酸化物半導体膜403との積層順である。すなわち、トランジスタ420は、ゲート絶縁膜402に接するソース電極層405a及びドレイン電極層405bと、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b上に設けられ、ゲート絶縁膜402と少なくとも一部が接する酸化物半導体膜403と、を有する。詳細については、トランジスタ410についての説明を参酌することができる。
【0090】
図3に示す構成を採用した場合にも、
図1に示す構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0091】
本実施の形態で示すトランジスタは、酸素ドープ処理によって酸化物半導体膜の酸素の含有量を増大させることで、電気的バイアスストレスや熱ストレスに起因する劣化を抑制し、光による劣化を低減することができる。また、酸素ドープ処理によって、酸化物半導体膜に酸素過剰領域を形成することによって、膜中の酸素欠損を補填することが可能である。さらに、熱処理によって、水素、水、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの水素原子を含む不純物を酸化物半導体より排除することによって、高純度化およびi型(真性)化を図った酸化物半導体膜を含むことによって、しきい値電圧などの電気的特性変動が抑制され、電気的に安定なトランジスタとすることができる。
【0092】
以上示したように、本実施の形態によって安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。また、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0093】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0094】
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、
図4乃至
図6を用いて説明する。なお、実施の形態1と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程は、実施の形態1と同様に行うことができ、繰り返しの説明は省略する。また同じ箇所の詳細な説明は省略する。
【0095】
図4に、半導体装置の例として、トップゲート型のトランジスタ510の断面図及び平面図を示す。
図4(A)は平面図であり、
図4(B)及び
図4(C)は、
図4(A)におけるI−J断面及びK−L断面に係る断面図である。なお、
図4(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ510の構成要素の一部(例えば、絶縁膜407など)を省略している。
【0096】
図4に示すトランジスタ510は、絶縁表面を有する基板400上に、下地絶縁膜506、酸化物半導体膜403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、ゲート絶縁膜502、ゲート電極層401、及び絶縁膜407を含む。
【0097】
図4に示すトランジスタ510において、下地絶縁膜506又はゲート絶縁膜502の少なくとも一方が酸素過剰領域を有するのが好ましい。酸化物半導体膜403と接する絶縁膜が酸素過剰領域を有していると、酸化物半導体膜403からこれと接する絶縁膜への酸素の移動を防ぐことができ、且つ、酸化物半導体膜403と接する絶縁膜から酸化物半導体膜403への酸素の供給を行うこともできるためである。
【0098】
図5(A)乃至(D)にトランジスタ510の作製方法の一例を示す。
【0099】
まず、絶縁表面を有する基板400上に下地絶縁膜506を形成した後、下地絶縁膜506に接して酸化物半導体膜403を形成する(
図5(A)参照)。なお、酸化物半導体膜403を成膜後、酸化物半導体膜403に対して、熱処理(第1の熱処理)を行うことが望ましい。
【0100】
本実施の形態においては、下地絶縁膜506として酸化シリコン膜をプラズマCVD法又はスパッタリング法等により形成する。なお、下地絶縁膜506を、酸化シリコン膜と、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、又はこれらの混合材料を含む膜と、の積層構造としてもよい。但し、酸化シリコン膜を後に形成される酸化物半導体膜403と接する構造とするのが好ましい。
【0101】
なお、下地絶縁膜506は酸素過剰領域を有すると、下地絶縁膜506に含まれる過剰な酸素によって、酸化物半導体膜403の酸素欠損を補填することが可能であるため好ましい。下地絶縁膜506に酸素過剰領域を形成するためには、例えば、酸素雰囲気下又は酸素と希ガスの混合雰囲気下で成膜を行えばよい。または、酸素雰囲気下で熱処理を行ってもよい。
【0102】
また、下地絶縁膜506及び酸化物半導体膜403は、大気解放することなく連続的に成膜してもよい。例えば、基板400の表面に付着した水素を含む不純物を、熱処理またはプラズマ処理で除去した後、大気に解放することなく下地絶縁膜506を形成し、続けて大気に解放することなく酸化物半導体膜403を形成してもよい。このようにすることで、基板400の表面に付着した水素を含む不純物を低減し、下地絶縁膜506と酸化物半導体膜403との界面に、大気成分が付着することを抑制できる。その結果、電気特性が良好で、信頼性の高いトランジスタ510を作製することができる。
【0103】
次いで、
図2(B)で示した工程と同様に、酸化物半導体膜403上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を成膜し、これを加工してソース電極層405a及びドレイン電極層405bを形成する(
図5(B)参照)。
【0104】
次いで、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを覆い、酸化物半導体膜403の一部と接するゲート絶縁膜502を形成する。
【0105】
ゲート絶縁膜502は、CVD法やスパッタリング法等を用いて形成することができる。また、ゲート絶縁膜502は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi
xO
y(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAl
xO
y(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムアルミネート、などを含むように形成するのが好適である。ゲート絶縁膜502は、単層構造としてもよいし、上記の材料を組み合わせて積層構造としてもよい。また、その厚さは特に限定されないが、半導体装置を微細化する場合には、トランジスタの動作を確保するために薄くするのが望ましい。例えば、酸化シリコンを用いる場合には、1nm以上100nm以下、好ましくは10nm以上50nm以下とすることができる。
【0106】
上述のように、ゲート絶縁膜を薄くすると、トンネル効果などに起因するゲートリークが問題となる。ゲートリークの問題を解消するには、ゲート絶縁膜502に、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート、ハフニウムアルミネート、窒素が添加されたハフニウムシリケート、窒素が添加されたハフニウムアルミネート、などの高誘電率(high−k)材料を用いるとよい。high−k材料をゲート絶縁膜502に用いることで、電気的特性を確保しつつ、ゲートリークを抑制するために膜厚を大きくすることが可能になる。なお、high−k材料を含む膜と、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどのいずれかを含む膜との積層構造としてもよい。
【0107】
次に、
図2(C)で示した工程と同様に、酸化物半導体膜403に酸素ドープ処理を行い、酸素過剰領域を形成する(
図5(C)参照)。酸素ドープ処理を行うことにより、酸素421を酸化物半導体膜403に供給して、下地絶縁膜506と酸化物半導体膜403との界面、酸化物半導体膜403中、又は酸化物半導体膜403とゲート絶縁膜502との界面の少なくとも一に酸素を含有させる。酸化物半導体膜403に酸素過剰領域を形成することで、酸素欠損を直ちに補填することができる。これによって、酸化物半導体膜403中の電荷捕獲中心を低減することができる。
【0108】
なお、酸化物半導体膜403への酸素ドープ処理は、酸化物半導体膜403成膜後であればどのタイミングで行ってもよく、例えば、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b形成前に行ってもよい。
【0109】
次いで、ゲート絶縁膜502上に導電膜を形成した後、フォトリソグラフィ工程によりゲート電極層401を形成する。その後、ゲート電極層401を覆い、ゲート絶縁膜502と接する絶縁膜407を形成する(
図5(D)参照)。
【0110】
絶縁膜407成膜後には、熱処理(好ましくは第2の熱処理)を行う。該熱処理の温度は、好ましくは350℃以上650℃以下、より好ましくは450℃以上650℃以下または基板の歪み点未満とする。該熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気に水、水素などが含まれないことが好ましい。また、加熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0111】
なお、酸素ドープ処理及び酸素ドープ処理後の熱処理(第2の熱処理)のタイミングは、本実施の形態の構成に限定されないが、該熱処理は、少なくとも絶縁膜407の成膜後に行う必要がある。絶縁膜407として用いる酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高く、絶縁膜407を成膜後に熱処理を行うことで、酸化物半導体膜403からの酸素の放出を防止することができるためである。
【0112】
以上の工程で、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜403を含むトランジスタ510が形成される(
図5(D)参照)。トランジスタ510は、酸素ドープ処理によって酸素過剰領域を作製することで、酸化物半導体膜中または界面における酸素欠損の形成を抑制し、酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中のドナー準位を低減する、又は実質的になくすことができる。また、酸素ドープ処理、またはその後の熱処理によって、酸化物半導体膜403へと酸素を供給することで、酸化物半導体膜403の酸素欠損を補填することができる。また、該供給された酸素によって、酸化物半導体膜403中に残留する水素イオンを固定化しうる。よって、トランジスタ510は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0113】
また、トランジスタ510は、脱水化または脱水素化を目的とする熱処理を行うことが好ましく、該熱処理によって、水素、水、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの不純物を酸化物半導体膜より意図的に排除された酸化物半導体膜403を含むトランジスタとすることができる。酸化物半導体膜の脱水化又脱水素化処理、及び酸素ドープ処理を適用することで、酸化物半導体膜を、その主成分以外の不純物が極力含まれないように高純度化し、i型(真性半導体)又はi型に限りなく近い酸化物半導体膜とすることができる。高純度化された酸化物半導体膜403中にはキャリアが極めて少ない(ゼロに近い)。
【0114】
図6に、本実施の形態に係るトランジスタの別の構成例を示す。
図6(A)はトランジスタ520の平面図であり、
図6(B)及び
図6(C)は、
図6(A)におけるM−N断面及びO−P断面に係る断面図である。なお、
図6(A)では、煩雑になることを避けるため、トランジスタ520の構成要素の一部(例えば、絶縁膜407など)を省略している。
【0115】
図6に示すトランジスタ520は、
図4に示すトランジスタ510と同様に、絶縁表面を有する基板400上に、下地絶縁膜506、酸化物半導体膜403、ソース電極層405a、ドレイン電極層405b、ゲート絶縁膜502、ゲート電極層401及び絶縁膜407を含む。
【0116】
図6に示すトランジスタ520と
図4に示すトランジスタ510との相違の一は、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bと、酸化物半導体膜403との積層順である。すなわち、トランジスタ520は、下地絶縁膜506に接するソース電極層405a及びドレイン電極層405bと、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b上に設けられ、下地絶縁膜506と少なくとも一部が接する酸化物半導体膜403と、を有する。詳細については、トランジスタ510についての説明を参酌することができる。
【0117】
図6に示す構成を採用した場合にも、
図4に示す構成を採用した場合と同様の効果を得ることができる。
【0118】
本実施の形態で示すトランジスタは、酸素ドープ処理によって酸化物半導体膜の酸素の含有量を増大させることで、電気的バイアスストレスや熱ストレスに起因する劣化を抑制し、光による劣化を低減することができる。また、酸素ドープ処理によって、酸化物半導体膜に酸素過剰領域を形成することによって、膜中の酸素欠損を補填することが可能である。さらに、熱処理によって、水素、水、水酸基又は水素化物(水素化合物ともいう)などの水素原子を含む不純物を酸化物半導体より排除することによって、高純度化およびi型(真性)化を図った酸化物半導体膜を含むことによって、しきい値電圧などの電気的特性変動が抑制され、電気的に安定なトランジスタとすることができる。
【0119】
以上示したように、本実施の形態によって安定した電気的特性を有する酸化物半導体を用いた半導体装置を提供することができる。また、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0120】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0121】
(実施の形態3)
実施の形態1または2で例示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部または全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0122】
図8(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002は、画素部4002を囲むようにして設けられたシール材4005と、第2の基板4006と、によって封止されている。
図8(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された、走査線駆動回路4004及び信号線駆動回路4003が実装されている。また信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004、及び画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4018bから供給されている。
【0123】
図8(B)(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって表示素子を含む画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、共に封止されている。
図8(B)(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。
図8(B)(C)においては、信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004、及び画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0124】
また
図8(B)(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、本実施の形態はこの構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装してもよいし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装してもよい。
【0125】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape Automated Bonding)方法などを用いることができる。
図8(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、
図8(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、
図8(C)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0126】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0127】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTABテープもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0128】
また第1の基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1または2で例示したトランジスタを適用することができる。
【0129】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)、を用いることができる。発光素子は、電流または電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0130】
半導体装置の一形態について、
図9乃至
図11を用いて説明する。
図9乃至
図11は、
図8(B)のQ−Rにおける断面図に相当する。
【0131】
図9乃至
図11で示すように、半導体装置は接続端子電極層4015及び端子電極層4016を有しており、接続端子電極層4015及び端子電極層4016はFPC4018が有する端子と異方性導電膜4019を介して、電気的に接続されている。
【0132】
接続端子電極層4015は、第1の電極層4030と同じ導電膜から形成され、端子電極層4016は、トランジスタ4010、4011のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電膜で形成されている。
【0133】
また第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、
図9乃至
図11では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。
図9では、トランジスタ4010、4011上には絶縁膜4020、絶縁膜4024が設けられ、
図10及び
図11ではさらに、絶縁膜4021が設けられている。なお、絶縁膜4023は下地膜として機能する絶縁膜である。
【0134】
本実施の形態では、トランジスタ4010、トランジスタ4011として、実施の形態1または2で示したトランジスタを適用することができる。
【0135】
トランジスタ4010及びトランジスタ4011は高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有するトランジスタである。よって、トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。
【0136】
よって、
図9乃至
図11で示す本実施の形態の半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0137】
また、本実施の形態では、絶縁膜上において駆動回路用のトランジスタ4011の酸化物半導体膜のチャネル形成領域と重なる位置に導電層が設けられている例である。導電層を酸化物半導体膜のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、BT試験前後におけるトランジスタ4011のしきい値電圧の変化量をさらに低減することができる。また、導電層は、電位がトランジスタ4011のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。また、導電層の電位がGND、0V、或いはフローティング状態であってもよい。
【0138】
また、該導電層は外部の電場を遮蔽する、すなわち外部の電場が内部(薄膜トランジスタを含む回路部)に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)も有する。導電層の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタの電気的な特性が変動することを防止することができる。
【0139】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことがでれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0140】
図9に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。
図9において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁膜4032、4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0141】
また4035は絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていてもよい。
【0142】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0143】
また、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。酸化物半導体膜を用いるトランジスタは、静電気の影響によりトランジスタの電気的な特性が著しく変動して設計範囲を逸脱する恐れがある。よって酸化物半導体膜を用いるトランジスタを有する液晶表示装置にブルー相の液晶材料を用いることはより効果的である。
【0144】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×10
9Ω・cm以上であり、好ましくは1×10
11Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×10
12Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0145】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。保持容量の大きさは、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。高純度且つ酸素過剰領域を有する酸化物半導体膜を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0146】
本実施の形態で用いる高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有するトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0147】
また、本実施の形態で用いる高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有するトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバートランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路として、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0148】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0149】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASVモードなどを用いることができる。また、VA型の液晶表示装置にも適用することができる。VA型の液晶表示装置とは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型の液晶表示装置は、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0150】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0151】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0152】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0153】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0154】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0155】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透光性であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0156】
図10に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。表示素子である発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、電界発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、
図10にて示した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0157】
隔壁4510は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0158】
電界発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでもよい。
【0159】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031及び隔壁4510上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0160】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル樹脂、ポリイミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
【0161】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0162】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0163】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒または溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子または第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0164】
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0165】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0166】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、またはこれらの複合材料を用いればよい。
【0167】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0168】
図11に、半導体装置の一形態としてアクティブマトリクス型の電子ペーパーを示す。
図11の電子ペーパーは、ツイストボール表示方式を用いた表示装置の例である。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を表示素子に用いる電極層間に配置し、電極層間に電位差を生じさせての球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0169】
トランジスタ4010と接続する第1の電極層4030と、第2の基板4006に設けられた第2の電極層4031との間には、液体で満たされているキャビティ4612内に黒色領域4615a及び白色領域4615bを有する球形粒子を含む球形粒子4613が設けられており、球形粒子4613の周囲は樹脂等の充填材4614で充填されている。第2の電極層4031が共通電極層(対向電極層)に相当する。第2の電極層4031は、共通電位線と電気的に接続される。
【0170】
なお、
図9乃至
図11において、第1の基板4001、第2の基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルムまたはアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0171】
本実施の形態では、絶縁膜4020として酸化シリコン膜を用い、絶縁膜4024として酸化アルミニウム膜を用いる。絶縁膜4020、絶縁膜4024はスパッタリング法やプラズマCVD法によって形成することができる。
【0172】
酸化物半導体膜上に絶縁膜4024として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0173】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0174】
また、絶縁膜4020として酸化物半導体膜と接して設けられた酸化シリコン膜は、酸素を酸化物半導体膜へ供給する機能を有する。よって、絶縁膜4020は酸素を多く含む酸化絶縁膜が好ましい。
【0175】
トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有する。また、トランジスタ4010及びトランジスタ4011は、ゲート絶縁膜として酸化シリコン膜を有する。トランジスタ4010及びトランジスタ4011に含まれる酸化物半導体膜は、酸素ドープ処理により化学量論的組成比よりも過剰な酸素を有する領域を形成し、ドープ後の加熱処理を、酸化物半導体膜上に、絶縁膜4024として酸化アルミニウム膜が設けられた状態で行うため、該加熱処理によって酸化物半導体膜から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる酸化物半導体膜は、化学量論的比よりも酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0176】
また、トランジスタ4010及びトランジスタ4011に含まれる酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜成膜後の加熱処理、又は、酸素ドープ処理後の加熱処理の少なくとも一方によって、脱水化または脱水素化された高純度な膜である。よって、該酸化物半導体膜をトランジスタ4010及びトランジスタ4011に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0177】
また、平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜4021は、アクリル樹脂、ポリイミド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、絶縁膜4021を形成してもよい。
【0178】
絶縁膜4021の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
【0179】
表示装置は光源又は表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁膜、導電膜などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0180】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0181】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0182】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0183】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリンまたはその誘導体、ポリピロールまたはその誘導体、ポリチオフェンまたはその誘導体、若しくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体などがあげられる。
【0184】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0185】
以上のように実施の形態1または2で示したトランジスタを適用することで、様々な機能を有する半導体装置を提供することができる。
【0186】
(実施の形態4)
実施の形態1または2で例示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0187】
図12(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。
図12(A)はフォトセンサの等価回路であり、
図12(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0188】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレインの他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0189】
なお、本明細書における回路図において、酸化物半導体膜を用いるトランジスタと明確に判明できるように、酸化物半導体膜を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載している。
図12(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は実施の形態1または2トランジスタに示すような酸素ドープ処理によって酸素過剰領域を形成した酸化物半導体膜を用いるトランジスタである。
【0190】
図12(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640を示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(TFT基板)上に、センサとして機能するフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている。
【0191】
トランジスタ640上には絶縁膜631、絶縁膜632、層間絶縁膜633、層間絶縁膜634が設けられている。フォトダイオード602は、層間絶縁膜633上に設けられ、層間絶縁膜633上に形成した電極層641aと、層間絶縁膜634上に設けられた電極層642との間に、層間絶縁膜633側から順に第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cを積層した構造を有している。
【0192】
電極層641aは、層間絶縁膜634に形成された導電層643と電気的に接続し、電極層642は電極層641bを介してゲート電極層645と電気的に接続している。ゲート電極層645は、トランジスタ640のゲート電極層と電気的に接続しており、フォトダイオード602はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0193】
ここでは、第1半導体膜606aとしてp型の導電型を有する半導体膜と、第2半導体膜606bとして高抵抗な半導体膜(I型半導体膜)、第3半導体膜606cとしてn型の導電型を有する半導体膜を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0194】
第1半導体膜606aはp型半導体膜であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成することができる。第1半導体膜606aの形成には13族の不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH
4)を用いればよい。または、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、SiHCl
3、SiCl
4、SiF
4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体膜606aの膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0195】
第2半導体膜606bは、i型半導体膜(真性半導体膜)であり、アモルファスシリコン膜により形成する。第2半導体膜606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH
4)を用いればよい。または、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、SiHCl
3、SiCl
4、SiF
4等を用いてもよい。第2半導体膜606bの形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行ってもよい。第2半導体膜606bの膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0196】
第3半導体膜606cは、n型半導体膜であり、n型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成する。第3半導体膜606cの形成には、15族の不純物元素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH
4)を用いればよい。または、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、SiHCl
3、SiCl
4、SiF
4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3半導体膜606cの膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0197】
また、第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cは、アモルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶(セミアモルファス(Semi Amorphous Semiconductor:SAS))半導体を用いて形成してもよい。
【0198】
微結晶半導体は、ギブスの自由エネルギーを考慮すれば非晶質と単結晶の中間的な準安定状態に属するものである。すなわち、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する。柱状または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している。微結晶半導体の代表例である微結晶シリコンは、そのラマンスペクトルが単結晶シリコンを示す520cm
−1よりも低波数側に、シフトしている。即ち、単結晶シリコンを示す520cm
−1とアモルファスシリコンを示す480cm
−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体膜が得られる。
【0199】
この微結晶半導体膜は、周波数が数十MHz〜数百MHzの高周波プラズマCVD法、または周波数が1GHz以上のマイクロ波プラズマCVD装置により形成することができる。代表的には、SiH
4、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、SiHCl
3、SiCl
4、SiF
4などの水素化珪素を水素で希釈して形成することができる。また、水素化珪素及び水素に加え、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、ネオンから選ばれた一種または複数種の希ガス元素で希釈して微結晶半導体膜を形成することができる。これらのときの水素化珪素に対して水素の流量比を5倍以上200倍以下、好ましくは50倍以上150倍以下、更に好ましくは100倍とする。さらには、シリコンを含む気体中に、CH
4、C
2H
6等の炭化物気体、GeH
4、GeF
4等のゲルマニウム化気体、F
2等を混入させてもよい。
【0200】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型のフォトダイオードはp型の半導体膜側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、pin型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602が受ける光622を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体膜側とは逆の導電型を有する半導体膜側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電膜を用いるとよい。また、n型の半導体膜側を受光面として用いることもできる。
【0201】
絶縁膜632、層間絶縁膜633、層間絶縁膜634としては、絶縁性材料を用いて、その材料に応じて、スパッタリング法、プラズマCVD法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法等)、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いて形成することができる。
【0202】
本実施の形態では、絶縁膜631として酸化アルミニウム膜を用いる。絶縁膜631はスパッタリング法やプラズマCVD法によって形成することができる。
【0203】
酸化物半導体膜上に絶縁膜631として設けられた酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0204】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能する。
【0205】
本実施の形態において、トランジスタ640は、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有する。また、トランジスタ640は、ゲート絶縁膜として酸化シリコン膜を有する。トランジスタ640に含まれる酸化物半導体膜は、酸素ドープ処理により化学量論的組成比よりも過剰な酸素を有する領域を形成し、ドープ後の加熱処理を、酸化物半導体膜上に、絶縁膜631として酸化アルミニウム膜が設けられた状態で行うため、該加熱処理によって酸化物半導体膜から酸素が放出されるのを防止することができる。よって、得られる酸化物半導体膜は、化学量論的比よりも酸素の含有量が過剰な領域を含む膜とすることができる。
【0206】
また、トランジスタ640に含まれる酸化物半導体膜は、酸化物半導体膜成膜後の加熱処理、又は、酸素ドープ処理後の加熱処理の少なくとも一方によって、脱水化または脱水素化された高純度な膜である。よって、該酸化物半導体膜をトランジスタ640に用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。
【0207】
絶縁膜632としては、無機絶縁材料としては、酸化シリコン層、酸化窒化シリコン層、酸化アルミニウム層、又は酸化窒化アルミニウム層などの酸化物絶縁膜、窒化シリコン層、窒化酸化シリコン層、窒化アルミニウム層、又は窒化酸化アルミニウム層などの窒化物絶縁膜の単層、又は積層を用いることができる。
【0208】
層間絶縁膜633、634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁膜として機能する絶縁膜が好ましい。層間絶縁膜633、634としては、例えばポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の単層、又は積層を用いることができる。
【0209】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0210】
以上のように、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む酸化物半導体膜を有するトランジスタは、トランジスタの電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、該トランジスタを用いることで信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0211】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0212】
(実施の形態5)
実施の形態1または2で例示したトランジスタは、複数のトランジスタを積層する集積回路を有する半導体装置に好適に用いることができる。本実施の形態では、半導体装置の一例として、記憶媒体(メモリ素子)の例を示す。
【0213】
本実施の形態では、単結晶半導体基板に作製された第1のトランジスタと絶縁膜を介して第1のトランジスタの上方に半導体膜を用いて作製された第2のトランジスタを含む半導体装置を作製する。
【0214】
図7は、半導体装置の構成の一例である。
図7(A)には、半導体装置の断面を、
図7(B)には、半導体装置の平面を、それぞれ示す。ここで、
図7(A)は、
図7(B)のC1−C2およびD1−D2における断面に相当する。また、
図7(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。
【0215】
図7(A)および
図7(B)に示される半導体装置は、下部に第1の半導体材料を用いたトランジスタ140を有し、上部に第2の半導体材料を用いたトランジスタ162を有する。実施の形態1または2で例示したトランジスタは、トランジスタ162に好適に用いることができる。本実施の形態では、トランジスタ162として実施の形態2で示したトランジスタ510と同様な構造を有するトランジスタを用いる例を示す。
【0216】
積層するトランジスタ140、トランジスタ162の半導体材料、及び構造は、同一でもよいし異なっていてもよい。本実施の形態では、記憶媒体(メモリ素子)の回路に好適な材料及び構造のトランジスタをそれぞれ用いる例であり、第1の半導体材料を酸化物半導体以外の半導体材料とし、第2の半導体材料を酸化物半導体とする。酸化物半導体以外の半導体材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、またはガリウムヒ素等を用いることができ、単結晶半導体を用いるのが好ましい。他に、有機半導体材料などを用いてもよい。このような半導体材料を用いたトランジスタは、高速動作が容易である。一方で、酸化物半導体を用いたトランジスタは、その特性により長時間の電荷保持を可能とする。
【0217】
トランジスタ140は、半導体材料(例えば、シリコンなど)を含む基板185に設けられたチャネル形成領域116と、チャネル形成領域116を挟むように設けられた不純物領域120と、不純物領域120に接する金属化合物領域124と、チャネル形成領域116上に設けられたゲート絶縁膜108と、ゲート絶縁膜108上に設けられたゲート電極層110とを有する。
【0218】
半導体材料を含む基板185は、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することができる。なお、一般に「SOI基板」は、絶縁表面上にシリコン半導体膜が設けられた構成の基板をいうが、本明細書等においては、絶縁表面上にシリコン以外の材料からなる半導体膜が設けられた構成の基板も含む。つまり、「SOI基板」が有する半導体膜は、シリコン半導体膜に限定されない。また、SOI基板には、ガラス基板などの絶縁基板上に絶縁膜を介して半導体膜が設けられた構成のものが含まれるものとする。
【0219】
SOI基板の作製方法としては、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温加熱することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて作る方法、水素イオン照射により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用して半導体基板を劈開する方法や、絶縁表面上に結晶成長により単結晶半導体膜を形成する方法等を用いることができる。
【0220】
例えば、単結晶半導体基板の一つの面からイオンを添加して、単結晶半導体基板の一つの面から一定の深さに脆弱化層を形成し、単結晶半導体基板の一つの面上、又は素子基板上のどちらか一方に絶縁膜を形成する。単結晶半導体基板と素子基板を、絶縁膜を挟んで重ね合わせた状態で、脆弱化層に亀裂を生じさせ、単結晶半導体基板を脆弱化層で分離する熱処理を行い、単結晶半導体基板より半導体膜として単結晶半導体膜を素子基板上に形成する。上記方法を用いて作製されたSOI基板も好適に用いることができる。
【0221】
基板185上にはトランジスタ140を囲むように素子分離絶縁膜106が設けられている。なお、高集積化を実現するためには、
図7(A)に示すようにトランジスタ140がサイドウォール絶縁膜を有しない構成とすることが望ましい。一方で、トランジスタ140の特性を重視する場合には、ゲート電極層110の側面にサイドウォール絶縁膜を設け、不純物濃度が異なる領域を含む不純物領域120を設けてもよい。
【0222】
単結晶半導体基板を用いたトランジスタ140は、高速動作が可能である。このため、当該トランジスタを読み出し用のトランジスタとして用いることで、情報の読み出しを高速に行うことができる。
【0223】
本実施の形態においては、トランジスタ140を覆うように絶縁膜2層を形成する。但し、トランジスタ140を覆う絶縁膜は、単層構造としてもよいし、3層以上の積層構造としてもよい。但し、上部に設けられるトランジスタ162に含まれる酸化物半導体膜と接する絶縁膜としては、酸化シリコン膜を適用するものとする。
【0224】
トランジスタ162および容量素子164の形成前の処理として、該絶縁膜2層にCMP処理を施して、平坦化した絶縁膜128、絶縁膜130を形成し、同時にゲート電極層110の上面を露出させる。
【0225】
絶縁膜128、絶縁膜130は、代表的には酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化シリコン膜、窒化酸化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。絶縁膜128、絶縁膜130は、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて形成することができる。
【0226】
また、ポリイミド、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。有機材料を用いる場合、スピンコート法、印刷法などの湿式法によって絶縁膜128、絶縁膜130を形成してもよい。
【0227】
本実施の形態では、絶縁膜128としてスパッタリング法により膜厚50nmの酸化窒化シリコン膜を形成し、絶縁膜130としてスパッタリング法により膜厚550nmの酸化シリコン膜を形成する。
【0228】
その後、CMP処理により十分に平坦化した絶縁膜130上に酸化物半導体膜を成膜し、これを加工して島状の酸化物半導体膜144を形成する。なお、酸化物半導体膜成膜後、脱水化または脱水素化のための熱処理を行うのが好ましい。
【0229】
次に、ゲート電極層110、絶縁膜128、絶縁膜130などの上に導電層を形成し、該導電層を選択的にエッチングして、ソース電極層またはドレイン電極層142a、ドレイン電極層またはソース電極層142bを形成する。
【0230】
導電層は、スパッタリング法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて形成することができる。また、導電層の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。Mn、Mg、Zr、Be、Nd、Scのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。
【0231】
導電層は、単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチタン膜が積層された2層構造、窒化チタン膜上にチタン膜が積層された2層構造、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜とが積層された3層構造などが挙げられる。なお、導電層を、チタン膜や窒化チタン膜の単層構造とする場合には、テーパー形状を有するソース電極層またはドレイン電極層142a、およびドレイン電極層またはソース電極層142bへの加工が容易であるというメリットがある。
【0232】
上部のトランジスタ162のチャネル長(L)は、ソース電極層またはドレイン電極層142a、およびドレイン電極層またはソース電極層142bの下端部の間隔によって決定される。なお、チャネル長(L)が25nm未満のトランジスタを形成する場合に用いるマスク形成の露光を行う際には、数nm〜数10nmと波長の短い超紫外線を用いるのが望ましい。
【0233】
次に、酸化物半導体膜144の一部に接するゲート絶縁膜146を形成する。ゲート絶縁膜146として、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、又は酸化ハフニウム膜等を形成することができる。
【0234】
ゲート絶縁膜146成膜後、酸素ドープ処理を行い、酸化物半導体膜144に酸素過剰領域を形成する。
【0235】
次に、ゲート絶縁膜146上において酸化物半導体膜144と重畳する領域にゲート電極層148aを形成し、ソース電極層またはドレイン電極層142aと重畳する領域に電極層148bを形成する。
【0236】
ゲート電極層148aおよび電極層148bは、ゲート絶縁膜146上に導電層を形成した後に、当該導電層を選択的にエッチングすることによって形成することができる。
【0237】
次に、ゲート絶縁膜146、ゲート電極層148a、および電極層148b上に、酸化アルミニウム膜を含む絶縁膜150を形成する。絶縁膜150を積層構造とする場合、プラズマCVD法又はスパッタリング法等を用いて、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、又は酸化ガリウム膜を酸化アルミニウム膜と積層して形成してもよい。
【0238】
絶縁膜150成膜後、熱処理(好ましくは第2の熱処理)を行う。該熱処理の温度は、好ましくは350℃以上650℃以下、より好ましくは450℃以上650℃以下または基板の歪み点未満とする。なお、酸素ドープ処理及び酸素ドープ処理後の熱処理(第2の熱処理)のタイミングは、本実施の形態の構成に限定されないが、該熱処理は、少なくとも絶縁膜150(より具体的には、酸化アルミニウム膜)の成膜後に行う必要がある。絶縁膜150として用いる酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高く、絶縁膜150を成膜後に熱処理を行うことで、酸化物半導体膜144からの酸素の放出を防止することができるためである。
【0239】
次にトランジスタ162、及び絶縁膜150上に、絶縁膜152を形成する。絶縁膜152は、スパッタリング法やCVD法などを用いて形成することができる。また、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム等の無機絶縁材料を含む材料を用いて形成することができる。
【0240】
次に、ゲート絶縁膜146、絶縁膜150、及び絶縁膜152に、ドレイン電極層またはソース電極層142bにまで達する開口を形成する。当該開口の形成は、マスクなどを用いた選択的なエッチングにより行われる。
【0241】
その後、上記開口にドレイン電極層またはソース電極層142bに接する配線156を形成する。なお、
図7(A)にはドレイン電極層またはソース電極層142bと配線156との接続箇所は図示していない。
【0242】
配線156は、スパッタリング法をはじめとするPVD法や、プラズマCVD法などのCVD法を用いて導電層を形成した後、当該導電層をエッチング加工することによって形成される。また、導電層の材料としては、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素や、上述した元素を成分とする合金等を用いることができる。Mn、Mg、Zr、Be、Nd、Scのいずれか、またはこれらを複数組み合わせた材料を用いてもよい。詳細は、ソース電極層またはドレイン電極層142aなどと同様である。
【0243】
以上の工程でトランジスタ162及び容量素子164が完成する。トランジスタ162は、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む酸化物半導体膜144を有するトランジスタである。よって、トランジスタ162は、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。容量素子164は、ソース電極層またはドレイン電極層142a、ゲート絶縁膜146、および電極層148bを含んで構成される。
【0244】
なお、
図7の容量素子164では、ゲート絶縁膜146により、ソース電極層またはドレイン電極層142aと、電極層148bとの間の絶縁性を十分に確保することができる。もちろん、十分な容量を確保するために、さらに絶縁膜を有する構成の容量素子164を採用してもよい。また、容量が不要の場合は、容量素子164を設けない構成とすることも可能である。
【0245】
図7(C)には、上記半導体装置をメモリ素子として用いる場合の回路図の一例を示す。
図7(C)において、トランジスタ162のソース電極層またはドレイン電極層の一方と、容量素子164の電極層の一方と、トランジスタ140のゲート電極層と、は電気的に接続されている。また、第1の配線(1st Line:ソース線とも呼ぶ)とトランジスタ140のソース電極層とは、電気的に接続され、第2の配線(2nd Line:ビット線とも呼ぶ)とトランジスタ140のドレイン電極層とは、電気的に接続されている。また、第3の配線(3rd Line:第1の信号線とも呼ぶ)とトランジスタ162のソース電極層またはドレイン電極層の他方とは、電気的に接続され、第4の配線(4th Line:第2の信号線とも呼ぶ)と、トランジスタ162のゲート電極層とは、電気的に接続されている。そして、第5の配線(5th Line:ワード線とも呼ぶ)と、容量素子164の電極層の他方は電気的に接続されている。
【0246】
酸化物半導体を用いたトランジスタ162は、オフ電流が極めて小さいという特徴を有しているため、トランジスタ162をオフ状態とすることで、トランジスタ162のソース電極層またはドレイン電極層の一方と、容量素子164の電極層の一方と、トランジスタ140のゲート電極層とが電気的に接続されたノード(以下、ノードFG)の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。そして、容量素子164を有することにより、ノードFGに与えられた電荷の保持が容易になり、また、保持された情報の読み出しが容易になる。
【0247】
半導体装置に情報を記憶させる場合(書き込み)は、まず、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電荷(以下、ロー(Low)レベル電荷、ハイ(High)レベル電荷という)のいずれかが与えられるものとする。その後、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、ノードFGが浮遊状態となるため、ノードFGには所定の電荷が保持されたままの状態となる。以上のように、ノードFGに所定量の電荷を蓄積及び保持させることで、メモリセルに情報を記憶させることができる。
【0248】
トランジスタ162のオフ電流は極めて小さいため、ノードFGに供給された電荷は長時間にわたって保持される。したがって、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ動作の頻度を極めて低くすることが可能となり、消費電力を十分に低減することができる。また、電力の供給がない場合であっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0249】
記憶された情報を読み出す場合(読み出し)は、第1の配線に所定の電位(定電位)を与えた状態で、第5の配線に適切な電位(読み出し電位)を与えると、ノードFGに保持された電荷量に応じて、トランジスタ140は異なる状態をとる。一般に、トランジスタ140をnチャネル型とすると、ノードFGにHighレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ140の見かけのしきい値V
th_Hは、ノードFGにLowレベル電荷が保持されている場合のトランジスタ140の見かけのしきい値V
th_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値とは、トランジスタ140を「オン状態」とするために必要な第5の配線の電位をいうものとする。したがって、第5の配線の電位をV
th_HとV
th_Lの中間の電位V
0とすることにより、ノードFGに保持された電荷を判別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV
0(>V
th_H)となれば、トランジスタ140は「オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線の電位がV
0(<V
th_L)となっても、トランジスタ140は「オフ状態」のままである。このため、第5の配線の電位を制御して、トランジスタ140のオン状態またはオフ状態を読み出す(第2の配線の電位を読み出す)ことで、記憶された情報を読み出すことができる。
【0250】
また、記憶させた情報を書き換える場合においては、上記の書き込みによって所定量の電荷を保持したノードFGに、新たな電位を供給することで、ノードFGに新たな情報に係る電荷を保持させる。具体的には、第4の配線の電位を、トランジスタ162がオン状態となる電位にして、トランジスタ162をオン状態とする。これにより、第3の配線の電位(新たな情報に係る電位)が、ノードFGに供給され、ノードFGに所定量の電荷が蓄積される。その後、第4の配線の電位をトランジスタ162がオフ状態となる電位にして、トランジスタ162をオフ状態とすることにより、ノードFGには、新たな情報に係る電荷が保持された状態となる。すなわち、ノードFGに第1の書き込みによって所定量の電荷が保持された状態で、第1の書き込みと同様の動作(第2の書き込み)を行うことで、記憶させた情報を上書きすることが可能である。
【0251】
本実施の形態で示すトランジスタ162は、高純度化され、酸素を過剰に含む酸化物半導体膜を酸化物半導体膜144に用いることで、トランジスタ162のオフ電流を十分に低減することができる。そして、このようなトランジスタを用いることで、極めて長期にわたり記憶内容を保持することが可能な半導体装置が得られる。
【0252】
以上のように、高純度化し、酸素欠損を補填する酸素を過剰に含む酸化物半導体膜を有するトランジスタは、電気的特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、該トランジスタを用いることで信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0253】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0254】
(実施の形態6)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。上記実施の形態で説明した半導体装置を具備する電子機器の例について説明する。
【0255】
図13(A)は、ノート型のパーソナルコンピュータであり、本体3001、筐体3002、表示部3003、キーボード3004などによって構成されている。上記実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部3003に適用することにより、信頼性の高いノート型のパーソナルコンピュータとすることができる。
【0256】
図13(B)は、携帯情報端末(PDA)であり、本体3021には表示部3023と、外部インターフェイス3025と、操作ボタン3024等が設けられている。また操作用の付属品としてスタイラス3022がある。上記実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部3023に適用することにより、より信頼性の高い携帯情報端末(PDA)とすることができる。
【0257】
図13(C)は、電子書籍の一例を示している。例えば、電子書籍は、筐体2701および筐体2703の2つの筐体で構成されている。筐体2701および筐体2703は、軸部2711により一体とされており、該軸部2711を軸として開閉動作を行うことができる。このような構成により、紙の書籍のような動作を行うことが可能となる。
【0258】
筐体2701には表示部2705が組み込まれ、筐体2703には表示部2707が組み込まれている。表示部2705および表示部2707は、続き画面を表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば右側の表示部(
図13(C)では表示部2705)に文章を表示し、左側の表示部(
図13(C)では表示部2707)に画像を表示することができる。上記実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部2705、表示部2707に適用することにより、信頼性の高い電子書籍とすることができる。表示部2705として半透過型、又は反射型の液晶表示装置を用いる場合、比較的明るい状況下での使用も予想されるため、太陽電池を設け、太陽電池による発電、及びバッテリーでの充電を行えるようにしてもよい。なおバッテリーとしては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0259】
また、
図13(C)では、筐体2701に操作部などを備えた例を示している。例えば、筐体2701において、電源2721、操作キー2723、スピーカー2725などを備えている。操作キー2723により、頁を送ることができる。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備える構成としてもよい。また、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成としてもよい。さらに、電子書籍は、電子辞書としての機能を持たせた構成としてもよい。
【0260】
また、電子書籍は、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。無線により、電子書籍サーバから、所望の書籍データなどを購入し、ダウンロードする構成とすることも可能である。
【0261】
図13(D)は、携帯電話であり、筐体2800及び筐体2801の二つの筐体で構成されている。筐体2801には、表示パネル2802、スピーカー2803、マイクロフォン2804、ポインティングデバイス2806、カメラ用レンズ2807、外部接続端子2808などを備えている。また、筐体2800には、携帯電話の充電を行う太陽電池セル2810、外部メモリスロット2811などを備えている。また、アンテナは筐体2801内部に内蔵されている。上記実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示パネル2802に適用することにより、信頼性の高い携帯電話とすることができる。
【0262】
また、表示パネル2802はタッチパネルを備えており、
図13(D)には映像表示されている複数の操作キー2805を点線で示している。なお、太陽電池セル2810で出力される電圧を各回路に必要な電圧に昇圧するための昇圧回路も実装している。
【0263】
表示パネル2802は、使用形態に応じて表示の方向が適宜変化する。また、表示パネル2802と同一面上にカメラ用レンズ2807を備えているため、テレビ電話が可能である。スピーカー2803及びマイクロフォン2804は音声通話に限らず、テレビ電話、録音、再生などが可能である。さらに、筐体2800と筐体2801は、スライドし、
図13(D)のように展開している状態から重なり合った状態とすることができ、携帯に適した小型化が可能である。
【0264】
外部接続端子2808はACアダプタ及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能であり、充電及びパーソナルコンピュータなどとのデータ通信が可能である。また、外部メモリスロット2811に記録媒体を挿入し、より大量のデータ保存及び移動に対応できる。
【0265】
また、上記機能に加えて、赤外線通信機能、テレビ受信機能などを備えたものであってもよい。
【0266】
図13(E)は、デジタルビデオカメラであり、本体3051、表示部(A)3057、接眼部3053、操作スイッチ3054、表示部(B)3055、バッテリー3056などによって構成されている。上記実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部(A)3057、表示部(B)3055に適用することにより、信頼性の高いデジタルビデオカメラとすることができる。
【0267】
図13(F)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体9601に表示部9603が組み込まれている。表示部9603により、映像を表示することが可能である。また、ここでは、スタンド9605により筐体9601を支持した構成を示している。上記実施の形態のいずれかで示した半導体装置を表示部9603に適用することにより、信頼性の高いテレビジョン装置とすることができる。
【0268】
テレビジョン装置の操作は、筐体9601が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。また、リモコン操作機に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部を設ける構成としてもよい。
【0269】
なお、テレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0270】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例】
【0271】
本実施例では、開示する発明に係る半導体装置において用いる酸化アルミニウム膜のバリア膜としての特性について評価を行った。
図14乃至
図17に結果を示す。評価方法としては、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)と、TDS(Thermal Desorption Spectrometry:昇温脱離ガス分光法)分析法を用いた。
【0272】
まず、SIMS分析によって行った評価を示す。試料は、比較例としてガラス基板上にスパッタリング法による酸化シリコン膜が膜厚100nm形成された比較例試料Aと、実施例としてガラス基板上にスパッタリング法により酸化シリコン膜が膜厚100nm形成され、酸化シリコン膜上にスパッタリング法により酸化アルミニウム膜が膜厚100nm形成された実施例試料Aを作製した。
【0273】
比較例試料A及び実施例試料Aにおいて、酸化シリコン膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化シリコン(SiO
2)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットとの距離を60mm、圧力0.4Pa、電源電力1.5kW、酸素(酸素流量50sccm)雰囲気下、基板温度100℃とした。
【0274】
実施例試料Aにおいて、酸化アルミニウム膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化アルミニウム(Al
2O
3)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットとの距離を60mm、圧力0.4Pa、電源電力1.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量25sccm:酸素流量25sccm)雰囲気下、基板温度250℃とした。
【0275】
比較例試料A及び実施例試料Aにプレッシャークッカー試験(PCT:Pressure Cooker Test)を行った。本実施例ではPCT試験として、温度130℃、湿度85%、H
2O(水):D
2O(重水)=3:1雰囲気、2.3気圧(0.23MPa)の条件で比較例試料A及び実施例試料Aを100時間保持した。
【0276】
SIMS分析としてSSDP(Substrate Side Depth Profile)−SIMSを用いて、PCT試験前とPCT試験後の比較例試料A及び実施例試料Aに対して、各試料のH原子及びD原子の濃度を測定した。
【0277】
図14(A1)に比較例試料AのPCT試験前、
図14(A2)に比較例試料AのPCT試験後のSIMSによるH原子及びD原子の濃度プロファイルを示す。
図14(A1)及び
図14(A2)において、D原子expectedプロファイルは、D原子の存在比が0.015%としてH原子のプロファイルから算出した自然界に存在するD原子の濃度プロファイルである。よって、PCT試験によって試料中に混入したD原子量は、実測のD原子濃度とD原子expected濃度との差分となる。実測のD原子濃度からD原子expected濃度を差し引いたD原子の濃度プロファイルを、PCT試験前を
図14(B1)、PCT試験後を
図14(B2)に示す。
【0278】
同様に、
図15(A1)に実施例試料AのPCT試験前、
図15(A2)に実施例試料AのPCT試験後のSIMSによるH原子及びD原子の濃度プロファイルを示す。また、実測のD原子濃度からD原子expected濃度を差し引いたD原子の濃度プロファイルを、PCT試験前を
図15(B1)、PCT試験後を
図15(B2)に示す。
【0279】
なお、本実施例のSIMS分析結果は、すべて酸化シリコン膜の標準試料により定量した結果を示している。
【0280】
図14に示すように、PCT試験前は重なっていた実測のD原子の濃度プロファイルとD原子expectedプロファイルが、PCT試験後は実測のD原子の濃度プロファイルが高濃度に増大しており、酸化シリコン膜中にD原子が混入したことがわかる。従って、比較例試料の酸化シリコン膜は、外部からの水分(H
2O、D
2O)に対し、バリア性が低いことが確認できた。
【0281】
一方、
図15に示すように、酸化シリコン膜上に酸化アルミニウム膜を積層した実施例試料Aは、PCT試験後でも酸化アルミニウム膜表面近傍の領域にややD原子の侵入が見られるだけで、酸化アルミニウム膜深さ30nm付近以降、及び酸化シリコン膜にはD原子の侵入が見られない。従って、酸化アルミニウム膜は外部からの水分(H
2O、D
2O)に対し、バリア性が高いことが確認できた。
【0282】
次に、TDS分析によって行った評価を示す。試料は、実施例として、ガラス基板上にスパッタリング法により酸化シリコン膜が膜厚100nm形成され、酸化シリコン膜上にスパッタリング法により酸化アルミニウム膜が膜厚20nm形成された実施例試料Bを作製した。また、比較例として、実施例試料BをTDS分析によって測定後、実施例試料Bから酸化アルミニウム膜を除去し、ガラス基板上に酸化シリコン膜のみが形成された比較例試料Bを作製した。
【0283】
比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、酸化シリコン膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化シリコン(SiO
2)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットとの距離を60mm、圧力0.4Pa、電源電力1.5kW、酸素(酸素流量50sccm)雰囲気下、基板温度100℃とした。
【0284】
実施例試料Bにおいて、酸化アルミニウム膜の成膜条件は、ターゲットとして酸化アルミニウム(Al
2O
3)ターゲットを用い、ガラス基板とターゲットとの距離を60mm、圧力0.4Pa、電源電力1.5kW、アルゴン及び酸素(アルゴン流量25sccm:酸素流量25sccm)雰囲気下、基板温度250℃とした。
【0285】
比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、さらに300℃加熱処理、450℃加熱処理、600℃加熱処理の条件で、それぞれ窒素雰囲気下で1時間処理を行い、試料を作製した。
【0286】
比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、加熱処理なし、300℃加熱処理、450℃加熱処理、600℃加熱処理と4つの条件で作製された試料にそれぞれTDS分析を行った。比較例試料B及び実施例試料Bにおいて、
図16(A)及び
図17(A)に加熱処理なし、
図16(B)及び
図17(B)に300℃加熱処理、
図16(C)及び
図17(C)に450℃加熱処理、
図16(D)及び
図17(D)に600℃加熱処理を行った各試料の測定されたM/z=32(O
2)のTDS結果を示す。
【0287】
図16(A)乃至(D)に示すように、比較例試料Bは加熱処理なしの
図16(A)では酸化シリコン膜から酸素の放出が見られるが、
図16(B)の300℃加熱処理を行った試料では酸素の放出量が大きく減少し、
図16(C)の450℃加熱処理を行った試料及び
図16(D)の600℃加熱処理を行った試料においては、TDS測定のバックグラウンド以下であった。
【0288】
図16(A)乃至(D)の結果から、酸化シリコン膜中に含まれる過剰酸素の9割以上が300℃の加熱処理によって酸化シリコン膜中から外部へ放出され、450℃、600℃の加熱処理によってはほぼ全ての酸化シリコン膜中に含まれる過剰酸素が酸化シリコン膜外部へ放出されたことがわかる。従って、酸化シリコン膜は酸素に対するバリア性が低いことが確認できた。
【0289】
一方、
図17(A)乃至(D)に示すように、酸化シリコン膜上に酸化アルミニウム膜を形成した実施例試料Bにおいては、300℃、450℃、600℃の加熱処理を行った試料においても、加熱処理なしの試料と同等の量の酸素の放出が見られた。
【0290】
図17(A)乃至(D)の結果から、酸化アルミニウム膜を酸化シリコン膜上に形成することで、加熱処理を行っても酸化シリコン膜中に含まれる過剰酸素は容易に外部へ放出されず、酸化シリコン膜中に含有した状態がかなりの程度保持されることがわかる。従って酸化アルミニウム膜は酸素に対するバリア性が高いことが確認できた。
【0291】
以上の結果から、酸化アルミニウム膜は水素及び水分に対するバリア性と、酸素に対するバリア性の両方を有しており、水素、水分、及び酸素に対するバリア膜として好適に機能することが確認できた。
【0292】
従って、酸化アルミニウム膜は、酸化物半導体膜を含むトランジスタの作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体膜への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体膜からの放出を防止する保護膜として機能することができる。
【0293】
また、形成される酸化物半導体膜は、水素、水分などの不純物が混入しないため高純度であり、酸素放出が防止されるため、該酸化物半導体の化学量論的組成比に対し、酸素の含有量が過剰な領域を含む。よって、該酸化物半導体膜をトランジスタに用いることで、酸素欠損に起因するトランジスタのしきい値電圧Vthのばらつき、しきい値電圧のシフトΔVthを低減することができる。